IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社住化分析センターの特許一覧

特開2024-176889情報処理装置、情報処理方法、制御プログラム、記録媒体
<>
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法、制御プログラム、記録媒体 図1
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法、制御プログラム、記録媒体 図2
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法、制御プログラム、記録媒体 図3
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法、制御プログラム、記録媒体 図4
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法、制御プログラム、記録媒体 図5
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法、制御プログラム、記録媒体 図6
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法、制御プログラム、記録媒体 図7
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法、制御プログラム、記録媒体 図8
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法、制御プログラム、記録媒体 図9
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法、制御プログラム、記録媒体 図10
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法、制御プログラム、記録媒体 図11
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法、制御プログラム、記録媒体 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176889
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、制御プログラム、記録媒体
(51)【国際特許分類】
   G01N 13/00 20060101AFI20241212BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20241212BHJP
【FI】
G01N13/00
G06T7/00 350B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095745
(22)【出願日】2023-06-09
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】390000686
【氏名又は名称】株式会社住化分析センター
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】三下 泰子
(72)【発明者】
【氏名】今西 克也
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 花奈子
(72)【発明者】
【氏名】東 遥介
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096AA06
5L096CA02
5L096DA01
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】試料の表面の特性を自動的に評価することができる情報処理装置を提供する。
【解決手段】情報処理装置(1)は、試料を覆う液体に対して気体を噴射したときの、試料および液体を撮像した撮像画像を取得する取得部(11)と、撮像画像を予測モデル(22)に入力して、気体の噴射により試料を覆っている液体の少なくとも一部が移動して形成された形成領域に関する情報を予測する形成領域予測部(12)と、予測結果を出力装置(3)に出力させる出力制御部(13)と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を覆う液体に対して気体を噴射したときの、前記試料および前記液体を撮像した撮像画像を取得する取得部と、
前記撮像画像を予測モデルに入力して、前記気体の噴射により前記試料を覆っている前記液体の少なくとも一部が移動して形成された形成領域に関する情報を予測する形成領域予測部と、
前記形成領域予測部による予測結果を出力装置に出力させる出力制御部と、
を備え、
前記予測モデルは、
標本試料を覆う前記液体に対して気体を噴射したときの前記標本試料および前記液体を撮像した標本画像を含む説明変数と、予め所定の技能を有する者によって前記標本画像に基づいて特定された標本領域であって、前記標本試料を覆っている前記液体の少なくとも一部が移動して形成された標本領域に関する情報を含む目的変数と、を含む教師データを用いた機械学習によって学習されている、
情報処理装置。
【請求項2】
試料を覆う液体に対して気体を噴射したときの、前記試料および前記液体を撮像した撮像画像を取得する取得部と、
前記撮像画像を第1予測モデルに入力して、前記気体の噴射により前記試料を覆っている前記液体の少なくとも一部が移動して形成された形成領域を予測する第1形成領域予測部と、
前記予測された形成領域を示す領域情報を第2予測モデルに入力して、前記形成領域に関する情報を予測する第2形成領域予測部と、
前記第2形成領域予測部による予測結果を出力装置に出力させる出力制御部と、
を備え、
前記第1予測モデルは、
標本試料を覆う前記液体に対して気体を噴射したときの前記標本試料および前記液体を撮像した標本画像を含む説明変数と、予め所定の技能を有する者によって前記標本画像に基づいて特定された標本領域であって、前記標本試料を覆っている前記液体の少なくとも一部が移動して形成された標本領域を示す領域情報を含む目的変数と、を含む教師データを用いた機械学習によって学習されており、
前記第2予測モデルは、
前記領域情報を含む説明変数と、予め所定の技能を有する者によって決定された前記標本領域に関する情報を含む目的変数と、を含む教師データを用いた機械学習によって学習されている、
情報処理装置。
【請求項3】
前記出力した前記予測結果に対する修正を指示する修正指示の入力を受け付ける入力部と、
前記修正指示に応じて、前記予測結果を修正する予測結果修正部をさらに備える、
請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記形成領域に関する情報および前記標本領域に関する情報は、前記形成領域および前記標本領域の寸法、面積、形状、および位置の少なくともいずれかである、請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記試料の形状は、円柱状または円筒状である、
請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記液体は、溶質を含み、
前記形成領域に関する情報は、前記溶質の前記試料の表面に対する吸着挙動を評価するための情報である、
請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項7】
試料を覆う液体に対して気体を噴射したときの、前記試料および前記液体を撮像した撮像画像を取得する取得ステップと、
前記撮像画像を予測モデルに入力して、前記気体の噴射により前記試料を覆っている前記液体の少なくとも一部が移動して形成された形成領域に関する情報を予測する形成領域予測ステップと、
前記形成領域予測部による予測結果を出力装置に出力させる出力制御ステップと、
を含み、
前記予測モデルは、
標本試料を覆う前記液体に対して気体を噴射したときの前記標本試料および前記液体を撮像した標本画像を含む説明変数と、予め所定の技能を有する者によって前記標本画像に基づいて特定された標本領域であって、前記標本試料を覆っている前記液体の少なくとも一部が移動して形成された標本領域に関する情報を含む目的変数と、を含む教師データを用いた機械学習によって学習されている、
情報処理方法。
【請求項8】
試料を覆う液体に対して気体を噴射したときの、前記試料および前記液体を撮像した撮像画像を取得する取得ステップと、
前記撮像画像を第1予測モデルに入力して、前記気体の噴射により前記試料を覆っている前記液体の少なくとも一部が移動して形成された形成領域を予測する第1形成領域予測ステップと、
前記予測された形成領域を示す領域情報を第2予測モデルに入力して、前記形成領域に関する情報を予測する第2形成領域予測ステップと、
前記第2形成領域予測部による予測結果を出力装置に出力させる出力制御ステップと、
を含み、
前記第1予測モデルは、
標本試料を覆う前記液体に対して気体を噴射したときの前記標本試料および前記液体を撮像した標本画像を含む説明変数と、予め所定の技能を有する者によって前記標本画像に基づいて特定された標本領域であって、前記標本試料を覆っている前記液体の少なくとも一部が移動して形成された標本領域を示す領域情報を含む目的変数と、を含む教師データを用いた機械学習によって学習されており、
前記第2予測モデルは、
前記領域情報を含む説明変数と、予め所定の技能を有する者によって決定された前記標本領域に関する情報を含む目的変数と、を含む教師データを用いた機械学習によって学習されている、
情報処理方法。
【請求項9】
請求項1に記載の情報処理装置としてコンピュータを機能させるための制御プログラムであって、前記取得部、前記形成領域予測部、および前記出力制御部としてコンピュータを機能させるための制御プログラム。
【請求項10】
請求項2に記載の情報処理装置としてコンピュータを機能させるための制御プログラムであって、前記取得部、前記第1形成領域予測部、前記第2形成領域予測部、および上記出力制御部としてコンピュータを機能させるための制御プログラム。
【請求項11】
請求項9または10に記載の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は試料表面の特性を解析する情報処理装置および情報処理方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
固体表面の評価方法としては、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)、X線光電子分光法(XPS)、赤外分光法(IR)、ラマン分光法等の表面分析法や接触角法等が一般的に使用される。しかし、医療機器等の表面の評価において、医療機器等が実際に使用される液中環境での表面の評価は困難であり、適正な評価には至りにくい。
【0003】
液中環境での固体表面の評価方法として、液中の物質に気体を噴射することにより、液体を排除して、物質の濡れ性を評価する方法が開示されている(例えば、特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2013/176264号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような従来技術では、細胞シートおよび培養皿等の数cmオーダーサイズの平面固体試料の表面を評価することはできるが、例えばガイドワイヤーおよびカテーテル等の細幅の曲面を備える試料表面の液中環境での特性を適正に評価することはできなかった。
【0006】
また、従来技術では試料表面の解析、および評価を人間が実行する必要があったため、作業コスト、および解析可能な試料表面の種類の観点から改善の余地があった。
【0007】
本発明の一態様によれば、試料表面の特性を自動的に評価することができる情報処理装置および情報処理方法等が提供され得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る情報処理装置は、試料を覆う液体に対して気体を噴射したときの、前記試料および前記液体を撮像した撮像画像を取得する取得部と、前記撮像画像を予測モデルに入力して、前記気体の噴射により前記試料を覆っている前記液体の少なくとも一部が移動して形成された形成領域に関する情報を予測する形成領域予測部と、前記形成領域予測部による予測結果を出力装置に出力させる出力制御部と、を備え、前記予測モデルは、標本試料を覆う前記液体に対して気体を噴射したときの前記標本試料および前記液体を撮像した標本画像を含む説明変数と、予め所定の技能を有する者によって前記標本画像に基づいて特定された標本領域であって、前記標本試料を覆っている前記液体の少なくとも一部が移動して形成された標本領域に関する情報を含む目的変数と、を含む教師データを用いた機械学習によって学習されている。
【0009】
また、本発明の一態様に係る情報処理装置は、試料を覆う液体に対して気体を噴射したときの、前記試料および前記液体を撮像した撮像画像を取得する取得部と、前記撮像画像を第1予測モデルに入力して、前記気体の噴射により前記試料を覆っている前記液体の少なくとも一部が移動して形成された形成領域を予測する第1形成領域予測部と、前記予測された形成領域を示す領域情報を第2予測モデルに入力して、前記形成領域に関する情報を予測する第2形成領域予測部と、前記第2形成領域予測部による予測結果を出力装置に出力させる出力制御部と、を備え、前記第1予測モデルは、標本試料を覆う前記液体に対して気体を噴射したときの前記標本試料および前記液体を撮像した標本画像を含む説明変数と、予め所定の技能を有する者によって前記標本画像に基づいて特定された標本領域であって、前記標本試料を覆っている前記液体の少なくとも一部が移動して形成された標本領域を示す領域情報を含む説明変数と、を含む教師データを用いた機械学習によって学習されており、前記第2予測モデルは、前記領域情報を含む目的変数と、予め所定の技能を有する者によって決定された前記標本領域に関する情報を含む目的変数と、を含む教師データを用いた機械学習によって学習されている。
【0010】
本発明の一態様に係る情報処理方法は、試料を覆う液体に対して気体を噴射したときの、前記試料および前記液体を撮像した撮像画像を取得する取得ステップと、前記撮像画像を予測モデルに入力して、前記気体の噴射により前記試料を覆っている前記液体の少なくとも一部が移動して形成された形成領域に関する情報を予測する形成領域予測ステップと、前記形成領域予測部による予測結果を出力装置に出力させる出力制御ステップと、を含み、前記予測モデルは、標本試料を覆う前記液体に対して気体を噴射したときの前記標本試料および前記液体を撮像した標本画像を含む説明変数と、予め所定の技能を有する者によって前記標本画像に基づいて特定された標本領域であって、前記標本試料を覆っている前記液体の少なくとも一部が移動して形成された標本領域に関する情報を含む目的変数と、を含む教師データを用いた機械学習によって学習されている。
【0011】
また、本発明の一態様に係る情報処理方法は、試料を覆う液体に対して気体を噴射したときの、前記試料および前記液体を撮像した撮像画像を取得する取得ステップと、前記撮像画像を第1予測モデルに入力して、前記気体の噴射により前記試料を覆っている前記液体の少なくとも一部が移動して形成された形成領域を予測する第1形成領域予測ステップと、前記予測された形成領域を示す領域情報を第2予測モデルに入力して、前記形成領域に関する情報を予測する第2形成領域予測ステップと、前記第2形成領域予測部による予測結果を出力装置に出力させる出力制御ステップと、を含み、前記第1予測モデルは、標本試料を覆う前記液体に対して気体を噴射したときの前記標本試料および前記液体を撮像した標本画像を含む説明変数と、予め所定の技能を有する者によって前記標本画像に基づいて特定された標本領域であって、前記標本試料を覆っている前記液体の少なくとも一部が移動して形成された標本領域を示す領域情報を含む目的変数と、を含む教師データを用いた機械学習によって学習されており、前記第2予測モデルは、前記領域情報を含む説明変数と、予め所定の技能を有する者によって決定された前記標本領域に関する情報を含む目的変数と、を含む教師データを用いた機械学習によって学習されている。
【0012】
また、本開示の各態様に係る情報処理装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記情報処理システムが備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記情報処理システムをコンピュータにて実現させる情報処理システムの制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本開示の範疇に入る。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、試料の表面の特性を自動的に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る情報処理装置の構成の一例を示す機能ブロック図である。
図2】液体に覆われた試料の表面に気体を噴射する様子を模式的に示す図である。
図3】形成領域を撮影した撮像画像の一例を示す図である。
図4】形成領域を模式的に示した断面図である。
図5】形成領域の長さを説明するための模式図である。
図6】情報処理装置が実行する処理の流れの一例を示したフローチャートである。
図7】本発明の別の実施形態に係る情報処理装置の構成の一例を示す機能ブロック図である。
図8】情報処理装置が実行する処理の流れの一例を示したフローチャートである。
図9】本発明の他の実施形態に係る情報処理装置の構成の一例を示す機能ブロック図である。
図10】情報処理装置が実行する処理の流れの一例を示したフローチャートである。
図11】本発明の実施例における、測定結果を示したグラフである。
図12】本発明の実施例における、測定結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。但し、本発明はこれに限定されるものではなく、記述した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。
【0016】
〔実施形態1〕
本発明の一実施形態に係る情報処理装置は、試料の表面特性を評価するための装置である。以下では、1つの撮像装置および1つの出力装置と通信可能に接続された情報処理装置を例に挙げて説明する。しかし、情報処理装置は、この構成に限定されない。例えば、情報処理装置と接続されている撮像装置および出力装置の数は、複数であってもよい。また、情報処理装置は、撮像装置および出力装置の少なくともいずれかと接続されていなくてもよい。
【0017】
(情報処理装置1の構成)
以下、本発明の一実施形態に係る情報処理装置1の構成について、図1に基づいて説明する。図1は、情報処理装置1の構成の一例を示す機能ブロック図である。
【0018】
図1に示す情報処理装置1は、情報処理装置が使用する各種データを記憶する記憶部20、および情報処理装置の各部を統括して制御する制御部10を備えているがこの構成に限定されない。例えば、記憶部20は、情報処理装置1に外付けされた装置であってもよい。
【0019】
<記憶部20>
まず記憶部20について説明する。記憶部20には、画像データ21および予測モデル22が記憶されていてもよい。
【0020】
画像データ21は、試料を覆う液体に対して気体を噴射したときの、試料および液体を撮像した撮像画像である。撮像画像は、撮像装置2により撮像された画像であってもよい。
【0021】
予測モデル22は、教師データを用いた機械学習によって学習されている。教師データは、下記の説明変数および目的変数を含んでいる。
・説明変数は、標本試料を覆う液体に対して気体を噴射したときの標本試料および液体を撮像した標本画像を含む。
・目的変数は、予め所定の技能を有する者によって標本画像に基づいて特定された標本領域であって、標本試料を覆っている液体の少なくとも一部が移動して形成された標本領域に関する情報を含む。なお、標本領域に関する情報の種類は、上述した形成領域に関する情報と同様の情報であってもよい。
【0022】
このような説明変数と目的変数との関係をモデル化する方法としては、例えば統計モデルを用いる方法が挙げられる。また、予測モデル22は、線形モデルであってもよいし、非線形モデルであってもよい。具体例を挙げれば、最小二乗法、主成分回帰、ニューラルネットワーク、k-NN法(k-nearest neighbor algorithm)、あるいはSVR(Support Vector Regression)等によって予測モデル22を構築することができる。
【0023】
<制御部10>
続いて、制御部10について説明する。制御部10は、取得部11、形成領域予測部12、および出力制御部13を備えている。また、制御部10に含まれるブロックの一部について、その機能を情報処理装置1と通信可能な他の装置に持たせて、制御部10から当該ブロックを省略してもよい。例えば、出力制御部13の機能を他の装置に持たせてもよい。この場合、情報処理装置1は、形成領域予測部12により予測された結果を、当該他の装置により出力してもよい。
【0024】
取得部11は、試料を覆う液体に対して気体を噴射したときの、試料および液体を撮像した撮像画像を取得する。取得部11は、撮像装置2により取得された画像をリアルタイムに取得する構成であってもよいし、記憶部10に記憶されている画像データ21から撮像画像を読み出す構成であってもよい。
【0025】
ここで、撮像装置2は、試料を覆う液体に対して気体を噴射したときの、試料および液体を撮像可能な装置である。撮像装置2は、例えば、デジタルカメラ、デジタルビデオ、撮像機能を備える携帯端末(例えば、スマートフォン、タブレット、ノード型パソコン、および携帯電話等)等であってもよいし、試料を覆う液体に対して気体を噴射する装置であってもよいし、前記気体を噴射する装置が付加的に備えている撮像装置であってもよい。気体の噴射と撮像が同時に実施できる観点から、撮像装置2は試料を覆う液体に対して気体を噴射する装置であることが好ましい。
【0026】
形成領域予測部12は、取得部11により取得された画像を予測モデル22に入力して、形成領域に関する情報を予測する。形成領域予測部12は、形成領域の寸法、面積、形状、および位置の少なくともいずれかを該形成領域に関する情報として予測する構成であってもよい。形成領域に関する情報は、より具体的には、形成領域のx座標およびy座標のような数値情報であってもよいし、撮像画像における形成領域に対応する領域を該撮像画像上に示した視覚的な情報であってもよい。形成領域に関する情報において図示される形成領域の形状は特に限定されない。このような形成領域の形状としては、線分、円形、楕円形、四角形等の任意の形状が挙げられる。
【0027】
出力制御部13は、形成領域予測部12によって予測された予測結果を、出力装置3に出力させる。出力装置3の出力態様は特に限定されず、例えば、表示出力であってもよいし、印字出力であってもよいし、音声出力であってもよい。
【0028】
本発明の一実施形態に係る情報処理装置が、取得部11により取得する撮像画像は、試料を覆う液体に対して気体を噴射したときの、試料および液体を撮像した画像である。ここで、試料を覆う液体に対して気体が噴射されるとは、試料の表面が液体に覆われた状態で、当該表面に液体の外部から気体が噴射されるとも換言できる。ここで、試料の表面が液体に覆われた状態であるとは、試料の表面の撮像される部分が液体に覆われていればよく、撮像されない部分は液体に覆われていても覆われていなくてもよい。例えば、前記試料を液体に浸漬した状態で、試料を覆う液体に気体を噴射してもよい。
【0029】
試料の表面は液体に覆われていればよく、当該表面を覆う液量も特に限定されるものではないが、前記試料を覆う液層の厚さは、例えば1μm~10.0mmであり、より好ましくは0.1mm~5.0mm、さらに好ましくは1.0mm~3.0mmである。前記液層の厚さが1μm以上であれば、液体に覆われた試料の特性を評価するために十分な厚さである。また、前記液層の厚さが10.0mm以下であれば、気体の噴射により、好適に試料の表面に存在する液体の少なくとも一部を移動させることができるため好ましい。
【0030】
前記液体としては、特に限定されるものではなく、例えば濡れ性を評価する場合は、濡れ性を評価する液体を使用すればよい。また、例えば溶質の吸着挙動を評価する場合は、吸着挙動を評価する溶質を含む液体を使用すればよい。
【0031】
前記液体としては、水、水溶液、水性分散液等の水性液を挙げることができる。前記水としては、水道水;脱塩水、RO水、蒸留水等の純水;超純水等が挙げられる。前記水溶液および前記水性分散液は、それぞれ、水以外の溶媒および水以外の分散媒を含み得る。前記水以外の溶媒および水以外の分散媒としては、ヒドロキシル基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基、エーテル基、エステル基、ハロゲン等の官能基を含む有機溶媒または炭化水素を挙げることができる。前記水以外の溶媒および水以外の分散媒のより具体的な一例としては、エタノール等のアルコール、アセトン、酢酸エチル、エチレングリコール、テトラヒドロフラン(THF)、ジブチルエーテル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル、アニリン、ニトロベンゼン、シクロヘキサン、イソオクタン、1,4‐ジオキサン、N‐メチルホルムアミド、N‐メチルピロリドン(NMP)、ジクロロメタン等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。これらの水以外の溶媒は、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。また、前記水溶液および前記水性分散液は、界面活性剤、塩、粒子、タンパク、アミノ酸、ペプチド、ミセル、エマルジョン、細胞、ウィルス、細菌、DNA、mRNA、微生物、低分子有機物、ポリマー、無機酸、無機塩基等の溶質を含んでいてもよい。前記界面活性剤としては、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を挙げることができる。前記塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム等を挙げることができる。前記粒子としては、例えば、カーボン、ポリマー、シリカ、アルミナ、酸化チタン等を挙げることができる。前記界面活性剤、塩および粒子は、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。或いは、前記液体は有機溶媒であってもよい。かかる場合前記有機溶媒としては、これに限定されるものではないが、例えば、ヒドロキシル基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基、エーテル基、エステル基、ハロゲン等の官能基を含む有機溶媒または炭化水素を挙げることができる。前記有機溶媒のより具体的な一例としては、エタノール等のアルコール、アセトン、酢酸エチル、エチレングリコール、テトラヒドロフラン(THF)、ジブチルエーテル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル、アニリン、ニトロベンゼン、シクロヘキサン、イソオクタン、1,4‐ジオキサン、N‐メチルホルムアミド、N‐メチルピロリドン(NMP)、ジクロロメタン等を挙げることができる。これらの有機溶媒は、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0032】
前記液体は、例えば、血液、血しょう、リンパ液、組織液等の、人または動物の体内に存在する液体、あるいは生理食塩水、点滴液、輸液、人工血液、液体培地等の模擬液(または代替液)であり得る。例えば、医療機器は、人または動物の体内で使用されることから、その表面がこれらの液体で覆われた状態での表面の特性を評価することができる。
【0033】
前記液体の他の一例としては、溶質を含む液体を挙げることができる。かかる液体を使用することにより、当該溶質の前記試料表面への吸着挙動を評価することができる。前記溶質としても、特に限定されるものではなく、表面への吸着挙動を評価したい物質を使用すればよい。前記溶質としては、例えば、アミノ酸;ダプトマイシン、リゾチーム等のペプチド;ウシ血清アルブミン(BSA)、コラーゲン等のタンパク質;アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、Tween等のノニオン界面活性剤等の界面活性剤;ホスファジルコリン等のリン脂質等を挙げることができる。前記溶質は、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、前記溶質を溶解させる溶媒としても特に限定されるものではなく、水、水と前述の水以外の溶媒との併用、前述の有機溶媒を使用することができる。
【0034】
試料を覆う液体に気体を噴射することにより、試料を覆っていた液体の少なくとも一部を移動させる。すなわち、噴射された気体により、試料の表面に存在する液体の少なくとも一部が押しのけられて移動する。前記液体の少なくとも一部が移動する結果、試料の表面に存在する液体の層の厚さが薄くなるか、または、試料の表面に存在する液体が排除されて試料表面が露出する。
【0035】
前記試料は、稜線部を含む固体であり得る。ここで、稜線部とは、稜線状に突起する線状部であればよく、稜線状の突起は、尖っていてもよいし、丸みを有していてもよい。前記試料が稜線部を有する場合、本工程において、気体は当該稜線部に沿って噴射される。これにより、試料の表面に存在する液体、すなわち、試料の評価される表面である稜線部を覆う液体の少なくとも一部が、当該稜線部に沿って線状に移動する。前記液体の少なくとも一部が、当該稜線部に沿って線状に移動する結果、試料の表面に存在する液体の層が当該稜線部に沿って線状に薄くなるか、または、試料の表面に存在する液体が当該稜線部に沿って線状に排除されて試料表面が露出する。なお、固体の硬さ、粘弾性等の機械物性に制限はなく、ゲルやスポンジ等も含まれる。
【0036】
前記稜線部を含む固体の形状は、稜線部を含んでいれば特に限定されるものではないが、例えば、稜線部を含む柱状体を挙げることができる。かかる柱状体としては、例えば円柱;楕円柱;六角柱、五角柱、四角柱、三角柱等の多角柱;底面の形状が突起部を有する形状である柱状体等を挙げることができる。円柱または楕円柱では、側面上の底面に垂直な任意の線が前述の稜線部である。また、多角柱では、側面において角度をなす2面の境界を形成する線のうちの任意の線が前述の稜線部である。前記柱状体は、中空の管状体であってもよい。すなわち、前記稜線部を含む固体の形状は、円筒;楕円筒;または、六角柱、五角柱、四角柱、三角柱等の多角柱の筒状体等であってもよい。しかし、前記稜線部を含む固体の形状は、前述の形状に限定されるものではなく、三つ編み、ロープ編み等の編み込み構造;鎖状等であってもよい。また、稜線部に不織布や濾紙のような線維がランダムに絡み合っている構造が含まれていてもよい。さらには、前記試料は、稜線部を含む固体であれば、多孔質の固体であってもよい。前記多孔質の固体は、内部に閉じた空孔を有していてもよいし、貫通孔を有していてもよい。あるいは、前記稜線部を含む固体の形状は、ドーム状の形状を有する試料を変形して稜線部を生じさせた形状であってもよい。ここでドーム状とは、完全な半円に限定されるものではなく、断面円弧状の形状であればよい。例えば、カテーテル、ガイドワイヤー、ステント、注射針、中空糸等の医療機器は、円筒状または円柱状の形状を有し、本発明の一実施形態に係る方法により、好適に評価することができる。また、例えば、コンタクトレンズ、より好適にはソフトコンタクトレンズは、ドーム状の形状を有し、例えば、試料を固定するときに一部の方向に力を加えることにより稜線部を生じさせた形状とすることができ、それゆえ、本発明の一実施形態に係る方法により評価することができる。
【0037】
前記試料の寸法は特に限定されるものではない。例えば、前記試料が円柱状または円筒状である場合、その外径は、例えば、0.01mm~10.0mmであり、0.1mm~2.0mmであってよい。前記外径が0.01mm以上であれば、表面の特性を評価するために十分なサイズである。また、前記外径が10.0mm以下であれば、気体の噴射により、好適に試料の表面に存在する液体の少なくとも一部を移動させることができるため好ましい。
【0038】
また、前記試料の材質も、有機物、無機物、およびその混合物含めて特に限定されるものではなく、例えば、プラスチック、ガラス、金属、ゴム、木材、紙、陶器、皮革、およびコンクリートを挙げることができる。また、前記試料は表面がコーティングされているものであり得る。ここで、コーティングの種類についても特に限定されるものではなく、親水コーティング、はっ水コーティング等を挙げることができる。或いは、前記試料は表面が、めっき、化学処理、プラズマ処理等の溶射、表面硬化等により表面処理されているものでありうる。コーティング等の表面処理された試料表面の特性を評価することにより、本発明の一実施形態に係る情報処理装置は、コーティング膜等の開発に利用することができる。
【0039】
前記試料としては、例えばカテーテル、ガイドワイヤー、ステント、内視鏡、注射容器、注射針、点滴管、中空糸、コンタクトレンズ等の、医療機器・医療材料;ガラス棒、ストロー、銅線、金属管、ビニールタイ、配線コード、シリンジ等を挙げることができる。
【0040】
前記試料は、液体に覆われているとともに、噴射される気体により動かないように設置されていればよく、設置の方法は特に限定されるものではない。設置の方法としては、例えば、前記試料を液体中に浸漬する方法を挙げることができる。かかる場合、前記試料を、液体を入れた容器の底に置くことによって設置してもよいし、前記試料を液中で保持部材により保持してもよい。前記試料を、液体を入れた容器の底に置くことによって設置する場合、前記試料は、噴射される気体により動かないならば固定されていなくてもよい。しかし、液体を入れた容器の底に置くことによって設置する場合、前記試料は、噴射される気体により動くか動かないかに関わらず、固定されていることがより好ましい。前記試料を固定する方法も特に限定されるものではないが、例えばテープ等の固定部材により、試料の特性を評価する表面以外の箇所を固定する方法を挙げることができる。
【0041】
前記試料としては1つの試料を設置して測定してもよいし、複数の試料を設置して測定してもよい。複数の試料を設置して測定し、各試料の平均値を測定することにより、試料の平均的なデータを得ることができる。
【0042】
前記気体としては、特に限定されるものではないが、例えば、空気、窒素、ヘリウムおよびアルゴン等の不活性ガス、二酸化炭素、酸素等を挙げることができる。前記気体は、水蒸気を含んでいてもよい。また、前記気体は、2種類以上を混合して用いてもよい。前記気体は気体状態を保つ範囲で、噴射前に冷却してもよいし、加温してもよい。
【0043】
前記気体の噴射量は、噴射された気体により、試料を覆う液体の少なくとも一部が押しのけられて移動するような量であればよく、試料の材質、試料の形状、試料の表面を覆う液層の厚さ、液体の種類、試料表面および液層表面と気体の噴射口との距離、噴射口の形状およびサイズ、気体の種類、温度等に応じて適宜選択すればよい。前記気体の噴射量は、例えば、試料の表面に加えられる圧力が0.1kPa~20.0kPaであることが好ましく、2.0kPa~10.0kPaであることがより好ましく、3.0kPa~7.0kPaであることがさらに好ましい。気体の噴射量を前記範囲とすることにより、試料を覆う液体の少なくとも一部が押しのけられて移動するとともに、試料を覆う液体の少なくとも一部が移動して形成された領域を識別し、そのサイズを測定することができるため好ましい。また、噴射中に圧力を段階的に変化させて評価してもよい。
【0044】
前記気体は、噴射された気体により、試料を覆う液体の少なくとも一部を押しのけて移動させることができれば、液体に覆われた試料の表面の鉛直上方から噴射してもよいし、斜め上方から噴射してもよい。
【0045】
前記気体の噴射の形状も、噴射された気体により、試料を覆う液体の少なくとも一部を押しのけて移動可能であれば、特に限定されるものではなく、噴射方向と垂直な面での断面形状が、円形、楕円形、線状、星形等であり得る。
【0046】
また、気体を噴射する時間についても特に限定されるものではなく、評価する特性に応じて適宜設定すればよい。気体を噴射する時間は、例えば0.5秒~60秒であり、1秒~10秒であってもよく、2秒~4秒であってもよい。
【0047】
前記気体を噴射する方法も特に限定されるものではない。例えば、気体の噴射は、ノズルを用いて行うことができる。かかる場合ノズルの内径は、特に限定されるものではなく評価する特性に応じて適宜設定すればよい。ノズルの内径は、例えば0.01mm~10.0mmであり、0.01mm~0.5mmであってもよい。また、前記液層表面と前記気体の噴射口との距離は、例えば1.0mm~20.0mmである。
【0048】
図2~4は、本工程における気体の噴射、および、気体の噴射による液体の移動の一例を示す図である。図2の例では、試料Rは、液体Lを入れたシャーレの底に固定部材により固定された状態で、液体Lに浸漬されている。そして、気体GはノズルNを用いて、液体Lに覆われた試料1の表面に噴射される。図3は、気体の噴射により試料を覆う液体の少なくとも一部が線状に移動したことにより形成された形成領域Pを撮影した図である。また、図4は、移動した液体の断面を示す図である。移動した液体の断面を示す図は、試料Rが固定されたシャーレを、試料Rの断面が正面となるように、シャーレの側面から見た図である。図に示すように、試料Rは円柱形であり、気体Gが噴射される側の円柱形の側面が前述の稜線部である。気体Gを噴射することにより、試料1の表面に存在する液体、すなわち、試料Rの評価される表面である稜線部を覆う液体の少なくとも一部が、当該稜線部に沿って線状に移動する。図4の例では、液体Lの少なくとも一部が、当該稜線部に沿って線状に移動した結果、試料Rの表面に存在する液体の液面Qから分かるように、試料Rの表面に存在する液体Lが当該稜線部に沿って排除されて試料表面が露出する。液体Lが当該稜線部に沿って排除されていることは、気体の噴射により試料を覆う液体の少なくとも一部が移動したことにより形成された形成領域Pを撮影した図により示されている。
【0049】
また、図5は、本発明の一実施形態に係る方法において、気体の噴射により試料を覆う液体の少なくとも一部が線状に移動して形成された線状領域の様子を模式的に示す図である。図5に示す例では、円筒形または円柱形の試料に気体を噴射したときに、円筒形または円柱形の試料を覆う液体、すなわち、試料の測定される表面である稜線部を覆う液体の少なくとも一部が、当該稜線部に沿って線状に移動して線状領域が形成される。線状領域は、時間が経過するにつれて、線状領域は長手方向に長く伸びている。
【0050】
(情報処理装置1が行う処理)
本発明の一実施形態に係る情報処理方法の概要を、図6に基づいて説明する。図6は、情報処理装置1による情報処理方法の概要を示したフローチャートである。
【0051】
取得ステップS1では、取得部11が試料を覆う液体に対して気体を噴射したときの、試料および液体を撮像した撮像画像を取得する。この時、取得する画像は、撮像装置30により取得された画像であってもよいし、記憶部10に記憶されている画像データ21であってもよい。
【0052】
続いて、形成領域予測ステップS2では、形成領域予測部12が撮像画像を予測モデル22に入力して、気体の噴射により試料を覆っていた液体の少なくとも一部が移動して形成された形成領域に関する情報を予測する。この時、予測モデル22は、教師データを用いた機械学習によって学習されている。教師データは、を含んでいる。なお、説明変数および目的変数の詳細については、上述した通りである。
【0053】
出力制御ステップS3では、出力制御部13が形成領域予測部12により予測された結果を、出力装置3に出力させる。
【0054】
従来、撮像画像における形成領域に関する情報の取得は、手間のかかる煩わしい処理であったが、情報処理装置1を用いれば、撮像画像に基づいて、形成領域の情報を自動的に予測することができる。
【0055】
〔実施形態2〕
以下、本発明の別の実施形態に係る情報処理装置1aの構成について、図7に基づいて説明する。図7は、実施形態1とは別の情報処理装置1aの要部構成の一例を示すブロック図である。情報処理装置1aは、情報処理装置の各部を統括して制御する制御部10a、および情報処理装置が使用する各種データを記憶する記憶部20aを備えている。制御部10には、取得部11、第1形成領域予測部12a、第2形成領域予測部12b、出力制御部13が含まれている。記憶部20には、画像データ21、第1予測モデル22a、第2予測モデル22bが記憶されている。なお、実施形態1において既に説明した事項については説明を省略する。
【0056】
<記憶部20a>
まず記憶部20aについて説明する。記憶部20aには、画像データ21、第1予測モデル22a、および第2予測モデル22bが記憶されていてもよい。
【0057】
第1予測モデル22aは、教師データを用いた機械学習によって学習されている。教師データは、下記の説明変数および目的変数を含んでいる。
・説明変数は、標本試料を覆う液体に対して気体を噴射したときの標本試料および液体を撮像した標本画像を含む。
・目的変数は、予め所定の技能を有する者によって標本画像に基づいて特定された標本領域であって、標本試料を覆っている液体の少なくとも一部が移動して形成された標本領域を示す領域情報を含む。
【0058】
第1予測モデル22aが予測する領域情報は、必要に応じて二値化されていてもよい。第1予測モデル22aは、画像のセグメンテーションを予測するモデルであってもよく、具体的には例えばUnetモデル等であってよい。
【0059】
第2予測モデル22bは、教師データを用いた機械学習によって学習されている。教師データは、下記の説明変数および目的変数を含んでいる。教師データは、下記の説明変数および目的変数を含んでいる。
・説明変数は、標本試料を覆っている液体の少なくとも一部が移動して形成された標本領域を示す領域情報。
・目的変数は、予め所定の技能を有する者によって決定された前記標本領域に関する情報を含む。
【0060】
第2予測モデル22bは、画像の分類、または回帰等を行うモデルであってもよく、具体的には例えばResnetであってよい。
【0061】
第1予測モデル22a、第2予測モデル22bは、上述した予測モデル22と同様の方法によりモデル化されていてもよい。
【0062】
<制御部10a>
続いて、制御部10aについて説明する。制御部10aは、取得部11、第1形成領域予測部12a、第2形成領域予測部12bおよび出力制御部13を備えている。
【0063】
第1形成領域予測部12aは、取得部11により取得された画像を第1予測モデル22aに入力して、気体の噴射により試料を覆っていた液体の少なくとも一部が移動して形成された形成領域を予測する。換言すれば、第1形成領域予測部12aは、形成領域に関する情報は予測する必要はなく、前記画像における、形成領域に相当する範囲を予測するのみであってよい。
【0064】
第2形成領域予測部12bは、第1形成領域12aにより予測された形成領域を示す領域情報を第2予測モデル22bに入力して、前記形成領域に関する情報を予測する。第2形成領域予測部が予測する形成領域に関する情報は、上述した通りである。
【0065】
第1形成領域予測部12aおよび第2形成領域予測部12bにより予測された結果は、それぞれ出力制御部13によって出力装置に出力されてもよい。
【0066】
(情報処理装置1aが行う処理)
本発明の一実施形態に係る情報処理方法の概要を、図8に基づいて説明する。図8は、情報処理装置1aによる情報処理方法の概要を示したフローチャートである。
【0067】
ステップS1については、上述した通りである。
【0068】
第1形成領域予測ステップS2aでは、第1形成領域予測部12aが撮像画像を第1予測モデル22aに入力して、気体の噴射により試料を覆っていた液体の少なくとも一部が移動して形成された形成領域を予測する。この時、予測モデル22aは、教師データを用いた機械学習によって学習されている。教師データは、説明変数および目的変数を含んでいる。なお、説明変数および目的変数の詳細については、上述した通りである。
【0069】
第2形成領域予測ステップS2bでは、第2形成領域予測部12bが、ステップS2aにおいて予測された形成領域を示す領域情報を、第2予測モデル22bに入力して、形成領域に関する情報を予測する。この時、予測モデル22bは、教師データを用いた機械学習によって学習されている。教師データは、説明変数および目的変数を含んでいる。なお、説明変数および目的変数の詳細については、上述した通りである。
【0070】
出力制御ステップS3では、出力制御部13が、第2形成領域予測部12bにより予測された結果を出力装置3に出力させる。なお、出力制御ステップS3において、出力制御部13が、第1形成領域予測部12aにより予測された結果も出力装置3に出力させてもよい。
【0071】
情報処理装置1aを用いれば、撮像画像に基づいて、形成領域の情報を自動的に予測することができる。また、情報処理装置1aを用いれば、第1形成領域予測部12aにより予測された結果を確認することも可能である。
【0072】
〔実施形態3〕
(情報処理装置1bの構成)
以下、本発明の別の実施形態に係る情報処理装置1bの構成について、図9に基づいて説明する。図9は、実施形態1、2とは別の情報処理装置1bの要部構成の一例を示すブロック図である。情報処理装置1bは、情報処理装置の各部を統括して制御する制御部10b、および情報処理装置が使用する各種データを記憶する記憶部20bを備えている。制御部10aには、取得部11、形成領域予測部12c、出力制御部13b、予測結果修正部14が含まれている。記憶部20には、画像データ21、予測モデル22、予測/修正結果23が記憶されている。なお、実施形態1または2において既に説明した事項については説明を省略する。
【0073】
<制御部10b>
制御部10bは、取得部11、形成領域予測部12c、および出力制御部13b、予測結果修正部14を備えている。
【0074】
形成領域予測部12cは、取得部11により取得された画像を予測モデル22に入力して、形成領域に関する情報を予測する。形成領域予測部12cは、予測された形成領域に関する情報を、出力制御部13bだけでなく、予測結果修正部14にも送信する。形成領域予測部12cは、第1形成領域予測部12a、および第2形成領域予測部12bに置き換えられてもよい。その場合、第1形成領域予測部12a、および第2形成領域予測部12bにより予測された結果はそれぞれ、出力制御部13bおよび、予測結果修正部14に送信される。
【0075】
予測結果修正部14は、出力装置3に出力された形成領域予測部12cによる予測結果に対する修正指示の入力を受け付ける。予測結果修正部14は、出力された予測結果を、入力部30からの入力に応じて修正する。
【0076】
ここで、入力部30は、形成領域予測部12cによって予測された予測結果における誤りを修正する指示の入力を受け付け可能な装置である。入力部3は、例えば、入力キー、キーボード、およびタッチパネル等であってもよい。
【0077】
出力制御部13bは、形成領域予測部12cにより予測された形成領域に関する情報、および予測結果修正部14により修正された予測結果を出力装置3に出力させる。出力制御部は、予測結果修正部14において予測結果が修正される度に、修正された予測結果を出力してもよい。
【0078】
<記憶部20b>
記憶部20bについて説明する。記憶部20bには、画像データ21、予測モデル22、予測/修正結果23が記憶されていてもよい。
【0079】
予測モデル22は、形成領域予測部12cが第1形成領域予測部12a、および第2形成領域予測部12bに置き換えられている場合、第1予測モデル22aおよび第2予測モデル22bに置き換えられていてもよい。
【0080】
予測/修正結果23は、形成領域予測部12cにおいて予測された領域に関する情報、および予測修正結果部14において修正された形成領域に関する情報である。予測/修正結果23は、予測結果が修正された場合、修正後の予測結果のみを記憶していてもよいし、修正前および修正後の両方の予測結果を記憶していてもよい。
【0081】
(情報処理装置1bが行う処理)
本発明の一実施形態に係る情報処理方法の概要を、図9に基づいて説明する。図9は、情報処理装置1bによる情報処理方法の概要を示したフローチャートである。
【0082】
ステップS1~S3については、上述した通りである。
【0083】
修正指示受付ステップS4では、予測結果修正部14が、出力制御部13bにより出力された予測結果に対する修正指示の入力を受け付ける。ステップS4においては、入力部30により予測結果の修正の入力が可能となる。
【0084】
修正ステップS5では、予測結果修正部14が、ステップS4において入力された修正指示に応じて、予測結果を修正する。出力制御ステップS6では、出力制御部13bが修正された予測結果を出力装置3に出力させる。
【0085】
情報処理装置1bは、出力した予測結果の誤りを修正した結果を修正後予測結果として保存可能であってもよい。この場合、修正前予測結果に対応する画像であって、予測モデル22に入力された画像を説明変数とし、修正後予測結果を目的変数とする教師データを作成してもよい。これにより、新たな教師データを用いた機械学習を予測モデル22に対して行うことによって、予測モデル22の予測精度を向上させることが可能である。また、前記構成によれば情報処理装置1bは繰り返し教師データを作成することができるため、予測モデル22の精度を継続して向上させることが可能である。
【0086】
〔情報処理装置の用途〕
上述した情報処理装置は、液体に覆われた試料表面の特性の評価に使用されてもよい。したがって、前記情報処理装置およびは、液体に覆われた状態で使用される試料の評価に好適に用いることができる。かかる試料の一例としては、例えば動物または人の体内で、体内の液体で覆われた状態で使用される、医療機器または医療材料を挙げることができる。但し、前記試料は、医療機器または医療材料に限定されるものではなく、他の用途に用いられるものであってもよい。
【0087】
本発明の一実施形態に係る情報処理装置において評価できる試料の表面特性としては例えば、表面の濡れ性、液体との親和性、溶質の吸着挙動、滑り性、凹凸等の物理的抵抗、液体の保持力(水の場合は水和力)、膨潤性、およびそれらの経時変化等を挙げることができる。ここで、溶質の吸着挙動の評価とは、溶質を含む液体に覆われた試料表面への当該溶質の吸着挙動を評価することを意図する。液体の保持力は、例えば液体が水の場合、試料表面の分子と水との間に働く水素結合やファンデルワールス力等の化学的要因が主となり、試料によって保持力(水の場合は水和力)に差が生じる。液体の保持力の評価とは、かかる試料表面付近の保持力の差を評価することを意図する。例えば、水和力が強いと、噴射気体が水を移動させにくくなるので形成領域が小さくなったり、形成領域が観測しにくくなる。また、通常固体表面は、水和状態では、例えば、スキー板やスケートの刃のように当該固体を移動させるときに、滑りやすくなる。したがって、水和力と滑り性との間には相関関係があるという点で、滑り性の評価も可能である。物理的抵抗とは、例えば試料表面の凹凸が大きいと噴射された気体の移動を阻害するという点で、形成領域が小さくなり、凹凸が小さいと形成領域が大きくなるということを意図する。また、膨潤性とは、例えば試料の少なくとも一部を液体に浸漬させたときに、試料が膨潤すると、膨潤した試料の表面が噴射された気体の移動を阻害するという点で、形成領域が小さくなる。また、試料全体を液体に浸漬させた場合、膨潤すると液面と試料表面との液層の厚みが薄くなるので、噴射された気体の圧力は試料表面にかかりやすく、形成領域が大きくなることを利用して、試料の膨潤性を評価することを意図する。もちろん、物理的要因と化学的要因のどちらも抱合した総合的な試料表面の評価も可能である。
【0088】
本発明の一実施形態に係る情報処理装置により評価される試料表面の特性としては例えば、表面の濡れ性、液体との親和性、溶質の吸着挙動、滑り性、凹凸等の物理的抵抗、液体の保持力(水の場合は水和力)、膨潤性、およびそれらの経時変化等が挙げられる。
【0089】
例えば、濡れ性を評価する場合、形成領域に関する情報に基づいて、特定の液体に対する試料表面の濡れ性を評価することができる。形成領域の長さが長い程、形成領域の面積が大きい程、および、形成領域の体積が大きい程、濡れ性が低いと評価できる。
【0090】
あるいは、気体噴射後の2以上の複数の時点における、形成領域のサイズの変化量に基づいて、濡れ性の評価を行ってもよい。例えば、気体の噴射開始時と噴射終了時の間の2以上の複数の時点における、前記サイズの変化量が大きいほど、試料表面において液体が移動しやすいといえるので、濡れにくいと評価することができる。また、例えば、気体の噴射終了時および噴射終了後の2以上の複数の時点における、前記サイズの変化量が大きいほど、試料表面上が再び液体に覆われやすいといえるので、濡れやすいと評価することができる。
【0091】
また、前記サイズを連続的または経時的に測定した結果に基づき濡れ性を評価することもできる。かかる場合は、前記サイズの連続的な変化を追跡することができるので、1点または複数の時点での測定では、評価することができない経時的な挙動についての知見を得ることができる。
【0092】
さらには、気体の噴射量、試料の表面を覆う液層の厚さ、液体の種類、試料表面と気体の噴射口との距離等を変化させて、その際の前記サイズの変化量に基づいて評価を行ってもよい。
【0093】
また例えば、測定に吸着挙動を評価する溶質を含む液体を使用する場合、試料表面への当該溶質の吸着挙動を評価してもよい。溶質を含む液体を用いたときの前記形成領域の長さとブランクの前記形成領域の長さとの変化量が大きい程、試料表面への当該溶質の吸着性が高いと評価できる。
【0094】
あるいは、吸着挙動を評価する溶質を含む液体に浸漬した時間を変化させて、前記変化量を指標とすれば、溶質を含む液体への浸漬時間と当該試料表面への吸着量との関係を評価することができる。
【0095】
従来、形成領域に基づいて試料表面を評価する方法は、ルールをあらかじめ設定し、設定されたルールに基づくアルゴリズムにより、形成領域の特徴を測定する方法(ルールベースの方法)がある。しかしながら、本発明者らは前記ルールベースの方法を検討した結果、設定されたルールから外れた対象物の測定が困難であり、実用的にはそのような対象物の測定が多く、ほとんど手動で行っていた。そのため、測定する人間に由来する差異、再現性の低下、作業効率の低下、作業者の心理的負荷等の問題があり、その制限により、実用的には取得した画像データの一部しか評価に利用できず、試料に特徴的な有用な情報が得にくくなる。すなわち、作業効率の観点から改善の余地があるという新規な課題を見出した。このような課題は試料表面を評価する方法においては従来見出されていなかったものであり、新規な課題である。
【0096】
上記構成によれば、上述した教師データを準備することによって、事前にルールを設定することなく、自動的に形成領域の特徴を測定することが可能となる。上記構成によれば、ルールベースの方法では測定できないような複雑な形成領域の画像に対しても、形成領域の特徴を測定することが可能となる。また、機械学習により学習された予測モデルを使用するため、手動よりも速く、かつ再現性高く形成領域に関する情報を予測することが可能となる。
【0097】
また、医療機器等の表面の評価において、医療機器等が実際に使用される液中環境での表面の評価は困難であり、特に、ガイドワイヤーおよびカテーテル等の細幅の曲面を含む医療機器等の表面の評価を適正行うことは困難であるが、本発明の一実施形態に係る情報処理装置によれば、細幅の曲面を含む医療機器等の実際に使用される液中環境での表面の評価を適正に行うことができる。それゆえ、本発明の一実施形態は、医療機器および医療材料の開発および製造に利用することができる。
【0098】
加えて、コーティング等の表面処理された試料表面の特性を評価することにより、本発明の一実施形態に係る情報処理装置は、コーティング膜等の開発に利用することができる。それゆえ、本発明の一実施形態は、コーティング膜等の開発を行う分野において非常に有用である。
【0099】
〔ソフトウェアによる実現例〕
情報処理装置1、1a、1bの制御ブロック(特に制御部10に含まれる各部)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0100】
後者の場合、情報処理装置1、1a、1bは、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路等を用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)等をさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0101】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る情報処理装置は、試料を覆う液体に対して気体を噴射したときの、前記試料および前記液体を撮像した撮像画像を取得する取得部と、前記撮像画像を予測モデルに入力して、前記気体の噴射により前記試料を覆っている前記液体の少なくとも一部が移動して形成された形成領域に関する情報を予測する形成領域予測部と、前記形成領域予測部による予測結果を出力装置に出力させる出力制御部と、を備え、前記予測モデルは、標本試料を覆う前記液体に対して気体を噴射したときの前記標本試料および前記液体を撮像した標本画像を含む説明変数と、予め所定の技能を有する者によって前記標本画像に基づいて特定された標本領域であって、前記標本試料を覆っている前記液体の少なくとも一部が移動して形成された標本領域に関する情報を含む目的変数と、を含む教師データを用いた機械学習によって学習されている。
【0102】
本発明の態様2に係る情報処理装置は、試料を覆う液体に対して気体を噴射したときの、前記試料および前記液体を撮像した撮像画像を取得する取得部と、前記撮像画像を第1予測モデルに入力して、前記気体の噴射により前記試料を覆っている前記液体の少なくとも一部が移動して形成された形成領域を予測する第1形成領域予測部と、前記予測された形成領域を示す領域情報を第2予測モデルに入力して、前記形成領域に関する情報を予測する第2形成領域予測部と、前記形成領域予測部による予測結果を出力装置に出力させる出力制御部と、を備え、前記第1予測モデルは、標本試料を覆う前記液体に対して気体を噴射したときの前記標本試料および前記液体を撮像した標本画像を含む説明変数と、予め所定の技能を有する者によって前記標本画像に基づいて特定された標本領域であって、前記標本試料を覆っている前記液体の少なくとも一部が移動して形成された標本領域を示す領域情報を含む目的変数と、を含む教師データを用いた機械学習によって学習されており、前記第2予測モデルは、前記領域情報を含む説明変数と、予め所定の技能を有する者によって決定された前記標本領域に関する情報を含む目的変数と、を含む教師データを用いた機械学習によって学習されている。
【0103】
本発明の態様3に係る情報処理装置は、前記態様1または2において、前記出力した前記予測結果に対する修正を指示する修正指示の入力を受け付ける入力部と、前記修正指示に応じて、前記予測結果を修正する予測結果修正部をさらに備えていてもよい。
【0104】
本発明の態様4に係る情報処理装置は、前記態様1~3のいずれかにおいて、前記形成領域に関する情報および前記標本領域に関する情報が、前記形成領域の寸法、面積、形状、および位置の少なくともいずれかであってもよい。
【0105】
本発明の態様5に係る情報処理装置は、前記態様1~4のいずれかにおいて、前記試料の形状が、円柱状または円筒状であってもよい。
【0106】
本発明の態様6は、前記態様1~5のいずれかにおいて、前記液体が、溶質を含み、前記形成領域に関する情報は、前記溶質の前記試料の表面に対する吸着挙動を評価するための情報であってもよい。
【0107】
本発明の態様7は、試料を覆う液体に対して気体を噴射したときの、前記試料および前記液体を撮像した撮像画像を取得する取得ステップと、前記撮像画像を予測モデルに入力して、前記気体の噴射により前記試料を覆っている前記液体の少なくとも一部が移動して形成された形成領域に関する情報を予測する形成領域予測ステップと、前記形成領域予測部による予測結果を出力装置に出力させる出力制御ステップと、を含み、前記予測モデルは、標本試料を覆う前記液体に対して気体を噴射したときの前記標本試料および前記液体を撮像した標本画像を含む説明変数と、予め所定の技能を有する者によって前記標本画像に基づいて特定された標本領域であって、前記標本試料を覆っている前記液体の少なくとも一部が移動して形成された標本領域に関する情報を含む目的変数と、を含む教師データを用いた機械学習によって学習されている、情報処理方法である。
【0108】
本発明の態様8は、試料を覆う液体に対して気体を噴射したときの、前記試料および前記液体を撮像した撮像画像を取得する取得ステップと、前記撮像画像を第1予測モデルに入力して、前記気体の噴射により前記試料を覆っている前記液体の少なくとも一部が移動して形成された形成領域を予測する第1形成領域予測ステップと、前記予測された形成領域を示す領域情報を第2予測モデルに入力して、前記形成領域に関する情報を予測する第2形成領域予測ステップと、前記第2形成領域予測部による予測結果を出力装置に出力させる出力制御ステップと、を含み、前記第1予測モデルは、標本試料を覆う前記液体に対して気体を噴射したときの前記標本試料および前記液体を撮像した標本画像を含む説明変数と、予め所定の技能を有する者によって前記標本画像に基づいて特定された標本領域であって、前記標本試料を覆っている前記液体の少なくとも一部が移動して形成された標本領域を示す領域情報を含む目的変数と、を含む教師データを用いた機械学習によって学習されており、前記第2予測モデルは、前記領域情報を含む説明変数と、予め所定の技能を有する者によって決定された前記標本領域に関する情報を含む目的変数と、を含む教師データを用いた機械学習によって学習されている、情報処理方法である。
【0109】
本発明の態様9は、前記態様1の情報処理装置としてコンピュータを機能させるための制御プログラムであって、前記取得部、前記形成領域予測部、および前記出力制御部としてコンピュータを機能させるための制御プログラムである。
【0110】
本発明の態様10は、前記態様2の情報処理装置としてコンピュータを機能させるための制御プログラムであって、前記取得部、前記第1形成領域予測部、前記第2形成領域予測部、および上記出力制御部としてコンピュータを機能させるための制御プログラムである。
【0111】
本発明の態様11は、前記態様9または10の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【実施例0112】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0113】
〔実施例1〕
手動で測定を行った場合と予測モデルを使用した場合の誤差を比較した。液体に覆われた試料の表面に気体を噴射して生じた、試料の表面に存在する液体の少なくとも一部が移動して形成された領域の標本画像約1500枚を説明変数、予め所定の技能を有する者によってこれら標本画像に基づいて特定された標本領域に関する情報を目的変数として、教師データを作成した。その後、画像を上下左右にずらす、またはズームすることにより、画像を15000枚に増やし、各標本画像と、標本画像に基づいて特定された標本領域に関する情報を教師データとして追加した。これらの教師データを予測モデルに入力した。予測モデルとしては、UnetおよびResnetを使用した。
【0114】
サンプルAとしてガイドワイヤーA(直径0.038インチ)を、サンプルBとしてガイドワイヤーB(直径0.035インチ)を使用して、親水性を評価した。親水性の評価は、サンプルをシャーレの底に接するようにテープにより固定して、蒸留水5gに浸漬した。浸漬開始から1分後に、濡れ性評価装置Wettio NCW-100(ヤマト科学株式会社製)を用いて、窒素ガスを、試料の鉛直上方(噴射口と蒸留水の液面との距離:10.0mm)から、噴射量5kPaで、2秒噴射した。窒素ガスを噴射することにより、試料の表面に存在する液体の少なくとも一部を線状に移動させた。サンプルの表面に生じた線状領域の写真をそれぞれ10枚ずつ撮影した。撮影した画像から、Unetモデルにて線状領域の場所を推論した後、さらにその結果からResnetモデルを生成し、線状領域の両端の座標を回帰推論して、線分の長さの予測値を求めた。また、同じ写真を使用して、線分の長さの正解値を手動により求めた。結果を図11に示す。
【0115】
図11より、予測値と正解値との誤差は、ほぼ0.16mm以内になっていることが分かった。したがって、本発明の一実施形態に係る情報処理装置を使用することにより、人間がルールを設定することなく、試料表面に形成された領域を予測できることが示された。
【0116】
〔実施例2〕
実施例1で使用した予測モデルを使用して、実施例1と同様の方法により、少なくとも一部が移動して形成された領域の画像から、領域の寸法を予測し、予測までに要した時間を手作業で測定を実施した場合と比較した。結果を表1に示す。
【0117】
【表1】
【0118】
表1より、予測モデルを使用して試料表面の領域を予測した場合、手作業で計測した場合よりも遥かに短い時間で完了することができた。また、予測モデルの正答率を7割とした場合でも、全て手作業で実施する場合に要する時間より十分に短い時間で完了できた。したがって、本発明の一実施形態に係る情報処理装置を使用することにより、より短い時間で試料表面の領域を計測できることが示された。
【0119】
〔実施例3〕
実施例1と同じ条件でサンプルAのガイドワイヤーA(直径0.038インチ)、サンプルBのガイドワイヤーB(直径0.035インチ)に対して気体の噴射を行った。実施例1で使用した予測モデルを使用して、サンプルAおよびBの表面に存在する液体(蒸留水)の少なくとも一部が移動して、領域が形成されるまでを、連続撮影(33枚/秒)した画像における、形成領域の線分長さを測定した。結果を図12に示す。
【0120】
図12より、気体噴射の開始から終了までの、試料表面の領域の長さを予測できていることが示された。また、これまで手作業により計測していた部分よりも、より広範囲にわたる領域の挙動を測定することができた。したがって、本発明の一実施形態に係る情報処理装置を使用することにより、従来の方法では特定できなかった、試料表面に領域が形成される過程を計測できることが示された。また、サンプルAの結果と、サンプルBの結果とを比べると、形成領域の線分長さが異なった値を示していた。そのため、本発明の一実施形態に係る情報処理装置によれば、異なるサンプル間での挙動の違い等も確認することができる。
【符号の説明】
【0121】
R 試料
N ノズル
G 気体
L 液体
Q 液面
P 形成領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12