(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176903
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッドの包装形態
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20241212BHJP
B65D 81/05 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B65D81/05
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095765
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河村 省吾
【テーマコード(参考)】
2C056
3E066
【Fターム(参考)】
2C056EA20
2C056FA01
2C056FA09
2C056HA01
2C056HA23
2C056HA60
2C056KD10
3E066AA03
3E066FA06
3E066NA41
(57)【要約】
【課題】液体吐出ヘッドの吐出面へのゴミ等の付着が少ない梱包形態を提供する。
【解決手段】着脱自在な保護部材を備えた液体吐出ヘッドを包装する液体吐出ヘッドの包装形態であって、液体吐出ヘッドの吐出口面を覆う保護部材と、液体吐出ヘッドの長手方向の両端に装着される緩衝材と、液体吐出ヘッドを包装する袋部材と、を備え、液体吐出ヘッドと保護部材と緩衝材とが固定された状態で袋部材内に収納され、減圧状態で密封されている。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着脱自在な保護部材を備えた液体吐出ヘッドを包装する液体吐出ヘッドの包装形態であって、
前記液体吐出ヘッドの吐出口面を覆う保護部材と、
前記液体吐出ヘッドの長手方向の両端に装着される緩衝材と、
前記液体吐出ヘッドを包装する袋部材と、を備え、
前記液体吐出ヘッドと前記保護部材と前記緩衝材とが固定された状態で前記袋部材内に収納され、減圧状態で密封されていることを特徴とする液体吐出ヘッドの包装形態。
【請求項2】
前記保護部材は、前記液体吐出ヘッドに対して長手方向に移動させ、取り外すことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッドの包装形態。
【請求項3】
前記緩衝材は、前記保護部材の可動領域を制限する領域に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の液体吐出ヘッドの包装形態。
【請求項4】
前記緩衝材は、前記液体吐出ヘッドの長手方向に貫通口を有していることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッドの包装形態。
【請求項5】
前記緩衝材の前記貫通口は、前記液体吐出ヘッドへの突き当て面を有していることを特徴とする請求項4に記載の液体吐出ヘッドの包装形態。
【請求項6】
前記緩衝材は、液体吐出ヘッドの長手方向における突起部を前記貫通口内に収納していることを特徴とする請求項4に記載の液体吐出ヘッドの包装形態。
【請求項7】
前記液体吐出ヘッドは、長手方向の両端に液体吐出装置への位置決めをするための位置決め部を有していることを特徴とする請求項5に記載の液体吐出ヘッドの包装形態。
【請求項8】
前記緩衝材の前記突き当て面は、少なくとも長手方向において前記位置決め部に当接しない構成となっていることを特徴とする請求項7に記載の液体吐出ヘッドの包装形態。
【請求項9】
前記緩衝材は、前記貫通口の開口面積の異なる少なくとも二つの緩衝材を接合して形成されていることを特徴とする請求項4に記載の液体吐出ヘッドの包装形態。
【請求項10】
前記二つの緩衝材は、熱溶着により接合していることを特徴とする請求項9に記載の液体吐出ヘッドの包装形態。
【請求項11】
前記緩衝材は、前記保護部材の長手方向への移動を規制する液体吐出ヘッドとの係合部を押圧していることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッドの包装形態。
【請求項12】
前記袋部材は、長手方向の端部を開封するための開封手段を有していることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッドの包装形態。
【請求項13】
前記開封手段は、前記保護部材が前記液体吐出ヘッドに固定される方向に移動する端部側に設けられていることを特徴とする請求項12に記載の液体吐出ヘッドの包装形態。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体吐出装置で用いられる液体吐出ヘッドを収納袋に収納した物である、液体吐出ヘッドの包装形態に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出装置には、キャリッジを移動させながら記録動作を行うシリアルスキャン型と、被記録媒体の幅に対応したサイズを有する液体吐出ヘッドを用いてキャリッジを固定し被記録媒体のみを搬送させながら記録動作を行うページワイド型がある。液体吐出ヘッドを輸送する際には、プリントチップの損傷、汚染を防ぐため、液体吐出ヘッドにプリントチップ全面を覆う保護部材を装着し、保護部材を装着した液体吐出ヘッドを収納袋に収納し緩衝材と共に段ボール箱に納めることが行われている。このような収納袋の一例として、特許文献1には、トナーカートリッジを輸送する際に、トナーカートリッジをチャック部材付き収納袋に収納することが記載されている。そして、特許文献1のカートリッジは、この袋に収納された後、左右両側から発泡スチロール等の緩衝材で保持されて段ボール箱に梱包される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、液体吐出ヘッドに装着される保護部材は、梱包、輸送などに際して液体吐出ヘッドから外れないことが求められる。特許文献1に開示の収納袋は、そもそも液体吐出ヘッドの場合のような保護部材を必要としないことから、液体吐出ヘッドに対する保護部材の装着外れを想定していない。
【0005】
本開示の目的は、保護部材の装着外れを防止して液体吐出ヘッドの吐出面の損傷、汚染を防ぐことが可能な包装形態を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本開示では、着脱自在な保護部材を備えた液体吐出ヘッドを包装する液体吐出ヘッドの包装形態であって、液体吐出ヘッドの吐出口面を覆う保護部材と、液体吐出ヘッドの長手方向の両端に装着される緩衝材と、液体吐出ヘッドを包装する袋部材と、を備え、液体吐出ヘッドと保護部材と緩衝材とが固定された状態で袋部材内に収納され、減圧状態で密封されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
以上の構成によれば、保護部材の装着外れが防止されて液体吐出ヘッドの吐出面の損傷、汚染を防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態に係る液体吐出ヘッドを下方から見た斜視図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る液体吐出ヘッドを上方から見た斜視図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係る液体吐出ヘッドの模式的断面図である。
【
図4】本開示の一実施形態に係る液体吐出ヘッドの模式的断面図である。
【
図5】本開示の一実施形態に係る液体吐出ヘッドの模式的断面図である。
【
図6】本開示の一実施形態に係る液体吐出ヘッドから保護部材を取り外す手順を示す説明図である。
【
図7】本開示の一実施形態に係る液体吐出装置に液体吐出ヘッドが装着されたときの模式的斜視図である。
【
図8】本開示の一実施形態に係る液体吐出ヘッドの一端を示す部分拡大図である。
【
図9】本開示の一実施形態に係る液体吐出ヘッドの他端を示す部分拡大図である。
【
図10】本開示の一実施形態に係る液体吐出ヘッドの一端を上方から見た斜視図である。
【
図11】本開示の一実施形態に係る液体吐出ヘッドの一端と他端に緩衝材を取り付けた斜視図である。
【
図12】本開示の一実施形態の液体吐出ヘッドの緩衝材の斜視透視図である。
【
図13】本開示の一実施形態に係る液体吐出ヘッド10の一端と他端に緩衝材を取り付けた上面図、側面図、断面図である。
【
図14】液体吐出ヘッドを袋部材に挿入した状態の斜視図、袋部材の内部を減圧して密封した状態を説明する説明図である。
【
図15】本開示の一実施形態に係る液体吐出ヘッドの袋部材を開封した状態の斜視図である。
【
図16】本開示の第2の実施形態における液体吐出ヘッド10と緩衝材を装着した斜視図、側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
以下、図面を用いて本開示の実施形態の例を説明する。
【0010】
(液体吐出ヘッド)
図1は、本開示の一実施形態に係る液体吐出ヘッド10を下方から見た斜視図であり、
図2は、本開示の一実施形態に係る液体吐出ヘッド10を上方から見た斜視図である。また、
図3-
図5は、それぞれ、本開示の一実施形態に係る液体吐出ヘッド10の模式的断面図である。
【0011】
本開示の一実施形態に係る液体吐出ヘッド10は、液体を吐出する記録素子基板100が長尺方向に配列された所謂ページワイド型のヘッドである。また、
図2に示すように、液体吐出ヘッド10は、輸送中や装置への着脱時に記録素子基板等の損傷や汚染を防止するため、保護部材200が取り外し可能に装着される。なお、その詳細は後述されるが、液体吐出ヘッド10に対する保護部材200の着脱に関して、保護部材200の係合部A1、A2が液体吐出ヘッド10に取り付けられている位置を係合位置とする。また、保護部材200の係合部A1、A2が液体吐出ヘッド10のガイド開口部C1、C2の位置にあるときを解除位置とする。
【0012】
図1に示すように、本開示の液体吐出ヘッド10には、それぞれ液体を吐出するための吐出口が形成された、複数の記録素子基板100が長手方向(第一の方向X)に複数配列されている。これら複数の記録素子基板100によって液体吐出ヘッド10の吐出面が構成される。また、本開示の液体吐出ヘッド10の吐出面には、複数の記録素子基板100の周囲を囲むようにキャップ面形成部材300が形成される。液体吐出ヘッド10は、液体吐出ヘッド10の長手方向の一端にピン700aが設けられ、他端にピン700b、700cが設けられている。また、液体吐出ヘッド10は、液体吐出ヘッド10の一端の鉛直方向下方に、第1位置決め部材301を備えている。さらに、液体吐出ヘッド10は、液体吐出ヘッドの他端の鉛直方向下方に、第2位置決め部材302を備えている。
【0013】
図2(a)および(b)に示すように、液体吐出ヘッド10に対して、保護部材200が着脱可能に装着される。この保護部材200の着脱に関して、液体吐出ヘッド10は、第一の方向Xに沿って、2つのガイド部B2と、2つのガイド開口部C2を備える。また、液体吐出ヘッド10は、
図1に示す側とは無い側に、同じく第一の方向Xに沿って、2つのガイド部B1(
図3参照)と2つのガイド開口部C1を備える。一方、保護部材200は、液体吐出ヘッド10のガイド部B1、B2とそれぞれ係合する係合部A1、A2(
図3参照)を備える。また、液体吐出ヘッド10は、保護部材200を固定するための固定開口部103を備える。本実施形態では、液体吐出ヘッド10は、ガイド部およびガイド開口部を、それぞれ2つずつ形成するとしたが、これに限られることなく、1つでもよく、また3つ以上形成してもよい。
【0014】
以上の着脱のための構成において、液体吐出ヘッド10のガイド部B1は、第一の方向Xにおける一端において、保護部材200の係合部A1が当接するための当接部を有している。また、液体吐出ヘッド10と保護部材200とが固定された状態で、係合部A1の第一の方向における一端とは反対側の他端は、液体吐出ヘッド10のガイド開口部C1と接続している。
【0015】
(保護部材)
保護部材200は、液体吐出ヘッド10に装着されることで、液体吐出ヘッドの輸送中や装置への着脱の際に、記録素子基板等の損傷や汚染を抑制する機能を果たす。保護部材200が液体吐出ヘッド10に取り付けられた状態のまま装置に取り付け、その後に保護部材200を取り外すことにより、交換作業時の液体吐出ヘッド10の破損や汚染を抑制することができる。
【0016】
図3に示すように、保護部材200は、液体吐出ヘッド10の吐出面100を覆う保護部200Aを有している。保護部材200には、液体吐出ヘッド10の2つのガイド部B1、B2と係合することが可能であり、かつ2つのガイド開口部C1、C2よりも第一の方向Xにおける長さが小さい2つの係合部A1、A2とを有している。また、保護部材200は、液体吐出ヘッド10の2つのガイド部B1、B2と、2つの係合部A1、A2とが係合する係合位置において、液体吐出ヘッド10の固定開口部103(
図4参照)に係合している。さらに、保護部材200は、液体吐出ヘッド10の2つのガイド部B1、B2と2つの係合部A1、A2とが係合する係合位置において、保護部材200が液体吐出ヘッド10に対して第一の方向Xへ移動することを規制している。また、保護部材200は、液体吐出ヘッド10と保護部材200とを固定する少なくとも一つの固定部202(
図4参照)とを有している。
【0017】
本実施形態では、
図4に示すように、保護部材200は、2つの係合部A1、A2と、第一の方向Xおよび第二の方向Yと交差する第三の方向Zに配置される固定部202とを備えている。なお、本実施形態では、第一の方向Xと平面上交差する方向を第三の方向Zとし、鉛直方向を第二の方向Yとする。
【0018】
固定部202は、
図4に示すように、変形可能な形状を有しており、液体吐出ヘッド10に対して、固定開口部103と係合して固定する固定位置(
図4の位置)から固定を解除する固定解除位置(
図5の位置)に移動することができる。本実施形態では、固定部202は、上方側に突起部202A(
図3等参照)と、下方側に係合解除部202B(
図3等参照)と有し、第二の方向Yに回動可能(揺動可能)に取り付けられている。固定部202は、保護部材200と一体部品として成形され、回転軸202Cで支持されている(
図6等参照)。固定部202は、ポリプロピレンなどの樹脂部材で形成されてもよい。本実施形態では、固定部202は、保護部材200と一体部品として形成するとしたが、これに限られることなく、保護部材200と別の部品として形成されてもよい。この場合、固定部202は、フィラーを含有する樹脂や金属などによって形成されてもよい。さらに、固定部の形状は、保護部材と液体吐出ヘッドが固定できる形状であればよく、固定部は、伸縮可能な部材で形成され、先端に突起部を設けて、その突起部が液体吐出ヘッドの固定開口部103に係合し、固定するものでもよい。
【0019】
保護部材200は、ガイド部B1と係合部A1、ガイド部B2と係合部A2、それぞれが係合し、固定開口部103と固定部202とが固定されることによって、液体吐出ヘッド10に取り付けられている(
図4参照)。本実施形態では、固定開口部103と固定部202は、液体吐出ヘッド10および保護部材200の端部に形成するとしたが、これに限られることなく、固定部202と固定開口部103との係合/係合解除ができる位置であればよい。
【0020】
(保護部材の取り外し方法)
保護部材200を備えた液体吐出ヘッド10から保護部材200を取り外す方法について、説明する。
【0021】
図6は、本開示の一実施形態に係る液体吐出ヘッド10から保護部材200を取り外す手順を示す図である。液体吐出ヘッド10と保護部材200の取り外しに関して、
図5に示すように、固定部202の係合解除部202Bが押圧されることによって移動(回動)することによって、突起部202Aが移動(回動)する。突起部202Aの移動(回動)によって、固定開口部103と突起部202Aとの係合が解除される。これにより、
図6(a)に示すように、保護部材200は、第一の方向Xに移動可能となる構成になっている。
【0022】
次に、固定部202がユーザ操作によって固定開口部103から解除され、係合位置から、保護部材200を第一の方向Xに所定量移動させてガイド部B1と係合部A1、との係合が解除される解除位置まで移動する(
図6(a)参照)。保護部材200を第一の方向Xと交差する第二の方向Yに移動させることによって、
図6(b)に示すように、係合部A1をガイド開口部C1の位置に移動させると、液体吐出ヘッド10から保護部材200が取り外される。
【0023】
(液体吐出装置)
図7は、本実施形態に係る液体吐出装置に液体吐出ヘッド10が装着されたときの模式的斜視図である。
【0024】
液体吐出装置には、フレームと、液体吐出ヘッド10を位置決めするための球体500と、液体吐出ヘッド10のピン700a、700b、700cを保持する保持部(不図示)と、が備えられる。液体吐出ヘッド10は液体吐出装置に対して着脱可能な構成であり、液体吐出装置に液体吐出ヘッド10を取り付ける際には、ピン700a、700b、700cは、それぞれ、液体吐出装置の保持部によって保持される。そして、液体吐出ヘッド10は、球体500上に降ろされ、液体吐出ヘッド10の第1位置決め部材301と第2位置決め部材302とが、それぞれ球体500によって位置決めされ、保持される。本実施形態の液体吐出ヘッド10は、搬送方向下流側から搬送される記録媒体に対して、記録素子基板100から液体を吐出し、記録を行う。
【0025】
図8は、本実施形態に係る液体吐出ヘッド10の一端を示す部分拡大図であり、
図9は、本実施形態に係る液体吐出ヘッド10の他端を示す部分拡大図である。液体吐出ヘッド10の第1位置決め部材301は、鉛直方向下向きに円錐形状の凹部401を有する。凹部401は、球体500aに円錐形の凹部の中心がセンタリングされ、係合する。これにより、液体吐出ヘッド10の一端の3方向並進自由度(図中X/Y/Z方向)を固定することができる。また、液体吐出ヘッド10の第2位置決め部材302は、
図9に示すように、テーパー付けられた2つの凹部402、403を有する。凹部402は、球体500bと当接することで、記録素子基板100を構成する面の法線を軸とする回転(Z軸周りの回転)および液体吐出ヘッドの長手方向の法線を軸とする回転自由度(X軸周りの回転)を固定する。第2位置決め部材302の凹部403は、球体500cと係合することによって、液体吐出ヘッド10の長手方向を軸とする回転自由度(Y軸周りの回転)を固定する。
【0026】
このように、液体吐出ヘッド10の一端と他端は、各球体と係合することによって、固定することができる。
【0027】
図10(a)は、本実施形態に係る液体吐出ヘッド10の一端を上方から見た斜視図である。
図10(b)は、
図10(a)のXb-Xb線の模式的断面図である。第1の位置決め部材301を記録素子基板に対して配置した状態で固定するが、固定方法が本実施形態のように固定ネジ404で行う場合、Z方向を規制する必要がある。
【0028】
そこで、液体吐出ヘッド10の一端には、
図10(a)に示すように、液体吐出ヘッド本体10aと第1位置決め部材301とを固定するための3つの固定ネジ404と、液体吐出ヘッド10のZ方向の高さを調整する3つの調整ネジ405とが備えられている。液体吐出ヘッド10は、第1の位置決め部材301を規制した状態でネジ固定することにより、X方向およびY方向の規制が可能である。液体吐出ヘッド10は、調整ネジ405を調整することでのZ方向の規制が可能であり、ネジ固定による高精度な取り付けが可能である。
【0029】
(液体吐出ヘッドの包装)
図11は、本開示の一実施形態に係る液体吐出ヘッド10の一端と他端に緩衝材を取り付けた斜視図である。
図12は、本開示の一実施形態に係る緩衝材の斜視透視図である。
【0030】
本実施形態は、上述したように、液体吐出ヘッド10を収納袋に収納して包装形態とする。この際、液体吐出ヘッド10には保護部材200が装着されている。そして、この液体吐出ヘッド10に対して、保護部材200を挟み、保護部材200の取り外しを規制する位置にそれぞれ緩衝材600a、600bが装着される。
図12に示すように、緩衝材600aは、第1の部材601と第2の部材602とが熱溶着によって接合されて構成されている。第1の部材601には、液体吐出ヘッド10の一端の形状に対応してこの一端を受け入れることができる形状の第1の貫通口603を有する。一方、第2の部材602は、液体吐出ヘッド10の一端からさらに突き出たピン700aの形状に対応してこのピンを受け入れることができる第2の貫通口604を有する。第2の部材602は、また、第1の貫通口603に受け入れられた液体吐出ヘッド10の一端が突き当てられる突き当て面605を、第1の貫通口603に面して有する。液体吐出ヘッド10の反対側の端部に装着される緩衝材600bも、緩衝材600aと同様の形状であり、液体吐出ヘッド10の他端に装着される。
【0031】
緩衝材600a、600bの材質は、例えば、ポリエチレンを主原料とした発泡体を用いてもよい。これにより、二つの部材を熱溶着により接合して形成することができる。なお、本実施形態では、二つの部材を接合した緩衝材を用いたが、一体に成形されたもので、上記の各貫通口が形成された緩衝材を用いてもよい。
【0032】
図13(a)は、本実施形態に係る液体吐出ヘッド10の一端と他端に、それぞれ緩衝材600a、600bを取り付けた上面図であり、
図13(b)は、その側面図である。
図13(c)は、
図13(b)のXIIIc-XIIIc線断面の断面図であり、
図13(d)は、
図13(a)のXIIId-XIIId線断面の断面図である。
【0033】
第1の緩衝材600aと第2の緩衝材600bは、液体吐出ヘッド10に装着された保護部材200を規制するように取り付けられる。すなわち、
図13(b)に示すように、保護部材200の長手方向の両端部近傍に緩衝材600a、600bがそれぞれ位置する。また、
図13(a)~(d)に示すように、保護部材200の長手方向と直交する方向における、緩衝材600a、600bの範囲は保護部材200の存在する範囲より大きい。これにより、保護部材200を装着した液体吐出ヘッド10に何らかの外力が作用した場合でも、その外力は緩衝材600a、600bによって吸収され、保護部材200に直接作用することを防止できる。例えば、液体吐出ヘッド10が落下しても、第1および第2の緩衝材600a、600bによって、その衝撃が吸収され、衝撃が保護部材200に直接作用することを防止できる。これと共に、仮に保護部材200が液体吐出ヘッド10から外れようとしても、近傍に位置する緩衝材によってその移動が規制される。さらに、液体吐出ヘッド10の端部から突出するピン700a、700bは緩衝材600a、600b内に収納されることから、落下などの衝撃を受けた際に、液体吐出ヘッド10におけるピンのような突起部によって収納袋を破ること防止できる。
上述した緩衝材600a、600b自体による衝撃吸収に加え、本実施形態はさらに以下のような衝撃吸収構造を有する。本実施形態は、
図13(d)に示すように、位置決め部材302と緩衝材600bの突き当て面605との間に空間Sを形成するよう構成する。これにより、長手方向に誤って落下させたとしても、液体吐出ヘッドの部材110に対する衝撃が緩衝材によって抑制される。一方、位置決め部材は、緩衝材に接触することがないため、取り付け精度に影響を防止することができる。
【0034】
このように、
図11および
図13に示すように、緩衝材600a、600bは保護部材200の長手方向両端に近接して配置される。そして、後述する
図14に示すように、袋部材800を減圧することにより、液体吐出ヘッド10に固定される。そのため、保護部材200の長手方向の動きが規制され取り外せなくなる。また、緩衝材600a、600bは液体吐出ヘッド10の両端の角部やピンを覆う構成となっているため輸送時に振動、落下などの外力が加わっても両端の角部やピンで袋部材の損傷を抑制する。そのため、袋部材800の減圧状態は維持され、保護部材が取り外せない構成となる。
【0035】
図14(a)は、液体吐出ヘッド10を袋部材800に挿入した状態の斜視図であり、
図14(b)は、袋部材800の内部を減圧して密封した状態を説明する説明図である。
図15は、本実施形態に係る液体吐出ヘッド10の袋部材800を開封した状態の斜視図である。
【0036】
本実施形態の液体吐出ヘッド10は、
図14(a)に示すように、袋部材800に収納される。本実施形態では、袋部材800は、三方溶着袋を用い、開口801を有している。袋部材800には、液体吐出ヘッド10が開口801から挿入される。そして、袋部材800の内を減圧し、開口801を熱溶着して熱溶着部802が形成され、袋部材800を密封する。
図14(b)に示すように、袋部材800の内部を減圧することにより袋部材800内の空間が減少し、袋部材800は液体吐出ヘッド10および緩衝材600a、600bに密着する。これにより、緩衝材600a、600bは、液体吐出ヘッド10に対して押圧され、ほぼ固定される。緩衝材600a、600bは保護部材200の長手方向両端に近接して装着されるため、固定されることにより保護部材200が長手方向にスライドする動きを規制する。その際、袋部材800が緩衝材600を液体吐出ヘッド10に押し付ける状態まで減圧を行う。緩衝材600a、600bは、液体吐出ヘッド10に対して押圧されほぼ固定されることにより、保護部材200の長手方向への移動をさらに規制することができる。
【0037】
保護部材200は、固定部202によって液体吐出ヘッド10に係合されているが、外力等によって係合が緩む恐れがある。本実施形態では、保護部材200の固定部202と固定開口部103との係合が緩んだとしても、保護部材200は、緩衝材600aと緩衝材600bとの規制により輸送時の保護部材200の脱落を抑制することができる。また、液体吐出ヘッド10の長手方向に対して、緩衝材600の第2の貫通口604を有しているため、袋部材800の遠位側、開口801の反対側の空気も減圧される。これにより、袋部材800内を減圧することができる。
【0038】
また、
図14(b)に示すように、液体吐出ヘッド10には、減圧によって、緩衝材600aおよび600bとともにそれぞれ、力Fが加わる。そして、液体吐出ヘッド10は、減圧の際に両端の緩衝材間で袋部材800が大きな減圧空間を形成することなく液体吐出ヘッド10および保護部材200に密着しやすくなり、緩衝材を液体吐出ヘッドに押し付け、固定しやすくできる。
【0039】
また、袋部材800は、長手方向の端部に開封するための開封手段を有している。本実施形態では、開封手段は、ノッチ803であり、ノッチ803は、(
図14(a)参照)保護部材200が液体吐出ヘッド10に固定される方向に移動する端部側に設けられている。ノッチ803は、袋部材800を開封する際のきっかけとなり、袋部材800の開封を補助している。袋部材800の開封後、袋部材800内の液体吐出ヘッド10を取り出す際に、液体吐出ヘッドの移動(矢印C)によって取り出すことができる。具体的には、
図6で示した第一の方向(矢印X)側を開封することにより、
図15に示すように、液体吐出ヘッド10の移動方向と保護部材の取り外し方向が同じになり、保護部材は外れることなく液体吐出ヘッドを取り出すことができる。そのため、袋部材800から液体吐出ヘッド10を取り出す動作の際も記録素子基板100を保護することができる。
【0040】
(第2の実施形態)
本開示の第2の実施形態について説明する。本開示の第1の実施形態と同様な機能、後世については説明を省略し、異なる点を説明する。
【0041】
図16は、第2の実施形態における液体吐出ヘッド10と緩衝材を装着した斜視図、側面図である。第1の実施形態において、緩衝材は2つの部材を熱溶着によって形成されていたが、本開示はこれに限るものではない。
図16に示すように、緩衝材1600は、第1の部材601と、第2の部材602と、第3の部材606とを有している。第1の部材601、第2の部材602と第3の部材606とは、それぞれ熱溶着され、接合されている。第3の部材606は、保護部材200の固定部202を覆うように固定している。これにより、減圧された袋部材800内で液体吐出ヘッド10に対して保護部材の固定部202を確実に押し付け、固定部202が緩むことなく、保護部材200を固定することができる。
【0042】
(その他の実施形態)
本開示は、以下の液体吐出ヘッドの包装形態例に代表される構成を含むものである。
【0043】
<構成1>
着脱自在な保護部材を備えた液体吐出ヘッドを包装する液体吐出ヘッドの包装形態であって、
前記液体吐出ヘッドの吐出口面を覆う保護部材と、
前記液体吐出ヘッドの長手方向の両端に装着される緩衝材と、
前記液体吐出ヘッドを包装する袋部材と、を備え、
前記液体吐出ヘッドと前記保護部材と前記緩衝材とが固定された状態で前記袋部材内に収納され、減圧状態で密封されていることを特徴とする液体吐出ヘッドの包装形態。
【0044】
<構成2>
前記保護部材は、前記液体吐出ヘッドに対して長手方向に移動させ、取り外すことを特徴とする構成1に記載の液体吐出ヘッドの包装形態。
【0045】
<構成3>
前記緩衝材は、前記保護部材の可動領域を制限する領域に配置されていることを特徴とする構成1または2に記載の液体吐出ヘッドの包装形態。
【0046】
<構成4>
前記緩衝材は、前記液体吐出ヘッドの長手方向に貫通口を有していることを特徴とする構成1乃至3のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドの包装形態。
【0047】
<構成5>
前記緩衝材の前記貫通口は、前記液体吐出ヘッドへの突き当て面を有していることを特徴とする構成4に記載の液体吐出ヘッドの包装形態。
【0048】
<構成6>
前記緩衝材は、液体吐出ヘッドの長手方向における突起部を前記貫通口内に収納していることを特徴とする構成4または5に記載の液体吐出ヘッドの包装形態。
【0049】
<構成7>
前記液体吐出ヘッドは、長手方向の両端に液体吐出装置への位置決めをするための位置決め部を有していることを特徴とする構成5に記載の液体吐出ヘッドの包装形態。
【0050】
<構成8>
前記緩衝材の前記突き当て面は、少なくとも長手方向において前記位置決め部に当接しない構成となっていることを特徴とする構成7に記載の液体吐出ヘッドの包装形態。
【0051】
<構成9>
前記緩衝材は、前記貫通口の開口面積の異なる少なくとも二つの緩衝材を接合して形成されていることを特徴とする構成4に記載の液体吐出ヘッドの包装形態。
【0052】
<構成10>
前記二つの緩衝材は、熱溶着により接合していることを特徴とする構成9に記載の液体吐出ヘッドの包装形態。
【0053】
<構成11>
前記緩衝材は、前記保護部材の長手方向への移動を規制する液体吐出ヘッドとの係合部を押圧していることを特徴とする構成1乃至10のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドの包装形態。
【0054】
<構成12>
前記袋部材は、長手方向の端部を開封するための開封手段を有していることを特徴とする構成1乃至11のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドの包装形態。
【0055】
<構成13>
前記開封手段は、前記保護部材が前記液体吐出ヘッドに固定される方向に移動する端部側に設けられていることを特徴とする構成12に記載の液体吐出ヘッドの包装形態。
【符号の説明】
【0056】
10 液体吐出ヘッド
200 保護部材
600a、b 緩衝材
800 袋部材