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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001769
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】基板作業機及び基板作業方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20231227BHJP
【FI】
H05K13/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100639
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久野 耕資
(72)【発明者】
【氏名】大塚 正裕
(72)【発明者】
【氏名】森山 正良
(72)【発明者】
【氏名】黒田 英矢
【テーマコード(参考)】
5E353
【Fターム(参考)】
5E353EE02
5E353EE29
5E353JJ11
5E353JJ23
5E353JJ45
5E353JJ52
5E353JJ54
5E353KK03
5E353KK11
5E353QQ01
(57)【要約】
【課題】2つのロボットを用いた基板作業時における動作時の待ち時間を減らす。
【解決手段】 基板作業機11は、基板1に作業を行う第1のロボット41Aと第2のロボット41Bを備える。第1のロボット41Aの可動範囲MV1は、第2のロボット41Bの可動範囲MV2の少なくとも一部と重複している。第1のロボット41Aは、第1の特定作業位置TW1と、第1の特定作業位置TW1とは異なる第2の特定作業位置TW2の少なくとも2以上の特定作業位置において、特定の作業を実行可能となっている。第1のロボット41Aが特定の作業を実行する場合において、第2のロボット41Bが所定の作業を実行するときは、第1のロボット41Aは、第2のロボット41Bが所定の作業を実行する所定作業位置SW1に応じて、2以上の特定作業位置TW1、TW2の中からいずれかを選択するように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に作業を行う第1のロボットと、
前記基板に作業を行う第2のロボットと、を備え、
前記第1のロボットの可動範囲は、前記第2のロボットの可動範囲の少なくとも一部と重複しており、
前記第1のロボットは、第1の特定作業位置と、前記第1の特定作業位置とは異なる第2の特定作業位置の少なくとも2以上の特定作業位置において、特定の作業を実行可能となっており、
前記第1のロボットが前記特定の作業を実行する場合において、前記第2のロボットが所定の作業を実行するときは、前記第1のロボットは、前記第2のロボットが前記所定の作業を実行する所定作業位置に応じて、前記2以上の特定作業位置の中からいずれかを選択するように構成されている、基板作業機。
【請求項2】
前記第2のロボットは、前記基板を挟んで前記第1のロボットに対向しており、
前記第1のロボットと前記第2のロボットのそれぞれは、前記基板に部品を装着する作業を実行するロボットであり、
前記特定の作業は、前記基板に装着不能と判断された前記部品を廃棄ボックス内に廃棄する作業であり、
前記所定の作業は、前記基板に前記部品を装着する作業である、請求項1に記載の基板作業機。
【請求項3】
前記第1のロボットは、
前記部品を吸着可能なノズルと、
前記ノズルが昇降可能に取付けられるヘッドと、
前記ヘッドを前記基板に対してX方向及びY方向に移動させるXY移動機構と、を備えており、
前記ノズルは、第1昇降位置と、前記第1昇降位置とは異なる第2昇降位置の少なくとも2以上の昇降位置において、前記ヘッドに対して昇降可能となっており、
前記第1のロボットは、前記第1の特定作業位置を選択するときは、前記第1昇降位置において前記ノズルを昇降させて前記特定の作業を実行する一方で、前記第2の特定作業位置を選択するときは、前記第2昇降位置において前記ノズルを昇降させて前記特定の作業を実行するように構成されており、
前記第1のロボットが前記特定の作業を実行する場合において、前記第2のロボットが前記所定の作業を実行するときは、前記第1のロボットは、前記ヘッドの中心から前記所定作業位置までの距離に基づいて、前記2以上の昇降位置のうちのいずれかを選択するように構成されている、請求項1又は2に記載の基板作業機。
【請求項4】
前記第1のロボットが前記特定の作業を実行する場合において、前記第2のロボットが前記所定の作業を実行するときは、前記第1のロボットは、前記ヘッドの中心から前記所定作業位置までのX方向の距離に基づいて、前記2以上の特定作業位置の中からいずれかを選択するように構成されている、請求項3に記載の基板作業機。
【請求項5】
前記第1のロボットが前記特定の作業を実行する場合において、前記第2のロボットが前記所定の作業を実行するときは、前記第1のロボットは、前記ヘッドの中心から前記所定作業位置までのY方向の距離に基づいて、前記2以上の特定作業位置の中からいずれかを選択するように構成されている、請求項3に記載の基板作業機。
【請求項6】
基板に作業を行う第1のロボットと、
前記基板に作業を行う第2のロボットと、を備え、
前記第1のロボットの可動範囲は、前記第2のロボットの可動範囲の少なくとも一部と重複しており、
前記第1のロボットは、第1の特定作業位置と、前記第1の特定作業位置とは異なる第2の特定作業位置の少なくとも2以上の特定作業位置において、特定の作業を実行可能となっている基板作業機を用いて実行される基板作業方法であって、
前記第1のロボットが前記特定の作業を実行する第1実行工程と、
前記第2のロボットが所定の作業を実行する第2実行工程と、
前記第1実行工程と前記第2実行工程とを同時に実行するときに、前記第2のロボットが前記所定の作業を実行する所定作業位置に応じて、前記第1のロボットが前記2以上の特定作業位置の中からいずれかを選択する選択工程と、を備える、基板作業方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、基板に作業を行う第1のロボット及び第2のロボットを備える基板作業機、及びそれを用いて実行する基板作業方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板に作業を行う基板作業機の一種として、2つのロボットで基板に部品を実装する作業を行う部品実装機が知られている。この種の部品実装機としては、例えば、特許文献1に開示された従来技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-205784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術の基板作業機では、2つのロボットが1枚の共通の基板に対して作業を行うため、一方のロボットの可動範囲が他方のロボットの可動範囲の一部と重複するように設定されている。このため、2つのロボットを同時に駆動してそれぞれに動作をさせようとすると、2つのロボットが相互に干渉することで可動範囲が制限され、一方のロボットが他方のロボットの動作を妨害してしまうことがある。それゆえ、一方のロボットの動作を優先すると、他方のロボットの動作時に待ち時間が発生する場合があるという問題があった。
【0005】
そこで本明細書は、2つのロボットを用いた基板作業時における動作時の待ち時間を減らす技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、基板に作業を行う第1のロボットと、基板に作業を行う第2のロボットと、を備える基板作業機を開示する。第1のロボットの可動範囲は、第2のロボットの可動範囲の少なくとも一部と重複している。第1のロボットは、第1の特定作業位置と、第1の特定作業位置とは異なる第2の特定作業位置の少なくとも2以上の特定作業位置において、特定の作業を実行可能となっている。第1のロボットが特定の作業を実行する場合において、第2のロボットが所定の作業を実行するときは、第1のロボットは、第2のロボットが所定の作業を実行する所定作業位置に応じて、2以上の特定作業位置の中からいずれかを選択するように構成されている。上述した構成によると、2つのロボットを用いた基板作業時における動作時の待ち時間を減らすことができる。
【0007】
また、本明細書に開示する基板作業方法についても同様の作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例の部品実装機を示す概略平面図である。
図2】実施例の部品実装機を示す概略側面図である。
図3】実施例の部品実装機の動作を説明するための概略図である。
図4】実施例の部品実装機の動作を説明するための概略図である。
図5】実施例の部品実装機の動作を説明するための概略図である。
図6】実施例の部品実装機の動作を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例に係る部品実装機11(基板作業機の一例)及びそれを用いて実行される基板作業方法について図面を参照して説明する。
【0010】
図1図2に示すように、部品実装機11は、基板搬送装置21と、第1の部品供給装置31Aと、第2の部品供給装置31Bと、第1のロボット41Aと、第2のロボット41Bと、第1の部品カメラ61Aと、第2の部品カメラ61Bと、第1の廃棄ボックス71Aと、第2の廃棄ボックス71Bと、制御装置81とを備える。以下の説明において、部品実装機11の水平幅方向(図1の左右方向)をX軸方向とし、部品実装機11の水平奥行き方向(図1の上下方向)をY軸方向とし、X軸及びY軸に垂直な鉛直方向(図1の紙面方向)をZ軸方向とする。
【0011】
基板搬送装置21は、ベルトコンベア22などにより構成され、配線回路が形成された基板1を搬送方向(本実施例においてはX軸方向)へと順次搬送する。基板搬送装置21は、部品実装機11の機内における所定の位置に基板1を位置決めする。そして、基板搬送装置21は、部品実装機11により基板1に対する部品実装作業が実行された後に、その基板1を部品実装機11の機外に搬出する。
【0012】
第1の部品供給装置31Aは、部品実装機11の前側(図1の下側、図2の左側)に設けられている。第1の部品供給装置31Aは、複数の供給位置において複数種類の部品2を基板1に供給する。第1の部品供給装置31Aは、複数のパーツフィーダ32を備えている。各々のパーツフィーダ32は、部品2を収容する収容部が所定間隔毎に形成されたテープを送り出すことにより部品2を供給するように構成されている。
【0013】
第2の部品供給装置31Bは、第1の部品供給装置31Bに対して基板1を挟んだ反対側(部品実装機11の後側、図1の上側、図2の右側)に対向して設けられている。第2の部品供給装置31Bも、複数の供給位置において複数種類の部品2を供給する。第2の部品供給装置31Bは、第1の部品供給装置31Aと同様に、部品2を供給するための複数のパーツフィーダ32を備えている。
【0014】
第1のロボット41A及び第2のロボット41Bは、いずれも基板1に部品2を装着する作業(即ち「所定の作業」の一例)を実行するXYロボットであって、X軸方向及びY軸方向に移動可能となるように構成されている。また、第1のロボット41Aと第2のロボット41Bのそれぞれは、基板1に装着不能と判断された部品2を第1の廃棄ボックス71Aまたは第2の廃棄ボックス71B内に廃棄する作業(即ち「特定の作業」の一例)も行う。第1のロボット41Aは、部品実装機11の中央部から前側にわたる領域の上方に配置されている。第2のロボット41Bは、部品実装機11の中央部から後側にわたる領域の上方に配置されている。
【0015】
第1のロボット41Aは、X軸スライダ42Aと、Y軸スライダ43Aとを備えている。Y軸スライダ43Aは、本体枠12の上段部に前後方向(Y軸方向)に沿って設けられた左右一対のY軸ガイドレール44に架け渡され、Y軸モータ(図示省略)の駆動によりY軸ガイドレール44に沿って移動する。X軸スライダ42Aは、Y軸スライダ43Aの下面に左右方向(X軸方向)に沿って設けられたX軸ガイドレール(図示省略)に取り付けられ、X軸モータ(図示省略)の駆動によりX軸ガイドレールに沿って移動する。第1のロボット41Aは、X軸スライダ42AとY軸スライダ43Aとの協働により、XY平面上の任意の位置に実装ヘッド51Aを移動させることができるように構成されている。すなわち、第1のロボット41Aは、実装ヘッド51Aを基板1に対してX軸方向及びY軸方向に移動させるXY移動機構を備えている。
【0016】
実装ヘッド51Aは、X軸スライダ42Aに対して取り付けられている。実装ヘッド51Aは、ヘッド本体52と、吸着ノズル53と、マークカメラ54とを備えている。ヘッド本体52は、所定角度間隔で配置された複数のノズルホルダ(図示省略)を有している。吸着ノズル53は、部品2を先端に吸着可能であって、各ノズルホルダに対して交換可能に取り付けられている。マークカメラ54は、ヘッド本体52の近傍に配置されており、基板1に付された基準マークなどを上方から撮像する。マークカメラ54としては、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を有するデジタル式の撮像装置が用いられる。また、実装ヘッド51Aは、ヘッド本体52をその軸線回りに回転させるR軸モータと、ノズルホルダをその軸線回りに回転させるQ軸モータと(いずれも図示省略)、ノズルホルダが昇降可能に取り付けられた昇降装置55とを備えている。R軸モータは、ヘッド本体52を回転させることで、複数のノズルホルダをZ軸と平行なR軸回り(すなわち、ヘッド本体52の軸線回り)に回転(公転)させる。Q軸モータは、複数のノズルホルダをZ軸と平行なQ軸回り(すなわち、ノズルホルダの軸線回り)に回転(自転)させる。また、実装ヘッド51Aは、吸着ノズル53に負圧を供給する負圧供給装置と、ノズルホルダに正圧を供給する正圧供給装置とを備えている。なお、ノズルホルダがR軸回りに公転することで、ノズルホルダに取付けられた吸着ノズル53は、第1昇降位置SK1と、第1昇降位置SK1とは異なる第2昇降位置SK2の少なくとも2以上の昇降位置に移動することができる。吸着ノズル53は、第1、第2昇降位置SK1,SK2において、実装ヘッド51Aに対して昇降可能となっている。本実施例では、昇降位置は第1昇降位置SK1と第2昇降位置SK2の2つであり、これらは互いに180°の回転角度間隔となる位置に配置されている。
【0017】
第2のロボット41Bは、X軸スライダ42Bと、Y軸スライダ43Bとを備えている。Y軸スライダ43Bは、上記のY軸ガイドレール44に架け渡され、Y軸モータ(図示省略)の駆動によりY軸ガイドレール44に沿って移動する。X軸スライダ42Bは、上記と同様に、Y軸スライダ43Bに設けられたX軸ガイドレールに取り付けられ、X軸モータ(図示省略)の駆動によりX軸ガイドレールに沿って移動する。第2のロボット41Bは、X軸スライダ42BとY軸スライダ43Bとの協働により、XY平面上の任意の位置に実装ヘッド51Bを移動させることができるように構成されている。すなわち、第2のロボット41Bは、実装ヘッド51Bを基板1に対してX軸方向及びY軸方向に移動させるXY移動機構を備えている。
【0018】
実装ヘッド51Bは、X軸スライダ42Bに対して取り付けられている。実装ヘッド51Bは、上述した実装ヘッド51Aと同様に、ヘッド本体52と、吸着ノズル53と、マークカメラ54とを備えている。また、実装ヘッド51Bは、上述した実装ヘッド51Aと同様に、R軸モータと、Q軸モータと、昇降装置55と、負圧供給装置と、正圧供給装置とを備えている。
【0019】
図1に示すように、第1のロボット41Aが有する実装ヘッド51Aは、可動範囲MV1の内側で移動可能となるように構成されている。また、第2のロボット41Bが有する実装ヘッド51Bは、可動範囲MV2の内側で移動可能となるように構成されている。実装ヘッド51Aの可動範囲MV1は、実装ヘッド51Bの可動範囲MV2の少なくとも一部と重複している。実装ヘッド51Aの可動範囲MV1と、実装ヘッド51Bの可動範囲MV2とが重複することで、実装ヘッド51A、51B同士の干渉が発生し得る領域のことを、干渉領域と呼ぶものとする。
【0020】
第1の部品カメラ61Aは、第1の部品供給装置31Aと基板搬送装置21との間であって、実装ヘッド51Aの移動経路の下方位置に設けられている。第1の部品カメラ61Aは、実装ヘッド51Aによって吸着された部品2を下方から撮像するパーツカメラである。第2の部品カメラ61Bは、第2の部品供給装置31Bと基板搬送装置21との間であって、実装ヘッド51Bの移動経路の下方位置に設けられている。第2の部品カメラ61Bは、実装ヘッド51Bによって吸着された部品2を下方から撮像するパーツカメラである。第1の部品カメラ61A及び第2の部品カメラ61Bとしては、例えば、CCDやCMOS等の撮像素子を有するデジタル式の撮像装置が用いられる。
【0021】
第1の廃棄ボックス71Aは、基板1に装着不能と判断された部品2を廃棄するための容器であって、矩形状の開口部を上面側に有している。第1の廃棄ボックス71Aは、第1の部品供給装置31Aと基板搬送装置21との間であって、第1の部品カメラ61Aの近傍の位置に設けられている。第1の廃棄ボックス71Aには、実装ヘッド51Aによって吸着された部品2であって基板1に装着不能と判断された部品2が廃棄される。第2の廃棄ボックス71Bも、第1の廃棄ボックス71Aと同様の構成を有しており、第2の部品供給装置31Bと基板搬送装置21との間であって、第2の部品カメラ61Bの近傍の位置に設けられている。第2の廃棄ボックス71Bには、実装ヘッド51Bによって吸着された部品2であって基板1に装着不能と判断された部品2が廃棄される。
【0022】
制御装置81は、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されている。制御装置81は、CPUのほかに、ROM、HDD、RAM、入出力インタフェースなどを備えている。これらはバスを介して相互に通信可能に接続されている。制御装置81には、第1の部品カメラ61A、第2の部品カメラ61B、マークカメラ54からの画像信号、X軸スライダ43A、43Bの位置検出信号、Y軸スライダ42A、42Bの位置検出信号などが入出力インタフェースを介して入力される。一方、制御装置81からは、基板搬送装置21への制御信号、部品供給装置31A、31Bへの制御信号、第1のロボット41Aや第2のロボット41Bへの駆動信号、実装ヘッド51A、51Bへの駆動信号などが入出力インタフェースを介して出力される。
【0023】
次に、部品実装機11により基板1を生産する作業を行う方法について説明する。
【0024】
第1のロボット41Aは、通常、前側の部品供給装置31Aから供給された部品2を実装ヘッド51Aの吸着ノズル53で吸着して、基板搬送装置21で搬送されてきた基板1に実装する作業(所定の作業の一例)を実行する。第1のロボット41Aは、実装ヘッド51Aの吸着ノズル53で吸着した部品2が基板1に装着不能と判断された場合には、第1の廃棄ボックス71Aにその部品2を廃棄する作業(特定の作業の一例)を実行する。同様に第2のロボット41Bは、通常、後側の部品供給装置31Bから供給された部品2を実装ヘッド51Bの吸着ノズル53で吸着して、同じ基板1に実装する作業(所定の作業の一例)を実行する。また、第2のロボット41Bは、実装ヘッド51Bの吸着ノズル53で吸着した部品2が基板1に装着不能と判断された場合には、第2の廃棄ボックス71Bにその部品2を廃棄する作業(特定の作業の一例)を実行する。以下、2つのロボット41A、41Bを同時に駆動することで、第1のロボット41Aが部品廃棄作業を実行し、第2のロボット41Bが基板実装作業を実行する場合について述べる。説明の便宜上、第1のロボット41Aを自ロボット、第2のロボット41Bを相手ロボットと呼ぶことがある。
【0025】
ここで、2つのロボット41A、41Bの可動範囲MV1、MV2の一部は重複している。そのため、第1のロボット41Aで部品廃棄作業を行いながら第2のロボット41Bで部品装着作業を行おうとすると、2つのロボット41A、41Bの間で相互干渉が生じる場合がある。つまり、自ロボットが相手ロボットの動作を邪魔し、相手ロボットの可動範囲が制限されてしまう。それゆえ、このような相互干渉を回避するためには、第2のロボット41Bを一時待機させる必要があり、その結果として部品装着作業を行う第2のロボット41Bに待ち時間が発生する場合がある。例えば、部品実装作業はプログラムに従って実行されるため、2つのロボット41A、41Bで部品実装作業を行ったとしても各々の動作は予測可能である。それゆえ、予め相互干渉を回避するように実装プログラムを作成することは比較的容易である。これに対し、部品廃棄作業は実装プログラムに従って実行されるものではなく、作業時の動作が予測不能である。このため、2つのロボット41A、41Bのうち、一方で部品実装作業を行い、他方で部品廃棄作業を行うような場合には、予め相互干渉を回避するようにプログラムすることはできない。
【0026】
そこで本実施例では、以下の手法により、X軸におけるオフセット方向の決定、Y軸におけるオフセット方向の決定、廃棄に使用するZ軸の決定を行うことで、相互干渉による弊害を軽減している。具体的には、自ロボットの部品廃棄位置が、相手ロボットの所定作業位置(部品実装位置SW1、SW2)から遠くなるように、上記の決定を行う。これにより、相手ロボットが自身の可動範囲内において移動できる領域を増やしている。このことを図3図4を用いて詳細に説明する。
【0027】
図3図4は、実装ヘッド51Aの可動範囲MV1と実装ヘッド51Bの可動範囲MV2とが重複する干渉領域において、第2のロボット41Bが部品実装作業を実行するときの状態を示している。具体的にいうと、第2のロボット41Bの部品実装位置SW1、SW2は、いずれも第1のロボット41Aから近い位置にある基板外周部1aに設定されている。ここで、第1の廃棄ボックス71Aの中心C1を通ってY軸方向に延びる直線を基準線LC1とする。図3では部品実装位置SW1が基準線LC1よりも左側に設定されており、図4では部品実装位置SW2が基準線L1よりも右側に設定されている。
【0028】
本実施例では、第1のロボット41Aは、第1の特定作業位置TW1と、第1の特定作業位置TW1とは異なる第2の特定作業位置TW2の少なくとも2以上の特定作業位置TW1、TW2において、特定の作業である部品廃棄作業を実行可能となっている。制御装置81は、部品実装及び部品廃棄のための所定のプログラムに従い、第1のロボット41Aが特定の作業である基板廃棄作業を実行する工程と、第2のロボット41Bが所定の作業である部品実装作業を実行する工程と、を同時に実行させる。そしてこの場合には、制御装置81は、第2のロボット41Bが部品実装位置SW1、SW2に応じて、第1のロボット41Aが2つの特定作業位置TW1、TW2の中からいずれかを選択する選択工程を実行する。
【0029】
図3に示すように、第2のロボット41Bが部品実装位置SW1にて部品実装を実行するときには、制御装置81は、特定作業位置TW1を選択する。そしてこのとき、第1のロボット41Aは、第1昇降位置SK1において吸着ノズル53を昇降させて部品廃棄作業を実行する。すなわち、第1のロボット41Aは、実装ヘッド51Aの中心から部品実装位置SW1までの距離に基づいて、2以上の昇降位置SK1,SK2のうちのいずれかを選択する。具体的にいうと、実装ヘッド51Aの中心から部品実装位置SW1までの距離が長くなるように、第1のロボット41Aが第1昇降位置SK1(図3では左側に位置する昇降位置)を選択することで、廃棄に使用するZ軸を決定する。
【0030】
また、第1のロボット41Aは、吸着ノズル53の中心から部品実装位置SW1までのX軸方向の距離に基づき、その距離が最も長くなるように、2以上の特定作業位置の中からいずれかを選択する。具体的には、X軸に沿って図3の右方向に第1のロボット41Aの実装ヘッド51Aをオフセットさせる。また、第1のロボット41Aは、吸着ノズル53の中心から部品実装位置SW1までのY軸方向の距離に基づき、その距離が最も長くなるように、2以上の特定作業位置の中からいずれかを選択する。具体的には、Y軸に沿って図3の下方向に第1のロボット41Aの実装ヘッド51Aをオフセットさせる。さらにこの場合には、部品2を保持する吸着ノズル53を自転させて、部品2の長辺2aがX軸方向と平行になるようにしてもよい(図5の実線を参照)。このようにすると、部品2の短辺2bがX軸方向と平行であるときよりも(図5の破線を参照)、Y軸に沿ったオフセット量を増やすことができる。
【0031】
一方、図4に示すように、第2のロボット41Bが部品実装位置SW2にて部品実装を実行するときには、制御装置81は、特定作業位置TW2を選択する。そしてこのとき、第1のロボット41Aは、第1昇降位置SK2において吸着ノズル53を昇降させて部品廃棄作業を実行する。第1のロボット41Aは、実装ヘッド51Aの中心から部品実装位置SW2までの距離に基づいて、2以上の昇降位置のうちのいずれかを選択する。具体的にいうと、実装ヘッド51Aの中心から部品実装位置SW2までの距離が長くなるように、第1のロボット41Aが第1昇降位置SK2(図3では右側に位置する昇降位置)を選択し、廃棄に使用するZ軸を決定する。
【0032】
また、第1のロボット41Aは、吸着ノズル53の中心から部品実装位置SW2までのX軸方向の距離に基づき、その距離が最も長くなるように、2以上の特定作業位置の中からいずれかを選択する。具体的には、X軸に沿って図3の左方向に第1のロボット41Aの実装ヘッド51Aをオフセットさせる。また、第1のロボット41Aは、吸着ノズル53の中心から部品実装位置SW1までのY軸方向の距離に基づき、その距離が最も長くなるように、2以上の特定作業位置の中からいずれかを選択する。具体的には、Y軸に沿って図3の下方向に第1のロボット41Aの実装ヘッド51Aをオフセットさせる。さらにこの場合には、上記と同様に、吸着ノズル53を自転させて、部品2の長辺2aがX軸方向と平行となるようにしてもよい。
【0033】
なお、上記の例では、第1のロボット41Aが部品廃棄作業を行う一方で、第2のロボット41Bが部品実装作業を行う場合を説明したが、上記とは逆に、第2のロボット41Bが部品廃棄作業を行う一方で、第1のロボット41Aが部品実装作業を行う場合についても、同様に構成される。すなわち、第2のロボット41Bは、第1のロボット41Aが部品実装作業を行う部品実装位置に応じて、部品廃棄作業を行う作業位置を選択する。これによって、第2のロボット41Bの部品廃棄作業によって、第1のロボット41Aの部品実装作業が妨害されることを抑制することができる。
【0034】
また、部品2をオフセットする際に部品2を廃棄ボックス71Aの側壁72に近づけすぎると、廃棄したつもりの部品2が廃棄ボックス71Aの外側に落ちてしまうおそれがある。このような事態を回避するために、次に示す方法により、部品2を廃棄するときの廃棄ボックス71Aの側壁72から部品2までの適当な距離(マージンMx、My)を設定してもよい。図6に示すように、例えば、部品2の長辺2aの長さをL1、短辺2bの長さをL1とする。また、X軸に沿ったオフセット量をOFx、Y軸に沿ったオフセット量をOFyとする。X軸方向のマージンMxは、「長辺2aの長さL1の半分の長さと、あらかじめ定められたX軸オフセット量OFxとの和」、及び「長辺2aの長さL1と、あらかじめ定められた係数kとの積」のうち、大きいほうに設定される。また、Y軸方向のマージンMyは、「短辺2bの長さL2の半分の長さと、あらかじめ定められたY軸オフセット量OFyとの和」、及び「「短辺2bの長さL2と、あらかじめ定められた係数kとの積」のうち、大きいほうに設定される。X軸オフセット量OFx、Y軸オフセット量OFy、係数kは、いずれも部品2のシェイプデータ(形状データ)で指定される。係数kは、部品サイズに基づいて指定され、例えば0.25とされる。このような設定方法によると、X軸及びY軸のそれぞれについて適当なマージンMx、Myが設定されるため、部品2を廃棄ボックス71Aの外に落とすリスクが小さくなる。
【0035】
以上説明したように、本実施例の部品実装機11では、第1のロボット41Aは、第1の特定作業位置TW1と、第2の特定作業位置TW2の2つの特定作業位置TW1、TW2において、特定の作業である部品廃棄作業を実行可能となっている。第1のロボット41Aが部品廃棄作業を実行する場合において、第2のロボット41Bが所定の作業である部品2の実装作業を実行するときは、第1のロボット41Aは、第2のロボット41Bが部品2を実装する実装位置SW1に応じて、2つの特定作業位置TW1、TW2の中からいずれかを選択するように構成されている。従って、本実施例によれば、第1のロボット41Aが第2のロボット41Bの動作を邪魔しないように特定作業位置を選択することで、第2のロボット41Bの待ち時間を減らすことができる。同様に、第2のロボット41Bが第1のロボット41Aの動作を邪魔しないように特定作業位置を選択することで、第1のロボット41Aの待ち時間を減らすことができる。よって、部品実装機11のスループットの低下を少なくすることができ、部品2が実装された基板1を効率よく生産することができる。
【0036】
また、本実施例の部品実装機11では、部品廃棄作業を行うときの吸着ノズル53を昇降させる位置SK1,SK2を選択することで、部品実装作業を行うロボット41A又は41Bの動作の妨害することを回避することができる。すなわち、部品廃棄に使用するZ軸として適切なものを選択することで、部品実装作業を行う相手ロボットが移動可能な領域が増える結果、待ち時間を少なくすることができる。同様に、部品廃棄作業を行うときの吸着ノズル53のX軸方向の位置及びY軸方向の位置が、部品実装作業を行うロボット41A又は41Bの部品実装位置からできるだけ離れた位置となるように、部品廃棄位置をX軸方向及びY軸方向にオフセットすることで、部品実装作業を行う相手ロボット41A又は41Bが移動可能な領域を増加させることができる。これによって、部品実装作業を行う相手ロボット41A又は41Bの待ち時間を少なくすることができる。
【0037】
以上、本明細書に開示の技術の一実施例について詳細に説明したが、本明細書に開示の技術は、上記実施例に限定されるものではない。上記の実施例では、第1のロボット41Aと第2のロボット41Bとが対向して配置されていたが、この構成に限定されるものではない。例えば、他の実施例では、第1のロボット41Aと第2のロボット41Bとが対向せず並んで配置されていてもよい。
【0038】
また、上記の実施例では、吸着ノズル53は、第1昇降位置SK1と第2昇降位置SK2という2つの位置において実装ヘッド51Aに対して昇降可能となっていたが、この構成に限定されるものではない。例えば、他の実施例では、3つ以上の位置において実装ヘッド51Aに対して吸着ノズルが昇降可能となっていてもよい。
【0039】
上記の実施例では、部品廃棄作業を特定の作業とし、部品実装作業を所定の作業としたが、この構成に限定されるものではない。例えば、他の実施例では、一方のロボットによる粘性流体(例えば、フラックス)の部品への転写作業や吸着ノズルの清掃・洗浄作業などを特定の作業とし、他方のロボットによる部品実装作業を所定の作業としてもよい。あるいは、一方のロボットによる部品廃棄作業を特定の作業とし、他方のロボットによる部品への粘性流体の塗布作業や部品検査作業などを所定の作業としてもよい。
【0040】
上記の実施例では、第1の廃棄ボックス71Aを第1の部品カメラ61Aの近傍位置に設け、第2の廃棄ボックス71Bを第2の部品カメラ61Bの近傍位置に設けたが、この構成に限定されるものではない。例えば、他の実施例では、第1の廃棄ボックス71A及び第2の廃棄ボックス71Bを図1に示す位置とは異なる位置に設けてもよい。また、廃棄ボックス71A及び第2の廃棄ボックス71Bを第1のロボット41A、第2のロボット41Bのそれぞれに設けるのではなく、共通のものとしてもよい。さらに、廃棄ボックス71A及び第2の廃棄ボックス71Bの開口部の形状は矩形状でなくてもよく、他の形状であってもよい。
【0041】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0042】
1 :基板
2 :部品
11 :基板作業機としての部品実装機
41A :第1のロボット
41B :第2のロボット
42A、42B :XY移動機構を構成するX軸スライダ
43A、43B :XY移動機構を構成するY軸スライダ
51A、51B :ヘッドとしての実装ヘッド
53 :ノズルとしての吸着ノズル
71A、71B :廃棄ボックス
MV1、MV2 :可動範囲
SW1、SW2 :所定作業位置としての部品実装位置
TW1 :第1の特定作業位置としての第1の部品廃棄位置
TW2 :第2の特定作業位置としての第2の部品廃棄位置
SK1 :第1昇降位置
SK2 :第2昇降位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6