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特開2024-176863ガレート型カテキン類が低減した容器詰め茶飲料、及びその製造方法
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  • 特開-ガレート型カテキン類が低減した容器詰め茶飲料、及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176863
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】ガレート型カテキン類が低減した容器詰め茶飲料、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23F 3/16 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
A23F3/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095703
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000253503
【氏名又は名称】キリンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】後藤 武知
【テーマコード(参考)】
4B027
【Fターム(参考)】
4B027FB01
4B027FB08
4B027FB10
4B027FB13
4B027FC02
4B027FC06
4B027FC10
4B027FE08
4B027FK09
4B027FK19
4B027FP72
4B027FP81
4B027FP85
4B027FP90
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、(i)ガレート型カテキン類が低減した容器詰め茶飲料、(ii)ガレート型カテキン類が低減した茶抽出物の製造方法、及び、(iii)茶抽出物の渋味及び褐変を低減する方法等を提供することにある。
【解決手段】本発明は、容器詰め茶飲料であって、
前記容器詰め茶飲料中のカテキン類濃度が40mg/100mL以下であり、
前記容器詰め茶飲料中の、カテキン類濃度に対するガレート型カテキン類濃度の比率が33%未満であり、かつ、
前記容器詰め茶飲料中の、タンニン濃度に対する前記カテキン類濃度の比率が70%以上である、前記容器詰め茶飲料に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器詰め茶飲料であって、
前記容器詰め茶飲料中のカテキン類濃度が400mg/L以下であり、
前記容器詰め茶飲料中の、カテキン類濃度に対するガレート型カテキン類濃度の比率が33%未満であり、かつ、
原料茶抽出物と微生物の菌体を接触させる工程Aを含む、茶抽出物の製造方法によって製造された茶抽出物を含有する、前記容器詰め茶飲料。
【請求項2】
容器詰め茶飲料であって、
前記容器詰め茶飲料中のカテキン類濃度が400mg/L以下であり、
前記容器詰め茶飲料中の、カテキン類濃度に対するガレート型カテキン類濃度の比率が33%未満であり、かつ、
前記容器詰め茶飲料中の、タンニン濃度に対する前記カテキン類濃度の比率が70%以上である、前記容器詰め茶飲料。
【請求項3】
タンニン濃度が500mg/L以下である、請求項1又は2に記載の容器詰め茶飲料。
【請求項4】
カフェイン濃度に対するガレート型カテキン類濃度の比率が30%以上100%未満である請求項1又は2に記載の容器詰め茶飲料。
【請求項5】
カフェイン濃度が150mg/L以下である、請求項1又は2に記載の容器詰め茶飲料。
【請求項6】
原料茶抽出物と微生物の菌体を接触させる工程Aを含むことを特徴とする、茶抽出物の製造方法。
【請求項7】
微生物の菌体が、酵母及び乳酸菌からなる群から選ばれる1種又は2種以上の菌体である、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
工程Aより後に、工程Aにおける微生物の菌体を除去する工程Bを含む、請求項6に記載の製造方法。
【請求項9】
原料茶抽出物と微生物の菌体を接触させる工程Aを含むことを特徴とする、茶抽出物の渋味及び褐変を低減する方法。
【請求項10】
微生物の菌体が、酵母及び乳酸菌からなる群から選ばれる1種又は2種以上の菌体である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程Aより後に、工程Aにおける微生物の菌体を除去する工程Bを含む、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(i)ガレート型カテキン類が低減した容器詰め茶飲料、(ii)ガレート型カテキン類が低減した茶抽出物の製造方法、及び、(iii)茶抽出物の渋味及び褐変を低減する方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
茶飲料には、カテキン類等の種々の成分が含まれている。例えば緑茶を水系溶媒で抽出した緑茶飲料には、非重合体カテキン類、カフェイン、アミノ酸類、ビタミンCなどの有用成分が含まれている。中でも、非重合体カテキン類はその抗酸化作用や抗菌作用などの様々な健康機能性が注目されている。
【0003】
一方、非重合体カテキン類は渋味や収斂味を呈する成分であり、渋味が強過ぎると不快感ないし嫌悪感を伴うようになる。非重合体カテキン類には、遊離型カテキン類(エピガロカテキン、ガロカテキン、エピカテキン及びカテキン)と、ガレート型カテキン類(エピガロカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキンガレート及びカテキンガレート)がある。非重合体カテキン類のうち、特にガレート型カテキン類は後口に残る渋味が強い点が課題であり、飲みやすさの観点から渋味や収斂味を一定強度以内に抑えることが望ましい。また、ガレート型カテキンは茶飲料の経時変化による褐変寄与度が大きい点も課題であり、この点からも一定濃度以内に抑えることが望ましい。
【0004】
茶抽出物中のガレート型カテキン類を低減し得る技術として、様々な方法が知られている。例えば特許文献1には、非重合体カテキン類中のガレート体率が50質量%以上である茶抽出物をタンナーゼ処理すること、及び、タンナーゼ処理後の茶抽出物を合成吸着剤に接触させることを含む方法が開示されている。しかし、この方法は、合成吸着剤を用いるため、安全性や、消費者の受容性などの点で課題があった。また、特許文献2には、緑茶抽出液をタンナーゼ処理し、及び、糖類を添加することを含む方法が開示されている。しかし、この方法は糖類を添加するため、例えば無糖の茶飲料には使用できない等の課題があった。また、特許文献3には、原料緑茶抽出物と茶殻を接触させる工程を含むことを特徴とする緑茶抽出物の製造方法が開示されている。しかし、この方法は、緑茶抽出物中のガレート型カテキン類を十分には低減することはできないなどの点で課題があった。また、特許文献4には、原料茶抽出物と、グルテリン及びグリアジンからなる群より選択される少なくとも1種のタンパク質を接触させる工程を含むことを特徴とする茶抽出物の製造方法が開示されている。しかし、グルテリンやグリアジンは汎用されている食品原料ではなく、この方法は汎用性などの点で課題があった。また、特許文献5には、茶葉抽出液をポリビニルポリピロリドン(PVPP)に接触させて、茶葉抽出液中のガレート型カテキン類の総カテキン類に占める割合を30%以下に低減させる方法が開示されている。しかし、この方法は、茶らしい香味が不足する傾向があるなどの点で課題があった。
【0005】
一方、飲食品への微生物の利用に関して、特許文献6には、飲食物に酵母エキスを含有させることによって飲食物の味の奥行きとまろみを強める方法が開示されており、特許文献7には、脱カフェイン処理された紅茶に酵母エキス、リナロール、ヘキサン酸を含有させ、かつ、前記リナロールの含有量に対する前記ヘキサン酸の含有量の割合を特定範囲とすることで、呈味及び茶葉感を向上させる方法が開示されている。また、特許文献8には、乳酸菌を茶飲料に含有させることによって、茶飲料の加熱殺菌時の液色劣化を抑制する方法が開示されており、特許文献9には、ラクトバチルス・ペントーサスおよび/またはラクトバチルス・プランタラムを含有する飲料において、それらの乳酸菌の沈降を抑制するために、前述の飲料のpHを5.7以上に調整する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-136703号公報
【特許文献2】特開2020-127375号公報
【特許文献3】特開2018-29566号公報
【特許文献4】特開2018-29567号公報
【特許文献5】特開2004-159597号公報
【特許文献6】特開2014-18098号公報
【特許文献7】特開2018-153134号公報
【特許文献8】特開2022-145447号公報
【特許文献9】特開2019-62747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、(i)ガレート型カテキン類が低減した容器詰め茶飲料、(ii)ガレート型カテキン類が低減した茶抽出物の製造方法、及び、(iii)茶抽出物の渋味及び褐変を低減する方法等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、本発明の課題を解決すべく、鋭意検討した結果、
(a)容器詰め茶飲料中のカテキン類濃度を400mg/L以下とし、
前記容器詰め茶飲料中の、カテキン類濃度に対するガレート型カテキン類濃度の比率を33%未満とし、かつ、
前記容器詰め茶飲料中の、タンニン濃度に対する前記カテキン類濃度の比率を70%以上とすることによって、
渋味及び褐変が低減した容器詰め茶飲料を得ることができること;及び、
(b)原料茶抽出物と微生物の菌体を接触させることによって、ガレート型カテキン類が低減した茶抽出物を得ることができること、及び、その茶抽出物やその茶抽出物を含有する茶飲料では渋味及び褐変が低減していること;
等を見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明によれば以下の発明が提供される。
(1)容器詰め茶飲料であって、
前記容器詰め茶飲料中のカテキン類濃度が400mg/L以下であり、
前記容器詰め茶飲料中の、カテキン類濃度に対するガレート型カテキン類濃度の比率が33%未満であり、かつ、
原料茶抽出物と微生物の菌体を接触させる工程Aを含む、茶抽出物の製造方法によって製造された茶抽出物を含有する、前記容器詰め茶飲料;
(2)容器詰め茶飲料であって、
前記容器詰め茶飲料中のカテキン類濃度が400mg/L以下であり、
前記容器詰め茶飲料中の、カテキン類濃度に対するガレート型カテキン類濃度の比率が33%未満であり、かつ、
前記容器詰め茶飲料中の、タンニン濃度に対する前記カテキン類濃度の比率が70%以上である、前記容器詰め茶飲料;
(3)タンニン濃度が500mg/L以下である、上記(1)又は(2)に記載の容器詰め茶飲料;
(4)カフェイン濃度に対するガレート型カテキン類濃度の比率が30%以上100%未満である上記(1)~(3)のいずれかに記載の容器詰め茶飲料;
(5)カフェイン濃度が150mg/L以下である、上記(1)~(4)のいずれかに記載の容器詰め茶飲料;
(6)原料茶抽出物と微生物の菌体を接触させる工程Aを含むことを特徴とする、茶抽出物の製造方法;
(7)微生物の菌体が、酵母及び乳酸菌からなる群から選ばれる1種又は2種以上の菌体である、上記(6)に記載の製造方法;
(8)工程Aより後に、工程Aにおける微生物の菌体を除去する工程Bを含む、上記(6)に記載の製造方法;
(9)原料茶抽出物と微生物の菌体を接触させる工程Aを含むことを特徴とする、茶抽出物の渋味及び褐変を低減する方法;
(10)微生物の菌体が、酵母及び乳酸菌からなる群から選ばれる1種又は2種以上の菌体である、上記(9)に記載の方法;
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、(i)ガレート型カテキン類が低減した容器詰め茶飲料、(ii)ガレート型カテキン類が低減した茶抽出物の製造方法、及び、(iii)茶抽出物の渋味及び褐変を低減する方法等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスJCM5805株と、該株と同等の株(該株に由来する株および該株が由来する株)との間の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、
[1]容器詰め茶飲料であって、
前記容器詰め茶飲料中のカテキン類濃度が400mg/L以下であり、
前記容器詰め茶飲料中の、カテキン類濃度に対するガレート型カテキン類濃度の比率が33%未満であり、かつ、
原料茶抽出物と微生物の菌体を接触させる工程Aを含む、茶抽出物の製造方法によって製造された茶抽出物を含有する、前記容器詰め茶飲料(以下、「本発明の第1の飲料」とも表示する。);
[2]容器詰め茶飲料であって、
前記容器詰め茶飲料中のカテキン類濃度が400mg/L以下であり、
前記容器詰め茶飲料中の、カテキン類濃度に対するガレート型カテキン類濃度の比率が33%未満であり、かつ、
前記容器詰め茶飲料中の、タンニン濃度に対する前記カテキン類濃度の比率が70%以上である、前記容器詰め茶飲料(以下、「本発明の第2の飲料」とも表示する。);(以下、本発明の第1の飲料と第2の飲料を併せて、「本発明の飲料」とも表示する。)
[3]原料茶抽出物と微生物の菌体を接触させる工程Aを含むことを特徴とする、茶抽出物の製造方法(以下、「本発明の製造方法」とも表示する。);
[4]原料茶抽出物と微生物の菌体を接触させる工程Aを含むことを特徴とする、茶抽出物の渋味及び褐変を低減する方法(以下、「本発明の低減方法」とも表示する。);
などの実施態様を含んでいる。
【0013】
(本発明の飲料)
本発明の飲料は、
「 容器詰め茶飲料であって、
前記容器詰め茶飲料中のカテキン類濃度が400mg/L以下であり、
前記容器詰め茶飲料中の、カテキン類濃度に対するガレート型カテキン類濃度の比率が33%未満であり、かつ、
原料茶抽出物と微生物の菌体を接触させる工程Aを含む、茶抽出物の製造方法によって製造された茶抽出物を含有する、前記容器詰め茶飲料。」(本発明の第1の飲料)、又は、
「 容器詰め茶飲料であって、
前記容器詰め茶飲料中のカテキン類濃度が400mg/L以下であり、
前記容器詰め茶飲料中の、カテキン類濃度に対するガレート型カテキン類濃度の比率が33%未満であり、かつ、
前記容器詰め茶飲料中の、タンニン濃度に対する前記カテキン類濃度の比率が70%以上である、前記容器詰め茶飲料。」(本発明の第2の飲料)
である。
なお、本明細書において、飲料中のカテキン類濃度、ガレート型カテキン類濃度、タンニン濃度などの濃度は、飲料の液体部分における濃度を意味し、飲料が微生物の菌体や、茶葉粉砕物などの固体を含んでいる場合、それらの固体を除去した液体中の濃度を意味する。
【0014】
(カテキン類濃度)
本明細書において、「カテキン類」とは、カテキン、ガロカテキン、カテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、及び、エピガロカテキンガレートからなる群から選択される1種又は2種以上を意味する。また、「カテキン類濃度」とは、飲料中のカテキン類の合計濃度を意味する。
【0015】
本発明の飲料中のカテキン類濃度としては、特に制限されないが、例えば、400mg/L以下が挙げられ、本発明の効果をより多く得る観点から、350mg/L以下が好ましく挙げられる。
飲料中のカテキン類濃度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた方法によって、測定・定量することができる。本発明の飲料中のカテキン類濃度は、例えば、茶抽出物を調製する際の、茶葉や水の使用量などを調整すること等により調整することができる。
【0016】
(ガレート型カテキン類濃度)
「ガレート型カテキン類」とは、エピガロカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキンガレート及びカテキンガレートの4種のガレート型カテキンの総称である。また、「ガレート型カテキン類濃度」とは、飲料中のガレート型カテキン類の合計濃度を意味する。
【0017】
本発明の飲料中のガレート型カテキン類濃度としては、カテキン類濃度に対するガレート型カテキン類濃度の比率が33%未満である限り特に制限されないが、飲料中のガレート型カテキン類濃度として、例えば、92mg/L以下が挙げられ、本発明の効果をより多く得る観点から、85mg/L以下、80mg/L以下又は75mg/L以下が好ましく挙げられる。
【0018】
飲料中のカテキン類濃度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた方法によって、測定・定量することができる。本発明の飲料中のガレート型カテキン類濃度は、例えば、茶抽出物を調製する際の、茶葉や水の使用量などを調整することや、タンナーゼ処理をすることや、原料茶抽出物に接触させる微生物の菌体の量等により調整することができる。
【0019】
(カテキン類濃度に対するガレート型カテキン類濃度の比率)
本発明の飲料における、カテキン類濃度に対するガレート型カテキン類濃度の比率としては、33%未満である限り特に制限されないが、本発明の効果をより多く得る観点から、31%以下、30%以下、28%以下が好ましく挙げられる。かかる比率は、本発明の飲料中のカテキン類濃度や、ガレート型カテキン類濃度を調整することにより調整することができる。
【0020】
(タンニン濃度)
本発明の飲料中のタンニン濃度としては、特に制限されないが、例えば、800mg/L以下、600mg/L以下、500mg/L以下が挙げられる。また、本発明の飲料中のタンニン濃度の下限としては、特に制限されないが、例えば、200mg/L以上、300mg/L以上が挙げられる。これらの上限値及び下限値は、それぞれ任意に組み合わせることができる。
【0021】
飲料中のタンニン濃度は、茶類のポリフェノール量を評価する際の基準である日本食品分析センター編「五訂 日本食品標準成分分析マニュアルの解説」(日本食品分析センター編、中央法規、2001年7月、p.252)に記載の公定法(酒石酸鉄吸光度法)を用いて測定することができる。この測定方法においては、液中のポリフェノールと、酒石酸鉄試薬とを反応させて生じた紫色成分について、吸光度(540nm)を測定することにより、没食子酸エチルを標準物質として作成した検量線を用いて定量することができる。このようにして得られた定量した値に1.5倍したものをタンニン量とすることができる。本発明の飲料中のタンニン濃度は、例えば、茶抽出物を調製する際の、茶葉や水の使用量などを調整すること等により調整することができる。
【0022】
(タンニン濃度に対するカテキン類濃度の比率)
本発明の飲料における、タンニン濃度に対するカテキン類濃度の比率としては、特に制限されないが、例えば70%以上が挙げられ、好ましくは72%以上が挙げられる。また、かかる比率の上限としては、特に制限されないが、92%以下、90%以下、85%以下、81%以下、80%以下挙げられる。かかる比率は、本発明の飲料中のカテキン類濃度や、ガレート型カテキン類濃度を調整することにより調整することができる。なお、本発明の第2の飲料においては、タンニン濃度に対するカテキン類濃度の比率は70%以上であり、好ましくは72%以上である。かかる比率の上限は、前述の数値が挙げられる。
【0023】
(カフェイン濃度)
本発明の飲料中のカフェイン濃度としては、特に制限されないが、例えば、150mg/L以下、100mg/L以下が挙げられる。
【0024】
飲料中のカフェイン濃度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた方法によって、測定・定量することができる。本発明の飲料中のカフェイン濃度は、例えば、茶抽出物を調製する際の、茶葉や水の使用量などを調整することや、カフェイン含有濃度が所定濃度である茶葉を選択すること等により調整することができる。
【0025】
(カフェイン濃度に対するガレート型カテキン類濃度の比率)
本発明の飲料における、カフェイン濃度に対するガレート型カテキン類濃度の比率としては、特に制限されないが、本発明の効果をより多く得る観点から、好ましくは30%以上100%未満、より好ましくは30%以上95%未満、さらに好ましくは30%以上90%未満が挙げられる。かかる比率は、本発明の飲料中のガレート型カテキン類濃度や、カフェイン濃度を調整することにより調整することができる。
【0026】
(茶飲料)
本発明の飲料は茶飲料である。本発明における「茶飲料」としては、特に限定されないが、例えば、不発酵茶(例えば、緑茶)飲料、発酵茶(例えば、紅茶)飲料、及び、半発酵茶(例えば、烏龍茶)飲料、並びにこれらの一部または全部のブレンド茶飲料が挙げられ、中でも、緑茶飲料、烏龍茶飲料、紅茶飲料が好ましく、中でも、緑茶飲料、紅茶飲料がより好ましく挙げられ、中でも、緑茶飲料がさらに好ましく挙げられる。
【0027】
茶飲料は茶抽出物を含んでいる。本発明における「茶抽出物」とは、茶葉(抹茶等の茶葉粉砕物を含む)を抽出処理に付することにより得られる、抽出物を意味する。茶抽出物としては、液体であっても、粉末等の固体であってもよい。本発明に用いられる茶抽出物としては、茶葉からの抽出液(茶葉抽出液)それ自体や、その加工品類(例えば、濃縮液体エキス、粉末エキス)又はその希釈液などが挙げられ、従来、茶飲料の製造に用いられている茶抽出原料(好ましくは緑茶抽出原料、紅茶抽出原料及び/又は烏龍茶抽出原料)であれば、特に限定されず、適宜選択することができる。本明細書において、「茶抽出物」として、不発酵茶抽出物(例えば緑茶抽出物)、発酵茶抽出物(例えば紅茶抽出物)、半発酵茶抽出物(例えば烏龍茶抽出物)が挙げられ、中でも、緑茶抽出物、紅茶抽出物、烏龍茶抽出物が好ましく挙げられ、中でも、緑茶抽出物や紅茶抽出物がより好ましく挙げられ、中でも緑茶抽出物がさらに好ましく挙げられる。なお、本発明において、抽出処理とは、茶成分が抽出溶媒中に溶出されていればよく、例えば、抹茶等の茶葉粉砕物を溶解させる処理等の態様も含まれる。
【0028】
茶抽出物の調製に用いられる茶葉としては、ツバキ科の常緑樹である茶樹カメリア・シネンシス(Camelliasinensisvar.)に属する茶葉を用いることができる。本発明の茶飲料の製造に用いられる茶葉は、本発明の効果を奏する限り特に限定されるものではなく、煎茶、玉露、抹茶、釜炒り茶、深蒸し茶、番茶、ほうじ茶などの緑茶に代表される不発酵茶の茶葉に限らず、烏龍茶のような半発酵茶の茶葉や、紅茶のような発酵茶の茶葉なども用いることができる。本発明に用いられる茶葉として、緑茶葉や紅茶葉が好ましく挙げられ、緑茶葉がより好ましく挙げられる。本発明においてはまた、複数種類の原料および茶葉が使用されてもよい。
【0029】
茶葉の抽出処理の方法としては、特に限定されず、食品加工分野で一般的に用いられている種々の抽出方法を用いることができ、例えば、溶媒抽出、気流抽出、圧搾抽出などが包含され、必要に応じて、沈殿もしくは濾過などの固液分離、濃縮、遠心分離、乾燥(例えば、噴霧乾燥、凍結乾燥)又は粉末化などの処理をさらに施してもよい。
【0030】
ここで、溶媒抽出で用いられる抽出溶媒としては、水(例えば、硬水、軟水、イオン交換水および天然水)が望ましい。抽出溶媒の量は、当業者が適宜選択することができ、特に限定されない。例えば、抽出溶媒が水の場合は、その量は、茶葉の1~100倍量(質量)である。
【0031】
抽出温度や抽出時間は、当業者が適宜選択することができ、特に限定されない。例えば、抽出溶媒が水の場合は、その温度および時間は、10~120℃で1分~12時間が挙げられる。
【0032】
抽出処理の一例としては、茶葉を、水中に、0~90℃で、1分~24時間浸漬および攪拌し、その後、茶葉を濾過または遠心分離する方法が挙げられる。ここで、抽出時の温度や時間などの条件は、特に限定されず、茶葉の種類や量によって当業者が任意に選択し、かつ設定することができる。
【0033】
茶抽出物の調製において、茶エキスや茶パウダーなどの茶抽出液の濃縮物や精製物を用いてもよく、例えば、ポリフェノン(三井農林社製)、サンフェノン(太陽化学社製)、テアフラン(伊藤園社製)などの市販品を用いることができる。また、これらの茶濃縮物(好ましくは緑茶濃縮物、紅茶濃縮物及び/又は烏龍茶濃縮物など)や茶精製物(好ましくは緑茶精製物、紅茶精製物及び/又は烏龍茶精製物など)は、そのまま、又は水で溶解若しくは希釈したものを単独で使用しても、複数の種類を混合して用いても、茶抽出物と混合して用いてもよい。
【0034】
本発明の飲料では、通常の飲料の製造に用いられている飲料用添加剤、例えば、酸味料、香料、色素、果汁、甘味料(高甘味度甘味料を含む)、乳原料、茶葉粉砕物(抹茶、粉茶など)、食品添加剤(例えば、酸化防止剤、保存料、増粘安定剤、乳化剤、食物繊維、pH調整剤、苦味料)などを添加してもよい。また、本発明の飲料は、微生物の菌体を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。本発明の飲料が微生物の菌体を含んでいる態様における微生物の菌体濃度としては、特に制限されないが、飲料の重量に対する微生物の菌体の乾燥重量の割合(%)として、例えば0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.25重量%以上、さらに好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは0.75重量%以上が挙げられる。前述の割合の上限としては特に制限されないが、茶飲料の茶飲料本来の香味バランスを保持する観点から、例えば1重量%以下や0.8重量%以下が好ましく挙げられる。より具体的には、例えば0.01~1重量%、好ましくは0.05~1重量%、より好ましくは0.25~1重量%が挙げられる。本発明の飲料における微生物の菌体濃度(すなわち、飲料の重量に対する微生物の菌体の乾燥重量の割合(%))は、濁度測定法など公知の方法により測定することができる。また、本発明の飲料は、乳酸菌による発酵物をさらに含んでいてもよいが、含んでいないことが好ましい。
【0035】
本発明の飲料は容器詰め茶飲料である。かかる容器とは、内容物と外気との接触を断つことができる密閉容器を意味し、例えば、金属缶、樽容器、プラスチック製ボトル(例えば、PETボトル、カップ)、紙容器、瓶、パウチ容器などが挙げられる。
【0036】
(本発明の飲料の製造)
本発明の第1の飲料は、本発明の製造方法によって製造された茶抽出物を含有する。本発明の第2の飲料が含有する茶抽出物は、本発明の製造方法によって製造された茶抽出物であってもよいし、他の製造方法によって製造された茶抽出物であってもよく、また、両方の茶抽出物を混合したものであってもよいが、本発明の製造方法によって製造された茶抽出物であることが好ましい。上記の他の製造方法としては、例えば、遊離型カテキンに対するガレート型カテキンの割合が比較的低い茶抽出物を用いること等が挙げられる。
【0037】
(本発明の製造方法)
本発明の製造方法としては、原料茶抽出物と微生物の菌体を接触させる工程Aを含むことを特徴とする、茶抽出物の製造方法である限り、特に制限されない。
【0038】
(微生物の菌体)
微生物の菌体とは、微生物の菌体、又は、その一部(すなわち菌体の加工物)を意味する。微生物の菌体の一部としては、本発明の効果を有している限り特に制限されないが、微生物の細胞壁(例えば酵母の細胞壁)などの、微生物の菌体の加工物が好ましく挙げられる。用いる微生物の菌体としては、死菌体であってもよいし、生菌体であってもよいし、死菌体と生菌体を併用してもよいが、死菌体であることが好ましい。微生物の菌体としては、乾燥物(すなわち乾燥菌体)であっても、非乾燥物(例えば湿菌体)であってもよいが、保存安定性の観点から乾燥物であることが好ましく、例えば乾燥粉末が好適に挙げられる。なお、微生物の生菌体を原料緑茶抽出物に接触させた後、飲料調製時の殺菌処理にて、飲料中の微生物を死滅させて死菌体としてもよいが、あらかじめ死菌体としたものを、原料茶抽出物と接触させることが好ましい。
【0039】
微生物の菌体の調製方法は特に制限されず、例えば、微生物を培養した培地をろ過、遠心分離等して菌体を集菌する方法が挙げられる。死菌体を得る場合は、加熱、紫外線照射、γ線照射など、微生物を死滅させる常套手段を用いることができる。
【0040】
本発明の飲料の製造に用いる際の、微生物の菌体濃度としては、本発明の効果が得られる限り、特に制限されないが、原料茶抽出物又は飲料の重量に対する微生物の菌体の乾燥重量の割合(%)として、例えば0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.25重量%以上、さらに好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは0.75重量%以上が挙げられる。前述の割合の上限としては特に制限されず、例えば3重量%以下が挙げられるが、微生物の菌体を本発明の飲料中に残しておく場合は、茶飲料の茶飲料本来の香味バランスを保持する観点から、例えば1重量%以下や0.8重量%以下が好ましく挙げられる。より具体的には、例えば0.01~1重量%、好ましくは0.05~1重量%、より好ましくは0.25~1重量%が挙げられる。
【0041】
(微生物の種類)
本発明における微生物の種類としては、本発明の効果が得られる限り特に制限されないが、細菌、及び、酵母からなる群から選択される1種又は2種以上が挙げられる。
【0042】
「細菌」としては、特に制限されないが、乳酸菌、ビフィドバクテリウム属細菌、及び、クロストリジウム属細菌からなる群から選択される1種又は2種以上が挙げられ、乳酸菌、及び、ビフィドバクテリウム属細菌からなる群から選択される1種又は2種以上が好ましく挙げられる。
【0043】
(乳酸菌)
「乳酸菌」とは、分類学的に乳酸菌と認定されたものの全ての総称であり、属、種、株などで限定されるものではない。かかる「乳酸菌」としては、糖を乳酸発酵して多量の乳酸(好ましくは、消費した糖の50%以上の乳酸)を生成する細菌が挙げられ、ラクトコッカス(Lactococcus)属細菌、ラクトバシラス(Lactobacillus)属細菌、ストレプトコッカス(Streptococcus)属細菌、ロイコノストック(Leuconostoc)属細菌、ペディオコッカス(Pediococcus)属細菌、エンテロコッカス(Enterococcus)属細菌が挙げられる。
【0044】
乳酸菌の属や種は特に制限されないが、ラクトコッカス属細菌、ラクトバシラス属細菌、ストレプトコッカス属細菌、ロイコノストック属細菌、ペディオコッカス属細菌、エンテロコッカス属細菌からなる群から選択される1種又は2種以上の細菌が挙げられ、好ましくは、ラクトコッカス属細菌、及び、ラクトバシラス属細菌からなる群から選択される1種又は2種以上の細菌が挙げられ、より好ましくは、ラクトコッカス・ラクティス、及び、ラクトバシラス・パラカゼイからなる群から選択される1種又は2種以上の細菌が挙げられ、さらに好ましくはラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスからなる群から選択される1種又は2種以上の細菌が挙げられる。
【0045】
本発明における乳酸菌の、より具体的な好ましい態様として、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)(ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスJCM 5805、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスNBRC12007、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスNRIC 1150、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスJCM20101、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスJCM7638、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスATCC 11454等)、ラクトコッカス・ラクティス・バイオバリアント・ダイアセチラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis biovar diacetylactis)、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・クレモリス(Lactococcus lactis subsp. cremoris)(ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリスJCM 16167、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリスNBRC100676等)、ラクトコッカス・ラフィノラクティス(Lactococcus raffinolactis)、ラクトコッカス・ピシウム(Lactococcus piscium)、ラクトコッカス・プランタラム(Lactococcus plantarum)、ラクトコッカス・ガルビエアエ(Lactococcus garvieae)(ラクトコッカス・ガルビエアエNBRC100934等)、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ホールドニアエ(Lactococcuslactis subsp. hordniae)(ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ホールドニアエJCM1180、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ホールドニアエJCM11040等)、ラクトバシラス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)(ラクトバシラス・アシドフィルスL-92等)、ラクトバシラス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)、ラクトバシラス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・デルブルッキー(Lactobacillus delbrueckii subsp. delbrueckii)、ラクトバシラス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ラクティス(Lactobacillus delbrueckii subsp. lactis)、ラクトバシラス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバシラス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)(ラクトバシラス・パラカゼイKW3110株及びラクトバシラス・パラカゼイMCC1849株等)、ラクトバシラス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)(ラクトバシラス・ガセリSBT2055株)、ラクトバシラス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバシラス・ジョンソニ(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバシラス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)(ラクトバシラス・プランタラムL-137株等)、ラクトバシラス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバシラス・カゼイ・サブスピーシーズ・ラムノーサス(Lactobacillus casei subsp. rhamnosus)(ラクトバシラス・ラムノサスGG株)、ラクトバシラス・ペントーサス(Lactobacillus pentosus)、ラクトバシラス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバシラス・フルクティヴォランス(Lactobacillus fructivorans)、ラクトバシラス・ヒルガルディー(Lactobacillus hilgardii)、ストレプトコッカス・サリバリウス・サブスピーシーズ・サーモフィラス(Streptococcus salivarius subsp. thermophilus)、ロイコノストック・メセントロイデス・サブスピーシス・クレモリス(Leuconostoc mesenteroides subsp. cremoris)、ロイコノストック・ラクチス(Leuconostoc lactis)、ペディオコッカス・ダムノサス(Pediococcus damnosus)、ペディオコッカス ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)、ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)(ペディオコッカス・アシディラクティシJCM8797株及びペディオコッカス・アシディラクティシK15等)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、ペディオコッカス・セリコーラ(Pediococcus cellicola)、ペディオコッカス・クラウッセニー(Pediococcusc laussenii)、ペディオコッカス・エタノーリデュランス(Pediococcus ethanolidurans)、ペディオコッカス・イノピナタス(Pediococcus inopinatus)、ペディオコッカス・パルヴルス(Pediococcus parvulus)、ペディオコッカス・スティレッシー(Pediococcus stilesii)及び、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)からなる群から選択される1種又は2種以上の細菌が挙げられ、好ましくは、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティス、ラクトコッカス・ラクティス・バイオバリアント・ダイアセチラクティス、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・クレモリス、ラクトコッカス・ラフィノラクティス、ラクトコッカス・ピシウム、ラクトコッカス・プランタラム、ラクトコッカス・ガルビエアエ、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ホールドニアエ、ラクトバシラス・アシドフィラス、ラクトバシラス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス、ラクトバシラス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ラクティス、ラクトバシラス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・デルブルッキー、ラクトバシラス・カゼイ、ラクトバシラス・パラカゼイ、ラクトバシラス・ガセリ、ラクトバシラス・ヘルベティカス、ラクトバシラス・ジョンソニ、ラクトバシラス・プランタラム、ラクトバシラス・ブレビス、ラクトバシラス・カゼイ・サブスピーシーズ・ラムノーサス、ラクトバシラス・ペントーサス、ラクトバシラス・ファーメンタム、ストレプトコッカス・サリバリウス・サブスピーシーズ・サーモフィラス、ロイコノストック・メセントロイデス・サブスピーシス・クレモリス、及び、ロイコノストック・ラクチスからなる群から選択される1種又は2種以上の細菌が挙げられ、より好ましくは、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティス、ラクトコッカス・ラクティス・バイオバリアント・ダイアセチラクティス、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・クレモリス、ラクトコッカス・ラフィノラクティス、ラクトコッカス・ピシウム、ラクトコッカス・プランタラム、ラクトコッカス・ガルビエアエ、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ホールドニアエ、ラクトバシラス・アシドフィラス、ラクトバシラス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス、ラクトバシラス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ラクティス、ラクトバシラス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・デルブルッキー、ラクトバシラス・カゼイ、ラクトバシラス・パラカゼイ、ラクトバシラス・ガセリ、ラクトバシラス・ヘルベティカス、ラクトバシラス・ジョンソニ、ラクトバシラス・プランタラム、ラクトバシラス・ブレビス、ラクトバシラス・カゼイ・サブスピーシーズ・ラムノーサス、ラクトバシラス・ペントーサス、及び、ラクトバシラス・ファーメンタムからなる群から選択される1種又は2種以上の細菌が挙げられ、さらに好ましくは、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティス、及び、ラクトバシラス・パラカゼイからなる群から選択される1種又は2種以上の細菌が挙げられ、より好ましくは、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスJCM5805、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスJCM20101、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスNBRC12007、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスNRIC1150、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスJCM 7638、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスATCC11454、ラクトバシラス・パラカゼイKW3110、及び、ラクトバシラス・パラカゼイMCC1849からなる群から選択される1種又は2種以上の細菌が挙げられ、特に好ましくは、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスJCM5805、ラクトバシラス・パラカゼイKW3110、及び、ラクトバシラス・パラカゼイMCC1849からなる群から選択される1種又は2種以上の細菌が挙げられ、より好ましくはラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスJCM5805が挙げられる。
【0046】
本発明における乳酸菌の、別の好ましい態様として、ラクトコッカス属細菌からなる群から選択される1種又は2種以上が挙げられ、好ましくは、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスJCM 5805、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスNBRC12007、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスNRIC 1150、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスJCM20101、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスJCM7638、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスATCC 11454、ラクトコッカス・ガルビエアエNBRC 100934、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリスJCM16167、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリスNBRC100676、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ホールドニアエJCM 1180、及び、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ホールドニアエJCM11040からなる群から選択される1種又は2種以上が挙げられる。
【0047】
本明細書において挙げられている乳酸菌の菌株について、本発明では、本発明の効果を奏する限り、前記菌株と同等の菌株も、その菌株に含まれる。ここで、同等の菌株とは、上記の菌株から由来している菌株または上記の菌株が由来する菌株若しくはその菌株の子孫菌株をいう。同等の菌株は他の菌株保存機関に保存されている場合もある。図1に、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスJCM5805に由来する菌株、及び、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスJCM5805が由来する菌株を示す。図1に記載のラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスJCM5805の同等の菌株も、本発明の効果を奏する限り、本発明の乳酸菌として用いることができる。本明細書において、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスJCM5805(ラクトコッカス・ラクティスJCM5805)という場合、これらの同等の菌株も含む。また、上記の乳酸菌株のうち、JCM菌株は、理化学研究所・バイオリソースセンター・微生物材料開発室(茨城県つくば市高野台3丁目1番地の1)から、NBRC菌株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構生物遺伝資源部門(千葉県木更津市かずさ鎌足2丁目5番8号)から、NRIC菌株は、東京農業大学・菌株保存室(東京都世田谷区桜丘1丁目1番1号)から、ATCC菌株は、American type culture collection(米国)から、それぞれ入手することができる。
ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスJCM5805菌株は上記の通り理化学研究所・バイオリソースセンター・微生物材料開発室から入手することができるが、本発明では理化学研究所・バイオリソースセンター・微生物材料開発室以外の保存機関に保存された、JCM5805菌株の同一菌株を使用することができる。具体的には、JCM5805菌株の同一菌株を、独立行政法人製品評価技術基盤機構生物遺伝資源部門(千葉県木更津市かずさ鎌足2丁目5番8号)、東京農業大学・菌株保存室(東京都世田谷区桜丘1丁目1番1号)およびAmerican type culture collection(米国)等から入手することができる。
【0048】
(ビフィドバクテリウム属細菌)
ビフィドバクテリウム属細菌の種は特に制限されないが、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacteriumbreve)、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム(Bifidobacteriumlongum subsp. longum)、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス(Bifidobacterium longum subsp. infantis)、ビフィドバクテリウム・アニマリス・サブスピーシーズ・アニマリス(Bifidobacterium animalis subsp. animalis)、ビフィドバクテリウム・アニマリス・サブスピーシーズ・ラクティス(Bifidobacterium animalis subsp. lactis)、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)、ビフィドバクテリウム・アンギュラータム(Bifidobacterium angulatum)、ビフィドバクテリウム・カテヌラータム(Bifidobacterium catenulatum)、及び、ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータム(Bifidobacterium pseudocatenulatum)からなる群から選択される1種又は2種以上の細菌が挙げられ、好ましくは、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス、ビフィドバクテリウム・アニマリス・サブスピーシーズ・アニマリス、及び、ビフィドバクテリウム・アニマリス・サブスピーシーズ・ラクティスからなる群から選択される1種又は2種以上の細菌が挙げられる。
【0049】
(クロストリジウム属細菌)
クロストリジウム属細菌の種としては、飲食品に用い得る種が挙げられ、具体的には、酪酸菌として知られるクロストリジウム・ブチリカム(Clostridium butyricum)が挙げられる。
【0050】
(酵母)
酵母としては、飲食品に用い得る種が挙げられ、例えば、サッカロマイセス(Saccharomyces)属、トルロプシス(Torulopsis)属、ミコトルラ(Mycotorula)属、トルラスポラ(Torulaspora)属、キャンディダ(Candida)属、ロードトルラ(Rhodotorula)属、ピキア(Pichia)属、サッカロマイコプシス属(Saccharomycopsis)などが挙げられ、サッカロマイセス属が好ましく挙げられる。本発明に用い得る酵母の種の具体例としては、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・カールスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)、サッカロマイセス・ウバラム(Saccharomyces uvarum)、サッカロマイセス・ルーキシー(Saccharomyces rouxii)、サッカロマイセス・リポリティカ(Saccharomyces lipolytica)、トルロプシス・ユチリス(Torulopsis utilis)、トルロプシス・キャンディダ(Torulopsis candida)、ミコトルラ・ジャポニカ(Mycotorula japonica)、ミコトルラ・リポリティカ(Mycotorula lipolytica)、トルラスポラ・デルブルッキ(Torulaspora delbrueckii)、トルラスポラ・ファーメンタチ(Torulaspora fermentati)、キャンディダ・サケ(Candida sake)、キャンディダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、キャンディダ・ユチリス(Candida utilis)、ピキア・アノマラ(Pichia anomala)、ピキア・スアベオレンス(Pichia suaveolens)、ピキア・ファリノサ(Pichia farinosa)、ロードトルラ・ルブラ(Rhodotorula rubra)、及び、サッカロマイコプシス・フィブリゲラ(Saccharomycopsis fibligera)からなる群から選択される1種又は2種以上の菌が挙げられ、サッカロマイセス・セレビシエが好ましく挙げられる。
【0051】
(工程A)
本発明における工程Aとしては、原料茶抽出物と微生物の菌体を接触させる工程Aである限り、特に制限されない。
【0052】
原料茶抽出物とは、本発明の飲料を製造するために原料として用いる茶抽出物を意味する。微生物の菌体と接触させる原料茶抽出物は、液体であることが好ましい。微生物の菌体と接触させる原料茶抽出物の温度としては、特に制限されないが、1~140℃、5~140℃、5~80℃などが挙げられる。また、工程Aで原料茶抽出物と微生物の菌体を接触させる時間としては、特に制限されず、例えば30秒~2時間が挙げられ、茶抽出物の製造効率の観点から30秒~30分、30秒~10分が好ましく挙げられる。
【0053】
(工程B)
本発明の製造方法は、工程Aより後に、工程Aにおける微生物の菌体を除去する工程Bを含んでいてもよいし、含んでいなくてもよいが、含んでいることが好ましい。微生物の菌体を除去する方法としては特に制限されないが、例えば、微生物の菌体を含有する原料茶抽出物を遠心分離するなどして、微生物の菌体を原料抽出物から除去する方法が好ましく挙げられる。
【0054】
(工程B以外の任意工程)
本発明の製造方法は、工程Aを必須の工程として有している。本発明の製造方法は、工程Aの他に、あるいは、工程A及びBの他に、任意の工程をさらに含有していてもよい。かかる任意の工程としては、原料茶抽出物を調製する工程、加熱殺菌工程、容器への充填工程などが挙げられる。なお、原料茶抽出物と微生物の菌体を接触させる工程は、原料茶抽出物と微生物の菌体が接触する限り、本発明の製造工程内のうち、いずれの段階で行ってもよく、例えば固体の原料茶抽出物と微生物の菌体を接触させた後、そこに水を添加する方法や、微生物の菌体を含む水で茶葉から原料茶抽出物を抽出する方法など、原料茶抽出物の調製と同時に微生物の菌体を原料茶抽出物に接触させてもよいし、また、容器詰め茶飲料の製造の最後の段階で微生物の菌体を容器内に添加して原料茶抽出物と微生物の菌体を接触させてもよい。
【0055】
本発明の茶飲料の製造において、加熱殺菌処理を行う場合は、食品分野で一般的に用いられている種々の加熱殺菌方法を用いることができる。かかる加熱殺菌方法としては、例えば、熱水スプレー式、熱水貯湯式若しくは蒸気式のレトルト殺菌装置や、チューブ式若しくはプレート式の液体連続殺菌装置を用いた方法が挙げられる。
【0056】
(ガレート型カテキン類が低減し、及び、渋味及び褐変が低減した容器詰め茶飲料)
本発明の飲料は、ガレート型カテキン類が低減し、及び、渋味及び褐変が低減した容器詰め茶飲料である。
【0057】
本明細書において、ガレート型カテキン類が低減した容器詰め茶飲料とは、(a)カテキン類濃度に対するガレート型カテキン類濃度の比率が33%未満である容器詰め茶飲料、又は、(b)微生物の菌体を原料茶抽出物に接触させなかったこと以外は、同種の原材料を用いて同じ製造方法で製造した容器詰め茶飲料(以下、「本発明におけるコントロール飲料」とも表示する」)と比較して、カテキン類濃度に対するガレート型カテキン類濃度の比率が低減した容器詰め茶飲料を意味する。
【0058】
本明細書において、渋味及び褐変が低減した容器詰め茶飲料とは、(a)カテキン類濃度に対するガレート型カテキン類濃度の比率が33%未満である容器詰め茶飲料、又は、(b)本発明におけるコントロール飲料と比較して、渋味及び褐変が低減した容器詰め茶飲料を意味する。
【0059】
ある容器詰め茶飲料における、渋味及び褐変の程度や、かかる渋味及び褐変の程度が本発明におけるコントロール飲料と比較してどのようであるか(例えば、低減しているかどうか)は、訓練されたパネルであれば、容易かつ明確に決定することができる。
【0060】
(本発明の低減方法)
本発明の低減方法としては、原料茶抽出物と微生物の菌体を接触させる工程Aを含むことを特徴とする、茶抽出物の渋味及び褐変を低減する方法である限り、特に制限されない。
本発明の低減方法は、工程Aより後に、工程Aにおける微生物の菌体を除去する工程Bを含んでいてもよいし、含んでいなくてもよいが、含んでいることが好ましい。また、本発明の低減方法は、工程Aの他に、あるいは、工程A及びBの他に、任意の工程をさらに含有していてもよい。工程A、工程B、任意の工程などについては、上記(本発明の製造方法)において記載したのと同様である。
【0061】
以下に、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例0062】
[試験1]茶抽出物に微生物の菌体を接触させることによる、茶抽出物の成分変化の確認1
茶抽出物に微生物の菌体を接触させることによって、茶抽出物の成分がどのように変化するかを調べるために以下の試験を行った。
【0063】
緑茶葉をお湯に入れて抽出し固液分離を行い、緑茶抽出液(タンニン濃度400mg/L)を作製した。この緑茶抽出液に、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスJCM5805株の乾燥死菌体粉末を0.05重量%添加して混合し、20℃条件下で2時間静置した後、遠心分離して死菌体を除去し、L-アスコルビン酸、及び、重曹(炭酸水素ナトリウム)をそれぞれ0.04重量%添加して混合し、140℃で加熱処理をして、試験例1のサンプル飲料を調製した。
【0064】
また、静置する温度及び時間を「80℃条件下で30秒間」としたこと以外は、試験例1の調製法と同じ方法で試験例2のサンプル飲料を調製した。
【0065】
また、静置する温度及び時間を「140℃条件下で30秒間」としたこと以外は、試験例1の調製法と同じ方法で試験例3のサンプル飲料を調製した。
【0066】
なお、JCM5805株の乾燥死菌体粉末を添加しなかった緑茶抽出液をコントロール(比較例)飲料とした。
【0067】
比較例、及び、試験例1~3の各飲料について、Brix値、pH、タンニン濃度、カフェイン濃度、各種アミノ酸濃度を測定した結果を表1に示す。なお、表1に記載されていないアミノ酸は検出されなかった。また、比較例、及び、試験例1~3の各飲料について、各種のカテキン類の濃度を測定した結果等を表2に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
表1の結果から分かるように、原料茶抽出物に乳酸菌の菌体を接触させた場合、アミノ酸やカフェインの濃度に影響はなく、タンニン濃度は約10%程度低減することが示された。
【0070】
【表2】
【0071】
表2の結果から分かるように、原料茶抽出物に乳酸菌の菌体を接触させた場合、遊離型カテキンの濃度にはほとんど影響がなかったのに対し、ガレート型カテキン類の濃度は約20%以上低減することが示された。また、原料茶抽出物に乳酸菌の菌体を接触させてガレート型カテキンが低減した結果、カテキン類濃度に対するガレート型カテキン類濃度の比率が33%未満となることが示された。さらに、原料茶抽出物に乳酸菌の菌体を接触させてガレート型カテキンが低減した結果、カフェイン濃度に対するガレート型カテキン類濃度の比率が100%以下となることが示された。
【0072】
[試験2]茶抽出物に微生物の菌体を接触させることによる、茶抽出物の成分変化の確認2
乳酸菌以外の微生物の菌体を接触させた場合であっても、ガレート型カテキンの濃度が低減するかを調べるために以下の試験を行った。
【0073】
緑茶葉をお湯に入れて抽出し固液分離を行い、緑茶抽出液(タンニン濃度400mg/L)を作製した。この緑茶抽出液に、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスJCM5805株の乾燥死菌体粉末を0.05重量%添加して混合し、90℃条件下で30秒間静置した後、遠心分離して死菌体を除去し、L-アスコルビン酸、及び、重曹(炭酸水素ナトリウム)をそれぞれ0.04重量%添加して混合し、140℃で加熱処理をして、試験例4のサンプル飲料を調製した。
【0074】
また、乳酸菌JCM5805株の乾燥死菌体粉末に代えて、市販のパン酵母A(サッカロマイセス属酵母)の乾燥死菌体粉末を用いたこと以外は、試験例4の調製法と同じ方法で試験例5のサンプル飲料を調製した。
【0075】
また、乳酸菌JCM5805株の乾燥死菌体粉末に代えて、市販のパン酵母B(サッカロマイセス属酵母)の乾燥死菌体粉末を用いたこと以外は、試験例4の調製法と同じ方法で試験例6のサンプル飲料を調製した。
【0076】
なお、乳酸菌の菌体、酵母の菌体のいずれも添加しなかった緑茶抽出液をコントロール(比較例)飲料とした。
【0077】
比較例、及び、試験例4~6の各飲料について、Brix値、pH、タンニン濃度、カフェイン濃度を測定した結果を表3に示す。また、比較例、及び、試験例4~6の各飲料について、各種のカテキン類の濃度を測定した結果等を表4に示す。
【0078】
【表3】
【0079】
表3の結果から分かるように、原料茶抽出物に、乳酸菌の菌体ではなく、酵母の菌体を接触させた場合も、カフェインの濃度に影響はなく、タンニン濃度が約10~20%程度低減することが示された。
【0080】
【表4】
【0081】
表4の結果から分かるように、原料茶抽出物に、乳酸菌の菌体ではなく、酵母の菌体を接触させた場合も、遊離型カテキンの濃度にはほとんど影響がなかったのに対し、ガレート型カテキン類の濃度は約20%以上低減することが示された。また、原料茶抽出物に微生物の菌体を接触させてガレート型カテキンが低減した結果、カテキン類濃度に対するガレート型カテキン類濃度の比率が33%未満となることが示された。さらに、原料茶抽出物に微生物の菌体を接触させてガレート型カテキンが低減した結果、カフェイン濃度に対するガレート型カテキン類濃度の比率が100%以下となることが示された。
【0082】
[試験3]茶抽出物に接触させる微生物の菌体濃度の違いによる、茶抽出物の成分変化の確認
茶抽出物に接触させる微生物の菌体濃度の違いによって、茶抽出物の成分がどのように変化するかを調べるために以下の試験を行った。
【0083】
緑茶葉をお湯に入れて抽出し固液分離を行い、緑茶抽出液(タンニン濃度800mg/L)を作製した。この緑茶抽出液に、市販のパン酵母B(サッカロマイセス属酵母)の乾燥死菌体粉末を0.25重量%添加して混合し、90℃条件下で30秒間静置した後、遠心分離して死菌体を除去し、次いで水で2倍に希釈して、試験例7のサンプル飲料を調製した。
【0084】
また、パン酵母Bの乾燥死菌体粉末の添加濃度を、0.25重量%ではなく、0.5重量%としたこと以外は、試験例7の調製法と同じ方法で試験例8のサンプル飲料を調製した。
【0085】
また、パン酵母Bの乾燥死菌体粉末の添加濃度を、0.25重量%ではなく、0.75重量%としたこと以外は、試験例7の調製法と同じ方法で試験例9のサンプル飲料を調製した。
【0086】
なお、酵母の菌体を添加せず、水で2倍に希釈した緑茶抽出液をコントロール(比較例)飲料とした。
【0087】
比較例、及び、試験例7~9の各飲料について、各種のカテキン類の濃度を測定した結果等を表5に示す。
【0088】
【表5】
【0089】
表5の結果から分かるように、原料茶抽出物に微生物の菌体を接触させた場合、その微生物の菌体濃度が高いほど、ガレート型カテキンの濃度がより多く低減することが示された。また、原料茶抽出物に接触させる微生物の菌体濃度が高いほど、カテキン類濃度に対するガレート型カテキン類濃度の比率も低くなることが示された。
【0090】
[試験4]微生物の菌体を茶抽出物に接触させる際の温度の違いによる、茶抽出物の成分変化の確認
微生物の菌体を茶抽出物に接触させる際の温度の違いによって、茶抽出物の成分がどのように変化するかを調べるために以下の試験を行った。
【0091】
緑茶葉をお湯に入れて抽出し固液分離を行い、緑茶抽出液(タンニン濃度800mg/L)を作製した。この緑茶抽出液に、市販のパン酵母B(サッカロマイセス属酵母)の乾燥死菌体粉末を0.25重量%添加して混合し、5℃条件下で10分間静置した後、遠心分離して死菌体を除去し、次いで水で2倍に希釈して、試験例10のサンプル飲料を調製した。
【0092】
また、静置するときの温度を、5℃ではなく、20℃としたこと以外は、試験例10の調製法と同じ方法で試験例11のサンプル飲料を調製した。
【0093】
また、静置するときの温度を、5℃ではなく、50℃としたこと以外は、試験例10の調製法と同じ方法で試験例12のサンプル飲料を調製した。
【0094】
また、静置するときの温度を、5℃ではなく、80℃としたこと以外は、試験例10の調製法と同じ方法で試験例13のサンプル飲料を調製した。
【0095】
なお、酵母の菌体を添加せず、水で2倍に希釈した緑茶抽出液をコントロール(比較例)飲料とした。
【0096】
比較例、及び、試験例10~13の各飲料について、各種のカテキン類の濃度を測定した結果を表6に示す。
【0097】
【表6】
【0098】
表6の結果から分かるように、微生物の菌体を原料茶抽出物に接触させる際の温度がいずれの温度であっても、ガレート型カテキンのみが同程度に低減することが示された。なお、表6と表1の結果を併せ考慮すると、上記の温度が5~140℃の範囲で、ガレート型カテキンの低減の程度はおおむね同様であることが示された。また、原料茶抽出物に微生物の菌体を接触させた場合、いずれの温度であっても、カテキン類濃度に対するガレート型カテキン類濃度の比率が33%未満となることが示された。
【0099】
[試験5]茶抽出物に微生物の菌体を接触させることによる、茶抽出物の香味変化及び外観の経時変化の確認
茶抽出物に微生物の菌体を接触させることによる、茶抽出物の香味変化及び外観の経時変化を確認するために以下の試験を行った。なお、以下の試験では、従来法との比較のために、従来法を利用したサンプル飲料として、ポリビニルポリピロリドン(PVPP)を用いたサンプル飲料や、タンナーゼを用いたサンプル飲料を調製した。タンナーゼは、ガレート型カテキンにおけるカルボキシルエステル結合を加水分解し、遊離型カテキンと没食子酸を生じさせる。
【0100】
緑茶葉をお湯に入れて抽出し固液分離を行い、緑茶抽出液(1380mg/L)を作製した。この緑茶抽出液に、ビール酵母(サッカロマイセス属酵母)の乾燥死菌体粉末を0.08重量%添加して混合し、室温条件下で30分間静置した後、遠心分離して死菌体を除去し、水で3倍に希釈すると共にビタミンCと重曹を所定量添加して、140℃で殺菌し、ペットボトルに充填して試験例14のサンプル飲料を調製した。
【0101】
また、ビール酵母(サッカロマイセス属酵母)の乾燥死菌体粉末の添加濃度を、0.08重量%ではなく、0.16重量%としたこと以外は、試験例14の調製法と同じ方法で試験例15のサンプル飲料を調製した。
【0102】
また、前述の緑茶抽出液に、ポリビニルポリピロリドン(PVPP)粉末を0.04重量%添加して混合し、室温条件下で30分間静置した後、遠心分離してPVPPを除去し、水で3倍に希釈すると共にビタミンCと重曹を所定量添加して、140℃で殺菌し、ペットボトルに充填して試験例16のサンプル飲料を調製した。
【0103】
また、PVPP粉末の添加濃度を、0.04重量%ではなく、0.08重量%としたこと以外は、試験例16の調製法と同じ方法で試験例17のサンプル飲料を調製した。
【0104】
また、前述の緑茶抽出液に、タンナーゼ酵素(「タンナーゼ」:三菱ケミカル社)の粉末を0.01重量%添加して混合し、40℃条件下で30分間静置した後、失活させ、水で3倍に希釈すると共にビタミンCと重曹を所定量添加して、140℃で殺菌し、ペットボトルに充填して試験例18のサンプル飲料を調製した。
【0105】
また、タンナーゼ酵素の粉末の添加濃度を、0.01重量%ではなく、0.04重量%としたこと以外は、試験例18の調製法と同じ方法で試験例19のサンプル飲料を調製した。
【0106】
なお、緑茶抽出液に酵母の菌体を添加せずに水で3倍希釈すると共に、ビタミンCと重曹を所定量添加し、140℃で殺菌し、ペットボトルに充填したものをコントロール(比較例)飲料とした。
【0107】
比較例、及び、試験例14~19の各飲料について、Brix値、pH、タンニン濃度、8種のカテキン類の合計濃度、4種の遊離型カテキンの合計濃度、4種のガレート型カテキンの合計濃度、没食子酸濃度、カフェイン濃度を測定した結果を表8に示す。
【0108】
比較例、及び、試験例14~19の各飲料の外観、甘味、ざらつき、及び、飲みごたえのそれぞれについて、訓練した専門パネル8名によって、以下の表7に記載されるような5段階の評価基準で官能評価試験を行った。なお、外観、甘味、ざらつき、及び、飲みごたえのそれぞれについて、1点と2点の程度の差、2点と3点の程度の差、3点と4点の程度の差、4点と5点の程度の差は、それぞれ同程度とした。また、各試験例サンプルにおける外観、甘味、ざらつき、及び、飲みごたえの評価としては、各パネルの評価点の平均値の小数第1位を四捨五入した値を採用した。また、外観の評価点が1点以上2.5点未満は×、2.5点以上3.5点未満は△、3.5点以上は〇とした。また、香味の総合評価として、甘味、ざらつき、及び、飲みごたえの3つの評価点の平均点が1点以上2.5点未満は×、2.5点以上3.5点未満は△、3.5点以上は〇とした。
【0109】
【表7】
【0110】
比較例、及び、試験例14~19の各飲料についての官能評価試験の結果等を表8に示す。
【0111】
【表8】
【0112】
表8の結果から分かるように、PVPPやタンナーゼを用いた場合であっても、カテキン類濃度に対するガレート型カテキン濃度の比率は低減した。しかし、タンナーゼを用いた場合は、外観において、やや赤黄色が強く褐変した液色となり、香味においても評価が悪く、PVPPを用いた場合は、外観に問題はないものの、甘味、ざらつき、飲みごたえなど全体的に低減されて平坦で薄い味わいとなって評価がよくないことが示された。一方、原料茶抽出物に微生物の菌体を接触させた場合は、PVPPやタンナーゼを用いた場合と比較して、外観も香味も良好であった。香味として具体的には、苦渋みが低減し甘味を感じなめらかな味わいが感じられた。これらのことから、微生物の菌体を用いる本発明の方法は、PVPPやタンナーゼを用いる従来法と比較して顕著に優れた効果を有していることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明によれば、(i)ガレート型カテキン類が低減した容器詰め茶飲料、(ii)ガレート型カテキン類が低減した茶抽出物の製造方法、及び、(iii)茶抽出物の渋味及び褐変を低減する方法等を提供することができる。
図1