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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017691
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】プロジェクター用支持具
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/14 20060101AFI20240201BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20240201BHJP
   A47C 17/04 20060101ALI20240201BHJP
   A47C 21/00 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
G03B21/14 E
G03B21/00 D
A47C17/04 B
A47C21/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120503
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】513199992
【氏名又は名称】本地川 裕之
(71)【出願人】
【識別番号】513200184
【氏名又は名称】日興商事株式会社
(72)【発明者】
【氏名】本地川 裕之
【テーマコード(参考)】
2K203
【Fターム(参考)】
2K203FA74
2K203FA82
2K203FB07
2K203KA02
2K203KA05
2K203MA21
(57)【要約】
【課題】多くの小型プロジェクターはカメラ用三脚に対応していて天井投影が可能だが、ベッド臥床時に天井投影を鑑賞する場合、ベッド周辺で三脚を使用する十分なスペースを確保するのは容易ではない。プロジェクターの多くの機種は、天面に操作部を有し、三脚用ネジ孔は対側の底面に存在するので、既存の支持具を使ってヘッドボードに装着すると操作面が人と反対側になってしまい不便である。また多くの機種の音響性能は最小限にとどまる。
【解決手段】本発明はベッドのヘッドボードに装着し、ヘッドボードと壁面の間隙にプロジェクターを設置する簡便な手段を提供する。その際にプロジェクターの操作面がベッドに臥床する人の側に向くことで操作性を改善する。外付けスピーカーの併用も可能であり、音響性能の改善に対応する。またレンズを上方に向けるため光学回路と隣接する冷却吸排気口への粉塵侵入が懸念されるが、これを防ぐプロテクターを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロジェクター用支持具であって、フレーム部材とプロジェクター装着機構を有し、フレーム部材の一部をベッドのヘッドボードに係止する様式でヘッドボードに載置して、プロジェクター装着機構に装着したプロジェクターが天井投影した際に、プロジェクターの天面操作部がベッドに臥床する人の側に向くことを特徴とするプロジェクター用支持具。
【請求項2】
前記フレーム部材は下部に角度調節可能なヒンジで一端がフレーム部材と連結した1本以上の支持アームを有し、フレーム部材に対する角度を調節して他端が接触するベッドのヘッドボードから抗力を受けることでフレーム部材の角度を任意の角度に調節可能であることを特徴とする請求項1に記載のプロジェクター用支持具。
【請求項3】
請求項2に記載のプロジェクター用支持具において、支持アームが2本以上ある場合に、2本以上の支持アームの自由端部分を連結する棒状部材を追加して、2本以上の支持アームが協働してフレーム部材に対する角度調節が可能であることを特徴とする請求項1に記載のプロジェクター用支持具。
【請求項4】
請求項2に記載のプロジェクター用支持具において、フレーム部材が支持アームに代えてベッドのヘッドボードを挟持するクランプ機構を備えることを特徴とする請求項1に記載のプロジェクター用支持具。
【請求項5】
前記フレーム部材は、概ね上方向きに装着したプロジェクターの一部または全部がフレーム部材より下方に位置することを可能とする開口部を有することを特徴とする請求項1に記載のプロジェクター用支持具。
【請求項6】
請求項5に記載のプロジェクター用支持具において、フレーム部材が板状材料を用いた構造物であることに代えて、棒材を曲げ加工した素材を用いた構造物であることを特徴とする請求項1に記載のプロジェクター用支持具。
【請求項7】
請求項5に記載のプロジェクター用支持具において、フレーム部材が開口部に代えて、上方に向かうタワー構造を備えて、概ね上方向きに装着したプロジェクターがフレーム部材と干渉しない上方に装着できることを特徴とする請求項1に記載のプロジェクター用支持具。
【請求項8】
前記フレーム部材はスピーカー載置が可能なステージ部を有することを特徴とする請求項1に記載のプロジェクター用支持具。
【請求項9】
請求項8に記載のスピーカーステージにおいて、載置したスピーカーが転落することを抑止する位置変動制限機構を備えることを特徴とする請求項1に記載のプロジェクター用支持具。
【請求項10】
前記プロジェクター装着機構は冷却用吸排気の流れを妨げることなく、落下してくる粉塵のプロジェクター本体への侵入を防ぐプロテクター部材が装着可能であることを特徴とする請求項1に記載のプロジェクター用支持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像投影機器の支持具に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特開2005-176017
【特許文献2】特開平4-325113
【特許文献3】特開2016-180876
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
多くの小型プロジェクターはカメラ用三脚に対応していて天井投影が可能だが、ベッド臥床時に天井投影を鑑賞する場合、ベッド周辺で三脚を使用する十分なスペースを確保するのは容易ではない。プロジェクターの多くの機種は、天面に操作部を有し、三脚用ネジ孔は対側の底面に存在するので、既存の支持具を使ってヘッドボードに装着すると操作面が人と反対側になってしまい不便である。また多くの機種の音響性能は最小限にとどまる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のプロジェクター用支持具は、プロジェクターをベッドのヘッドボードに設置する装置であって、フレーム部材とプロジェクター装着機構を有し、フレーム部材の一部をベッドのヘッドボードに係止する様式でヘッドボードに載置する態様で使用して、プロジェクター装着機構に装着したプロジェクターが天井投影した際に、プロジェクターの天面操作部がベッドに臥床する人の側に向くことを特徴とするものである。
【0005】
本発明のプロジェクター用支持具は、フレーム部材が下部に角度調節可能なヒンジで一端がフレーム部材と連結した1本以上の支持アームを有し、フレーム部材に対する角度を調節して他端が接触するベッドのヘッドボードから抗力を受けることでフレーム部材の角度を任意の角度に調節可能であるとよい。
【0006】
本発明のプロジェクター用支持具は、前項に記載した支持アームが2本以上ある場合に、2本以上の支持アームの自由端部分を連結する棒状部材を追加して、2本以上の支持アームが協働してフレーム部材に対する角度調節が可能であってもよい。
【0007】
本発明のプロジェクター用支持具は、前記フレーム部材が支持アームに代えてベッドのヘッドボードを挟持するクランプ機構を備えるものであってもよい。
【0008】
本発明のプロジェクター用支持具は、フレーム部材が、概ね上方向きに装着したプロジェクターの一部または全部がフレーム部材より下方に位置することを可能とする開口部を有してもよい。
【0009】
本発明のプロジェクター用支持具は、フレーム部材が板状材料を用いた構造物であることに代えて、棒材を曲げ加工した素材を用いた構造物であってもよい。
【0010】
本発明のプロジェクター用支持具は、前項フレーム部材が開口部に代えて、上方に向かうタワー構造を備えて、概ね上方向きに装着したプロジェクターがフレーム部材と干渉しない上方に装着可能でもよい。
【0011】
本発明のプロジェクター用支持具は、前記フレーム部材がスピーカー載置が可能なステージ部を有してもよい。
【0012】
本発明のプロジェクター用支持具は、前記スピーカーステージが、載置したスピーカーが転落することを抑止する位置変動制限機構を備えてもよい。
【0013】
本発明のプロジェクター用支持具は、前記プロジェクター装着機構が、冷却用吸排気の流れを妨げることなく、落下してくる粉塵のプロジェクター本体への侵入を防ぐプロテクター部材を備えてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、小型プロジェクターをベッドのヘッドボードに装着して天井に映像を投映し、仰臥姿勢で鑑賞することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】寝室内の様子の一例。ベッド11の長手方向、本図の右側方向を頭側方向、左方向を足側方向とする。
図2】ヘッドボードと壁、両者の間に間隙がある例。 本図においてヘッドボードの左側を人側、右側を壁側とする。
図3】プロジェクターの例。 上段は投影レンズ21側から操作スイッチ群が配置された天面22を見た図。下段は投影レンズ側から底面のカメラ三脚用ネジ穴25を見た図。
図4】プロジェクター用支持具。 上段は前方上方向からの斜視図。下段は後方下方向からの斜視図。
図5】鉄格子様の縦棒で構成されるヘッドボードの例。
図6】クランプ機構でヘッドボードに固定する例。
図7】板材に代えて棒材で構造を形成した前方上方向からの斜視図。上段はプロジェクターとスピーカーを装着した様子。 下段はプロジェクター用支持具のみの図。
図8】板材に代えて棒材で構造を形成した後方下方向からの斜視図。上段はプロジェクターとスピーカーを装着してヘッドボードに着けた様子。下段はプロジェクター用支持具のみの図。
図9】金属棒材で作成した構造。
図10】プロジェクター装着用タワー。
図11】本実施形態の試作機。上段はベッドのヘッドボードにプロジェクターを装着した状態を前方上から見た様子。下段は同じくプロジェクターを装着した様子を後方下から見た様子。
図12】スピーカー位置変動制限機構の例。上段はフレーム部材に装着した部材に係止した折り曲げシート材でスピーカーの前方への移動を制限する柵を形成した様子。下段はフレーム部材に孔を設け、金属棒材を折り曲げ加工した柵でスピーカーの前方への移動を制限する例。
図13】プロジェクターの投影レンズと隣接する吸排気口への落下粉塵侵入を防ぐプロテクターの例。投映レンズからの光路にはRGB各色の回折に対応したコーティングを施した透明薄板またはフィルムを嵌めて、投影レンズに隣接する吸排気口を塞がないように十分な空間を保ちつつ吸排気流路を側面の開放部へと誘導する構造を持つ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、その前提条件となる課題や目的を踏まえつつ、詳細に説明する。
【0017】
本実施形態のプロジェクター用支持具は概ね矩形の天面をなすフレーム部材と、連結するプロジェクター装着機構で構成される。
【0018】
本実施形態では図1に示すようにベッドの長手における方向を、そこに臥床する人の頭と足の二方向で表現し、それぞれ頭側方向、足側方向と表現するものとする。
【0019】
本実施形態では概ね板状形状をなすヘッドボードにおいて、図2に示すようにベッドに臥床する人に面する方向を人側、その反対方向を壁側と表現するものとする。
【0020】
また、プロジェクター用支持具とそれに装着したプロジェクターを一体として本装置と表現するものとする。
【0021】
ベッドで仰臥した際に自然と視界にはいるのは天井である。ベッドが存在する寝室には少なくともベッドと同等の面積の天井が存在しているが、室内照明や空調などの機能器具が占拠しない限りにおいては単なる平面である。そこに映像が表示できると臥床姿勢で映像鑑賞ができる。
【0022】
プロジェクターをベッド下の床面に配置してミラーで投映方向を天井方向に変換する試みもあるが、プロジェクターのレンズを起点とする光路の拡大は急速で、ベッド臥床面さらにはヘッドボード天面では相当な大きさとなり、光路を確保できないと投映映像の欠落を生じてしまう。簡易な投影光路で天井投影を実現するにはプロジェクターそのものを天井向けに設置できるとよい。
【0023】
小型の機種を含めて多種類の映像投影用プロジェクターが存在する。多くの機種はカメラ用三脚に装着するためのネジ穴を備えており、冷却機構が通常の壁面投影用の設置角度以外の使用角度に対応している機種の製品説明には、天井投影が可能である旨が記されているものも多い。
【0024】
ベッドの配置で頭側にあたる寝室の壁面に映像投影用のプロジェクターを設置すると天井に映像投影ができて鑑賞ができるが、壁面への設置は常に可能とは限らない。一方でベッドのヘッドボードは臥床した人の頭部とほぼ一定した位置関係に存在しており、板状形状をなすヘッドボードのプロジェクターを装着できると、ベッドを移動させた場合にも設置工事などをすることなく臥床姿勢での映像鑑賞が可能である。
【0025】
プロジェクターの操作面は図3のように機材の天面に配置されていることが多い。一方でカメラ用三脚に対応したネジ孔25は対側の底面に配置されていることが多い。ヘッドボードの人側にプロジェクターを配置するとプロジェクター操作面は人に面するので操作は容易だが、本来の臥床用スペースを一部とはいえ占拠することに加え、実用時には電源や信号のケーブル群がヘッドボードの人側に露出する場合もある。
【0026】
また一般的にテーブルなどに載置して使用することを基本的な使用法と想定しているプロジェクターの光路は本体底面側より本体天面側に大きく拡大していくように光学回路が設計されていることが多い。そのためプロジェクターの天面を壁側向きに設置すると、プロジェクター天面を人側向きに設置した場合に比べて、より大きなチルト角でプロジェクターを設置しないと光路が壁に重なってしまうので、結果としてプロジェクター設置のフットプリントが大きくなってしまう。
【0027】
本実施形態では本装置がヘッドボードの人側に必要以上に突出していると実用上支障が生じうるので本装置は可能な範囲で壁側寄りに設置することが望ましい。本装置はヘッドボードに載置した際に、壁側に無制限に移動することを制限するストッパーをフレーム部材の人側端に備える。通常の使用では、このストッパーがヘッドボードの人側面に接触する状態で使用することが想定される。本実施形態では概ね矩形の天面をなすフレーム部材31の最も人側の部分に下方に向かうストッパー構造35を備えており、ヘッドボードの人側に係止することで本装置の壁側方向への移動を制限する。
【0028】
本実施形態ではプロジェクター装着機構32はフレーム部材の壁に近い側に配置されている。本実施形態ではプロジェクター装着機構32はカメラ三脚用ネジを挿通させる穴を有し、ベッド側から装着されてくるプロジェクターを三脚用ネジでネジ留め固定することができる。
【0029】
すなわち本実施形態のプロジェクター用支持具は、フレーム部材とプロジェクター装着機構を有し、フレーム部材の一部をベッドのヘッドボードに係止する様式でヘッドボードに載置する態様で使用して、プロジェクター装着機構に装着したプロジェクターが天井投影した際に、プロジェクターの天面操作部がベッドに臥床する人の側に向くことを特徴とするものである。
【0030】
本実施形態のように概ね矩形の天面をなすフレーム部材の最も人側の部分をヘッドボードに載置する使用形態では、本装置重量の大半すなわち重心はヘッドボードより壁側に位置するので、本装置全体はヘッドボードに載った部分を軸として下方に傾斜し、場合によってはヘッドボードから脱落する。
【0031】
本装置全体をフレーム部材天面が水平になる場合を含めて角度調節するためには、本装置を傾斜させる重心に抗して本装置支持する抗力が必要である。本実施形態ではフレーム部材底面の壁面に近い部分に任意の角度で可逆的に固定できるヒンジ38を備えて、これに棒状の支持アーム33の一端を連結する。支持アームの角度を調節して、ヘッドボードの壁側面に支持アームの自由端が接した状態で固定することで、必要な抗力を得ることができ、装置全体の設置角度は安定する。支持アームは1本でも成立するが、2本以上であってもよい。
【0032】
すなわち本実施形態のプロジェクター用支持具では、前記フレーム部材は下部に角度調節可能なヒンジで一端がフレーム部材と連結した1本以上の支持アームを有し、フレーム部材に対する角度を調節して支持アームの他端が接触するベッドのヘッドボードから抗力を受ける状態で固定することでフレーム部材の傾斜角度を任意の角度に調節可能であってもよい。
【0033】
ベッドのヘッドボードの形状が板状でないものも存在する。例えば病室用ベッドの図5のようにヘッドボードは輪郭を形成する角丸矩形状の金属パイプを主体として、縦方向に先のパイプより直径が細い金属パイプを等間隔に鉄格子上に配した形状がある。このようなヘッドボードの場合、前記支持アームでは縦のパイプ同士の間の空間をすり抜けてしまい、抗力を確保できない。
【0034】
2本以上の支持アームを横方向に棒材で連結し、例えば、コの字型の支持バー36を構成すれば、前記の鉄格子状ヘッドボードの縦棒と交叉接触する点を確保でき、本装置の角度調節に必要な抗力を得ることができる。
【0035】
すなわち本実施形態のプロジェクター用支持具では、支持アームが2本以上ある場合に、2本以上の支持アームの自由端部分を連結する棒状部材を追加して、2本以上の支持アームが協働してフレーム部材に対する角度調節が可能であってもよい。
【0036】
ヘッドボード形状が板状の場合には、図6のように、それを挟み込むクランプ機構で装着する手法も選択できる。ただしC字クランプを構成する2枚の板の距離で対応できるヘッドボードの厚さが制限されることと、ヘッドボードの厚みが大きいとクランプネジのせり出しが大きくなるので、ヘッドボードと壁の間隔を大きく確保する必要が生じる。この条件が許諾される環境においては古典的な信頼できる固定方法である。
【0037】
すなわち本実施形態のプロジェクター用支持具では、フレーム部材が支持アームに代えてベッドのヘッドボードを挟持するクランプ機構を備えたものであってもよい。
【0038】
一般にプロジェクター本体は縦向きに載置できる設計はなされていない。本実施形態ではプロジェクターがカメラ用三脚に対応するネジ穴を備えていることを想定して、三脚用ネジすなわち1/4 - 20UNC と同等のネジを用いてプロジェクターをプロジェクター装着機構に固定する。
【0039】
概ね縦向きに配置するプロジェクターの三脚ネジ用穴と最下部との距離は機種によって異なる。そのため本実施形態におけるフレーム部材天面とプロジェクター装着機構の距離は十分に確保されなければならない。またプロジェクターはレンズ実装面の対側面に接続コネクターや冷却用吸排気口が設けられている機種が存在し、プロジェクター筐体の寸法から単純に算出される以上に距離を大きくとる必要がある。本実施形態ではフレーム部材に開口部37を設け、プロジェクターの下方になる部分がフレーム部材天板面より下に位置することを可能にした。これにより、ケーブル類の接続コネクターや吸排気口に確保すべき空間確保は容易になり、プロジェクター装着機構の配置もフレーム部材天板に近い高さ、またはほぼ下方とすることも可能となった。本実施形態ではフレーム部材天板より15mm程度高い位置としている。
【0040】
ベッドのヘッドボード形状は前述の鉄格子状のように板状でない場合の他に、その天面が直線形状でない場合も存在する。たとえば、全体にカマボコ状の曲線を描く天面のベッドは珍しくない。フレーム部材に開口部がないと、本装置の設置に際してベッドヘッドボードとの接触面は左右の中央の最高点1点のみとなり、ヤジロベエのように不安定になってしまう。フレーム部材の開口部をベッド側まで拡大すると、前記ヘッドボード天面のカーブ部分の頂点は開口部と抜けてフレーム部材より上に位置し、フレーム部材とベッドヘッドボードの接触点は開口部37の両端に位置することになる。
【0041】
すなわち本実施形態のプロジェクター用支持具においては、フレーム部材が、概ね上方向きに装着したプロジェクターの一部または全部がフレーム部材より下方に位置することを可能とする開口部を有してもよい。
【0042】
図4は開口部を有するフレーム部材を使ったプロジェクター用支持具の一例を示しているが、フレーム部材と支持バーは板金加工によって成型されている。本実施形態のプロジェクター用支持具のフレーム部材は大きな重量を支える必要性は希薄であり、ヘッドボードへの係止機能すなわち張力に耐えることが求められる。この性能は金属棒材によっても実現可能である。図7図8は金属棒材を用いてフレーム部材と支持バーを構成する案を示している。図9は、この案についての試作である。強度は十分得られるが、プロジェクター装着機構やヒンジ機能を提供する部材との接合に溶接加工などが必要となる。
【0043】
すなわち本実施形態のプロジェクター用支持具は、フレーム部材が板状材料を用いた構造物であることに代えて、棒材を曲げ加工した素材を用いた構造物であってもよい。
【0044】
本実施形態のフレーム部材は開口部を有するものとしているが、板金加工品であれば、開口部の材料は無駄になってしまう。ベッドのヘッドボードが厚くない板状形状での天面構造が平坦であれば、例えばクランプ固定が使用可能であり、全体の重心位置が高くても脱転する可能性が低いのでフレーム部材は開口部を設けずに図10のようなタワー形状の部材を追加してプロジェクター装着機構とすることも可能である。図6では、プロジェクター装着タワー形状部材を使用した例を示している。
【0045】
すなわち本実施形態のプロジェクター用支持具では、フレーム部材が開口部に代えて、上方に向かうタワー構造を備えて、概ね上方向きに装着したプロジェクターがフレーム部材と干渉しない上方に装着できてもよい。
【0046】
本実施形態が対象とする小型プロジェクターは内蔵するスピーカーの口径は小さくて、駆動用のオーディオアンプも最小限の性能に留まることが多い。長時間の視聴になると、音という要素も無視できない。パソコンの液晶モニターに並置する用途のスピーカーが市場には存在する。プロジェクターのイヤホン端子に接続することで、プロジェクター本体だけの場合より良好な音響性能を得ることができる。本実施形態ではフレーム部材の開口部の両外側をスピーカー載置に利用できる。必要に応じてスピーカーの脱転防止機構などを追加することも可能である。
【0047】
すなわち本実施形態のプロジェクター用支持具では、フレーム部材はスピーカー載置が可能なステージ部を有してもよい。
【0048】
本装置はベッドのヘッドボードに装着して使用し、臥床した人の頭部から上方に存在する。本装置そのものや、それにネジ固定されたプロジェクターが転落してくる可能性は低いが、フレーム部材のスピーカーステージ部分に載置したスピーカーの固定性は希薄である。地震などでスピーカが動いて転落してくる事態を防ぐために、スピーカーステージ表面またはスピーカー底面に滑り防止シートを貼付するなどの対策のほかに図12に示すような防護柵に相当する物理的な境界構造を付加することが可能である。
【0049】
すなわち本実施形態のプロジェクター用支持具では、フレーム部材のスピーカーステージ部分において、載置したスピーカーが転落することを抑止する位置変動制限機構を有してもよい。
【0050】
プロジェクター本体はテーブル天面上での載置や天井から吊り下げ設置を想定しており、本実施形態のように長時間にわたって投影レンズを上向きに設置することは稀である。これは浮遊粉塵が自然と落下する方向に投影レンズを含む光学機構や、多くの機種でレンズに隣接して設けられている冷却用吸排気口に侵入しやすいことを意味する。浮遊粉塵の侵入を少しでも低減するために図13で示すようなプロテクターを付加することが可能である。この際には投影レンズからの光路をプロテクトする回折に対応したフィルターは光路との角度を規定範囲にすることが望ましいので、プロテクターはプロジェクター本体またはプロジェクターとスクリューで締結されるプロジェクター装着機構に連結するとよい。
【0051】
すなわち本実施形態のプロジェクター用支持具では、プロジェクター装着機構は冷却用吸排気の流れを妨げることなく、落下してくる粉塵のプロジェクター本体への侵入を防ぐプロテクター部材が装着可能であってもよい。
【0052】
以上、本発明のプロジェクター用支持具の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
主にベッド天井面への映像投影用のプロジェクター用支持具について記載してきたが、安静仰臥が必要な人にとって、天井を映像情報の窓口としてできると便利である。スマートホンに表示される画面をそのままミラーリング表示するだけでも、照度の高いバックライトからの透過光を直接凝視するスマートホンと異なり、投影映像の反射光は目にも優しく特に入眠前に神経を不要に刺激する可能性も低減できる。さらにプロジェクターの機種によっては専用眼鏡を併用することで3D表示も可能であり、利用領域の可能性はさらに広がることが期待できる。
【符号の説明】
【0054】
11 ベッド
12 ヘッドボード
15 壁
16 ヘッドボードと壁の間隙
21 投影レンズ
22 操作スイッチ群が配置された天面
25 底面に配置されたカメラ三脚用ネジ穴
31 フレーム部材
32 プロジェクター装着機構
33 支持アーム
35 フレーム部材のストッパー構造
36 支持バー
37 フレーム部材の開口部
38 ヒンジ
51 クランプ板
52 クランプねじ部材
55 プロジェクター装着用タワー部材
56 スピーカー
57 シート材によるスピーカー移動制限柵
58 金属棒材曲げ加工によるスピーカー移動制限柵
61 フレーム部材に相当する棒材
62 支持バー部材に相当する棒材
63 ヒンジ
71 プロジェクター装着用タワー部材
75 プロジェクター装着板
76 カメラ用三脚ネジ穴
82 プロジェクター
83 プロジェクター背面
85 フレーム部材開口部。この例ではヘッドボードはカマボコ型をなしているので開口部分に嵌入している。
86 支持バーがベッドヘッドボード壁側面に接触
92 プロジェクター光路のための窓。RGBに対応したコーティングを施した透明板材または透明フィルム材で塞ぐことで光学回路への粉塵侵入を防ぐ。
93 吸排気流のために開放
94 吸排気流を誘導するように傾斜構造
96 下面は開放構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13