(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176839
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】圧力センサ
(51)【国際特許分類】
G01L 19/14 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
G01L19/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095664
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝本 和哉
(72)【発明者】
【氏名】松山 賢一
【テーマコード(参考)】
2F055
【Fターム(参考)】
2F055AA40
2F055BB20
2F055CC02
2F055DD01
2F055EE40
2F055FF01
2F055GG25
(57)【要約】
【課題】内装する回路基板に加えられる応力を軽減するとともに、液密性を高精度に確保する構造を実現して、信頼性高く使用することのできる圧力センサを提供すること。
【解決手段】測定対象の圧力を検出するセンサチップ11がケース20内に内装される回路基板50に接続される圧力センサ100であって、センサチップは測定対象の圧力を受けるように液封室LRに設置されて、回路基板はケース内に封止材26を充填されて液密に形成される設置空間SRにセンサチップと外部機器Aとの間に介在するように設置されており、回路基板は、外部に引き出されて外部機器に接続されるリード線38の芯線Cに導通接続されて、当該芯線は設置空間の手前まで被覆38cで覆われている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の圧力を検出するセンサがケース内に内装される回路基板に接続される圧力センサであって、
前記センサは測定対象の圧力を受けるように圧力室に設置されて、前記回路基板は前記ケース内に封止材を充填されて液密に形成される設置空間に前記センサと外部機器との間に介在するように設置されており、
前記回路基板は、外部に引き出されて前記外部機器に接続される被覆接続部材の芯線に導通接続されて、当該被覆接続部材の芯線は前記設置空間の手前まで被覆で覆われていることを特徴とする圧力センサ。
【請求項2】
前記被覆接続部材の導通芯線は、前記設置空間を形成する空間形成部材を貫通して前記回路基板に導通接続されていることを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項3】
前記被覆接続部材の導通芯線は、前記設置空間を形成する空間形成部材を貫通する外部接続部材を介して前記回路基板に導通接続されていることを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項4】
前記被覆接続部材が撚線からなる芯線が被覆されている電線により構成されていることを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項5】
前記外部接続部材は、前記設置空間を形成する空間形成部材を貫通して前記被覆接続部材に接続可能なコネクタの構成部品であることを特徴とする請求項3に記載の圧力センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂により液密にモールドされている圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
圧力や温度などを検出する各種センサは、測定対象の近傍に固定されて検出信号を測定機器などに送出するように利用されており、その測定機器に内蔵あるいは外付けされる形態で多用されている。
【0003】
この種の各種センサは、測定対象と同等の環境に晒される箇所に設置可能にセンサユニットに組み込まれて利用されるようになっており、例えば、センサチップに入出力する電気特性を変更する必要があるときなどには回路基板を内装する場合もある(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の圧力センサにおいては、
図8に示すように、ハウジング1124内のセンサチップ1121に接続する回路基板1431がケース1135に収容されて、そのケース1135内に樹脂材料などの封止材1136を充填することで液密に封止するようになっている。
【0006】
このような構造では、回路基板1431やケース1135や封止材1136などの構成材の線膨張係数に差があることから、測定対象を含む内外等に温度差が生じるときには、その温度差に応じた応力が生じる場合がある。この応力は、回路基板1431自体やその回路基板1431に実装されている部品に対する負荷になる場合がある。
【0007】
また、このような圧力センサは、外部機器に電気的に接続可能に引き出したリード線を回路基板に接続することが多用されており、例えば、
図8に示す圧力センサでは、回路基板1431に芯線Cを導通接続されているリード線1433が外部機器に接続可能に引き出されている。
【0008】
このような構造では、封止材1136を充填して液密にケース1135を封止しているが、リード線1433の被覆1433cが回路基板1431の一面側に密接する状態で封止材1136が充填される場合には、そのリード線1433から芯線Cの露出する境界端部、すなわち被覆端部を封止材1136内に埋め込んで液密に封止することが難しい。またリード線は細径の導線を撚り合わせた構造を有しているため、芯線内部には微小な空間が存在し、この微小空間を通って外部機器側の外気と圧力センサの回路基板部とが連通している。例えば、冷凍サイクルでの冷媒配管に取り付けられている圧力センサでは、ユニットの発停にともなう配管中の冷媒の温度変化が繰り返し作用する。このような場合、圧力センサ本体と外部機器側との温度差、圧力差、温度伸縮などにより、空気中の水分が芯線を介して圧力センサに浸入するという、いわゆる呼吸作用が生じる恐れがある。そのような場合、大気中の水分が回路基板1431の他端面側にまで浸入してしまい、結露による回路基板の短絡や、マイグレーションなどが発生する可能性がある。
【0009】
そこで、本発明は、内装する回路基板に加えられる応力を軽減するとともに、液密性を高精度に確保する構造を実現して、信頼性高く使用することのできる圧力センサを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する圧力センサの発明の一態様は、測定対象の圧力を検出するセンサがケース内に内装される回路基板に接続される圧力センサであって、前記センサは測定対象の圧力を受けるように圧力室に設置されて、前記回路基板は前記ケース内に封止材を充填されて液密に形成される設置空間に前記センサと外部機器との間に介在するように設置されており、前記回路基板は、外部に引き出されて前記外部機器に接続される被覆接続部材の芯線に導通接続されて、当該被覆接続部材の芯線は前記設置空間の手前まで被覆で覆われていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
このように本発明の一態様によれば、回路基板の実装部品は設置空間内に位置して封止材が接触することを回避することができ、回路基板の実装部品に応力負荷が加わることを未然に防止することができる。また、接続する被覆接続部材は回路基板を設置する設置空間の手前まで被覆で覆われて、芯線は封止材内から設置空間内に導入される、すなわち、リード線の被覆端部が封止材の中に存在していることから、その被覆と芯線との間などから設置空間内に水分が浸入することが未然に防止され、液密性を高精度に確保することができる。したがって、信頼性高く使用することのできる圧力センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る圧力センサを示す図であり、その概略全体構成を示す縦断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第2実施形態に係る圧力センサを示す図であり、その概略全体構成を示す縦断面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態の第1の他の態様を示す図であり、その概略全体構成を示す縦断面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態の第2の他の態様を示す図であり、その概略全体構成を示す縦断面図である。
【
図5】
図5は、本実施形態の第3の他の態様を示す図であり、その概略全体構成を示す縦断面図である。
【
図6】
図6は、本実施形態の第4の他の態様を示す図であり、その概略全体構成を示す縦断面図である。
【
図7】
図7は、本実施形態の第5の他の態様を示す図であり、その概略全体構成を示す縦断面図である。
【
図8】
図8は、本実施形態の従来技術を示す図であり、その概略全体構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係る圧力センサを説明する図である。
【0014】
<第1実施形態>
図1において、圧力センサ100は、圧力センサチップ(センサ)11が設置されている圧力センサユニット10を、例えば冷凍サイクルにおいて冷媒の圧力を測定するためにユニット中の冷媒配管に取付け、圧力センサチップ11の検出する圧力情報を冷凍サイクルを制御する制御装置である外部機器Aに出力するように作製されている。本実施形態の圧力センサ100は、円筒形状に形成されている金属製の防水ケース20を備える圧力センサユニット10を、例えば、圧力を検出する気体や液体などの流体が導かれる測定対象の配管に金属製の継手部材30で連結することにより接続可能に構築されている。
【0015】
ここで、防水ケース20は、圧力センサユニット10のセンサチップ11を収容する肉厚の円筒形状の金属製のハウジング12の一端面側に被せて溶接などすることで固定されており、そのハウジング12の他端面側には、継手部材30の固定されている円盤形状の金属製のキャップ28の周縁部が溶接などされて連結されている。この継手部材30は、圧力測定対象の配管などにねじ止め可能に雌ねじ30sが形成されており、その雌ねじ30s内に連通するポート30aを介して、配管から矢印P方向に供給される流体を、キャップ28、ハウジング12及び後述のダイヤフラム32で囲まれた空間である圧力室PRに導入することを実現している。ここで、防水ケース20、ハウジング12およびキャップ28は、外周縁部がTIG溶接、プラズマ溶接、レーザ溶接等により外側から溶接されて所望の接合強度で一体化されている。
【0016】
ハウジング12は、圧力センサチップ11が一端側に設置される支柱13を内筒内中心に位置するように配置されて、このハウジング12内面と支柱13外面との間に充填されて閉塞状態を確保しつつ内部を貫通する部材を液密に固定するハーメチックガラス14が形成されている。
【0017】
この圧力センサユニット10では、ハウジング12の下端面に金属製のダイヤフラム32が接合固定されている。ダイヤフラム32は、キャップ28側に気密な圧力室PRを形成しつつ、ハウジング12内の支柱13側の圧力センサチップ11の設置空間を圧力室PRから隔絶させている。
【0018】
そして、この圧力センサユニット10では、ハウジング12の内筒内におけるハーメチックガラス14とダイヤフラム32とにより形成される圧力センサチップ11の設置空間に、例えば、圧力伝達媒体として所定量のシリコーンオイル(フッ素系不活性液体などでもよい)が充填されて液封室LRとして機能するようになっている。
【0019】
これにより、圧力センサチップ11は、継手部材30を連結された配管から圧力室PR内に導入された検出対象の流体の圧力を、ダイヤフラム32を介して液封室LR内の圧力伝達媒体の圧力変動として検出する圧力センサとして機能する。すなわち、本実施形態の圧力室PRは、液封室LRを備える構造に構築されており、継手部材30から導入される測定対象の流体圧力を圧力センサチップ11で検出可能にする構造に作製されている。なお、圧力室としては、液封室を備えることなく、測定対象の流体圧力を直接センサチップに負荷して測定するようにしてもよく、また、その測定対象は、液体に限らず、各種ガスなどの気体や微細な流体粒の含まれるミスト状の気体であってもよいことは言うまでもない。
【0020】
ここで、圧力センサチップ11は、外部機器Aからの複数のリード線(被覆接続部材)38のそれぞれに、後述する回路基板50を介して接続されているリードピン(ピン部材)40とボンディングワイヤ11wを介して導通接続させることにより電源供給されるとともに、検出信号を圧力情報として出力するように設置されている。また、ハウジング12の内筒内におけるハーメチックガラス14とダイヤフラム32との間の液封室LRには、オイル充填用パイプ44を介して圧力伝達媒体が充填されるようになっている。これらリードピン40およびオイル充填用パイプ44は、支柱13を中心に同一円状に等間隔で整列し、ハーメチックガラス14などの絶縁物を介して、ハウジング12とは絶縁して支持されている。なお、オイル充填用パイプ44は、一方の端部を圧力伝達媒体の充填後に閉塞される。
【0021】
ここで、ダイヤフラム32は、ハウジング12の下端面に、複数の連通孔34aを有するダイヤフラム保護カバー34が接合固定されることにより、外力や圧力室PR内への急激な圧力によって損傷してしまうことが未然に防止されるようになっている。また、ハーメチックガラス14の一端側に凹形状のフレーム16が固定されて蓋状のシールド板17が取り付けられており、フレーム16はシールド板17に形成されて急激な圧力変動を抑制する連通孔17aを介して圧力センサチップ11側とダイヤフラム32側との間で圧力伝達媒体を流動自在に収容している。
【0022】
リードピン40は、電源用端子2本と、出力信号用端子1本と、組み立て時に使用する調整用端子5本が配列されてボンディングワイヤ11wを介して圧力センサチップ11に電気的に接続されており、これらリードピン40は、ハウジング12の一端面側から突出するようにハーメチックガラス14に固定支持されている。
【0023】
このハウジング12の一端面側には、短尺な概略円筒形状に形成された樹脂製のスペーサ24の一端部を防水ケース20の一端側開口側から嵌め込み、スペーサ24の一端部がハウジング12一端面に当接しているとともに、スペーサ24の他端側開口側には蓋部材(空間形成部材)25が閉塞するように固定されている。この構造により、リードピン40およびリード線38を接続する回路基板50の設置空間SRを備える圧力センサユニット10が構築されている。なお、圧力センサユニット10の防水ケース20内は、ウレタン系樹脂などの封止材26が充填されることにより回路基板50の設置空間SRが防水処理されつつ固定されており、この回路基板50は、リードピン40とリード線38の芯線Cとにはんだ付けされて位置決め支持されている。なお、回路基板50は、外周端部の一部などが接着剤などでスペーサ24の内面に補助するように固定してもよい。
【0024】
ここで、防水ケース20内のハウジング12、スペーサ24および蓋部材25により形成される設置空間SRに回路基板50を配置することにより、回路基板50の周囲に熱伝導率の低い空気層を形成することができ、圧力センサ周囲や配管からの温度変化が急激に回路基板50に伝わることを防ぐことができる。また、回路基板50自体や、回路基板50に搭載されている実装部品が封止材26と接触しないように配置することで、周囲温度変化に伴う封止材26の収縮、膨張による機械的応力が、接続部材、実装部品、特にこれらのはんだ付け部分に作用することを防ぐことができる。
【0025】
そして、このリードピン40は、両端部がハウジング12の内筒内におけるハーメチックガラス14の両面側に貫通して、液封室LR側である一端側にはボンディングワイヤ11wを介して圧力センサチップ11が導通接続されるとともに、電源用端子と出力信号用端子に該当するリードピン40の他端側は、回路基板50の複数個所の貫通穴(不図示)を蓋部材25に向かう方向に貫通してはんだ付けなどされて導通接続されている。
【0026】
また、外部機器Aに接続可能に引き出されるリード線38は、蓋部材25を貫通する貫通穴25hを芯線Cが貫通した後に、さらに回路基板50の一か所で貫通する貫通穴(不図示)をハウジング12に向かう方向に貫通してはんだ付けなどされて導通接続されている。この回路基板50に接続するリード線38は、設置空間SRを形成する蓋部材25の手前まで芯線C周りの被覆38cを剥いだ状態で封止材26内に埋設(モールド)されており、その芯線Cおよび被覆38cの間、すなわち、境界領域である被覆端部まで封止材26を存在させて確実に液密に封止するように作製されている。ここで、回路基板50には、組み立て作業可能に適宜に貫通穴などが開口されており、例えば、オイル充填用パイプ44の挿通孔(不図示)も開口されている。なお、リードピン40やリード線38の接続は、はんだなどの溶融金属だけでなく、例えば、導電性材料を含む接着剤等を塗布するようにしてもよいことは言うまでもない。また、上述のように、はんだ付けや導電性接着剤での導通接続の他に、溶接(例えば、レーザ等でのスポット溶接)などにより導通接続してもよく、溶接の手段としては特に限定する必要もない。
【0027】
ここで、回路基板50は、圧力センサチップ11と外部機器Aとの間に直列に介在して回路構成の一部として機能するようになっており、本実施形態においては、圧力センサチップ11および外部機器Aの異なる入出力電圧を調整するなど、例えば、外部機器Aの入力電圧DC12VやDC3.3Vを圧力センサチップ11の動作電圧DC5Vにするなど入出力電圧の変換調整回路が搭載されている。この種の変換調整回路は本実施形態に限らず、本実施形態とは異なる駆動・出力電圧の電圧出力形式、または2線式/3線式等の電流出力形式、あるいはデジタル出力形式など、様々な駆動電圧や圧力検出信号の信号方式に対応するための任意の変換調整回路である。なお、これらの変換調整回路は、図示されてはいない複数の電子部品が実装されることにより構成されている。
【0028】
このように、本実施形態の圧力センサ100にあっては、センサチップ11と外部機器Aとの間に直列に接続して介在させる回路基板50を、封止材26が充填されて液密に封止されるケース20内の設置空間SR内に収容する。したがって、圧力センサ100では、スペーサ24および蓋部材25がハウジング12の一端面側に形成する設置空間SR内に位置する回路基板50は、作製時において溶融する高温樹脂の封止材26が直接接触する機械的負荷が、また使用時などにおける温度変化に応じた構成材料の線膨張係数の相違による伸縮度差に起因する熱応力が基板自体や実装部品に応力負荷として加えられてしまうことを未然に防止することができる。
【0029】
さらに、この圧力センサ100では、その回路基板50に接続するリード線38の被覆38cが設置空間SRを形成する蓋部材25の手前で剥がれており、そのリード線38の芯線Cが蓋部材25を貫通して導通接続されている。したがって、リード線38の芯線Cが撚線だとしても、その被覆38cの端部は設置空間SR外で封止材26内に埋設することができ、芯線C周りに伝わる水分が存在したとしても回路基板50側に浸入してしまうことを未然に防止することができる。また本形態では、芯線Cは蓋部材25の貫通穴25hを挿通させているが、さらに芯線Cと蓋部材25の貫通穴25hとの間に接着剤を塗布してもよい。芯線Cは撚線であるため内部に微小な隙間を生じていることがある。そのため、貫通穴25hに接着剤を塗布することにより微小な隙間を封止して固定することで、封止材26と接着剤により二重のシール構造とすることができる。そうすることにより、大気中の水分がリード線38の芯線C内部の微小な空間を伝わり、設置空間SR内に浸入してしまうことをさらに防止することができる。
【0030】
この結果、圧力センサ100は、回路基板50やリードピン40などの存在する設置空間SRの液密性を高精度に確保することができ、結露による短絡やマイグレーションなどが発生することを抑制して信頼性高く使用することができる。
【0031】
<第2実施形態>
次に、
図2は本発明の第2実施形態に係る圧力センサを説明する図である。ここで、本実施形態は上述実施形態と略同様に構成されていることから同様の構成には同一の符号を付して詳細な説明を割愛し特徴部分を説明する(以下で説明する他の形態においても同様)。
【0032】
図2において、圧力センサ100は、上述実施形態のスペーサ24に代えて、有底の円筒形状に形成されている樹脂製のスペーサ124が、防水ケース20の一端側開口側から嵌め込まれて底部124bがハウジング12の一端面側に当接して固定されており、そのスペーサ124の他端側開口側に蓋部材25が固定されて、リードピン40およびリード線38を接続する回路基板50の設置空間SRを備える圧力センサユニット10が構築されている。
【0033】
ここで、この圧力センサ100では、スペーサ124の円筒内中段の内面に段差124aが形成されており、そのスペーサ124の段差124aに回路基板50の周縁端部を載置する状態で組み立てた後に、ハウジング12の反対側開口を蓋部材25で蓋をして封止材26を充填することで、回路基板50の設置空間SRを液密構造に作製する。
【0034】
そして、圧力センサ100では、上述実施形態のリード線38の芯線Cに代えて、蓋部材25の貫通穴25hを貫通するコンタクトピン(外部接続部材)126の一端部が、回路基板50の貫通穴をハウジング12に向かう方向に貫通してはんだ付けなどされて導通接続されており、リード線38の被覆端部より突出した芯線Cは、そのコンタクトピン126の他端部にはんだ付けなどされて導通接続されている。
【0035】
このため、外部機器Aに接続可能に引き出されるリード線38は、設置空間SRを形成する蓋部材25の手前まで芯線C周りの被覆38cを剥いだ状態でコンタクトピン126に接続されて封止材26内に埋設されている。その芯線Cおよび被覆38cの端部は封止材26により液密に封止されている。
【0036】
このように、本実施形態の圧力センサ100にあっては、リード線38が蓋部材25を貫通するコンタクトピン126を介して回路基板50に接続されており、リード線38の被覆38cを剥がれた芯線Cは設置空間SRを形成する蓋部材25の手前でコンタクトピン126に導通接続されている。したがって、この圧力センサ100でも、上述実施形態と同様の作用効果を得ることができ、設置空間SRの液密性を高精度に確保して信頼性高く使用することができる。なお、本実施形態においても上述第1実施形態と同じく、コンタクトピン126の蓋部材25の貫通穴25hの挿通部において接着剤を塗布してもよい。貫通穴25hにはコンタクトピン126挿通の為の微小な隙間を生じていることがある。そのため、貫通穴25hに接着剤の塗布により微小な隙間を封止して固定することができるので、封止材26と接着剤により二重のシール構造とすることができる。そうすることにより、大気中の水分がコンタクトピン126と貫通穴25hとの微小な空間を伝わり、設置空間SR内に浸入してしまうことをさらに防止することができる。
【0037】
<第1の他の形態>
上述実施形態の第1の他の態様の圧力センサ100としては、
図3に示すように、上述実施形態における金属製の防水ケース20に代えて、設置空間SRの外方だけでなく、ハウジング12の外周面全体から継手部材30側に向かってキャップ28を超える位置まで延長されている概略円筒形状に形成されている樹脂製の防水ケース220を備えている。
【0038】
この圧力センサ100では、ハウジング12に防水ケース20やキャップ28を溶接して液密性を確保するのに代えて、樹脂製の防水ケース220で全体を覆って圧力センサユニット10の液密性を確保しており、封止材26が防水ケース220の一端側の蓋部材25の外側に充填されるのに加えて、防水ケース220の他端側のキャップ28の外側にも封止材226が充填されてハウジング12との間を液密にされている。
【0039】
<第2の他の形態>
上述実施形態の第2の他の態様の圧力センサ100としては、
図4に示すように、上述の他の態様における防水ケース220に代えて、概略円筒形状の樹脂製の防水ケース320が取り付けられており、上述の第1の他の態様と同様に、その防水ケース320の一端側および他端側の蓋部材25やキャップ28の外側に封止材26、226が充填されて液密性が確保されている。
【0040】
この圧力センサ100では、上述のスペーサ124に代えて、その段差124aの位置(高さ)で一端側開口側を省略した有底の円筒形状に形成されている樹脂製のスペーサ324がハウジング12の一端面側に底部324bを当接させて固定されており、そのスペーサ324の一端側開口側にリードピン40およびリード線38を接続する回路基板50が固定されている。
【0041】
そして、防水ケース320は、ハウジング12と略同一の外形を有する蓋部材325を取り付け可能に形成されており、そのハウジング12の外周面全体を覆う箇所と蓋部材325の外周端部を覆う箇所との間に縮径されている小径領域320rが形成されている。この構造により、防水ケース320は、小径領域320rの両端側でハウジング12と蓋部材325とが接近することを制限することにより、互いの離隔間隔を確保して回路基板50を設置する設置空間SRを確保するようになっている。なお、コンタクトピン126は、同様に、蓋部材325の貫通穴325hを貫通して回路基板50に導通接続されている。
【0042】
要するに、この防水ケース320は、スペーサ24、124、224を用いることなく、小径領域320rの一端側の段差320aにハウジング12の外周端を突き当てるとともに、他端側の段差320bに蓋部材325の外周端を突き当てて組み立てることで回路基板50を設置可能な設置空間SRを形成している。
【0043】
<第3の他の形態>
上述実施形態の第3の他の態様の圧力センサ100としては、
図5に示すように、上述の他の態様における防水ケース320に代えて、2部品で樹脂製の防水ケース420A、420Bが取り付けられている。
【0044】
防水ケース420Aは、上述の防水ケース320の小径領域320rの段差320aの位置で蓋部材325を一体に形成したキャップ形状に形成されており、それぞれに対応する段差420a、小径領域420r、および蓋形状部420cを備えている。防水ケース420Bは、防水ケース420Aの小径領域420rを収容する内径を有し、リード線38側まで延長されて封止材26を充填する空間を確保している。
【0045】
要するに、この防水ケース420A、420Bは、スペーサ24、124、224や蓋部材25を用いることなく、小径領域420rの一端側の段差420aにハウジング12の外周端を突き当てるだけで回路基板50を設置可能な設置空間SRを形成するとともに、防水ケース420Aの小径領域420rに防水ケース420Bを装着して構築されている。この防水ケース420A、420Bは、防水ケース420Aの開口側に封止材226を充填してハウジング12とキャップ28との間を液密に封止するとともに、防水ケース420Bの開口側に封止材26を充填して、リード線38の被覆端部が封止材26に埋設するように設置することにより液密性を確保することができる。
【0046】
ここで、この圧力センサ100では、上述の蓋部材25と同様に、回路基板50に接続されてリード線38の芯線Cに導通接続するコンタクトピン126を貫通する貫通穴420hが防水ケース420Aの蓋形状部420cに形成されており、その防水ケース420A内に形成する設置空間SR内にリードピン40とコンタクトピン126との双方にはんだ付けされて導通接続されることで回路基板50は中空に位置決め支持されている。
【0047】
<第4の他の形態>
上述実施形態の第4の他の態様の圧力センサ100としては、
図6に示すように、上述態様における蓋部材25などに代えて、円筒形状のスペーサ324に加えて、有底の円筒形状の樹脂製のスペーサ524を天地逆向きにしてキャップの形態で防水ケース20内に嵌め込んで、ハウジング12の一端面側との間に回路基板50を設置する設置空間SRを形成するようになっている。すなわち、スペーサ524は、外周壁部524sが封止材26の侵入を防止するスペーサ24として機能するとともに、底部524bが蓋部材25の蓋形状部として機能することにより回路基板50などを設置可能な設置空間SRを形成して確保するように形成されている。
【0048】
そして、スペーサ524には、回路基板50に導通接続されているコンタクト部材531を内部に位置させるコネクタハウジング533が底部524bに一体成形されており、このコンタクト部材531およびコネクタハウジング533により雄タイプのコネクタ530が構成されている。このコンタクト部材531は、コネクタハウジング533と一体のスペーサ524の底部524bの貫通穴524hを貫通して回路基板50に導通接続されており、そのスペーサ524の外側には、上述実施形態と同様に、防水ケース20の一端側開口側に封止材26が充填されて液密性が確保されている。
【0049】
この構造により、圧力センサユニット10は、雄タイプのコネクタ530を備えて、リード線38の一端部に接続されている不図示の雌タイプのコネクタをコネクタハウジング533内に差し込むことで、コンタクト部材531およびリード線38を介して回路基板50に外部機器Aを接続可能に作製されている。
【0050】
すなわち、圧力センサユニット10は、リード線38の芯線Cを回路基板50などの設置空間SR内に位置させることなく、そのリード線38の被覆38cを設置空間SRの外側で剥いで、雄タイプのコネクタ530に接続する雌タイプのコネクタ側に接続する構造にすることができ、リード線38から水分が設置空間SR内に浸入してしまうことはない。なお、本形態においても、コンタクト部材531と貫通穴524h挿通部において接着剤を塗布してもよい。貫通穴524hにはコンタクト部材531の挿通の為の微小な隙間が空いていることがある。そのため、貫通穴524hに接着剤と塗布することにより微小な隙間を封止して固定することで、封止材26と接着剤とにより二重のシール構造とすることができる。そうすることにより、リード線38の芯線Cを伝わってきた大気中の水分が設置空間SR内部に浸入してしまうことをさらに防止することができる。
【0051】
<第5の他の形態>
上述実施形態の第5の他の態様の圧力センサ100としては、
図7に示すように、上述の実施態様における有底の円筒形状のスペーサ124よりも小径に形成されてハウジング12の一端面側に固定される樹脂製のスペーサ624を備えており、そのスペーサ624の開口側に空間キャップ625を被せて閉塞することで回路基板50を設置する設置空間SRを備える圧力センサユニット10が構築されている。この圧力センサユニット10は、ハウジング12の外周面より大径に形成されて、他端面側のキャップ28を嵌め込んで反対側の空間キャップ625の閉塞端部付近まで延長されている概略円筒形状の防水ケース520内に、ハウジング12の外周側から空間キャップ625まで封止材626を充填することにより、設置空間SR周りの液密性を確保するようになっている。
【0052】
スペーサ624は、底部624bを貫通するリードピン40と設置空間SR内の回路基板50との間に側壁部624sの外方側面から両コンタクト部材636の端子片636a、636bが挿通され、挿通部分を端子固定用接着剤により固定する。その後、リードピン40と端子片636a、回路基板50と端子片636bを導通接続することによって、圧力センサチップ11を回路基板50に接続することを可能に構築されている。また、同様に、スペーサ624は、両コンタクト部材636の反対側の側壁部624sの外方側面から片コンタクト部材637の端子片637aを挿通し、挿通部分を端子固定用接着剤により固定する。その後、回路基板50と端子片637aとを導通接続するとともに、その片コンタクト部材637の側壁部624sの外面に位置する平面部637fに、リード線38の被覆端部より突出するように被覆38cを剥いだ芯線Cをはんだ付けして導通接続するようになっている。このようにコンタクト部材636、637をスペーサ624に接着剤で固定することにより、各端子片のスペーサからの脱落防止、挿通位置のずれ防止になっている。導通接続後、接続部分及びリード線38の被覆端部が封止されるよう、防水カバー20内部に封止材626を充填する。この構造により、この他の態様においても、圧力センサチップ11はリードピン40や回路基板50がコンタクト部材636、637を介してリード線38に直列に導通接続されている。
【0053】
すなわち、この他の態様では、外部機器Aに接続可能に引き出されるリード線38が設置空間SRの外側で片コンタクト部材637に接続されており、その被覆38cが剥がされている芯線Cおよびリード線38の被覆端部は封止材626内に液密に埋設されている。さらに、スペーサ624から一旦封止材626内を迂回するように構成される両コンタクト部材636を介して設置空間SR内でリードピン40と導通接続している。この結果、この圧力センサ100は、回路基板50やリードピン40などの存在する設置空間SRの液密性を高精度に確保することができ、結露による短絡やマイグレーションなどが発生することを抑制して信頼性高く使用することができる。また、側壁部624sの端子片636a、636b、637aの挿通部には、該端子片が挿通できる程度の微小な隙間が形成されていることがある。本形態におけるコンタクト部材636、637の固定の為の接着剤の塗布量は、挿通部の隙間を完全に閉塞する程度の塗布量としても良い。こうすることによりコンタクト部材636、637に接着剤の塗布により微小な隙間を封止して固定することができるので、封止材626と接着剤とにより二重のシール構造とすることができる。そうすることにより、大気中の水分が設置空間SR内部に浸入してしまうことをさらに防止することができる。
【0054】
本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらすすべての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、各請求項により特定される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、すべての開示されたそれぞれの特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画され得る。
【符号の説明】
【0055】
10……圧力センサユニット
11……圧力センサチップ
20、220、320、420A、420B、520……防水ケース
24、124、324、624……スペーサ
25、325……蓋部材
26、226、626……封止材
30……継手部材
38……リード線
38c……被覆
40……リードピン
44……オイル充填用パイプ
50……回路基板
100……圧力センサ
126……コンタクトピン
524……スペーサ
530……コネクタ
531……コンタクト部材
625……空間キャップ
636……両コンタクト部材
637……片コンタクト部材
A……外部機器
C……芯線
SR……設置空間