(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176856
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】ボールフォーミング装置、拡管加工方法
(51)【国際特許分類】
B21D 39/14 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
B21D39/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095694
(22)【出願日】2023-06-09
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1) 公開日 令和5年4月24日 公開場所 2023年度塑性加工春季講演会Webページ https://confit.atlas.jp/jstps2023 https://confit.atlas.jp/guide/event/jstps2023/top
(71)【出願人】
【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】久保木 孝
(72)【発明者】
【氏名】梶川 翔平
(72)【発明者】
【氏名】大栗 宗馬
(57)【要約】
【課題】円管状のワークの軸方向の中間部分を拡径させる加工を容易に行うことができるボールフォーミング装置および拡管加工方法を提供する。
【解決手段】ボールフォーミング装置は、円管状のワークの内部に軸線に沿って挿入可能な第一挿入部および第二挿入部と、第一挿入部と第二挿入部との間に保持される複数の球体と、を備え、第一挿入部には、軸方向で第二挿入部側に位置するほど縮径する傾斜面が形成され、第一挿入部および第二挿入部は、軸線中心で相対回転可能であり、第一挿入部および第二挿入部の相対回転時には、複数の球体がワークに対して軸線中心で回転可能であり、かつネジ機構の作動で第一挿入部および第二挿入部が互いに軸方向で近付き、複数の球体を傾斜面に沿って径方向外側へ移動させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円管状のワークの内部に軸線に沿って挿入可能な第一挿入部と、
前記第一挿入部に、前記軸線中心の回転運動を前記軸線に沿う軸方向の移動に変換するネジ機構を介して支持され、前記第一挿入部と前記軸方向で並んで前記ワークの内部に挿入可能な第二挿入部と、
前記第一挿入部と前記第二挿入部との間に保持され、前記第一挿入部および前記第二挿入部とともに前記ワークの内部に挿入可能な複数の球体と、を備え、
前記第一挿入部および前記第二挿入部の少なくとも一方には、前記軸方向で相手側に位置するほど縮径するように傾斜する傾斜面が形成され、
前記第一挿入部および前記第二挿入部は、前記軸線中心で相対回転可能であり、
前記第一挿入部および前記第二挿入部の相対回転時には、前記複数の球体が前記ワークに対して前記軸線中心で回転可能であり、かつ前記ネジ機構の作動で前記第一挿入部および前記第二挿入部が互いに前記軸方向で近付き、前記複数の球体を前記傾斜面に沿って径方向外側へ移動させるボールフォーミング装置。
【請求項2】
前記ワークを保持可能なワーク保持具を備え、
前記第一挿入部は、前記ワーク保持具に、前記軸線中心の回転運動を前記軸方向の移動に変換する第二ネジ機構を介して支持され、
前記ネジ機構は、規定の停止位置まで締め込まれることで、前記第一挿入部および前記第二挿入部を互いに前記軸方向で近付いた状態に固定可能であり、
前記ネジ機構で固定された前記第一挿入部および前記第二挿入部を含む集合体は、前記第二ネジ機構の作動によって、前記ワークに対して前記軸線中心で回転しながら軸方向移動する請求項1に記載のボールフォーミング装置。
【請求項3】
前記ネジ機構の前記停止位置を調整可能な停止位置調整機構を備えている請求項2に記載のボールフォーミング装置。
【請求項4】
円管状のワーク内に、第一挿入部と、前記第一挿入部に、軸線中心の回転運動を軸線に沿う軸方向の移動に変換するネジ機構を介して支持された第二挿入部と、前記第一挿入部と前記第二挿入部との間に保持された複数の球体と、を挿入し、
前記第一挿入部および前記第二挿入部の少なくとも一方に、前記軸方向で相手側に位置するほど縮径するように傾斜する傾斜面を形成し、
前記第一挿入部および前記第二挿入部を前記軸線中心で相対回転させ、前記複数の球体を前記ワークに対して前記軸線中心で回転させるとともに、前記ネジ機構の作動で前記第一挿入部および前記第二挿入部を互いに前記軸方向で近付け、前記複数の球体を前記傾斜面に沿って径方向外側へ移動させる拡管加工方法を提供する拡管加工方法。
【請求項5】
前記第一挿入部を、前記ワークを保持するワーク保持具に、前記軸線中心の回転運動を前記軸方向の移動に変換する第二ネジ機構を介して支持し、
前記ネジ機構を締め込んで前記第一挿入部および前記第二挿入部を互いに前記軸方向で近付いた状態に固定した状態で、前記第一挿入部および前記第二挿入部を含む集合体を、前記第二ネジ機構の作動によって、前記ワークに対して前記軸線中心で回転させながら軸方向移動させる請求項4に記載の拡管加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールフォーミング装置および拡管加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、金属管の内周側から金属管の内周面に複数のローラーを押し当てて公転させ、金属管の壁をしごいて厚さ(肉厚)を変化させる(薄くする)加工技術が開示されている。金属管の壁を薄肉加工する際、金属管の外周面は加工機器の内周面に当接して支持され、各ローラーの押圧力で壁が外周側に変形することを防いでいる。非特許文献1の技術では、金属管の外径は一定のままである。
一方、非特許文献2には、回転するダイス内に金属管を納め、複数のローラーを保持した工具を金属管内に挿入し、金属管の内周面に各ローラーを押し当てて公転させることで、金属管の壁をしごいて直径を変化させる(拡径する)加工技術が開示されている。
このように、複数のローラー等の自転要素を自転と同時に公転させて管壁をしごき、管壁を塑性変形させて高機能円管を作成しうる加工法を“プラネタリ・コニカル・ローリング”(PCR加工)という。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Eugen Wiens,Werner Homberg著「Internal Flow-Turning - a new approach for the manufacture of tailored tubes with a constant external diameter」、Procedia Engineering、2017年、p.1755-1760
【非特許文献2】森敏彦、斉藤雄二、中島邦彦著「PCR加工における拡管の影響」、日本機械学会論文集62巻601号、1996年、p.3676-3683
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように金属管の径を広げる拡管加工は、主に熱交換器の継手や自動車のシャフトの軽量化、ハイドロフォーミングの前処理を目的として用いられ、様々な加工法が開発されている。
しかし、既存の加工法は加工装置が大型であり、例えば配管接手を想定する場合に、配管現場などで簡便に加工することができない。また、金属管の軸方向中間部を拡径することも難しい。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、円管状のワークの軸方向の中間部分を拡径させる加工を容易に行うことができるボールフォーミング装置および拡管加工方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題の解決手段として、本発明の第一の態様は、円管状のワークの内部に軸線に沿って挿入可能な第一挿入部と、第一挿入部に、軸線中心の回転運動を軸線に沿う軸方向の移動に変換するネジ機構を介して支持され、第一挿入部と軸方向で並んでワークの内部に挿入可能な第二挿入部と、第一挿入部と第二挿入部との間に保持され、第一挿入部および第二挿入部とともにワークの内部に挿入可能な複数の球体と、を備え、第一挿入部および第二挿入部の少なくとも一方には、軸方向で相手側に位置するほど縮径するように傾斜する傾斜面が形成され、第一挿入部および第二挿入部は、軸線中心で相対回転可能であり、第一挿入部および第二挿入部の相対回転時には、複数の球体がワークに対して軸線中心で回転可能であり、かつネジ機構の作動で第一挿入部および第二挿入部が互いに軸方向で近付き、複数の球体を傾斜面に沿って径方向外側へ移動させるボールフォーミング装置を提供する。
この構成によれば、第一挿入部および第二挿入部をワーク内に挿入し、複数の球体をワークの軸方向中間部に配置し、第一挿入部および第二挿入部を相対回転させて、複数の球体をワークに対して回転(公転)させつつ径方向外側へ移動させる。複数の球体は、ワークに対して回転しつつ、やがてワークの管壁を内周側からしごくように押圧する。その結果、各球体は、ワークの全周に渡って管壁を径方向外側に徐々に膨出変形させ、管壁の軸方向中間部に膨出部を形成する。このように、第一挿入部および第二挿入部を工具等を用いて相対回転させる単一の動作によって、ワークの軸方向の中間部分に拡管加工を容易に行うことができる。また、入力が一つだけであるため、加工機の構成が簡便であり、例えば、配管工事の現場において容易に使用することができる。
【0006】
本発明の第二の態様は、上記第一の態様において、ワークを保持可能なワーク保持具を備え、第一挿入部は、ワーク保持具に、軸線中心の回転運動を軸方向の移動に変換する第二ネジ機構を介して支持され、ネジ機構は、規定の停止位置まで締め込まれることで、第一挿入部および第二挿入部を互いに軸方向で近付いた状態に固定可能であり、ネジ機構で固定された第一挿入部および第二挿入部を含む集合体は、第二ネジ機構の作動によって、ワークに対して軸線中心で回転しながら軸方向移動する。
この構成によれば、まず、第一挿入部および第二挿入部ならびに各球体の集合体をワークの内部に挿入し、各球体をワークに対して軸線中心で回転(公転)させながら、傾斜面に沿って径方向外側に移動させ、ワークの管壁を内周側から押圧して膨出変形させる。その後、ネジ機構を停止位置まで締め込んで第一挿入部および第二挿入部を互いに近付いた状態で固定し、この状態で、第一挿入部および第二挿入部を含む集合体を、第二ネジ機構の作動によって、ワークに対して軸線中心で回転させながら軸方向移動させることで、各球体がワークの管壁の内面を内周側からしごきながら軸方向移動し、ワークの管壁を軸方向の所定範囲に渡って幅広に膨出変形させる。このように、前記集合体とワーク保持具とを工具等を用いて相対回転させる単一の動作によって、ワークの軸方向中間部に幅広の拡管加工を容易に行うことができる。また、入力が一つだけであるため、加工機の構成が簡便であり、例えば、配管工事の現場において容易に使用することができる。
【0007】
本発明の第三の態様は、上記第二の態様において、ネジ機構の停止位置を調整可能な停止位置調整機構を備えている。
この構成によれば、ネジ機構の停止位置を調整可能とすることで、第一挿入部および第二挿入部が軸方向で互いに最も近付いたときの球体の軸方向位置(ワークの膨出部形成位置)を調整可能となり、ワークの加工の自由度を向上させることができる。
【0008】
本発明の第四の態様は、円管状のワーク内に、第一挿入部と、第一挿入部に、軸線中心の回転運動を軸線に沿う軸方向の移動に変換するネジ機構を介して支持された第二挿入部と、第一挿入部と第二挿入部との間に保持された複数の球体と、を挿入し、第一挿入部および第二挿入部の少なくとも一方に、軸方向で相手側に位置するほど縮径するように傾斜する傾斜面を形成し、第一挿入部および第二挿入部を軸線中心で相対回転させ、複数の球体をワークに対して軸線中心で回転させるとともに、ネジ機構の作動で第一挿入部および第二挿入部を互いに軸方向で近付け、複数の球体を傾斜面に沿って径方向外側へ移動させる拡管加工方法を提供する。
この構成によれば、第一挿入部および第二挿入部を相対回転させて、複数の球体をワークに対して回転(公転)させつつ径方向外側へ移動させる。その結果、各球体は、ワークの全周に渡って管壁を径方向外側に徐々に膨出変形させ、管壁の軸方向中間部に膨出部を形成する。このように、第一挿入部および第二挿入部を工具等を用いて相対回転させる単一の動作によって、ワークの軸方向の中間部分に拡管加工を容易に行うことができる。また、入力が一つだけであるため、加工機の構成が簡便であり、例えば、配管工事の現場において容易に使用することができる。
【0009】
本発明の第五の態様は、上記第四の態様において、第一挿入部を、ワークを保持するワーク保持具に、軸線中心の回転運動を軸方向の移動に変換する第二ネジ機構を介して支持し、ネジ機構を締め込んで第一挿入部および第二挿入部を互いに軸方向で近付いた状態に固定した状態で、第一挿入部および第二挿入部を含む集合体を、第二ネジ機構の作動によって、ワークに対して軸線中心で回転させながら軸方向移動させる。
この構成によれば、ワークの管壁を内周側から押圧して膨出変形させた状態で、第一挿入部および第二挿入部を含む集合体を、第二ネジ機構の作動によって、ワークに対して軸線中心で回転させながら軸方向移動させることで、ワークの管壁を軸方向の所定範囲に渡って幅広に膨出変形させる。このように、前記集合体とワーク保持具とを工具等を用いて相対回転させる単一の動作によって、ワークの軸方向中間部に幅広の拡管加工を容易に行うことができる。また、入力が一つだけであるため、加工機の構成が簡便であり、例えば、配管工事の現場において容易に使用することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、円管状のワークの軸方向の中間部分を拡径させる加工を容易に行うことができるボールフォーミング装置および拡管加工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態におけるボールフォーミング装置の軸方向に沿う断面図であり、球体が内方位置にある状態を示す。
【
図2】
図1の部分拡大図であり、傾斜面の作用を示す。
【
図3】
図1に相当する断面図であり、球体が外方位置にある状態を示す。
【
図4】
図1に相当する断面図であり、
図3の拡径状態から球体が軸方向移動した状態を示す。
【
図5】上記ボールフォーミング装置の構成部品を径方向から見た側面図である。
【
図6】上記ボールフォーミング装置で拡管加工する前の金属管を径方向から見た側面図である。
【
図7】上記ボールフォーミング装置で第一拡管加工をした金属管を径方向から見た側面図である。
【
図8】上記ボールフォーミング装置で第二拡管加工をした金属管を径方向から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を用いて本発明の一実施形態を説明するが、本発明の範囲はここで説明する一実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができる。本実施形態で用いる「中間」とは、対象の両端間の中央のみならず、対象の両端間の内側の部位および所定範囲を含む意とする。
【0013】
図1、
図6~
図8を参照し、実施形態のボールフォーミング装置1は、例えば熱交換器の配管現場で配管継手を作成するための工具として用いられる。ボールフォーミング装置1は、略円筒状の外観をなし、内部に所定長さの円筒状の金属管(以下、ワークWという。)を同軸に配置する。ボールフォーミング装置1は、ワークWの軸方向の中間部に、外周側に膨出した膨出部(拡径部)WB1,WB2(
図7、
図8参照)を形成可能とする。図中線C1はボールフォーミング装置1の中心軸線、線C2はワークWの中心軸線、符号WaはワークWの円筒状の管壁、をそれぞれ示す。
【0014】
以下の説明は、特に記載がなければ、ボールフォーミング装置1にワークWを同軸に配置した状態(
図1~
図4に示す状態)を参照して行う。この状態において、中心軸線C1(およびC2)に沿う方向をボールフォーミング装置1(およびワークW)の軸方向、軸線C1(およびC2)と直交する方向をボールフォーミング装置1(およびワークW)の径方向、軸線C1(およびC2)中心の周回方向をボールフォーミング装置1(およびワークW)の周方向とする。また「軸線C1(およびC2)中心の・・・」とは「軸線C1(およびC2)を中心とした・・・」の意である。
【0015】
<ボールフォーミング装置1>
ボールフォーミング装置1は、ワーク保持具10と、第一組体20と、第二組体30と、複数(例えば四つ)の球体(ボール)41と、を備えている。
【0016】
<ワーク保持具10>
ワーク保持具10は、所定長さのワークWを内周側に保持可能な円筒状をなしている。ワーク保持具10は、軸線C1中心の円筒状の外筒11と、外筒11と同軸の円筒状をなし、外筒11の軸方向一端側の内部にすきまばめの公差で挿入される内筒15と、を備えている。
【0017】
外筒11は、ワークWの外径および拡径寸法に応じた径寸法を有している。外筒11の軸方向一端側の内部には、内筒15が挿入される。外筒11の軸方向一端側には、周壁を径方向で貫通する第一ナット孔12aが複数(四つ)形成されている。複数の第一ナット孔12aは、周方向で等間隔に並んで配置されている。各第一ナット孔12aには、外筒11の外周側から内筒固定ボルトB1がそれぞれ締め込まれている。各内筒固定ボルトB1は、外筒11内に嵌め込まれた内筒15の外周面に先端t1を当接させる。この状態で各内筒固定ボルトB1を締め込むことで、外筒11内に内筒15の軸方向一端側の周壁が固定される。
【0018】
実施形態では、外筒11の内周面の軸方向中間部に、内筒15の軸方向他端側の外周縁部を当接させる段差12cが形成されている。段差12cは、内筒15の軸方向位置を規定可能とする。内筒15は、段差12c等に干渉せずかつ各内筒固定ボルトB1の先端t1が当接可能な軸方向位置に配置可能であり、この位置で内筒固定ボルトB1によって固定可能である。内筒15は、軸方向他端にワークWの軸方向一端を当接させることが可能であり、ワークWの軸方向位置を規定可能である。内筒15の軸方向位置を変更すれば、ワークWの軸方向位置を変更可能であり、ワークWにおける膨出部WB1,WB2の形成位置を調整可能である。
【0019】
外筒11の軸方向他端部には、内周側に肉厚を増した外筒縮径部13が形成されている。外筒縮径部13は、軸線C1中心の円筒状の内周面13aを形成している。外筒縮径部13の内部には、ワークWがすきまばめの公差で挿入される。外筒11の軸方向他端側には、外筒縮径部13を含む部位を径方向で貫通する複数(例えば四つ)の第二ナット孔12bが形成されている。複数の第二ナット孔12bは、周方向で等間隔に並んで形成されている。各第二ナット孔12bには、外筒11の外周側からワーク固定ボルトB2がそれぞれ締め込まれる。各ワーク固定ボルトB2は、外筒縮径部13内に嵌め込まれたワークWの外周面に先端t2を当接させる。この状態で各ワーク固定ボルトB2を締め込むことで、外筒縮径部13内にワークWの軸方向他端側の管壁Waが固定される。
【0020】
外筒縮径部13内にワークWを固定した状態で、軸方向で外筒縮径部13と内筒15との間に形成される領域は、拡管加工領域R1となる。拡管加工領域R1では、ワークWの管壁Waと外筒11の周壁との間に径方向の隙間が形成されている。この隙間によって、ワーク保持具10に保持したワークWの中間部に対して、外周側に膨出する膨出部WB1,WB2を形成することが可能である。拡管加工領域R1には、後述するボス21のテーパ面(傾斜面)23が配置される。このテーパ面23に拡管加工用の各球体41を乗り上げさせることで、各球体41が径方向外側に移動し、ワークWの管壁Waの軸方向中間部を膨出させることが可能である。
【0021】
内筒15の軸方向他端部には、内周側に肉厚を増した内筒縮径部17が形成されている。内筒縮径部17は、軸線C1中心の円筒状の内周部を形成している。内周部は、ネジ山が形成された雌ネジ部18とされる。雌ネジ部18の内周側には、第一組体20のボス21が配置されている。ボス21の外周部は、雌ネジ部18に対応するネジ山が形成された雄ネジ部24とされる。内筒15の雌ネジ部18とボス21の雄ネジ部24とで、軸線C1中心の回転運動を軸方向の移動に変換する第二ネジ機構45が構成される。内筒15(ワーク保持具10)は、第二ネジ機構45を介してボス21(第一挿入部21a)を支持している。
【0022】
図5を参照し、内筒15は、第二ネジ機構45を介して第一組体20に連結された状態で、外筒11内に軸方向に沿って挿脱される。このとき、第一組体20には、第一ネジ機構43を介して第二組体30が連結され、第一組体20および第二組体30の管には、複数の球体41が保持されている。これらの組み立て体は、外筒11に対して軸方向一側(図中左側)から挿脱される。
【0023】
<第一組体20>
図1~
図5を参照し、第一組体20は、ボス21と、第一ボルト25と、一対のナット27と、を備えている。
ボス21は、内筒15内に支持され、ワークWの内部に軸線C1に沿って挿入可能な第一挿入部21aとして機能する。ボス21は、軸線C1中心の円筒状をなし、軸方向に沿うナット孔22を有している。ボス21の軸方向他端部には、軸方向で図中右側の第二挿入部31a(ボール保持部31)に近いほど(図中右側に位置するほど)先細りとなるように縮径する円錐台状のテーパ面23が形成されている。
【0024】
テーパ面23は、第一挿入部21aおよび第二挿入部31aの間に保持された複数の球体41に対し、軸方向で対向する。テーパ面23は、
図1、
図5に示す状態(以下、初期状態S1という。)では、複数の球体41から軸方向で離間可能である。このとき、各球体41は、ワークWの管壁Waから内周側へ離間した内方位置P1に移動可能であり、第一挿入部21aおよび第二挿入部31aとともにワークW内に挿入可能となる。
【0025】
テーパ面23は、
図3に示す状態(以下、拡径状態S2という。)では、複数の球体41を軸方向で当接させて径方向外側に乗り上げさせる。
図3の状態は、第一ネジ機構43を締め込んで複数の球体41を径方向外側の外方位置P2に移動させ、ワークWに丸ビード状の膨出部WB1を形成した状態である。
図3の断面視において、テーパ面23は直線状であるが、テーパ面23が曲率を有してもよい。
【0026】
ボールフォーミング装置1が初期状態S1から拡径状態S2に移行する途中において、テーパ面23に複数の球体41が当接した状態から、第一ネジ機構43がさらに締め込まれることで、以下の作用を奏する。すなわち、複数の球体41がテーパ面23に乗り上げ、テーパ面23の傾斜に沿って複数の球体41が径方向外側(外周側)に移動する。複数の球体41は、第一ネジ機構43の第二ボルト35と一体的に回転するボール保持部31に駆動されて回転(公転)しながら軸方向移動する(すなわち、第二ボルト35のネジ山に沿って螺旋状に回転する)。
【0027】
複数の球体41は、外周側に移動してワークWの内周面に当接した後、さらに第二ボルト35が締め込まれることで、第二ボルト35と一体的に回転しながら規定以上の力でワークWの管壁Waを外周側に押圧する。これにより、ワークWの管壁Waの軸方向中間部に、外周側に膨らむ膨出部WB1が形成される。膨出部WB1は、複数の球体41が軸線C1中心で回転(公転)しながら管壁Waを押圧することで、周方向に沿う丸ビード状に形成される。
【0028】
第一組体20は、ボス21のナット孔22の軸方向一端側に、ボス21と同軸の第一ボルト25の首下(ネジ軸)25bの先端25c側を締め込んでいる。第一ボルト25の頭部25aとボス21の軸方向一端部との間には、一対のナット27が第一ボルト25に螺着されている。一対のナット27は、第一ボルト25にダブルナットの作用で固定されている。一対のナット27は、第一ボルト25のボス21への締め込み深さを調整可能とする。
【0029】
第一ボルト25のナット孔22への締め込み位置(先端25c位置)は、第一ネジ機構43の後述する停止位置43aを規定する。すなわち、第一ボルト25、ボス21のナット孔22ならびに一対のナット27は、第一ネジ機構43の停止位置43aを調整可能とする停止位置調整機構29に含まれる。第一ネジ機構43を停止位置43aまで締め込むことで、第一組体20および第二組体30ならびに各球体41を含む集合体が実質的に一体化される。第一ボルト25の頭部25aは、ワーク保持具10の軸方向一端側に突出している。
【0030】
<第二組体30>
図1~
図5を参照し、第二組体30は、ボール保持部31と、第二ボルト35と、カラー37と、ナット38と、を備えている。
ボール保持部31は、ボス21の軸方向他側に配置され、ボス21とともにワークWの内部に軸方向に沿って挿入可能な第二挿入部31aとして機能する。ボール保持部31は、軸方向でボス21のテーパ面23との間に複数の球体41を自転可能に保持し、かつ複数の球体41を公転可能に保持する。ボール保持部31は、周方向で隣接する一対の球体41の間にそれぞれ保持爪32を延ばしている。このボール保持部31が第二ボルト35と一体に回転することで、各球体41に対して公転方向の駆動力を付与する。
【0031】
ボール保持部31は、各球体41に軸方向他端側から当接する底部33を備えている。底部33は、第二ボルト35の締め込みによって各球体41をテーパ面23側に押圧する。第一組体20と第二組体30とを組み付けた状態(
図5参照)において、ボール保持部31は、ボス21との間に複数の球体41を保持し、各球体41とともにワークW内に挿入される。このとき、各球体41はボス21のテーパ面23から離間した状態(初期状態S1)となる。
【0032】
各球体41がワークW内に挿入された状態で、第一ネジ機構43が締め込まれることで、ボール保持部31および複数の球体41が回転(公転)しながら軸方向一側に移動し、やがて各球体41がテーパ面23に当接する。
複数の球体41がテーパ面23に当接した後にさらに第一ネジ機構43が締め込まれると、各球体41がテーパ面23に乗り上げて径方向外側(外周側)に移動し、ワークWの管壁Waの内周面に当接する。
【0033】
各鋼球41がワークWの管壁Waに当接した状態からさらに第一ネジ機構43が締め込まれると、各球体41がワークWの管壁Waを外周側に押圧しながら公転し、管壁Waの軸方向中間部を外周側に徐々に膨出させる。これにより、管壁Waの軸方向中間部に環状の膨出部WB1が形成される。この拡管加工は、第二ボルト35の頭部35aを締め込むという一つの操作入力によってなされる。第二ボルト35の頭部35aは、ワーク保持具10の軸方向他端側に突出している。
【0034】
第二組体30は、第一組体20のボス21と同軸の第二ボルト35の首下(ネジ軸)35bにボール保持部31を螺着している。ボール保持部31と第二ボルト35の頭部35aとの間には、頭部35a側にナット38が螺着されるとともに、ボール保持部31側にカラー37が装着されている。ボール保持部31とナット38とは、カラー37を挟んだダブルナットの作用で第二ボルト35に固定されている。例えば、カラー37は、複数の軸方向長さのものが設定されている。
【0035】
カラー37の軸方向長さを変更することで、第一ネジ機構43の作動によらず、ボス21のテーパ面23とボール保持部31との間の軸方向距離を調整可能である。換言すれば、第二ボルト35に対するボール保持部31の固定位置を調整可能である。第二ボルト35、ボール保持部31,カラー37およびナット38は、テーパ面23とボール保持部31との間の軸方向距離を調整可能とする距離調整機構39に含まれる。
【0036】
第二ボルト35の首下35bの先端35c側は、ボス21のナット孔22の軸方向他端側に締め込まれる。第二ボルト35とナット孔22とで、軸線C1中心の回転運動を軸方向の移動に変換する第一ネジ機構43が構成されている。ボス21(第一挿入部21a)は、第一ネジ機構43を介してボール保持部31(第二挿入部31a)を支持(連結)している。
【0037】
<球体41>
図1~
図5を参照し、複数の球体41は、軸方向でボス21のテーパ面23とボール保持部31の底部33との間に挟まれて保持される。第一ネジ機構43を締め込む前の初期状態S1(
図1、
図2参照)において、複数の球体41は、第一挿入部21aおよび第二挿入部31aとともにワークWの内部に軸線C1に沿って挿入可能である。初期状態S1では、第二ボルト35がボス21内に規定量締め込まれた状態にあり、第一組体20と第二組体30とを互いに組み付けた状態で取り扱うことが可能である。
【0038】
第一組体20と第二組体30とを互いに組み付けた状態(
図5参照)において、複数の球体41は、複数の保持爪32によって径方向外側への離脱が規制され、もって第一組体20および第二組体30ならびに複数の球体41を一体的に取り扱うことが可能である。例えば、保持爪32は球体41の周方向の動きを規制するのみとし、球体41の径方向外側への離脱は、ワークW内への挿入時に管内側で規制する構成でもよい。例えば、各球体41は鋼球であるが、ワークWを膨出変形可能なものであれば材質は問わない。
【0039】
<作用>
実施形態のボールフォーミング装置1は、第一加工段階として、各球体41を公転させながら主として径方向外側(外周側)に移動させる(詳細には、各球体41をテーパ面23に沿って径方向外側に移動させる)。各球体41は、公転しながら外周側に移動することで、周方向に移動しながらワークWの管壁Waを内周側から外周側へ押圧し、金属管の軸方向中間部の管壁Waを徐々に外周側に膨出変形(塑性変形)させる。
【0040】
第一ネジ機構43は、第二ボルト35の先端35cが第一ボルト25の先端25cに突き当たることで、それ以上の締め込みが規制され、各球体41が最大外周位置まで移動した状態(拡径状態S2)となる。第一ボルト25の先端25cは、第一ネジ機構43の締め込みの停止位置43aを規定している。この停止位置43aは、ワークWに形成する膨出部WB1,WB2の高さ等の条件に応じて調整可能である。
【0041】
各球体41が最大外周位置に達した後、ボールフォーミング装置1は、第二加工段階として、第二ネジ機構45を作動させ、第一組体20および第二組体30ならびに各球体41を一体的に回転(公転)させつつ軸方向移動させる。第一ネジ機構43を停止位置43aまで締め込んで第一組体20および第二組体30ならびに各球体41を含む集合体を一体化しているため、第一ボルト25を回転させることで集合体を容易に回転可能である。
【0042】
このとき、前述の集合体は、拡径状態S2のまま回転しつつ、軸方向で所定範囲を移動可能である。この移動後の状態を、
図4に軸方向移動状態S3として示す。軸方向移動状態S3において、ワークWの軸方向中間部の所定範囲には、軸線C1と平行な頂面を形成する幅広かつ平坦状の膨出部WB2が形成される。
【0043】
上記した拡管加工を行う際、各加工段階において、複数の球体41の公転、径方向の移動、および軸方向の移動は、それぞれ一つの入力(回転操作)によって実現される。このように、簡便な機構のボールフォーミング装置1を用いることで、例えば配管の施工現場などでワークWの拡管加工を行うことが可能となる。また、本発明は、自動車のシャフトやエキゾーストマニフォールド等の各種の管部品、ならびに医療機器などの各種の管部品を製造するために、広く産業界で利用可能である。
【0044】
以上説明したように、上記実施形態におけるボールフォーミング装置1は、円管状のワークWを保持可能なワーク保持具10と、ワーク保持具10に支持され、ワークWの内部に軸線C1に沿って挿入可能な第一挿入部21aと、第一挿入部21aに、軸線C1中心の回転運動を軸線C1に沿う軸方向の移動に変換する第一ネジ機構43を介して支持され、第一挿入部21aと軸方向で並んでワークWの内部に挿入可能な第二挿入部31aと、第一挿入部21aと第二挿入部31aとの間に保持され、第一挿入部21aおよび第二挿入部31aとともにワークWの内部に挿入可能な複数の球体41と、を備え、第一挿入部21aおよび第二挿入部31aの少なくとも一方には、軸方向で相手側に位置するほど縮径するように傾斜するテーパ面23が形成され、第一挿入部21aおよび第二挿入部31aは、軸線C1中心で相対回転可能であり、第一挿入部21aおよび第二挿入部31aの相対回転時には、複数の球体41がワークWに対して軸線C1中心で回転可能であり、かつ第一ネジ機構43の作動で第一挿入部21aおよび第二挿入部31aが互いに軸方向で近付き、複数の球体41をテーパ面23に沿って径方向外側へ移動させる。
【0045】
上記ボールフォーミング装置1を用いた拡管加工方法は、円管状のワークW内に、第一挿入部21aと、第一挿入部21aに、軸線C1中心の回転運動を軸線C1に沿う軸方向の移動に変換する第一ネジ機構43を介して支持された第二挿入部31aと、第一挿入部21aと第二挿入部31aとの間に保持された複数の球体41と、を挿入し、第一挿入部21aおよび第二挿入部31aの少なくとも一方に、軸方向で相手側に位置するほど縮径するように傾斜するテーパ面23を形成し、第一挿入部21aおよび第二挿入部31aを軸線C1中心で相対回転させ、複数の球体41をワークWに対して軸線C1中心で回転させるとともに、第一ネジ機構43の作動で第一挿入部21aおよび第二挿入部31aを互いに軸方向で近付け、複数の球体41をテーパ面23に沿って径方向外側へ移動させる。
【0046】
この構成によれば、第一挿入部21aおよび第二挿入部31aをワークW内に挿入し、複数の球体41をワークWの軸方向中間部に配置し、第一挿入部21aおよび第二挿入部31aを相対回転させて、複数の球体41をワークWに対して回転(公転)させつつ径方向外側へ移動させる。複数の球体41は、ワークWに対して回転しつつ、やがてワークWの管壁Waを内周側からしごくように押圧する。その結果、各球体41は、ワークWの全周に渡って管壁Waを径方向外側に徐々に膨出変形させ、管壁Waの軸方向中間部に膨出部WB1を形成する。このように、第一挿入部21aおよび第二挿入部31aを工具等を用いて相対回転させる単一の動作によって、ワークWの軸方向中間部に拡管加工を容易に行うことができる。また、入力が一つだけであるため、加工機の構成が簡便であり、例えば、配管工事の現場において容易に使用することができる。
【0047】
また、上記ボールフォーミング装置1において、第一挿入部21aは、ワーク保持具10に、軸線C1中心の回転運動を軸方向の移動に変換する第二ネジ機構45を介して支持され、第一ネジ機構43は、規定の停止位置43aまで締め込まれることで、第一挿入部21aおよび第二挿入部31aを互いに軸方向で近付いた状態に固定可能であり、第一ネジ機構43で固定された第一挿入部21aおよび第二挿入部31aを含む集合体は、第二ネジ機構45の作動によって、ワークWに対して軸線C1中心で回転しながら軸方向移動する。
【0048】
上記ボールフォーミング装置1を用いた拡管加工方法は、第一挿入部21aを、ワークWを保持するワーク保持具10に、軸線C1中心の回転運動を軸方向の移動に変換する第二ネジ機構45を介して支持し、第一ネジ機構43を締め込んで第一挿入部21aおよび第二挿入部31aを互いに軸方向で近付いた状態に固定した状態で、第一挿入部21aおよび第二挿入部31aを含む集合体を、第二ネジ機構45の作動によって、ワークWに対して軸線C1中心で回転させながら軸方向移動させる。
【0049】
この構成によれば、まず、第一挿入部21aおよび第二挿入部31aならびに各球体41の集合体をワークWの内部に挿入し、各球体41をワークWに対して軸線C1中心で回転(公転)させながら、テーパ面23に沿って径方向外側に移動させ、ワークWの管壁Waを内周側から押圧して膨出部WB1を形成する。その後、第一ネジ機構43を停止位置43aまで締め込んで第一挿入部21aおよび第二挿入部31aを互いに近付いた状態で固定し、この状態で第二ネジ機構45の作動により前記集合体を軸線C1中心で回転させながら軸方向移動させることで、各球体41がワークWの管壁Waの内面を内周側からしごきながら軸方向移動し、ワークWの管壁Waを軸方向の所定範囲に渡って幅広に膨出させた膨出部WB2を形成する。このように、前記集合体とワーク保持具10とを工具等を用いて相対回転させる単一の動作によって、ワークWの軸方向中間部に幅広の拡管加工を容易に行うことができる。また、入力が一つだけであるため、加工機の構成が簡便であり、例えば、配管工事の現場において容易に使用することができる。
【0050】
また、上記ボールフォーミング装置1において、第一ネジ機構43の停止位置43aを調整可能な停止位置調整機構29を備えている。
この構成によれば、第一ネジ機構43の停止位置43aを調整可能とすることで、第一挿入部21aおよび第二挿入部31aが軸方向で互いに最も近付いたときの球体41の軸方向位置(ワークWの膨出部形成位置)を調整可能となり、ワークWの加工の自由度を向上させることができる。
【0051】
また、上記ボールフォーミング装置1において、第一ネジ機構43が規定の締め込み位置にある状態で、第一挿入部21aおよび第二挿入部31aの一方のテーパ面23と、相手側の挿入部と、の間の軸方向の距離を調整可能な距離調整機構39を備えている。
この構成によれば、第一挿入部21aおよび第二挿入部31aの一方のテーパ面23と相手側の挿入部との間の軸方向の距離を調整可能とすることで、第一ネジ機構43の締め込み量が同一であっても、各球体41のテーパ面23に沿う径方向外側への移動量を調整可能となり、ワークWの加工の自由度を向上させることができる。
【0052】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではない。例えば、第一挿入部21aの軸方向他側にテーパ面23を有する構成に限らず、第二挿入部31aの軸方向一端部にテーパ面23を有してもよく、第一挿入部21aおよび第二挿入部31aの両方にテーパ面23を有してもよい。
第一ネジ機構43は、第一挿入部21a側を固定して第二挿入部31a側を回転させる構成に限らず、第二挿入部31a側を固定して第一挿入部21a側を回転させる構成でもよい。すなわち、第一挿入部21aおよび第二挿入部31aが相対回転可能な構成であればよい。同様に、第二ネジ機構45は、ワーク保持具10側を固定して第一挿入部21a側を回転させる構成に限らず、第一挿入部21a側を固定してワーク保持具10側を回転させる構成でもよい。すなわち、ワーク保持具10および第一挿入部21aが相対回転可能な構成であればよい。
【0053】
ボールフォーミング装置1は、平坦状の膨出部WB2を形成可能(第二加工段階を実施可能)な構成に限らず、ビード状の膨出部WB1のみ形成可能(第一加工段階のみ実施可能)な構成でもよい。すなわち、第二ネジ機構45を無くした構成でもよい。
第一組体20は、一対のナット27を有する構成に限らず、第二組体30のようにナットおよびカラーを有する構成でもよい。同様に、第二組体30は、ナット38およびカラー37を有する構成に限らず、第一組体20のように一対のナットを有する構成でもよい。
そして、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、実施形態の構成要素を周知の構成要素に置き換える等、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 ボールフォーミング装置
20 第一組体
21 ボス
21a 第一挿入部
23 テーパ面(傾斜面)
29 停止位置調整機構
30 第二組体
31 ボール保持部
31a 第二挿入部
39 距離調整機構
41 球体(ボール)
43 第一ネジ機構(ネジ機構)
43a 停止位置
45 第二ネジ機構
WB1,WB2 膨出部(拡径部)
C1,C2 中心軸線(軸線)
W ワーク(金属管)
Wa 管壁