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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176873
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】連結部材
(51)【国際特許分類】
   B60D 1/32 20060101AFI20241212BHJP
   B60D 1/145 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B60D1/32
B60D1/145
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095717
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100182718
【弁理士】
【氏名又は名称】木崎 誠司
(72)【発明者】
【氏名】北川 雄基
(72)【発明者】
【氏名】奥家 悠介
(72)【発明者】
【氏名】松▲崎▼ 光良
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】富永 貴夫
(72)【発明者】
【氏名】増山 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】田宮 治孝
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 俊幸
(57)【要約】
【課題】牽引装置の搬送に応じて発生する慣性力および遠心力が被牽引物に及ぼす影響を抑制する。
【解決手段】牽引装置と、牽引装置に牽引される被牽引物と、を接続する連結部材は、牽引装置に取り付けられる支柱部材と、一方の側が被牽引物に接続され、他方の側に被牽引物の進行方向に沿って伸びる長孔を備える長尺部材であって、長孔に支柱部材が挿入されており、長孔の内側において支柱部材が進行方向に沿って相対移動可能な長尺部材と、支柱部材および長尺部材の少なくとも一方に形成され、支柱部材が長尺部材に対して相対移動したときに、自身の状態が変化することで、長尺部材が支柱部材から受ける衝撃を吸収する衝撃吸収部材と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
牽引装置と、前記牽引装置に牽引される被牽引物と、を接続する連結部材であって、
前記牽引装置に取り付けられる支柱部材と、
一方の側が前記被牽引物に接続され、他方の側に前記被牽引物の進行方向に沿って伸びる長孔を備える長尺部材であって、前記長孔に前記支柱部材が挿入されており、前記長孔の内側において前記支柱部材が前記進行方向に沿って相対移動可能な前記長尺部材と、
前記支柱部材および前記長尺部材の少なくとも一方に形成され、前記支柱部材が前記長尺部材に対して相対移動したときに、自身の状態が変化することで、前記長尺部材が前記支柱部材から受ける衝撃を吸収する衝撃吸収部材と、
を備えることを特徴とする連結部材。
【請求項2】
請求項1に記載の連結部材であって、
前記衝撃吸収部材は、前記支柱部材および前記長尺部材の少なくとも一方に固定されることを特徴とする連結部材。
【請求項3】
請求項2に記載の連結部材であって、
前記衝撃吸収部材は、
前記長尺部材に固定される本体部と、前記本体部から前記進行方向に沿った方向に伸びる先端部と、を有し、
前記支柱部材が前記長尺部材に対して相対移動したときに、前記本体部と前記先端部との相対距離が変化することにより前記衝撃を吸収することを特徴とする連結部材。
【請求項4】
請求項1に記載の連結部材であって、
前記衝撃吸収部材は、
前記支柱部材が前記長尺部材に対して前記進行方向に沿った第1の方向に相対移動したときに、自身の状態が変化することで、前記衝撃を吸収する第1衝撃吸収部材と、
前記支柱部材が前記長尺部材に対して前記第1の方向と反対の第2の方向に相対移動したときに、自身の状態が変化することで、前記衝撃を吸収する第2衝撃吸収部材と、
を有することを特徴とする連結部材。
【請求項5】
請求項2に記載の連結部材であって、
前記衝撃吸収部材は、
前記長尺部材に固定され、前記支柱部材が前記長尺部材に対して相対移動したときに前記支柱部材と接触することにより、前記進行方向に沿った衝撃を吸収するショックアブソーバー、ダンパー、スプリング、又はゴム材と、
前記支柱部材に固定され、前記支柱部材が前記長尺部材に対して相対移動したときに前記長尺部材と接触することにより、前記進行方向に沿った衝撃を吸収するゴム材と、
の少なくとも一方であることを特徴とする連結部材。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の連結部材であって、
前記牽引装置は、人が運転する搬送車両、無人搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)、又は自律走行搬送ロボット(AMR:Autonomous Mobile Robot)であることを特徴とする連結部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連結部材に関する。
【背景技術】
【0002】
被牽引物を牽引する無人搬送車が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された無人搬送車では、車両部に対して、被牽引物に接続されたアーム部の回転角度が制御されることにより、車両部の回転による被牽引物への影響が抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-015414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
被牽引物を牽引する牽引装置が発進または停止をするときに、被牽引物に慣性力が発生する。また、牽引装置の進行方向が変化すると、変化に伴う遠心力が被牽引物に発生する。これらの慣性力および遠心力は、被牽引物に搭載されている製品に影響を及ぼす。製品に対するこれらの影響を抑制するためには、被牽引物における製品の固定方法を変更するなどの設計が必要になるおそれがある。設計変更で対応できない場合には、被牽引物の大幅な改造が必要になるおそれや、牽引装置の搬送条件(走行速度や加減速度)を調整するおそれがある。搬送条件を調整するためには、新たな試験が必要になる。また、搬送速度を低下させると、搬送効率が悪化する。被牽引物が搬送する製品の種類に伴い、製品の固定方法や固定のための治具が変わると、作業者への負荷が増加し、牽引装置の完全自動化の障壁となる。
【0005】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、牽引装置の搬送に応じて発生する慣性力および遠心力が被牽引物に及ぼす影響を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現できる。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、牽引装置と、前記牽引装置に牽引される被牽引物と、を接続する連結部材が提供される。この連結部材において、前記牽引装置に取り付けられる支柱部材と、一方の側が前記被牽引物に接続され、他方の側に前記被牽引物の進行方向に沿って伸びる長孔を備える長尺部材であって、前記長孔に前記支柱部材が挿入されており、前記長孔の内側において前記支柱部材が前記進行方向に沿って相対移動可能な前記長尺部材と、前記支柱部材および前記長尺部材の少なくとも一方に形成され、前記支柱部材が前記長尺部材に対して相対移動したときに、自身の状態が変化することで、前記長尺部材が前記支柱部材から受ける衝撃を吸収する衝撃吸収部材と、を備える。
【0008】
この構成によれば、連結部材は、牽引装置と被牽引物とを接続する。支柱部材は、長尺部材に形成された長孔内を、被牽引物の進行方向に沿って揺動可能に支持されている。牽引装置の発進、停止、加速、および減速等が行われると、支柱部材は長孔内を移動して長孔を形成する内周面の端面に衝突する。衝撃吸収部材は、衝突時に自身の状態を変化させることにより、長尺部材が支柱部材から受ける衝撃を吸収する。衝撃吸収により、牽引装置の搬送に応じて発生した慣性力が被牽引物に及ぼす影響が抑制される。すなわち、本構成の連結部材を用いることにより、被牽引物に搭載される製品の固定方法や牽引装置の搬送条件を再設計せずに済み、搬送効率を向上させることができる。また、本構成の連結部材を用いることにより、既存の被牽引物および牽引装置を活用できる。
【0009】
(2)上記形態(1)に記載の連結部材において、衝撃吸収部材は、前記支柱部材および前記長尺部材の少なくとも一方に固定されてもよい。
この構成によれば、衝撃吸収部材は、支柱部材および長尺部材の少なくとも一方に固定されるため、より効率的に衝撃を吸収できる。
【0010】
(3)上記形態(1)または形態(2)に記載の連結部材において、前記衝撃吸収部材は、前記長尺部材に固定される本体部と、前記本体部から前記進行方向に沿った方向に伸びる先端部と、を有し、前記支柱部材が前記長尺部材に対して相対移動したときに、前記本体部と前記先端部との相対距離が変化することにより前記衝撃を吸収してもよい。
この構成によれば、衝撃吸収部材は、本体部と、先端部との相対距離の変化により衝撃を吸収する機構を有している。本構成によれば、例えばスプリングなどにより実現でき、より多くの衝撃を吸収できる。
【0011】
(4)上記形態(1)から形態(3)までのいずれか一項に記載の連結部材において、前記衝撃吸収部材は、前記支柱部材が前記長尺部材に対して前記進行方向に沿った第1の方向に相対移動したときに、自身の状態が変化することで、前記衝撃を吸収する第1衝撃吸収部材と、前記支柱部材が前記長尺部材に対して前記第1の方向と反対の第2の方向に相対移動したときに、自身の状態が変化することで、前記衝撃を吸収する第2衝撃吸収部材と、を有していてもよい。
この構成によれば、第1衝撃吸収部材が第1の方向に沿う相対移動に対する衝撃を吸収し、第2衝撃吸収部材が第2の方向に沿う相対移動に対する衝撃を吸収する。牽引装置の発進と停止とでは、慣性力が働く方向が異なる。本構成によれば、発進と停止とのそれぞれに対して、第1衝撃吸収部材と第2衝撃吸収部材との別々の部材により衝撃を吸収するため、発進と停止とのそれぞれにおける衝撃吸収を別々に設定できる。
【0012】
(5)上記形態(1)から形態(4)までのいずれか一項に記載の連結部材において、前記衝撃吸収部材は、前記長尺部材に固定され、前記支柱部材が前記長尺部材に対して相対移動したときに前記支柱部材と接触することにより、前記進行方向に沿った衝撃を吸収するショックアブソーバー、ダンパー、スプリング、又はゴム材と、前記支柱部材に固定され、前記支柱部材が前記長尺部材に対して相対移動したときに前記長尺部材と接触することにより、前記進行方向に沿った衝撃を吸収するゴム材と、の少なくとも一方であってもよい。
この構成によれば、衝撃を吸収可能な機構として従来から用いられているショックアブソーバー、ダンパー、スプリング、又はゴム材を用いることより慣性力を抑制する機構を実現できる。
【0013】
(6)上記形態(1)から形態(5)までのいずれか一項に記載の連結部材において、前記牽引装置は、人が運転する搬送車両、無人搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)、又は自律走行搬送ロボット(AMR:Autonomous Mobile Robot)であってもよい。
この構成によれば、従来の搬送車両と、自動搬送装置である無人搬送車および自律走行搬送ロボットとを牽引装置として利用できる。
【0014】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、連結部材、衝撃吸収装置、牽引装置、搬送車、自動搬送装置、およびこれらを備えるシステム等の形態で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態としての自動搬送システムの概略斜視図である。
図2】連結部材の概略斜視図である。
図3】連結部材の概略側面図である。
図4】接触部と支柱との接触時の連結部材の概略側面図である。
図5】衝撃吸収装置が支柱回りに回転した状態の概略斜視図である。
図6】第2実施形態の連結部材の概略側面図である。
図7】参考例の積載テーブル機構が搭載された自動搬送システムの概略斜視図である。
図8】参考例の積載テーブル機構の概略側面図である。
図9】参考例の積載テーブル機構の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の一実施形態としての自動搬送システム1の概略斜視図である。本実施形態の自動搬送システム1は、図1に示されるように、牽引装置10と、牽引装置10に牽引される被牽引物20と、牽引装置10と被牽引物20とを接続する連結部材30とを備えている。本実施形態では、連結部材30が衝突時に自身の状態を変化させることにより、牽引装置10の加減速および進行方向の変化に応じて被牽引物20に発生する慣性力や遠心力を吸収する衝撃吸収部材として機能する。これにより、牽引装置10により発生する慣性力や遠心力が被牽引物20に搭載された製品等に及ぼす影響が抑制される。
【0017】
本実施形態の牽引装置10は、自律走行搬送ロボット(AMR:Autonomous Mobile Robot)である。被牽引物20は、図1に示されるように、製品等を積載可能な台車である。被牽引物20は、連結部材30を介して牽引装置10に接続されているため、牽引装置10に追従して移動する。
【0018】
図2は、連結部材30の概略斜視図である。図2には、図1における領域RGの拡大された斜視図が示されている。本実施形態の連結部材30は、図2に示されるように、被牽引物20に接続されている接続部材30Bと、接続部材30Bと牽引装置10とを接続している衝撃吸収装置30Aとを備えている。接続部材30Bは、図1に示されるように、被牽引物20にボルトによって固定されている。接続部材30Bは、剛体である金属製の2つの棒材が組み合わされて形成されている。
【0019】
衝撃吸収装置30Aは、図2に示されるように、牽引装置10に取り付けられている支柱(支柱部材)31と、接続部材30Bに固定された筐体(長尺部材)32と、自身の形状が変化することで筐体32が支柱31から受ける衝撃を吸収するショックアブソーバー(衝撃吸収部材)33とを備えている。なお、図2に示される直交座標系CSは、鉛直方向に平行なZ軸と、水平方向に平行なX軸およびY軸とから構成されている。Y軸は、筐体32に形成された長孔HL(後述)の長軸OLに平行な軸として定義されている。図2に示される直交座標系CSは、図3以降に示される直交座標系CSと対応している。
【0020】
支柱31は、一定の断面積で鉛直方向に沿って延びる柱状部31Aと、柱状部31Aの鉛直方向に沿って上部に配置された大径部31Bとを備えている。大径部31Bは、柱状部31Aの中心軸と同じ軸を中心軸とする円板状の形状を有する。大径部31Bの直径は、柱状部31Aの断面積の直径よりも大きい。
【0021】
筐体32は、図2に示されるように、直方体形状の内部がくり抜かれた形状を有している。筐体32は、一方の側であるY軸負方向側のZ軸正方向側の面が被牽引物20にボルトによって固定されている。筐体32では、被牽引物20が固定された反対側であるY軸正方向側のZ軸正方向側の面およびZ軸負方向側の面に、Y軸に平行な長軸OLを有する長孔HLが形成されている。2つの長孔HLには、支柱31が挿入されている。長孔HLの長軸OLに直交するX軸に平行な短軸の直径は、支柱31の柱状部31Aの横断面の直径よりも若干大きく、かつ、大径部31Bの直径よりも小さい。長孔HLは、長軸OLに沿った2つの端面において、柱状部31Aの横断面よりも若干大きい半円形状の内周面を有している。また、長孔HLは、2つの半円形状の内周面を接続する、長軸OLに平行な平面で形成された内周面を有している。そのため、支柱31は、Z軸正方向側および負方向側に位置する2つの長孔HLの内側において、長軸OL、すなわち、牽引装置10の進行方向に沿って相対移動できる。換言すると、筐体32に対して、支柱31は、長孔HLの長軸OLに沿って揺動可能に支持されている。また、筐体32は、支柱31に対してZ軸回りに回転可能に支持されている。
【0022】
図3は、連結部材30の概略側面図である。図2,3に示されるように、本実施形態のショックアブソーバー33は、筐体32に固定された本体部33Aと、本体部33Aから被牽引物20の長孔HLの長軸に沿って延びる先端部33Bとを備えている。本体部33Aは、略円柱状の形状を有し、円柱状の内部にはオイルとスプリングとが封止されている。先端部33Bは、本体部33Aに接続しているロッド33B1と、ロッド33B1の先端に固定されて支柱31側に配置された接触部33B2とを備えている。
【0023】
ロッド33B1は、図2に示されるように、本体部33Aと接触部33B2との間を接続するように長孔HLの長軸OLに沿って延びている。ロッド33B1は、本体部33Aおよび接触部33B2よりも小さい横断面の柱状の形状を有している。ロッド33B1の本体部33A側の一端は、本体部33A内のスプリンクの端部に接続されている。接触部33B2は、ロッド33B1と同じ中心軸を軸とする柱状形状を有している。図2,3に示される状態では、支柱31が長孔HLにおけるY軸正方向側の端部に接している状態である。この状態では、接触部33B2は支柱31に接触していない。長孔HL内で支柱31が揺動可能な距離は、図2,3で示される接触部33B2における支柱31の端面と、支柱31の柱状部31Aにおける接触部33B2側の側面との距離よりも大きい。
【0024】
図4は、接触部33B2と支柱31との接触時の連結部材30の概略側面図である。図2,3に示される状態から長孔HLを支柱31が揺動する、すなわち、支柱31に対して筐体32が相対移動すると、図4に示されるように、接触部33B2は、支柱31の柱状部31Aに接触する。接触部33B2が支柱31に接触すると、接触部33B2が本体部33Aに近づくように、接触部33B2およびロッド33B1と、本体部33Aとの相対距離が変化する。相対距離の変化時に支柱31と筐体32とが接触し、本体部33A内に封止されたオイルとスプリングとにより、被牽引物20の進行方向に沿った衝撃が吸収される。
【0025】
図5は、衝撃吸収装置30Aが支柱31回りに回転した状態の概略斜視図である。図5には、図1,2に示される状態から牽引装置10の進行方向が変化して、牽引装置10に対する被牽引物20の向きが、Z軸を中心として反時計回りに約120度回転した状態が示されている。図5では、牽引装置10および連結部材30の一部と、被牽引物20との図示が省略されている。筐体32は、牽引装置10に固定された支柱31に対してZ軸回りに回転可能に支持されているため、牽引装置10の進行方向が変化すると、図5に示されるように、牽引装置10の進行方向と、筐体32の長孔HLの長軸OLとが平行な状態から変化する。ショックアブソーバー33の本体部33Aが筐体32に固定されているため、ショックアブソーバー33の中心軸は、筐体32に固定されている接続部材30Bの長手方向と常に平行に維持される。なお、直交座標系CSは、衝撃吸収装置30Aに設定された牽引装置10に対する座標系である。
【0026】
以上のように、本実施形態の自動搬送システム1では、筐体32は、Y軸方向側の被牽引物20に近い一端が被牽引物20にボルトによって固定されている。筐体32では、被牽引物20が固定された反対側であるY軸正方向側に、長軸OLを有する長孔HLが形成されている。長孔HLの内側において支柱31が、牽引装置10の進行方向に沿って相対移動できる。ショックアブソーバー33は、自身の形状が変化することで筐体32が支柱31から受ける衝撃を吸収する。本実施形態の連結部材30は、牽引装置10と被牽引物20とを接続する。支柱31は、筐体32に形成された長孔HL内を、被牽引物20の進行方向に沿って揺動可能に支持されている。牽引装置10の停止および減速が行われると、支柱31は長孔HL内を移動して長孔HLを形成する内周面の端面に衝突する。ショックアブソーバー33は、衝突時に自身の状態を変化させることにより、筐体32が支柱31から受ける衝撃を吸収する。衝撃吸収により、牽引装置10の搬送に応じて発生した慣性力が被牽引物20に及ぼす影響が抑制される。すなわち、本実施形態の連結部材30を用いることにより、被牽引物20に搭載される製品の固定方法や牽引装置10の搬送条件を再設計せずに済み、搬送効率を向上させることができる。また、本実施形態の連結部材30を用いることにより、既存の被牽引物20および牽引装置10を活用できる。
【0027】
また、本実施形態のショックアブソーバー33は、筐体32に固定されている。すなわち、ショックアブソーバー33は、支柱31および筐体32の少なくとも一方に固定されるため、より効率的に衝撃を吸収できる。
【0028】
また、本実施形態のショックアブソーバー33は、筐体32に固定された本体部33Aと、本体部33Aから被牽引物20の進行方向に沿って延びる先端部33Bとを備えている。支柱31に対して筐体32が相対移動すると、接触部33B2およびロッド33B1と、本体部33Aとの相対距離が変化する。相対距離の変化時に支柱31と筐体32とが接触し、本体部33A内に封止されたオイルとスプリングとにより、被牽引物20の進行方向に沿った衝撃が吸収される。本実施形態のショックアブソーバー33は、本体部33Aと、先端部33Bとの相対距離の変化により衝撃を吸収する機構を有している。ショックアブソーバー33を用いることにより、より多くの衝撃を吸収できる。
【0029】
また、本実施形態では、接触部33B2およびロッド33B1と、本体部33Aとの相対距離の変化時に支柱31と筐体32とが接触し、ショックアブソーバー33が被牽引物20の進行方向に沿った衝撃が吸収される。本実施形態では、衝撃を吸収可能な機構として従来から用いられているショックアブソーバーにより慣性力を抑制する機構を実現できる。
【0030】
また、本実施形態の牽引装置10は、自律走行搬送ロボット(AMR:Autonomous Mobile Robot)である。本実施形態では、従来の搬送車両と、自動搬送装置である無人搬送車および自律走行搬送ロボットとを牽引装置10として利用できる。
【0031】
また、本実施形態では、図5に示されるように、衝撃吸収装置30Aが支柱31の中心軸周りに回転可能である。衝撃吸収装置30Aが支柱31回りに回転しない場合には、長孔HL内で支柱31が揺動可能な方向と、被牽引物20の進行方向とが異なる場合に、ショックアブソーバー33が十分に衝撃を吸収できないおそれがある。それに対し、本実施形態の連結部材30は、牽引装置10の進行方向の変化に伴って変化する方向に対応するような複数のショックアブソーバー33を備えなくても、ショックアブソーバー33が、慣性力の向きに応じて中心軸周りに回転するため十分に衝撃を吸収できる。た、本実施形態の衝撃吸収装置30Aは、支柱31の中心軸で衝撃を吸収するため、省スペースかつ低コストで衝撃吸収の機構を実現できる。
【0032】
<第2実施形態>
図6は、第2実施形態の連結部材30aの概略側面図である。図6には、連結部材30aのうち、衝撃吸収装置30Aaと、衝撃吸収装置30Aaの筐体32aに固定された接続部材30Bの一部と、支柱31が固定されている牽引装置10の一部とが図示されている。第2実施形態の衝撃吸収装置30Aaは、第1実施形態の衝撃吸収装置30Aと比較して、衝撃吸収部材として、ショックアブソーバー(第1衝撃吸収部材)33に加えて、ショックアブソーバー(第2衝撃吸収部材)34をさらに備える点が大きく異なる。そのため、第2実施形態では、第1実施形態と異なる点について説明し、同じ構成および形状等についての説明を省略する。
【0033】
図6に示されるように、ショックアブソーバー34は、ショックアブソーバー33と同じ構造および形状を有している。ショックアブソーバー34は、支柱31の中心軸回りに対象となる位置に配置されている。ショックアブソーバー34は、筐体32aに固定された本体部34Aと、本体部34Aから被牽引物20の長孔HLaの長軸に沿って延びる先端部34Bとを備えている。
【0034】
図6に示される状態では、支柱31が長孔HLaにおける長軸上の中央に位置している状態である。この状態では、ショックアブソーバー33の接触部33B2は支柱31に接触しておらず、かつ、ショックアブソーバー34の接触部34B2も支柱31に接触していない。牽引装置10の慣性力により支柱31が長孔HLa内をY軸負方向(第1の方向)側へと移動すると、ショックアブソーバー33の接触部33B2と支柱31とが接触する。この場合には、第1実施形態と同じように、ショックアブソーバー33の本体部33Aと先端部33Bとの相対距離が変化することにより、ショックアブソーバー33が被牽引物20の進行方向に沿った衝撃を吸収する。一方で、牽引装置10の慣性力により支柱31が長孔HLa内をY軸正方向(第2の方向)側へと移動すると、ショックアブソーバー34の接触部34B2と支柱31とが接触する。この場合には、第1実施形態と同じように、ショックアブソーバー34の本体部34Aと先端部34Bとの相対距離が変化することにより、ショックアブソーバー34が被牽引物20の進行方向に沿った衝撃を吸収する。
【0035】
以上説明したように、第2実施形態の連結部材30aでは、支柱31が長孔HLa内をY軸負方向(第1の方向)側へと移動すると、ショックアブソーバー33と支柱31との接触により本体部33Aと先端部33Bとの相対距離が変化し、ショックアブソーバー33が被牽引物20の進行方向に沿った衝撃を吸収する。また、支柱31が長孔HLa内をY軸正方向(第2の方向)側へと移動すると、ショックアブソーバー34と支柱31との接触により本体部34Aと先端部34Bとの相対距離が変化し、ショックアブソーバー34が被牽引物20の進行方向に沿った衝撃を吸収する。牽引装置10の発進と停止とでは、慣性力が働く方向が異なる。本実施形態によれば、ショックアブソーバー33が、牽引装置10の発進時や加速時に被牽引物20に発生する慣性力の衝撃を吸収する。また、ショックアブソーバー34が、牽引装置10の停止時や減速時に被牽引物20に発生する慣性力の衝撃を吸収する。すなわち、発進と停止とのそれぞれに対して、ショックアブソーバー33とショックアブソーバー34との別々の部材により衝撃を吸収するため、発進と停止とのそれぞれにおける衝撃吸収を別々に設定できる。
【0036】
<参考例>
図7は、参考例の積載テーブル機構が搭載された自動搬送システム1xの概略斜視図である。図7に示される自動搬送システム1xでは、第1実施形態の牽引装置10と同じ搬送装置10xの鉛直上方に、製品等を積載可能な積載テーブル機構40が配置されている。積載テーブル機構40は、搬送装置10xに対して進行方向(Y軸方向)および横方向(X軸方向)に沿って揺動可能にガイドレール46,47(後述)により支持されている。積載テーブル機構40は、搬送装置10xに対する積載テーブル機構40の進行方向および横方向の揺動時に発生する慣性力を吸収するショックアブソーバー41~44(後述)を備えている。
【0037】
図8および図9は、参考例の積載テーブル機構40の概略側面図である。図8,9には、積載テーブル機構40のうち、図1に示される2段のテーブルのうちの鉛直下方に位置して搬送装置10xに支持されている1段目のテーブル部45と、搬送装置10xのうちの積載テーブル機構40を支持している鉛直上方の一部とが示されている。図8には、X軸正方向側から見た積載テーブル機構40の概略側面図が示されている。図9には、Y軸負方向側から見た積載テーブル機構40の概略側面図が示されている。
【0038】
図8,9に示されるように、積載テーブル機構40は、テーブル部45と、ガイドレール46,47と、ショックアブソーバー41~44とを備えている。ガイドレール46は、搬送装置10xに対してテーブル部45をY軸方向に沿って移動可能に支持している。ガイドレール47は、搬送装置10xに対してテーブル部45をX軸方向に沿って移動可能に支持している。
【0039】
テーブル部45は、図8に示されるように、製品を積載可能な水平方向に平行な平板45Aと、平板45AにおけるY軸正方向側とY軸負方向側のそれぞれの位置から鉛直下方に延びた接触板45B,45Cとを備えている。テーブル部45は、図9に示されるように、さらに、平板45AにおけるX軸正方向側とX軸負方向側のそれぞれの位置から鉛直下方に延びた接触板45D,45Eとを備えている。
【0040】
図8,9に示されるショックアブソーバー41~44は、搬送装置10xの鉛直上方の面に固定されている。ショックアブソーバー41は、図8に示されるように、Y軸正方向側に配置された接触板45BよりもY軸正方向側に配置されている。そのため、搬送装置10xの移動により発生する慣性力や遠心力によって、ガイドレール46を介して搬送装置10xに対してY軸正方向側に移動すると、ショックアブソーバー41は接触板45Bと接触する。接触時にショックアブソーバー41は、自身の形状を変化させることで、接触板45Bと接触により発生する衝撃を吸収する。
【0041】
同じように、ショックアブソーバー42は、図8に示されるように、Y軸負方向側に配置された接触板45CよりもY軸負方向側に配置されている。そのため、テーブル部45がガイドレール46を介して搬送装置10xに対してY軸負方向側に移動すると、ショックアブソーバー42は接触板45Cと接触する。接触時にショックアブソーバー42は、自身の形状を変化させることで、接触板45Cと接触により発生する衝撃を吸収する。
【0042】
図9に示されるショックアブソーバー43は、X軸正方向側に配置された接触板45DよりもX軸負方向側に配置されている。そのため、テーブル部45がガイドレール46を介して搬送装置10xに対してX軸負方向側に移動すると、ショックアブソーバー43は接触板45Dと接触する。接触時にショックアブソーバー43は、自身の形状を変化させることで、接触板45Dと接触により発生する衝撃を吸収する。
【0043】
同じように、ショックアブソーバー44は、図9に示されるように、X軸負方向側に配置された接触板45EよりもX軸正方向側に配置されている。ショックアブソーバー44は、テーブル部45がガイドレール46を介して搬送装置10xに対してX軸正方向側に移動すると、ショックアブソーバー44は接触板45Eと接触する。接触時にショックアブソーバー44は、自身の形状を変化させることで、接触板45Eと接触により発生する衝撃を吸収する。
【0044】
以上のように、参考例の自動搬送システム1xでは、搬送装置10xの鉛直上方において、Y軸正方向側およびY軸負方向側のそれぞれと、X軸正方向側およびX軸負方向側のそれぞれとにショックアブソーバー41~44が配置されている。ショックアブソーバー41~44のそれぞれは、搬送装置10xに対するテーブル部45の移動による衝撃を吸収する。衝撃吸収により、搬送装置10xの搬送に応じて発生した慣性力が積載テーブル機構40上に搭載された製品等に及ぼす影響が抑制される。すなわち、積載テーブル機構40を用いることにより、テーブル部45に搭載される製品の固定方法や搬送装置10xの搬送条件を再設計せずに済み、搬送効率を向上させることができる。また、積載テーブル機構40を用いることにより、既存の搬送装置10xを活用できる。
【0045】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0046】
上記第1実施形態および第2実施形態では、支柱31と、筐体32とを備える連結部材30,30aが、自身の形状が変化することで筐体32が支柱31から受ける衝撃を吸収するショックアブソーバー33,34を備える構成について説明した。しかし、自身の形状が変化することで衝撃を吸収する衝撃吸収部材を備える連結部材については変形可能である。例えば、衝撃吸収部材として、ショックアブソーバー33,34の代わりに、ダンパー、スプリング、又はゴム材が用いられてもよい。これらの衝撃吸収部材は、筐体32に固定されても配置されてもよいし、支柱31に配置されてもよい。例えば、ショックアブソーバー33,34の代わりに、自身の形状が変化しない棒状の剛体が用いられ、支柱31が弾性変形可能なゴム材で形成されてもよい。この場合に、ゴム材で形成された支柱31が、筐体32に固定された棒状の剛体との衝突時に、自身の形状を弾性変形されることにより、衝突時の衝撃を吸収してもよい。また、この場合の支柱31は、金属製の剛体の芯材の周りにゴム材が配置されて形成されてもよい。また、筐体32に固定された棒状の剛体が配置されずに、支柱31は、筐体32に形成された長孔HLとの衝突時の衝撃を吸収してもよい。また、衝撃吸収部材は、支柱31に形成されずに、筐体32の長孔HLを形成する内周面に配置されたゴム材であってもよい。この場合に、長孔HLの内周面に配置されたゴム材は、長孔HL内を揺動する支柱31と、長孔HLが形成された筐体32との衝突時の衝撃を吸収できる。
【0047】
上記第1実施形態の牽引装置10は、自律走行搬送ロボット(AMR:Autonomous Mobile Robot)であったが、連結部材30を取り付け可能、かつ、被牽引物20を牽引可能な範囲で周知の装置を用いることができる。例えば、牽引装置10は、人が運転する搬送車両であってもよいし、無人搬送車(AGV)であってもよい。
【0048】
上記第1実施形態では、連結部材30が、牽引装置10と被牽引物20とのいずれとも異なる構成として説明されたが、他の実施形態では、牽引装置10の一部または被牽引物20の一部であってもよい。この場合に、連結部材30,30aは、牽引装置10の移動により発生する慣性力および遠心力の衝撃を吸収する衝撃吸収部材を備える構成に相当する。
【0049】
上記第1実施形態では、ショックアブソーバー33,34の回転軸である支柱31の中心軸と、牽引装置10との位置関係について特に指定しなかったが、支柱31の中心軸は、牽引装置10の旋回軸の同軸上にあることが好ましい。支柱31の中心軸が旋回軸と同軸上に配置されることで、牽引装置10が旋回により進行方向を変更する場合に、旋回に伴い被牽引物20へと加わる負荷を抑制できる。
【0050】
上記第1実施形態の衝撃吸収装置30Aは、支柱31の中心軸回りにショックアブソーバー33が回転し、牽引装置10に対して向きを変更可能であったが、他の実施形態では牽引装置10に対する向きが固定されていてもよい。この場合に、第2実施形態のように、複数のショックアブソーバー33,34が、衝撃を吸収したい方向に沿って複数配置されてもよい。
【0051】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0052】
1,1x…自動搬送システム
10,10x…搬送装置
20…被牽引物
30,30a…連結部材
30A,30Aa…衝撃吸収装置
30B…接続部材
31…支柱(支柱部材)
31A…柱状部
31B…大径部
32,32a…筐体(長尺部材)
33,34,41~44…ショックアブソーバー(衝撃吸収部材)
33A,34A…ショックアブソーバーの本体部
33B,34B…ショックアブソーバーの先端部
33B1…ショックアブソーバーのロッド
33B2,34B2…ショックアブソーバーの接触部
40…積載テーブル機構
45…テーブル部
45A…平板
45B,45C,45D,45E…接触板
46,47…ガイドレール
CS…直交座標系
HL,HLa…長孔
RG…領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9