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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176893
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】コーヒーメーカー
(51)【国際特許分類】
   A47J 31/44 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
A47J31/44 196
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095752
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002473
【氏名又は名称】象印マホービン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】笹川 拓馬
【テーマコード(参考)】
4B104
【Fターム(参考)】
4B104AA12
4B104BA36
4B104DA60
4B104EA21
(57)【要約】
【課題】湯を注ぐ螺旋状の軌道を任意に変えることができるコーヒーメーカーを実現する。
【解決手段】コーヒーメーカーは、フィルタ内のコーヒー粉末に対して螺旋状に湯を注ぐ注湯装置(10)を備える。注湯装置(10)は、注湯口(12A)を円軌道で移動させる機構を駆動する第1モータ(M1)と、注湯口を重力の方向に見て円軌道の中心と該中心よりも外周側との間で往復移動させる機構を駆動する第2モータ(M2)と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーヒー粉末の入れられたフィルタを保持するバスケットと、
前記バスケットの上方に位置し、前記フィルタ内のコーヒー粉末に対して螺旋状に湯を注ぐ注湯装置と、を備え、
前記注湯装置は、
湯の出る注湯口を、前記バスケットの中心部を中心とする円軌道で移動させる機構を駆動する第1駆動源と、
前記注湯口を、重力の方向に見て前記円軌道の中心と該中心よりも外周側との間で往復移動させる機構を駆動する第2駆動源と、を備えるコーヒーメーカー。
【請求項2】
前記注湯装置は、
可撓性を有する注湯管と、
前記注湯管が挿通され、前記円軌道の中心を回転軸として回転可能な筒状部材と、
前記注湯管の先端部を保持すると共に前記筒状部材に回動可能に軸支され、前記先端部を前記円軌道の中心に向けた中心位置から前記中心位置よりも外周側に向けた外周位置に回動可能な先端保持部材と、を備え、
前記第1駆動源は、前記筒状部材および前記先端保持部材を前記回転軸にて回転させ、
前記第2駆動源は、前記先端保持部材を前記中心位置と前記外周位置との間で往復回動させる請求項1に記載のコーヒーメーカー。
【請求項3】
前記筒状部材は、
前記注湯管が挿通された内筒部材と、
該内筒部材が挿通された外筒部材と、を有し、
前記外筒部材は、前記内筒部材に対して上下方向に移動し、
前記先端保持部材は、前記内筒部材に回動可能に軸支されると共に前記外筒部材とリンクにて接続され、前記外筒部材の上下方向の移動に伴い回動する請求項2に記載のコーヒーメーカー。
【請求項4】
前記注湯装置は、
前記第1駆動源の駆動力にて回転し、前記外筒部材の外周部に係合されたリングギヤと、
ラックを有し、前記第2駆動源に駆動力にて上下方向に移動し、前記外筒部材の上端部に係合された係合部材と、を備え、
前記外筒部材は、周方向において前記リングギヤと一体に回転し、上下方向において前記リングギヤに対して移動可能であり、かつ、
前記外筒部材は、周方向において前記係合部材に対して回転し、上下方向において前記係合部材と一体に移動する請求項3に記載のコーヒーメーカー。
【請求項5】
前記注湯装置は、
上下方向に軸を有する第1平歯車と、
前記第1平歯車と側面同士が重なるように配置され、前記第1平歯車に回転可能に支持され、前記第1平歯車の軸よりも径方向外側において回転する第2平歯車と、
可撓性を有する注湯管の先端部を保持し、前記第1平歯車の軸が挿通される第1長孔を有し、前記第1平歯車の軸の径方向にスライド可能であり、前記第2平歯車の回転にて往復移動するスライド部材と、を備え、
前記第1駆動源は、前記第1平歯車を回転させ、
前記第2駆動源は、前記第2平歯車を回転させる請求項1に記載のコーヒーメーカー。
【請求項6】
前記第1平歯車は、前記第2平歯車の軸を中心とする円形のカム溝を有し、
前記スライド部材は、前記第1長孔と直交する方向に長い第2長孔を有し、
前記第2平歯車は、前記第1平歯車の前記カム溝に前記第2長孔を介して挿入された突起を有し、
前記スライド部材は、前記第2平歯車の回転に伴い前記突起が前記カム溝に沿って移動することで往復移動する請求項5に記載のコーヒーメーカー。
【請求項7】
前記第2平歯車および前記スライド部材は、前記第1平歯車の上方を向いた側面の側に位置し、
前記第1平歯車は、前記第1平歯車の軸を挟んで前記第2平歯車とは反対側に前記スライド部材が往復移動する方向に長い第3長孔を有し、
前記スライド部材は、前記第3長孔に挿通されるボス状部を有し、
前記注湯管の先端部は、前記第1平歯車の下方を向いた側面の側において前記ボス状部と一体に移動するように保持されている請求項6の記載のコーヒーメーカー。
【請求項8】
前記第1平歯車と噛合して前記第1駆動源の駆動力にて前記第1平歯車を回転させる第1駆動平歯車と、
前記第2平歯車と噛合して前記第2駆動源の駆動力にて前記第2平歯車を回転させる第2駆動平歯車と、を備え、
前記第2駆動平歯車の軸が前記第1平歯車の軸上に位置している請求項7に記載のコーヒーメーカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒー粉末入りのコーヒーフィルタを保持したバスケットの上方から湯を注ぎ、コーヒー液を抽出する形式のコーヒーメーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のコーヒーメーカーとして、コーヒー粉末の上面に、湯を螺旋状に注ぐ注湯装置を備えたものが知られている。例えば、特許文献1には、回転軸管と該回転軸管に連動する往復スクリューとを備え、注湯ホースが接続される出水管を、ろ過点の中心から螺旋状に内へ外へと往復させる螺旋式注湯装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-106288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような従来技術は、回転軸管に連動する往復スクリューを用いた構成であるため、湯を注ぐ螺旋の周期(渦巻の周期)が一定となる。
【0005】
コーヒー液の濃度は、コーヒー粉末の量が同じであっても、コーヒー粉末の層が厚い内側に湯を注ぐことで濃くなり、コーヒー粉末の層が薄い外側に湯を注ぐことで薄くなる。湯を注ぐ螺旋の周期が一定の場合、常に同じ注ぎ方となり、注ぎ方でコーヒー液の濃度を調整することができない。
【0006】
本発明の一態様は、湯を注ぐ螺旋状の軌道を任意に変えることができるコーヒーメーカーを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るコーヒーメーカーは、コーヒー粉末の入れられたフィルタを保持するバスケットと、前記バスケットの上方に位置し、前記フィルタ内のコーヒー粉末に対して螺旋状に湯を注ぐ注湯装置と、を備え、前記注湯装置は、湯の出る注湯口を、前記バスケットの中心部を中心とする円軌道で移動させる機構を駆動する第1駆動源と、前記注湯口を、重力の方向に見て前記円軌道の中心と該中心よりも外周側との間で往復移動させる機構を駆動する第2駆動源と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、湯を注ぐ螺旋状の軌道を任意に変えることができるコーヒーメーカーを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1,2に係るコーヒーメーカーの概略構成を示す図である。
図2】実施形態1の注湯装置の構成を示す斜視図である。
図3】実施形態1の注湯装置の分解斜視図である。
図4】実施形態1の注湯装置の縦断面図である。
図5】実施形態1の注湯装置における注湯口を径方向に往復移動させる動きを説明する斜視図である。
図6】実施形態1の注湯装置における湯を注ぐ螺旋の形状の一例を説明する図である。
図7】実施形態2の注湯装置を上方より見た斜視図である。
図8】実施形態2の注湯装置の上下を反転して上方より見た斜視図である。
図9】実施形態2の注湯装置の分解斜視図である。
図10】実施形態2の注湯装置における注湯口を径方向に往復移動させる動きを説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、図1から図6を用いて詳細に説明する。
【0011】
(コーヒーメーカーの概略)
図1は、本実施の形態に係るコーヒーメーカー1の概略構成を示す図である。なお、図1において、本体部4の筐体4Aの内部の構成は、コーヒーメーカーとしての典型的な構成をブロックにて示している。また、図1は、実施形態2に係るコーヒーメーカー1Aの図でもある。
【0012】
図1に示すように、コーヒーメーカー1は、バスケット2、貯留容器3、および本体部4を備える。本体部4は、筐体4Aの内部に、タンク5、管6、加熱部7、および注湯装置10を備える。
【0013】
バスケット2は、コーヒー粉末100の入れられたフィルタ101を保持し、下部が窄んだ漏斗型をなす。貯留容器3は、バスケット2の下方に位置し、バスケット2の下端から流下する抽出されたコーヒー液を貯留する。
【0014】
タンク5は、水を蓄えるものであり、コーヒーメーカー1から簡単に取り外し可能に構成されている。管6は、タンク5、加熱部7、および注湯装置10に連通し、タンク5内の水を、加熱部7を経由して注湯装置10に供給する管6は、タンク5および加熱部7に連通した第1管6Aと、加熱部7および注湯装置10に連通した第2管6Bと、を備える。
【0015】
加熱部7は、図示してはいないが、第1管6Aから水が供給されるヒーターパイプ、および該ヒーターパイプを加熱するヒータを備えている。加熱部7は、ヒーターパイプ内を流れる水をヒータにて加熱して湯(熱湯)を生成し、生成した湯を順次ヒーターパイプの出口から第2管6Bに送り出す。加熱部7は、貯留容器3が載置されるプレート8の下側に位置しており、プレート8を介して貯留容器3内のコーヒー液を加熱し保温する機能も有している。
【0016】
注湯装置10は、バスケット2の上方に位置し、バスケット2に保持されているフィルタ101内のコーヒー粉末100に、上方より湯を注ぐ装置である。注湯装置10は、コーヒー粉末100に対して螺旋状に湯を注ぐようになっている。以下、注湯装置10の構成について説明する。
【0017】
(注湯装置)
図2は、注湯装置10の構成を示す斜視図である。図3は、注湯装置10の分解斜視図である。図4は、注湯装置10の縦断面図である。図5は、先端保持部材25の動きを示す斜視図であり、符号501は先端保持部材25がほぼ真下を向いた中央位置にある状態を示し、符号502は、先端保持部材25が回動した外周位置にある状態を示す。なお、図2図4においては、後述するメインフレーム15の記載を省略し、図5においては、先端保持部材25を回動させる構成を主として示している。
【0018】
図2に示すように、注湯装置10は、湯の出る注湯口12Aを円軌道で移動させる機構を駆動する第1モータ(第1駆動源)M1と、注湯口12Aを、重力の方向に見て円軌道の中心と該中心よりも外周側との間で往復移動させる機構を駆動する第2モータ(第2駆動源)M2と、を備える。第1モータM1、第2モータM2は、各々独立して制御可能である。注湯装置10は、円軌道の中心がバスケット2(図1参照)の中心部にくるように取り付けられている。
【0019】
以下、注湯口12Aを円軌道で移動させる機構を第1機構と称する。注湯口12Aを重力の方向に見て円軌道の中心と該中心よりも外周側との間で往復移動させる機構を、第2機構と称する。
【0020】
図3に示すように、注湯装置10は、第1モータM1および第2モータM2以外に、ジョイント管11、注湯管12、ジョイント部材13、サブフレーム14、メインフレーム15、第1駆動ギヤ21、リングギヤ22、内筒部材23、外筒部材24、先端保持部材25、一対のリンク26、第2駆動ギヤ31、および係合部材32を備える。
【0021】
第1機構は、第1駆動ギヤ21、リングギヤ22、内筒部材23、外筒部材24、先端保持部材25、および一対のリンク26にて構成されている。第2機構は、外筒部材24、先端保持部材25、一対のリンク26、第2駆動ギヤ31、および係合部材32にて構成されている。つまり、内筒部材23、外筒部材24、先端保持部材25、および一対のリンク26は、第1機構および第2機構の共用の部材である。
【0022】
図4に示すように、注湯管12は、可撓性を有する材質からなり、注湯管12の下端である先端部が注湯口12Aとなっている。注湯管12の上端は、ジョイント部材13、サブフレーム14、およびジョイント管11を介して第2管6B(図1参照)と接続されている。これにより、注湯管12に第2管6Bより湯が供給される。
【0023】
具体的には、ジョイント管11の下端が、サブフレーム14に形成されている筒状の上接続部14Aに接続されている。上接続部14Aの裏面側に下接続部14Bが形成されており、この下接続部14Bにジョイント部材13の上端が接続されている。そして、ジョイント部材13の下端に注湯管12の上端が接続されている。
【0024】
サブフレーム14は、第1モータM1および第2モータM2と共にメインフレーム15(図3参照)に保持されている。メインフレーム15は、注湯装置10を本体部4に取り付けるための部品でもある。
【0025】
図2図4に示すように、内筒部材(筒状部材)23および外筒部材(筒状部材)24は、いずれも上下方向に長い円筒部材である。内筒部材23および外筒部材24は、2重管を構成し、外筒部材24に内筒部材23が挿通されている。内筒部材23に注湯管12が挿通されている。
【0026】
図4に示すように、注湯管12は、内筒部材23の上端に嵌め込まれたジョイント部材13が、内筒部材23の上端に係止されることで、ジョイント部材13を介して内筒部材23に保持されている。ジョイント部材13は、遊びの有る状態で内筒部材23に嵌め合わされており、内筒部材23はジョイント部材13に対して回転可能に構成されている。
【0027】
さらに、内筒部材23は、サブフレーム14に対して回転可能に構成されている。サブフレーム14の下面と対向する内筒部材23の上端面には、接触面積を減らして摩擦を低減し得るように、複数のドーム状の凸23Bが形成されている。
【0028】
注湯管12の先端部は、内筒部材23の下端よりも下方に延びており、その先端部が先端保持部材25に保持されている。先端保持部材25は、下端側の内側に、注湯管12の先端部を保持する保持部25Aを有している。注湯管12の先端部は、保持部25Aに挿通されることで保持部25Aに保持されている。保持部25Aは、注湯管12の先端部を遊びの有る状態で保持している。
【0029】
なお、図4の構成では、注湯管12の先端部を保持部25Aにて保持しているため、注湯管12の先端部が注湯口12Aとなる。先端保持部材25に注湯口が形成され、注湯管12の先端部を、先端保持部材25に形成された注湯口に連通する接続部に挿し込むような構成であってもよい。
【0030】
筒状部材である内筒部材23および外筒部材24と、先端保持部材25とは、周方向には一体に回転するように設けられている。
【0031】
具体的には、図3図5に示すように、先端保持部材25は、内筒部材23の外周面の下端部に設けられた軸23Aにて回動可能に支持されている。また、先端保持部材25は、外筒部材24の外周面の下端部に、一対のリンク26を介して接続されている。つまり、内筒部材23および外筒部材24は、先端保持部材25を介して接続されている。
【0032】
外筒部材24は、リングギヤ22の内側に位置し、周方向にリングギヤ22と係合しており、リングギヤ22と一体に回転する。リングギヤ22は、外筒部材24の外周面に位置する。上下方向については、外筒部材24は、リングギヤ22に対して移動可能(摺動可能)に嵌め合わされている。具体的には、外筒部材24の外周面に上下方向に延びるリブ状の凸部24Aが形成され、この凸部24Aと、リングギヤ22の内周面に形成された凹部22Aとが係合している。凸部24Aは、外筒部材24が上下移動する際、ガイドとしての機能も有している。
【0033】
リングギヤ22は、第1モータM1の駆動軸と接続された第1駆動ギヤ21と噛合している。リングギヤ22および第1駆動ギヤ21はいずれも平歯車である。第1モータM1は、一方向に回転するモータである。第1モータM1が駆動され、リングギヤ22が所定の一方向に回転すると、これに伴い、内筒部材23、外筒部材24、および先端保持部材25が一体に回転する。
【0034】
一方、上下方向に対しては、内筒部材23は移動せず、外筒部材24および先端保持部材25が移動するように設けられている。さらに、その際、先端保持部材25が、内筒部材23に対して回動しながら移動するように設けられている。
【0035】
具体的には、図4に示すように、内筒部材23の上端部の外周に、係合部材32が上下方向に移動可能に装着されている。つまり、係合部材32は内筒部材23に対して上下方向に移動する。
【0036】
また、係合部材32は、外筒部材24の上端部を周方向に摺動可能に保持している。つまり、外筒部材24は、係合部材32と上下方向に一体に移動し、かつ、係合部材32に対して回転方向(周方向)に摺動するように係合されている。
【0037】
図5に示すように、係合部材32がラックを有し、該ラックに第2モータM2の駆動軸と接続された第2駆動ギヤ31が噛合している。第2駆動ギヤ31は平歯車である。第2モータM2は、双方向に回転する双方向モータである。第2モータM2の正回転および逆回転に伴い第2駆動ギヤ31が双方向に回転すると、係合部材32が上下方向に移動する。これに伴い、係合部材32に保持されている外筒部材24が、内筒部材23に対して上下方向に移動する。外筒部材24には、一対のリンク26を介して先端保持部材25が接続されているため、先端保持部材25も、内筒部材23に対して上下方向に移動する。
【0038】
図3図5に示すように、内筒部材23における、先端保持部材25を回動可能に支持する軸23Aは、内筒部材23の中心軸を通る径方向両側にそれぞれ形成されている。先端保持部材25は、保持部25Aから上方に向かって延びる一対の延設部25Bを有する。この一対の延設部25Bにおける上端部に、軸23Aが挿通される一対の孔25Cが形成されている。ここで、孔25Cの位置は、先端保持部材25が、回動して傾斜する側とは反対側にずれて形成さている。
【0039】
一方、外筒部材24の外周面の下端部に、上述した一対のリンク26の一端側のジョイントとなる一対の軸24Bが形成されている。ここで、軸24Bは、外筒部材24の中心軸を通る径方向両側にそれぞれ形成されている。また、先端保持部材25における一対の延設部25Bの外側の面に、一対のリンク26の他端側のジョイントとなる一対の軸25Dがそれぞれ形成されている。軸25Dは、孔25Cに対して先端保持部材25が上下方向に対して傾斜する側であって、かつ、孔25Cよりも上下方向の下側に形成されている。
【0040】
図5に示すように、軸24Bに対し、軸25Dの位置を、先端保持部材25が傾斜する側にずらしている。そのため、一対のリンク26は、先端保持部材25が傾斜する側に常に傾斜している。
【0041】
図5の符号501に示すように、外筒部材24が下位置にある状態では、先端保持部材25は、内筒部材23および外筒部材24のほぼ真下に位置している。したがって、この状態では、先端保持部材25の下端に位置する注湯口12Aも、内筒部材23および外筒部材24のほぼ真下を向く(中央位置)。内筒部材23および外筒部材24の中心軸の位置が、円軌道の中心となる。
【0042】
この状態から、外筒部材24が上位置に移動させていくと、図5の符号502に示すように、先端保持部材25は、内筒部材23および外筒部材24の中心軸Gに対して離れる方向に回動し、中心軸Gに対して傾斜する。したがって、この状態では、先端保持部材25の下端に位置する注湯口12Aも、中心軸Gに対して傾斜し、円軌道の中心よりも外周側に位置することとなる(外周位置)。内筒部材23における、先端保持部材25が回動して傾斜する側には、先端保持部材25が回動した際の注湯管12の撓みを逃がすための切欠き23Cが形成されている(図2参照)。
【0043】
この状態から、外筒部材24が下位置に移動させていくと、図5の符号501に示すように、先端保持部材25は、中心軸Gに近づく方向に回動し、再び、内筒部材23および外筒部材24のほぼ真下の位置に戻り、注湯口12Aもほぼ真下を向く。
【0044】
このように、先端保持部材25は、筒状部材である内筒部材23に回動可能に軸支され注湯管12先端部を円軌道の中心に向けた中心位置から前記中心位置よりも外周側に向けた外周位置に回動可能に構成されている。
【0045】
中心軸Gに対する先端保持部材25の傾斜角θは、内筒部材23に対して外筒部材24が最下端にある位置をゼロとすると、外筒部材24を上方に移動させるに伴い大きくなる。先端保持部材25が最大に傾斜した最大の傾斜角θは、例えば、中心軸Gに対して45°である。中心軸Gは、注湯装置10がコーヒーメーカー1に取り付けられた状態で、鉛直方向に平行であり、バスケット2の中央部を通る。
【0046】
先端保持部材25の傾斜角θは、湯を注ぐ螺旋の径を決定し、傾斜角θが大きいほど螺旋の径が大きくなる。先端保持部材25の傾斜角θは、最大角度内であれば、適宜設定することができる。つまり、外筒部材24を上方に引きが上げる移動量を、最大角度の引き上げ距離よりも小さくすることで、30°等に設定することができる。設定した引き上げ量の範囲で上下移動させることで、設定した引き上げ量に応じた径を有する螺旋とすることができる。
【0047】
(効果)
上記構成によれば、注湯口12Aは、第1機構にて円軌道で移動されつつ、第2機構にて円軌道の中心より径方向へ往復移動される。これにより、注湯口12Aを、バスケット2の中心部を中心とした螺旋(渦巻)状に、中心部から外周側へ、外周側から中心部へと移動させることができ、コーヒー粉末100上に湯を螺旋状に注ぐことができる。
【0048】
そして、第1機構と第2機構とは、独立した第1モータM1,第2モータMで駆動される。これにより、注湯口12Aを円軌道で移動させる速度と、注湯口12Aを径方向に移動させる速度とを、任意に設定することができ、結果として、螺旋状の軌道(螺旋の周期、螺旋の間隔、螺旋の径等)を任意に変えることができる。
【0049】
螺旋の間隔は、円軌道で移動させる速度および径方向に移動させる速度の組み合わせにて変化する。例えば、円軌道で移動させる速度を同じとした場合、径方向に移動させる速度を速くすると広くなり、径方向に移動させる速度を遅くすると狭くなる。径方向に移動させる速度を同じとした場合、円軌道で移動させる速度を速くすると狭くなり、円軌道で移動させる速度を遅くすると広くなる。
【0050】
例えば、コーヒー粉末の量が同じであっても、湯を注ぐ螺旋状の軌道を任意に変えて、好みの濃度に調整することができる。具体的には、「濃いめ」を希望の場合は、コーヒー粉末の層が厚い内側に湯が多く注がれるように抽出装置10の動作を設定する。「薄いめ」を希望の場合は、コーヒー粉末の層が薄い外側に湯が多く注がれるように抽出装置10の動作を設定する。
【0051】
また、一度に抽出するコーヒーの杯数が多くなると、コーヒー粉末の量が多くなり、湯を注ぐコーヒー粉末の上面の径が大きくなる。螺旋の径が一定の場合、コーヒー粉末の上面のサイズに係わらず同じ注ぎ方となるため、一度に抽出するコーヒー液の杯数に応じて、コーヒー液の濃度が変わり濃度が安定しない。上記構成によれば、湯を注ぐ螺旋状の軌道を任意に変えることができるので、螺旋の径を変えることができる。これにより、一度に抽出するコーヒー液の杯数が変化しても、コーヒー粉末の上面の面積に応じた径とすることで、コーヒー液の濃度を安定させることができる。
【0052】
コーヒー液の濃度および一度に抽出する杯数に応じた第1モータM1および第2モータM2の駆動条件は、コーヒーメーカー1の図示しない制御部等に格納されていればよい。
【0053】
図6は、注湯装置10おける湯を注ぐ螺旋の形状の一例を説明する図である。符号601~605に示すように、注湯口12Aを円軌道で移動させる速度と、注湯口12Aを径方向に移動させる速度とを、任意に設定し、注いでいる途中で速度を変更したりすることで、さまざまな形状の螺旋にて湯を注ぐことができる。また、符号601、606、607に示すように、中心軸Gに対する先端保持部材25の傾斜角θ(図5参照)の対応範囲内であれば、螺旋の径も任意に変えることができる。
【0054】
ところで、図2図5で例示した注湯装置10では、第1モータM1にて先端保持部材25と回転軸にて回転する筒状部材を、内筒部材23および外筒部材24から構成し、外筒部材24を上下動させて、先端保持部材25を内筒部材に対して回動させる構成とした。しかしながら、外筒部材24は必須ではなく、注湯管12が挿通された筒状部材、つまり内筒部材23に対して、先端保持部材25が、注湯口12Aを円軌道の中心に向けた位置から中心よりも外周側に向けた傾斜位置に回動可能な構成であればよい。
【0055】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0056】
図7は、本実施形態に係る注湯装置40を上方より見た斜視図である。図8は、注湯装置40の上下を反転して上方より見た斜視図である。図9は、注湯装置40の分解斜視図である。図10は、注湯装置40における注湯口43Aを径方向に往復移動させる動きを説明する図である。図10の符号1001は、注湯口43Aが最も径方向外側にある状態を示し、符号1002は、注湯口43Aが最も径方向内側にある状態を示し、符号1003は、注湯口43Aが径方向の中間の位置にある状態を示す。
【0057】
注湯装置40は、図1に示したコーヒーメーカー1において、注湯装置10に代えて搭載可能である。注湯装置10に代えて注湯装置40を搭載したものを、コーヒーメーカー1Aと称する。
【0058】
図7に示すように、注湯装置40は、注湯口43A(図8参照)を円軌道で移動させる第1機構を駆動する第1モータM1と、注湯口43Aを、重力の方向に見て円軌道の中心と該中心よりも外周側との間で往復移動させる第2機構を駆動する第2モータM2と、を備える。注湯装置40は、円軌道の中心がバスケット2(図1参照)の中心部にくるように取り付けられている。
【0059】
図9に示すように、注湯装置40は、第1モータM1および第2モータM2以外に、メインフレーム41、支持部材42、ジョイント部材43、第1駆動ギヤ(第1駆動平歯車)51、大径ギヤ(第1平歯車)52、第2駆動ギヤ(第2駆動平歯車)61、小径ギヤ(第2平歯車)62、スライド部材63を備える。第1駆動ギヤ51、大径ギヤ52、第2駆動ギヤ61、および小径ギヤ62は、何れも平歯車である。
【0060】
第1機構は、第1駆動ギヤ51および大径ギヤ52にて構成されている。第2機構は、第2駆動ギヤ61、小径ギヤ62、およびスライド部材63にて構成されている。
【0061】
第1モータM1、および第2モータM2は、メインフレーム41(図9参照)に保持されている。メインフレーム41は、注湯装置40を本体部4に取り付けるための部品でもある。
【0062】
図7に示すように、大径ギヤ52は、上下方向に軸52Z(図9参照)を有し、第1モータM1の駆動軸が接続された第1駆動ギヤ51と噛合している。第1モータM1は、一方向に回転するモータである。大径ギヤ52は、第1モータM1の駆動力にて一方向に回転する。
【0063】
図9図10に示すように、大径ギヤ52は、小径ギヤ62と対向する側面52Cに、小径ギヤ62の軸62Zを中心とする円形のカム溝52Aを有している。このカム溝52Aに、小径ギヤ62の突起62Aが移動可能に挿入される。
【0064】
さらに、大径ギヤ52は、軸52Zを挟んでカム溝52Aとは反対側に、径方向に長い第3長孔52Bを有している。第3長孔52Bは、換言すると、スライド部材63が往復移動する方向に長い。この第3長孔52Bに、スライド部材63のボス状部63Cが移動可能に挿入される。カム溝52Aの中心は、第3長孔52Bの短手方向の中央位置と回転中心とを結ぶ延長線上に位置している。
【0065】
小径ギヤ62は、大径ギヤ52よりも小径であり、上下方向に軸62Zを有する。小径ギヤ62は、大径ギヤ52と側面同士が重なるように配置され、大径ギヤ52に回転可能に支持されている。具体的には、大径ギヤ52に取り付けられた支持部材42に、小径ギヤ62の軸62Zが回転可能に支持されている。したがって、小径ギヤ62は、大径ギヤ52と軸52Zにて一体に回転する。
【0066】
小径ギヤ62は、大径ギヤ52の軸52Zよりも径方向外側において回転する。小径ギヤ62は、大径ギヤ52と対向する側面に、前述した大径ギヤのカム溝52Aに挿入される突起62Aを有している。小径ギヤ62は、第2モータM2の駆動軸が接続された第2駆動ギヤ61と噛合している。注湯装置40においては、第2モータM2は、一方向に回転するモータである。
【0067】
つまり、小径ギヤ62は、大径ギヤ52が回転すると、大径ギヤ52の軸52Zを中心に円軌道で移動すると共に、第2駆動ギヤ61が回転すると自身の軸62Zにて回転する。
【0068】
本実施形態では、第2駆動ギヤ61の軸61Zが、大径ギヤ52の軸52A上に位置している。これにより、製品外観からギヤを隠すことができ、製品高さも抑えることができる。
【0069】
スライド部材63は、大径ギヤ52の側面52Cにスライド可能に支持されている。したがって、スライド部材63は、小径ギヤ62と共に大径ギヤ52と軸52Zにて一体に回転する。
【0070】
また、スライド部材23は、大径ギヤ52の軸52Zが挿通される第1長孔63Aを有し、大径ギヤ52の軸52Zを通る径方向にスライド可能である。スライド部材63は、小径ギヤ62の軸62Zを中心とした回転にて、大径ギヤ52径方向に往復移動する。
【0071】
具体的には、スライド部材63は、上方より見てT字形状をなし、T字形状の縦棒部分に、第1長孔63Aを有している。第1長孔63Aは、スライド部材63が径方向に移動する際に、大径ギヤ52の軸52Zを逃がすための孔である。第1長孔63Aは、スライド部材63の移動方向を案内するガイド機能も有している。
【0072】
さらに、図9図10に示すように、スライド部材63のT字形状の横棒部分には、第2長孔63Bが形成されている。第2長孔63Bは、T字形状の縦棒部分に形成された第1長孔63Aとは長手方向が直交する長孔である。この第2長孔63Bに、小径ギヤ62に形成された突起62Aが挿通され、突起62Aはさらに大径ギヤ52に形成されたカム溝52Aに挿入されている。
【0073】
これにより、図10に示すように、スライド部材63は、小径ギヤ62が軸62Zにて回転し、突起62Aがカム溝52Aに沿って移動することで、大径ギヤ52の径方向に往復移動する。
【0074】
さらに、スライド部材63は、可撓性を有する注湯管70の先端部を、スライド部材63と一体にスライドするように保持している。具体的には、スライド部材63は、T字形状の縦棒部分における下面、つまり、大径ギヤ52の側面52Cと対向する面に、前述した大径ギヤ52の第3長孔52Bに挿通されるボス状部63Cを有している。
【0075】
図8に示すように、ボス状部63Cは、大径ギヤ52の第3長孔52Bに、側面52C側より挿通されている。そして、第3長孔52Bを挿通したボス状部63Cにはジョイント部材43が取り付けられている。
【0076】
ジョイント部材43は、側方に接続部43Bを有し、該接続部43Bに、図8にて仮想線にて示す注湯管70が接続される。注湯管70の他端は、本体部4の第2管6B(図1参照)に接続されている。ジョイント部材43の下面には、下方に向けて湯を注ぐ注湯口43Aが形成されている。このようにして、スライド部材63は、大径ギヤ52の下方を向いた側面52Cの側において、ボス状部63Cと一体に移動するように注湯管70の先端部を保持している。
【0077】
(効果)
上記構成によれば、注湯口43Aは、大径ギヤ52の回転にて円軌道で移動されつつ、小径ギヤ62の回転によるスライド部材36の移動にて円軌道の中心より径方向へ往復移動される。これにより、注湯口43Aを、バスケット2の中心部を中心とした螺旋(渦巻)状に、中心部から外周側へ、外周側から中心部へと移動させることができ、コーヒー粉末100上に湯を螺旋状に注ぐことができる。
【0078】
そして、注湯装置40においても、第1機構を構成する大径ギヤ52と、第2機構を構成する小径ギヤ62とは、独立した第1モータM1,第2モータMで駆動される。これにより、注湯口34Aを円軌道で移動させる速度と、注湯口34Aを径方向に移動させる速度とを、任意に設定することができ、結果として、湯を注ぐ螺旋状の軌道を任意に変えることができる。
【符号の説明】
【0079】
1、1A コーヒーメーカー
2 バスケット
10、40 注湯装置
12、70 注湯管
12A、43A、注湯口
21 第1駆動キヤ
22 リングギヤ
23 内筒部材(筒状部材)
24 外筒部材(筒状部材)
25 先端保持部材
31 第2駆動ギヤ
32 係合部材
51 第1駆動ギヤ(第1駆動平歯車)
52 大径ギヤ(第1平歯車)
52A カム溝
52B 第3長孔
61 第2駆動ギヤ(第2駆動平歯車)
62 小径ギヤ(第2平歯車)
62A 突起
63 スライド部材
63A 第1長孔
63B 第2長孔
63C ボス状部
100 コーヒー粉末
101 フィルタ
M1 第1モータ(第1駆動源)
M2 第2モータ(第1駆動源)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10