(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176840
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】粘着テープ並びにそれを用いたワイヤーハーネス
(51)【国際特許分類】
C09J 7/50 20180101AFI20241212BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20241212BHJP
C09J 107/00 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
C09J7/50
C09J7/38
C09J107/00
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095665
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】高橋 尚弥
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA05
4J004AB01
4J004BA03
4J004CA04
4J004CB03
4J004CC02
4J004CD02
4J004CE01
4J004EA06
4J004FA08
4J040BA202
4J040CA011
4J040DF041
4J040DF051
4J040JA01
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA26
4J040KA29
4J040KA31
4J040LA05
4J040LA06
4J040MA10
4J040MB03
4J040NA19
4J040PA23
4J040PB15
(57)【要約】
【課題】テレスコープ現象やテープ側面のベタツキの発生を抑制し、かつ、粘着力に優れた粘着テープ並びにそれを用いたワイヤーハーネスを提供する。
【解決手段】粘着テープ1は、オレフィン樹脂を含有する基材2と、基材2の一方の面に配置される下塗り層3と、下塗り層3における、基材2とは反対側の面に配置され、アクリル樹脂を含有し、厚さが5μm以上20μm以下の粘着層4と、を備え、自背面粘着力は1.0N/10mm以上3.0N/10mm以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン樹脂を含有する基材と、
前記基材の一方の面に配置される下塗り層と、
前記下塗り層における、前記基材とは反対側の面に配置され、アクリル樹脂を含有し、厚さが5μm以上20μm以下の粘着層と、を備え、
自背面粘着力は1.0N/10mm以上3.0N/10mm以下である、粘着テープ。
【請求項2】
前記下塗り層は、天然ゴムとメタクリル酸メチルとがグラフト共重合したグラフト重合物を含有する、請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記粘着層は、さらに天然ゴムを含有する、請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の粘着テープを備えるワイヤーハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープ並びにそれを用いたワイヤーハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤーハーネスに使用される電線結束や保護用のテープは、地球環境対策を考慮して、ポリ塩化ビニルテープに代えてハロゲンフリーテープが使用されている。従来のハロゲンフリーテープには、耐熱性及び柔軟性を重視して、オレフィン樹脂が使用されている。
【0003】
ハロゲンフリーテープの基材加工方法においては、生産量増大が可能なカレンダー加工が多く採用されてきた。本加工は、基材に滑剤を添加することで、生産時にシーティングしたフィルムがロールへの張り付くことを抑え、基材厚みの精度を高めている。特許文献1では、滑剤を含有するポリオレフィン基材を備える粘着テープが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、基材表面に滑剤がブルームし、粘着力が低下するため、粘着層を厚くして端末剥がれの発生を防ぎ、粘着力を確保する必要がある。一方で、粘着層を厚くすると、粘着テープにテレスコープ現象(巻装したテープの中央がせり上がり、わん状に変形する現象)が発生しやすく、さらにテープの側面のベタツキが多くなりやすいという課題がある。
【0006】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして、本発明の目的は、テレスコープ現象やテープ側面のベタツキの発生を抑制し、かつ、粘着力に優れた粘着テープ並びにそれを用いたワイヤーハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様に係る粘着テープは、オレフィン樹脂を含有する基材と、基材の一方の面に配置される下塗り層と、下塗り層における、基材とは反対側の面に配置され、アクリル樹脂を含有し、厚さが5μm以上20μm以下の粘着層と、を備え、自背面粘着力は1.0N/10mm以上3.0N/10mm以下である。
【0008】
本発明の他の態様に係るワイヤーハーネスは、粘着テープを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、テレスコープ現象やテープ側面のベタツキの発生を抑制し、かつ、粘着力に優れた粘着テープ並びにそれを用いたワイヤーハーネスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係る粘着テープを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて本実施形態に係る粘着テープについて詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0012】
本実施形態に係る粘着テープ1は、オレフィン樹脂を含有する基材2と、基材2の一方の面に配置される下塗り層3と、下塗り層3における、基材2とは反対側の面に配置される粘着層4と、を備える。
【0013】
[基材]
基材2は、オレフィン樹脂を含有する。オレフィン樹脂は、特に限定されないが、低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロレン、ポリブテン、ポリメチルペンテンからなる群より選択される少なくとも一種を用いることができる。柔軟性及び耐熱性の観点から、オレフィン樹脂は、モノマーとしてプロピレンを含むプロピレン系樹脂(単独共重合体または共重合体)であることが好ましく、特に、プロピレン-エチレン共重合体が好ましい。
【0014】
基材2の厚さは、特に限定されないが、30μm~200μmであることが好ましく、60μm~120μmであることがより好ましい。基材2の厚さを30μm以上とすることにより、粘着テープ1の引張強度を向上させることができる。また、基材2の厚さを200μm以下とすることにより、粘着テープ1を電線などに巻き付けた際に生じるシワの発生を抑制することができる。
【0015】
基材2には、オレフィン樹脂の他、本実施形態の効果を妨げない範囲で種々の添加剤を適量配合することができる。添加剤としては、タルク、軟化剤、酸化防止剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、老化防止剤、銅害防止剤、難燃剤等を添加することができる。
【0016】
基材2の成形方法は、特に限定されないが、例えば、Tダイから押出した樹脂を延伸してシート状に成形する方法によって成形することができる。基材2は、未延伸フィルム、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルム等、いずれであってもよいが、強度の観点から縦及び横の双方に延伸された二軸延伸フィルムであることが好ましい。
【0017】
従来のカレンダー加工では、基材に滑剤を添加することで、生産時にシーティングしたフィルムがヒートロールへ張り付くことを抑える必要があった。しかしながら、基材2はTダイ加工により成形可能であり、冷却ロールであるため、基材2に滑剤を添加する必要はない。そのため、基材2の表面に滑剤がブルームすることによる粘着力の低下はないため、後述の粘着層4の厚さを抑えることが可能になる。
【0018】
[下塗り層]
下塗り層3は基材2の一方の面に配置される。本実施形態においては、下塗り層3を基材2の一方の面に配置することによって、粘着層4の成分が基材2に移行するのを防止し、粘着テープ1の変色を抑制することができる。なお、下塗り層3は基材2に接するように配置してもよく、下塗り層3と基材2との間に他の層を設けてもよい。
【0019】
下塗り層3には、樹脂成分を含有させることが好ましい。下塗り層3に用いられる樹脂成分としては、特に限定されないが、天然ゴム、合成ゴム、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エステル樹脂及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも一種を用いることができる。
【0020】
下塗り層3に用いられる天然ゴムは、へベアブラジリエンシスの樹皮に切り付けを行うことによって流出するラテックスを精製して凝固乾燥させたものであり、主としてcis-1,4-ポリイソプレンを含む。また、天然ゴムは、天然ゴムと、(メタ)アクリル酸、スチレン、アクリロニトリルなどのモノマーとがグラフト共重合したグラフト重合物を用いてもよい。粘着テープ1の粘着性の観点から、天然ゴムとメタクリル酸メチル(MMA)とがグラフト共重合したグラフト重合物を用いることが好ましい。
【0021】
下塗り層3に用いられる合成ゴムは、特に限定されないが、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエン共重合ゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン-プロピレンゴム(EPM)、及びエチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)からなる群より選択される少なくとも一種を用いることができる。また、合成ゴムは、合成ゴムと、(メタ)アクリル酸、スチレン、アクリロニトリルなどのモノマーとがグラフト共重合したグラフト重合物を用いてもよい。粘着テープ1の粘着性の観点から、スチレン-ブタジエン共重合ゴム(SBR)とメタクリル酸メチル(MMA)とがグラフト共重合したグラフト重合物を用いることが好ましい。
【0022】
下塗り層3に用いられるウレタン樹脂は、ウレタン結合を有する重合体であれば、特に限定されない。ウレタン樹脂は、ポリイソシアネートとポリオールとの重付加反応により得ることができる。
【0023】
ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添キシリレンジイソシアネート(H6XDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)及び水添ジフェニルメタンジイソシアネート(H12MDI)からなる群より選択される少なくとも一種を用いることができる。
【0024】
ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールの少なくともいずれか一方を用いることができる。ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレンエーテルグリコールからなる群より選択される少なくとも一種を用いることができる。ポリエステルポリオールとしては、例えば、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキセンアジペート、ポリエチレンオキサラート、ポリブチレンオキサラート、ポリヘキセンオキサラート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート及びポリヘキセンサクシネートからなる群より選択される少なくとも一種を用いることができる。
【0025】
下塗り層3に用いられるアクリル樹脂は、後述の粘着層4で使用できるものと同様である。
【0026】
下塗り層3の厚さは、特に限定されないが、0.3μm以上2.0μm以下であることが好ましく、0.3μm以上1.0μm以下であることがより好ましい。下塗り層3の厚さをこのような範囲にすることにより、粘着力が良好な粘着テープ1を得ることができる。
【0027】
[粘着層]
粘着層4は、下塗り層3における、基材2とは反対側の面に配置される。粘着層4は下塗り層3の面に接するように配置してもよく、粘着層4と下塗り層3との間に他の層を設けてもよい。
【0028】
粘着層4は、アクリル樹脂を含有する。アクリル樹脂は、特に限定されないが、アクリル酸又は(メタ)アクリル酸エステルモノマーを重合して得られる重合体である。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸エステルはアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルを意味する。(メタ)アクリル酸エステルにおいて、脱水縮合により(メタ)アクリル酸エステルを構成するアルコールとしては、炭素数が1~30の脂肪族アルコールなどを挙げることができる。なお、脱水縮合により(メタ)アクリル酸エステルを構成するアルコールとしては、炭素数が2~20の脂肪族アルコールが好ましい。また、これらのアルコールは、一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0029】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ラウリル及び(メタ)アクリル酸エイコシルからなる群より選ばれる少なくとも一種を用いることができる。
【0030】
アクリル樹脂は、エマルジョン系アクリル樹脂を使用することができる。特に、水性エマルジョン系アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルなどのモノマーを水中で乳化重合させたものであり、有機溶剤に溶解させる必要がないため、揮発性有機化合物(VOC)対策の観点から好ましい。
【0031】
アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルモノマーなどのモノマーと、他のモノマーとの共重合体であってもよい。他のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、スチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、アクリロニトリル及びアクリルアミドからなる群より選択される少なくとも一種を用いることができる。また、後述の粘着付与樹脂を形成するモノマーとの共重合体であってもよい。
【0032】
粘着層4に用いることのできる樹脂成分としては、アクリル樹脂を含有している限り特に限定されないが、ウレタン樹脂、エステル樹脂、エポキシ樹脂、天然ゴム、合成ゴム、粘着付与樹脂、軟化剤及び酸化防止剤からなる群より選択される少なくとも一種をさらに含有させることができる。粘着層4の粘着力を向上させるため、天然ゴム及び粘着付与樹脂を用いることが好ましい。また、粘着層4の柔軟性を向上させるため、軟化剤を用いることが好ましい。さらに、粘着層4の粘着成分の劣化を防止するため、酸化防止剤を用いることが好ましい。
【0033】
粘着層4に用いることのできる天然ゴムは、下塗り層3で使用できるものと同様である。
【0034】
粘着層4に用いることのできる粘着付与樹脂は、特に限定されず、粘着層4の粘着力を向上させるものを使用することができる。粘着付与樹脂としては、例えば、ロジンエステル、テルペンフェノール、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、芳香族系水添樹脂、脂肪族系水添樹脂、クマロン-インデン系樹脂、フェノール系樹脂、スチレン系樹脂からなる群より選択される少なくとも一種を用いることができる。
【0035】
粘着層4に用いることのできる軟化剤は、特に限定されず、粘着層4の柔軟性を向上させるものを使用することができる。軟化剤としては、例えば、スチレン系樹脂や石油系軟化剤等が挙げられ、それぞれ単独で、あるいはこれらを適宜組み合わせて用いることができる。
【0036】
粘着層4に用いることのできる酸化防止剤は、特に限定されず、粘着層4の粘着成分の劣化を防止するものを使用することができる。酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤及びヒドラジン系酸化防止剤からなる群より選択される少なくとも一種を用いることができる。
【0037】
粘着層4は、40質量%以上のアクリル樹脂を含有することが好ましい。アクリル樹脂を40質量%以上とすることにより、エンジンルームのような高温下であっても、粘着テープ1の変色を抑制することができる。また、粘着層4は、粘着性の観点から、0質量%以上20質量%以下の天然ゴムと、40質量%以上70質量%以下のアクリル樹脂とを含有することが好ましい。さらに、粘着層4は、0質量%以上10質量%以下の天然ゴムと、40質量%以上65質量%以下のアクリル樹脂と、10質量%以上25質量%以下の粘着付与樹脂と、を含有することがより好ましい。
【0038】
粘着層4の厚さは、5μm以上20μm以下であり、8μm以上15μm以下であることが好ましい。粘着層4の厚さをこのような範囲とすることにより、粘着力が良好な粘着テープ1を得ることができる。
【0039】
上記の通り、基材2はTダイ加工によって成形可能であり、滑剤を添加する必要がない。そのため、基材2の表面に滑剤がブルームすることによる粘着力の低下がないため、粘着層4の厚さは上記範囲に抑えることができる。そのため、粘着テープ1は、テレスコープ現象やテープ側面のベタツキの発生が起こりにくい。
【0040】
[粘着テープ]
本実施形態の粘着テープ1は、オレフィン樹脂を含有する基材2と、基材2の一方の面に配置される下塗り層3と、下塗り層3における、基材2とは反対側の面に配置される粘着層4と、を備える。
【0041】
粘着テープ1の厚さは、特に限定されないが、35μm~240μmであることが好ましく、60μm~130μmであることがより好ましい。粘着テープ1の厚さを35μm以上とすることにより、引張強度が良好な粘着テープ1を得ることができる。また、粘着テープ1の厚さを240μm以下とすることにより、粘着テープ1を電線などに巻き付けた際に生じるシワの発生を抑制することができる。
【0042】
粘着テープ1の自背面粘着力は、1.0N/10mm以上3.0N/10mm以下であり、1.5N/10mm以上2.4N/10mm以下であることが好ましい。自背面粘着力とは、粘着テープ1の背面、すなわち、基材2の粘着層4とは反対側の面に対する粘着テープ1の粘着力を意味する。粘着テープ1の自背面粘着力をこのような範囲にすることにより、重ね貼りしたときに剥がれにくく、粘着力が良好な粘着テープ1を得ることができる。なお、自背面粘着力は、日本産業規格JIS Z 0237(粘着テープ・粘着シート試験方法)に従って測定することができる。
【0043】
粘着テープ1は、例えば、電線の被覆やワイヤーハーネスの電線結束、電線やワイヤーハーネスの保護などのために用いることができる。
【0044】
このように、本実施形態の粘着テープ1は、オレフィン樹脂を含有する基材2と、基材2の一方の面に配置される下塗り層3と、下塗り層3における、基材2とは反対側の面に配置され、アクリル樹脂を含有し、厚さが5μm以上20μm以下の粘着層4と、を備え、自背面粘着力は1.0N/10mm以上3.0N/10mm以下である。そのため、テレスコープ現象やテープ側面のベタツキの発生を抑制し、かつ、粘着力に優れた粘着テープ1を提供できる。
【0045】
[ワイヤーハーネス]
本実施形態に係るワイヤーハーネスは、上述の粘着テープ1を備えている。上述の粘着テープ1は、テレスコープ現象やテープ側面のベタツキの発生を抑制する効果に優れている。したがって、このような粘着テープを電線に巻いて束ねることで、例えば、自動車用のワイヤーハーネスとして好ましく用いることができる。すなわち、ワイヤーハーネスは、上述の粘着テープを備えることが好ましい。
【実施例0046】
以下、本実施形態を実施例及び比較例によりさらに詳細に説明するが、本実施形態はこれら実施例に限定されるものではない。
【0047】
[実施例及び比較例の試料作製]
<粘着テープの作製>
オレフィン樹脂、酸化防止剤及びタルクを配合し、二軸混練押出機を使用して、温度200℃の条件で溶融混練し、押し出されたストランドを水冷してペレタイザーに通し、ペレットを得た。なお、比較例1については、オレフィン樹脂、酸化防止剤及びタルクに加え、滑剤も合わせて配合してペレットを作製した。
【0048】
このタルク含有のオレフィン樹脂ペレットをTダイフィルム成形機にて、温度200℃の条件で厚さ90μmの基材を作製した。次に、下塗り層の材料を、不揮発分が30質量%となるように水で希釈した溶液を作成した。この溶液を、バーコーターで、乾燥後の膜厚が0.5μmとなるように基材に塗布し、100℃環境下3分で乾燥させて下塗り層を作成した。さらに、粘着層の材料を、不揮発分が55質量%となるように水で希釈した溶液を作製した。この溶液を、乾燥させた下塗り層の上にバーコーターで、乾燥後の膜厚が表1に示す厚さとなるように塗布し、100℃環境下3分で乾燥させて粘着層を作成した。得られた粘着テープのシートを巻芯に巻き付け、粘着テープのロールを作成した。なお、ロールの幅は19mmとなるようにカットし、評価を行った。なお、使用した各成分は、以下のとおりである。
【0049】
(基材)
・オレフィン樹脂:(株)プライムポリマー製、プライムTPO(登録商標)R110E
・酸化防止剤:BASFジャパン(株)製、IRGANOX(登録商標)1010
・タルク:日本タルク(株)製、ミクロエース(登録商標)P-8
・滑剤(比較例1):SOLVAY社製、CYANOX(登録商標)1212
【0050】
(下塗り層)
・天然ゴムとメタクリル酸メチルとがグラフト共重合したグラフト重合物:(株)レヂテックス製、MG-25
【0051】
(粘着層)
・アクリル樹脂(エマルジョン系アクリル樹脂):ムサシノケミカル(株)製、SC-2
・天然ゴム:(株)レヂテックス製、HAラテックス
・粘着付与樹脂:荒川化学工業(株)製、E-726
・軟化剤:荒川化学工業(株)製、KE-799
・酸化防止剤:荒川化学工業(株)製、KE-800
【0052】
[評価]
<自背面粘着力>
JIS Z 0237に準じて、幅19mm、長さ250mmの試料を切取り、自背面に接着して圧着し、残りを180°折り返した上、30分間放置した。その後、引張試験機により300mm/分の速度で180°引き剥がしを行い、このときの引張荷重値を10mm幅換算し、粘着力(N/10mm)を算出した。なお、測定値は、試料5個の結果の平均値とした。
【0053】
<テレスコープ>
(80℃、2時間の加熱後の巻装テープ高さ)-(加熱前の巻装テープ高さ)が、1.0mm未満の場合を「◎」(合格)、1.0mm以上2.0mm以下の場合を「○」(合格)、2.0mmを超えた場合を「×」(不合格)として評価した。
【0054】
<側面ベタツキ>
直径約2mmのガラスビーズを敷き詰め、その上にテープ側面を下にし、重り200gを乗せ、10分放置後、テープに付着した重量を測定し、テープ面積で割った値(g/cm2)を測定した。0.04g/cm2未満の場合を「◎」(合格)、0.04g/cm2以上0.05g/cm2以下の場合を「○」(合格)、0.05g/cm2を超えた場合を「×」(不合格)として評価した。
【0055】
<テープ端末剥がれ>
外径10mmに集束した電線束にテープを巻き付けた後、50℃で1週間放置した。そして、テープ端末部の剥がれた部分の長さを確認した。剥がれた部分の長さが1.0mm未満の場合を「◎」(合格)、1.0以上2.0mm以下の場合を「○」(合格)、2.0mmを超えた場合を「×」(不合格)として評価した。
【0056】
[評価結果]
上述の評価方法により評価した結果を表1に示す。
【0057】
【0058】
表1に示すように、実施例1~4の粘着テープは、基材には滑剤を使用しておらず、粘着層の厚さが5μm以上20μm以下であり、自背面粘着力は1.0N/10mm以上3.0N/10mm以下であった。また、実施例1~4の粘着テープは、テレスコープ、側面ベタツキ及びテープ端末剥がれの評価結果が「◎」又は「○」となり、合格であった。よって、実施例1~4の粘着テープは、テレスコープ現象やテープ側面のベタツキの発生が抑制され、テープ端末が剥がれにくく、粘着力に優れていた。
【0059】
一方、比較例1の粘着テープは、基材には滑剤を使用し、粘着層の厚さが20μmを超えていたため、テレスコープ及び側面ベタツキの評価結果が「×」となり、不合格であった。また、比較例2の粘着テープは、基材に滑剤を使用していないものの、粘着層の厚さが20μmを超えており、自背面粘着力は3.0N/10mmを超えていたため、テレスコープ及び側面ベタツキの評価結果が「×」となり、不合格であった。さらに、比較例3の粘着テープは、基材に滑剤を使用していないものの、粘着層の厚さが5μm未満であり、自背面粘着力は1.0N/10mm未満であったため、テープ端末剥がれの評価結果が「×」となり、不合格であった。
【0060】
以上、本発明を実施例によって説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。