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  • 特開-圧力センサ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176885
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】圧力センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 19/14 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
G01L19/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095736
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松山 賢一
(72)【発明者】
【氏名】平井 一徳
(72)【発明者】
【氏名】滝本 和哉
【テーマコード(参考)】
2F055
【Fターム(参考)】
2F055AA40
2F055BB20
2F055CC02
2F055DD01
2F055EE40
2F055FF01
2F055GG25
(57)【要約】
【課題】内装する回路基板に加えられる応力を軽減する構造を実現して、信頼性高く使用することのできる圧力センサを提供すること。
【解決手段】測定対象の圧力を検出するセンサチップ11が回路基板50に接続されてケース20内に設置される圧力センサ100であって、センサチップは測定対象の圧力を受けるように液封室LRに設置されて、回路基板はケース内に封止材26を充填されて液密に形成される設置空間SRに設置されており、設置空間は、筒形状の円筒状部材24内において回路基板を格納可能に形成され、当該筒形状の開口側に円筒状部材キャップ25を被されてケース内に収容される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の圧力を検出するセンサが回路基板に接続され、該回路基板がケース内に設置される圧力センサであって、
前記センサは測定対象の圧力を受けるように圧力室に設置されて、前記回路基板は前記ケース内に封止材を充填されて液密に形成される設置空間に設置されており、
前記設置空間は、前記回路基板を格納可能に形成された筒状部材内に形成されて、当該筒状部材の開口側に蓋部材を被されて前記ケース内に収容されることを特徴とする圧力センサ。
【請求項2】
前記回路基板は、前記センサと外部機器との間に介在するように設置されており、前記センサには前記筒状部材の一方の開口端側を通るピン部材を介して導通接続されているとともに、前記外部機器には前記筒状部材の他方の開口端側から外部に引き出されている外部接続部材を介して導通接続されていることを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項3】
前記回路基板は、前記ピン部材および前記外部接続部材の一方または双方にコンタクト部材を介在させて導通接続されていることを特徴とする請求項2に記載の圧力センサ。
【請求項4】
前記コンタクト部材は、前記ピン部材および前記外部接続部材の一方または双方の接続箇所に対する交差方向に延長されている接続面を有することを特徴とする請求項3に記載の圧力センサ。
【請求項5】
前記コンタクト部材は、前記回路基板の平板形状の延在する方向に形成されている接続箇所と平行方向に延長されている接続面を有することを特徴とする請求項3に記載の圧力センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液密にモールドされている圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
圧力や温度などを検出する各種センサは、測定対象の近傍に固定されて検出信号を測定機器などに送出するように利用されており、その測定機器に内蔵あるいは外付けされる形態で多用されている。
【0003】
この種の各種センサは、測定対象と同等の環境に晒される箇所に設置可能にセンサユニットに組み込まれて利用されるようになっており、例えば、センサチップに入出力する電気特性を変更する必要があるときなどには回路基板を内装する場合もある(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6633597号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の圧力センサにおいては、図4に示すように、ハウジング1124内のセンサチップ1121に接続する回路基板1431がケース1135に収容されて、そのケース1135内に樹脂材料などの封止材1136を充填することで液密に封止するようになっている。
【0006】
このような構造では、回路基板1431やケース1135や封止材1136などの構成材の線膨張係数に差があることから、測定対象を含む内外等に温度差が生じるときには、その温度差に応じた応力が生じる。この応力は、回路基板1431自体やその回路基板1431に実装されている部品に対する負荷になる場合がある。
【0007】
そこで、本発明は、内装する回路基板に加えられる応力を軽減する構造を実現して、信頼性高く使用することのできる圧力センサを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する圧力センサの発明の一態様は、測定対象の圧力を検出するセンサが回路基板に接続され、該回路基板がケース内に設置される圧力センサであって、前記センサは測定対象の圧力を受けるように圧力室に設置されて、前記回路基板は前記ケース内に封止材を充填されて液密に形成される設置空間に設置されており、前記設置空間は、前記回路基板を格納可能に形成された筒状部材内に形成されて、当該筒状部材の開口側に蓋部材を被されて前記ケース内に収容されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
このように本発明の一態様によれば、回路基板自体および回路基板の実装部品は設置空間内に位置して封止材が接触することを回避することができ、回路基板の実装部品に応力負荷が加わることを未然に防止することができる。したがって、信頼性高く使用することのできる圧力センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る圧力センサを示す図であり、その概略全体構成を示す縦断面図である。
図2図2は、本実施形態の第1の他の態様を示す図であり、その概略全体構成を示す縦断面図である。
図3図3は、本実施形態の第2の他の態様を示す図であり、その概略全体構成を示す縦断面図である。
図4図4は、本実施形態の従来技術を示す図であり、その概略全体構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態に係る圧力センサを説明する図である。
【0012】
図1において、圧力センサ100は、構成部品を後述するように積み重ねるようにして組み立て、例えば冷凍サイクルにおいて冷媒の圧力を測定するためにユニット中の冷媒配管に取付け、圧力センサチップ(センサ)11の検出する圧力情報を冷凍サイクルを制御する制御装置である外部機器Aに出力するように作製されている。本実施形態の圧力センサ100は、樹脂製の防水ケース20内に収容されている圧力センサユニット10を、例えば、圧力を検出する気体や液体などの流体が導かれる測定対象の配管に金属製の継手部材30で連結することにより接続可能に構築されている。
【0013】
ここで、防水ケース20は、圧力センサユニット10を収容可能な円筒形状に作製されて一端側の開口部20bに、継手部材30の固定されているキャップ28の周縁部が連結されている。この継手部材30は、圧力測定対象の配管などにねじ止め可能に雌ねじ30sが形成されており、その雌ねじ30sに連通するポート30aを介して、配管から矢印P方向に供給される流体を、キャップ28、ハウジング12及び後述のダイヤフラム32で囲まれた空間である圧力室PRに導入することを実現している。ここでは、円筒形状を筒形状の一例として、防水ケース20や後述の円筒部材24などを含む各種部材を説明するが、これらを円筒に限定する必要はなく、例えば、多角形の筒形状を採用してもよいことは言うまでもない。
【0014】
圧力センサユニット10は、短尺な円筒形状に作製されて軸方向の下端面がキャップ28に接合固定されるハウジング12と、圧力センサチップ11が設置されてハウジング12の内筒内中心に位置するように配置される支柱13と、そのハウジング12の内筒内の支柱13周りに充填されて閉塞させつつその内筒内を貫通する部材を固定するハーメチックガラス14と、を備えている。
【0015】
また、圧力センサユニット10では、ハウジング12の下端面に金属製のダイヤフラム32が接合固定されている。ダイヤフラム32は、キャップ28側に気密な圧力室PRを形成しつつ、ハウジング12内の支柱13側の圧力センサチップ11の設置空間を圧力室PRから隔絶させている。
【0016】
そして、この圧力センサユニット10では、ハウジング12の内筒内におけるハーメチックガラス14とダイヤフラム32とにより形成される圧力センサチップ11の設置空間に、例えば、圧力伝達媒体として所定量のシリコーンオイル(フッ素系不活性液体などでもよい)が充填されて液封室LRとして機能するようになっている。
【0017】
これにより、圧力センサチップ11は、継手部材30を連結された配管から圧力室PR内に導入された検出対象の流体の圧力を、ダイヤフラム32を介して液封室LR内の圧力伝達媒体の圧力変動として検出する圧力センサとして機能する。すなわち、本実施形態の圧力室PRは、液封室LRを備える構造に構築されており、継手部材30から導入される測定対象の流体圧力を圧力センサチップ11で検出可能にする構造に作製されている。なお、圧力室としては、液封室を備えることなく、測定対象の流体圧力を直接センサチップに負荷して測定するようにしてもよく、また、その測定対象は、液体に限らず、各種ガスなどの気体や微細な流体粒の含まれるミスト状の気体であってもよいことは言うまでもない。
【0018】
ここで、圧力センサチップ11は、外部機器Aからの複数のリード線(外部接続部材)38のそれぞれに後述する回路基板50を介して接続されているリードピン(ピン部材)40にボンディングワイヤ11wを介して導通接続されることにより電源供給されるとともに、検出信号を圧力情報として出力するように設置されている。また、ハウジング12の内筒内におけるハーメチックガラス14とダイヤフラム32との間の液封室LRにはオイル充填用パイプ44を介して圧力伝達媒体が充填されるようになっている。これらリードピン40およびオイル充填用パイプ44は、支柱13を中心に同一円状に等間隔で整列し、ハーメチックガラス14などの絶縁物を介して、ハウジング12とは絶縁して支持されている。なお、オイル充填用パイプ44は、一方の端部を圧力伝達媒体の充填後に閉塞される。
【0019】
ここで、ダイヤフラム32は、ハウジング12の下端面に、複数の連通孔34aを有するダイヤフラム保護カバー34が接合固定されることにより、外力や圧力室PR内への急激な圧力によって損傷してしまうことが未然に防止されるようになっている。また、ハーメチックガラス14の一端側に凹形状のフレーム16が固定されて蓋状のシールド板17が取り付けられており、フレーム16はシールド板17に形成されて急激な圧力変動を抑制する連通孔17aを介して圧力センサチップ11側とダイヤフラム32側との間で圧力伝達媒体を流動自在に収容している。
【0020】
リードピン40は、有底の短尺な概略円筒形状に形成された樹脂製の円筒状部材24の底面部24bに、電源用端子2本と、出力信号用端子1本と、組み立て時に使用する調整用端子5本が配列されてボンディングワイヤ11wを介して圧力センサチップ11に電気的に接続されており、これらリードピン40は、円筒状部材24の底面部24bに形成されている挿通孔24h内に挿通されつつハーメチックガラス14に固定支持されている。ここで、円筒状部材24は、概略円筒形状の側壁部24sの一部が円筒中心の対称位置に平面状に形成されて、当該平面状に形成された箇所に後述するそれぞれ3つで1組の中継接続端子(コンタクト部材)36、37を取り付け保持させる端子保持部51、53が配置されている。
【0021】
このリードピン40は、一端部がハウジング12の内筒内におけるハーメチックガラス14の液封室側に貫通して、液封室LR側である一端側にはボンディングワイヤ11wを介して圧力センサチップ11が導通接続される。また、複数のリードピン40の内、電源用端子と出力信号用端子の他端側には、円筒状部材24の側壁部24sに保持されている中継接続端子36の端子片(接続面)36eが交差する方向に延在して、例えば、適宜に弾性変形しつつ高品質にスポット溶接(溶融金属接合でもよい)されて端面に導通接続されている。また、円筒状部材24の側壁部24sの中継接続端子36の反対(対面)側には後述するように外部機器Aからのリード線38が接続される中継接続端子37が保持されている。これら中継接続端子36、37の端子片(接続面)36d、37dには、平行方向に延在する平板形状の回路基板50が載せられるように設置されて溶融はんだ(導通接続材料)Sを塗布されるはんだ付けにより接続されている。なお、導通接続材料としては、はんだSなどの溶融金属だけでなく、例えば、導電性材料を含む接着剤等を塗布するようにしてもよいことは言うまでもない。また、上述のように、はんだ付けや導電性接着剤での導通接続の他に、溶接(例えば、レーザ等でのスポット溶接)などにより導通接続してもよく、溶接の手段としては特に限定する必要もない。
【0022】
ここで、回路基板50は、圧力センサチップ11と外部機器Aとの間に直列に介在して回路構成の一部として機能するようになっており、本実施形態においては、圧力センサチップ11および外部機器Aの異なる入出力電圧を調整するなど、例えば、外部機器Aの入力電圧DC12VやDC3.3Vを圧力センサチップ11の動作電圧DC5Vにするなど入出力電圧の変換調整回路が搭載されている。この種の変換調整回路は本実施形態に限らず、本実施形態とは異なる駆動・出力電圧の電圧出力形式、または2線式/3線式等の電流出力形式、あるいはデジタル出力形式など、様々な駆動電圧や圧力検出信号の信号方式に対応するための任意の変換調整回路である。なお、これらの変換調整回路は、図示されてはいない複数の電子部品が実装されることにより構成されている。
【0023】
ここで、円筒状部材24は、円筒形の側壁部24sの開口側(円筒状部材24の他方の開口端部側)に円筒状部材キャップ(蓋部材)25が取り付けられて、リードピン40、中継接続端子36、37の端子片36d、36e、37dおよび回路基板50の設置空間SRが形成されている。この圧力センサユニット10は、ハウジング12と継手部材30の連結されているキャップ28の外周縁部とがTIG溶接、プラズマ溶接、レーザ溶接等により外側から溶接されて所望の接合強度で一体化されている。この圧力センサユニット10と、設置空間SRを形成する円筒状部材24および円筒状部材キャップ25が防水ケース20内に内装されてウレタン系樹脂などの封止材26が充填されることにより防水処理されつつ固定されている。ここで、円筒状部材24および円筒状部材キャップ25により設けられる設置空間SR内に回路基板50を配置することにより、回路基板50の周囲に熱伝導率の低い空気層を形成することができ、圧力センサ周囲や配管からの温度変化が急激に回路基板50に伝わることを防ぐことができる。また、回路基板50自体や、回路基板50に搭載されている実装部品、または回路基板50と中継接続端子36、37との接続箇所等が封止材26と接触しないように配置することで、周囲温度変化に伴う封止材26の収縮、膨張による機械的応力が、接続部材、実装部品、特にこれらのはんだ付け部分に作用することを防ぐことができる。
【0024】
そして、圧力センサ100は、継手部材30の連結されているキャップ28に固定されているハウジング12から円筒状部材24、回路基板50、および円筒状部材キャップ25までを載せるように積み重ねる(スタッキングする)手順(製造方法)で容易かつ簡易に優れた作業性で組み立てるようになっている。円筒状部材24は、中継接続端子36、37を側壁部24sの端子保持部51、53にセットした後に、円筒状部材24の一方の端部側を圧力センサユニット10を形成するハウジング12上に載せてリードピン40の端部を中継接続端子36の端子片36eにスポット溶接し、この後に、中継接続端子36、37の端子片36d、37d上に回路基板50を載せてはんだ付けすることで導通接続するようになっている。ここで、リードピン40の端面には中継接続端子36の端子片36eをスポット溶接に限らず、はんだ付け、かしめなどで導通接続してもよいことはいうまでもない。なお、円筒状部材24の底面部24bには、組み立て作業可能に適宜に挿通孔などが開口されており、例えば、オイル充填用パイプ44の挿通孔(不図示)も開口されている。円筒状部材24にリードピン40、オイル充填用パイプ44の挿通孔を設けたことにより、端子片36eとリードピン40との接続において、接続すべき電源用端子、出力信号用端子を特定し、誤ったリードピン40との接続を防ぐことができる。また、円筒状部材24には底面部24bを設けなくとも、例えばハウジング12の円筒状部材24を載置する箇所に、係合用の段差、凹凸等を形成し、これら段差、凹凸が係合することにより、円筒状部材24のハウジング12に対する円周方向、すなわちリードピン40の配列方向の位置を特定できる構造としても良い。
【0025】
詳細には、円筒状部材24は、側壁部24sに形成されている端子保持部51、53に中継接続端子36、37を取り付けて保持させるようになっている。
【0026】
中継接続端子36は、長尺の形状に形成されて延在する両端側に位置する一端側および他端側の端片(端子片)が互いに対面する形状、所謂、U字形状の平行方向に延長されている両端側の端子片36d、36eの間の平面部36fを円筒状部材24の端子保持部51の外面に沿わせて、その端子片36d、36eを側壁部24s内に延長させるU字形状に形成されている。中継接続端子37は、同様に端子片37dを円筒状部材24の側壁部24s内に延長させて端子保持部53の外面に平面状の接続面37fを沿わせつつ、その端子片37dの反対側を折り曲げた屈曲片37eを備えるU字形状に形成されている。この中継接続端子37の接続面37fには、外部機器Aからのリード線38の芯線Cがはんだ付けされて接続されることにより、圧力センサチップ11からリードピン40、中継接続端子36、37および回路基板50を介して外部機器Aまで電気的に接続される。
【0027】
端子保持部51、53は、中継接続端子36、37の端子片36d、36e、37dを円筒状部材24の側壁部24sに形成されて貫通するスリットに差し込むことで接続面を大きく確保することができるとともに、中継接続端子37の屈曲片37eをその端子保持部53下の側壁部24sの外面に形成されている窪み部53p内に嵌め込むことで取り付けるようになっている。この円筒状部材24の側壁部24sには、端子保持部51下にも同様に窪み部51pが形成されて中継接続端子36の端子片36eをスリット内に差し込むようになっており、これら窪み部51p、53p内に防水ケース20内に充填される封止材26が進入することにより、円筒状部材24に中継接続端子36、37が固定されるようになっている。または、円筒状部材24に中継接続端子36、37を装着後、窪み部51p、53pに端子固定用接着剤26a(図中には26aを図示)を塗布、充填し、端子を固定しても良い。
【0028】
回路基板50は、中継接続端子36、37の端子片36d、37dに対応する個所の外周端面が、回路基板50の平面に対し平行な方向である内方側にU字形状に窪み、回路基板50の平面と直交する表裏両面側に開口する接続領域の凹壁電極面(凹壁面)50uが形成されている。この凹壁電極面50uは、回路基板50の外周端面から溶融はんだが全体(全面)に浸透し易い半円を内方に進入させて内面にはんだ濡れ性に優れるめっきが施されており、中継接続端子36、37の端子片36d、37dにも同様にめっきが施されて高品質に導通接続するようになっている。すなわち、凹壁電極面50uは、回路基板50外周端面から、基板の内方に向かって小判状の切欠形状として形成されている。この凹壁面の内方に窪む形状を半円状とすることにより、はんだによるフィレット形成における凹壁面50u内部の応力が均等に作用する効果が期待できる。また回路基板50の製作工程においても、実装部品の取付穴の加工や、回路基板50の外形加工と同じ加工工具で製作することができる。矩形形状では円盤状のカッターでの加工等、別行程・別工具が必要であり、半円状とすることで、生産性、品質の面で有利である。ここで、凹壁電極面50uは、回路基板50の反対側の外周端面に限らずに、短絡なくはんだ付け可能に離隔する位置であればよく、形成する回路の都合に応じて複数個所で接続可能に均等あるいは不均等に離隔する位置に形成すればよい。例えば、リードピン40に対応するように支柱13中心の等間隔の放射方向に位置する回路基板50の反対側の外周端面に凹壁電極面50uを形成してもよい。このため、この回路基板50では、図4の如く貫通するスルーホール周りに接続用の円環形状の回路を形成してピン接続するタイプのように、回路の形成面積が小さくされることなく、実装部品の実装面積を大きく確保することができる。すなわち、リードピン挿通用のスルーホールに左右されることなく回路基板への部品配置、配線パターンのレイアウトに自由度を持たせることができる。また、本実施形態では中継接続端子36、37が対向するように配置されているが、このように配置することにより回路基板50への電源供給、信号伝送の配線パターンが略均一の長さになる事、回路基板50の配線パターンを単純化することができる。また、また凹壁電極面50uと端子片36d、37dのはんだ付け作業においても、接続部形状を均一とすることによりはんだ付けの熱容量も略均等となる事から、均一なはんだ付けを行うことが可能であったり、離隔位置とするよりも作業性が良いなどの効果がある。
【0029】
これに対して、中継接続端子36、37の端子片36d、37dは、回路基板50の凹壁電極面50uよりも幅広に形成されているとともに、凹壁電極面50uの外周端面からの深さよりも長めに形成されて、回路基板50を安定姿勢で載せることができるようになっている。さらに円筒状部材24は、その回路基板50の四隅に支柱形状部(不図示)を嵌め込んで位置決めすることができるようになっている。すなわち、中継接続端子36、37の端子片36d、37dが回路基板50の凹壁電極面50u付近を支持する支持領域として機能する。なお、本実施形態では、中継接続端子36、37の端子片36d、37dに接続する双方の回路基板50の接続領域に凹壁電極面50uを形成するが、これに限るものではなく、凹壁電極面50uを形成せず回路基板50の外周端面で接続してもよいし、凹壁電極面50uをいずれか一方のみにしてもよいが、双方に形成するのが接続作業性や信頼性からすると好適である。
【0030】
これにより、回路基板50は、安定姿勢で中継接続端子36、37の端子片36d、37dに載せられて円筒状部材24の位置決め形状(不図示)に位置決めされる安定姿勢で保持されるとともに、その端子片36d、37dに半円の凹壁電極面よりも大容量でフィレット高さも十分な安定形状のはんだSにより半分の小判型の凹壁電極面50uが信頼性高く導通接続されている。はんだ付け箇所である接続領域は回路基板50の裏側となってしまうため、接続領域を直接目視確認することはできない。しかし本実施形態の様に、凹壁部50u内部におけるフィレットの状態を目視若しくは画像認識等により管理することにより、はんだ付けが正常に行われたか否かを判断することができる。
【0031】
このように、本実施形態の圧力センサ100にあっては、センサチップ11と外部機器Aとの間に直列に接続して介在させる回路基板50を、封止材26が充填されて液密に封止されるケース20内の設置空間SR内に収容する。その設置空間SRは、回路基板50の外周端面の凹壁電極面50uと、リードピン40およびリード線38と、に導通接続する中継接続端子36、37の端子片36d、37d、36eを内部に差し込んで位置決め固定する円筒状部材24に円筒状部材キャップ25を被せて形成する。
【0032】
したがって、圧力センサ100では、円筒状部材24および円筒状部材キャップ25の形成する設置空間SR内に位置する回路基板50は、作製時において溶融する高温樹脂の封止材26が直接接触する機械的負荷が、また使用時などにおける温度変化に応じた構成材料の線膨張係数の相違による伸縮度差に起因する熱応力が基板自体や実装部品に応力負荷として加えられてしまうことを未然に防止することができる。また、この圧力センサ100では、設置環境に応じた急激な温度変化が設置空間SR内に小体積で露出するリードピン40などで止めることなく中継接続端子36、37に伝熱して温度変化を緩和することができ、小体積のリードピン40のみと内部空間内との大きな温度差によって結露を誘引してしまうことを回避することができる。すなわち、本実施形態の圧力センサは主に冷凍サイクルでの冷媒配管の圧力を測定する用途で使用されるものであり、冷媒温度の急激な温度低下に伴い低温状態となっている接液部である継手部材30と設置空間SRとの間に温度差が生じるが、小体積のリードピン40により接液部の低温度が設置空間SRに伝わりにくいため、著しい結露の発生を抑えることができる。また本実施形態では、中継接続端子36が設置空間SRを形成する円筒状部材24の外部に引き出されており、中継接続端子37と共に外気に接しているケース20と密着する封止材26に接触しつつ回路基板50と接続している。このような形態により、リードピンを伝わってきた低温度の伝熱が端子、封止材により阻害され、回路基板周辺の結露を抑制することができ、結露に起因する短絡、イオンマイグレーションの発生を抑制することができる。
【0033】
このことから、結露による短絡やマイグレーションなどが発生することを抑制して信頼性高く使用することのできる圧力センサ100を提供することができる。
【0034】
本実施形態の第1の他の態様の圧力センサ100としては、図2に示すように、上述実施形態における円筒状部材24を用いることなく、ハウジング12に蓋部材が一体となった円筒状部材キャップ125を被せて回路基板50を収容する設置空間SRを形成している。
【0035】
この圧力センサ100は、中継接続端子36、37を用いることなくその設置空間SR内の回路基板50にセンサチップ11に接続されているリードピン40に導通接続するとともに、外部機器Aに接続されているリード線38に導通接続するように構成されている。
【0036】
具体的には、リードピン40および回路基板50は、可撓性を有する結線部材(例えば、結線回路が形成されているフレキシブル基板やリード線でもよい)136の両端側がそれぞれ導通接続されて電気的に接続されており、結線部材136の一端側にリードピン40がスポット溶接などにより接続されているとともに、その結線部材136の他端側に回路基板50の両面側に貫通してはんだ付けされて接続されているコンタクト部材138に導通接続されている。
【0037】
リード線38(芯線C)および回路基板50は、円筒状部材キャップ125を貫通するコンタクト部材126の両端側がそれぞれ導通接続されて電気的に接続されており、コンタクト部材126の円筒状部材キャップ125外に位置する一端側にリード線38の芯線Cがはんだ付けされて接続されているとともに、コンタクト部材126の円筒状部材キャップ125内に位置する他端側が回路基板50の両面側に貫通してはんだ付けされて導通接続されている。
【0038】
ここで、この第1の他の態様の圧力センサ100は、円筒状部材キャップ125の開口側を上方に向けて中段の内周面に形成されている段差125aに回路基板50の周縁端部を載置する状態で組み立てた後に天地反転させてケース20内に収納して封止材26を充填することにより液密構造に作製する。また、この圧力センサ100は、コンタクト部材126が貫通する円筒状部材キャップ125の貫通穴125hには接着剤126aを塗布して封止材26の設置空間SR内への侵入を制限する。なお、支柱13やハウジング14の設置空間SR側には、接着剤127が塗布されてリードピン40周りの絶縁を確保している。
【0039】
このように、第1の他の形態の圧力センサ100にあっても、上述実施形態と同様に、センサチップ11と外部機器Aとの間に介在させる回路基板50を液密に封止されるケース20内の設置空間SR内に収容することができ、作製時や使用時などにおける機械的な負荷や温度変化による熱応力の応力負荷が加えられることを未然に回避することができる。
【0040】
本実施形態の第2の他の態様の圧力センサ100としては、図3に示すように、上述実施形態における円筒状部材キャップ25を用いることなく、両端側の開口する筒形状の円筒状部材124をハウジング12に被せて一端側開口を閉止するとともに他端側開口には蓋部材151を被せることにより回路基板50の実装部品を収容する設置空間SRを形成している。
【0041】
この圧力センサ100は、中継接続端子36、37を用いることなくその設置空間SR内の回路基板50(実装部品)にセンサチップ11に接続されているリードピン40および外部機器Aに接続されているリード線38(芯線C)の双方を接続するように構成されている。
【0042】
具体的には、リードピン40は、回路基板50に形成する貫通穴50h1内に貫通させて形成回路に直接はんだ付けなどされて導通接続するように構成されており、リード線38は、蓋部材151に形成する貫通穴151hを貫通させた後に、同様に回路基板50に形成する貫通穴50h2内に貫通させて形成回路に直接はんだ付けなどされて導通接続するように構成されている。
【0043】
ここで、この第2の他の態様の圧力センサ100は、筒形状の円筒状部材124内に有底の筒形状のスペーサ部材126をハウジング12側に固定することでその開口側に回路基板50を載置して固定することができるように構築されており、その回路基板50を設置空間SR内の中段に位置決め固定するようになっている。なお、スペーサ部材126は、リードピン40が回路基板50に到達可能に開口部126aが底部126bに形成されている。
【0044】
このように、この第2の他の形態の圧力センサ100にあっても、上述第1の他の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0045】
なお、これらの形態はいずれも回路基板に加えられる応力を軽減する為に、回路基板全体を設置空間SRに配置する構成であった。しかし、この構造に限らず、回路基板が機械的応力に対して弱い箇所、すなわち回路基板の配線パターンや回路基板への実装部品取付部などの一部分が保護できるよう、基板内の強度を有する他部分は設置空間SR外に引き出してもよい(配線パターンや実装部品などは設置空間SR内に存置する)。具体的には、図示することは省略するが、回路基板の実装部、回路配線パターンなどの一部分から他部分を延長させて円筒状部材または円筒状部材キャップを貫通させ、あるいは、これらの境界にスリットを形成して貫通させることによって設置空間SRの外部に引き出した回路基板にリード線を導通接続するスルーホールなどを形成する構造を採用することもできる。この設置空間SR外の回路基板では、封止材の充填される空間でも十分な強度を有するリード線の接続構造を採用することができる。
【0046】
本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらすすべての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、各請求項により特定される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、すべての開示されたそれぞれの特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画され得る。
【符号の説明】
【0047】
10……圧力センサユニット
11……圧力センサチップ
24……円筒状部材
24s……側壁部
26……封止材
26a……端子固定用接着剤
30……継手部材
32……ダイヤフラム
36、37……中継接続端子
36d、36e、37d……端子片
36f……平面部
37f……接続面
38……リード線
40……リードピン
50……回路基板
50u……凹壁電極面
51、53……端子保持部
51p、53p……窪み部
100……圧力センサ
SR……設置空間
図1
図2
図3
図4