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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176920
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】回転体の計測システム
(51)【国際特許分類】
   G08C 23/04 20060101AFI20241212BHJP
   G08C 17/00 20060101ALI20241212BHJP
   G08C 19/00 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
G08C23/04 B
G08C17/00 B
G08C19/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095796
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野沢 右
(72)【発明者】
【氏名】遠山 護
(72)【発明者】
【氏名】木村 正信
【テーマコード(参考)】
2F073
【Fターム(参考)】
2F073AA02
2F073AA03
2F073AA23
2F073AA35
2F073AA40
2F073AB01
2F073AB04
2F073BB01
2F073BC02
2F073BC04
2F073CC05
2F073CC20
2F073CD11
2F073CD30
2F073DD01
2F073DE02
2F073EE12
2F073EF09
2F073FF03
2F073FF08
2F073FG01
2F073FG02
2F073GG01
2F073GG04
2F073GG05
2F073GG07
(57)【要約】
【課題】電解質電池を使うことなく、回転に伴う電池の破損を抑え、給電に伴う電磁ノイズを抑制した状態において回転体の計測を可能にする。
【解決手段】回転体200に、データロガー18、電圧保持キャパシタ14、電磁給電コイル10、光信号受光部20を設け、回転体200の外部に、電磁結合コイル28、光信号送信部34を設け、電磁結合コイル28から電磁給電コイル10へと非接触で電力を供給し、電圧保持キャパシタ14において当該電力を保持し、電圧保持キャパシタ14に保持された電力を使用してデータロガー18によって状態量を計測及び記憶し、光信号送信部34から送信される給電信号を光信号受光部20で検知することによって電磁結合コイル28から電磁給電コイル10への非接触の電力供給を一時的に休止する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体に関する状態量を計測する計測システムであって、
前記回転体に、データロガーと、電力保持部と、受電部と、給電信号検知部と、を設け、
前記回転体の外部に、給電部と、給電信号送信部と、を設け、
前記給電部から前記受電部へと非接触で電力を供給し、前記電力保持部において当該電力を保持し、前記電力保持部に保持された電力を使用して前記データロガーによって前記状態量を計測及び記憶し、
前記給電信号送信部から送信される給電信号を前記給電信号検知部で検知することによって、前記給電部から前記受電部への非接触の電力供給を一時的に休止することを特徴とする計測システム。
【請求項2】
請求項1に記載の計測システムであって、
前記休止の期間及び前記給電部から前記受電部への給電期間において、前記データロガーによって前記状態量を計測及び記憶させることを特徴とする計測システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の計測システムであって、
前記給電信号は、光信号であることを特徴とする計測システム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の計測システムであって、
前記給電信号は、無線通信の電波や電磁供給で発生する電圧を検知した信号であることを特徴とする計測システム。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の計測システムであって、
前記給電信号検知部は、前記回転体の回転中心軸に設けたことを特徴とする計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体の計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、高温かつ高速回転する計測対象物の回転速度、トルク、応力、温度、慣性力及び振動等の特性を計測するために超小型データロガーが使用されている。
【0003】
固定モジュールと、回転軸上に取り付けられて回転軸の回転に伴って回転する回転軸モジュールと、を有し、固定モジュールと回転軸モジュールとの間で光信号を送受信してワイヤレス接続された高速・非接触計測データ通信システムが開示されている(特許文献1)。
【0004】
被測定量を電圧信号に変換する被測定量-電圧変換装置と、電圧信号を周波数信号に変換する電圧-周波数変換回路と、電気信号を光信号に変換して回転体の外へ信号を出力する電気-光変換回路と、これらの回路に必要な電力を非接触で供給するロータリトランスの2次コイルと、を有する回転体と、ロータリトランスの1次コイルと、回転体からの光信号を受信し電気信号に変換する光-電気変換回路と、周波数信号を電圧信号に変換する周波数-電圧変換回路と、を有する固定部と、を備える高速回転体内被測定量の計測装置が開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-282965号公報
【特許文献2】特開昭59-172098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、一般的な技術では、回転軸上に取り付けられたセンサが、回転軸のトルク、応力、温度、慣性力及び振動等のパラメータをリアルタイムで検知・収集し、その後、センサが検知した検知データ(計測データ)をプロセッサに伝送してデータ分析処理を実施している。センサは高速回転する回転軸上に取り付けられているため、回転軸側から固定側への最適なデータ伝送方式は、ワイヤレス方式によるデータ通信が適用されている。回転軸上に備えた装置への給電は、電池パック又は無線エネルギを介して行われている。
【0007】
しかしながら、電池パックに用いられる電解質電池を用いた場合、高速回転時に遠心力により電池の破損が生じ、データロガーが使用できなくなるおそれがある。
【0008】
また、非接触給電を用いる際に給電時に電磁ノイズが発生し、計測精度が低下することが問題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの態様は、回転体に関する状態量を計測する計測システムであって、前記回転体に、データロガーと、電力保持部と、受電部と、給電信号検知部と、を設け、前記回転体の外部に、給電部と、給電信号送信部と、を設け、前記給電部から前記受電部へと非接触で電力を供給し、前記電力保持部において当該電力を保持し、前記電力保持部に保持された電力を使用して前記データロガーによって前記状態量を計測及び記憶し、前記給電信号送信部から送信される給電信号を前記給電信号検知部で検知することによって、前記給電部から前記受電部への非接触の電力供給を一時的に休止することを特徴とする計測システムである。
【0010】
ここで、前記休止の期間及び前記給電部から前記受電部への給電期間において、前記データロガーによって前記状態量を計測及び記憶させることが好適である。
【0011】
また、前記給電信号は、光信号であることが好適である。
【0012】
また、前記給電信号は、無線通信の電波や電磁供給で発生する電圧を検知した信号であることが好適である。
【0013】
また、前記給電信号検知部は、前記回転体の回転中心軸に設けたことが好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、回転体に電解質電池を配置することなく、回転に伴う電池の破損を抑え、給電に伴う電磁ノイズを抑制した状態において回転体の計測が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態における回転体の計測システムの構成を示す図である。
図2】本発明の実施の形態における回転体の計測システムの回路構成を示す図である。
図3】本発明の実施の形態における回転体の計測システムの構成の別例を示す斜視図である。
図4】本発明の実施の形態における断続式給電時の各種信号の時間変化を示す図である。
図5】本発明の実施の形態における断続式給電時の各種信号の時間変化を示す図である。
図6】本発明の実施の形態における回転体の計測システムの実体配線図である。
図7】本発明の実施の形態における電圧保持回路基板の実装写真を示す図である。
図8】本発明の実施の形態における受電コイル基板の実装写真を示す図である。
図9】本発明の実施の形態における回転計測ユニットの実装写真を示す図である。
図10】本発明の実施の形態における送電コイル基板の実装写真を示す図である。
図11】本発明の実施の形態における送電ユニットの実装写真を示す図である。
図12】本発明の実施の形態における回転体の計測システムの机上動作確認の結果を示す図である。
図13】本発明の実施の形態における回転体の計測システムの机上動作確認の結果を示す図である。
図14】本発明の実施の形態における回転計測ユニットの実装写真を示す図である。
図15】本発明の実施の形態における回転試験時における計測システムの実装写真を示す図である。
図16】本発明の実施の形態における回転体の計測システムの回転試験の結果を示す図である。
図17】本発明の実施の形態における回転体の計測システムの回転試験の結果を示す図である。
図18】本発明の実施の形態における回転体の計測システムの回転試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態における回転体の計測システム100は、図1に示すように、データロガー本体102及び給電部104を組み合わせて構成される。データロガー本体102は、測定対象物である回転体200に取り付けられ、回転体200に関して回転速度、トルク、応力、温度、慣性力及び振動等の状態量を計測する。データロガー本体102には給電部104から非接触での給電が行われ、データロガー本体102は当該給電によって得られた電力を使用して計測を行う。
【0017】
図2は、データロガー本体102及び給電部104の構成を示す。データロガー本体102は、電磁給電コイル10、整流ブリッジ12、電圧保持キャパシタ14、電圧レギュレータ16、データロガー18、光信号受光部20及びセンサ22を含んで構成される。また、給電部104は、給電スイッチ24、電磁給電ドライバ26、電磁結合コイル28、光信号スイッチ30、NOT素子32及び光信号送信部34を含んで構成される。
【0018】
給電部104からデータロガー本体102へ給電を行う状態では、外部から給電スイッチ24をオンにする給電信号が入力され、給電スイッチ24がオン状態となる。これによって、電磁給電ドライバ26から電磁結合コイル28へと交流電流が供給される。電磁結合コイル28はデータロガー本体102の電磁給電コイル10と電磁気的に結合されており、電磁結合コイル28へ交流電流を供給することによって電磁給電コイル10に起電力が誘起される。すなわち、電磁給電コイル10は電磁気的に電力を受電する受電部として機能し、電磁結合コイル28は電磁気的に給電する給電部として機能する。電磁給電コイル10に誘起された交流の起電力は、整流ブリッジ12において整流されて電圧保持キャパシタ14に供給される。電圧保持キャパシタ14は、印加された電圧に応じた電力を蓄積する電力保持部として機能する。
【0019】
データロガー本体102は、電圧保持キャパシタ14に蓄積された電力を使用して回転体200の状態量の計測及び記憶を行う。電圧レギュレータ16は、電圧保持キャパシタ14の端子電圧を所定の電圧に調整してデータロガー18の電源端子へ印加する。データロガー18は、電圧レギュレータ16からの電源供給を受けて、回転体200に設置された各種の状態量を計測するためのセンサ22から信号を受信して、当該信号をデータとして内部メモリに記憶させる。
【0020】
ここで、データロガー本体102は、給電部104からの給電が行われていない期間において回転体200の状態量を取得する。給電部104では、外部から給電スイッチ24をオンにする給電信号が入力されると、当該給電信号はNOT素子32によって反転されて、光信号送信部34にはオフにする給電信号が入力される。この状態では、光信号送信部34は光信号を送信しない。一方、外部から給電スイッチ24をオフにする給電信号が入力されると、当該給電信号はNOT素子32によって反転されて、光信号送信部34にはオンにする給電信号が入力される。この状態では、光信号送信部34は光信号を送信する。データロガー本体102では、光信号送信部34から送信された光信号が光信号受光部20によって受信される。このように、光信号送信部34は給電信号送信部として機能し、光信号受光部20は給電信号検知部として機能する。データロガー18は、光信号受光部20において光信号が受信されている期間のみにおいてセンサ22からの信号をデータとして内部メモリに記憶させる。
【0021】
図1に示した回転体の計測システム100では、回転体200の回転軸の先端にデータロガー本体102を配置し、回転軸の先端側から非接触の電磁的結合により給電を行う構成としている。また、データロガー本体102の光信号受光部20も回転体200の回転軸の先端に配置されており、回転軸の先端側から給電部104の光信号送信部34によって光信号が断続的に送信されることによって、非接触給電が断続的に中止され、その間にデータロガー18によるデータの記憶が実行される。なお、非接触給電が行われている給電期間においてデータロガー18によるデータの計測及び記憶が実行されてもよい。
【0022】
なお、図3に示すように、データロガー本体102の光信号受光部20を回転体200の回転軸の側面に配置した構成としてもよい。この場合、給電部104の光信号送信部34は、回転体200が回転したときに所定の回転角(位相角)において光信号受光部20と対向する位置に配置することが好適である。このような配置とした場合、給電部104の光信号送信部34から常に光信号を出力させておくことによって、回転体200が1回転する毎に給電部104の光信号受光部20に光信号が入力されることになる。例えば、光信号受光部20に光信号が入力することをトリガとして、光信号受光部20に光信号が入力した時点から回転体200が1回転するまでの所定の期間にデータロガー18によってデータを記憶させ、回転体200が1回転するまでの残りの期間に非接触給電を行うようにすればよい。
【0023】
また、給電信号は、光信号とせず、無線通信の電波としてもよい。また、電磁給電ドライバ26から電磁給電コイル10への電磁的な電力供給によって発生する電圧を検知することで給電信号としてもよい。すなわち、電磁給電ドライバ26から電磁給電コイル10への電磁的な電力供給によって発生する電圧を検知し、当該検知信号に応じて非接触給電が行われている期間か否かに応じてデータロガー18に対する制御を行ってもよい。
【0024】
[断続式非接触給電の検討]
以下、図2に示した回転体の計測システム100の模擬回路を作成し、当該模擬回路によって断続式非接触給電の動作確認を行った結果を説明する。
【0025】
図4は、非接触電磁給電について100msの測定周期中に20msの給電休止期間を設けた場合の各種信号の時間変化を示す。給電を行っている期間では、給電コイルに起因するノイズが生じ、データロガー18によって計測される信号にもノイズが重畳した。これに対して、給電を休止している期間では、給電コイルに起因するノイズは大きく減少し、データロガー18によって計測される信号のノイズも減少し、計測対象物理量の変化を適切に計測することができた。
【0026】
図5は、電圧保持キャパシタ14の保持電圧と電圧レギュレータ16の出力電圧の時間変化を示す。給電を休止している期間における負荷電流が適正であれば、図5(a)に示すように、電圧保持キャパシタ14の保持電圧は第1基準値(模擬回路では6.5V)以上を維持しており、電圧レギュレータ16の出力電圧も第2基準値(模擬回路では5V)以上を維持できることが確認された。
【0027】
ただし、給電休止期間中の負荷電流が不適であると、図5(b)に示すように、電圧保持キャパシタ14の保持電圧及び電圧レギュレータ16の出力電圧が基準値を維持できなくなる。また、電圧保持キャパシタ14の保持電圧は、データロガー本体102の電磁給電コイル10と給電部104の電磁結合コイル28との距離にも影響を受ける。したがって、電磁給電コイル10と電磁結合コイル28との距離や給電休止期間は、電圧保持キャパシタ14の保持電圧と電圧レギュレータ16の出力電圧が所望の電圧値を維持できるように設定することが好適である。
【0028】
[実施例]
図6は、実施例におけるデータロガー本体102の実体配線の例を示す図である。データロガー本体102は、データロガー部110、電圧保持回路基板112及び受電基板114を含んで構成される。また、図7は、電圧保持回路基板112の実装写真を示す。また、図8は、受電基板114の実装写真を示す。図9は、データロガー本体102全体の実装写真を示す。
【0029】
データロガー部110は、接続されたセンサ22からのセンサ信号を受信して、電圧保持キャパシタ14に蓄積された電力を使用して回転体200の状態量の計測及び記憶を行う。本実施例では、センサ22はT型熱電対とした。電圧保持回路基板112は、電圧保持キャパシタ14及び電圧レギュレータ16に加えて過電圧保護回路36を設けた。過電圧保護回路36は、受電基板114から出力される電圧が所定の過電圧基準値を超えない場合に電圧保持キャパシタ14及び電圧レギュレータ16に電力を供給する。受電基板114は、円筒形のケース38の端部に電磁給電コイル10、整流ブリッジ12及び光信号受光部20を配置した構成とした。電磁給電コイル10は、円筒形のケース38の端部の周囲を巻回するように配置した。また、光信号受光部20は、円筒形のケース38の端部の中心軸付近に配置した。
【0030】
本実施例の構成では、データロガー部110と電圧保持回路基板112は互いに表裏となるように配置した。データロガー部110及び電圧保持回路基板112は、受電基板114の円筒形のケース38の内部空間に収納した。受電基板114は、ケース38の内部空間にデータロガー部110及び電圧保持回路基板112を収納した状態で回転体200の回転軸の端部において当該回転軸と受電基板114の中心軸が同軸となるように取り付けた。
【0031】
図10は、給電部104を構成する送電コイル基板120の実装写真を示す。また、図11は、給電部104を構成する送電ユニット122の実装写真を示す。
【0032】
送電コイル基板120は、円筒形のケース40に電磁結合コイル28及び光信号送信部34を組み込んだ構成とした。なお、光信号送信部34は、LED素子とした。電磁結合コイル28は、送電コイル基板120を受電基板114へ対向させたときに電磁結合コイル28から電磁給電コイル10へ給電できる位置に配置した。また、光信号送信部34は、送電コイル基板120を受電基板114へ対向させたときに光信号送信部34から出力された光を光信号受光部20で受光できる位置に配置した。本実施例では、光信号送信部34は、円筒形のケース40の端部の中心軸付近に配置した。また、送電コイル基板120には、データロガー本体102のデータロガー部110で取得及び記憶された計測データを無線受信するための外部通信アンテナ42も設けた。
【0033】
送電ユニット122は、送電コイル基板120と電気的に接続され、給電部104に含まれる給電スイッチ24、電磁給電ドライバ26、光信号スイッチ30及びNOT素子32を実装する。また、送電ユニット122には、さらに送電パルス周波数設定部44及びデューティ比設定部46も設けた。送電パルス周波数設定部44は、電磁結合コイル28から送出する電磁波である送電パルスの周波数を設定するために用いられる。デューティ比設定部46は、送電パルスのデューティ比(=パルス幅/周期)を調整するために用いられる。設定は画面下の±キーで行うことができる。本実施例では、パルス周期は100msecとし、デューティ比は80%(すなわち、送電パルスの周期100msecに対して20msecを給電休止)とした。
【0034】
当該構成にて、机上での動作確認を行った。給電側の電磁結合コイル28と受電側の電磁給電コイル10の間に絶縁体のスペーサを挟んで、これらの間隔は3mmに設定した。給電休止期間を20msecとした場合、電圧レギュレータ16の出力電圧は4.979Vを示した。これによって、電圧保持回路基板112が動作可能であることが確認できた。なお、受電側の電磁給電コイル10と給電側の電磁結合コイル28との間隔は3~4mm以内であれば、デューティ比が75%(給電休止25msec)以上とすれば電圧レギュレータ16の出力電圧を4.9V以上に維持できた。したがって、当該条件下において、データロガー本体102側に電解質電池を設けることなく動作や通信ができることを確認できた。
【0035】
図12は、机上動作確認時のセンサ22として設けた熱電対の出力の一例を示す。データロガー本体102の温度チャンネルのサンプリング速度(fs)は、最大値である12.5kHzとした。大気中に開放した7本の熱電対出力は、給電休止開始の信号直後にも連続したデータが得られたことから、正常に動作した。ただし、給電休止前後における熱電対のノイズ影響の違いは確認できなかった。
【0036】
図13は、受電側の電磁給電コイル10の近傍に熱電対を配置し、電磁ノイズの影響を確認した結果を示す。図13において、給電休止期間終了の信号は表示されないため、休止期間を示すラインを便宜的に引いて示した。受電側の電磁給電コイル10は発熱により35~40℃の温度になり、電磁給電コイル10の近傍に配置した熱電対は電磁ノイズの影響受けた。ただし、図12と同様に、給電期間と給電休止期間におけるノイズ影響の違いは不明であった。
【0037】
次に、回転体の計測システム100を回転体200に実際に設置して動作確認を行った。
【0038】
図14は、回転体200に固定する前のデータロガー本体102の状態を示す写真である。データロガー本体102を構成するデータロガー部110及び電圧保持回路基板112は受電基板114のケース38内に収納した。また、7本設けたセンサ22(熱電対)のうち3本はケース38の外に配置し、残りの4本をケース38に配置した。
【0039】
図15は、回転体の計測システム100を回転体200に取り付けた状態を示す写真である。データロガー本体102のケース38は回転体200の回転軸の先端部に回転体200と共に回転可能となるように固定した。給電部104は、データロガー本体102の電磁給電コイル10と給電部104の電磁結合コイル28は軸心を合わせて対向するように配置した。給電側の電磁結合コイル28と受電側の電磁給電コイル10との間のすき間は3mmに設定した。データロガー本体102にセンサ22として設けた7本の熱電対のうち3本をケース38の外部の接続アダプタ部へ配置した。
【0040】
回転試験時には、回転体200を2500rpmで回転させながら、当該3本の熱電対の熱接点部にヒートガンにより任意に温風を当て加熱を行った。断続給電のパルス設定は、給電期間を100msecとし、そのうち給電休止期間を20msecとした。データロガー18のデータのサンプリング周波数fsは、5Hz~最大12.5kHzとした。
【0041】
図16は、回転体の計測システム100を回転体200に実際に設置して動作確認を行った結果を示す。図16は、回転体200の回転数が2500rpm、データロガー18のデータのサンプリング周波数fsが5Hzのときのサンプリングの結果を示す。ケース38の外部で加熱した3点のセンサ22(熱電対)とケース38の内部の温度を測定した4点のセンサ22(熱電対)においていずれも連続してデータが取得できた。すなわち、回転体200が回転中において、データロガー本体102に電解質電池を設けることなく、データロガー18にてデータを正常に取得できた。なお、本結果からも断続給電における給電休止時のセンサ22へのノイズの影響は確認できなった。
【0042】
図17は、回転体200の回転数が2500rpm、データロガー18のデータのサンプリング周波数fsが12.5Hzに上げたときのサンプリングの結果を示す。また、図18は、図17の一部を拡大した結果を示す。図18では、ケース38の外部で加熱した3点のセンサ22(熱電対)の出力の詳細を示した。この場合も、ケース38の外部で加熱した3点のセンサ22(熱電対)とケース38の内部の温度を測定した4点のセンサ22(熱電対)においていずれも連続してデータが取得できた。これにより、給電休止期間において、センサ22の出力のノイズの減少を確認できた。すなわち、給電休止信号の立ち上がりから休止終了までのセンサ22の出力信号においてノイズが僅かながらではあるが給電時よりも減少することが確認できた。
【0043】
以上のように、本実施の形態における回転体の計測システム100によれば、データロガー本体102に電解質電池を設けることなく、給電に伴う電磁ノイズを抑制した状態において回転体200の状態量を計測することができる。また、回転体200と共に回転するデータロガー本体102に電解質電池を設ける必要がなく、電解質電池の破損を防ぐことができる。
【0044】
[本願発明の構成]
[構成1]
回転体に関する状態量を計測する計測システムであって、
前記回転体に、データロガーと、電力保持部と、受電部と、給電信号検知部と、を設け、
前記回転体の外部に、給電部と、給電信号送信部と、を設け、
前記給電部から前記受電部へと非接触で電力を供給し、前記電力保持部において当該電力を保持し、前記電力保持部に保持された電力を使用して前記データロガーによって前記状態量を計測及び記憶し、
前記給電信号送信部から送信される給電信号を前記給電信号検知部で検知することによって、前記給電部から前記受電部への非接触の電力供給を一時的に休止することを特徴とする計測システム。
[構成2]
構成1に記載の計測システムであって、
前記休止の期間及び前記給電部から前記受電部への給電期間において、前記データロガーによって前記状態量を計測及び記憶させることを特徴とする計測システム。
[構成3]
構成1又は2に記載の計測システムであって、
前記給電信号は、光信号であることを特徴とする計測システム。
[構成4]
構成1又は2に記載の計測システムであって、
前記給電信号は、無線通信の電波や電磁供給で発生する電圧を検知した信号であることを特徴とする計測システム。
[構成5]
構成1~4のいずれか1項に記載の計測システムであって、
前記給電信号検知部は、前記回転体の回転中心軸に設けたことを特徴とする計測システム。
【符号の説明】
【0045】
10 電磁給電コイル、12 整流ブリッジ、14 電圧保持キャパシタ、16 電圧レギュレータ、18 データロガー、20 光信号受光部、22 センサ、24 給電スイッチ、26 電磁給電ドライバ、28 電磁結合コイル、30 光信号スイッチ、32 NOT素子、34 光信号送信部、36 過電圧保護回路、38 ケース、40 ケース、42 外部通信アンテナ、44 送電パルス周波数設定部、46 デューティ比設定部、100 計測システム、102 データロガー本体、104 給電部、110 データロガー部、112 電圧保持回路基板、114 受電基板、120 送電コイル基板、122 送電ユニット、200 回転体。
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