(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176846
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】バランスウエイトの製造方法、バランスウエイト、および送風機
(51)【国際特許分類】
F04D 29/28 20060101AFI20241212BHJP
F04D 29/64 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
F04D29/28 R
F04D29/64 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095679
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000228730
【氏名又は名称】ニデックアドバンスドモータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】田村 和政
(72)【発明者】
【氏名】大槻 寿則
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB26
3H130AB52
3H130AC19
3H130BA74C
3H130BA95C
3H130CB06
3H130DA02Z
3H130EA02C
3H130EB03C
3H130ED01C
(57)【要約】 (修正有)
【課題】バランスウエイトの製造工数が増大することを抑制できるバランスウエイトの製造方法、バランスウエイト、および送風機を提供する。
【解決手段】本発明のバランスウエイトの製造方法の一態様は、回転体のバランスを調整するバランスウエイトを回転体に成形するバランスウエイトの製造方法であって、溶融したバランスウエイトを回転体に塗布する塗布工程と、回転体に塗布されたバランスウエイトに空気を吹き付け、バランスウエイトを回転体上に広げる吹付工程と、バランスウエイトを硬化させる硬化工程と、を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体のバランスを調整するバランスウエイトを前記回転体に成形するバランスウエイトの製造方法であって、
溶融した前記バランスウエイトを前記回転体に塗布する塗布工程と、
前記回転体に塗布された前記バランスウエイトに空気を吹き付け、前記バランスウエイトを前記回転体上に広げる吹付工程と、
前記バランスウエイトを硬化させる硬化工程と、
を含む、バランスウエイトの製造方法。
【請求項2】
前記バランスウエイトは、金属製の粉末と、熱可塑性を有し、且つ、前記粉末を含有する樹脂部と、を含む、請求項1に記載のバランスウエイトの製造方法。
【請求項3】
前記バランスウエイトは、前記回転体上に積層された複数の成形層によって構成され、
成形層ごとに前記塗布工程、前記吹付工程、および前記硬化工程を行うことによって、硬化した成形層上に成形層を成形する、請求項1に記載のバランスウエイトの製造方法。
【請求項4】
前記回転体は、送風ファンが備えるロータおよびインペラ部によって構成される、請求項1から3のいずれか一項に記載のバランスウエイトの製造方法。
【請求項5】
中心軸線を中心として回転可能な回転体のバランスを調整するバランスウエイトであって、
前記回転体の外側面のうち第1方向の一方側を向く成形面に成形され、
前記第1方向と直交する方向である第2方向の中央部は、前記第1方向の一方側に突出し、
前記第1方向の寸法は、前記第2方向の寸法よりも小さい、バランスウエイト。
【請求項6】
第1方向の一方側の部分は、第2方向に狭い平面状であり、且つ、裾が広がる曲面状である、請求項5に記載のバランスウエイト。
【請求項7】
前記回転体上に積層された複数の成形層によって構成される、請求項5に記載のバランスウエイト。
【請求項8】
前記回転体は、前記第1方向の一方側を向く第1外側面と、前記第1外側面から前記第1方向の他方側に窪む溝部と、を有し、
前記成形面は、前記溝部の内側面のうち前記第1方向の一方側を向く面であり、
前記バランスウエイトの第1方向の一方側を向く面は、前記第1外側面と間隔をあけて配置される、請求項5に記載のバランスウエイト。
【請求項9】
前記溝部は、周方向に沿って一周に亘って延びる、請求項8に記載のバランスウエイト。
【請求項10】
請求項5から9のいずれか一項に記載のバランスウエイトと、
中心軸線を中心として回転可能なロータと、
前記ロータと接続され、中心軸線を中心として回転可能なインペラ部と、
を備え、
前記回転体は、前記ロータおよび前記インペラ部によって構成される、送風機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バランスウエイトの製造方法、バランスウエイト、および送風機に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータヨークにバランスウエイトを塗布することによって、ロータヨークのアンバランス回転を修正するモータが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなモータにおいて、へら等の部材によってバランスウエイトをロータヨークに塗布する場合、バランスウエイトの厚さが厚くなり易く、バランスウエイトの表面積を増大させづらかった。したがって、従来のモータは、バランスウエイトを硬化させる工数が増大し易くバランスウエイトの製造工数が増大する虞があった。
【0005】
本発明の一つの態様は、上記事情に鑑みて、バランスウエイトの製造工数が増大することを抑制できるバランスウエイトの製造方法、バランスウエイト、および送風機を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のバランスウエイトの製造方法一つの態様は、回転体のバランスを調整するバランスウエイトを前記回転体に成形するバランスウエイトの製造方法であって、溶融した前記バランスウエイトを前記回転体に塗布する塗布工程と、前記回転体に塗布された前記バランスウエイトに空気を吹き付け、前記バランスウエイトを前記回転体上に広げる吹付工程と、前記バランスウエイトを硬化させる硬化工程と、を含む。
【0007】
本発明のバランスウエイトの一つの態様は、中心軸線を中心として回転可能な回転体のバランスを調整するバランスウエイトであって、前記回転体の外側面のうち第1方向の一方側を向く成形面に成形され、前記第1方向と直交する方向である第2方向の中央部は、前記第1方向の一方側に突出し、前記第1方向の寸法は、前記第2方向の寸法よりも小さい。
【0008】
本発明の送風機の一つの態様は、上記のバランスウエイトと、中心軸線を中心として回転可能なロータと、前記ロータと接続され、中心軸線を中心として回転可能なインペラ部と、を備える。前記回転体は、前記ロータおよび前記インペラ部によって構成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一つの態様によれば、バランスウエイトの製造方法、バランスウエイト、および送風機において、バランスウエイトの製造工数が増大することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1実施形態の送風機を示す上面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の送風機を示す
図1のII-II断面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態のインペラ部を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態のバランスウエイトを示す断面図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態のバランスウエイトの製造方法を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、第1実施形態のバランスウエイトの製造方法を示す第1の断面図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態のバランスウエイトの製造方法を示す第2の断面図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態のバランスウエイトを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る送風機について説明する。なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成を分かり易くするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせる場合がある。
【0012】
以下の説明において図には適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。Z軸方向は、回転体の中心軸線Jが延びる方向を示す。各図に示す中心軸線Jは、仮想軸線である。以下の説明では、Z軸方向と平行な方向を「軸方向」と呼ぶ。中心軸線Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼ぶ。中心軸線Jを中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。軸方向のうちZ軸の矢印が向く側(+Z側)を「上側」と呼ぶ。軸方向のうちZ軸の矢印が向く側と逆側(-Z側)を「下側」と呼ぶ。なお、上側および下側は、単に各部の相対位置関係を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係等以外の配置関係等であってもよい。X軸方向は、Z軸方向と直交する方向である。Y軸方向は、Z軸方向およびX軸方向の両方と直交する方向である。各図において周方向は、矢印θで示される。
【0013】
各図に適宜示す、第1方向D1は、回転体の成形面が向く方向である。本実施形態において、成形面はバランスウエイトが成形される面である。本実施形態において、第1方向D1は、軸方向と平行な方向である。第1方向D1は、軸方向と交差する方向であってもよい。以下の説明では、第1方向D1の矢印が向く側(+D1側)を「第1方向D1の一方側」と呼び、第1方向D1の矢印が向く側と反対側(-D1側)を「第1方向D1の他方側」と呼ぶ。各図に適宜示す、第2方向D2は、第1方向D1と交差する方向である。本実施形態において、第2方向D2は、第1方向D1と直交する方向である。
【0014】
<第1実施形態>
図1に示す本実施形態の送風機10は、例えば、電子機器を空冷するための電動式冷却ファンとして用いられる。本実施形態の送風機10は、軸方向に送風する軸流ファンである。
図2に示すように、送風機10は、モータ15と、ハウジング50と、インペラ部60と、バランスウエイト65と、を備える。また、送風機10は、回転体12を備える。
【0015】
インペラ部60は、中心軸線Jを中心として回転可能である。インペラ部60は、インペラカップ61と、複数の翼部62と、を有する。インペラカップ61は、中心軸線Jを中心として軸方向に延びる略円筒状である。インペラカップ61は、下側に開口する。インペラカップ61の内部には、モータ15が収容される。インペラカップ61は、第1外側面61aと、溝部61cと、成形面61dと、を有する。
【0016】
第1外側面61aは、インペラ部60の外側面のうち第1方向D1の一方側(+D1側)を向く面である。
図3に示すように、軸方向から見て、第1外側面61aは、中心軸線Jを中心とする略円形状である。溝部61cは、第1外側面61aから第1方向D1の他方側(-D1側)に窪む溝である。軸方向から見て、溝部61cは、中心軸線Jを中心とする円環状である。溝部61cは、周方向に沿って一周に亘って延びる。成形面61dは、インペラ部60の外側面のうち第1方向D1の一方側を向く面である。本実施形態において、成形面61dは、溝部61cの内側面のうち、第1方向D1の一方側を向く面である。軸方向から見て、成形面61dは、円環状である。成形面61dは、周方向に沿って一周に亘って延びる。
【0017】
複数の翼部62のそれぞれは、インペラカップ61の外周面から径方向外側に突出する。
図1に示すように、インペラ部60は、5個の翼部62を有する。各翼部62は、インペラカップ61の外周面に沿って周方向に並んで配置される。インペラ部60が中心軸線J回りに回転すると、各翼部62は軸方向に向けて送風する。
【0018】
図2に示すように、ハウジング50は、モータ15およびインペラ部60を内部に収容する。ハウジング50は、モータ15およびインペラ部60を保持する。ハウジング50は、周壁部51と、モータ保持部55と、を有する。
図1および
図2に示すように、周壁部51は、軸方向に延びる角筒状である。
図2に示すように、周壁部51は、インペラ部60およびモータ15を径方向外側から囲む。モータ保持部55は、中心軸線Jを中心として軸方向に延びる円筒状である。モータ保持部55は、インペラカップ61の内部に配置される。
【0019】
モータ15は、周壁部51の内部に収容される。モータ15は、ロータ20と、シャフト23と、第1軸受24aと、第2軸受24bと、ロータ軸受25と、ステータ30と、回路基板70と、を備える。本実施形態のモータ15は、ステータ30の径方向外側にロータ20が配置されるアウターロータのモータである。ロータ20は、中心軸線Jを中心として回転可能である。ロータ20は、インペラカップ61の内周面に保持される。これにより、インペラ部60は、ロータ20と接続される。ロータ20が中心軸線Jを中心として回転すると、インペラ部60は中心軸線Jを中心として回転する。ロータ20は、磁石22を有する。
【0020】
シャフト23は、中心軸線Jを中心として軸方向に延びる円柱状である。シャフト23は、モータ保持部55の内部に配置される。シャフト23の上側の部分は、第1軸受24aによって回転可能に保持される。シャフト23の下側の部分は、第2軸受24bによって回転可能に保持される。第1軸受24aおよび第2軸受24bのそれぞれは、モータ保持部55の内周面に保持される。これらにより、シャフト23は、中心軸線J回りに回転可能である。ロータ軸受25は、中心軸線Jを中心とする略円筒状である。ロータ軸受25には、シャフト23が軸方向に挿入される。ロータ軸受25には、シャフト23の上端を含む部分が嵌め合わされる。ロータ軸受25は、ロータ20を中心軸線J回りに回転可能に支持する。
【0021】
ステータ30は、中心軸線Jを囲む環状である。ステータ30は、ロータ20の内部に配置される。ステータ30は、磁石22と径方向に隙間を介して対向する。ステータ30は、ステータコア31と、コイル部35と、インシュレータ40と、接続ピン80と、を備える。
【0022】
ステータコア31は、中心軸線Jを囲む環状である。ステータコア31は、コアバック部32と、複数のティース部33と、を有する。コアバック部32は、中心軸線Jを中心とする環状である。コアバック部32は、モータ保持部55の外周面に固定される。各ティース部33は、コアバック部32の外周面から径方向外側に突出する。図示は省略するが、各ティース部33は、コアバック部32の外周面に沿って間隔をあけて配置される。インシュレータ40は、ステータコア31とコイル部35とを絶縁する。インシュレータ40は、ステータコア31に装着される。
【0023】
接続ピン80は、軸方向に延びる柱状である。接続ピン80は、導電性を有する。図示は省略するが、ステータ30は、2本の接続ピン80を有する。各接続ピン80は、インシュレータ40に保持される。図示は省略するが、各接続ピン80の下端は、回路基板70と接続される。
【0024】
コイル部35は、接続ピン80を介して、回路基板70と電気的に接続される。コイル部35に回路基板70から電流が供給されると、ステータ30が構成する電磁石の磁極と磁石22との間の磁気力によって、ロータ20に回転トルクが発生する。コイル部35は、複数のコイル本体部36と、コイル引出線38と、を有する。
【0025】
各コイル本体部36は、インシュレータ40を介してステータコア31の互いに異なるティース部33に装着される。コイル引出線38は、コイル本体部36から引き出される。図示は省略するが、本実施形態において、ステータ30は、2本のコイル引出線38を有する。各コイル引出線38は、互いに異なる接続ピン80と接続される。これにより、コイル部35は、接続ピン80を介して、回路基板70と電気的に接続される。
【0026】
回路基板70は、ステータコア31よりも下側に配置される。回路基板70は、軸方向と直交する方向に広がる板状である。上述のように、回路基板70は、接続ピン80と接続される。回路基板70は、接続ピン80を介して、コイル部35に電流を供給する。
【0027】
本実施形態において、回転体12は、送風機10が備える各部材のうち中心軸線Jを中心に回転可能な部材である。本実施形態において、回転体12は、インペラ部60およびロータ20によって構成される。本実施形態において、回転体12には、バランスウエイト65が成形される。本実施形態では、後述するように、バランスウエイト65は、インペラ部60に成形される。バランスウエイト65は、ロータ20に成形されてもよいし、インペラ部60およびロータ20のそれぞれに成形されてもよい。
【0028】
図3に示すように、バランスウエイト65は、インペラ部60の溝部61cの内部に配置される。
図4に示すように、バランスウエイト65は、成形面61dに成形される。本実施形態において、バランスウエイト65は、回転体12のバランスを調整する錘である。本実施形態のバランスウエイト65は、1つの成形層によって構成されている。本実施形態のバランスウエイト65の層数Naは1である。成形面61dの周方向における所定位置に、所定重量のバランスウエイト65を成形することによって、中心軸線Jに対する回転体12の重心位置のずれを低減できる。これにより、回転体12は、中心軸線Jを中心に安定して回転できる。なお、インペラ部60は、溝部61cを有していなくてもよく、この場合、バランスウエイト65を、第1外側面61aに成形してもよい。また、バランスウエイト65は、ロータ20に成形されてもよい。例えば、バランスウエイト65がロータ20の径方向を向く面に形成される場合、第1方向D1は、軸方向と直交する方向であり、第2方向D2は、径方向と直交する方向である。
【0029】
本実施形態において、バランスウエイト65は、金属製の粉末65bと、粉末65bを含有する樹脂部65aと、を含む。粉末65bを構成する材料としては、タングステンおよびステンレス等の金属を用いることができる。樹脂部65aは、熱可塑性を有する樹脂によって構成される。樹脂部65aを構成する材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0030】
本実施形態のバランスウエイト65は、成形面61dから第1方向D1の一方側(+D1側)に突出する山形状である。より詳細には、バランスウエイト65の第1方向D1の寸法L1は、第2方向D2の寸法L2よりも小さい。また、バランスウエイト65の第2方向D2の中央部は、第1方向D1の一方側に突出している。また、バランスウエイト65の第1方向D1の一方側の部分は、第2方向D2に狭い平面状である。バランスウエイト65は、第2方向D2に裾が広がる曲面状である。
図3に示すように、バランスウエイト65の第1方向D1の一方側を向く面は、第1外側面61aと間隔をあけて配置される。
【0031】
次に、本実施形態のバランスウエイト65の製造方法Mbについて説明する。バランスウエイト65の製造方法Mbでは、バランスウエイト65を回転体12に成形する。
図5に示すように、本実施形態のバランスウエイト65の製造方法Mbは、回転体12のバランスを検査する第1検査工程S02と、溶融したバランスウエイト65を回転体12に塗布する塗布工程S03と、回転体12に塗布されたバランスウエイト65に空気Aを吹き付け、バランスウエイト65を回転体12上に広げる吹付工程S04と、バランスウエイト65を硬化させる硬化工程S05と、バランスウエイト65が成形された回転体12のバランスを検査する第2検査工程S08と、を含む。なお、以下の説明において、「作業者等」とは、各作業を行う作業者および組立装置等を含む。各作業は、作業者のみによって行われてもよいし、組立装置のみによって行われてもよいし、作業者および組立装置によって行われてもよい。
【0032】
バランスウエイト65の成形を開始する際において、回転体21に成形されている成形層の層数であるNmは0である(S01)。また、上述のように、本実施形態のバランスウエイト65の層数Naは1である。第1検査工程S02では、回転体12のバランスを検査する。図示は省略するが、作業者等は、公知のバランス測定器によって、中心軸線Jに対する回転体12の重心位置のずれ量を測定する。バランス測定器は、回転体12を回転させて係るずれ量を測定してもよいし、回転体12を静止した状態で係るずれ量を測定してもよい。作業者等は、係るずれ量から、バランスウエイト65を成形する位置である成形位置Pm、および成形するバランスウエイト65の重量である成形重量Wbを算出する。成形位置Pmおよび成形重量Wbが算出されると、第1検査工程S02は終了する。なお、成形位置Pmおよび成形重量Wbは、バランス測定器が算出してもよい。また、本実施形態において、成形位置Pmは、成形面61dの一部である。成形位置Pmは、インペラ部60のうち成形面61d以外の部分であってもよいし、ロータ20の一部であってもよい。
【0033】
塗布工程S03では、溶融したバランスウエイト65を回転体12に塗布する。
図6に示すように、塗布工程S03において、作業者等は、インペラ部60よりも第1方向D1の一方側(+D1側)に配置された塗布装置91によって、加熱されて溶融したバランスウエイト65を成形面61dに塗布する。本実施形態において、バランスウエイト65は粉末65bを含有するため、溶融したバランスウエイト65はペースト状である。本実施形態において、塗布装置91は、所定重量の溶融したバランスウエイト65を吐出可能なディスペンサである。そのため、回転体12に塗布される溶融したバランスウエイト65の重量と成形重量Wbとの差分を小さくできる。また、塗布装置91は、図示しないヒータ等の加熱手段を有するコンテナの内部と接続される。コンテナの内部には、加熱手段によって加熱されて溶融したバランスウエイト65が収容される。コンテナ内部の溶融したバランスウエイト65は、塗布装置91に供給される。塗布装置91によって、成形面61dの成形位置Pmに成形重量Wbの溶融したバランスウエイト65が塗布されると、塗布工程S03は終了する。
【0034】
溶融したバランスウエイト65はある程度の粘度を有するため、
図7に示すように、成形面61dに塗布されたバランスウエイト65の形状は、略球体状である。また、バランスウエイト65の表面には、第1方向D1の一方側(+D1側)に突出する突出部65cが構成される。本実施形態において、成形面61dに塗布されたバランスウエイト65の第1方向D1の寸法L3は、第2方向D2の寸法L4より大きい。また、成形面61dに塗布されたバランスウエイト65の第1方向D1の寸法L3は、溝部61cの第1方向D1の寸法より大きい。なお、成形面61dに塗布されたバランスウエイト65の第1方向D1の寸法L3は、第2方向D2の寸法L4よりも小さくてもよいし、バランスウエイト65の第1方向D1の寸法L3は、溝部61cの第1方向D1の寸法より小さくてもよい。
【0035】
吹付工程S04では、回転体12に塗布されたバランスウエイト65に空気Aを吹き付け、バランスウエイト65を回転体12上に広げる。吹付工程S04において、作業者等は、インペラ部60よりも第1方向D1の一方側(+D1側)に配置された吹付装置92によって、第1方向D1の一方側からバランスウエイト65に空気Aを吹き付ける。空気Aは、図示しない圧縮機によって圧縮された圧縮空気である。なお、本実施形態において、空気Aの温度は、バランスウエイト65の樹脂部65aの融点より高い温度である。空気Aの温度は、バランスウエイト65の樹脂部65aの融点より低い温度であってもよい。
【0036】
溶融したバランスウエイト65は、空気Aの風圧によって、成形面61dに沿って第2方向D2に広がる。また、突出部65cは、空気Aの風圧によって、溶融したバランスウエイト65に取り込まれる。これらにより、バランスウエイト65は、
図4に示す山形状になる。より詳細には、バランスウエイト65の第1方向D1の寸法L1は、第2方向D2の寸法L2よりも小さくなる。また、バランスウエイト65の第2方向D2の中央部は、第1方向D1の一方側(+D1側)に突出する。また、バランスウエイト65の第1方向D1の一方側の部分は、第2方向D2に狭い平面状になる。また、バランスウエイト65は、第2方向D2に裾が広がる曲面状になる。また、バランスウエイト65の第1方向D1の一方側の端部は、第1外側面61aよりも第1方向D1の他方側(-D1側)に位置する。バランスウエイト65を回転体12上に広げると、吹付工程S04は終了する。
【0037】
硬化工程S05では、バランスウエイト65を硬化させる。硬化工程S05において、作業者等は、溶融したバランスウエイト65を冷却することによって、バランスウエイト65を硬化させる。バランスウエイト65の冷却は、常温雰囲気中で行ってもよいし、回転体12を図示しない冷却炉内等に格納して低温雰囲気中で行ってもよい。また、硬化工程S05は、吹付工程S04と兼ねてもよい。バランスウエイト65を硬化させると、硬化工程S05は終了する。なお、本実施形態において、作業者等は、バランスウエイト65が完全に硬化するよりも前に硬化工程S05を終了する。より詳細には、作業者等は、回転体12に振動が加わっても、
図4に示す形状を維持できる程度の硬度までバランスウエイト65を硬化させると硬化工程S05を終了する。なお、作業者等は、バランスウエイト65を完全に硬化させた後に硬化工程S05を終了してもよい。
【0038】
図5に示すように、硬化工程S05が終了すると、回転体21に形成されている成形層の層数であるNmは1になる(S06)。また、上述のように、成形するバランスウエイト65の層数Naは1であるため、回転体21に所定の層数のバランスウエイト65が形成されている。よって、作業者等は、第2検査工程S08を行う(S07)。
【0039】
第2検査工程S08では、バランスウエイト65が成形された回転体12のバランスを検査する。作業者等は、上述の図示しないバランス測定器等によって、バランスウエイト65が成形された回転体12の中心軸線Jに対する重心位置のずれ量を測定する。回転体12の重心位置と中心軸線Jとのずれ量が所定量以下の場合、すなわち回転体12のバランスが所定の規格内の場合(S09)、作業者等は、バランスウエイト65の製造を終了する。また、回転体12のバランスが所定の規格外の場合(S09)、作業者等は、新たに算出された成形位置Pmに成形重量Wbのバランスウエイト65を成形した後(S03~S06)、第2検査工程S08を行う。作業者等は、第2検査工程S08およびバランスウエイト65の成形を、回転体12のバランスが所定の規格内になるまで繰り返し行い、回転体12のバランスが所定の規格内になると、作業者等は、バランスウエイト65の製造を終了する(S09)。
【0040】
本実施形態のバランスウエイトの製造方法Mbによれば、溶融したバランスウエイト65を回転体12に塗布する塗布工程S03と、回転体12に塗布されたバランスウエイト65に空気Aを吹き付け、バランスウエイト65を回転体12上に広げる吹付工程S04と、バランスウエイト65を硬化させる硬化工程S05と、を含む。よって、塗布工程S03において回転体12に塗布された際には略球体状のバランスウエイト65を、吹付工程S04において第2方向D2に広げることができるため、バランスウエイト65の表面積を増大させることができる。これにより、硬化工程S05においてバランスウエイト65の表面から雰囲気および回転体12に放熱される熱量を高めることができるため、バランスウエイト65を冷却する時間を短縮できる。これにより、バランスウエイト65が硬化する時間を短縮できるため、バランスウエイト65の製造工数が増大することを抑制できる。
【0041】
また、上述のように、吹付工程S04においてバランスウエイト65を回転体12上に広げることができるため、バランスウエイト65と回転体12との接触面積を広くすることができる。これにより、バランスウエイト65と回転体12との接着強度を高めることができる。よって、送風機10の動作時において、回転体12が中心軸線J回りに回転する際にバランスウエイト65に加わる遠心力によって、バランスウエイト65が回転体12から剥がれることを抑制できる。したがって、回転体12の回転バランスを好適に安定させることができるため、回転体12を中心軸線J回りに安定して回転させることができる。これにより、送風機10が動作する際の振動、騒音を抑制できる。また、ロータ20、すなわち回転体12を支持するロータ軸受25に加わる力が増大することを抑制できるため、ロータ軸受25が摩耗等によって劣化することを抑制できる。
【0042】
また、本実施形態では、塗布工程S03においてバランスウエイト65の表面に構成された突出部65cに対して、吹付工程S04において空気Aを吹き付けるため、上述のように突出部65cをバランスウエイト65に取り込むことができる。よって、送風機10が動作する際などにおいて、バランスウエイト65から突出部65cが外れることを抑制できるため、例えばロータ20とステータ30との間に係る突出部65cが噛み込まれることを抑制できる。したがって、送風機10の動作の安定性を高めることができる。
【0043】
また、へら等の部材でバランスウエイト65を回転体12上に広げる場合、へら等の部材にペースト状のバランスウエイト65の一部が付着し易いため、回転体12に成形されるバランスウエイト65の重量を安定させづらい。これに対して、本実施形態では、吹付工程S04において、空気Aによってバランスウエイト65を回転体12上に広げるため、バランスウエイト65の重量を好適に安定させることができる。したがって、回転体12のバランスを精度よく調整できるため、回転体12を中心軸線J回りにより安定して回転させることができる。したがって、送風機10が動作する際の振動、騒音をより好適に抑制できるとともに、ロータ軸受25が劣化することをより好適に抑制できる。
【0044】
本実施形態によれば、バランスウエイト65は、金属製の粉末65bと、熱可塑性を有し、且つ、粉末65bを含有する樹脂部65aと、を含む。よって、バランスウエイト65が金属製の粉末65bを含まない場合と比較して、バランスウエイト65の比重を大きくできる。これにより、回転体12に成形するバランスウエイト65の体積を小さくできるため、塗布工程S03においてバランスウエイト65を回転体12に塗布する時間、および硬化工程S05においてバランスウエイト65を硬化させる時間のそれぞれが増大することを抑制できる。したがって、バランスウエイト65の製造工数が増大することを抑制できる。
【0045】
また、本実施形態では、上述のように空気Aの温度が樹脂部65aの融点より高い温度であるため、吹付工程S04においてバランスウエイト65に空気Aを吹き付ける際に、樹脂部65aの温度が低下して、樹脂部65aの粘度が高くなることを抑制できる。したがって、吹付工程S04において、容易にバランスウエイト65を回転体12上に広げることができる。
【0046】
本実施形態によれば、回転体12は、送風機10が備えるロータ20およびインペラ部60によって構成される。よって、ロータ20を中心軸線J回りに安定して回転させることができるため、ステータ30に対するロータ20の径方向の位置が変動することを抑制できる。したがって、ステータ30が構成する電磁石の磁極とロータ20が有する磁石22との間の磁気力が変動することを抑制できるため、ロータ20およびインペラ部60の回転速度および回転トルクを安定させることができる。これにより、送風機10の動作を安定させることができる。
【0047】
本実施形態によれば、バランスウエイト65は、回転体12の外側面のうち第1方向D1の一方側(+D1側)を向く成形面61dに成形され、第2方向D2の中央部は、第1方向D1の一方側に突出し、第1方向D1の寸法L1は、第2方向D2の寸法L2よりも小さい。よって、バランスウエイト65の第1方向D1の寸法、すなわちバランスウエイト65の高さ方向の寸法を小さくし易いため、回転体12が回転する際に、バランスウエイト65に加わる空気抵抗が増大することを抑制できる。したがって、回転体12を安定して中心軸線J回りに回転させることができるとともに、送風機10の駆動効率を高めることができる。
【0048】
また、本実施形態では、上述のように、バランスウエイト65の第1方向D1の寸法L1は、第2方向D2の寸法よりも小さい山形状であるため、バランスウエイト65の表面積を増大させることができる。これにより、上述のように、硬化工程S05において、バランスウエイト65の硬化する時間を短縮できる。したがって、バランスウエイト65の製造工数が増大することを抑制できる。また、上述のように、バランスウエイト65と回転体12との接触面積を広くすることができるため、バランスウエイト65と回転体12との接着強度を高めることができる。これにより、回転体12が中心軸線J回りに回転する際に、バランスウエイト65が回転体12から剥がれることを抑制できる。
【0049】
本実施形態によれば、バランスウエイト65の第1方向D1の一方側(+D1側)の部分は、第2方向D2に狭い平面状であり、且つ、裾が広がる曲面状である。よって、バランスウエイト65に第1方向D1の一方側に突出する突出部65cを有する場合と比較して、回転体12が回転する際にバランスウエイト65に加わる空気抵抗をより好適に低減できる。したがって、回転体12をより安定して中心軸線J回りに回転させることができるとともに、送風機10の駆動効率をより好適に高めることができる。
【0050】
本実施形態によれば、回転体12は、第1方向D1の一方側(+D1側)を向く第1外側面61aと、第1外側面61aから第1方向D1の他方側(-D1側)に窪む溝部61cと、を有し、成形面61dは、溝部61cの内側面のうち第1方向D1の一方側を向く面であり、バランスウエイト65の第1方向D1の一方側を向く面は、第1外側面61aと間隔をあけて配置される。よって、バランスウエイト65が溝部61cの内部に配置し易いため、回転体12が回転する際にバランスウエイト65に加わる空気抵抗をより好適に低減できる。したがって、回転体12をより好適に安定して中心軸線J回りに回転させることができるとともに、送風機10の駆動効率をより好適に高めることができる。
【0051】
本実施形態によれば、溝部61cは、周方向に沿って一周に亘って延びる。へら等の部材によってバランスウエイト65を溝部61cの内部に塗布する場合、へら等の部材からバランスウエイト65を掻き取るために、溝部61cの内部にリブを設ける場合がある。これに対して、本実施形態では、上述のようにバランスウエイト65は、塗布装置91によって成形面61dに塗布される。よって、溝部61cが一周に亘って延びる構成、すなわち溝部61cにリブが設けられない構成であっても、容易に成形面61dにバランスウエイト65を塗布できる。したがって、本実施形態では、溝部61cの形状の簡素化を図ることができるため、インペラ部60を成形する際に使用される金型の構造の簡素化を図ることができる。したがって、係る金型の製造コストが増大することを抑制できる。
【0052】
本実施形態によれば、送風機10は、バランスウエイト65と、中心軸線Jを中心として回転可能なロータ20と、ロータ20と接続され、中心軸線Jを中心として回転可能なインペラ部60と、を備え、回転体12は、ロータ20およびインペラ部60によって構成される。よって、上述のように、吹付工程S04においてバランスウエイト65の表面積を増大させることができるため、硬化工程S05においてバランスウエイト65が硬化する時間を短縮できる。したがって、バランスウエイト65の製造工数が増大することを抑制できるため、送風機10の製造工数が増大することを抑制できる。
【0053】
<第2実施形態>
図8に示すように、本実施形態の送風機210が備えるバランスウエイト265は、回転体12上に積層された複数の成形層266,267によって構成される。以下の説明において、上述の第1実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0054】
バランスウエイト265は、成形面61dから第1方向D1の一方側(+D1側)に突出する山形状である。より詳細には、バランスウエイト265の第1方向D1の寸法L1は、第2方向D2の寸法L2よりも小さい。また、バランスウエイト265の第2方向D2の中央部は、第1方向D1の一方側に突出している。また、バランスウエイト265の第1方向D1の一方側の部分は、第2方向D2に狭い平面状である。バランスウエイト265は、第2方向D2に裾が広がる曲面状である。図示は省略するが、バランスウエイト265の第1方向D1の一方側を向く面は、第1外側面61aと間隔をあけて配置される。本実施形態のバランスウエイト265は、2層の成形層266,267によって構成される。本実施形態のバランスウエイト265の層数Naは2である。バランスウエイト265は、3層以上の成形層によって構成されてもよい。本実施形態のバランスウエイト265は、第1成形層266および第2成形層267によって構成される。
【0055】
第1成形層266は、成形面61dに成形される。第1成形層266は、成形面61dから第1方向D1の一方側(+D1側)に突出する山形状である。第2成形層267は、第1成形層266上に形成される。第2成形層267は、第1成形層266から第1方向D1の一方側に突出する山形状である。第2成形層267は、第1成形層266と第1方向D1に繋がる。
【0056】
次に、本実施形態のバランスウエイト265の製造方法Mbについて説明する。本実施形態では、複数の成形層266,267ごとに上述の塗布工程S03、吹付工程S04、および硬化工程S05を行う。これにより、硬化した第1成形層266上に第2成形層267を成形する。以下の説明では、上述の第1実施形態と同一の作業については、その説明を省略する場合がある。
図5に示すように、バランスウエイト265の成形を開始する際において、回転体21に成形されている成形層の層数であるNmは0である(S01)。また、上述のように、本実施形態において成形するバランスウエイト265の層数Naは2である。
【0057】
作業者等は、第1検査工程S02において、回転体12のうちバランスウエイト265を成形する位置である成形位置Pm、および成形するバランスウエイト265の重量である成形重量Wbを算出する。次に、作業者等は、成形面61dに第1成形層266を成形する。まず、作業者等は、塗布工程S03において、塗布装置91によって、加熱されて溶融したバランスウエイトを成形面61dに塗布する。このとき、成形面61dに塗布されるバランスウエイトの重量である第1重量Wb1は、成形重量Wbよりも小さい重量である。第1重量Wb1は、第1成形層266の重量である。次に、作業者等は、吹付工程S04において、吹付装置92によって、溶融したバランスウエイトに空気Aを吹き付け、溶融したバランスウエイトを成形面61dに沿って第2方向D2に広げる。これにより、第1成形層266は、
図8に示す山形状になる。次に、作業者等は、硬化工程S05において、第1成形層266を冷却することによって硬化させると、回転体12に第1成形層266が成形される。
【0058】
硬化工程S05が終了すると、回転体21に形成されている成形層の層数であるNmは1になる(S06)。また、上述のように、成形するバランスウエイト65の層数Naは2であるため、次に、作業者等は、第1成形層266上に第2成形層267を成形する(S07)。
【0059】
作業者等は、まず、塗布工程S03において、加熱されて溶融したバランスウエイトを硬化した第1成形層266上に塗布する。このとき、第1成形層266上に塗布されたバランスウエイトの重量である第2重量Wb2は、成形重量Wbと第1重量Wb1との差分の重量である。第2重量Wb2は、第2成形層267の重量である。次に、作業者等は、吹付工程S04において、吹付装置92によって、溶融したバランスウエイトに空気Aを吹き付け、溶融したバランスウエイトを第1成形層266の表面に沿って第2方向D2に広げる。これにより、第2成形層267は、
図8に示す山形状になる。次に、作業者等は、硬化工程S05において、第2成形層267を冷却することによって硬化させる。これにより、第1成形層266上に第2成形層267が成形され、回転体12にバランスウエイト265が成形される。
図5に示すように、硬化工程S05が終了すると、回転体21に形成されている成形層の層数であるNmは2になる(S06)。また、上述のように、成形するバランスウエイト265の層数Naは2であるため、回転体21に所定の層数のバランスウエイト65が形成される。よって、作業者等は、第2検査工程S08を行う(S07)。
【0060】
第2検査工程S08において、作業者等は、バランスウエイト265が成形された回転体12のバランスを検査する。回転体12のバランスが所定の規格内の場合(S09)、作業者等は、バランスウエイト265の製造を終了する。また、回転体12のバランスが所定の規格外の場合(S09)、作業者等は、新たに算出された成形位置Pmに成形重量Wbのバランスウエイトを成形した後(S03~S05)、第2検査工程S08を行う。作業者等は、第2検査工程S08およびバランスウエイト265の成形を、回転体12のバランスが所定の規格内になるまで繰り返し行う。回転体12のバランスが所定の規格内になると、作業者等は、バランスウエイト265の製造を終了する。
【0061】
なお、第1検査工程S02において算出したバランスウエイト265の成形重量Wbが、一度に成型できる重量を超えていた場合には、第2検査工程S08を行わずバランスウエイト265の成形を行っても良い。また、バランスウエイト265が、3層以上の成形層によって構成される場合、成形するバランスウエイト265の層数Naはバランスウエイト265の層数に設定され、成形層ごとに塗布工程S03、吹付工程S04、および硬化工程S05を行う。これにより、回転体12上に3層以上の成形層が積層された、バランスウエイト265を成形できる。
【0062】
本実施形態によれば、バランスウエイト265は、回転体12上に積層された複数の成形層266,267によって構成され、成形層266,267ごとに塗布工程S03、吹付工程S04、および硬化工程S05を行うことによって、硬化した成形層266上に成形層267を成形する。回転体12に1回の塗布で重量が重いバランスウエイト265を成形する場合、溶融したバランスウエイト265に空気Aを吹き付けて、バランスウエイト265を第2方向D2に広げる時間、およびバランスウエイト265を硬化させる時間のそれぞれが増大し易い。したがって、吹付工程S04の作業工数および硬化工程S05の作業工数が増大し易い。これに対して、本実施形態では、回転体12に第1成形層266を成形した後に、第2成形層267を第1成形層266上に成形するため、第1成形層266の第1重量Wb1および第2成形層267の第2重量Wb2のそれぞれが増大することを抑制できる。これにより、第1成形層266および第2成形層267のそれぞれを成形する際において、吹付工程S04の作業工数および硬化工程S05の作業工数が増大することを抑制できる。したがって、重量が重いバランスウエイト265を成形する場合であっても、バランスウエイト265の製造工数が増大することを抑制できる。
【0063】
本実施形態によれば、バランスウエイト265は、回転体12上に積層された複数の成形層266,267によって構成される。よって、上述のように、第1成形層266および第2成形層267のそれぞれを成形する際において、吹付工程S04の作業工数および硬化工程S05の作業工数が増大することを抑制できる。したがって、重量が重いバランスウエイト265を成形する場合であっても、バランスウエイト265の製造工数が増大することを抑制できる。
【0064】
以上に、本発明の一実施形態を説明したが、実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。例えば、上述した実施形態に示したバランスウエイト、モータおよび送風機の用途は特に限定されない。
【0065】
送風機は、例えば、径方向外側に送風する遠心ファンであってもよい。この場合においても、回転体にバランスウエイトを成形することによって、中心軸線に対する回転体の重心位置のずれを小さくできるため、回転体を中心軸線J回りに安定して回転させることができる。
【0066】
バランスウエイトの製造方法は、本実施形態に限定されず、例えば、吹付工程と硬化工程は同時に行われてもよい。この場合、空気の温度を樹脂部の融点よりも低い温度にすることにより、バランスウエイトを成形面上に広げつつ、バランスウエイトを冷却して硬化させることができる。そのため、バランスウエイトの製造工数が増大することをより好適に抑制できる。
【0067】
なお、本技術は以下のような構成をとることが可能である。
(1) 回転体のバランスを調整するバランスウエイトを前記回転体に成形するバランスウエイトの製造方法であって、溶融した前記バランスウエイトを前記回転体に塗布する塗布工程と、前記回転体に塗布された前記バランスウエイトに空気を吹き付け、前記バランスウエイトを前記回転体上に広げる吹付工程と、前記バランスウエイトを硬化させる硬化工程と、を含む、バランスウエイトの製造方法。
(2) 前記バランスウエイトは、金属製の粉末と、熱可塑性を有し、且つ、前記粉末を含有する樹脂部と、を含む、(1)に記載のバランスウエイトの製造方法。
(3) 前記バランスウエイトは、前記回転体上に積層された複数の成形層によって構成され、成形層ごとに前記塗布工程、前記吹付工程、および前記硬化工程を行うことによって、硬化した成形層上に成形層を成形する、(1)または(2)に記載のバランスウエイトの製造方法。
(4) 前記回転体は、送風ファンが備えるロータおよびインペラ部によって構成される、(1)から(3)のいずれか一項に記載のバランスウエイトの製造方法。
(5) 中心軸線を中心として回転可能な回転体のバランスを調整するバランスウエイトであって、前記回転体の外側面のうち第1方向の一方側を向く成形面に成形され、前記第1方向と直交する方向である第2方向の中央部は、前記第1方向の一方側に突出し、前記第1方向の寸法は、前記第2方向の寸法よりも小さい、バランスウエイト。
(6) 第1方向の一方側の部分は、第2方向に狭い平面状であり、且つ、裾が広がる曲面状である、(5)に記載のバランスウエイト。
(7) 前記回転体上に積層された複数の成形層によって構成される、(5)または(6)に記載のバランスウエイト。
(8) 前記回転体は、前記第1方向の一方側を向く第1外側面と、前記第1外側面から前記第1方向の他方側に窪む溝部と、を有し、前記成形面は、前記溝部の内側面のうち前記第1方向の一方側を向く面であり、前記バランスウエイトの第1方向の一方側を向く面は、前記第1外側面と間隔をあけて配置される、(5)から(7)のいずれか一項に記載のバランスウエイト。
(9) 前記溝部は、周方向に沿って一周に亘って延びる、(8)に記載のバランスウエイト。
(10) (5)から(9)のいずれか一項に記載のバランスウエイトと、中心軸線を中心として回転可能なロータと、前記ロータと接続され、中心軸線を中心として回転可能なインペラ部と、を備え、前記回転体は、前記ロータおよび前記インペラ部によって構成される、送風機。
【符号の説明】
【0068】
10,210…送風機、12…回転体、20…ロータ、60…インペラ部、61a…第1外側面、61c…溝部、61d…成形面、65,265…バランスウエイト、65a…樹脂部、65b…粉末、266,267…成形層、A…空気、D1…第1方向、D2…第2方向、J…中心軸線、S03…塗布工程、S04…吹付工程、S05…硬化工程