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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176901
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】バッテリパック
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/289 20210101AFI20241212BHJP
   H01M 50/211 20210101ALI20241212BHJP
   H01M 50/271 20210101ALI20241212BHJP
   H01M 50/291 20210101ALI20241212BHJP
【FI】
H01M50/289 101
H01M50/211
H01M50/271 B
H01M50/291
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095763
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼井 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】中山 紳哉
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 聡志
【テーマコード(参考)】
5H040
【Fターム(参考)】
5H040AA02
5H040AA37
5H040AT04
5H040AT06
5H040AY04
5H040AY05
5H040AY08
5H040CC34
5H040NN01
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】バッテリモジュールの重量増加を抑制しつつ、搭載効率の向上を図ることが可能なバッテリモジュールにおいて、バッテリセルが熱暴走した際の熱連鎖を抑制することが可能なバッテリパックを提供すること。
【解決手段】バッテリパックは、ケースと、ケースに配置されたバッテリモジュールと、バッテリモジュールの上方を覆うカバーと、有する。バッテリモジュールは、複数の二次電池を積層した積層体と、積層体の第1の面と対向し、積層体の積層方向に延設されたサイド拘束部材と、を備える。第1の面は、積層体の下面に対して鉛直方向の面であり、かつ、積層方向に沿った面であり、サイド拘束部材の上端とカバーとの間の第1の距離は、積層体の上面とカバーとの間の第2の距離に比べて短い。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、前記ケースに配置されたバッテリモジュールと、前記バッテリモジュールの上方を覆うカバーと、有するバッテリパックであって、
前記バッテリモジュールは、
複数の二次電池を積層した積層体と、
前記積層体の第1の面と対向し、前記積層体の積層方向に延設されたサイド拘束部材と、を備え、
前記第1の面は、前記積層体の下面に対して鉛直方向の面であり、かつ、前記積層方向に沿った面であり、
前記サイド拘束部材の上端と前記カバーとの間の第1の距離は、前記積層体の上面と前記カバーとの間の第2の距離に比べて短いことを特徴とするバッテリパック。
【請求項2】
前記第1の距離は、前記サイド拘束部材の上端と前記カバーとが当接した状態での距離、または、前記鉛直方向において前記上端と前記カバーとが離間した状態での距離であることを特徴とする請求項1に記載のバッテリパック。
【請求項3】
前記第1の面と前記サイド拘束部材とは、接合部材により接合されていることを特徴とする請求項1に記載のバッテリパック。
【請求項4】
前記バッテリモジュールは、
前記積層体の前記第1の面に対して交差する交差方向に複数配置され、
前記サイド拘束部材は、
前記ケース内に隣接して配置された他のバッテリモジュールの他のサイド拘束部材と、前記交差方向において対向した状態で配置されることを特徴とする請求項1に記載のバッテリパック。
【請求項5】
前記カバーは、前記交差方向に沿って離間した位置で、前記バッテリモジュールに向かって下方に延設された複数の突出部を有し、
前記サイド拘束部材、及び前記他のサイド拘束部材は、前記複数の突出部の間に位置することを特徴とする請求項4に記載のバッテリパック。
【請求項6】
前記複数の突出部の下端は、前記サイド拘束部材、及び前記他のサイド拘束部材の上端に比べて、前記バッテリモジュールに近い位置になるように延設されていることを特徴とする請求項5に記載のバッテリパック。
【請求項7】
前記複数の突出部の間に位置した状態で、前記サイド拘束部材、及び前記他のサイド拘束部材は、前記交差方向において前記複数の突出部と離間した位置に配置されていることを特徴とする請求項5または6に記載のバッテリパック。
【請求項8】
前記複数の突出部の間に位置した状態で、前記サイド拘束部材、及び前記他のサイド拘束部材は、前記交差方向において前記複数の突出部と当接した位置に配置されていることを特徴とする請求項5または6に記載のバッテリパック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバッテリパックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する二次電池に関する研究開発が行われている。
【0003】
特許文献1には、バッテリモジュールの構成として、複数のバッテリセル(二次電池)を積層した積層体、一対のバインドバー、及び、一対のエンドプレートが開示されている。一対のバインドバーは、複数のバッテリセルの積層方向を拘束する部材であり、一対のエンドプレートは、バッテリセルの幅方向(積層方向に対して交差する方向)を拘束する部材である。一対のバインドバー及び一対のエンドプレートは、主に複数のバッテリセルの積層体の保持や保護を目的とした構成部品である。
【0004】
複数のバッテリモジュールを外力から保護するための筐体(ケース)に搭載(配置)することでバッテリパックが形成される。バッテリパックの筐体には、強度剛性や耐外力性能の確保、車両との結合を目的として、クロスメンバーやサイドフレーム等の構造部材が設けられている。
【0005】
クロスメンバーは、筐体内において、複数のバッテリセルの積層方向に沿って延設された構造部材であり、複数のバッテリセルを積層方向に拘束するバインドバーと同様の方向に延設された構造部材である。また、サイドフレームは、筐体内における複数のバッテリセルの配置方向(積層方向に対して交差する方向)に延設された構造部材であり、バッテリセルの幅方向を拘束するエンドプレートと同様の方向に延設された構造部材である。
【0006】
クロスメンバー及びサイドフレームは、バッテリパックの筐体における車両前後方向と車両左右方向に対する強度剛性や耐外力性能に寄与しており、クロスメンバーやサイドフレームにより、複数のバッテリモジュールが筐体内において保持され、保護される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2019/167689号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、筐体に設けられた構造部材(クロスメンバー、サイドフレーム)と、バッテリモジュールを構成する構造部材(バインドバー、エンドプレート)と、は独立に設けられており、コスト、重量、バッテリモジュールを筐体に搭載するためのスペース確保の観点で非効率的ともなり得る。
【0009】
バインドバー及びエンドプレートによってバッテリモジュールを固定し、クロスメンバー及びサイドフレームによって、複数のバッテリモジュールを保持し、強度剛性や耐外力性能を確保させようとすると、バッテリモジュールの重量は増加するため、重量増加を抑制することが求められる。
【0010】
また、バッテリモジュールを構成する構造部材(バインドバー、エンドプレート)や筐体(以下、ケースともいう)に設けられた構造部材(クロスメンバー、サイドフレーム)は、ケース内において、バッテリセルの搭載空間を部分的に占有するため、二次電池を含むバッテリモジュールの搭載効率の向上が求められる。また、複数のバッテリモジュールを含むバッテリパックにおいては、バッテリセルが熱暴走した際の熱連鎖を抑制することが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願は、上記の課題を鑑み、バッテリモジュールの重量増加を抑制しつつ、搭載効率の向上を図ることが可能なバッテリモジュールにおいて、バッテリセルが熱暴走した際の熱連鎖を抑制することが可能なバッテリパックを提供する。
【0012】
本発明の一態様のバッテリパックは、ケースと、前記ケースに配置されたバッテリモジュールと、前記バッテリモジュールの上方を覆うカバーと、有するバッテリパックであって、
前記バッテリモジュールは、
複数の二次電池を積層した積層体と、
前記積層体の第1の面と対向し、前記積層体の積層方向に延設されたサイド拘束部材と、を備え、
前記第1の面は、前記積層体の下面に対して鉛直方向の面であり、かつ、前記積層方向に沿った面であり、
前記サイド拘束部材の上端と前記カバーとの間の第1の距離は、前記積層体の上面と前記カバーとの間の第2の距離に比べて短いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、バッテリモジュールの重量増加を抑制しつつ、搭載効率の向上を図ることが可能なバッテリモジュールにおいて、バッテリセルが熱暴走した際の熱連鎖を抑制することが可能なバッテリパックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係るバッテリモジュール、及びバッテリモジュール群の構成を概略的に説明する図。
図2】実施形態に係るバッテリセルとサイド拘束部材との接合構造を説明する図。
図3】実施形態に係るバッテリモジュール群をケースに配置する構造を説明する図。
図4】実施形態に係るエンド拘束部材を連結する連結構造例1を示す図。
図5】実施形態に係るエンド拘束部材を連結する連結構造例2を示す図。
図6】実施形態に係るエンド拘束部材を連結する連結構造例3を示す図。
図7】実施形態に係るバッテリセルの断面構造を例示する図。
図8】実施形態2に係るバッテリパックの熱連鎖防止構造を説明する図。
図9】実施形態3に係るバッテリパックの熱連鎖防止構造を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0016】
[実施形態]
<バッテリモジュール110、バッテリモジュール群115>
図1は、実施形態に係るバッテリモジュール110、及びバッテリモジュール群115の構成を概略的に説明する図である。
【0017】
図1において、1Aに示すように、バッテリセル100(二次電池)は、X方向(積層方向)に複数配置され、複数のバッテリセル100を積層した積層体111が構成される。バッテリセル100がX方向に配置されるバッテリセル間には、不図示の断熱材が配置されもよい。
【0018】
図1において、積層体111のX方向(積層方向)を第1の方向とする。また、複数のバッテリセル100の面(XZ面:第1の面101)、すなわち、バッテリモジュール110(積層体111)の面(XZ面:第1の面101)に対して交差する方向(Y方向)を第2の方向(交差方向)とする。第1の方向及び第2の方向に交差する方向を第3の方向(鉛直方向)とする。
【0019】
また、X方向及びZ方向における、バッテリセル100の面(XZ面)、及び、バッテリモジュール110(積層体111)の面(XZ面)を第1の面101とし、Y方向及びZ方向における、バッテリセル100の面(YZ面)、及び、バッテリモジュール110(積層体111)の面(YZ面)を第2の面102とする。
【0020】
第1の面101は、バッテリモジュール110(積層体111)の下面(XY面)に対して鉛直方向の面であり、かつ、積層方向に沿った面である。また、第2の面102は、バッテリモジュール110(積層体111)の下面(XY面)に対して鉛直方向の面であり、かつ、積層方向に対して交差する面である。ここで、積層体111の下面(XY面)は、積層体111がケース400(バッテリケース:図3)に配置される面である。
【0021】
バッテリモジュール110(積層体111)の面(XZ面)は、複数のバッテリセル100の面(XZ面:第1の面101)により構成される面である。また、バッテリモジュール110(積層体111)の面(YZ面)は、積層体111を構成する複数のバッテリセル100のうち、端部に配置されているバッテリセル100のY方向及びZ方向における面(YZ面:第2の面102)である。
【0022】
図1の1Bに示すように、サイド拘束部材200(200a、200b)は、バッテリモジュール110(積層体111)の第1の面101(XZ面)と対向し、積層体111のX方向(積層方向)に延設されている。
【0023】
積層体111を構成する各バッテリセル100の第1の面101(XZ面)とサイド拘束部材200(200a、200b)とは、接合部材により接合されている。
【0024】
図2は、バッテリセル100とサイド拘束部材200との接合構造を説明する図である。図2は、バッテリセル100をYZ面(第2の面102)から見た図であり、接合部材701(例えば、接着材や両面テープ)とバッテリセル100との間に絶縁性のフィルム702が設けられている。絶縁性のフィルム702は、接合部材701との界面の他、バッテリセル100の下面及び上面の一部を覆うように設けられている。絶縁性のフィルム702の種類は特に限定されるものではなく、樹脂材料であってもよい。樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタラート(polyethylene terephthalate:PET)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene: PTFE)などを含んでもよい。
【0025】
バッテリセル100とケース400(バッテリーケース)との隙間はフィラー703で埋められる。フィラー703の種類は特に限定されるものではなく、樹脂材料であってもよい。絶縁性のフィルム702及びフィラー703は、バッテリセル100の熱暴走により高温に晒される場合でも対応できるように、難燃性の部材を用いてもよい。
【0026】
接合部材701として、接着材を用いる場合には、第1の面101(XZ面)とサイド拘束部材200との間に接着剤を充填して接合すればよい。接着材の種類は特に限定されるものではなく、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコン系樹脂、エポキシ系樹脂、およびオレフィン系樹脂等が例示される。
【0027】
YZ面(第2の面102)の側面視において、バッテリセル100の紙面左側に接合されるサイド拘束部材200をサイド拘束部材200(200a)と表記する。また、バッテリセル100の紙面右側に接合されるサイド拘束部材200をサイド拘束部材200(200b)と表記する。「サイド拘束部材200」または、「サイド拘束部材200(200a、200b)」という表記は、サイド拘束部材200(200a)及びサイド拘束部材200(200b)の総称を示すものである。
【0028】
また、バッテリセル100の紙面左側の第1の面101(XZ面)を第1の面101(101a)と表記し、バッテリセル100の紙面左側の第1の面101(XZ面)を第1の面101(101b)と表記する。「第1の面101」または、「第1の面101(XZ面)」という表記は、第1の面101(101a及び第1の面101(101b)の総称を示すものである。
【0029】
バッテリセル100の第1の面101(101a)及び第1の面101(101b)は同様の接合構造を有する。
【0030】
図2に示すバッテリセル100において、破線で示すバッテリセル100は、実線で示すバッテリセル100に対して、Y方向に沿って隣接して配置される他のバッテリセル100を示している。破線で示すサイド拘束部材200(200b)は、サイド拘束部材200(200a)と同様の接合構造によりバッテリセル100に接合される。
【0031】
図2では、サイド拘束部材200(200a)は、Y方向一端側の第1の面101(101a)と対向しており、サイド拘束部材200(200b)は、Y方向他端側の第1の面101(101b)と対向している。
【0032】
サイド拘束部材200(200a、200b)は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金や、銅、鉄、鉄合金やステンレス鋼等の金属で構成される板状部材である。サイド拘束部材200(200a、200b)の形状は、特に限定されるものではなく、バッテリモジュール110(積層体111)を構成する各バッテリセル100の第1の面101(101a、101b:XZ面)を保持し、拘束することができればよい。
【0033】
図1の1B及び図2に示すように、YZ面(第2の面102)の側面視において、一対のサイド拘束部材200(200a、200b)は、積層体111(バッテリセル100)のYZ面(第2の面102)のY方向一端側の第1の面101(101a)とY方向他端側の第1の面101(101b)に対向し、積層体111(バッテリセル100)の積層方向に延設されている。
【0034】
サイド拘束部材200(200a、200b)は、バッテリモジュール110(積層体111)の積層方向(X方向:第1の方向)を保持し、拘束するとともに、バッテリモジュール110(積層体111)に強度剛性を与え、バッテリモジュール110を保護する部材として機能し得る。
【0035】
図1の1Cに示すように、バッテリモジュール110(積層体111)は、バッテリモジュール110(積層体111)が配置されるケース内(図3の400)において、積層体111の下面に対して鉛直方向であり、かつ、積層方向に対して交差する第2の方向(Y方向)に複数配置される。
【0036】
サイド拘束部材200(200a、200b)は、ケース内(図3の400)に隣接して配置された他のバッテリモジュール110のサイド拘束部材200と、第2の方向において対向する。
【0037】
例えば、複数のバッテリモジュール110のうち、一のバッテリモジュール110のサイド拘束部材200(例えば、図2の実線)と、第2の方向(Y方向)に沿って隣接して配置されている他のバッテリモジュール110のサイド拘束部材200(例えば、図2の破線)とは、第2の方向において対向した状態でケース400に配置される。
【0038】
図1の1Dに示すように、バッテリモジュール110は、バッテリモジュール110(積層体111)のYZ面(第2の面102)を保持し、サイド拘束部材200と連結されたエンド拘束部材300を更に備える。
【0039】
図1の1Dにおいて、XZ面(第1の面101)の側面視において、バッテリモジュール110の紙面右側のエンド拘束部材300をエンド拘束部材300(300a)と表記する。また、バッテリモジュール110の紙面左側のエンド拘束部材300をエンド拘束部材300(300b)と表記する。「エンド拘束部材300」または、「エンド拘束部材300(300a、300b)」という表記は、エンド拘束部材300(300a)及びエンド拘束部材300(300b)の総称を示すものである。
【0040】
また、各バッテリモジュール110のエンド拘束部材300は、第2の方向(Y方向)に沿って、隣接して配置される他のバッテリモジュール110のエンド拘束部材300と連結され、長尺のエンド拘束部材310が構成される。バッテリモジュール110の紙面右側における長尺のエンド拘束部材310を長尺のエンド拘束部材310(310a)と表記する。また、バッテリモジュール110の紙面左側における長尺のエンド拘束部材310を長尺のエンド拘束部材310(310b)と表記する。「長尺のエンド拘束部材310」または、「長尺のエンド拘束部材310(310a、310b)」という表記は、長尺のエンド拘束部材310(310a)及び長尺のエンド拘束部材310(310b)の総称を示すものである。
【0041】
また、XZ面(第1の面101)の側面視において、バッテリモジュール110のX方向一端側の第2の面102(YZ面)を第2の面102(102a)と表記し、X方向他端側の第2の面102(YZ面)を第2の面102(102b)と表記する。「第2の面102(YZ面)」または、「第2の面102(102a、102b)」という表記は、第2の面102(102a)及び第2の面102(102b)の総称を示すものである。
【0042】
エンド拘束部材300は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金や、銅、鉄、鉄合金やステンレス鋼等の金属で構成される板状部材である。エンド拘束部材300の形状は、特に限定されるものではなく、バッテリモジュール110(積層体111)の第2の面102(YZ面)を保持し、拘束することができればよい。
【0043】
図1の1Dでは、XZ面方向の側面視において、一対のエンド拘束部材300(300a、300b)は、バッテリモジュール110のX方向一端側の第2の面102(102a)とX方向他端側の第2の面102(102b)に対向して延設されている。すなわち、エンド拘束部材300(300a)は、X方向一端側の第2の面102(102a)と対向しており、エンド拘束部材300(300b)は、X方向他端側の第2の面102(102b)と対向している。
【0044】
エンド拘束部材300は、バッテリモジュール110(積層体111)の配置方向(Y方向:第2の方向)を保持し、拘束するとともに、バッテリモジュール110(積層体111)に強度剛性を与え、バッテリモジュール110を保護する部材として機能し得る。
【0045】
各バッテリモジュール110のエンド拘束部材300(300a、300b)は、第2の方向(Y方向)に沿って連結され、延設される。第2の方向(Y方向)に沿って連結されたエンド拘束部材300(300a、300b)は、長尺のエンド拘束部材310(310a、310b)として構成される。長尺のエンド拘束部材310(310a、310b)は、複数のバッテリモジュール110の集合体(バッテリモジュール群115)の配置方向(Y方向:第2の方向)を保持し、拘束するとともに、バッテリモジュール群115に強度剛性を与え、バッテリモジュール群115を保護する部材として機能し得る。エンド拘束部材300を連結するための連結構造については、図4図6を参照して説明する。
【0046】
図1の1Eは、複数のバッテリモジュール110が配置方向(Y方向:第2の方向)に配置されたバッテリモジュール110の集合体(バッテリモジュール群115)を示している。
【0047】
図1の1Eでは、6個のバッテリモジュール110が配置されているが、バッテリモジュール群115を構成するバッテリモジュール110の数は任意である。バッテリモジュール群115を構成するそれぞれのバッテリモジュール110には、電装部品116が取付けられる。電装部品116には、例えば、積層体111を構成するバッテリセル100間の端子を電気的に接続する導電性の部材(バスバー)や、各バッテリセル100からの電圧を検出する電圧検出線等が含まれる。
【0048】
バッテリモジュール群115において、それぞれのバッテリモジュール110のサイド拘束部材200(200a、200b)は、バッテリモジュール110(積層体111)の積層方向(X方向:第1の方向)を保持し、拘束するとともに、バッテリモジュール110(積層体111)に強度剛性を与え、バッテリモジュール110を保護する部材として機能し得る。すなわち、複数のバッテリモジュール110により構成されるバッテリモジュール群115において、サイド拘束部材200(200a、200b)は、従来技術における筐体(ケース)のクロスメンバーと、バッテリモジュールを構成するバインドバーとを統合した機能を有する。
【0049】
従来技術において、筐体(ケース)のクロスメンバーが担っていた機能、及び、バインドバーが担っていた機能は、本実施形態のバッテリモジュール110及びバッテリモジュール群115において、サイド拘束部材200(200a、200b)に集約することができる。
【0050】
また、長尺のエンド拘束部材310(310a、310b)は、複数のバッテリモジュール110の集合体(バッテリモジュール群115)の配置方向(Y方向:第2の方向)を保持し、バッテリモジュール群115を拘束するとともに、バッテリモジュール群115に強度剛性を与え、バッテリモジュール群115を保護する部材として機能し得る。
【0051】
長尺のエンド拘束部材310(310a、310b)は、従来技術における筐体(ケース)のサイドフレームと、バッテリモジュールを構成するエンドプレートとを統合した機能を有する。
【0052】
従来技術において、筐体(ケース)のサイドフレームが担っていた機能、及び、エンドプレートが担っていた機能は、本実施形態のバッテリモジュール110及びバッテリモジュール群115において、エンド拘束部材300(300a、300b)や長尺のエンド拘束部材310(310a、310b)に集約することができる。これにより、バッテリモジュール110は、及び複数のバッテリモジュール110により構成されるバッテリモジュール群115は、十分な強度剛性を有する。
【0053】
<バッテリパック500>
複数のバッテリモジュール110(バッテリモジュール群115)を外力から保護するためのケース400に搭載(配置)し、上方をカバー410で覆うことにより、バッテリパック500が構成される。バッテリパック500は、例えば、図示しないハイブリッド自動車またはEV等の電動車両に搭載されることができる。
【0054】
図3は、ケース400(バッテリケース)にバッテリモジュール群115を配置する構造を説明する図である。ケース400は、トレー状のケースであり、ケース400の底板は、絶縁性を有すると共に熱伝導性に優れる部材で構成され得る。締結部材460は、バッテリモジュール群115をケース400に固定するための部材であり、例えば、締結ボルトが含まれる。
【0055】
図1で説明したエンド拘束部材300(300a、300b)には、バッテリモジュール群115をケース400に固定するための締結部材460を貫通可能な孔部(貫通穴)が形成されている。ケース400には、例えば、締結部材460(例えば、締結ボルト)と螺合する螺合部(例えば、雌螺子)が形成されている。ケース400には、バッテリモジュール群115から供給される電力を制御する制御ユニット420と、外部機器と接続するためのコネクタ等を含むインタフェース部430とが取付けられる。
【0056】
ケース400の下面には、ケース400を補強するフレーム450が取付けられる。フレーム450は、ケース400の一辺(例えば、図2ではY方向の辺)に沿って延設された部材である。フレーム450は、ケース400の強度剛性の向上に寄与する。バッテリパック500の軽量化を図るため、フレーム450は、延設方向に対して上方(例えば、図2では、Z方向)に、例えば、リブ等の補強部455が形成された略中空構造としてもよい。補強部455の数は、特に限定されるものではなく、少なくとも一つの補強部455が形成されていればよい。また、図2の例では、フレーム450は、ケース400のY方向に沿って延設された例を示しているが、フレーム450の延設方向は、Y方向のみに限られず、X方向に沿ったフレーム450を更に設けてもよい。
【0057】
フレーム締結部材470は、フレーム450をケース400に固定するための部材であり、例えば、締結ボルトが含まれる。フレーム450には、フレーム450をケース400に固定するためのフレーム締結部材470を貫通可能な孔部(貫通穴)が形成されている。ケース400には、例えば、フレーム締結部材470(例えば、締結ボルト)と螺合する螺合部(例えば、雌螺子)が形成されている。
【0058】
カバー410は、ケース400に配置されたバッテリモジュール群115(複数のバッテリモジュール110)の上方を覆う部材であり、不図示の締結部材によりケース400と締結される。これにより、バッテリモジュール群115は封止され、バッテリパック500が構成される。
【0059】
バッテリモジュール群115の構成において、構造部材の機能をサイド拘束部材200及びエンド拘束部材300に集約することにより、バッテリモジュール群115の軽量化を図ることが可能となる。さらに、構造部材の機能を集約することにより、ケース400内におけるバッテリモジュール110の搭載効率を向上させることが可能なバッテリパック500を提供することができる。
【0060】
<連結構造例1>
各バッテリモジュール110のエンド拘束部材300は、第2の方向(Y方向)に沿って、隣接して配置される他のバッテリモジュール110のエンド拘束部材300と連結され、長尺のエンド拘束部材310が構成される。
【0061】
図4は、実施形態に係るエンド拘束部材300(300a)を連結する連結構造例1を示す図である。連結構造例1では、連結ピン610を用いた連結構造を説明する。図4の例では、一のエンド拘束部材300(300a)と他のエンド拘束部材300(300a)と連結されるものとして説明する。エンド拘束部材300(300a)は、エンド拘束部材300(300a)、及び他のエンド拘束部材300(300a)の双方に当接する連結ピン610の嵌合によって、他のエンド拘束部材300(300a)と連結される。
【0062】
一のエンド拘束部材300(300a)のYZ面には、連結ピン610と嵌合する凹部611、612が形成されている。一のエンド拘束部材300(300a)における凹部611(第1の嵌合部)と、他のエンド拘束部材300における凹部612(第2の嵌合部)とに、連結ピン610が嵌合することにより、一のエンド拘束部材300(300a)と他のエンド拘束部材300(300a)とが連結される。
【0063】
連結ピン610が、凹部611(第1の嵌合部)及び凹部612(第2の嵌合部)に嵌合された状態で、凹部611(第1の嵌合部)における嵌合状態と、凹部612(第2の嵌合部)における嵌合状態とが異なるように、それぞれの嵌合部は、異なる形状に形成されてもよい。例えば、異なる形状としては、例えば、寸法公差が異なるように、凹部の開口寸法を変えてもよい。
【0064】
連結ピン610が、凹部611(第1の嵌合部)及び凹部612(第2の嵌合部)に嵌合された状態で、凹部611(第1の嵌合部)における嵌合状態と、凹部612(第2の嵌合部)における嵌合状態とが異なるように、それぞれの嵌合部は、表面粗さで形成されてもよい。
【0065】
例えば、タイトな嵌合状態(第1の嵌合状態)になるように、凹部611を形成してもよい。また、第1の嵌合状態に比べて、緩和されたルーズな嵌合状態(第2の嵌合状態)になるように、凹部612を形成してもよい。
【0066】
図4の例では、一のエンド拘束部材300(300a)のYZ面には、少なくとも、異なる種別の凹部611、612が形成される。すなわち、第1の嵌合状態用の凹部611と、第2の嵌合状態用の凹部612とが一のエンド拘束部材300(300a)のYZ面に形成されていればよい。
【0067】
一のバッテリモジュール110におけるサイド拘束部材200(200a)は、一のエンド拘束部材300(300a)と連結(当接)する。また、隣接する他のバッテリモジュール110におけるサイド拘束部材200(200b)は、他のエンド拘束部材300(300a)と連結(当接)する。
【0068】
エンド拘束部材300(300a)同士が連結される際に、隣接しているサイド拘束部材200(200a)及びサイド拘束部材200(200b)は、一のエンド拘束部材300(300a)と、他のエンド拘束部材300(300a)とにより挟み込まれた状態で保持される。
エンド拘束部材300(300a)には、締結部材460を貫通可能な孔部(貫通穴)が形成されており、締結部材460によって、エンド拘束部材300(300a)は、バッテリモジュール110が配置されるケース400に連結される。
【0069】
サイド拘束部材200(200a、200b)により、XZ面を保持されているバッテリモジュール110は、サイド拘束部材200(200a、200b)、及びエンド拘束部材300(300a、300b)を介して、ケース400に保持(連結)される。
【0070】
なお、バッテリモジュール110の他端側におけるエンド拘束部材300(300b)においても、同様の連結構造例1によって、同様に隣接するエンド拘束部材300(300b)同士を連結することが可能である。
【0071】
連結ピン610を用いた連結構造において、一方側をタイトな嵌合状態(第1の嵌合状態)とし、他方側をルーズな嵌合状態(第2の嵌合状態)とすることにより、エンド拘束部材300を連結する際の組み立て性が向上する。すなわち、エンド拘束部材300同士の連結前であっても、各バッテリモジュール110おけるサイド拘束部材200の位置合わせなどが容易となり、サイド拘束部材200とエンド拘束部材300との位置関係を調整し易くすることができる。
【0072】
<連結構造例2>
図5は、実施形態に係るエンド拘束部材300(300a)を連結する連結構造例2を示す図である。連結構造例2では、スティフナー620を用いた連結構造を説明する。図5の例でも、連結構造例1と同様に、一のエンド拘束部材300(300a)と他のエンド拘束部材300(300a)と連結されるものとして説明する。
【0073】
なお、連結構造例2においても、連結構造例1と同様に、一のバッテリモジュール110におけるサイド拘束部材200(200a)は、一のエンド拘束部材300(300a)と連結(当接)する。また、隣接する他のバッテリモジュール110におけるサイド拘束部材200(200b)は、他のエンド拘束部材300(300a)と連結(当接)する。
【0074】
エンド拘束部材300(300a)同士が連結される際に、隣接しているサイド拘束部材200(200a)及びサイド拘束部材200(200b)は、一のエンド拘束部材300(300a)と、他のエンド拘束部材300(300a)とにより挟み込まれた状態で保持される。
【0075】
図5に示すように、スティフナー620は、Y方向に延設された長尺の補強部材であり、スティフナー620の長さは、連結するエンド拘束部材300の数に応じて任意である。図5に示す例では、一のエンド拘束部材300(300a)及び他のエンド拘束部材300(300a)の上面(XY面)に、長尺のスティフナー620は設けられている。
【0076】
長尺のスティフナー620及びエンド拘束部材300(300a)及び他のエンド拘束部材300(300a)には、締結部材460を貫通可能な孔部(貫通穴)が形成されている。締結部材460によって、長尺のスティフナー620及びエンド拘束部材300及び他のエンド拘束部材300(300a)が鉛直方向(Z方向)に共締され、ケース400に連結されることにより、一のエンド拘束部材300(300a)と他のエンド拘束部材300(300a)とが連結される。
【0077】
なお、バッテリモジュール110の他端側におけるエンド拘束部材300(300b)においても、同様の連結構造例2によって、同様に隣接するエンド拘束部材300(300b)同士を連結することが可能である。
【0078】
連結構造例2においても、サイド拘束部材200(200a、200b)により、XZ面を保持されているバッテリモジュール110は、サイド拘束部材200(200a、200b)、及びエンド拘束部材300(300a、300b)を介して、ケース400に保持(連結)される。
【0079】
<連結構造例3>
図6は、実施形態に係るエンド拘束部材300を連結する連結構造例3を示す図である。連結構造例3では、スティフナー630を用いた連結構造を説明する。図6の例でも、連結構造例1と同様に、一のエンド拘束部材300(300a)と他のエンド拘束部材300(300a)と連結されるものとして説明する。
【0080】
なお、連結構造例3においても、一のバッテリモジュール110における一のサイド拘束部材200(200a)は、一のエンド拘束部材300(300a)と連結(当接)する。また、隣接する他のバッテリモジュール110における他のサイド拘束部材200(200b)は、他のエンド拘束部材300(300a)と連結(当接)する。
【0081】
図6に示すように、一のサイド拘束部材200(200a)には、当該サイド拘束部材200の端部においてフランジ232(第1のフランジ)がY方向(Y+方向)に形成されており、一のエンド拘束部材300(300a)には、フランジ232と連結(当接)可能な段差332(第1の段差)が形成されている。
【0082】
また、他のサイド拘束部材200(200a)には、当該サイド拘束部材200の端部においてフランジ231(第2のフランジ)がY方向(Y-方向)に形成されており、他のエンド拘束部材300(300a)には、フランジ231と連結(当接)可能な段差331(第2の段差)が形成されている。
【0083】
段差331、332には、締結部材632(例えば、締結ナット)と螺合する螺合部631(例えば、雄螺子)が形成されている。
【0084】
図6に示すように、スティフナー630は、エンド拘束部材300(300a)のYZ面を補強する補強部材である。
【0085】
スティフナー630、フランジ231及びフランジ232には、段差331、332に形成された螺合部631を貫通可能な孔部(貫通穴)が形成されている。締結部材632によって、スティフナー630、フランジ231及びフランジ232が、段差331、332に共締されることにより、一のエンド拘束部材300(300a)と他のエンド拘束部材300(300a)とが連結される。
【0086】
なお、バッテリモジュール110の他端側におけるエンド拘束部材300(300b)においても、同様の連結構造例3によって、同様に隣接するエンド拘束部材300(300b)同士を連結することが可能である。
【0087】
連結構造例3においても、サイド拘束部材200(200a、200b)により、XZ面を保持されているバッテリモジュール110は、サイド拘束部材200(200a、200b)、及びエンド拘束部材300(300a、300b)を介して、ケース400に保持(連結)される。
【0088】
<バッテリセル>
図7は、バッテリセル100の断面構造(XZ断面)を示す図である。バッテリセル100(二次電池)は、全固体電池としてもよい。
【0089】
図中の座標系においてX軸はバッテリセル100の長手方向(リードタブの延出方向)を示し、Z軸はバッテリセル100の厚さ方向(電極体2の厚さ方向)を示す。
【0090】
バッテリセル100は、正極層、固体電解質層及び負極層を積層した、蓄電素子である電極体2(本実施形態では積層体ともいう)と、収容した電極体2の周囲を封止する外装部材18と、リードタブ13及び14と、集電タブ15及び16とを有している。
【0091】
電極体2は、正極層と負極層とが二層の構造を有している。正極層は二層の正極層21及び23を有し、負極層は二層の負極層22及び24を有する。正極層21と負極層22との間には固体電解質層25が設けられている。正極層23と負極層24との間にも、同様に固体電解質層25が設けられている。なお、正極層及び負極層は、単相(一相)でもよいし、複数の層により構成されてもよい。正極層と負極層とを複数設ける場合には、図7に示したように、各正極層と負極層との間に、それぞれ固体電解質層が設けられる。図7の例では、正極層と負極層とが二層の構造を例示しているが、この例に限られず、正極層と負極層とが三層以上であってもよい。
【0092】
正極層21及び23は、それぞれ正極活物質層711と正極集電体712とを有する。正極集電体712は、二つの正極層21及び23で共通である。正極集電体712は電極体2の厚さ方向(Z方向)の中央に配置されており、正極集電体712の上面側及び下面側に正極層21の正極活物質層711及び正極層23の正極活物質層711が積層されている。
【0093】
負極層22は、正極層21に対して、電極体2の厚さ方向(Z方向)の上面側に配置(積層)されており、負極層24は、正極層23に対して、電極体2の厚さ方向(Z方向)の下面側に配置(積層)されている。負極層22及び24が正極層21、23を挟むように積層されている。負極層22及び24は、それぞれ負極活物質層721と負極集電体722と有する。二つの負極集電体722は、電極体2の最外層にそれぞれ層状に形成されている。なお、正極層および負極層の構成は、図7に示すような積層順に限られず、二層の正極層が二層の負極層を挟むようにしてこれらが積層される構成でもよい。
【0094】
正極活物質層711を構成する活物質としては、コバルト、ニッケル、マンガンを混合したNCM系(三元系活物質)、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム等が挙げられる。
【0095】
また、負極活物質層721を構成する活物質としては、例えば、リチウム系材料やシリコン系材料等を挙げることができる。負極活物質層721を構成する物質としては、この他にも、グラファイト、ソフトカーボン及びハードカーボン等の炭素材料、スズ系材料、遷移金属酸化物系(例えばチタン酸リチウム:LTO)等を挙げることができる。
【0096】
固体電解質層25は、例えば、イオン導電性を有する固体状の電解質からなり、その物質としては硫化物系固体電解質材料、酸化物系固体電解質材料、窒化物系固体電解質材料、ハロゲン化物系固体電解質材料等を挙げることができる。
【0097】
正極集電体712及び負極集電体722は、例えば、アルミニウム、銅、SUS等の金属箔、金属シート又は金属板からなる。正極活物質層711、負極活物質層721、固体電解質層25は、これらを構成する物質の粒子を、有機高分子化合物系のバインダで結合して形成されてもよい。正極活物質層711または負極活物質層721には、カーボン(粒子、繊維状)や金属粉等などの電子導電助剤を含んでもよい。正極活物質層711または負極活物質層721には、イオン導電パス構築のため固体電解質粉末も配置され得る。
【0098】
外装部材18は、電極体2を収容する収容体である。外装部材18は一枚のシート状の素材を二つに折り畳むか、又は、複数枚のシート状の素材を互いに貼り合わせることにより形成される。外装部材18の素材は、例えば、金属層の表裏面を絶縁層で被覆して形成される。
【0099】
リードタブ13の一端部は外装部材18の外部に、他端部は外装部材18の内部にそれぞれ位置している。リードタブ13の他端部は、外装部材18の内部において、集電タブ15を介して正極集電体712に接続されており、リードタブ13は正極用のタブを形成している。リードタブ13及び集電タブ15は、例えば、導電性を有する金属シート又は金属板で形成される。
【0100】
リードタブ14の一端部は外装部材18の外部に、他端部は外装部材18の内部にそれぞれ位置している。リードタブ14の他端部は、外装部材18の内部において、集電タブ16を介して負極集電体722に接続されており、リードタブ14は負極用のタブを形成している。リードタブ14及び集電タブ16は、例えば、導電性を有する金属シート又は金属板で形成される。リードタブ13及び14を充電器又は電気負荷に接続することで電極体2の充電又は放電を行うことができる。
【0101】
[実施形態2]
実施形態2では、先の実施形態で説明したバッテリパック500における熱連鎖を防止する構造(以下、熱連鎖防止構造)を説明する。図8は、実施形態2に係るバッテリパック500の熱連鎖防止構造を説明する図である。図8は、バッテリパック500のYZ断面を示している。バッテリモジュール群115のうち、一つのバッテリモジュール110に着目し、このバッテリモジュール110に対して、Y方向に隣接して配置されているバッテリモジュール110を示している。
【0102】
図8では、バッテリモジュール110(積層体111)が、ケース400に配置され、上方をカバー410で覆われた状態を示しているが、YZ断面におけるバッテリセル100の配置状態でもある。第1の面101(101a、101b)は、バッテリモジュール110(積層体111)の下面103に対して鉛直方向の面であり、かつ、積層方向(紙面に対して垂直な方向)に沿った面である。
【0103】
サイド拘束部材200(200a、200b)は、バッテリモジュール110の第1の面101(101a、101b)と対向し、積層方向に延設されている。第1の面101(101a、101b)とサイド拘束部材200(200a、200b)とは、接合部材701により接合されている(図7)。
【0104】
サイド拘束部材200(200a、200b)の上端とカバー410との間の第1の距離(例えば、図8の810)は、バッテリモジュール110(積層体111、バッテリセル100)の上面とカバー410との間の第2の距離820に比べて短い。この位置関係(第1の距離810<第2の距離820)を満たすように、サイド拘束部材200(200a、200b)、及びバッテリモジュール110(積層体111、バッテリセル100)は形成されている。
【0105】
図8に示すように、例えば、第1の距離810は、サイド拘束部材200(200a、200b)の上端とカバー410とが当接した状態での距離であってもよい。また、上記の位置関係が満たされれば、第1の距離810は、Z方向(鉛直方向)において、サイド拘束部材200(200a、200b)の上端とカバー410とが所定の隙間で離間した状態での距離であってもよい。
【0106】
ケース400内において、バッテリモジュール110は、積層体111のXZ面(第1の面101)に対して交差する方向(Y方向:交差方向)に複数配置されている。例えば、図8に示すように、サイド拘束部材(例えば、200(200a))は、ケース400内に隣接して配置された他のバッテリモジュール110の他のサイド拘束部材(例えば、200(200b))と、交差方向において対向した状態で配置される。
【0107】
隣接して配置された他のバッテリモジュール110における他のサイド拘束部材(200(200b))についても、第1の距離810と、第2の距離820との位置関係(第1の距離810<第2の距離820)は同様である。
【0108】
実施形態2の熱連鎖防止構造によれば、バッテリモジュール110を構成するバッテリセル100が熱暴走した際でも、そのバッテリセル100から噴出されたガスや噴出物の流れはサイド拘束部材200により抑制される。このため、サイド拘束部材200に対して、交差方向に隣接して配置されている他のバッテリセル100側に、噴出されたガスや噴出物が流入することを抑制することができる。サイド拘束部材200は防火壁面として機能し、バッテリセル100の熱連鎖を抑制、防止することができる。
【0109】
[実施形態3]
実施形態3では、先の実施形態で説明したバッテリパック500における他の熱連鎖防止構造を説明する。図9は、実施形態3に係るバッテリパック500の熱連鎖防止構造を説明する図である。図9は、バッテリパック500のYZ断面を示している。図8と同様に、バッテリモジュール群115のうち、一つのバッテリモジュール110に着目し、このバッテリモジュール110に対して、Y方向に隣接して配置されているバッテリモジュール110を示している。図9では、バッテリモジュール110(積層体111)が、ケース400に配置され、上方をカバー410で覆われた状態を示しているが、YZ断面におけるバッテリセル100の配置状態でもある。
【0110】
実施形態2と同様に、第1の面101(101a、101b)は、バッテリモジュール110(積層体111)の下面103に対して鉛直方向の面であり、かつ、積層方向(紙面に対して垂直な方向)に沿った面である。サイド拘束部材200(200a、200b)は、バッテリモジュール110の第1の面101(101a、101b)と対向し、積層方向に延設されている。第1の面101(101a、101b)とサイド拘束部材200(200a、200b)とは、接合部材701により接合されている(図7)。
【0111】
実施形態3における他の熱連鎖防止構造においても、実施形態2と同様に、第1の距離810と第2の距離820との位置関係(第1の距離810<第2の距離820)を満たすように、サイド拘束部材200(200a、200b)、及びバッテリモジュール110(積層体111、バッテリセル100)は形成されてもよい。すなわち、サイド拘束部材200(200a、200b)の上端とカバー410との間の第1の距離810は、バッテリモジュール110(積層体111)の上面とカバー410との間の第2の距離820に比べて短くてもよい。
【0112】
図9では、第1の距離810は、サイド拘束部材200(200a、200b)の上端とカバー410とが所定の隙間で離間した状態を示しているが、所定の隙間がラビリンス状になるようにカバー410を形成してもよい。また、第1の距離810は、図8に示すように、第1の距離810は、サイド拘束部材200(200a、200b)の上端とカバー410とが当接した状態での距離であってもよい。
【0113】
ケース400内において、バッテリモジュール110は、積層体111のXZ面(第1の面101)に対して交差する方向(Y方向:交差方向)に複数配置されている。例えば、図9に示すように、サイド拘束部材(例えば、200(200a))は、ケース400内に隣接して配置された他のバッテリモジュール110の他のサイド拘束部材(例えば、200(200b))と、交差方向において対向した状態で配置される。隣接して配置された他のバッテリモジュール110における他のサイド拘束部材(200(200b))についても、第1の距離810と、第2の距離820との位置関係は同様である。
【0114】
図9に示すように、カバー410には、Y方向に沿って離間した位置で、バッテリモジュール110(積層体111、バッテリセル100)に向かって下方に延設された複数の突出部415が形成されている。例えば、カバー410が難燃性の樹脂製である場合には、複数の突出部415はカバー410と一体成形することが可能である。また、カバー410が金属板のプレス成形により形成される場合には、複数の突出部415を別体で形成し、溶接などによりカバー410に取付ければよい。
【0115】
図9に示す紙面左側のサイド拘束部材200(200a)、及び交差方向に隣接して配置されている他のバッテリセル100の他のサイド拘束部材200(200b)は、複数の突出部415の間に位置する。同様に、図9に示す紙面右側のサイド拘束部材200(200b)、及び交差方向に隣接して配置されている他のバッテリセル100の他のサイド拘束部材200(200a)は、複数の突出部415の間に位置する。
【0116】
複数の突出部415の下端416は、サイド拘束部材200(200a、200b)の上端910、及び他のサイド拘束部材200(200b、200a)の上端920に比べて、バッテリモジュール110(積層体111、バッテリセル100)に近い位置になるように延設されている。サイド拘束部材200(200a、200b)、複数の突出部415、及びバッテリモジュール110(積層体111、バッテリセル100)は、この位置関係を満たすように形成されている。
【0117】
複数の突出部415の間に位置するサイド拘束部材200(200a、200b)と、複数の突出部415とのY方向(交差方向)の位置関係は、図9に示すように、所定の隙間で離間した状態であってもよい。サイド拘束部材200、及び他のサイド拘束部材200が、複数の突出部415の間に位置した状態で、サイド拘束部材200、及び他のサイド拘束部材200は、Y方向(交差方向)において、複数の突出部415と離間した位置に配置される。Y方向(交差方向)における所定の隙間がラビリンス状になるように複数の突出部415を形成してもよい。
【0118】
なお、図9の例に限られず、サイド拘束部材200と、複数の突出部415とのY方向(交差方向)の位置関係は当接した状態であってもよい。サイド拘束部材200、及び他のサイド拘束部材200が複数の突出部415の間に位置した状態で、サイド拘束部材200、及び他のサイド拘束部材200は、Y方向(交差方向)において複数の突出部415と当接した位置に配置されてもよい。
【0119】
実施形態3の熱連鎖防止構造によれば、バッテリモジュール110を構成するバッテリセル100が熱暴走した際でも、そのバッテリセル100から噴出されたガスや噴出物の流れはサイド拘束部材200により抑制される。このため、サイド拘束部材200に対して、交差方向に隣接して配置されている他のバッテリセル100側に、噴出されたガスや噴出物が流入することを抑制することができる。サイド拘束部材200は防火壁面として機能し、バッテリセル100の熱連鎖を抑制、防止することができる。
【0120】
<実施形態のまとめ>
上記実施形態は、少なくとも以下のバッテリパックを開示する。
【0121】
(項目1) 上記実施形態のバッテリパックは、ケース(400)と、前記ケースに配置されたバッテリモジュール(110)と、前記バッテリモジュールの上方を覆うカバー(410)と、有するバッテリパック(500)であって、
前記バッテリモジュール(110)は、
複数の二次電池を積層した積層体(111)と、
前記積層体の第1の面(101)と対向し、前記積層体の積層方向に延設されたサイド拘束部材(200)と、を備え、
前記第1の面(101)は、前記積層体の下面(103)に対して鉛直方向の面であり、かつ、前記積層方向に沿った面であり、
前記サイド拘束部材の上端と前記カバーとの間の第1の距離(810)は、前記積層体の上面と前記カバーとの間の第2の距離(820)に比べて短い。
【0122】
項目1のバッテリパックによれば、バッテリモジュールの重量増加を抑制しつつ、搭載効率の向上を図ることが可能なバッテリモジュールにおいて、バッテリセルが熱暴走した際の熱連鎖を抑制することが可能なバッテリパックを提供することができる。
【0123】
(項目2) 前記第1の距離(810)は、前記サイド拘束部材の上端と前記カバーとが当接した状態での距離、または、前記鉛直方向において前記上端と前記カバーとが離間した状態での距離である。
【0124】
項目2のバッテリパックによれば、バッテリモジュール110を構成するバッテリセル100が熱暴走した際でも、そのバッテリセル100から噴出されたガスや噴出物の流れはサイド拘束部材200により抑制される。このため、サイド拘束部材200に対して、交差方向に隣接して配置されている他のバッテリセル100側に、噴出されたガスや噴出物が流入することを抑制することができる。サイド拘束部材200は防火壁面として機能し、バッテリセル100の熱連鎖を抑制、防止することができる。
【0125】
(項目3) 前記第1の面(101)と前記サイド拘束部材(200)とは、接合部材により接合されている。
【0126】
項目3のバッテリパックによれば、従来技術において、筐体(ケース)のクロスメンバーが担っていた機能、及び、バインドバーが担っていた機能は、本実施形態のバッテリモジュール110及びバッテリモジュール群115において、サイド拘束部材200(200a、200b)に集約することができる。
【0127】
(項目4) 前記バッテリモジュール(110)は、
前記積層体の前記第1の面(XZ面)に対して交差する交差方向(Y方向)に複数配置され、
前記サイド拘束部材(200)は、
前記ケース内に隣接して配置された他のバッテリモジュールの他のサイド拘束部材と、前記交差方向において対向した状態で配置される。
【0128】
項目4のバッテリパックによれば、従来技術において、筐体(ケース)のクロスメンバーが担っていた機能、及び、バインドバーが担っていた機能は、本実施形態のバッテリモジュール110及びバッテリモジュール群115において、サイド拘束部材200(200a、200b)に集約することができる。構造部材の機能を集約することにより、ケース400内におけるバッテリモジュール110の搭載効率を向上させることが可能なバッテリパック500を提供することができる。
【0129】
(項目5) 前記カバー(410)は、前記交差方向に沿って離間した位置で、前記バッテリモジュールに向かって下方に延設された複数の突出部(415)を有し、
前記サイド拘束部材(200)、及び前記他のサイド拘束部材(200)は、前記複数の突出部(415)の間に位置する。
【0130】
(項目6) 前記複数の突出部の下端(416)は、前記サイド拘束部材、及び前記他のサイド拘束部材の上端(910a、910b)に比べて、前記バッテリモジュール(110)に近い位置になるように延設されている。
【0131】
(項目7) 前記複数の突出部(415)の間に位置した状態で、前記サイド拘束部材(200)、及び前記他のサイド拘束部材(200)は、前記交差方向において前記複数の突出部(415)と離間した位置に配置されている。
【0132】
(項目8) 前記複数の突出部(415)の間に位置した状態で、前記サイド拘束部材(200)、及び前記他のサイド拘束部材(200)は、前記交差方向において前記複数の突出部(415)と当接した位置に配置されている。
【0133】
項目5乃至8のバッテリパックによれば、バッテリモジュール110を構成するバッテリセル100が熱暴走した際でも、そのバッテリセル100から噴出されたガスや噴出物の流れはサイド拘束部材200により抑制される。このため、サイド拘束部材200に対して、交差方向に隣接して配置されている他のバッテリセル100側に、噴出されたガスや噴出物が流入することを抑制することができる。サイド拘束部材200は防火壁面として機能し、バッテリセル100の熱連鎖を抑制、防止することができる。
【0134】
本発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0135】
100: バッテリセル(二次電池)、110:積層体、200:サイド拘束部材、231:フランジ、232:フランジ、300:エンド拘束部材、310:長尺のエンド拘束部材、331:段差、332:段差、400:ケース(バッテリケース)、410:カバー、415:突出部、450:フレーム、455:補強部、500:バッテリパック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9