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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176853
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】防水構造体
(51)【国際特許分類】
   G03B 17/08 20210101AFI20241212BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20241212BHJP
【FI】
G03B17/08
G03B17/02
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095689
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】重松 正康
【テーマコード(参考)】
2H101
【Fターム(参考)】
2H101CC58
(57)【要約】
【課題】外装部材の隙間に水滴が侵入した場合に水滴を外部に排出することが可能な防水構造体を提供すること。
【解決手段】防水構造体は、ユーザーの操作に応じて移動する操作部材と、操作部材が備える第1面に対向する第2面を備え、操作部材を保持する保持部材とを有し、第1面は、操作に応じて第1面と第2面との間に形成された隙間に侵入した水滴を外部に排出する構成を含む。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザーの操作に応じて移動する操作部材と、
前記操作部材が備える第1面に対向する第2面を備え、前記操作部材を保持する保持部材とを有し、
前記第1面は、前記操作に応じて前記第1面と前記第2面との間に形成された隙間に侵入した水滴を外部に排出する構成を含むことを特徴とする防滴構造体。
【請求項2】
前記構成は、前記水滴に対して、前記水滴が前記外部に排出される力を与える第3面を備えることを特徴とする請求項1に記載の防滴構造体。
【請求項3】
前記第1面と前記第2面の少なくとも一方には、微細加工による撥水処理が施されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の防滴構造体。
【請求項4】
前記操作部材は、回転移動可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の防滴構造体。
【請求項5】
前記構成は、前記水滴に対して、前記水滴が前記外部に排出される力を与える第3面を備え、
前記操作部材は、円形状を有し、
前記操作部材の回転方向を含む面に直交する方向から見た場合、前記第3面は前記操作部材の径方向に対して45度以上傾いていることを特徴とする請求項4に記載の防滴構造体。
【請求項6】
前記構成は、前記水滴に対して、前記水滴が前記外部に排出される力を与える第3面を備え、
前記操作部材の回転方向を含む面に直交する方向から見た場合、前記操作部材の径方向において、前記第3面の前記外部の側の端部は、前記第2面の前記外部の側の端部よりも前記外部の側に位置することを特徴とする請求項4に記載の防滴構造体。
【請求項7】
前記操作部材は、直進移動可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の防滴構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電子機器は、雨中や水辺での使用シチュエーションを想定し、高い防水性能を有することが要求されている。特許文献1には、それぞれ相対向する各端面に撥液性を有するように成型された微細構造が設けられている構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-166448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の構成では、水滴が端面の間に形成された隙間に侵入した場合に水滴を外部に排出することはできず、水滴が筐体の内部に侵入してしまう可能性がある。
【0005】
本発明は、水滴が外装部材に形成された隙間に侵入した場合に水滴を外部に排出することが可能な防水構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面としての防水構造体は、ユーザーの操作に応じて移動する操作部材と、操作部材が備える第1面に対向する第2面を備え、操作部材を保持する保持部材とを有し、第1面は、操作に応じて第1面と第2面との間に形成された隙間に侵入した水滴を外部に排出する構成を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、外装部材の隙間に水滴が侵入した場合に水滴を外部に排出することが可能な防水構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る防水構造体の一例である撮像装置の背面図である。
図2図1のX-X線断面図である。
図3図2の一部を拡大した図である。
図4】保持部材の斜視図である。
図5】微細加工形状が転写された樹脂部品の表面の拡大イメージ図である。
図6図3のY-Y線断面図である。
図7】操作部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係る防滴構造体(防水構造体)の一例である撮像装置100の背面図である。筐体1は、撮像装置100の外装カバーである。筐体1には、操作部材2が設けられている。操作部材2は、円形状のダイヤル操作部材であり、回転中心Aを中心に回転移動可能である。なお、円形状は、厳密に円形状である場合だけでなく、実質的に円形状(略円形状)である場合も含んでいるものとする。また、回転移動可能には、360度回転移動可能である場合や、所定角度だけ回転移動可能(所定角度範囲を往復移動可能)である場合が含まれているものとする。また、操作部材2は、本実施形態では、回転移動可能に構成されているが、本発明はこれに限定されない。例えば、操作部材2は、直進移動可能に構成されていてもよい。また、本発明は、撮像装置100に限らず、他の携帯電子機器にも適用可能である。
【0011】
図2は、図1のX-X線断面図である。保持部材3は、操作部材2を保持する。保持部材3は、接続部3aで不図示のねじ等により筐体1に固定されている。筐体1と保持部材3を接続部3a以外の部分で接触させると、図2の紙面上下方向の位置精度が悪化してしまう。そのため、筐体1と保持部材3は、接続部3a以外では接触しないように構成されている。このような構成により、筐体1と保持部材3のそれぞれに設けられた互いに対向する合わせ面1a,3bの間には隙間d1が形成されている。
【0012】
図3は、図2の一部を拡大した図である。図4は、保持部材の斜視図である。水滴4,5はそれぞれ、合わせ面1a,3bの間に形成された隙間d1に侵入しようとしている水滴と隙間d1に侵入している水滴である。
【0013】
図5は、フェムト秒レーザーの照射により表面に微細加工が施された金型を用いて成型され、微細加工形状が転写された樹脂部品の表面の拡大イメージ図である。微細加工が施された表面における液滴の接触角は微細加工が施されていない面における接触角よりも大きく、微細加工が施された表面は撥水効果を得られることが知られている。なお、図5における微細加工形状はピッチが40マイクロメートル程度で周期的に配列された凸形状となっているが、別の微細加工形状であっても撥水効果を付与することはできる。
【0014】
本実施形態では、合わせ面1a,3bの少なくとも一方には、前述した微細加工による撥水処理が施されている。撥水処理が施された面における液滴の接触角はその他の面における接触角よりも大きく、水滴4には隙間d1の外側に移動させる(隙間d1に侵入させない)力が働く。これにより、水滴4が筐体1の内部に侵入することを防ぐことができる。また、シーリング部材等で隙間d1を埋める構成をとる必要がなくなり、撮像装置100の大型化を抑制することができる。なお、隙間d1は、0.05mm以上0.4mm以下であることが望ましく、狭いほど撥水効果が高くなる。
【0015】
本実施形態では、筐体1と保持部材3は金型による成型によって作製されており、撥水処理のための微細加工はあらかじめ金型に施されている。これにより、筐体1と保持部材3の成型と同時に所望の表面には、金型から撥水機能を有する微細加工形状が転写される。合わせ面1a,3bの少なくとも一方に撥水処理を施すためには、筐体1と保持部材3の少なくとも一方は金型から微細加工形状が転写されやすい樹脂材料により構成されることが好ましい。本実施形態では、微細加工形状は金型から転写されるため、部品に二次的に撥水被膜等を付与する方法よりも作業工程が減り、結果として工数を抑制しつつ撥水処理を施すことが可能である。
【0016】
また、微細加工が施された面は、外力に弱く、脆いため、合わせ面1a,3bが接触すると微細加工形状が破壊され、撥水能力が低下する恐れがある。そこで、本実施形態では、合わせ面3bは、合わせ面1aに対して傾くように(平行にならないように)設けられている。これにより、合わせ面1a,3bが接触したとしても、合わせ面1aは合わせ面3bの頂点部3c,3dのみで接触するため、微細加工形状が破壊されることを抑制することができる。なお、合わせ面3bの合わせ面1aに対する傾きは、隙間d1が0.05mm以上0.4mm以下以内になるように設定される。
【0017】
また、合わせ面3bの合わせ面1aに対する傾きは、筐体1の外側(外部の側)に向かって隙間d1が狭くなるように設定されている。これにより、隙間d1に侵入している水滴5には、毛細管現象により、筐体1の内部から外部に排出する力が働き、水滴5は筐体1の外部に移動する。これにより、水滴が隙間d1に侵入しても、水滴を筐体1の内部から外部に排出する力が働き、水滴の筐体1の内部への侵入を抑制することが可能となる。
【0018】
また、合わせ面3bは、合わせ面1aに対する傾斜角が異なる傾斜面を2つ以上含むことが好ましい。本実施形態では、合わせ面3bは、第1の傾斜面31bと第2の傾斜面32bとを含む。このような構成により、水滴が合わせ面1aと第1の傾斜面31bとの間に形成された隙間d1に浸入したとしても、合わせ面1bと第2の傾斜面32bとの間に形成された隙間d1に浸入しようとした際に、水滴には撥水効果による水滴の侵入を防ぐ力が働く。これにより、水滴の筐体1の内部への侵入をより抑制することができる。
【0019】
また、合わせ面3bの外側に設けられた面3eに親水加工を施すことが好ましい。これにより、水滴には隙間d1の外側に引っ張るが働き、水滴の隙間d1への侵入をより抑制することができる。
【0020】
上述した構成によれば、工数の増加を抑制しつつ筐体1と筐体1に接続される保持部材3との合わせ部における防水性能を確保することが可能になる。また、衝撃により合わせ面1a,3bが接触する場合でも実際に接触する領域は小さく、微細加工形状の破壊が抑制されるため、撥水能力の低下を抑えることができる。また、合わせ面1a,3bの間に形成された隙間d1に水滴が浸入したとしても、毛細管現象により、水滴には筐体1の外部に排出する力が働き、水滴の筐体1の内部への侵入を抑制することが可能になる。
【0021】
以下、合わせ面の間に形成された隙間に水滴が浸入した場合に、ユーザーによる操作部材2に対する通常操作に応じて水滴を筐体1の外部に排出する構成について説明する。
【0022】
図6は、図3のY-Y線断面図である。図7は、操作部材2の斜視図である。図3に示されるように、操作部材2と保持部材3のそれぞれは、互いに対向する合わせ面(第1の面)2aと合わせ面(第2の面)3fを備える。合わせ面2a,3fは、操作部材2の周方向に沿って連続的に設けられている。合わせ面2a,3dの間には隙間d2が形成されている。水滴6は、隙間d2に侵入している水滴である。
【0023】
合わせ面2a,3fの少なくとも一方には、前述した微細加工による撥水処理が施されている。撥水処理が施された面における液滴の接触角はその他の面における接触角よりも大きく、水滴には隙間d2の外側に移動させる(隙間d2に侵入させない)力が働く。これにより、水滴が筐体1の内部に侵入することを防ぐことができる。また、シーリング部材等で隙間d2を埋める構成をとる必要がなくなり、撮像装置100の大型化を抑制することができる。なお、隙間d2は、0.05mm以上0.4mm以下であることが望ましく、狭いほど撥水効果が高くなる。また、本実施形態では、隙間d2の外側とは、操作部材2の径方向において操作部材2の回転中心Aの側とは反対の側である。
【0024】
本実施形態では、操作部材2と保持部材3は金型による成型によって作製されており、撥水処理のための微細加工はあらかじめ金型に施されている。これにより、操作部材2と保持部材3の成型と同時に所望の表面には、金型から撥水機能を有する微細加工形状が転写される。合わせ面2a,3fの少なくとも一方に撥水処理を施すためには、操作部材2と保持部材3の少なくとも一方は金型から微細加工形状が転写されやすい樹脂材料により構成されることが好ましい。本実施形態では、微細加工形状は金型から転写されるため、部品に二次的に撥水被膜等を付与する方法よりも作業工程が減り、結果として工数を抑制しつつ撥水処理を施すことが可能でなる。
【0025】
操作部材2の合わせ面2a上には、水滴6を外部(隙間d2の外側)に排出する水滴排出用突起(構成、凸部)2bが設けられている。水滴排出用突起2bは、水滴6に対して、水滴6が外部に排出される力を与える斜面(第3面)2cを備える。ユーザーによる操作部材2に対する操作に応じて、水滴排出用突起2bは矢印Bの方向又は矢印Cの方向へ保持部材3に対して相対的に移動する。水滴排出用突起2bの移動に応じて、水滴6は斜面2cと接触する。このとき、水滴6には隙間d2の外側に移動させる(隙間d2から排出される)力が働き、水滴6は隙間d2の外側に移動する。これにより、水滴が隙間d2に侵入した場合でも、ユーザーによる操作部材2の操作に応じて水滴には筐体1の内部から外部に排出させる力が働き、水滴の筐体1の内部への侵入を抑制することができる。
【0026】
斜面2cは、操作部材2の回転方向を含む面に直交する方向から見た場合、操作部材2の径方向Zに対して45度以上傾いていることが好ましい。これにより、水滴6を隙間d2の外側に排出する効率を向上させることができる。なお、斜面2cが操作部材2の径方向Zに対して45度以上傾いている場合には、厳密に45度以上傾いている場合だけでなく、実質的に45度以上(略45度以上)傾いている場合も含むものとする。
【0027】
また、斜面2cの先端部2dは、操作部材2の径方向において、保持部材3の合わせ面3fの端部3gよりも外側に位置していることが好ましい。これにより、水滴6を隙間d2から確実に排出することができる。
【0028】
なお、本実施形態では、水滴排出用突起2bの数は1つであるが、2つ以上であってもよい。
【0029】
以上説明したように、本実施形態の構成によれば、合わせ面2a,3fの間に形成された隙間d2に水滴6が浸入した場合にユーザーによる操作部材2に対する操作に応じて、水滴6を隙間d2の外側に排出することができる。これにより、水滴6の筐体1の内部への侵入を抑制することが可能になる。
【0030】
本実施形態の開示は、以下の構成を含む。
(構成1)
ユーザーの操作に応じて移動する操作部材と、
前記操作部材が備える第1面に対向する第2面を備え、前記操作部材を保持する保持部材とを有し、
前記第1面は、前記操作に応じて前記第1面と前記第2面との間に形成された隙間に侵入した水滴を外部に排出する構成を含むことを特徴とする防滴構造体。
(構成2)
前記構成は、前記水滴に対して、前記水滴が前記外部に排出される力を与える第3面を備えることを特徴とする構成1に記載の防滴構造体。
(構成3)
前記第1面と前記第2面の少なくとも一方には、微細加工による撥水処理が施されていることを特徴とする構成1又は2に記載の防滴構造体。
(構成4)
前記操作部材は、回転移動可能であることを特徴とする構成1乃至3の何れか一つの構成に記載の防滴構造体。
(構成5)
前記構成は、前記水滴に対して、前記水滴が前記外部に排出される力を与える第3面を備え、
前記操作部材は、円形状を有し、
前記操作部材の回転方向を含む面に直交する方向から見た場合、前記第3面は前記操作部材の径方向に対して45度以上傾いていることを特徴とする構成4に記載の防滴構造体。
(構成6)
前記構成は、前記水滴に対して、前記水滴が前記外部に排出される力を与える第3面を備え、
前記操作部材の回転方向を含む面に直交する方向から見た場合、前記操作部材の径方向において、前記第3面の前記外部の側の端部は、前記第2面の前記外部の側の端部よりも前記外部の側に位置することを特徴とする構成4又は5に記載の防滴構造体。
(構成7)
前記操作部材は、直進移動可能であることを特徴とする構成1又は2に記載の防滴構造体。
【0031】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0032】
2a 合わせ面(第1面)
2b 水滴排出用突起(構成)
3 保持部材
3f 合わせ面(第2面)
6 水滴
d2 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7