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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176855
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】緩衝器及び緩衝器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/32 20060101AFI20241212BHJP
   F16F 9/58 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
F16F9/32 H
F16F9/58 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095692
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 和哉
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA50
3J069CC06
3J069CC29
3J069CC30
3J069DD48
(57)【要約】
【課題】バンパキャップの抜け荷重が確保され、かつバンパキャップの装着時の割れを防止することが可能な緩衝器及び緩衝器の製造方法を提供する。
【解決手段】シリンダ10の軸方向一端部11に径方向外側へ突出する突出部21を形成し、他方、バンパキャップ30の筒部36に径方向内側へ突出するストッパ部41を形成し、ストッパ部41の軸方向一端側の端面43を、突出部21の軸方向他端側の受面24に当接させるように構成したので、ストッパ部41の端面43を突出部21の受面24によって受けることでバンパキャップ30の抜け荷重を確保することができ、かつバンパキャップ30の割れを防止することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体が封入されたシリンダと、
前記シリンダの軸方向一端部から突出するピストンロッドと、
前記シリンダの軸方向一端部に装着され、前記ピストンロッドが挿通される穴が形成された底部と前記シリンダの外周を覆う筒部とを有する有底筒形のバンパキャップと、
を備える緩衝器であって、
前記シリンダの軸方向一端部に形成され、前記シリンダの側壁から径方向外側へ突出する突出部と、
前記筒部の径方向内側に形成され、前記突出部に当接されるストッパ部と、
を有することを特徴とする緩衝器。
【請求項2】
請求項1に記載の緩衝器であって、
前記ストッパ部は、前記突出部を前記シリンダの軸方向に受ける突起部を有することを特徴とする緩衝器。
【請求項3】
請求項1に記載の緩衝器であって、
前記ストッパ部は、前記筒部の開口側の端から前記筒部の底部側へ向かって前記筒部の軸方向へ延びる第1溝部と、該第1溝部から前記筒部の周方向へ延びる第2溝部と、を有することを特徴とする緩衝器。
【請求項4】
請求項1に記載の緩衝器であって、
前記ストッパ部は、前記筒部の周方向に複数段で形成された段部を有し、
前記複数段の段部は、突出高さが前記筒部の周方向一端側から周方向他端側へ向かって順次高くなることを特徴とする緩衝器。
【請求項5】
請求項1に記載の緩衝器であって、
前記シリンダの軸方向一端部と前記バンパキャップの底部との間に介在されるスペーサを有し、
前記突出部は、第1突出部と、該第1突出部に対して軸方向へ間隔をあけて設けられる第2突出部と、を有することを特徴とする緩衝器。
【請求項6】
作動流体が封入されたシリンダと、
前記シリンダの軸方向一端部から突出するピストンロッドと、
前記シリンダの軸方向一端部に装着され、前記ピストンロッドが挿通される穴が形成された底部と前記シリンダの外周を覆う筒部と該筒部の径方向内側に形成されて前記突出部に当接されるストッパ部とを有する有底筒形のバンパキャップと、
を備える緩衝器の製造方法であって、
前記シリンダを固定治具に固定するステップと、
前記バンパキャップを前記シリンダに対して軸方向へ移動させ、前記ストッパ部を前記突出部に対して前記シリンダの軸方向他端側に配置するステップと、
前記バンパキャップを回転させ、前記ストッパ部を前記突出部に当接させるステップと、
を含むことを特徴とする緩衝器の製造方法。
【請求項7】
作動流体が封入されたシリンダと、
前記シリンダの軸方向一端部から突出するピストンロッドと、
前記シリンダの軸方向一端部に装着され、前記ピストンロッドが挿通される穴が形成された底部と径方向外側へ突出する突起が形成され前記シリンダの外周を覆う筒部と該筒部の径方向内側に形成されて前記突出部に当接されるストッパ部とを有する有底筒形のバンパキャップと、
を備える緩衝器の製造方法であって、
前記シリンダを固定治具に固定するステップと、
前記バンパキャップを前記シリンダに対して軸方向へ移動させ、前記ストッパ部を前記突出部に対して前記シリンダの軸方向他端側に配置するステップと、
回転治具に形成された斜面を前記突起に当接させるステップと、
前記回転治具を前記シリンダの軸方向へ移動させる過程で、前記突起を前記斜面に沿って移動させることにより前記バンパキャップを回転させるステップと、
前記ストッパ部を前記突出部に当接させるステップと、
を含むことを特徴とする緩衝器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝器及び緩衝器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、有底筒状の本体1と、該本体1の筒部2の内側に突出する複数個の突起部6とを備えるバンプストッパSが開示されている。特許文献1に記載のバンプストッパS(以下「従来のバンパキャップ」と称する)は、アウタシェル11(シリンダ)が挿入されて筒部2が押し広げられることにより、突出部6がアウタシェル11を緊縛してアウタシェル11に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-025950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のバンパキャップは、抜け荷重を確保するために突出部とアウタシェルとのしめしろを大きくすると、装着時に割れが発生するおそれがある。
本発明は、バンパキャップの抜け荷重を確保し、かつバンパキャップの装着時の割れを防止した緩衝器及び緩衝器の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の緩衝器は、シリンダの軸方向一端部に形成され、前記シリンダの側壁から径方向外側へ突出する突出部と、筒部の径方向内側に形成され、前記突出部に当接されるストッパ部と、を有することを特徴とする。
本発明の緩衝器の製造方法は、シリンダを固定治具に固定するステップと、バンパキャップを前記シリンダに対して軸方向へ移動させ、ストッパ部を突出部に対してシリンダの軸方向他端側に配置するステップと、前記バンパキャップを回転させ、前記ストッパ部を前記突出部に当接させるステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、バンパキャップの抜け荷重が確保され、かつバンパキャップの装着時の割れを防止することが可能な緩衝器及び緩衝器の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る緩衝器の説明図であって、シリンダに装着されたバンパキャップの一部を切り欠いて示す図である。
図2図1におけるA-A矢視図であって、バンパキャップのみを示す。
図3図1におけるB-B矢視図であって、シリンダのみを示す。
図4】第1実施形態に係る緩衝器の製造方法のフローチャートである。
図5】第1実施形態に係る緩衝器の製造方法の説明図であって、シリンダに被せたバンパキャップを軸方向他端側へ移動させる過程を示す図である。
図6】第1実施形態に係る緩衝器の製造方法の説明図であって、ストッパ部が突出部の軸方向他端側に配置された状態を示す図である。
図7】第1実施形態に係る緩衝器の製造方法の説明図であって、ストッパ部が突出部に当接された状態を示す図である。
図8】第2実施形態の変形例の説明図であって、ストッパ部が円形に形成された態様を示す図である。
図9】第2実施形態の変形例の説明図であって、ストッパ部が縦長の長方形に形成された態様を示す図である。
図10】第3実施形態の説明図であって、突出部が段部に掛かる前の状態を示す概念図である。
図11】第3実施形態の説明図であって、突出部が段部に掛かった状態を示す概念図である。
図12】第4実施形態の説明図であって、スペーサが使用されている態様を示す。
図13】第4実施形態の説明図であって、スペーサが使用されていない態様を示す。
図14】第5実施形態の説明図であって、突出部がストッパ部の第2溝部の端面に当接された状態を示す図である。
図15】バンパキャップを回転させる治具の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態を添付した図を参照して説明する。
第1実施形態に係る緩衝器1は、自動車のサスペンション装置を構成する油圧緩衝器である。
【0009】
図1に示されるように、緩衝器1は、作動流体が封入されたシリンダ10を有する。緩衝器1は、シリンダ10の軸方向一端部11の端面12から突出するピストンロッド3を有する。緩衝器1は、ピストンロッド3の軸方向一端部(図示省略)に取り付けられたバンプストップラバー5を有する。シリンダ10の軸方向一端部11には、バンパキャップ30が装着される。バンパキャップ30は、ピストンロッド3の縮長時に、底部31でバンプストップラバー5を受ける。
【0010】
図1又は図2に示されるように、シリンダ10の軸方向一端部11の外周面14(側壁)には、シリンダ10の径方向外側へ突出する複数個(本実施形態では「4個」)の突出部21が形成される。複数個の突出部21は、シリンダ10の周方向に等しい間隔をあけて配置される。突出部21は、正面視(図1参照)で長方形(正方形)に形成された案内面22を有する。案内面22は、シリンダ10と同軸の円筒面に一致する曲面(円筒面の一部)によって形成される。
【0011】
突出部21は、シリンダ10の軸方向一端側(図1における「上側」)に向けられた端面23を有する。端面23は、シリンダ10の軸線Lに垂直な平面(以下「シリンダ10の軸直角平面」と称する)に対して平行に設けられる。突出部21は、シリンダ10の軸方向他端側(図1における「下側」)に向けられた受面24を有する。受面24は、端面23に対して平行に設けられる。突出部21は、案内面22の中心点を通るシリンダ10の軸平面に対して対称に設けられた一対の端面25,26を有する。なお、案内面22と該案内面22に隣接する各面(23,24,25,26)との稜には、面取り(符号省略)が形成されている。
【0012】
バンパキャップ30は、有底円筒形に形成された樹脂成型部品であり、図1又は図3に示されるように、底部31と筒部36とを有する。底部31の中央には、ピストンロッド3が挿通される穴32が形成される。底部31の他端側(図1における「下側」)の面の外周縁部には、シリンダ10の軸方向一端部11の外周縁部13が突き当てられる環状の突当面33が形成される。底部31の他端側(図1における「下側」)の面の、穴32と突当面33との間には、環状の段部34が形成される。
【0013】
筒部36は、シリンダ10の複数個の突出部21の案内面22によって案内される内円筒面37を有する。筒部36の内円筒面37と突出部21の案内面22(外円筒面)とのはめあいは、筒部36が拡径されることが無く、かつバンパキャップ30とシリンダ10との間にがたが発生しないように設定される。筒部36の内円筒面37には、筒部36の径方向内側へ突出する複数個(本実施形態では「4個」)のストッパ部41(突起部)が形成される。複数個のストッパ部41は、内円筒面37の周方向に等しい間隔をあけて配置される。
【0014】
ストッパ部41は、正面視(図1参照)で内円筒面37の周方向(図1における「左右方向」)へ延びる長円形に形成された案内面42を有する。案内面42は、内円筒面37と同軸の円筒面に一致する曲面(円筒面の一部)をなす。ストッパ部41(案内面42)の周方向長さは、バンパキャップ30の筒部36にシリンダ10の軸方向一端部11を挿入する過程で、シリンダ10の隣接する突出部21,21間を通過できるように設定される。
【0015】
ストッパ部41の案内面42とシリンダ10の外周面14のはめあいは、筒部36が拡径されることが無く、かつバンパキャップ30とシリンダ10との間にがたが発生しないように設定される。ストッパ部41の、バンパキャップ30の軸方向一端側(図1における「上側」)の端面43(被受面)は、バンパキャップ30の突当面33がシリンダ10の外周縁部13に突き当てられた状態で、シリンダ10の軸直角平面のうち突出部21の受面24を含む面上に配置される。
【0016】
次に、第1実施形態に係る緩衝器1の製造方法を説明する。
ここでは、図4に示されるフローチャートに基づき、シリンダ10の軸方向一端部11にバンパキャップ30を装着する手順を説明する。
まず、シリンダ10を固定治具(図示省略)に固定する(図4における「ステップ1」)。シリンダ10は、固定治具に固定された状態で、直立姿勢に保持される。
【0017】
次に、バンパキャップ30の底部31の穴32にピストンロッド3を挿通させ、シリンダ10の軸方向一端部11にバンパキャップ30の軸方向他端部38を被せる(図4における「ステップ2」)。このとき、シリンダ10の軸方向からの視線で、シリンダ10の突出部21とバンパキャップ30のストッパ部41とが重ならないように、バンパキャップ30を軸線Lを中心とする回転方向へ位置合わせする。
【0018】
次に、図5に示されるように、バンパキャップ30をシリンダ10の軸方向他端側(図5における「下側」)へ移動させる(図4における「ステップ3」)。当該移動の過程で、バンパキャップ30のストッパ部41は、シリンダ10の隣接する突出部21,21間を通過する。そして、図6に示されるように、バンパキャップ30の突当面33がシリンダ10の軸方向一端部11の外周縁部13に突き当たると、ストッパ部41は、突出部21に対してシリンダ10の軸方向他端側に配置される(図4における「ステップ4」)。このとき、ストッパ部41の端面43は、突出部21の受面24を含む平面上に配置される。
【0019】
次に、バンパキャップ30を、シリンダ10の軸線Lを中心に時計回り方向又は反時計回り方向へ回転させ、図7に示されるように、バンパキャップ30の各ストッパ部41の端面43をシリンダ10の各突出部21の受面24に当接させる(図4における「ステップ5」)。これにより、バンパキャップ30のシリンダ10への装着が完了する。
【0020】
ここで、従来のバンパキャップでは、抜け荷重を確保するためにシリンダとのしめしろを大きくすると、装着時に割れが発生するおそれがあった。
これに対し、第1実施形態では、シリンダ10の軸方向一端部11に径方向外側へ突出する突出部21を形成し、他方、バンパキャップ30の筒部36に径方向内側へ突出するストッパ部41を形成し、ストッパ部41の軸方向一端側の端面43を、突出部21の軸方向他端側の受面24に当接させるように構成した。
第1実施形態によれば、ストッパ部41の端面43を突出部21の受面24によって受けることでバンパキャップ30の抜け荷重を確保することができ、かつバンパキャップ30の割れを防止することができる。
【0021】
(第2実施形態)
次に、図8を参照して第2実施形態を説明する。
なお、第1実施形態との共通部分については、同一の称呼及び符号を用い、重複する説明を省略する。
【0022】
第1実施形態では、バンパキャップ30に形成された長円形のストッパ部41の軸方向一端側の端面43を、シリンダ10に形成された長方形(正方形)の突出部21の軸方向他端側の受面24に当接させることにより、バンパキャップ30のシリンダ10に対する抜けを防止するように構成した。
【0023】
これに対し、第2実施形態では、シリンダ10の軸方向一端部11に、径方向外側へ突出するとともに案内面22が円形の突出部21を形成し、他方、バンパキャップ30の筒部36に、径方向外側へ突出するとともに内円筒面37の周方向にギャップ51を有するストッパ部41を形成した。第2実施形態では、ストッパ部41の、ギャップ51を挟んで対向する軸方向一端側(図8における「上側」)の角部52,52を、突出部21の軸方向他端側(図8における「下側」)の端部53に当接させる、換言すれば、ストッパ部41のギャップ51の両側で突出部21を受けることにより、バンパキャップ30のシリンダ10に対する抜けを防止するように構成した。
【0024】
第2実施形態によれば、前述した第1実施形態と同等の作用効果を得ることができる。
また、第2実施形態では、ストッパ部41のギャップ51の周方向長さを変えることにより、突出部21がストッパ部41のギャップ51を押し広げて当該ギャップ51を軸方向へ通過する荷重、すなわち、バンパキャップ30のシリンダ10に対する抜け荷重を調節することができる。
なお、第2実施形態では、突出部21の案内面42の形状を円形としたが、図9に示されるように、シリンダ10の軸方向(図9における「上下方向」)へ長い長方形とすることができる。
【0025】
(第3実施形態)
次に、図10又は図11を参照して第3実施形態を説明する。
なお、第1実施形態との共通部分については、同一の称呼及び符号を用い、重複する説明を省略する。
【0026】
シリンダ10は、シリンダ10の周方向他端側(図10における「左側」)の端面26から周方向一端側(図10における「右側」)の端面25へ向かって突出高さが漸次高くなる複数個(第3実施形態では「4個」)の突出部21を有する。突出部21は、正面視で長方形に形成された平面からなる摺動面61を有する。摺動面61は、シリンダ10の軸線Lに対して平行に配置されている。突出部21の摺動面61と端面26との角部には、楔形の爪部64が形成される。
【0027】
バンパキャップ30は、バンパキャップ30の周方向一端側(図10における「右側」)の端面62から周方向他端側(図10における「左側」)の端面63へ向かって突出高さが漸次高くなる複数段(第3実施形態では「3段」)の段部65を有する。各段部65は、バンパキャップ30の軸平面上に配置された端面66と、シリンダ10の突出部21の摺動面61に面接触可能な斜面67とを有する。
【0028】
次に、シリンダ10の軸方向一端部11にバンパキャップ30を装着する手順を説明する。便宜上、ストッパ部41に形成された各段部65を、バンパキャップ30の周方向一端側(図10における「右側」)から順に、第1段部65、第2段部65、及び第3段部65と称する。
【0029】
まず、シリンダ10を固定治具(図示省略)に固定する。次に、シリンダ10の軸方向一端部11にバンパキャップ30の軸方向他端部38を被せる。このとき、シリンダ10の軸方向視線でシリンダ10の突出部21とバンパキャップ30のストッパ部41とが重ならないように、バンパキャップ30を回転方向へ位置合わせする。
【0030】
次に、バンパキャップ30を軸方向へ移動させ、バンパキャップ30の突当面33をシリンダ10の軸方向一端部11の外周縁部13に突き当てる。この状態では、シリンダ10の隣接する突出部21,21間に、バンパキャップ30のストッパ部41が配置される。換言すれば、バンパキャップ30のストッパ部41は、シリンダ10の突出部21と軸方向に同じ高さに位置している。次に、バンパキャップ30を軸線Lを中心に反時計回り方向(図10における「右側」)へ回転させる。
【0031】
バンパキャップ30を回転させると、ストッパ部41の第1段部65が突出部21の爪部64を通過し、その後、第2段部65の斜面67が突出部21の摺動面61に当接する。そして、第2段部65が突出部21によって径方向外側(図10における「下側」)へ押し付けられることにより、突出部21の爪部64が第2段部65を通過する。この時点で、図11に示されるように、突出部21の爪部64が、ストッパ部41の第2段部65の端面66と第3段部65の斜面67との間に形成された谷部68に嵌ることにより、バンパキャップ30のシリンダ10に対する抜けが阻止される。
【0032】
第3実施形態によれば、前述した第1実施形態と同等の作用効果を得ることができる。
また、第3実施形態では、ストッパ部41の隣接する段部65,65間に形成された谷部68に、シリンダ10の突出部21の楔形の爪部64が嵌るので、最終的にバンパキャップ30をシリンダ10に対して回転方向へ位置決めさせることなく、バンパキャップ30のシリンダ10に対する抜けを確実に防ぐことができる。
【0033】
(第4実施形態)
次に、図12図13を参照して第4実施形態を説明する。
なお、第1実施形態との共通部分については、同一の称呼及び符号を用い、重複する説明を省略する。
【0034】
第1実施形態では、バンパキャップ30の底部31に形成された環状の突当面33を、シリンダ10の軸方向一端部11の外周縁部13に突き当てることにより、バンパキャップ30をシリンダ10に対してシリンダ10の軸方向へ位置決めするようにした。
【0035】
これに対し、第4実施形態では、必要に応じて、バンパキャップ30の突当面33とシリンダ10の軸方向一端部11の外周縁部13との間に円筒形のスペーサ71を介装させることにより、バンパキャップ30をシリンダ10に対してシリンダ10の軸方向へ位置決めするようにした。第4実施形態では、シリンダ10は、周方向に等しい間隔をあけて配置された複数個(第4実施形態では「4個」)の突出部21A(第1突出部)と、各突出部21Aに対して軸方向一端側(図12における「上側」)へ等しい距離だけオフセットされて配置された複数個(第4実施形態では「4個」)の突出部21B(第2突出部)とを有する。
【0036】
次に、シリンダ10の軸方向一端部11にバンパキャップ30を装着する手順を説明する。
まず、シリンダ10を固定治具(図示省略)に固定する。次に、シリンダ10の軸方向一端部11にバンパキャップ30の軸方向他端部38を被せる。このとき、シリンダ10の軸方向視線でシリンダ10の突出部21A,21Bとバンパキャップ30のストッパ部41とが重ならないように、バンパキャップ30を回転方向へ位置合わせする。
【0037】
次に、バンパキャップ30を軸方向へ移動させる。当該移動の過程で、バンパキャップ30のストッパ部41は、シリンダ10の隣接する突出部21B,21B間、及び突出部21A,21A間を通過する。そして、図13に示されるように、バンパキャップ30の突当面33がシリンダ10の軸方向一端部11の外周縁部13に突き当たると、ストッパ部41は、突出部21Aに対してシリンダ10の軸方向他端側(図13における「下側」)に配置される。
【0038】
次に、バンパキャップ30を軸線Lを中心に時計回り方向又は反時計回り方向へ回転させ、図13に示されるように、バンパキャップ30の各ストッパ部41をシリンダ10の各突出部21Aに当接させる。これにより、バンパキャップ30のシリンダ10への装着が完了する。
【0039】
他方、スペーサ71を使用する場合、スペーサ71を、バンパキャップ30の筒部36の内円筒面37に嵌める。スペーサ71は、軸方向一端側(図12における「上側」)の端面73が、バンパキャップ30の底部31の突当面33に当接されることにより、バンパキャップ30に対して軸方向(図12における「上下方向」)に位置決めされる。なお、スペーサ71の外周面72には、スペーサ71をバンパキャップ30の筒部36に挿入するとき、ストッパ部41を通過させるための軸方向へ延びる複数本(第4実施形態では「4本」)の溝(図示省略)が形成されている。
【0040】
次に、シリンダ10の軸方向一端部11に、スペーサ71が装着されたバンパキャップ30を被せる。次に、バンパキャップ30を軸方向へ移動させる。当該移動の過程で、バンパキャップ30のストッパ部41は、シリンダ10の隣接する突出部21B,21B間を通過する。そして、図12に示されるように、スペーサ71の軸方向他端側(図12における「下側」)の端面74がシリンダ10の軸方向一端部11の外周縁部13に突き当たると、ストッパ部41が突出部21Bに対してシリンダ10の軸方向他端側に配置される。
【0041】
次に、バンパキャップ30をシリンダ10の軸線Lを中心に時計回り方向又は反時計回り方向へ回転させ、図12に示されるように、バンパキャップ30の各ストッパ部41をシリンダ10の各突出部21Bに当接させる。これにより、バンパキャップ30のシリンダ10への装着が完了する。
【0042】
第4実施形態によれば、前述した第1実施形態と同等の作用効果を得ることができる。
また、第4実施形態では、スペーサ71を使用することで、シリンダ10の軸方向一端部11の軸方向長さを長くする、延いては、緩衝器1の全長を変えずにピストンロッド3のストローク長さを短くすることができる。換言すれば、第4実施形態では、1つの緩衝器1を異なるストローク長さに対応させることができる。
【0043】
(第5実施形態)
次に、図14を参照して第5実施形態を説明する。
なお、第1実施形態との共通部分については、同一の称呼及び符号を用い、重複する説明を省略する。
第1実施形態では、バンパキャップ30の筒部36の内円筒面37に、径方向内側へ突出するストッパ部41を形成し、該ストッパ部41を、シリンダ10に形成された突出部21に当接させるようにした。
【0044】
これに対し、第5実施形態では、ストッパ部41は、バンパキャップ30の筒部36の内円筒面37に形成された逆L形の溝によって構成される。ストッパ部41は、軸方向他端側(図14における「下側」)の端面39(開口側の端)から底部31に向かって軸方向一端側(図14における「上側」)へ延びる第1溝部81と、該第1溝部81の軸方向一端側の端部から筒部36の周方向(図14における「右方向」)へ延びる第2溝部82とを有する。ストッパ部41は、筒部36の周方向へ間隔をあけて複数個(第5実施形態では「4個」)が形成される。
【0045】
次に、シリンダ10の軸方向一端部11にバンパキャップ30を装着する手順を説明する。
まず、シリンダ10を固定治具(図示省略)に固定する。次に、バンパキャップ30の各ストッパ部41の第1溝部81にシリンダ10の各突出部21を挿入するようにして、シリンダ10の軸方向一端部11にバンパキャップ30の軸方向他端部38を被せる。
【0046】
次に、突出部21がストッパ部41の軸方向一端側(図14における「上側」)の端面83に当接するまで、バンパキャップ30を軸方向他端側(図14における「下側」)へ移動させる。次に、図14に示されるように、突出部21がストッパ部41の第2溝部82の周方向先端側(図14における「右側」)の端面84に当接するまで、バンパキャップ30を軸線Lを中心に時計回り方向へ回転させる。これにより、バンパキャップ30のシリンダ10への装着が完了する。
【0047】
第5実施形態によれば、前述した第1実施形態と同等の作用効果を得ることができる。
また、第5実施形態では、突出部21がストッパ部41(第2溝部82)の端面84に当接するまでバンパキャップ30を回転させることにより、ストッパ部41を突出部21に対して回転方向へ位置合わせすることができるので、バンパキャップ30のシリンダ10に対する回転方向への位置決めが容易である。
【0048】
なお、前述した第1、第2、及び第4実施形態では、バンパキャップ30をシリンダ10に対して回転させ、バンパキャップ30の各ストッパ部41をシリンダ10の各突出部21に位置合わせして当接させる必要がある。
【0049】
前述した実施形態では、バンパキャップ30を予め決められた角度だけ回転させる回転治具91(図15参照)を使用することができる。この場合、バンパキャップ30の筒部36に、径方向外側へ突出する複数個(例えば「4個」)の突起98を形成する。複数個の突起98は、円柱形に形成され、周方向へ等しい間隔をあけて配置される。
【0050】
他方、回転治具91は、円筒形の筒部92と、該筒部92の内円筒面(符号省略)から径方向内側へ突出するガイド部93とを有する。ガイド部93には、筒部92の内円筒面の周方向へ延びるガイド面94(斜面)が形成される。ガイド面94は、バンパキャップ30の突起98がガイド面94に沿って周方向(図15における「右方向」)へXの距離だけ移動したとき、突起98が軸方向一端側(図15における「上側」)へYの距離だけ移動するように形成されている。
【0051】
次に、回転治具91を使用してバンパキャップ30を回転させる手順を説明する。
まず、シリンダ10の軸方向一端部11にバンパキャップ30の軸方向他端部38を被せる。このとき、シリンダ10の軸方向の視線で、シリンダ10の突出部21とバンパキャップ30のストッパ部41とが重ならないように、バンパキャップ30を回転方向へ位置合わせする。
【0052】
次に、バンパキャップ30の底部31の突当面33がシリンダ10の軸方向一端部11の外周縁部13に突き当たるまで(図6参照)、バンパキャップ30を軸方向へ移動させる。これにより、ストッパ部41は、突出部21に対して軸方向他端側に配置される(図6参照)。次に、バンパキャップ30に回転治具91を被せて、バンパキャップ30の各突起98に、回転治具91の各ガイド部93のガイド面94を当接させる。
【0053】
次に、回転治具91をバンパキャップ30に対して軸方向他端側(図15における「下側」)へYの距離だけ移動させる。これにより、突起98がガイド部93のガイド面94と摺動しながらガイド面94に沿って周方向(図15における「右方向」)へXの距離だけ移動し、延いてはバンパキャップ30がシリンダ10に対して予め決められた角度だけ回転する。これにより、バンパキャップ30の各ストッパ部41がシリンダ10の各突出部21に当接し(図7参照)、バンパキャップ30のシリンダ10への装着が完了する。
【符号の説明】
【0054】
1 緩衝器、3 ピストンロッド、10 シリンダ、11 軸方向一端部、21 突出部、30 バンパキャップ、31 底部、32 穴、36 筒部、41 ストッパ部
図1
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図15