(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176845
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】マスク
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
A41D13/11 H
A41D13/11 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095676
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】岡部 海里
(72)【発明者】
【氏名】林 明史
【テーマコード(参考)】
3B211
【Fターム(参考)】
3B211CB00
(57)【要約】
【課題】マスク本体の横方向主領域の安定した配置が得られるマスクを提供する。
【解決手段】マスク本体と、前記マスク本体の横方向端部領域にそれぞれ接合された一対のシート状の耳掛け部とを備えたマスクであって、前記耳掛け部が、前記マスク本体に接合されている接合部と、前記接合部の上端部から延出する上側延出部と、前記接合部の下端部から延出する下側延出部と、を含み、前記上側延出部及び前記下側延出部の延出方向がいずれも、前記接合部から離れるほど上方に向かうように傾斜している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスク本体と、前記マスク本体の横方向端部領域にそれぞれ接合された一対のシート状の耳掛け部とを備えたマスクであって、
前記耳掛け部が、前記マスク本体に接合されている接合部と、前記接合部の上端部から延出する上側延出部と、前記接合部の下端部から延出する下側延出部と、を含み、
前記上側延出部及び前記下側延出部の延出方向がいずれも、前記接合部から離れるほど上方に向かうように傾斜している、マスク。
【請求項2】
前記上側延出部の延出方向が横方向に対してなす角度が、前記下側延出部の延出方向の横方向に対してなす角度より大きい、請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
前記耳掛け部が、横方向に伸縮し易い易伸縮部と、横方向に伸縮し難い難伸縮部とを有し、
前記下側延出部に含まれる易伸縮部の横方向の延在長さが、前記上側延出部に含まれる易伸縮部の横方向の延在長さよりも短い、請求項1又は2に記載のマスク。
【請求項4】
平面視で、前記上側延出部が、前記マスク本体の上端縁からはみ出ている、請求項1又は2に記載のマスク。
【請求項5】
前記耳掛け部が、伸長時状態の伸縮性フィルムを2つの表面材で挟んで間欠的に前記表面材に接合することによって得られた素材からなる、請求項1又は2に記載のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
顔に装着するマスクの構成としては、装着者の顔を少なくとも部分的に覆うマスク本体と、マスク本体にそれぞれ結合された一対の耳掛け部とを備えたものが一般的である。耳掛け部としては、紐状でなく、シート状のものも知られている。シート状の耳掛け部は、紐状のものと異なり、面状に肌に接触できるので、長時間装着しても肌にかかる負荷が小さく、特に耳周りで良好な装着感を得られるという利点がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、1つ又は複数のシート片から形成された環状の第1の耳掛け部及び第2の耳掛け部が、それぞれ第2の方向(縦方向)に沿った線状の第1の接合部及び第2の接合部によって、マスク本体部の一方の面に接合されているマスクが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のような従来のマスクを、第1及び第2の耳掛け部を横方向外方に展開した状態で見ると(
図3等)、耳掛け部の基部31、41から延出する部分(縁部32、42)は、マスク本体から離れるほど下方に向かっている。ここで、耳掛け部が掛けられる耳の付け根の上端は通常、マスク本体を対向させる鼻及び口の領域よりも高い位置にあるので、耳掛け部を装着する時には、このような下方を向いている縁部32、42は上方に引き上げられる。このような上方への引き上げにより、耳掛け部は、特にマスク本体との接合箇所及びその近傍で歪みやすい。このような耳掛け部の引き上げによって生じる歪みは、耳掛け部がマスク本体を肌に向かって押し付ける局所的な力に変換され得るため、歪みが生じた場所での肌への密着性、すなわちマスク本体の角隅(横方向端部領域の縦方向端縁)でのマスク本体の肌への密着性は向上し得る。しかしながら、耳掛け部がマスク本体を横方向外方へ引っ張る力は、歪みが生じた位置で途切れ易く、マスク本体横方向主領域(端部領域以外の領域)まで伝わり難い傾向があり、マスク本体が横方向主領域で緩んで、肌から離れやすくなって所望の位置に安定して装着できない場合がある。装着者の好み、マスクの装着状況等にもよるが、マスク本体の横方向主領域の所望の位置への安定した配置が求められることが多いので、そのような観点では改善が求められている。
【0006】
上記に鑑みた本発明の一態様は、マスク本体の横方向主領域の安定した配置が得られるマスクを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様は、マスク本体と、前記マスク本体の横方向端部領域にそれぞれ接合された一対のシート状の耳掛け部とを備えたマスクであって、前記耳掛け部が、前記マスク本体に接合されている接合部と、前記接合部の上端部から延出する上側延出部と、前記接合部の下端部から延出する下側延出部と、を含み、前記上側延出部及び前記下側延出部の延出方向がいずれも、前記接合部から離れるほど上方に向かうように傾斜している。
【0008】
人間の耳の付け根の上端位置は、マスク本体を対向させる顔の領域よりも、すなわち鼻及び口が含まれ且つ目にかからない領域よりも上方にある。例えば、マスク本体の横方向端部から耳に向かって線を引いた場合、その線は、マスク本体から離れるほど上方に向かうように傾斜する。よって、耳掛け部をどのような掛け方で耳に掛けても、マスク装着中、耳掛け部は、マスク本体から離れるほど上方に向かうように傾斜して延在することになる。そのため、従来技術によるマスクのように、耳掛け部のうちマスク本体に接合されている接合部から横方向に延出する上側延出部及び下側延出部(合わせて単に延出部という場合がある)の延出方向が、接合部から離れるほど(マスク本体から離れるほど)下方に向かうように傾斜している場合には、耳掛け部の延出部を、マスク本体に対して上方に引き上げる必要がある。この引き上げにより、延出部の、耳掛け部とマスク本体との接合箇所の付近(接合部の付近)には歪みが生じ易くなる。歪みが生じた箇所では、歪みがマスク本体を肌へ向かって押し付ける力に変化され得るものの、耳掛け部がマスク本体を横方向に引っ張る力は歪みが生じた箇所で途切れ易くなり、マスク本体の横方向中央まで伝わり難くなる。そのため、マスク本体の横方向の主領域(端部領域以外の領域)に緩みが生じ、マスク本体の主領域の配置が安定しないことがある。
【0009】
これに対し、本発明の第一の態様によれば、耳掛け部のうちマスク本体に接合されている接合部から延出する上側延出部及び下側延出部(合わせて単に延出部という場合がある)の延出方向がいずれも、横方向に対して、接合部から離れるほど上方に向かうように傾斜している。本態様における延出部のこの傾斜の方向は、マスク装着中の耳掛け部の通常の延在方向(上述)に沿っているので、装着者は、装着の際に、耳掛け部をマスク本体に対して引き上げる必要はなく、耳掛け部とマスク本体との接合箇所付近での歪みが生じない又は歪みが低減される。そうすると、歪みが生じた箇所における、耳掛け部がマスク本体を横方向に引っ張る力の途切れが低減する又はなくなるので、耳掛け部がマスク本体を横方向に十分引っ張ることができ、マスク本体の横方向の主領域も所望の位置に安定して配置させることができる。
【0010】
本発明の第二の態様では、前記上側延出部の延出方向が横方向に対してなす角度が、前記下側延出部の延出方向の横方向に対してなす角度より大きい。
【0011】
人の顏の、マスク本体が配置される部分の形状は概ね、上下方向中央で突出するよう湾曲し、左右方向中央が突出するよう湾曲しているので、マスク装着時には、このような顔の形状に沿ってマスク本体も変形する。より具体的には、マスク本体の上縁部は、横方向中央に向かうほど上方に、横方向端部に向かうほど下方に向かうように変形する。一方、マスク本体の下縁部は、横方向中央に向かうほど下方に、横方向端部に向かうほど下方に向かうように変形する。よって、従来技術のような耳掛け部の延出部の延出方向がマスク本体から離れるほど下方を向くように傾斜している構成では、マスク本体の上縁部における装着時の上側延出部の歪み(マスク本体との接合箇所付近での歪み)は、上記のマスク本体自体の変形分だけ一層大きくなる。このようなマスク本体の変形分を相殺するためには、上側延出部の延出方向の傾斜の度合いは、比較的大きい方が好ましい。これに対し、マスク本体の下縁部における装着時の下側延出部の歪み(マスク本体との接合箇所付近での歪み)は、マスク本体自体の上記変形によって緩和され、それほど大きくはならない。そのため、下側延出部の延出方向の傾斜の度合いは、比較的小さくてよい。よって、本発明の第二態様により、上側延出部の延出方向が横方向に対してなす角度が、下側延出部の延出方向の横方向に対してなす角度より大きくすることで、上述したような延出部の歪みの解消の効果を、装着時のマスク本体の変形に則して得ることができる。
【0012】
本発明の第三の態様では、前記耳掛け部が、横方向に伸縮し易い易伸縮部と、横方向に伸縮し難い難伸縮部とを有し、前記下側延出部に含まれる易伸縮部の横方向の延在長さが、前記上側延出部に含まれる易伸縮部の横方向の延在長さよりも短い。
【0013】
上記第三の態様によれば、下側延出部に含まれる易伸縮部の横方向の延在長さが、上側延出部に含まれる易伸縮部の横方向の延在長さよりも長くなっていることで、下側延出部を、上側延出部よりも大きな長さ範囲内で伸縮させることができる。これにより、装着者の顔のサイズに対して横方向に短い耳掛け部を使用した場合であっても(装着者にとってきついサイズのマスクであっても)、下側延出部が引っ張られることにより生じる応力は小さく、装着者は下側延出部による締め付けを感じ難くなり、ひいては下側延出部によって横方向に引っ張られるマスク本体の下縁部の側での過度な密着を回避できる。一般に、マスク本体の上縁部は比較的しっかりと密着させたいが、マスク本体の下縁部はそれほど密着させず、むしろ多少の空間の余裕が欲しいという装着者は多い。本態様によれば、このような装着者の要求に対応できる。
【0014】
本発明の第四の態様では、平面視で、前記上側延出部が、前記マスク本体の上端縁からはみ出ている。
【0015】
上記第四の態様によれば、マスクを装着する際に耳掛け部を横方向外方に展開させる際、その展開動作を、上側延出部のはみ出し部分を持って、マスク本体に触れずに行うことも可能となるので、衛生上好ましい。また、耳掛け部が上端縁からはみ出していることで、マスク本体を顔に当てた後に耳掛け部を横方向外方に展開するという装着手順を踏む場合に、マスク本体を顔に当てた状態でマスク本体の外面が見えない状態でも、耳掛け部の位置を目で直ちに確認できる。
【0016】
本発明の第五の態様では、前記耳掛け部が、伸長時状態の伸縮性フィルムを2つの表面材で挟んで間欠的に前記表面材に接合することによって得られた素材からなる。
【0017】
上記五の態様によれば、伸縮性が高い耳掛け部を得ることができる。また、表面材に襞が形成されるので、表面材と肌との接触する面積が低減されるので、耳掛け部が肌に接触した際の肌触りが向上する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様によれば、マスク本体の横方向主領域の安定した配置が得られるマスクを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一形態によるマスクを外面側から見た平面図である。
【
図3】耳掛け部を展開した後の状態を示す平面図である。
【
図5】
図1に示すマスクの装着状態の一例を示す図である。
【
図6】
図1において、易伸縮部及び難伸縮部を例示した図である。
【
図7】融着パターンの違いを利用した易伸縮部及び難伸縮部の例を示す図である。
【
図8】
図7に示す耳掛け部の異なる融着パターンのそれぞれの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳説する。なお、各図面において、特に説明がない限り、同一の又は対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0021】
<マスクの基本構成>
本発明の一形態は、装着者の顔、より具体的には装着者の少なくとも鼻及び口を覆うことのできるマスクであってよい。本形態によるマスクは、異物が顔に到達することを防止したり、装着者が発する飛沫が飛散することを防止したりする機能を有し得るものであって、衛生マスク又はサージカルマスクとも呼ばれる。マスクは、使い捨てのものであっても、洗濯によって繰り返し使用可能なものであってもよい。
【0022】
図1に、本形態によるマスク1の平面図を示す。
図1は、マスク1を外側、すなわち装着時に外部に露出させる面の側(顔に対向さる側とは反対の面の側)から見た図である。
図1に示すように、本形態によるマスク1は、装着時に装着者の顔の正面に配置され、装着者の主として鼻及び口を覆うことができるマスク本体10と、マスク本体10の端部領域11、11にそれぞれ接合された一対のシート状の耳掛け部20、20とを備えている。耳掛け部20、20は、装着者の各耳に掛けることでマスク本体10をその装着位置に保持するための一対の部材である。マスク1及びマスク本体10は、装着時に装着者の顔の上下方向に対応する上下方向(縦方向)D1と、縦方向D1に直交する、装着時に装着者の顔の左右方向に対応する左右方向(横方向)D2とを有する。
【0023】
図1に示すマスク本体10は、使用前の状態で、横方向D2に長辺を有する長方形の平面視形状を有するが、マスク本体10の平面視形状は図示のものに限られない。また、
図1に示すように、マスク本体10は、縦方向D1に並んで配置された複数の襞(プリーツ)によって形成されるプリーツ構造15を有している。プリーツ構造15の襞は、マスク本体10を構成するシートを横方向D2に沿った折り線にて折ることによって形成される。そして、複数の襞が形成された状態で、マスク本体10の横方向D2両端部が、ヒートシール等によって固定される。そのため、マスク1の使用時には、マスク1の横方向D2の中央付近のプリーツ構造15の襞を縦方向D1に広げることができる(
図5も参照)。それにより、マスク本体10は、顔の立体形状に適合するように変形し得る。より具体的には、マスク本体の縦方向D1中央が出張るように湾曲し且つ横方向D2中央が出張るように湾曲するように変形し得る。さらに、マスク本体の上縁部13Uは、横方向D2の中央に向かうほど上方に、横方向D2端部に向かうほど下方に向かうように変形し、マスク本体の下縁部13Lは、横方向D2の中央に向かうほど下方に、横方向D2端部に向かうほど上方に向かうように変形する。
【0024】
プリーツ構造15の具体的な構成は特に限定されず、マスク本体10に形成される公知の構成であってよいが、
図1に示すように、縦方向D1の中央に箱襞が形成されていると、装着時にマスク本体10の縦方向D1の中央を顔から離れる方向に突出させやすいので好ましい。
【0025】
マスク本体10は、複数の層が積層されてなる多層構造を有していてよい。例えば、異物(塵、花粉、細菌、ウィルス等)を捕集する機能が高められた中間層を、外層及び内層で挟んだ3層を少なくとも含む構造であってよい。マスク本体10を構成する各層は、不織布、織物、編物等の繊維含有層を含むことが好ましく、不織布を含むことがより好ましい。不織布としては、スパンボンド不織布、スパンレース不織布、メルトブローン不織布、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布等が挙げられる。また、中間層には、細い繊維を含み得るメルトブローン不織布が用いられることが好ましい。また、繊維含有層を構成する繊維は樹脂繊維であると好ましく、樹脂繊維の樹脂の種類としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等が挙げられる。外層及び内層の目付は、15~50g/m2であってよい。異物捕集性の高い中間層の目付は、10~100g/m2であると好ましく、15~50g/m2であるとより好ましい。
【0026】
マスク本体10の上部には、装着者の鼻の形状に合わせてその形状を保持するための部材(ノーズフィット)30が設けられていてよい。この部材は、例えば、マスク本体の10の内層が外側に折り返されてできる折返し層と、中間層との間に配置されていてよい。
【0027】
図1に示すように、一対の耳掛け部20、20は、紐状又は糸状ではなく、シート状に形成されている、すなわち、厚みより大きな幅を有する部材として形成されている。また、耳掛け部20は環状(閉じた環状及び開いた環状の両方を含む)であり、装着時には、耳掛け部20の環の内側、すなわち耳掛け部20の中央の開口29に装着者の耳が入るようにして、耳掛け部20を耳に掛けることができる。上述のように一対の耳掛け部20、20がシート状であることで、マスク装着時に耳掛け部20を耳に掛けた時に、耳たぶの裏面の肌又は耳の付け根の周辺の肌に、より大きな面積で接触できるため、肌に掛かる負担を軽減することができる。そのため、マスク1を長時間装着しても快適な装着感を維持できる。
【0028】
図1に示す形態では、一対の耳掛け部20、20は、単一シート状に、すなわち、耳掛け部シート20Aとして形成されている。ここで、単一シートとは、連続した1枚のシートからなる形態を指す。この1枚のシートは、単層であってもよいし、複数の層が積層されてなる積層体であってもよい。一対の耳掛け部20、20が単一シート状に形成されていることで、製造時に耳掛け部20、20の位置決めを同時に行うことができ、マスクの製造がより容易になる。しかしながら、本形態では、一対の耳掛け部20、20同士は必ずしも結合されていなくともよい。
【0029】
一対の耳掛け部20、20が耳掛け部シート20Aとして形成されている場合、耳掛け部シート20Aは、所定位置で破断させることによって分離した一対の耳掛け部20、20を形成できるように構成されていてよい。
図1の形態では、一対の耳掛け部20、20は、結合部28にて結合されている。結合部28の結合形式は特に限定されないが、使用者の通常の力で引っ張ることによって分離可能な結合であることが好ましい。例えば
図1に示すようにタイ部とカット部とを交互に有するミシン目として形成されていてよい。また、シートの厚みを小さくすること、又はその他の手段によって、一対の耳掛け部20、20の境界を脆弱化したり、応力が掛かりやすくしたりすることによって、結合部28を形成してもよい。また、結合部28は、使用者がハサミ等の道具によって切断できるように構成されていてもよい。
【0030】
耳掛け部20、20(又は耳掛け部シート20A)は、伸縮性を有する材料、少なくとも横方向D2に伸縮性を有する材料から形成されていてよい。耳掛け部20、20が伸縮性を有することで、マスクの装着動作時には、使用者は、耳掛け部20、20を耳の後ろまで引っ張って耳に掛けるという動作を容易に行うことができ、また装着時(装着中)も、耳掛け部20、20に発生する引張り応力によって、マスク本体10も耳掛け部20、20の方に(横方向D2に)引っ張られ、マスク本体10を顔に密着させ易くなる。
【0031】
耳掛け部20は、伸縮性を有する材料からなる単層シートであってもよいし、伸縮性の材料からなる層を含む複数の層が積層されてなる多層シートであってもよい。伸縮性の材料とは、伸縮性の不織布、伸縮性フィルム、又は糸ゴム等の糸状若しくは紐状の伸縮性部材であってよい。伸縮性の不織布が含まれる場合、当該不織布の伸縮性は、不織布が伸縮性繊維を含むことによって、例えば繊維の材料自体が伸縮性を有する又は繊維が捲縮繊維であることによって発現されていてよい。或いは、所定の物理的構造によって、例えば表面に凹凸を有することによって伸縮性が発現されていてもよい。伸縮性の不織布の具体例としては、縮性エアスルー不織布、伸縮性スパンボンド不織布、伸縮性スパンレース不織布、伸縮性ニードルパンチ不織布、伸縮性ケミカルボンド不織布等が挙げられる。
【0032】
また、耳掛け部20の素材としては、製造が容易であり且つ高い伸縮性が得られることから、伸縮性フィルム含む構成、特に伸長状態の伸縮性フィルムの両面に表面材を配置してなる構成が好ましい。その場合、不織布/伸縮性フィルム、不織布/伸縮性フィルム/不織布(例えば、スパンボンド不織布/伸縮性フィルム/スパンボンド不織布、エアスルー不織布/伸縮性フィルム/エアスルー不織布等)といった構成が挙げられる。
【0033】
伸縮性フィルムの材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリウレタン等が挙げられる。伸縮性フィルムの伸縮性は、引張試験機による測定で最大伸長率(引張破断時の伸長率)が3.5~4.0であるものが好ましい。また、伸縮性フィルムは、湿気を通過させる機能を有してよい。伸縮性フィルムを用いた構成の場合、当該伸縮性フィルムと組み合わされる表面材は不織布が好ましい。また、このような不織布の目付は、好ましくは5~50g/m2、より好ましくは8~35g/m2であってよい。
【0034】
耳掛け部20が、伸縮性フィルムの両面に表面材が配置されてなる構成を有する場合の、
図1のI-I線断面図を
図2に示す。
図2(a)には、耳掛け部20を伸長させていない状態を示す。このような素材は、例えば次のように製造される。まず、
図2(b)に示すように、伸縮性フィルム5に所定の引張り外力Tを加えて所定方向に引っ張って伸長状態にした状態で、伸縮性フィルム5の両面(第1面及び第2面)にそれぞれ第1表面材2及び第2表面材3を配置する。そして、伸縮性フィルム5の伸長状態を維持したまま、第2表面材3、伸縮性フィルム5、及び第1表面材2が積層されてなる積層体に対して間欠的に複数の固定部8、8、…を形成する。その後、引張り外力Tを解除し、
図2(a)に示す状態の耳掛け部20を得ることができる。
【0035】
図2(a)に示す状態は、耳掛け部20に外力を加えていない非伸長状態、若しくは自然長を有する自然状態である。非伸長状態では、伸縮性フィルム5の長さが自然長に戻るので、複数の固定部8、8、…で接合されている部分以外の部分が、伸縮性フィルム5から離れるように隆起し、伸長状態(
図2(b))で平坦になっていた第1表面材2及び第2表面材3に皺(襞)が形成される。よって、襞は耳掛け部20の伸縮方向に直交する方向に形成される。
【0036】
固定部8、8、…は、超音波シール、ヒートシール等の融着手段、或いは接着剤等を利用して形成することができるが、より確実な接合が可能であることから融着手段を利用することが好ましい。特に、様々な融着のパターンを容易に形成できることから超音波シールを利用することがより好ましい。超音波シールによれば、第1表面材2、伸縮性フィルム5、及び第2表面材3を同時に同位置で固定できる。また、第1表面材2、伸縮性フィルム5、及び第2表面材3がいずれも熱可塑性樹脂を含む、又は熱可塑性樹脂とすることで、融着手段により固定部(融着部)8、8、…にて、接触する層同士を互いに融着し、その位置で3つの層を一体化することができる。また、融着部の形成条件によっては、融着部8、8、…に貫通孔が形成されるか又は融着部8、8、…が貫通孔となることもある。その場合には、耳掛け部20(耳掛け部シート20A)の通気性を向上させることができる。融着のパターンについては後に詳述する。
【0037】
なお、上記伸縮性フィルムに代えて、糸ゴムを使用する場合も、同様にして糸ゴムを伸長させた状態で表面材2、3で挟み込むことができる。但し、その場合、固定部8、8、…の形成には、糸ゴムを劣化させない手段、例えば接着剤等を使用するか、糸ゴムのない位置で表面材2、3同士を融着することが好ましい。
【0038】
上述のように形成された伸縮性の耳掛け部20(若しくは耳掛け部シート20A)をマスク本体10に接合する際には、伸縮性フィルム5の伸縮方向(伸長方向)が、マスク1の横方向D2に沿うようにする。そのため、耳掛け部20は横方向D2に伸縮しやすく、縦方向D1には伸縮し難い構成となっている。
【0039】
また、耳掛け部20(若しくは耳掛け部シート20A)の表面に形成されいてる、表面材2、3による上述の複数の皺は、マスク1の縦方向D1におおよそ沿って延びることになる。耳掛け部20の表面に多数の襞が形成されていることで、耳掛け部20の表面が肌に接した時、耳掛け部20の素材が肌の全面に接触するのではなく、耳掛け部20と肌との間に空間が形成されるので、肌にべったり張り付くような感覚を低減でき、装着感を向上できる。
【0040】
耳掛け部20(耳掛け部シート20A)の全体の目付は、20~150g/m2であってよい。また、非伸長状態での耳掛け部20の全体の厚みは、100~3,000μmであってよい。
【0041】
一対のシート状の耳掛け部20、20(若しくは耳掛け部シート20)は、マスク本体10の一方の面に重ねられ、当該面の横方向D2の両端部領域11、11にそれぞれ接合されている。
図1に示す例では、耳掛け部20、20はマスク本体10の外面に重ねられ、接合されている。耳掛け部20において、マスク本体10に接合されている部分を接合部21、それ以外の部分を自由部22とする(
図1)。耳掛け部20が閉じた環状である場合には、
図1に示すように、接合部21は、縦方向D1に連続して延在する部分となる。
【0042】
耳掛け部20とマスク本体10との接合は、例えば、耳掛け部20及びマスク本体10の素材を、少なくともそれらの表面を溶融させて、耳掛け部20及びマスク本体10の互いに対向する面同士を融着させる手段(融着手段)、例えばヒートシール、超音波シール等により得ることができる。或いは、耳掛け部20とマスク本体10との接合は、接着剤によって、又は材料の溶融を伴わない他の機械的結合手段によって行ってもよい。耳掛け部20及びマスク本体10の素材が熱可塑性樹脂である場合には、両者が融着されやすく、より確実な接合が可能であることから、ヒートシールを用いることが好ましい。
【0043】
なお、端部領域11、11において、耳掛け部20とマスク本体10とが接合される領域は、縦方向D1に沿って、好ましくは耳掛け部20の縦方向D1の上端から下端まで連続して形成されていることが好ましい。また、耳掛け部20とマスク本体10との接合は、縦方向D1に沿って線状に形成されていてもよいが、接着強度を向上させる観点から、ある程度の幅を有することが好ましい。耳掛け部20とマスク本体10との接合範囲の横方向D2の幅は、好ましくは3~15mm、より好ましくは4~12mmであってよい。
【0044】
また、耳掛け部20とマスク本体10との接合は、接合範囲内で連続して融着されて接合されてもよいが、
図1に示すように、耳掛け部20とマスク本体10とが接合されている接合小部分が、互いに離隔して複数形成されていてもよい。後者の構成は、柔軟性及び接着強度のバランスを確保できるので、好ましい。上記の接合小部分の形状は、
図1に示す正方形に限らず、円形、楕円形、正方形以外の四角形、四角形以外の多角形の他、ハート形、星形等の形状であってよい。また、接合小部分は、縦方向D1又は横方向D2に延びる複数の線、格子、クロスハッチ等として形成されていてもよい。
【0045】
<マスクの使用方法>
本形態によるマスク1の使用を開始する際、使用者は、マスク1の装着前に、耳掛け部20、20をそれぞれ横方向D2側方へ開く(展開する)。上述のように一対の耳掛け部20、20同士が結合部28にて分離可能に結合されている場合には、展開前に、結合を解除して耳掛け部20、20を互いに分離させる。
【0046】
図3に、
図1のマスク1の耳掛け部20、20を展開した後の状態を示す。耳掛け部20、20をそれぞれ横方向D2外方に展開させた後には、耳掛け部20、20が裏返されて、使用前の段階では耳掛け部20、20のマスク本体10に対向していた面が露出する。また、マスク本体10の主領域12(端部領域11、11以外の領域)ほぼ全体も露出する。
【0047】
図1及び
図3に示すように、本形態では、一対の耳掛け部20、20は、マスク本体10の外面に配置されている。そのため、一対の耳掛け部20、20同士を分離させて横方向D2外方へ開く動作において、マスク本体10の内面に触れる可能性を低減できるか又はその可能性をなくすことができ、衛生的観点から好ましい。
【0048】
本形態によるマスク1は、例えば次のように使用することができる。耳掛け部20、20を展開する前の状態のマスク1を、装着者自らの顏に、マスク本体10の内面が顔に対向するように配置する。続いて、マスク本体10を一方の手で外面から押さえたままで、他方の手で一方の耳掛け部20を展開させて一方の耳に掛け、さらに他方の耳掛け部20を展開させて他方の耳に掛ける。或いは、装着者が他人である場合には、マスク本体10の外面を上にしてマスク1が置かれている状態で、一対の耳掛け部20、20をそれぞれ手で把持して横方向D2外方へ開いた後、一対の耳掛け部20、20を把持したままマスク1を装着者の顔へと移動させてもよい。そして、マスク本体10をその他人の顔の所望の位置へ配置した後、持ち方を変えることなく、一対の耳掛け部20、20をそれぞれ、他人の耳に掛けることができる。よって、本形態によるマスク1は、例えば子供、病人等の、マスクを自らで装着することが困難である人にマスクを装着させる場合に、好適に使用できる。
【0049】
本形態では、一対の耳掛け部20、20がマスク本体10の外面の横方向D2の端部領域11、11にそれぞれ接合されているので(
図1及び
図3)、マスク1の装着時、すなわち耳掛け部20、20を側方に開いて耳に掛けている状態では、マスク本体10の端部領域は、耳掛け部20によって外面側から顔に向かって押さえられることになる。これにより、マスク本体10の両側部においてマスク本体10と顔との隙間を小さくすることができ、マスクの機能、例えば異物を遮断する機能、装着者が発した飛沫を飛散させない機能等を向上できる。また、本体の両側部の内面側(顔側)に耳掛け部20が接合されていないことで、装着中に、マスク本体10の両側部において耳掛け部20が装着者の顔に直接接触しないため、耳掛け部の端縁が顔に触れること等による違和感も低減される。
【0050】
<耳掛け部の具体的な形状>
(上側延出部及び下側延出部の形状)
図1に示すように、一対の耳掛け部20、20はそれぞれ、マスク本体10の横方向D2の端部領域11、11に接合された接合部21と、接合部21以外の部分であり、耳掛け部20を展開する際に持ち上げて裏返される部分である自由部22とを含む。自由部22は、展開前の状態で、横方向D2の端部領域11側で開いたC字形状を有する。なお、耳掛け部20の形状が開いた環状である場合、耳掛け部20のうち接合部21の縦方向D1の中央付近が途切れており、耳掛け部20が、縦方向D1の上部と下部とでマスク本体10に接合されていてよい。
【0051】
耳掛け部20の形状は全体で見て、例えば、略四角形(好ましくは矩形)であってよい。また、耳掛け部20の形状は、四角形以外の多角形、円形、楕円形等であってもよい。
図4に示す耳掛け部20の形状は略四角形といえる。この場合、耳掛け部20の接合部21は四角形の1辺に対応し、自由部22は、四角形の残りの3辺に対応する部分であってよい。また、耳掛け部20は、耳掛け部20の内周縁及び/又は外周縁には小さな凹凸が形成されていてもよく、例えば内周縁及び/又は外周縁の輪郭は波形になっていてもよい。
【0052】
自由部22は、自由部22の上側で接合部21から延出する上側延出部23Uと、自由部22の下側で接合部21から延出する下側延出部23Lとを含む。より具体的には、上側延出部23Uは、接合部21の横方向D2の縁部から延出する部分であり、下側延出部23Lは、接合部21の横方向D2の縁部から延出する部分である。上側延出部23Uと下側延出部23Lとは、接合部21と反対側では、概ね縦方向D1に延在する耳裏配置部24で接続されている。耳裏配置部24は、マスクの装着時に、耳たぶの裏側の肌又は耳周辺の肌に概ね対向させる部分である。
【0053】
図4に、
図1における一方の耳掛け部20を含む部分を拡大した図を示す。
図4に示すように、上側延出部23Uが接合部21から延出する方向(延出方向)は、接合部21から離れるほど上方に向かうよう傾斜しており、同様に、下側延出部23Lが接合部21から延出する方向(延出方向)も、接合部21から離れるほど上方に向かうよう傾斜している。ここで、上方延出部23L及び下方延出部23L(合わせて単に延出部という場合がある)の「延出方向」とは、例えば、延出部の外輪郭、内輪郭、又は中心線が横方向D2に対してなす角度とすることができる。本形態では、
図4に示すように、延出部の延出方向を、延出部の外輪郭に対してなす角度としている。上側延出部23Uの延出方向は、上側延出部23Uの外輪郭が横方向D2に対して角度α1をなしており、下側延出部23Lは、下側延出部23Lの外輪郭が横方向D2に対して角度α2をなしている。なお、延出部の延出方向を規定する位置は、延出部の根元部分、すなわち接合部21と延出部(自由部22)との境界又はその付近での位置であってよいが、根元部分の形状に、例えば強度向上のために変形が加えられている場合、例えば環幅が大きくなっている場合には、延出部の延出方向は、環幅の拡大部等を除いた位置(越えた位置)で規定することが好ましい。
【0054】
人間の顏の構造上、マスクの耳掛け部が掛けられる人間の耳の付け根の上端位置は、マスク本体を対向させる顔の領域よりも上方(高い位置)にあるので、耳掛け部をどのような掛け方で耳に掛けても、マスク装着中、耳掛け部は、マスク本体から離れるほど上方に向かうように傾斜して延在することになる。そのため、例えば、耳掛け部は、装着時には、マスク本体に対して上方に引き上げられることになる。この時、従来技術のように、延出部の延出方向が、接合部から離れるほど(マスク本体から離れるほど)下方に向かうように傾斜していたとすると、延出部が上方に引き上げられることで延出部の根元部分には歪みが生じ易くなる。このような歪みは、マスク本体の横方向の端部領域を肌へ向かって押し付ける力に変化され得るので、マスク本体の横方向の端部領域における密着性を確保するという観点では好ましい。しかしながら、耳掛け部がマスク本体を横方向に引っ張る力は歪みが生じた箇所で途切れ易くなり、マスク本体の横方向中央まで伝わり難くなる。そのため、マスク本体の横方向の主領域(端部領域以外の領域)に緩みが出て、マスク本体の主領域の配置が安定しないことがある。
【0055】
これに対し、本形態によれば、耳掛け部20のうちマスク本体10に接合されている接合部21から延出する上側延出部23U及び下側延出部23L(延出部)の延出方向がいずれも、横方向D2に対して傾斜しており、その傾斜は、接合部21から離れるほど上方に向かう方向となっている。よって、
図3に示すように、耳掛け部20、20を平面上で横方向D2外方に展開した場合には、耳掛け部20、20の延出部23U、23Lはいずれも、横方向D2外方に向かうほど上方に向かう方向(矢印A1、A2)に延在する。本態様における延出部23U、23Lのこの傾斜の方向は、マスク装着中の耳掛け部20の通常の延在方向(上述のマスク本体10から耳に向かう延在方向)に沿っているので、装着者は、マスク装着の際に、耳掛け部20をマスク本体10に対して引き上げる必要がなくなるか、又は大きく引き上げる必要がなくなる。そのため、耳掛け部20とマスク本体10との接合箇所付近での上述の歪みは生じない又は低減される。そうすると、耳掛け部20がマスク本体10を横方向D2に引っ張る力が歪みによって途切れることが抑制されるか又はなくなる。すなわち、本形態による延出部23U、23Lの延出方向によって、延出部23U、23Lの根元部分での歪みが低減又は解消されると言える。これにより、耳掛け部20がマスク本体10を横方向D2に引っ張る力はマスク本体10の主領域12にも伝わるので、主領域12の過度な緩みが抑えられ、主領域12を所望の位置に安定して配置させることができる。
【0056】
図4に示すように、上側延出部23Uの延出方向が横方向D2に対してなす角度α1は、下側延出部23Lの延出方向が横方向D2に対してなす角度α2よりも大きくなっている。このような構成によって、上述のような延出部23U、23Lの根元部分での歪みの解消を、以下に説明するよう効果的に得ることができる。
【0057】
装着時、マスク本体10は顔の形状に沿って変形する。顔の概ねの形状は、縦方向D1の中央及び横方向D2の中央が凸になっているので、マスク本体10はそのような形状に沿って変形する。さらにその際には、マスク本体10の上縁部(上端縁13Uを含む縁部)は、横方向D2中央に向かうほど上方に、横方向D2端部に向かうほど下方に向かうように変形する。一方、マスク本体10の下縁部(上端縁13Uを含む縁部)は、横方向D2中央に向かうほど下方に、横方向D2端部に向かうほど下方に向かうように変形する。このような変形は、マスク本体10がプリーツ構造15を有していない場合にも生じるが、プリーツ構造15を有している場合にはより顕著となる。ここで、
図5に、装着状態でのマスク本体10及び耳掛け部20の変形状態を例示する(耳掛け部20は一方のみを図示)。
図5に示すように、マスク本体10のプリーツを縦方向D1に開くことで、マスク本体10は上述のように大きく変形して、顔の形状に良好に沿った形状となる。
【0058】
装着時のマスク本体10の変形によって、マスク本体10の上縁部の端部領域11及びその付近は、横方向D2に対して、横方向D2外方に向かうほど下方に向かうように傾斜する(
図5の矢印B1)。このような傾斜を生じさせる変形のため、耳掛け部20を耳に掛けた時の上述の上側延出部23Uの根元部分の歪みは一層大きくなる。この変形分を相殺するためには、上側延出部23Uの延出方向が横方向D2に対してなす角度α1(
図4)を比較的大きくしておき、上側延出部23Uの延出方向(矢印A1)がより上向きになるようにしておくことが好ましい。一方、マスク本体10の下縁部の端部領域11及びその付近は、横方向D2に対して、横方向D2外方に向かうほど上方に向かうように傾斜する(
図5の矢印B2)。これにより、下側延出部23Lの根元部分の歪みは、上側延出部23Uにおける歪みとは逆に、マスク本体10自体の変形によって緩和される。そのため、下側延出部23Lの延出方向が横方向D2に対してなす角度α2(
図4)は比較的小さめにして、下側延出部23Lの延出方向(矢印A2)が横方向D2に対して小さめに傾斜するようにすると好ましい。よって、角度α1を角度α2より大きくすることで、延出部の歪みの解消の効果を、上側延出部23U及び下側延出部23Lの両方で効果的に得ることができる。
【0059】
上側延出部23U及び下側延出部23Lのいずれについても、延出部の延出方向が横方向D2に対してなす角度は3~40°とすることができる。但し、上側延出部23Uの延出方向が横方向D2に対してなす角度α1は、好ましくは15~40°、より好ましくは20~35°であってよい。また、上側延出部23Lの延出方向が横方向D2に対してなす角度α2は、好ましくは3~20°、より好ましくは5~15°であってよい。また、角度α1と角度α2との差(α1-α2)は、好ましくは10~30°、より好ましくは15~25°であってよい。これにより、上述のようにマスク本体10自体が大きく変形する場合、特にプリーツ構造15があることで大きく変形する場合にも、マスク本体10の上縁部及び下縁部の変形に合わせて、適切に延出部の根元部分の歪みを解消できる。
【0060】
なお、
図1に示すように、耳掛け部20、20はそれぞれ、展開前の状態で、マスク本体10の上端縁13Uからはみ出たはみ出し部分(摘み部ともいう)25、25を有する。使用者は、耳掛け部20、20を横方向D2外方に展開する際には、はみ出し部分25、25をそれぞれ摘まんで耳掛け部20、20を引っ張って開くことができる。これにより、マスク本体10自体に、すなわちマスク本体10の外面及び内面のどちらにも触れずに又はほとんど触れずに、一対の耳掛け部20、20を分離させ、また展開させることができる。よって、使用者が手指の衛生に十分な配慮ができない状況であっても、良好な衛生状態のマスク1を自らに又は他人に装着できる。また、例えば、マスク本体を顔に当てた後に耳掛け部を横方向外方に展開するという装着手順を踏む場合には、耳掛け部20が展開前の状態で、平面視で上端縁13Uからはみ出していることは利点となる。例えば、マスク本体が0を顔に当てた状態でマスク本体10の外面が見えない状態でも、耳掛け部20、20がマスク本体10より上方に見えることで、耳掛け部20、20の位置を目で直ちに確認でき、掴むことが容易となる。
【0061】
なお、はみ出し部分25のはみ出し度合、例えば、上端縁13Uからはみ出し部分25の頂点25tまでの縦方向D1の長さは、好ましくは5~20mm、より好ましくは8~15mmであってよい。
【0062】
(易伸縮部及び難伸縮部)
本形態では、1つの耳掛け部20は、具体的には耳掛け部20の自由部22は、横方向D2に伸縮し易い部分である易伸縮部と、横方向D2に伸縮し難い部分である難伸縮部とを有していてよい。自由部22におけるこのような易伸縮部及び難伸縮部の形成は、耳掛け部20、20又は耳掛け部シート20Aを、一軸伸縮性を有する素材から構成することによって、可能となる。例えば、横方向D2に伸縮性を有する耳掛け部シート20Aの場合には、自由部22のうち、横方向D2の成分を大きく含み且つ縦方向D1の成分を多く含む部分は伸縮し易い易伸縮部となるし、横方向D2の成分を少なく含み且つ縦方向D1の成分を多く含む部分は伸縮し難い難伸縮部となる。また、易伸縮部及び難伸縮部は、耳掛け部20又は耳掛け部シート20Aの構成をシート内で変更することで形成してもよい。
【0063】
図6に、本形態によるマスク1における耳掛け部20の易伸縮部22E(クロスハッチングで表示)及び難伸縮部22Nの例を示す。
図5に示すように、上側延出部23U及び下側延出部23Lはそれぞれ、易伸縮部22Eを含んでいる。なお、
図5に示すような易伸縮部22E及び難伸縮部22Nの例は、耳掛け部20又は耳掛け部シート20Aの製造の際に、耳掛け部20内でその構造を変更することによって形成可能である(後に詳述)。
【0064】
図6に示す例では、下側延出部23Lに含まれる易伸縮部22Eの横方向D2の延在長さが、上側延出部23Uに含まれる易伸縮部22Eの横方向D2の延在長さよりも長くなっている。これにより、下側延出部23Lを、上側延出部23Uよりも大きな長さ範囲で伸縮させることができる。これにより、装着者の顔のサイズに比べて耳掛け部20の延出部が短い場合であっても、下側延出部23Lが引っ張られることにより生じる応力は小さく、装着者は下側延出部23Lによる締め付けを感じ難くなり、ひいては下側延出部23Lによって横方向D2に引っ張られるマスク本体10の下端縁13Lの側での過度な密着を回避できる。一般に、多くの装着者は、マスク本体10の上端縁13Uの側は比較的しっかりと密着させたいが、マスク本体10の下端縁13Lの側はそれほど密着させず、むしろ多少の空間の余裕が欲しいと考える傾向がある。すなわち、マスク本体10の上側の密着性は高く、下側の密着性は少し低めにすることで、マスク装着中の快適さ又は装着感に関して装着者から高い評価を得られる場合が多い。よって、本形態による下側延出部23Lに含まれる易伸縮部22Eの横方向D2の延在長さと、上側延出部23Uに含まれる易伸縮部22Eの横方向D2の延在長さとの関係によって、装着感に関して高く評価されるマスクを得ることができる。そして、上側延出部23U及び下側延出部23Lの延出方向の特徴がもたらす、マスク本体10の横方向D2主領域12の所望の位置への安定した配置という効果と相俟って、総合的に優れた装着感を得ることができる。
【0065】
なお、自由部22の横方向D2の長さに対する、上側延出部23Uに含まれる易伸縮部22Eの横方向D2の延在長さの割合は、好ましくは55~80%、より好ましくは60~75%であってよい。また、自由部22の横方向D2の長さに対する、下側延出部23Lに含まれる易伸縮部22Eの横方向のD2延在長さの割合は、好ましくは60~85%、より好ましくは70~80%であってよい。
【0066】
本形態における易伸縮部22E及び難伸縮部22Nの形成の例について、さらに詳述する。本形態による耳掛け部20又は耳掛け部シート20Aは、
図2を参照して上述したように、横方向D2の一方向に伸縮性を有していることが好ましく、伸長時状態の伸縮性フィルム5を2つの表面材で挟んで間欠的に表面材2、3に接合することによって得られた素材からなっているとより好ましい。さらに、耳掛け部20又は耳掛け部シート20Aの横方向D2の伸縮性を、耳掛け部20又は耳掛け部シート20Aの製造段階で、縦方向D1に沿って異ならせるように構成することができる。例えば、
図7に、
図6に示すマスク1の耳掛け部20、20(耳掛け部シート20A)の、マスク本体10に接合される前の状態を示す(マスク本体10の外形は一点鎖線で図示)。
図7に示すように、耳掛け部20、20(耳掛け部シート20A)は、縦方向D1上側に領域R1
A、縦方向D1下側に領域R1
B、領域R1
Aと領域R1
Bとの間には領域R2を有していてよい。
図7に示す伸縮性の異なる領域のうち、領域R1
A、R1
Bは易伸縮部22E(
図6)に、領域R2を難伸縮部22N(
図6)に対応させることができる。
【0067】
領域R1
A、R1
Bと、領域R2との相違は、耳掛け部20、20(耳掛け部シート20A)の素材を製造において、伸長時状態の伸縮性フィルム5を2つの表面材で挟んで間欠的に表面材2、3に融着部8、8、…を形成する際(
図2)の、融着部8、8、…の平面視での配置(パターン)の相違に起因する。より具体的には、耳掛け部シート20Aを製造する際、横方向D2に連続する長尺の耳掛け部シート帯から縦方向D1に沿った線で切断され、さらに耳掛け部シート20Aの形状に打抜かれて形成される。よって、切断及び打ち抜き前の、耳掛け部シート帯を製造する段階で、融着部8、8、…(
図2)の平面視での融着パターンを、縦方向D1で異ならせておけば、耳掛け部20、20における縦方向D1での融着パターンの相違を比較的容易に得ることができる。
【0068】
平面視で、領域R1A、R1Bにおける融着部8、8、…同士のピッチは、領域R2における融着部8、8、…同士のピッチよりも、少なくとも横方向D2で小さくなっている。いわば、領域R1A、R1Bでは融着部8、8、…が疎に形成され、領域R2では融着部8、8、…が密に形成されている。
【0069】
図8(a)に、領域R1
A、R1
Bの平面視での融着部8、8、…のパターンの例を、
図8(b)に、領域R2における平面視での融着部8、8、…のパターンの例を示す。
図8(a)及び
図8(b)の縮尺は互いに同じである。
図8に示すように、領域R1
A、R1
Bにおける融着部8、8、…の横方向D2のピッチp
x1は、領域R2における融着部8、8、…の横方向D2のピッチp
x2よりも大きくなっている。これにより、領域R1
A、R1
Bが領域R2よりも、横方向D2での伸縮範囲が広がる、すなわちより長く伸長するようになっている。
【0070】
なお、領域R1A、R1Bにおける融着部8、8、…の横方向D2のピッチpx1は、好ましくは3~15mm、より好ましくは5~10mmであってよい。領域R2における融着部8、8、…の横方向D2のピッチpx2は、好ましくは0.3~13.5mm、より好ましくは1.25~7.5mmであってよい。さらに、領域R2における融着部8、8、…の横方向D2のピッチpx2の、領域R1A、R1Bにおける融着部8、8、…の横方向D2のピッチpx1に対する比の値(px2/px1)は、好ましくは0.1~0.9、より好ましくは0.25~0.75であってよい。なお、上記ピッチは、耳掛け部20又は耳掛け部シート20Aの最大伸長状態で測定したピッチである。
【0071】
以上、本発明を実施形態に基づき説明したが、本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。上記実施形態は、特許請求の範囲に記載された範囲内において、様々な変更、修正、置換、付加、削除、及び組合せ等が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に属する。また、上述した構成要素は任意に組合せが可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 マスク
2、3 表面材
5 伸縮性フィルム
8 融着部
10 マスク本体
11 横方向の端部領域
12 主領域
13L 下端縁
13U
15 プリーツ構造
20 耳掛け部
20A 耳掛け部シート
21 接合部
22 自由部
22E 易伸縮部
22N 難伸縮部
23U 上側延出部
23L 下側延出部
25 はみ出し部分
25t はみ出し部分の頂点
28 分離可能な結合部
29 開口
D1 縦方向(上下方向)
D2 横方向(左右方向)