IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 有限会社村吉ガス圧接工業の特許一覧

特開2024-176841ガス圧接用還元材、その加工用工具及びガス圧接工法
<>
  • 特開-ガス圧接用還元材、その加工用工具及びガス圧接工法 図1
  • 特開-ガス圧接用還元材、その加工用工具及びガス圧接工法 図2
  • 特開-ガス圧接用還元材、その加工用工具及びガス圧接工法 図3
  • 特開-ガス圧接用還元材、その加工用工具及びガス圧接工法 図4
  • 特開-ガス圧接用還元材、その加工用工具及びガス圧接工法 図5
  • 特開-ガス圧接用還元材、その加工用工具及びガス圧接工法 図6
  • 特開-ガス圧接用還元材、その加工用工具及びガス圧接工法 図7
  • 特開-ガス圧接用還元材、その加工用工具及びガス圧接工法 図8
  • 特開-ガス圧接用還元材、その加工用工具及びガス圧接工法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176841
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】ガス圧接用還元材、その加工用工具及びガス圧接工法
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/00 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
B23K20/00 330Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095666
(22)【出願日】2023-06-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】398039439
【氏名又は名称】有限会社村吉ガス圧接工業
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【弁理士】
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(72)【発明者】
【氏名】村吉 政勇
【テーマコード(参考)】
4E167
【Fターム(参考)】
4E167AA02
4E167AA03
4E167AA05
4E167BB08
4E167CB02
4E167CB09
4E167DA14
4E167DC05
(57)【要約】
【課題】ガス圧接用還元材を固定側の鋼材等の被圧接材の先端部に装着する際に、各被圧接材の先端面の隙間が狭い状態での被圧接材の先端部への装着を可能にして、先端面の隙間を広く設定しなければならない場合のような隙間の調整作業の煩雑さを軽減することにより、ガス圧接作業を容易に行うことができる、ガス圧接用還元材を提供する。
【解決手段】
ガス圧接用還元材A1は、熱可塑性樹脂製で、被圧接材の圧接側の先端部に対し外嵌め可能なキャップ体1aを備えており、キャップ体1aの胴部10には、キャップ体1aの天板11に沿って所定の厚みで周方向へ被圧接材に嵌め込み可能な幅で切り縁120が設けられ、切り縁120に続けて胴部10の残りの厚み部分に、天板11に対して略直角に裾端部まで切り縁122、123が設けられて、嵌込口部12が形成してある。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被圧接材の先端部に外嵌め可能な樹脂製のキャップ体を備えており、該キャップ体の胴部には、前記被圧接材に側面から嵌め込み可能な嵌込口部が形成してある
ガス圧接用還元材。
【請求項2】
前記嵌込口部は、前記キャップ体の天部に沿って所定の厚みで周方向へ前記被圧接材に側面から嵌め込み可能な幅で切り縁が設けられ、該切り縁に続けて前記胴部の残りの厚み部分に、前記天部に対して所定の角度で、又は所定の形状で裾端部まで切り縁が設けられて形成してある
請求項1記載のガス圧接用還元材。
【請求項3】
被圧接材の先端部に外嵌め可能な樹脂製のキャップ体を備えており、該キャップ体の胴部には、切り離しが可能な脆弱線が、前記被圧接材に側面から嵌め込み可能な嵌込口部を形成可能に設けてある
ガス圧接用還元材。
【請求項4】
前記脆弱線は、前記キャップ体の天部に沿って所定の厚みで周方向へ前記被圧接材に側面から嵌め込み可能な幅で、かつそれに続けて前記胴部の残りの厚み部分を、前記天部に対して所定の角度、又は所定の形状で裾端部まで設けてある
請求項3記載のガス圧接用還元材。
【請求項5】
前記脆弱線は、前記キャップ体の天部に対して略平行に所定の厚みで周方向へ前記被圧接材に側面から嵌め込み可能な幅で、かつその中間部に繋がり、裾端部までを切り離して、前記胴部を開閉することができる開閉口部を形成可能な略T字状に設けてある
請求項3記載のガス圧接用還元材。
【請求項6】
前記被圧接材の先端部に外嵌め可能な樹脂製の第2のキャップ体を備えており、該第2のキャップ体は、その胴部で前記嵌込口部の少なくとも一部を閉塞する状態で前記キャップ体に重ねられている
請求項1又は2記載のガス圧接用還元材。
【請求項7】
前記キャップ体の前記天部に設けられ、前記天部を構成する樹脂材料よりも高温で溶融する樹脂製若しくは金属製のリング体を備える
請求項2、4又は5記載のガス圧接用還元材。
【請求項8】
被圧接材の先端部に外嵌め可能な樹脂製のキャップ体の胴部を加工して、前記キャップ体に前記被圧接材の側面から嵌め込み可能な嵌込口部を形成する加工用工具であって、
受具を有する台部材と、
該台部材に対し、一端部がバネで前記台部材方向へ閉じるように付勢して揺動可能に取り付けられたシーソー部材と、
該シーソー部材に設けてある前記嵌込口部を切り欠く所定形状の切断刃と、
前記受具に設けられた、前記切断刃が収まる刃溝とを備える
加工用工具。
【請求項9】
その先端面が、他方の被圧接材の先端面と所定の隙間を隔てて対面配置された一方の被圧接材に、前記隙間よりも大きな高さを有する樹脂製のキャップ体を、前記一方の被圧接材の側面から嵌め込むことにより、前記一方の被圧接材の先端部に外嵌めして装着する工程と、
前記キャップ体を装着した状態で、前記一方の被圧接材と前記他方の被圧接材の先端面を突き合わせて加熱する工程とを備える
ガス圧接工法。
【請求項10】
前記キャップ体を、前記一方の被圧接材の側面から嵌め込み可能とすべく、
前記装着する工程に先立って、前記キャップ体の胴部に、嵌込口部を形成する工程を備える
請求項9記載のガス圧接工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス圧接用還元材、その加工用工具及びガス圧接工法に関するものである。詳しくは、ガス圧接用還元材を被圧接材の先端部に装着する際に、各被圧接材の先端面の隙間が狭い状態での被圧接材の先端部への装着を可能にして、先端面の隙間を広く設定しなければならない場合のような隙間の調整作業の煩雑さを軽減することにより、ガス圧接作業を容易に行うことができる、ガス圧接用還元材、その加工用工具及びガス圧接工法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋等の鋼材の圧接は、鉛直方向又は水平方向に配した二本の鋼材を、中心軸を共通にして先端面同士を当接させた後、可動側の鋼材に所定の圧力を加えて上限の圧力になったところで当接部分の周りをガスの炎で加熱し、加熱部の温度が塑性変形する温度になると、圧接部が太く変形し、いわゆるコブが形成されて完了する。
【0003】
また、鋼材の圧接においては、多くの場合、より強固な圧接を行うために、ガス圧接用の還元材が使用されている。ガス圧接用の還元材は、二本の鋼材を対向させてガス圧接する際に、接合する端面間に挟み込んで、又は端面の近傍に配して使用されるもので、例えば特許文献1に示すような「ガス圧接用環体を内蔵した環体保持部材」がある。
【0004】
この環体保持部材は、端面と略同形状で鋼材と略同材料で形成されてガス抜き部を有する環体と、底面側に環体が収納される環体設置空間を有する突出部及びそれに連結し鋼材の外形に接触して取付けるための凸部とを有する合成樹脂製の保持容器と、保持容器の環体設置空間に冠着し環体の回転を止める合成樹脂製の蓋体とを備える。
【0005】
従来の環体保持部材は、この構成を有することにより、保持容器内に蓋体で環体の回転を止めることにより、ガス抜き部の位置を所定の位置に確実に設定して、環体の鋼材の端部へのセット作業を極めて簡単かつ安全に行うことができるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-177780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、この環体保持部材は、図1等で表されているように、保持容器が合成樹脂製の薄いシートで形成されており、全体が軽量であるため、屋外で作業をするとき等、突発的な強い風で鋼材の先端部から外れて飛ばされてしまうことがある。或いは、作業者が鋼材の当接部の周りで作業する際に、過って環体保持部材に手袋を引っ掛ける等して、外してしまうこともある。
【0008】
具体的には、従来、環体保持部材を使用して鋼材の圧接を行う際には、まず固定側の鋼材と可動側の鋼材の先端面の隙間の間隔を、環体保持部材の保持容器が通るように、その高さと同等の間隔に設定している。環体保持部材をセットする際には、各鋼材の先端面の隙間から環体保持部材を入れて、固定側の鋼材の先端部に装着し、この環体保持部材の底部を挟むために、圧接機の油圧シリンダーによって可動側の鋼材の先端面を固定側の鋼材の先端面に接近させる。
【0009】
しかし、このタイミングで風が強く吹いたり、或いは作業者が触れてしまったりして、環体保持部材が鋼材の先端部から外れて隙間を通り抜けて落ちてしまうことがある。この場合、環体保持部材が隙間を通り抜けた後も、可動側の鋼材は固定側の鋼材方向へ動くので、その先端面が固定側の鋼材の先端面に当たって先端面間に隙間がない状態となる。
【0010】
そして、環体保持部材を改めて固定側の鋼材の先端部に装着するためには、可動側の鋼材を固定側の鋼材の先端面に当たっている位置から、再度当初の位置まで戻して、各鋼材の先端面の隙間に環体保持部材が通るようにし、その位置で鋼材を一旦固定する作業をしなくてはならない。この各鋼材の先端面の隙間を確保する作業は、非常に手間のかかる面倒な作業であり、特に作業負担が大きくなる、隙間が大きな場合は尚更である。
【0011】
本発明は、以上の点を鑑みて創案されたものであり、ガス圧接用還元材(環体保持部材)を被圧接材(鋼材)の先端部に装着する際に、各被圧接材の先端面の隙間が狭い状態での被圧接材の先端部への装着を可能にして、先端面の隙間を広く設定しなければならない場合のような隙間の調整作業の煩雑さを軽減することにより、ガス圧接作業を容易に行うことができる、ガス圧接用還元材、その加工用工具及びガス圧接工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
〔1〕上記の目的を達成するために、本発明は、被圧接材の先端部に外嵌め可能な樹脂製のキャップ体を備えており、該キャップ体の胴部には、前記被圧接材に側面から嵌め込み可能な嵌込口部が形成してあるガス圧接用還元材である。
【0013】
樹脂製のキャップ体は、鋼材等の被圧接材の先端部に外嵌め可能である。キャップ体は、所定の変形性及び可撓性を有しているので、被圧接材への外嵌めによる装着を容易に行うことができ、寸法を適宜設定しておけば、装着後もその状態を維持することが可能である。
【0014】
また、キャップ体の胴部には、前記被圧接材に側面から嵌め込み可能な嵌込口部が形成してあるので、被圧接材の先端部の隙間が狭い場合でも、ガス圧接用還元材を被圧接材に側面から嵌め込んで装着することができる。なお、被圧接材の先端部の隙間が広い場合にも、先端部に装着して還元材としての使用が可能である。
【0015】
〔2〕本発明のガス圧接用還元材は、前記嵌込口部が、前記キャップ体の天部に沿って所定の厚みで周方向へ前記被圧接材に側面から嵌め込み可能な幅で切り縁が設けられ、該切り縁に続けて前記胴部の残りの厚み部分に、前記天部に対して所定の角度で、又は所定の形状で裾端部まで切り縁が設けられて形成してある構成とすることもできる。
【0016】
この場合は、ガス圧接用還元材は、各被圧接材の圧接側の先端面(圧接面)が、少なくともキャップ体の天部の厚みと同等程度に開いていれば、天部の厚み部分を各被圧接材の先端面の隙間に差し入れて、切り縁により形成され、天部に沿う部分から裾端部へ続く嵌込口部を被圧接材の先端部の側面に嵌め込むようにすれば、被圧接材の先端部に装着することができる。このとき、キャップ体全体の厚みより大幅に薄いキャップ体の天部の厚みと同等幅の隙間に広げるだけで、ガス圧接用還元材の装着が可能になる。
【0017】
〔3〕上記の目的を達成するために、本発明は、被圧接材の先端部に外嵌め可能な樹脂製のキャップ体を備えており、該キャップ体の胴部には、切り離しが可能な脆弱線が、前記被圧接材に側面から嵌め込み可能な嵌込口部を形成可能に設けてあるガス圧接用還元材である。
【0018】
樹脂製のキャップ体は、鋼材等の被圧接材の圧接側の先端部に対して外嵌め可能である。キャップ体は、所定の変形性及び可撓性を有しているので、被圧接材への外嵌めによる装着を容易に行うことができ、寸法を適宜設定しておけば、装着後もその状態を維持することが可能である。
【0019】
また、キャップ体の胴部には、切り離しが可能な脆弱線が、前記被圧接材に側面から嵌め込み可能な嵌込口部を形成可能に設けてあるので、脆弱線で切り離して、不要部分を取り除けば、嵌込口部を形成することができる。これにより、ガス圧接用還元材は、当初の形態とは異なり、胴部に嵌込口部を有するので、上記〔1〕のガス圧接用還元材と同等の作用効果を奏することができる。
【0020】
〔4〕本発明のガス圧接用還元材は、前記脆弱線が、前記キャップ体の天部に沿って所定の厚みで周方向へ前記被圧接材に側面から嵌め込み可能な幅で、かつそれに続けて前記胴部の残りの厚み部分に、前記天部に対して所定の角度、又は所定の形状で裾端部まで設けてある構成とすることもできる。
【0021】
この場合は、脆弱線は、キャップ体の天部に沿って所定の厚みで周方向へ被圧接材に嵌め込み可能な幅で、かつそれに続けて胴部の残りの厚み部分に、天部に対して所定の角度、又は所定の形状で裾端部まで切り欠いた嵌込口部を形成可能に設けてある。
【0022】
これにより、脆弱線の天部に沿う所定の厚みの部分と、胴部の残りの厚みの部分を切り離して、不要部分を取り除けば、天部に沿う部分から胴部の裾端部にかけて、嵌込口部を形成することができる。これにより、ガス圧接用還元材は、当初の形態とは異なり、胴部に嵌込口部を有するので、上記〔1〕のガス圧接用還元材と同等の作用効果を奏することができる。
【0023】
〔5〕本発明のガス圧接用還元材は、前記脆弱線が、前記キャップ体の天部に対して略平行に所定の厚みで周方向へ前記被圧接材に側面から嵌め込み可能な幅で、かつその中間部に繋がり、裾端部までを切り離して、前記胴部を開閉することができる開閉口部を形成可能な略T字状に設けてある構成とすることもできる。
【0024】
この場合は、脆弱線は、キャップ体の天部に対して略平行に所定の厚みで周方向へ前記被圧接材に嵌め込み可能な幅で、かつその中間部に繋がり、裾端部までを切り離して、前記胴部を開閉することができる開閉口部を形成可能な略T字状に設けてある。
【0025】
これにより、本発明のガス圧接用還元材は、脆弱線の天部に対して平行な所定の厚みの部分と、その中間部に繋がり、裾端部までを切り離すことができる部分を切り離して、形成された二枚の開閉片を外側又は内側へ開くことにより、当初の形態とは異なり、天部に沿う部分から胴部の裾端部にかけて開閉口部を形成することができる。
【0026】
このガス圧接用還元材を使用したガス圧接工法では、開閉片を開き、キャップ体に開閉口部を形成する。そして、天部の厚み部分を被圧接材の先端面の隙間に差し入れる。これに伴い、天部に沿う部分から裾端部へ続く開閉口部を固定側の被圧接材の先端部の側面に嵌め込むことができるので、天部を被圧接材の先端部に落とし込めば、装着することができる。
【0027】
〔6〕本発明のガス圧接用還元材は、前記被圧接材の先端部に外嵌め可能な樹脂製の第2のキャップ体を備えており、該第2のキャップ体は、その胴部で前記嵌込口部の少なくとも一部を閉塞する状態で前記キャップ体に重ねられている構成とすることもできる。
【0028】
この場合は、ガス圧接用還元材が、前記被圧接材の先端部に外嵌め可能な樹脂製の第2のキャップ体を備えており、該第2のキャップ体は、その胴部で前記嵌込口部の少なくとも一部を閉塞する状態で前記キャップ体に重ねられている構造である。
【0029】
まず、ガス圧接用還元材は、被圧接材の先端面同士がキャップ体の高さより狭い場合は、二重構造のままでは使用しない。各被圧接材の先端面でガス圧接用還元材のキャップ体の天部を挟む前、つまり間隔が広く開いているときに、ガス圧接用還元材を被圧接材の先端に被せる際は、二重構造のままで被せることができる。これにより、ガス圧接用還元材は、キャップ体の天部を挟む前に多少の風が吹いたりしても、第2のキャップ体の深い胴部の作用で、被圧接材の先端部から外れにくい。
【0030】
そして、各被圧接材の先端面でガス圧接用還元材のキャップ体の天部を挟むまでに、ガス圧接用還元材が外れなかった場合は、挟まれている二重構造のガス圧接用還元材のままで、還元材として使用することができる。なお、ガス圧接用還元材は、キャップ体の天部も二重となるので、還元材としての効果に好影響が期待できる。
【0031】
また、各被圧接材の先端面でガス圧接用還元材のキャップ体の天部を挟むまでに、ガス圧接用還元材が外れてしまった場合は、外れたガス圧接用還元材の第2のキャップ体からキャップ体に嵌込口部を有するガス圧接用還元材を取り外し、このガス圧接用還元材のみを還元材として使用する。その際の作用は、上記〔1〕のガス圧接用還元材と同様であるので、ここではそれを援用し、説明を省略する。
【0032】
なお、第2のキャップ体は、キャップ体に嵌込口部を有するガス圧接用還元材を外した後も、単体のガス圧接用還元材として使用することができるので、例えば通常の有底筒状のガス圧接用還元材として、或いはこの二重構造のガス圧接用還元材の部品として再利用することもできる。
【0033】
〔7〕本発明のガス圧接用還元材は、前記キャップ体の前記天部に設けられ、前記天部を構成する樹脂材料よりも高温で溶融する樹脂製若しくは金属製のリング体を備える構成とすることもできる。
【0034】
この場合は、キャップ体の天部に設けられ、天部を構成する樹脂材料よりも高温で溶融する樹脂製若しくは金属製のリング体を備えるので、圧接作業においては、ガスの炎で加熱されることによって、まず、樹脂製のキャップ体の天部が溶融して燃焼する。
【0035】
そして、まだ溶融していないリング体の内側の、被圧接材の先端面で挟まれた僅かな隙間の中で、天部がごく短時間で溶融し、燃焼して、更に気化し体積が急激に増えることによって、リング体の内側の隙間にあったエアが高い圧力で外へ押し出されると共に、エア中の酸素は高分子の炭素と結びついて炭酸ガスになり、圧接部周りの酸化が抑制される。
【0036】
また、リング体が溶融しないうちは、リング体の内側の隙間へのエアの浸入が遮断されることとも相俟って、隙間内での酸化が抑制され、圧接側の先端面に酸化被膜が生じることを抑制できる。
【0037】
このように、ガス圧接用還元材によれば、被圧接材のガス圧接を行う際に、アセチレンガスより火力が劣る天然ガス、プロパンガス、又は水素ガス等を使用する場合、充分な火力が得られるように初期加熱の段階から標準炎で加熱しても、圧接部に酸化被膜や金属残渣物等の残留物が生じることを抑制できるので、強度が充分な圧接を行うことが可能になる。
【0038】
〔8〕上記の目的を達成するために、本発明は、被圧接材の先端部に外嵌め可能な樹脂製のキャップ体の胴部を加工して、前記キャップ体に前記被圧接材の側面から嵌め込み可能な嵌込口部を形成する加工用工具であって、受具を有する台部材と、該台部材に対し、一端部がバネで前記台部材方向へ閉じるように付勢して揺動可能に取り付けられたシーソー部材と、該シーソー部材に設けてある前記嵌込口部を切り欠く所定形状の切断刃と、前記受具に設けられた、前記切断刃が収まる刃溝とを備える加工用工具である。
【0039】
本発明の加工用工具は、切断刃が設けてあるシーソー部材の一端部を開き、樹脂製のキャップ体の胴部を、キャップ体の内部に挿入した台部材の受具と、胴部の外にあるシーソー部材の一端部を、バネの付勢力を利用して閉じる。これにより、切断刃でキャップ体の胴部が切断され、切断刃が刃溝に収まる。
【0040】
また、胴部の切断が充分でない場合は、台部材の受具とシーソー部材の一端部を、相互に近付く方向へ押さえると、切断刃は胴部を切断し、刃溝に収まる。これにより、キャップ体の胴部は、切断されて、胴部に嵌込口部が設けてあるガス圧接用還元材を作製することができる。
【0041】
〔9〕上記の目的を達成するために、本発明は、その先端面が、他方の被圧接材の先端面と所定の隙間を隔てて対面配置された一方の被圧接材に、前記隙間よりも大きな高さを有する樹脂製のキャップ体を、前記一方の被圧接材の側面から嵌め込むことにより、前記一方の被圧接材の先端部に外嵌めして装着する工程と、前記キャップ体を装着した状態で、前記一方の被圧接材と前記他方の被圧接材の先端面を突き合わせて加熱する工程とを備えるガス圧接工法である。
【0042】
本発明のガス圧接工法によれば、他方の被圧接材の先端面と所定の隙間を隔てて対面配置された一方の被圧接材に、隙間よりも大きな高さを有する樹脂製のキャップ体を、一方の被圧接材の側面から嵌め込むので、隙間がキャップ体の高さより狭くても、一方の被圧接材の先端部に外嵌めして装着することができる。
【0043】
これにより、例えば各被圧接材の先端面の隙間にガス圧接用還元材を改めて装着(再装着)する際にも、鋼材等の各被圧接材の先端面の隙間を大きく広げて煩雑な調整する必要はなく、被圧接材の側面からのガス圧接用還元材の装着が可能になり、作業の煩雑さを大きく軽減することができるので、結果的にガス圧接作業を容易に行うことができる。
【0044】
そして、一方の被圧接材と他方の被圧接材の先端面を突き合わせて加熱することにより、先端面に酸化被膜が生じることを抑止しながら、圧接を強固に行うことができる。すなわち、樹脂製のキャップ体の天部が、各被圧接材の先端面で挟まれた僅かな隙間の中で、ごく短時間で溶融し、燃焼して、更に気化し体積が急激に増えることによって、エアが高い圧力で外へ押し出されると共に、エア中の酸素は高分子の炭素と結びついて炭酸ガスになり、圧接部周りの酸化が抑制される。
【0045】
〔10〕本発明のガス圧接工法は、前記キャップ体を、前記一方の被圧接材の側面から嵌め込み可能とすべく、前記装着する工程に先立って、前記キャップ体の胴部に、嵌込口部を形成する工程を備えるようにしてもよい。
【0046】
この場合は、キャップ体を、一方の被圧接材の側面から嵌め込み可能とすべく、装着する工程に先立って、キャップ体の胴部に、嵌込口部を形成するので、圧接作業を行う際、予め被圧接材の形態に合わせた嵌込口部を備えたキャップ体を有するガス圧接用還元材の準備が可能となるので、圧接作業を効率よく行うことができる。
【発明の効果】
【0047】
本発明は、ガス圧接用還元材を被圧接材の先端部に装着する際に、各被圧接材の先端面の隙間が狭い状態での、被圧接材の先端部への装着を可能にして、先端面の隙間を広く設定しなければならない場合のような隙間の調整作業の煩雑さを軽減することにより、ガス圧接作業を容易に行うことができる、ガス圧接用還元材、その加工用工具及びガス圧接工法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本発明に係るガス圧接用還元材のAタイプの実施形態を示す説明図である。
図2】本発明に係るガス圧接用還元材のBタイプの実施形態を示す説明図である。
図3】本発明に係るガス圧接用還元材のCタイプの実施形態を示す説明図である。
図4】ガス圧接用還元材のAタイプの実施形態の一つの装着方法を示す説明図である。
図5】ガス圧接用還元材のBタイプの実施形態の一つの装着方法を示す説明図である。
図6】ガス圧接用還元材のCタイプの実施形態の装着方法を示す説明図である。
図7】ガス圧接用還元材の変形例を示す説明図であり、(a)はガス圧接用還元材の斜視図、(b)はガス圧接用還元材のA-A断面図である。
図8】本発明の加工用工具の実施形態を示し、(a)は斜視図、(b)は縦断面図である。
図9】加工用工具の使用方法を示し、(a)は断面説明図、(b)はキャップ体における切断線を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1乃至図9を参照して、本発明の実施の形態を更に詳細に説明する。なお、以下のガス圧接用還元材の説明では、三つのタイプ(A、B、C)に分けて説明する。Aタイプは、嵌込口部を予め設けたもの、Bタイプは脆弱線を設けて嵌込口部と開閉口部が形成できるようにしたもの、Cタイプは嵌込口部を予め設けたものと有底筒状のキャップ体を重ねたものである。
【0050】
(Aタイプ)
図1(a)に示すガス圧接用還元材A1は、キャップ体1aを有している。キャップ体1aは、熱可塑性樹脂であるポリスチレン樹脂製のシートで作られている。キャップ体1aの胴部10(筒の部分)は、やや裾広がりの円筒形状のものをベースとして加工したものであり、図1(a)で上端部は円形の天板11で塞がれている。
【0051】
また、胴部10には、天板11に沿って所定の厚みとなるように周方向へ、後述する被圧接材91(図4乃至図6参照)に嵌め込み可能な幅で切り縁120が設けられている。切り縁120と天板11で形成される厚み部分は部分円筒形状であり、この部分も被圧接材91の先端部に外嵌めされたときに脱落を防ぐ嵌合部121となっている。
【0052】
そして、切り縁120の両端部に続けて胴部10の残りの厚み(高さ)部分に、それぞれ天板11に対して略直角方向に切り縁122、123が設けられて、切り縁がコ字状の嵌込口部12が形成してある。キャップ体1aの裾部には、全長にわたりやや径大のフランジ部13が設けてある。
【0053】
なお、ガス圧接用還元材A1の平面視における切り縁122と切り縁123の中心角(嵌込口部12の開口角)は、本実施の形態では150°としているが、これに限定するものではない。中心角は、少なくとも嵌込口部12の切り縁部分を被圧接材91に嵌め入れることができればよく、嵌め入れた後でその状態を維持できるように、180°より小さい角度であるのが望ましい(図1(b)参照)。
【0054】
図1(c)に示すガス圧接用還元材A2は、キャップ体1cを有している。キャップ体1cは、熱可塑性樹脂であるポリスチレン樹脂製のシートで作られている。キャップ体1cの胴部10cは、やや裾広がりの円筒形状のものをベースとして加工したものであり、図1(c)で上端部は円形の天板11で塞がれている。
【0055】
また、胴部10cには、天板11に沿って所定の厚みとなるように周方向へ、後述する被圧接材91に嵌め込み可能な幅で切り縁124が設けられている。切り縁124と天板11で形成される厚み部分は部分円筒形状であり、この部分も被圧接材91の先端部に外嵌めされたときに脱落を防ぐ嵌合部125となっている。
【0056】
そして、切り縁124の両端部に続けて胴部10cの残りの厚み(高さ)部分に、それぞれ天板11に対して、左右対称形の略S字状の切り縁126、127が設けられて、嵌込口部12cが形成してある。キャップ体1cの裾部には、全長に亘りやや径大のフランジ部13が設けてある。なお、略S字状の切り縁126、127は、何れも裾部に近い側が嵌込口部12cを狭める方向に突出して保持部128、129が形成されている構造である。
【0057】
(作用)
ここで、図1(a)及び図4を参照して、Aタイプの一つである、上記ガス圧接用還元材A1を使用したガス圧接工法及び作用を説明する。
【0058】
ガス圧接用還元材A1のキャップ体1aは、鋼材等の被圧接材91の圧接側(圧接面910側)の先端部に対して外嵌め可能である。キャップ体1aは、熱可塑性樹脂製であり、所定の変形性及び可撓性を有しているので、被圧接材91の先端部に対して外嵌めによる装着を容易に行うことができ、装着後もその状態を維持することが可能である。
【0059】
なお、被圧接材91(及び後述92)は、異形鉄筋、丸鋼等の鋼材からなり、例えば鉄筋コンクリート用棒鋼(JISG3112)で規定されている異形棒鋼(SD295A,SD295B,SD345,SD390,SD490)、丸鋼(SR235,SR295)、或いは高強度鉄筋(USD385A,USD385B,USD980)の他、耐久性や耐食性を高めたステンレス鉄筋(SUS316,SUS304等)の採用も可能である。
【0060】
被圧接材91、92のガス圧接を行う際には、まず、固定側の被圧接材91を固定クランプ(図示省略)により垂直に立てた状態で所定の高さで保持する。また、可動側の被圧接材92を可動クランプ(図示省略)により垂直に立てた状態で保持する。なお、被圧接材91、92は中心線が同一直線上にあるように調整されており、被圧接材91、92の圧接面910、920は、適宜間隔に設定されている。なお、被圧接材91、92は水平方向に保持して圧接作業をしてもよい。
【0061】
ガス圧接用還元材A1のキャップ体1aは、胴部10に天板11に沿う部分から裾端部まで、切り縁で嵌込口部12が形成してあるので、被圧接材91、92の圧接面910、920が、少なくともキャップ体1aの天部の厚みと同等程度に開いていれば、固定側の被圧接材91の先端部に装着が可能である。
【0062】
すなわち、まず、天部の厚み部分を被圧接材91、92の圧接面910、920の隙間に水平に差し入れる。なお、天部を水平方向でなく、傾斜させて、或いは傾斜方向に差し入れてもよい。これに伴い、天部に沿う部分から裾端部へ続く嵌込口部12が固定側の被圧接材91の先端部の側面に嵌め込まれるので、天部を圧接面910に落とし込めば、被圧接材91の先端部に装着することができる(図4(a)参照)。なお、この落とし込みによる装着は、圧接面910が嵌込口部12の上方(嵌込口部12より天部寄り、或いは天部)に位置するだけではなく、嵌込口部12より下方に位置して行われてもよい。
【0063】
ガス圧接用還元材A1が上記のように装着された状態で、被圧接材92が下降して、キャップ体1aの天板11が圧接面910、920で挟まれる。そして、各被圧接材91、92と共にガスの炎で加熱されることにより、圧接面910、920に酸化被膜が生じることを抑止しながら、圧接を強固に行うことができる。
【0064】
つまり、熱可塑性樹脂製のキャップ体の天部が、各被圧接材の先端面で挟まれた僅かな隙間の中で、ごく短時間で溶融し、燃焼して、更に気化し体積が急激に増えることによって、エアが高い圧力で外へ押し出されると共に、エア中の酸素は高分子の炭素と結びついて炭酸ガスになり、圧接部周りの酸化が抑制される。
【0065】
また、ガス圧接用還元材A1によれば、例えば各被圧接材の圧接面910、920を閉じる前にガス圧接用還元材A1が外れた場合には、ガス圧接用還元材A1を改めて装着する必要があるが、その際にも、被圧接材91、92の圧接面910、920の隙間を大きく広げて煩雑な調整をする必要はない(図4(a)参照)。
【0066】
仮に、図4(b)に示すガス圧接用還元材Dのように、キャップ体に嵌込口部が設けられていない場合、ガス圧接用還元材Dを隙間に入れるためには、図4(a)に示す圧接面910よりも、少なくとも高さh分だけ高く調整しなければならない。この被圧接材91、92の圧接面910、920の隙間を確保する作業は、非常に手間のかかる面倒な作業であり、特に作業負担が大きくなる、隙間が大きな場合は尚更である。
【0067】
これに対して、ガス圧接用還元材A1では、キャップ体1a全体の厚みより大幅に薄いキャップ体1aの天部の厚みと同等幅の隙間に広げるだけで、上記のようにガス圧接用還元材A1の装着が可能になる。これにより、作業の煩雑さを大きく軽減することができるので、結果的に、ガス圧接作業を容易に行うことができる。
【0068】
なお、ガス圧接用還元材A2は、被圧接材91に装着した際に、保持部128、129により、やや回り込むように被圧接材91を掴むため、ガス圧接用還元材A2が外れないようにする保持力に優れる。それ以外は、上記ガス圧接用還元材A1の作用と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0069】
(Bタイプ)
図2(a)に示すガス圧接用還元材B1は、キャップ体2aを有している。キャップ体2aは、熱可塑性樹脂であるポリスチレン樹脂製のシートで作られている。キャップ体2aの胴部20aは、やや裾広がりの円筒形状であり、図2(a)で上端部は円形の天板21で塞がれている。
【0070】
胴部20aには、破ることで切り離しが可能な脆弱線22aが設けてある。脆弱線22aは、天板21に沿って所定の厚みとなるように周方向へ、被圧接材91に嵌め込み可能な幅のミシン目220を有している。ミシン目220と天板21で形成される厚み部分は部分円筒形状であり、この部分も後述する切離片200の切り離し後、被圧接材91の先端部に外嵌めされたときに脱落を防ぐ嵌合部221となる。
【0071】
そして、ミシン目220の両端部に続けて胴部20aの残りの厚み(高さ)部分に、それぞれ天板21に対して略直角方向に裾端部まで、ミシン目222、223がコ字状に形成してある。ミシン目220の両端角部には、切り離す際に切りすぎないように止めるための円形の孔229が設けられている。なお、孔229は、四角形等、他の形状でもよい。
【0072】
また、キャップ体2aの裾部には、全周にわたりやや径大のフランジ部23aが設けてある。なお、ミシン目220、222、223で切ることにより、切離片200を切り離して、上記ガス圧接用還元材A1の嵌込口部12と同様の嵌込口部を形成することができる。
【0073】
図2(b)に示すガス圧接用還元材B2は、キャップ体2bを有している。キャップ体2bは、熱可塑性樹脂であるポリスチレン樹脂製のシートで作られている。キャップ体2bの胴部20bは、やや裾広がりの円筒形状であり、図2(b)で上端部は円形の天板21で塞がれている。
【0074】
胴部20bには、破ることで切り離しが可能な脆弱線22bが設けてある。脆弱線22bは、天板21に沿って所定の厚みとなるように周方向へ、被圧接材91に嵌め込み可能な幅でミシン目224を有し、ミシン目224の中間部に続けて胴部20bの残りの厚み(高さ)部分に、天板21に対して略直角方向に裾端部までミシン目225が設けられて、略T字状に形成してある。
【0075】
そして、ミシン目224、225で切り離すと、開閉片226、227を形成することができ、ミシン目224と天板21で形成される厚み部分は部分円筒形状である。この部分は、被圧接材91の先端部に外嵌めされたときに脱落を防ぐ嵌合部228となる。
【0076】
また、キャップ体2bの裾部には、全周にわたりやや径大のフランジ部23bが設けてある。なお、ミシン目224、225で切ることにより、開閉片226、227を開閉動可能にして、開けることで開閉口部(図示省略)を形成することができる。
【0077】
なお、本実施の形態では、脆弱線としてミシン目を採用したが、これに限定するものではなく、例えば短いスリットを断続的な線状に設けた構造、或いはシートの厚さをごく薄くして線状に設けた構造等、手で容易に破ることができるものであればよい。
【0078】
(作用)
ここで、図2(a)及び図5を参照して、Bタイプの一つである、上記ガス圧接用還元材B1を使用したガス圧接工法及び作用を説明する。
【0079】
ガス圧接用還元材B1のキャップ体2aは、鋼材等の被圧接材91の圧接側(圧接面910側)の先端部に対して外嵌め可能である。キャップ体2aは、熱可塑性樹脂製であり、所定の変形性及び可撓性を有しているので、被圧接材91の先端部に対して外嵌めによる装着を容易に行うことができ、装着後もその状態を維持することが可能である。
【0080】
被圧接材91、92のガス圧接を行う際には、固定側の被圧接材91と可動側の被圧接材92を、上記ガス圧接用還元材A1を使用した圧接作業の場合と同様にセットする。そして、例えば、改めてガス圧接用還元材B1の装着の必要が生じたときには、キャップ体2aをミシン目220、222、223で切ることにより、不要部分である切離片200を切り離して、嵌込口部24(図5参照)を有するガス圧接用還元材B11を作製することができる。
【0081】
キャップ体2aに嵌込口部24を形成した後のガス圧接用還元材B11の使用方法及び作用は、上記ガス圧接用還元材A1と同様である。なお、ガス圧接用還元材B1も、各被圧接材の圧接面910、920を閉じる前にガス圧接用還元材B1が外れた場合には、ガス圧接用還元材B1を改めて装着する必要がある。
【0082】
その際、被圧接材91、92の圧接面910、920隙間を大きく広げて調整する必要がなく、キャップ体2a全体の厚みより大幅に薄いキャップ体2aの天部の厚みと同等幅の隙間に広げるだけで、ガス圧接用還元材B1の装着が可能になる点は、上記ガス圧接用還元材A1と同様である。
【0083】
なお、ガス圧接用還元材B2の場合は、被圧接材91、92のセット後、例えば、改めてガス圧接用還元材B2の装着の必要が生じたときには、キャップ体2bをミシン目224、225で切ることにより、開閉片226、227を内外に変形させて開閉可能な状態とすることができる。これにより、開閉片226、227を開くことで開閉口部(図示省略)が形成可能なガス圧接用還元材(図示省略)を作製することができる。
【0084】
このガス圧接用還元材B2を使用したガス圧接工法では、開閉片226、227を開き、キャップ体2bに開閉口部を形成する。そして、天部の厚み部分を被圧接材91、92の圧接面910、920の隙間に差し入れる。これに伴い、天部に沿う部分から裾端部へ続く開閉口部が固定側の被圧接材91の先端部の側面に嵌め込まれるので、天部を圧接面910に落とし込めば、被圧接材91の先端部に装着することができる。
【0085】
なお、ガス圧接用還元材B2も、各被圧接材の圧接面910、920を閉じる前にガス圧接用還元材B2が外れた場合には、ガス圧接用還元材B2を改めて装着する必要がある。その際、被圧接材91、92の圧接面910、920隙間を大きく広げて調整する必要がなく、キャップ体2b全体の厚みより大幅に薄いキャップ体2bの天部の厚みと同等幅の隙間に広げるだけで、ガス圧接用還元材B2の装着が可能になる点は、上記ガス圧接用還元材A1と同様である。
【0086】
(Cタイプ)
図3に示すガス圧接用還元材Cは、上記ガス圧接用還元材A1と同様の構造(キャップ体に嵌込口部が設けてある)を有するガス圧接用還元材C11と、有底円筒形状で、上記ガス圧接用還元材B1と略同様の形状で脆弱線22aが設けられていない構造の第2のキャップ体を有するガス圧接用還元材C12を組み合わせて構成されている。なお、ガス圧接用還元材C11とガス圧接用還元材C12のそれぞれの構造の説明は、ここでは省略する。
【0087】
ガス圧接用還元材Cは、本実施の形態ではガス圧接用還元材C12にガス圧接用還元材C11を被せて二重構造としたものである。ガス圧接用還元材C11は、ガス圧接用還元材C12と同じ形状のものを加工したもので、ポリスチレン樹脂製のシートの可撓性を以てややきつく被せられている。
【0088】
なお、二重構造のガス圧接用還元材Cでは、上記とは逆にガス圧接用還元材C12をガス圧接用還元材C11に被せて組み合わせることもできる。ガス圧接用還元材C12をガス圧接用還元材C11に被せた場合は、ガス圧接用還元材C11がガス圧接用還元材C12に内蔵された形となるので、意図しない接触等によるガス圧接用還元材C11の脱落が起こりにくい利点がある。
【0089】
(作用)
ここで、図3及び図6を参照して、Cタイプである上記ガス圧接用還元材Cを使用したガス圧接工法及び作用を説明する。
【0090】
ガス圧接用還元材Cは、嵌込口部を有するガス圧接用還元材C11が、有底筒状体であるガス圧接用還元材C12の外側に重ねてある構造である。
【0091】
まず、各被圧接材91、92の圧接面910、920でガス圧接用還元材Cのキャップ体の天部を挟む前、つまり間隔が広く開いているときに、ガス圧接用還元材Cを固定側の被圧接材91の先端部に被せる際は、二重構造のままで被せるようにする。これにより、ガス圧接用還元材Cは、キャップ体の天部を挟む前に多少の風が吹いたりしても、有底筒状体のガス圧接用還元材C12の深い胴部の作用で、被圧接材91の先端部から外れにくい。
【0092】
そして、各被圧接材91、92の圧接面910、920でガス圧接用還元材Cのキャップ体の天部を挟むまでに、ガス圧接用還元材Cが外れなかった場合は、挟まれている二重構造のガス圧接用還元材Cのままで、還元材として使用する。なお、ガス圧接用還元材Cは、キャップ体の天部も二重であるので、還元材としての効果に好影響が期待できる。
【0093】
また、各被圧接材91、92の圧接面910、920でガス圧接用還元材Cのキャップ体の天部を挟むまでに、ガス圧接用還元材Cが外れてしまった場合は、外れた状態で、ガス圧接用還元材C12からキャップ体に嵌込口部24を有するガス圧接用還元材C11を取り外し、このガス圧接用還元材C11のみを還元材として使用する。
【0094】
なお、ガス圧接用還元材C11を使用する際の作用は、ガス圧接用還元材A1と同様であり、ガス圧接用還元材C11を改めて装着する際、被圧接材91、92の圧接面910、920隙間を大きく広げて調整する必要がなく、キャップ体全体の厚みより大幅に薄いキャップ体の天部の厚みと同等幅の隙間に広げるだけで、ガス圧接用還元材C11の装着が可能になる。
【0095】
本発明に係るガス圧接用還元材は、被圧接材91、92を圧接する際に、圧接面910、920に酸化被膜が生じることをより確実に抑止するために、エア遮断リング及び還元シートと組み合わせることができる。図7に示すガス圧接用還元材B3は、Bタイプの実施形態の一つである。
【0096】
ガス圧接用還元材B3は、キャップ体3を有している。キャップ体3は、熱可塑性樹脂であるポリスチレン樹脂製のシートで作られている。キャップ体3の胴部30は、やや裾広がりの円筒形状であり、上端部は円形の天板31で塞がれている。
【0097】
胴部30には、周方向に所定の間隔で外方向に膨出させた縦補強部32が設けてある。また、胴部30には、破ることで切り離しが可能な脆弱線35が設けてある。脆弱線35は、天板31に沿って所定の厚みとなるように周方向へ設けられ被圧接材91に嵌め込み可能な幅のミシン目350を有している。
【0098】
ミシン目350と天板31で形成される厚み部分は部分円筒形状であり、この部分も切離片300の切り離し後、被圧接材91の先端部に外嵌めされたときに脱落を防ぐ嵌合部351となる。なお、ガス圧接用還元材B3は、縦補強部32により強度があって、被圧接材91に対する掴まりが良い。
【0099】
そして、ミシン目350の両端部に続けて胴部30の残りの厚み(高さ)部分に、それぞれ天板31に対して略直角方向に裾端部までミシン目352、353がコ字状に形成してある。また、キャップ体3の裾部には、全周にわたりやや径大のフランジ部36が設けてある。なお、ミシン目352、353で切ることにより、切離片300を切り離して、上記ガス圧接用還元材A1の嵌込口部12と同様の嵌込口部を形成することができる。
【0100】
また、天板31の内面(下面)には、熱硬化性樹脂であるポリイミド樹脂製のエア遮断リング33が配置され、天板31の内面との間でエア遮断リング33を挟んで、エア遮断リング33よりやや径大な、ポリスチレン樹脂製の円形の還元シート34が中央部で天板31に溶着されている。還元シート34は、エア遮断リング33の外形にほぼ沿うように熱変形させてあり、内面と協働してエア遮断リング33を封入している(図7拡大図参照)。
【0101】
ガス圧接用還元材B3を使用して被圧接材91、92のガス圧接を行う際には、固定側の被圧接材91と可動側の被圧接材92を、ガス圧接用還元材A1を使用した圧接作業の場合と同様にセットする。そして、例えば、改めてガス圧接用還元材B3の装着の必要が生じたときには、キャップ体3をミシン目350、352、353で切ることにより、不要部分である切離片300を切り離して、嵌込口部(図示省略)を有するガス圧接用還元材(図示省略)を作製することができる。
【0102】
キャップ体3に嵌込口部を形成した後のガス圧接用還元材の使用方法及び作用は、上記ガス圧接用還元材A1と同様であるが、エア遮断リング33と還元シート34が加わることで、それによる作用が生じる点が異なる。
【0103】
この場合は、圧接作業においては、ガス圧接用還元材B3が被圧接材91、92と共に、ガスの炎で加熱されることによって、まず、還元シート34及び天板31が溶融して燃焼する。そして、熱硬化性樹脂製で、まだ溶融していないエア遮断リング33の内側の、被圧接材91、92の圧接面910、920で挟まれた僅かな隙間の中で、還元シート34がごく短時間で溶融し、燃焼する。
【0104】
更に、燃焼によって気化し体積が急激に増えることによって、エア遮断リング33の内側の隙間にあったエアが高い圧力で外へ押し出されると共に、エア中の酸素は高分子の炭素と結びついて炭酸ガスになり、圧接部周りの酸化が抑制される。
【0105】
また、エア遮断リング33が溶融しないうちは、エア遮断リング33の内側の隙間へのエアの浸入が遮断されることとも相俟って、隙間内での酸化が抑制され、圧接側の先端面に酸化被膜が生じることを抑制できる。
【0106】
このように、ガス圧接用還元材B3によれば、ガス圧接を行う際に、アセチレンガスより火力が劣る天然ガス、プロパンガス、又は水素ガス等を使用する場合、充分な火力が得られるように初期加熱の段階から標準炎で加熱しても、圧接面910、920に酸化被膜や金属残渣物等の残留物が生じることを抑制できるので、強度が充分な圧接を行うことが可能になる。
【0107】
なお、ガス圧接用還元材B3も、各被圧接材の圧接面910、920を閉じる前にガス圧接用還元材B3が外れた場合には、ガス圧接用還元材B3を改めて装着する必要がある。その際、被圧接材91、92の圧接面910、920隙間を大きく広げて調整する必要がなく、キャップ体3全体の厚みより大幅に薄いキャップ体3の天部の厚みと同等幅の隙間に広げるだけで、ガス圧接用還元材B3の装着が可能になる。
【0108】
図8(a)、図8(b)を参照する。
加工用工具8は、嵌込口部が設けられていないキャップ体Eに嵌込口部を形成するための工具である。加工用工具8は、台部材80を有している。台部材80の一方の面(図8で上面)の幅方向両側には、支持部材81が設けられている。台部材80の先端部には、受脚82が設けてあり、支持部材81から受脚82に掛け渡して、受具83が先方向へやや下り傾斜して設けてある。
【0109】
支持部材81には、シーソー部材84が支点部840を介し矢印方向に揺動可能に置かれている。シーソー部材84の先部材841(図8(b)で左側)は、幅方向で台部材80側へ湾曲した形状を有している。先部材841の台部材80側の凹面842には、湾曲形状に沿って平面視コ字状の切断刃843が取り付けてある。また、シーソー部材84は、図8に示すように支点部840を境にやや上に反った形状に形成してあり、先端には押さえ片844が設けられ、基部側は操作部845となっている。
【0110】
シーソー部材84は、C型の板バネ85を介し、シーソー部材84の先部と台部材80の受具83を両端部で挟むようにして互いに密着する方向へ付勢されている。そして、常態ではシーソー部材84は閉じて、切断刃843が受具83に設けられた刃溝830に収まっている。なお、切断刃は、コ字状に限定せず、例えばU字状に形成し、嵌合口部をU字状とすることもできる。
【0111】
シーソー部材84は、操作部845を押し戻し操作することにより、矢印方向に揺動させることができる。なお、シーソー部材84を閉じたときの台具83の先端と切断刃843との距離は、上記嵌合部121の厚み方向の高さと合わせてある。
【0112】
図9(a)、図9(b)を参照して、加工用工具8の使用方法を説明する。
なお、ここで加工する対象となるキャップ体Eは、開口部100の周りにフランジ部が設けられていないタイプである。
【0113】
まず、操作部845を押して、切断刃843があるシーソー部材84の先部材841を開き、台部材80の先部をキャップ体Eの開口部100から挿入する。このとき、台部材80の先部とシーソー部材84の先部材841の間にキャップ体Eの胴部101が入るようにする。
【0114】
そして、台部材80の先端を天板102に当てて、操作部845を緩め、板バネ85を常態に戻すと、先部材841が閉じる。これにより、押さえ片844がキャップ体Eの天板102に当たって天板102を挟み、切断刃843の位置を決めると同時に切断刃843がキャップ体Eの胴部101をコ字状に切断して、刃溝830に収まる(図8(b)、図9(a)、及び図9(b)の点線で表した形状を参照)。
【0115】
なお、シーソー部材84の一端部は台部材80側へ略樋状に湾曲した形状を有しており、台部材80側の受具83は、シーソー部材84の湾曲面に略沿うように湾曲しており、シーソー部材84に設けてある切断刃843は、加工対象となるキャップ体Eの胴部101の曲面に略沿う湾曲した刃先を有する。
【0116】
これにより、切断刃843の刃先が、略全長にわたり、切断方向に動く前からキャップ体Eの胴部101の曲面の近くにあるので、切断が終了するまでの切断刃843の動きが少なくて済む。これに伴い、切断の際の切断刃843によるキャップ体Eの変形が少なく抑えられるので、キャップ体Eが歪に切断されてしまうことも抑止できる。
【0117】
また、板バネ85の付勢力だけでは切断刃843で胴部101が充分に切断できなかった場合は、台部材80の先部とシーソー部材84の先部材841をキャップ体Eの内外側から手で挟むようにすると、キャップ体Eの胴部101を確実に押し切ることができる。
【0118】
なお、加工用工具8は、フランジ部が形成してあるキャップ体を加工することもでき、その場合はフランジ部が邪魔にならないように適宜変形させた状態で切断すれば、上記ガス圧接用還元材A1と略同様のガス圧接用還元材を形成することができる。
【0119】
本明細書及び特許請求の範囲で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書及び特許請求の範囲に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。
【符号の説明】
【0120】
A1 ガス圧接用還元材
1a キャップ体
10 胴部
11 天板
12 嵌込口部
120 切り縁
121 嵌合部
122、123 切り縁
13 フランジ部
91、92 被圧接材
A2 ガス圧接用還元材
1c キャップ体
10c 胴部
12c 嵌込口部
124 切り縁
125 嵌合部
126、127 切り縁
128、129 保持部
B1 ガス圧接用還元材
2a キャップ体
20a 胴部
21 天板
22a 脆弱線
220 ミシン目
221 嵌合部
222、223 ミシン目
229 孔
200 切離片
23a フランジ部
B2 ガス圧接用還元材
2b キャップ体
20b 胴部
22b 脆弱線
224、225 ミシン目
226、227 開閉片
228 嵌合部
23b フランジ部
C ガス圧接用還元材
C11 ガス圧接用還元材
C12 ガス圧接用還元材
B3 ガス圧接用還元材
3 キャップ体
30 胴部
31 天板
32 縦補強部
33 エア遮断リング
34 還元シート
35 脆弱線
350 ミシン目
351 嵌合部
352、353 ミシン目
300 切離片
36 フランジ部
8 加工用工具
80 台部材
81 支持部材
82 受脚
83 受具
830 刃溝
84 シーソー部材
840 支点部
841 先部材
842 凹面
843 切断刃
844 押さえ片
845 操作部
85 板バネ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9