(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176926
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】焼成調理用冷凍食品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 35/00 20160101AFI20241212BHJP
A23L 3/36 20060101ALI20241212BHJP
A23L 7/157 20160101ALI20241212BHJP
【FI】
A23L35/00
A23L3/36 A
A23L7/157
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095810
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】松川 愛
(72)【発明者】
【氏名】森 大輔
【テーマコード(参考)】
4B022
4B025
4B036
【Fターム(参考)】
4B022LA01
4B022LB01
4B022LJ01
4B022LJ02
4B022LJ05
4B022LQ10
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4B036LH04
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4B036LH41
4B036LH50
4B036LK01
4B036LP01
4B036LP02
4B036LP06
4B036LP12
4B036LP17
(57)【要約】
【課題】凍結状態の包餡麺帯食品と当該包餡麺帯食品に付着している凍結状態のバッター組成物とを含む冷凍食品であって、喫食に適した状態になるまで焼成調理が施されたときの、包餡麺帯食品の表面のヌルつきが改善した冷凍食品等の提供。
【解決手段】凍結状態の包餡麺帯食品と、当該包餡麺帯食品の外表面の少なくとも一部に付着している凍結状態のバッター組成物とを含み、前記バッター組成物の30℃における粘度が、50~1400mPa・sである、焼成調理用冷凍食品。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凍結状態の包餡麺帯食品と、当該包餡麺帯食品の外表面の少なくとも一部に付着している凍結状態のバッター組成物とを含み、
前記バッター組成物の30℃における粘度が、50~1400mPa・sである、焼成調理用冷凍食品。
【請求項2】
前記バッター組成物が、水、並びに、穀物粉及び/又は澱粉を含む、請求項1記載の冷凍食品。
【請求項3】
前記包餡麺帯食品に付着している前記バッター組成物の量が、前記包餡麺帯食品に対して3~40重量%である、請求項1記載の冷凍食品。
【請求項4】
前記包餡麺帯食品が、餃子である、請求項1記載の冷凍食品。
【請求項5】
凍結状態の包餡麺帯食品の外表面の少なくとも一部に、凍結状態のバッター組成物が付着している形態とする工程を含み、
前記バッター組成物の30℃における粘度が50~1400mPa・sである、焼成調理用冷凍食品の製造方法。
【請求項6】
前記工程が、下記(i)~(x)のいずれかの工程を含む、請求項5記載の製造方法。
(i)凍結状態の包餡麺帯食品の外表面の少なくとも一部に、凍結していないバッター組成物を付着させる工程
(ii)凍結状態の包餡麺帯食品の外表面の少なくとも一部に、凍結していないバッター組成物を付着させ、その後、これらを凍結させる工程
(iii)包餡麺帯食品に加熱処理を施した後、凍結させ、得られた凍結状態の包餡麺帯食品の外表面の少なくとも一部に、凍結していないバッター組成物を付着させる工程
(iv)包餡麺帯食品に加熱処理を施した後、凍結させ、得られた凍結状態の包餡麺帯食品の外表面の少なくとも一部に、凍結していないバッター組成物を付着させ、その後、これらを凍結させる工程
(v)凍結していないバッター組成物をトレイに充填し、当該トレイに凍結していない包餡麺帯食品を移載して、当該包餡麺帯食品をトレイに充填されたバッター組成物に接触させた後、これらを凍結させる工程
(vi)凍結していないバッター組成物をトレイに充填し、当該トレイに凍結していない包餡麺帯食品を移載して、当該包餡麺帯食品をトレイに充填されたバッター組成物に接触させた後、これらに加熱処理を施し、凍結させる工程
(vii)凍結していない包餡麺帯食品をトレイに移載した後で凍結させ、当該包餡麺帯食品に凍結していないバッター組成物を上掛けし、次いで凍結させる工程
(viii)凍結していない包餡麺帯食品をトレイに移載し、加熱処理を施した後で凍結させ、当該包餡麺帯食品に凍結していないバッター組成物を上掛けし、次いで凍結させる工程
(ix)凍結していない包餡麺帯食品をトレイに移載して、当該包餡麺帯食品に凍結していないバッター組成物を上掛けし、次いで凍結させる工程
(x)凍結していない包餡麺帯食品をトレイに移載し、加熱処理を施した後で、当該包餡麺帯食品に凍結していないバッター組成物を上掛けし、次いで凍結させる工程
【請求項7】
凍結状態の包餡麺帯食品と当該包餡麺帯食品の外表面の少なくとも一部に付着している凍結状態のバッター組成物とを含む冷凍食品の、焼成調理時間の短縮方法であって、
前記バッター組成物の30℃における粘度を、50~1400mPa・sとなるように調整することを含む、方法。
【請求項8】
凍結状態の包餡麺帯食品と当該包餡麺帯食品の外表面の少なくとも一部に付着している凍結状態のバッター組成物とを含む冷凍食品に、喫食に適した状態になるまで焼成調理が施されたときに当該包餡麺帯食品の焼き面に生じる焦げ付きの抑制方法であって、
前記バッター組成物の30℃における粘度を、50~1400mPa・sとなるように調整することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍結状態の包餡麺帯食品と当該包餡麺帯食品に付着している凍結状態のバッター組成物とを含む、焼成調理用冷凍食品に関する。また、本発明は、当該冷凍食品の製造方法に関する。更に、本発明は、当該冷凍食品の焼成調理時間の短縮方法、焦げ付きの抑制方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々なメニューの冷凍食品が上市されているが、中でも餃子等の包餡麺帯食品は、消費者に人気の高いメニューの一つである。一方、食品に対する消費者の嗜好は、昨今ますます高級化する傾向にあり、冷凍餃子等についても一層の高品質化を目的として種々の提案がなされている。
【0003】
例えば、冷凍餃子を焼成した際に好ましい焼き目を形成するために、水、穀類及びゲル化剤を含む被膜形成組成物を、凍結した餃子に付着させることが提案されている(特許文献1)。また、蒸し餃子を冷凍した冷凍餃子を焼いて調理した際に皮表面に生じる白老化を抑制するために、水、油脂、穀物粉及び乳化剤を含む未加熱の餃子羽根形成組成物を、蒸し餃子に付着させて蒸すことが提案されている(特許文献2、3)。また、香ばしいサクサ感を持った羽根状バリを焼き餃子に形成するために、酸化澱粉及び/又は酸処理澱粉等を含有するコーティング材を餃子に塗布して焼成することが提案されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2022/163751号
【特許文献2】特開2020-61963号公報
【特許文献3】特開2020-61964号公報
【特許文献4】特開2007-319160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献1~4の提案は、いずれも餃子表面に特定の組成物を付着させて焼成するものであるが、餃子表面に付着させた組成物が焼成後に残存していると、焼成後の餃子(焼き餃子)の食感がヌルつきのあるものとなり、却って品質が低下するという課題がある。特に、餃子表面全体に被膜形成組成物を付着させることが提案されている特許文献1では、その傾向が顕著である。
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、凍結状態の包餡麺帯食品と当該包餡麺帯食品に付着している凍結状態のバッター組成物とを含む冷凍食品であって、喫食に適した状態になるまで焼成調理が施されたときの、包餡麺帯食品の表面のヌルつき(ぬめり)が改善した冷凍食品及びその製造方法等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上述の課題を解決するべく鋭意検討した結果、凍結状態の包餡麺帯食品と当該包餡麺帯食品に付着している凍結状態のバッター組成物とを含む冷凍食品において、凍結状態のバッター組成物の30℃における粘度を特定の範囲に調整することによって、喫食に適した状態になるまで焼成調理が施された当該冷凍食品において、包餡麺帯食品の表面のヌルつきが改善し得ることを見出した。また、驚くべきことに、凍結状態のバッター組成物の30℃における粘度が特定の範囲であることによって、喫食に適した状態になるまで当該冷凍食品に焼成調理が施されたときに包餡麺帯食品の焼き面に生じる焦げ付きが抑えられ得ることも見出した。更に、凍結状態のバッター組成物の30℃における粘度が特定の範囲であることによって、当該冷凍食品の焼成調理時間を短縮し得ることも見出した。本発明者らは、これらの知見に基づき、更に研究を重ねることによって、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0008】
[1]凍結状態の包餡麺帯食品と、当該包餡麺帯食品の外表面の少なくとも一部に付着している凍結状態のバッター組成物とを含み、
前記バッター組成物の30℃における粘度が、50~1400mPa・sである、焼成調理用冷凍食品。
[2]前記バッター組成物が、水、並びに、穀物粉及び/又は澱粉を含む、[1]記載の冷凍食品。
[3]前記バッター組成物が、油脂を更に含む、[2]記載の冷凍食品。
[4]前記バッター組成物が、増粘剤及び/又はゲル化剤を更に含む、[2]又は[3]記載の冷凍食品。
[5]前記包餡麺帯食品に付着している前記バッター組成物の量が、前記包餡麺帯食品に対して3~40重量%である、[1]~[4]のいずれか一つに記載の冷凍食品。
[6]前記包餡麺帯食品が、餃子である、[1]~[5]のいずれか一つに記載の冷凍食品。
[7]凍結状態の包餡麺帯食品の外表面の少なくとも一部に、凍結状態のバッター組成物が付着している形態とする工程(以下「付着工程」という)を含み、
前記バッター組成物の30℃における粘度が50~1400mPa・sである、焼成調理用冷凍食品の製造方法。
[8]前記バッター組成物が、水、並びに、穀物粉及び/又は澱粉を含む、[7]記載の製造方法。
[9]前記バッター組成物が、油脂を更に含む、[8]記載の製造方法。
[10]前記バッター組成物が、増粘剤及び/又はゲル化剤を更に含む、[8]又は[9]記載の製造方法。
[11]前記包餡麺帯食品に付着している前記バッター組成物の量が、前記包餡麺帯食品に対して3~40重量%である、[7]~[10]のいずれか一つに記載の製造方法。
[12]前記工程(付着工程)が、下記(i)~(x)のいずれかの工程を含む、[7]~[11]のいずれか一つに記載の製造方法。
(i)凍結状態の包餡麺帯食品の外表面の少なくとも一部に、凍結していないバッター組成物を付着させる工程
(ii)凍結状態の包餡麺帯食品の外表面の少なくとも一部に、凍結していないバッター組成物を付着させ、その後、これらを凍結させる工程
(iii)包餡麺帯食品に加熱処理を施した後、凍結させ、得られた凍結状態の包餡麺帯食品の外表面の少なくとも一部に、凍結していないバッター組成物を付着させる工程
(iv)包餡麺帯食品に加熱処理を施した後、凍結させ、得られた凍結状態の包餡麺帯食品の外表面の少なくとも一部に、凍結していないバッター組成物を付着させ、その後、これらを凍結させる工程
(v)凍結していないバッター組成物をトレイに充填し、当該トレイに凍結していない包餡麺帯食品を移載して、当該包餡麺帯食品をトレイに充填されたバッター組成物に接触させた後、これらを凍結させる工程
(vi)凍結していないバッター組成物をトレイに充填し、当該トレイに凍結していない包餡麺帯食品を移載して、当該包餡麺帯食品をトレイに充填されたバッター組成物に接触させた後、これらに加熱処理を施し、凍結させる工程
(vii)凍結していない包餡麺帯食品をトレイに移載した後で凍結させ、当該包餡麺帯食品に凍結していないバッター組成物を上掛けし、次いで凍結させる工程
(viii)凍結していない包餡麺帯食品をトレイに移載し、加熱処理を施した後で凍結させ、当該包餡麺帯食品に凍結していないバッター組成物を上掛けし、次いで凍結させる工程
(ix)凍結していない包餡麺帯食品をトレイに移載して、当該包餡麺帯食品に凍結していないバッター組成物を上掛けし、次いで凍結させる工程
(x)凍結していない包餡麺帯食品をトレイに移載し、加熱処理を施した後で、当該包餡麺帯食品に凍結していないバッター組成物を上掛けし、次いで凍結させる工程
[13]前記包餡麺帯食品が、餃子である、[7]~[12]のいずれか一つに記載の製造方法。
[14]凍結状態の包餡麺帯食品と当該包餡麺帯食品の外表面の少なくとも一部に付着している凍結状態のバッター組成物とを含む冷凍食品の、焼成調理時間の短縮方法であって、
前記バッター組成物の30℃における粘度を、50~1400mPa・sとなるように調整することを含む、方法。
[15]凍結状態の包餡麺帯食品と当該包餡麺帯食品の外表面の少なくとも一部に付着している凍結状態のバッター組成物とを含む冷凍食品に、喫食に適した状態になるまで焼成調理が施されたときに当該包餡麺帯食品の焼き面に生じる焦げ付きの抑制方法であって、
前記バッター組成物の30℃における粘度を、50~1400mPa・sとなるように調整することを含む、方法。
[16]凍結状態の包餡麺帯食品と当該包餡麺帯食品の外表面の少なくとも一部に付着している凍結状態のバッター組成物とを含む冷凍食品に、喫食に適した状態になるまで焼成調理が施されたときの、当該包餡麺帯食品の表面のヌルつきの改善方法であって、
前記バッター組成物の30℃における粘度を、50~1400mPa・sとなるように調整することを含む、方法。
[17]前記バッター組成物が、水、並びに、穀物粉及び/又は澱粉を含む、[14]~[16]のいずれか一つに記載の方法。
[18]前記バッター組成物が、油脂を更に含む、[17]記載の方法。
[19]前記バッター組成物が、増粘剤及び/又はゲル化剤を更に含む、[17]又は[18]記載の方法。
[20]前記包餡麺帯食品に付着している前記バッター組成物の量が、前記包餡麺帯食品に対して3~40重量%である、[14]~[19]のいずれか一つに記載の方法。
[21]前記包餡麺帯食品が、餃子である、[14]~[20]のいずれか一つに記載の方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、凍結状態の包餡麺帯食品と当該包餡麺帯食品に付着している凍結状態のバッター組成物とを含む冷凍食品であって、喫食に適した状態になるまで焼成調理が施されたときの、包餡麺帯食品の表面のヌルつき(ぬめり)が改善した冷凍食品及びその製造方法が提供され得る。
また、本発明によれば、凍結状態の包餡麺帯食品と当該包餡麺帯食品に付着している凍結状態のバッター組成物とを含む冷凍食品であって、喫食に適した状態になるまで焼成調理が施されたときに包餡麺帯食品の焼き面に生じる焦げ付きが抑えられた冷凍食品及びその製造方法が提供され得る。
また、本発明によれば、凍結状態の包餡麺帯食品と当該包餡麺帯食品の外表面の少なくとも一部に付着している凍結状態のバッター組成物とを含む冷凍食品の、焼成調理時間の短縮方法も提供され得る。
また、本発明によれば、凍結状態の包餡麺帯食品と当該包餡麺帯食品の外表面の少なくとも一部に付着している凍結状態のバッター組成物とを含む冷凍食品に、喫食に適した状態になるまで焼成調理が施されたときに当該包餡麺帯食品の焼き面に生じる焦げ付きの抑制方法も提供され得る。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の冷凍食品は、凍結状態の包餡麺帯食品と凍結状態のバッター組成物とを含む。
本発明において「冷凍食品」とは、凍結状態の食品をいう。冷凍食品は、凍結状態で販売、譲渡、流通、保管等に供され得る。冷凍食品は、解凍された上で、喫食されるものである。冷凍食品は、解凍とあわせて(換言すると、解凍と同時に)又は解凍後に、必要に応じて調理(例、焼成調理等)されるものであってよい。
【0011】
本発明において「包餡麺帯食品」とは、中具(一般に「餡」ともいう)及び当該中具の少なくとも一部を被覆する麺皮(単に「皮」ともいう)を含む食品をいう。包餡麺帯食品の具体例としては、餃子、焼売、小籠包、ワンタン、春巻き、包子、ラビオリ等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0012】
本発明の冷凍食品に用いられる包餡麺帯食品(すなわち、本発明の冷凍食品に凍結状態で含まれる包餡麺帯食品)の製造方法は特に制限されないが、例えば、包餡麺帯食品の中具となる具材を、包餡麺帯食品用の皮で被覆すること等によって製造し得る。包餡麺帯食品の中具となる具材は特に限定されず、包餡麺帯食品の種類等に応じ、一般的な原料(例、牛肉、豚肉、鶏肉、魚介類の肉等の肉類;キャベツ、ハクサイ、タマネギ、ニラ、ネギ、ショウガ、ニンニク等の野菜類;食用動物油脂、食用植物油脂等の油脂;食塩、胡椒、味噌、しょうゆ、砂糖等の調味料;水、乳、卵、食物繊維、穀物粉、澱粉、タンパク質、アミノ酸類、ビタミン類、ミネラル類、エキス類、乳化剤、保存剤、酸化防止剤、pH調整剤、香料等)を用いて、自体公知の方法又はそれに準ずる方法で作製してよい。包餡麺帯食品用の皮も特に限定されず、自体公知の方法又はそれに準ずる方法で作製してよい。例えば、包餡麺帯食品用の皮は、原料(例、水、穀物粉、食塩等)を混錬して作製した生地を、圧延機(例、ロール式製麺機等)等を使用して所望の厚さ(例、0.1~2mm程度)に圧延成形して麺帯を作製し、当該麺帯を、所望の形状(例、円形、楕円形、長方形等)に切り抜くか、又は所望の形状に打ち抜くこと等によって作製し得る。皮の原料としては、例えば、水、穀物粉(例、小麦粉、米粉等)、澱粉、油脂(食用動物油脂、食用植物油脂)、食塩、卵(例、液卵、卵黄粉、卵白粉、全卵粉等)、グルテン、脱脂粉乳、食物繊維、タンパク質、アミノ酸類、ビタミン類、ミネラル類、エキス類、乳化剤、保存剤、酸化防止剤、pH調整剤、調味料、香料、色素等が挙げられるが、これらに限定されず、本発明の目的を損なわない限り、包餡麺帯食品用の皮の製造に通常用いられ得る原料を制限なく使用してよい。これらの原料は、単独で用いてよく、又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。原料の使用量は、皮を製造できれば特に制限されず、原料の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、皮の製造に用いられる水の量は、皮の原料の総量に対して、通常10~50重量%であり、好ましくは15~45重量%である。中具となる具材を皮で被覆する方法は特に制限されず、自体公知の方法又はそれに準ずる方法で行い得る。中具となる具材を被覆するために用いられる皮の枚数は、1枚であってよく又は2枚以上であってもよい。中具となる具材を皮で被覆して得られた未加熱の包餡麺帯食品(生包餡麺帯食品ともいう)に対し、必要に応じて、加熱処理(例、蒸し加熱等)を施してもよい。生包餡麺帯食品に加熱処理を施す場合、加熱温度及び時間は、本発明の目的を損なわない限り特に制限されず、適宜設定してよい。本発明は、市販の包餡麺帯食品を用いてもよい。
【0013】
本発明において「バッター組成物」とは、食品の表面に付着させて用いられる組成物をいう。バッター組成物の形態は、通常、常温(25℃)下で液体状である。ここで「液体状」とは、流動性を有することを意味し、ペースト状及びスラリー状も包含される。本明細書中、常温下で液体状であるバッター組成物を「バッター液」と称する場合がある。バッター組成物は、例えば、包餡麺帯食品の外表面に被膜を形成すること、包餡麺帯食品に好適な焼き目を形成すること、包餡麺帯食品の一種である餃子に羽根を形成すること等のために用いられてよく、バッター組成物は、例えば、被膜形成組成物、焼き目形成組成物、餃子羽根組成物等を包含する。
【0014】
本発明の冷凍食品に用いられるバッター組成物(すなわち、本発明の冷凍食品に凍結状態で含まれるバッター組成物)は、通常、水を含む。バッター組成物に含まれる水としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の精製水、水道水、アルカリ電解水等が挙げられるが、これらに制限されず、食品製造用水として適合するものを用い得る。本発明の冷凍食品に凍結状態で含まれるバッター組成物における水の含有量は、当該バッター組成物の原料の総量に対して、通常50~97重量%であり、好ましくは70~95重量%であり、より好ましくは75~93重量%である。
【0015】
本発明の冷凍食品に用いられるバッター組成物は、水に加えて、穀物粉及び/又は澱粉を更に含むことが好ましい。
【0016】
本発明において「穀物粉」とは、穀物を製粉した食品素材をいい、具体的には、例えば、小麦粉、米粉、トウモロコシ粉、大麦粉、そば粉、ライ麦粉、馬鈴薯粉、大豆粉、小豆粉、ひえ粉、粟粉、キビ粉等が挙げられるが、これらに限定されない。穀物粉は一種を単独で用いてよく、又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。バッター組成物に含まれる穀物粉は、小麦粉であるか、又は小麦粉を含むことが好ましい。
【0017】
本発明において用いられるバッター組成物(すなわち、本発明の冷凍食品に凍結状態で含まれるバッター組成物)が穀物粉を含む場合、本発明の冷凍食品に凍結状態で含まれるバッター組成物における穀物粉の含有量は、当該バッター組成物に対して、通常0.03~10重量%であり、好ましくは0.05~7重量%であり、より好ましくは0.07~5重量%である。
【0018】
本発明において「澱粉」とは、アミロース及びアミロペクチンを主成分とする食品素材をいう。ここでいう澱粉は、植物等から単離されたものを意味し、例えば、穀物粉中に含まれている澱粉とは区別される。澱粉の具体例としては、うるち米澱粉、もち米澱粉、小麦澱粉、トウモロコシ澱粉(コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ等)、タピオカ澱粉、サゴヤシ澱粉、緑豆澱粉、馬鈴薯澱粉、サツマイモ澱粉等が挙げられるが、これらに限定されない。澱粉は、加工処理が施されていてよく、すなわち、加工澱粉が用いられてもよい。加工澱粉の種類としては、例えば、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、アセチル化酸化澱粉、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、酢酸澱粉、酸化澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉、リン酸化澱粉、リン酸架橋澱粉、α化澱粉、湿熱処理澱粉、油脂加工澱粉、酸処理澱粉、アルカリ処理澱粉、漂白澱粉、酵素処理澱粉等が挙げられるが、これらに限定されない。澱粉は一種を単独で用いてよく、又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
本発明において用いられるバッター組成物(すなわち、本発明の冷凍食品に凍結状態で含まれるバッター組成物)が澱粉を含む場合、本発明の冷凍食品に凍結状態で含まれるバッター組成物における澱粉の含有量は、当該バッター組成物に対して、通常0.05~10重量%であり、好ましくは0.5~7重量%であり、より好ましくは1~5重量%である。
【0020】
本発明の冷凍食品に用いられるバッター組成物は、水に加えて、油脂を更に含むことが好ましい。本発明において「油脂」とは、アシルグリセロール(トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド等)を主成分とする物質をいい、一般に常温で流動性を有するものを「油」、流動性を有しないものを「脂肪」と呼ぶ場合があるが、それらの両方を包含する概念である。バッター組成物に含まれ得る油脂は、食用のもの(食用油脂)であれば特に限定されないが、例えば、菜種油(キャノーラ油を含む)、大豆油、コーン油、ごま油、米油、米糠油、米胚芽油、べに花油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、ひまわり油、えごま油、アマニ油、オリーブ油、グレープシード油、綿実油等の食用植物油脂;牛脂、豚脂、鶏脂、羊脂、鯨油等の食用動物油脂等が挙げられる。また、上述の油脂をエステル交換したエステル交換油、上述の油脂に水素添加した硬化油等も用いることができる。油脂は精製されたもの(例、サラダ油等)であってもよい。油脂は、一種を単独で用いてよく、又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
本発明において用いられるバッター組成物(すなわち、本発明の冷凍食品に凍結状態で含まれるバッター組成物)が油脂を含む場合、本発明の冷凍食品に凍結状態で含まれるバッター組成物における油脂の含有量は、当該バッター組成物に対して、通常1~30重量%であり、好ましくは3~25重量%であり、より好ましくは8~23重量%である。
【0022】
本発明の冷凍食品に用いられるバッター組成物は、本発明の目的を損なわない限り、上述の成分(水等)に加えて、その他の成分を更に含んでよい。当該成分としては、例えば、増粘剤、ゲル化剤、乳化剤、食塩、調味料、卵黄粉、卵白粉、全卵粉、脱脂粉乳、食物繊維、タンパク質(動物性タンパク質、植物性タンパク質)、アミノ酸類、ビタミン類、ミネラル類、色素、香料、保存剤、酸化防止剤、乳化補助剤、pH調整剤、酵素剤等が挙げられる。これらの成分は、一種を単独で用いてよく、又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
本発明の冷凍食品に用いられるバッター組成物の製造方法は特に制限されず、自体公知の方法又はそれに準ずる方法で製造し得る。例えば、バッター組成物は、原料(例、水、穀物粉、澱粉等)を混合し、適宜撹拌することによって製造し得る。バッター組成物の原料に油脂が用いられる場合、バッター組成物は乳化させてよく、すなわちバッター組成物は、常温(25℃)において乳化物であってよい。バッター組成物が乳化物である場合、乳化方法は特に制限されず、自体公知の方法又はそれに準ずる方法で行い得る。バッター組成物は、必要に応じて、加熱処理(例、蒸し加熱等)を施してもよい。例えば、原料(例、水、穀物粉、澱粉等)を混合し、適宜撹拌した後、得られた混合物に対し、必要に応じて、加熱処理(例、蒸し加熱等)を施してもよい。バッター組成物に加熱処理を施す場合、加熱温度及び時間は、本発明の目的を損なわない限り特に制限されず、適宜設定してよい。
【0024】
本発明の冷凍食品において、凍結状態のバッター組成物は、凍結状態の包餡麺帯食品の外表面(すなわち、皮の表面)に付着している。バッター組成物の包餡麺帯食品への付着態様は特に制限されず、凍結状態のバッター組成物は、凍結状態の包餡麺帯食品の外表面の少なくとも一部に付着していればよい。一態様として、凍結状態のバッター組成物は、凍結状態の包餡麺帯食品の外表面の実質的に全面にわたって付着していてよい。ここで、バッター組成物が包餡麺帯食品の外表面の「実質的に全面にわたって」付着しているとは、バッター組成物に気泡が混入すること等によって生じる微細なピンホール等を除いて、包餡麺帯食品の外表面全体に隙間なくバッター組成物が付着していることを意味する。また、他の一態様として、凍結状態のバッター組成物は、凍結状態の包餡麺帯食品の外表面に部分的に付着していてよい。この場合、バッター組成物の付着部位は、包餡麺帯食品のいずれの部位であってもよいが、例えば、焼き面となる面、焼き面となる面に連続する面等が挙げられる。ここで「焼き面となる面」とは、加熱調理の際に、焼き目(焼き色)がつくように、焼き器(例、フライパン、鉄板、ホットプレート等)に接するか、又は近接するように配置される面をいい、例えば、包餡麺帯食品の一種である餃子においては、底面と称される場合がある。また、「焼き面となる面に連続する面」は、包餡麺帯食品の一種である餃子においては、側面又は腹と称される場合がある。凍結状態のバッター組成物は、例えば、凍結状態の包餡麺帯食品の(1)焼き面となる面のみ、(2)焼き面となる面及び焼き面となる面に連続する面、あるいは(3)焼き面となる面の一部を除く外表面等に付着していてよい。本発明の冷凍食品において、凍結状態の包餡麺帯食品に付着している凍結状態のバッター組成物の形態は特に制限されないが、例えば、被膜状、層状等が挙げられる。
【0025】
本発明の冷凍食品において、凍結状態の包餡麺帯食品に付着している凍結状態のバッター組成物の量は、焼成調理後における包餡麺帯食品の表面のヌルつきを効果的に改善し、また、焼成調理後において包餡麺帯食品の焼き面に生じる焦げ付きを効果的に抑える観点から、当該包餡麺帯食品に対して、好ましくは3~40重量%であり、より好ましくは5~35重量%であり、特に好ましくは8~30重量%である。
【0026】
本発明の冷凍食品は、凍結状態のバッター組成物(すなわち、凍結状態の包餡麺帯食品に付着している凍結状態のバッター組成物)が、30℃において特定の粘度を有することを特徴の一つとする。凍結状態のバッター組成物が、30℃において特定の粘度を有することによって、本発明の冷凍食品は、喫食に適した状態になるまで焼成調理が施されたときの、包餡麺帯食品の表面のヌルつき(ぬめり)が改善し得る。また、凍結状態のバッター組成物が、30℃において特定の粘度を有することによって、本発明の冷凍食品は、喫食に適した状態になるまで焼成調理が施されたときに包餡麺帯食品の焼き面に生じる焦げ付きが抑えられ得る。また、凍結状態のバッター組成物が、30℃において特定の粘度を有することによって、本発明の冷凍食品は、焼成調理時間が短縮されたものであり得る。
【0027】
具体的には、本発明の冷凍食品において、凍結状態の包餡麺帯食品に付着している凍結状態のバッター組成物の30℃における粘度は、好ましくは50~1400mPa・sであり、より好ましくは100~1350mPa・sであり、更に好ましくは150~1200mPa・sであり、特に好ましくは200mPa・s~1000mPa・sであり、最も好ましくは250mPa・s~700mPa・sである。
【0028】
本発明において、凍結状態の包餡麺帯食品に付着している凍結状態のバッター組成物の30℃における粘度は、凍結状態のバッター組成物を解凍した後、解凍されたバッター組成物を30℃に調温し、その状態で回転式粘度計(東機産業株式会社製「VISCOMETER TVC-7」)を用いて、ローター:高粘度THタイプ、レンジR、No.2又はNo.3、回転数:20rpm、測定時間:回転開始後30秒の条件にて測定される。凍結状態の包餡麺帯食品に付着している凍結状態のバッター組成物の解凍方法は、粘度の測定値に影響しない方法であれば特に制限されないが、例えば、所定の温度(例、30℃等)に調整した恒温槽にて解凍することや、室温(1~30℃)で自然解凍すること等によって行い得る。バッター組成物の原料及びその使用量、並びに凍結状態のバッター組成物及びそれを含む冷凍食品の製造方法が判明している場合は、凍結状態の包餡麺帯食品に付着している凍結状態のバッター組成物を再現した試料を調製し、その30℃における粘度を前記と同様に測定して、凍結状態の包餡麺帯食品に付着している凍結状態のバッター組成物の30℃における粘度として用いてもよい。
【0029】
本発明において、バッター組成物の30℃における粘度の調整方法は、本発明の目的を損なわない限り特に制限されず、自体公知の方法又はそれに準ずる方法で行い得るが、例えば、バッター組成物の原料に、増粘作用を有する物質を用い、その使用量(バッター組成物における含有量)を増減すること等によって、粘度を調整し得る。バッター組成物の原料として使用可能な増粘作用を有する物質としては、例えば、キサンタンガム、グアーガム、ローカストビーンガム、タラガム、ジェランガム、トラガントガム、アラビアガム、カラヤガム、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、グルコマンナン、プルラン、セルロース誘導体(例、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、大豆多糖類、キチン、キトサン等の増粘剤;ゼラチン、カラギーナン、カードラン、ペクチン、寒天、アルギン酸類(例、アルギン酸、アルギン酸塩、アルギン酸エステル等)等のゲル化剤等が挙げられる。バッター組成物に加熱処理が施される場合は、当該バッター組成物に含まれている穀物粉、澱粉も粘度に寄与し得、また、一部の澱粉(例、α化澱粉等)は加熱処理がバッター組成物に施されない場合でも粘度に寄与し得るため、これらの使用量を適宜増減することによっても粘度を調整し得る。バッター組成物における水、油脂の使用量及びそれらの比率を適宜調整することによっても、粘度を調整し得る。
【0030】
本発明において用いられるバッター組成物(すなわち、本発明の冷凍食品に凍結状態で含まれるバッター組成物)が増粘剤を含む場合、本発明の冷凍食品に凍結状態で含まれるバッター組成物における増粘剤の含有量は、当該バッター組成物に対して、通常0.03~3重量%であり、好ましくは0.05~1.5重量%であり、より好ましくは0.07~1重量%である。
【0031】
本発明において用いられるバッター組成物(すなわち、本発明の冷凍食品に凍結状態で含まれるバッター組成物)がゲル化剤を含む場合、本発明の冷凍食品に凍結状態で含まれるバッター組成物におけるゲル化剤の含有量は、当該バッター組成物に対して、通常0.03~3重量%であり、好ましくは0.05~1重量%であり、より好ましくは0.1~0.5重量%である。
【0032】
本発明の冷凍食品は、凍結状態の包餡麺帯食品及び凍結状態のバッター組成物に加えて、これら以外の凍結状態の食品素材を更に含むものであってよい。包餡麺帯食品及びバッター組成物以外に本発明の冷凍食品が含み得る食品素材の種類は、本発明の目的を損なわない限り特に限定されない。
【0033】
本発明の冷凍食品は、焼成調理用として好適である。本発明において「焼成調理用」冷凍食品とは、冷凍食品が喫食に適した状態になるために、少なくとも焼成調理を施されることを要する冷凍食品をいう。ここで「焼成調理」とは、食品を少なくとも焼き加熱(フライパン、鉄板、ホットプレート等の焼き器で加熱する処理)に供することを含む調理方法をいう。焼成調理は、一態様として、食品を焼き加熱に供することに加えて、焼き加熱以外の加熱処理(例、蒸し加熱等)に供することを更に含むものであってよい。例えば、焼成調理には、(1)食品を焼き加熱に供し、次いで蒸し加熱に供すること、(2)食品を蒸し加熱に供し、次いで焼き加熱に供すること、(3)食品を焼き加熱及び蒸し加熱に同時に供すること(所謂、蒸し焼き)、並びに(4)食品を焼き加熱及び蒸し加熱に同時に供した後、焼き加熱に供すること等が包含される。焼成調理は、冷凍食品の解凍とあわせて(解凍と同時に)行われてよく、又は冷凍食品の解凍後に行われてもよい。本発明の冷凍食品に施される焼成調理の条件(例、加熱温度、加熱時間等)は、包餡麺帯食品の種類や大きさ等に応じて適宜設定し得る。
【0034】
本発明の冷凍食品の製造方法(本明細書中、「本発明の製造方法」と称する場合がある)について、以下に詳述する。
【0035】
本発明の製造方法は、凍結状態の包餡麺帯食品の外表面の少なくとも一部に、凍結状態のバッター組成物が付着している形態とする工程を含む。
本明細書中、「凍結状態の包餡麺帯食品の外表面の少なくとも一部に、凍結状態のバッター組成物が付着している形態とする工程」を、説明の便宜上、単に「付着工程」と称する場合がある。
【0036】
本発明の製造方法において、付着工程は、凍結状態の包餡麺帯食品の外表面の少なくとも一部に、凍結状態のバッター組成物が付着している形態になりさえすれば特に制限されず、自体公知の方法(例、国際公開第2022/163751号に記載の方法等)又はそれに準ずる方法で行い得る。
【0037】
一態様として、付着工程は、予め凍結状態にした包餡麺帯食品の外表面の少なくとも一部に、凍結していないバッター組成物を付着させることによって行い得る。凍結していないバッター組成物を凍結状態の包餡麺帯食品の外表面に接触させると、当該外表面においてバッター組成物は被膜状に凍結し得る。予め凍結状態にした包餡麺帯食品の外表面の少なくとも一部に、凍結していないバッター組成物を接触させて、当該外表面に凍結状態のバッター組成物を被膜状に付着させることを、本明細書中「グレージング」と称する場合がある。ここで、包餡麺帯食品の外表面にバッター組成物を付着させる手段は特に制限されず、例えば、塗布(刷毛等を用いて包餡麺帯食品にバッター組成物を塗付する)、噴霧(包餡麺帯食品にバッター組成物を噴霧する)、滴下(包餡麺帯食品にバッター組成物を滴下する)、浸漬(容器に溜めたバッター組成物中に包餡麺帯食品を浸漬する)等の手段が挙げられる。グレージングに供される凍結状態の包餡麺帯食品を準備する手段も特に制限されず、例えば、自体公知の方法又はそれに準ずる方法で包餡麺帯食品を製造し、これを凍結して用いてよく、又は、市販の包餡麺帯食品を購入し適宜凍結する等して用いてもよい。包餡麺帯食品は、凍結状態にする前に、必要に応じて、加熱処理(例、蒸し加熱等)を施し、その後に凍結してよく、又は、加熱処理が施されていない包餡麺帯食品(生包餡麺帯食品)を凍結してもよい。また、バッター組成物も、予め凍結状態にした包餡麺帯食品に付着させる前に、必要に応じて、加熱処理(例、蒸し加熱等)を施し、その後に付着させてよく、又は、加熱処理が施されていないバッター組成物を付着させてもよい。グレージングは、予め凍結状態にした包餡麺帯食品の外表面の少なくとも一部に、凍結していないバッター組成物を接触させた後、これらの包餡麺帯食品及びバッター組成物を再凍結するものであってよい。
【0038】
上述の付着工程の一態様は、トレイ(浅く平たい形状の容器、盆)を必要としないが、付着工程は、他の一態様として、トレイを使用して行ってもよい。具体的には、付着工程は、一態様として、凍結していないバッター組成物をトレイに充填し、次いで、当該トレイに凍結していない包餡麺帯食品を移載して、当該包餡麺帯食品をトレイに充填されたバッター組成物に接触させた後、当該トレイ上のバッター組成物及び包餡麺帯食品を凍結させることによって行い得る。また、他の一態様として、付着工程は、凍結していない包餡麺帯食品をトレイに移載した後で凍結させ、当該包餡麺帯食品に凍結していないバッター組成物を上掛けし、次いで凍結させること、あるいは、凍結していない包餡麺帯食品をトレイに移載し、当該包餡麺帯食品に凍結していないバッター組成物を上掛けし、次いで凍結させることによって行い得る。これらの態様において、バッター組成物及び包餡麺帯食品は、それぞれ凍結前に、必要に応じて、加熱処理(例、蒸し加熱等)を施してよく、又は、加熱処理が施されていないバッター組成物及び包餡麺帯食品を凍結してもよい。また、これらの態様において用いられるトレイは、バッター組成物を充填するための凹部を有するものであってよい。
【0039】
以下に、好適な付着工程を示す。すなわち、本発明の製造方法は、凍結状態の包餡麺帯食品の外表面の少なくとも一部に、凍結状態のバッター組成物が付着している形態とするために、下記(i)~(x)のいずれかの工程を含むものであってよい。
(i)凍結状態の包餡麺帯食品の外表面の少なくとも一部に、凍結していないバッター組成物(例、蒸し加熱等の加熱処理が施されたバッター組成物、加熱処理が施されていないバッター組成物等)を付着させる工程
(ii)凍結状態の包餡麺帯食品の外表面の少なくとも一部に、凍結していないバッター組成物(例、蒸し加熱等の加熱処理が施されたバッター組成物、加熱処理が施されていないバッター組成物等)を付着させ、その後、これらを凍結させる工程
(iii)包餡麺帯食品に加熱処理(例、蒸し加熱等)を施した後、凍結させ、得られた凍結状態の包餡麺帯食品の外表面の少なくとも一部に、凍結していないバッター組成物(例、蒸し加熱等の加熱処理が施されたバッター組成物、加熱処理が施されていないバッター組成物等)を付着させる工程
(iv)包餡麺帯食品に加熱処理(例、蒸し加熱等)を施した後、凍結させ、得られた凍結状態の包餡麺帯食品の外表面の少なくとも一部に、凍結していないバッター組成物(例、蒸し加熱等の加熱処理が施されたバッター組成物、加熱処理が施されていないバッター組成物等)を付着させ、その後、これらを凍結させる工程
(v)凍結していないバッター組成物(例、蒸し加熱等の加熱処理が施されたバッター組成物、加熱処理が施されていないバッター組成物等)をトレイに充填し、当該トレイに凍結していない包餡麺帯食品(例、蒸し加熱等の加熱処理が施された包餡麺帯食品、加熱処理が施されていない包餡麺帯食品等)を移載して、当該包餡麺帯食品をトレイに充填されたバッター組成物に接触させた後、これらを凍結させる工程
(vi)凍結していないバッター組成物(例、蒸し加熱等の加熱処理が施されたバッター組成物、加熱処理が施されていないバッター組成物等)をトレイに充填し、当該トレイに凍結していない包餡麺帯食品(例、蒸し加熱等の加熱処理が施された包餡麺帯食品、加熱処理が施されていない包餡麺帯食品等)を移載して、当該包餡麺帯食品をトレイに充填されたバッター組成物に接触させた後、これらに加熱処理(例、蒸し加熱等)を施し、凍結させる工程
(vii)凍結していない包餡麺帯食品(例、加熱処理が施されていない包餡麺帯食品等)をトレイに移載した後で凍結させ、当該包餡麺帯食品に凍結していないバッター組成物(例、蒸し加熱等の加熱処理が施されたバッター組成物、加熱処理が施されていないバッター組成物等)を上掛けし、凍結させる工程
(viii)凍結していない包餡麺帯食品(例、加熱処理が施されていない包餡麺帯食品等)をトレイに移載し、加熱処理(例、蒸し加熱等)を施した後で凍結させ、当該包餡麺帯食品に凍結していないバッター組成物(例、蒸し加熱等の加熱処理が施されたバッター組成物、加熱処理が施されていないバッター組成物等)を上掛けし、凍結させる工程
(ix)凍結していない包餡麺帯食品(例、加熱処理が施されていない包餡麺帯食品等)をトレイに移載して、当該包餡麺帯食品に凍結していないバッター組成物(例、蒸し加熱等の加熱処理が施されたバッター組成物、加熱処理が施されていないバッター組成物等)を上掛けし、凍結させる工程
(x)凍結していない包餡麺帯食品(例、加熱処理が施されていない包餡麺帯食品等)をトレイに移載し、加熱処理(例、蒸し加熱等)を施した後で、当該包餡麺帯食品に凍結していないバッター組成物(例、蒸し加熱等の加熱処理が施されたバッター組成物、加熱処理が施されていないバッター組成物等)を上掛けし、凍結させる工程
【0040】
本発明の製造方法は、本発明の目的を損なわない限り、付着工程に加えて、付着工程以外の製造工程を更に含んでよい。
【0041】
本発明の冷凍食品は、喫食に適した状態になるまで焼成調理が施されたときの、包餡麺帯食品の表面のヌルつき(ぬめり)が改善し得る。包餡麺帯食品の表面のヌルつきの有無や程度は、例えば、後述の実施例のように、専門パネルによる官能評価によって評価し得る。ここで、冷凍食品が焼成調理によって喫食に適した状態になったか否かは、例えば、後述の実施例のように、包餡麺帯食品の中具の温度等から判断し得る。詳細には、冷凍食品に焼成調理を施して包餡麺帯食品の中具が所定の温度(例、70℃以上等)に達温したとき、当該食品は喫食に適した状態になったと判定し得る。
【0042】
本発明の冷凍食品は、喫食に適した状態になるまで焼成調理が施されたときに包餡麺帯食品の焼き面に生じる焦げ付きが抑えられ得る。包餡麺帯食品の焼き面の焦げ付きの有無や程度は、例えば、後述の実施例のように、専門パネルが目視で確認すること等によって評価し得る。
【0043】
本発明の冷凍食品は、焼成調理時間が短縮されたものであり得る。ここで、焼成調理時間とは、焼成調理開始から、冷凍食品が喫食に適した状態になるまでの時間をいう。
【0044】
本発明の冷凍食品が販売、譲渡、流通、保管等に供される際の形態は特に制限されず、一態様として、本発明の冷凍食品は、一個又は複数個がトレイ(プラスチック製のトレイ等)に載せられた状態で袋又は箱等に収容されて、販売等に供され得る。他の一態様として、本発明の冷凍食品は、一個又は複数個がトレイに載せられることなく、そのままトレイなしで袋又は箱等に収容されて、販売等に供され得る。
【0045】
本発明は、凍結状態の包餡麺帯食品と当該包餡麺帯食品の外表面の少なくとも一部に付着している凍結状態のバッター組成物とを含む冷凍食品に、喫食に適した状態になるまで焼成調理が施されたときの、当該包餡麺帯食品の表面のヌルつきの改善方法も提供する。
また、本発明は、凍結状態の包餡麺帯食品と当該包餡麺帯食品の外表面の少なくとも一部に付着している凍結状態のバッター組成物とを含む冷凍食品に、喫食に適した状態になるまで焼成調理が施されたときに当該包餡麺帯食品の焼き面に生じる焦げ付きの抑制方法も提供する。
また、本発明は、凍結状態の包餡麺帯食品と当該包餡麺帯食品の外表面の少なくとも一部に付着している凍結状態のバッター組成物とを含む冷凍食品の、焼成調理時間の短縮方法も提供する。
これらの本発明によって提供される方法を、本明細書中、まとめて「本発明の方法」と称する場合がある。
【0046】
本発明の方法が用いられ得る冷凍食品は、凍結状態の包餡麺帯食品と凍結状態のバッター組成物とを含むものである。当該包餡麺帯食品及びバッター組成物は、それぞれ上述の本発明の冷凍食品に用いられる包餡麺帯食品及びバッター組成物と同様のものであり、好適な態様や製造方法も同様である。
【0047】
本発明の方法が用いられ得る冷凍食品において、凍結状態のバッター組成物は、凍結状態の包餡麺帯食品の外表面(すなわち、皮の表面)に付着している。バッター組成物の包餡麺帯食品への付着態様は、上述の本発明の冷凍食品における、バッター組成物の包餡麺帯食品への付着態様と同様であり、好ましい態様も同様である。また、凍結状態の包餡麺帯食品に付着している凍結状態のバッター組成物の形態も、上述の本発明の冷凍食品における、凍結状態の包餡麺帯食品に付着している凍結状態のバッター組成物の形態と同様であり、好ましい態様も同様である。
【0048】
本発明の方法が用いられ得る冷凍食品に施される焼成調理は、上述の本発明の冷凍食品に施され得る焼成調理と同様であり、好ましい態様も同様である。
【0049】
本発明の方法は、凍結状態のバッター組成物(すなわち、凍結状態の包餡麺帯食品に付着している凍結状態のバッター組成物)が、30℃において有する粘度を特定の範囲に調整することを特徴の一つとする。凍結状態のバッター組成物が30℃において有する粘度を特定の範囲に調整することによって、冷凍食品に喫食に適した状態になるまで焼成調理が施されたときの、包餡麺帯食品の表面のヌルつきを改善し得る。また、凍結状態のバッター組成物が30℃において有する粘度を特定の範囲に調整することによって、冷凍食品に喫食に適した状態になるまで焼成調理が施されたときに包餡麺帯食品の焼き面に生じる焦げ付きを抑制し得る。また、凍結状態のバッター組成物が30℃において有する粘度を特定の範囲に調整することによって、冷凍食品の焼成調理時間を短縮し得る。
【0050】
本発明の方法において、凍結状態の包餡麺帯食品に付着している凍結状態のバッター組成物の30℃における粘度は、上述の本発明の冷凍食品における、凍結状態の包餡麺帯食品に付着している凍結状態のバッター組成物の30℃における粘度と同様の範囲に調整し得る。また、好ましい範囲も同様である。
【0051】
本発明の方法において、凍結状態の包餡麺帯食品に付着している凍結状態のバッター組成物の30℃における粘度の調整は、上述の本発明の冷凍食品に関して説明した方法で行い得る。
【0052】
以下の実施例において本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
尚、以下の実施例において用いられた原料は、特にことわりのない限り、いずれも食品用として市販されているものである。水は、市水をフィルター濾過したものを用いた。
【実施例0053】
以下の試験1~4において用いられた生餃子(加熱処理が施されていない餃子)は、下記〔1〕及び〔2〕の手順で作製した。
【0054】
〔1〕餃子用の皮の作製
小麦粉、水及び食塩を下表1に示す割合で混錬して作製した生地を、ロール式製麺機で厚さ0.7mm程度に圧延し、麺帯を作製した。当該麺帯を長径90mm×短径80mmの楕円形に切り抜いて、餃子用の皮(1枚当たりの重量:6g)を作製した。
【0055】
【0056】
〔2〕餃子の中具となる具材及び生餃子の作製
畜肉(豚挽肉及び鶏挽肉を合わせたもの)、みじん切りにした野菜(キャベツ、タマネギ、ニラ、ニンニク及びショウガを合わせたもの)、卵白、ごま油、香辛料及び調味料、並びに、その他の原料(片栗粉及びパン粉を合わせたもの)を下表2に示す量で混錬して餃子の中具となる具材を作製した。当該具材(12g)を、その全体が覆われるように、前記〔1〕で作製した皮1枚(6g)で被覆して、半円形状の生餃子(1個当たりの重量:18g)を作製した。
【0057】
【0058】
<試験1>
(実施例1~3、7、8及び比較例1のバッター液の作製)
水及び大豆タンパク質を混合した後、菜種油を混合し、撹拌(撹拌条件:6000rpm、7分間)して乳化させた。得られた乳化物に、小麦粉及びキサンタンガムを混合した後、95℃に達温するまで加熱し、次いで30℃に調温して、実施例1~3、7、8及び比較例1のバッター液をそれぞれ作製した。各バッター液の原料(水、大豆タンパク質、菜種油、小麦粉、キサンタンガム)の配合は、下表3に示す割合とした。
【0059】
(実施例4、6、9及び比較例2のバッター液の作製)
水及び大豆タンパク質を混合した後、菜種油を混合し、撹拌(撹拌条件:6000rpm、7分間)して乳化させた。得られた乳化物に、小麦粉及びキサンタンガムを混合した後、30℃に調温して、実施例4、6、9及び比較例2のバッター液をそれぞれ作製した。各バッター液の原料(水、大豆タンパク質、菜種油、小麦粉、キサンタンガム)の配合は、下表3に示す割合とした。
【0060】
(実施例5のバッター液の作製)
水及び大豆タンパク質を混合した後、菜種油を混合し、撹拌(撹拌条件:6000rpm、7分間)して乳化させた。得られた乳化物に、澱粉及びキサンタンガムを混合した後、95℃に達温するまで加熱し、次いで30℃に調温して、実施例5のバッター液を作製した。当該バッター液の原料(水、大豆タンパク質、菜種油、澱粉、キサンタンガム)の配合は、下表3に示す割合とした。
【0061】
(比較例3のバッター液の作製)
水及び大豆タンパク質を混合した後、菜種油を混合し、撹拌(撹拌条件:6000rpm、7分間)して乳化させた。得られた乳化物に、水に溶かしたゼラチン、小麦粉及びキサンタンガムを混合した後、95℃に達温するまで加熱し、次いで30℃に調温して、比較例3のバッター液を作製した。当該バッター液の原料(水、大豆タンパク質、菜種油、ゼラチン、小麦粉、キサンタンガム)の配合は、下表3に示す割合とした。尚、原料の水は、その約7割(原料全体に対して60重量%)を大豆タンパク質と混合し、残りの約3割(原料全体に対して24.6重量%)を、ゼラチンを溶かすために使用した。
【0062】
(実施例1~9及び比較例1~3の冷凍食品の作製)
実施例1~9及び比較例1~3のバッター液、並びに生餃子を用いて、下記の製造工程(以下において「製造工程A」と称する場合がある)により、冷凍食品を作製した。
[製造工程A]
生餃子を、90℃に設定した蒸し庫で8分30秒間蒸した後、-35℃に設定した冷凍庫にて凍結させる。得られた凍結状態の餃子(以下において「冷凍餃子」と称する場合がある)に、30℃に調温されたバッター液を塗布し、その後、-35℃に設定した冷凍庫にて再凍結させて冷凍食品を作製する。
ここで、冷凍餃子への実施例1~9及び比較例1~3のバッター液の塗布は、いずれも冷凍餃子の全面にバッター液が付着するように行われ、また、当該バッター液の冷凍餃子への付着量は、いずれも冷凍餃子1個当たり4.5gとした。
以下において、実施例1~9及び比較例1~3のバッター液を用いて得られた冷凍食品を、それぞれ実施例1~9及び比較例1~3の冷凍食品と称する場合がある。
【0063】
(バッター液の30℃における粘度の測定)
実施例1~9及び比較例1~3のバッター液を、-35℃に設定した冷凍庫にて凍結させ、次いで30℃に調整した恒温槽により解凍し、その後、30℃に調温して粘度を測定した。粘度の測定は、回転式粘度計(東機産業株式会社製「VISCOMETER TVC-7」)を用いて、ローター:高粘度THタイプ、レンジR、No.2又はNo.3、回転数:20rpm、測定時間:回転開始後30秒の条件にて行った。測定結果を下表3に示す。
【0064】
(実施例1~9及び比較例1~3の冷凍食品の焼成調理(実施例1~9及び比較例1~3の焼き餃子の作製))
実施例1~9及び比較例1~3の冷凍食品の中心部(縦、横及び高さの長さを等分割した際の交点)に温度計(グラフテック株式会社製「midi LOGGER GL220」)のセンサー部を固定した上で、各冷凍食品を凍結状態のまま直径26cmのフライパンに並べ、中火(火の先端がフライパンの底にわずかに触れる程度)で焼成調理した。各冷凍食品は、餃子底面がフライパンに接するように並べられた。ここで冷凍食品の焼成調理は、まずフライパンの蓋を閉めた状態で5分間加熱(蒸し焼き)し、以降は蓋を開けて加熱(焼き加熱)した。各食品の中心部の温度が70℃に達した時点で、喫食に適した状態になったとしてフライパンから取り出し、得られた焼き餃子を後述の官能評価に供した。また、各食品の焼成調理時間(焼成調理の開始から、フライパンから取り出すまでの時間)を計測した。計測結果を下表3に示す。
以下において、実施例1~9及び比較例1~3の冷凍食品を焼成調理して得られた焼き餃子を、それぞれ実施例1~9及び比較例1~3の焼き餃子と称する場合がある。
【0065】
(実施例1~9及び比較例1~3の焼き餃子の官能評価)
実施例1~9及び比較例1~3の各焼き餃子における焼き面(底面)の焦げ付きの程度を、5名の専門パネルが目視で確認し、下記の尺度(焼き面の焦げ付きの評価尺度)に基づいて0.5点刻みで評点付けした後、5名の評点の平均値を算出した。
また、実施例1~9及び比較例1~3の各焼き餃子を5名の専門パネルが喫食し、口腔内で感じられる焼き餃子の表面のヌルつきの程度について、下記の尺度(表面のヌルつきの評価尺度)に基づいて0.5点刻みで評点付けした後、5名の評点の平均値を算出した。
尚、専門パネルは、下記の評価尺度について、評点が0.5点変動するには、焼き餃子における焼き面の焦げ付きや表面のヌルつきがどの程度変動すればよいのか等がパネリスト間で共通となるよう予め訓練された。
【0066】
[焼き面の焦げ付きの評価尺度]
4点:焼き面に焦げ付きがない
3点:焼き面にほとんど焦げ付きがない
2点:焼き面にやや焦げ付きがある
1点:焼き面が焦げている
【0067】
[表面のヌルつきの評価尺度]
4点:焼き餃子の表面にヌルつきがない
3点:焼き餃子の表面にほとんどヌルつきがない
2点:焼き餃子の表面にややヌルつきがある
1点:焼き餃子の表面にヌルつきがある
【0068】
官能評価の結果を下表3に示す。
【0069】
【0070】
表3に示されるように、30℃における粘度が80~1320mPa・sであるバッター液が用いられた実施例1~9の冷凍食品を焼成調理して得られた焼き餃子は、いずれも表面にヌルつきがなかったか、又はほとんどなかった。また、これらの焼き餃子は、いずれも焼き面に焦げ付きがなかったか、又はほとんどなかった。
一方、30℃における粘度が1610~4300mPa・sであるバッター液が用いられた比較例1~3の冷凍食品を焼成調理して得られた焼き餃子は、いずれも表面にヌルつきがあった。また、これらの焼き餃子は、いずれも焼き面に焦げ付きがあった。
実施例1~9の冷凍食品は、いずれも比較例1~3の冷凍食品に比べて焼成調理時間(すなわち、焼成調理開始から、喫食に適した状態になるまでの時間)が短かった。
【0071】
<試験2>
(実施例10、11及び比較例4のバッター液の作製)
水及び大豆タンパク質を混合した後、菜種油を混合し、撹拌(撹拌条件:6000rpm、7分間)して乳化させた。得られた乳化物に、小麦粉及びキサンタンガムを混合した後、95℃に達温するまで加熱し、次いで30℃に調温して、実施例10、11及び比較例4のバッター液をそれぞれ作製した。各バッター液の原料(水、大豆タンパク質、菜種油、小麦粉、キサンタンガム)の配合は、下表4に示す割合とした。
【0072】
(実施例10及び比較例4の冷凍食品の作製)
実施例10及び比較例4のバッター液、並びに生餃子を用いて、製造工程Aにより、冷凍食品を作製した。
ここで、冷凍餃子への実施例10及び比較例4のバッター液の塗布は、いずれも冷凍餃子の全面にバッター液が付着するように行われ、また、当該バッター液の冷凍餃子への付着量は、いずれも冷凍餃子1個当たり1.8gとした。
以下において、実施例10及び比較例4のバッター液を用いて得られた冷凍食品を、それぞれ実施例10及び比較例4の冷凍食品と称する場合がある。
【0073】
(実施例11の冷凍食品の作製)
実施例11のバッター液、並びに生餃子を用いて、下記の製造工程(「製造工程B」と称する場合がある)により、冷凍食品を作製した。
[製造工程B]
生餃子を、加熱せずに-35℃に設定した冷凍庫にて凍結させる。得られた凍結状態の餃子(冷凍餃子)に、30℃に調温されたバッター液を塗布し、その後、-35℃に設定した冷凍庫にて再凍結させて冷凍食品を作製する。
ここで、冷凍餃子への実施例11のバッター液の塗布は、冷凍餃子の全面にバッター液が付着するように行われ、また、当該バッター液の冷凍餃子への付着量は、冷凍餃子1個当たり1.8gとした。
以下において、実施例11のバッター液を用いて得られた冷凍食品を、実施例11の冷凍食品と称する場合がある。
【0074】
(バッター液の30℃における粘度の測定)
実施例10、11及び比較例4のバッター液を、-35℃に設定した冷凍庫にて凍結させ、次いで30℃に調整した恒温槽により解凍し、その後、試験1と同様の手法で粘度を測定した。測定結果を下表4に示す。
【0075】
(実施例10、11及び比較例4の冷凍食品の焼成調理(実施例10、11及び比較例4の焼き餃子の作製))
実施例10、11及び比較例4の冷凍食品を、試験1と同様の手順で焼成調理し、得られた焼き餃子を後述の官能評価に供した。また、各食品の焼成調理時間を計測した。計測結果を下表4に示す。
以下において、実施例10、11及び比較例4の冷凍食品を焼成調理して得られた焼き餃子を、それぞれ実施例10、11及び比較例4の焼き餃子と称する場合がある。
【0076】
(実施例10、11及び比較例4の焼き餃子の官能評価)
実施例10、11及び比較例4の各焼き餃子における焼き面(底面)の焦げ付きの程度を、5名の専門パネルが目視で確認し、試験1と同じ尺度(焼き面の焦げ付きの評価尺度)に基づいて0.5点刻みで評点付けした後、5名の評点の平均値を算出した。
また、実施例10、11及び比較例4の各焼き餃子を5名の専門パネルが喫食し、口腔内で感じられる焼き餃子の表面のヌルつきの程度について、試験1と同じ尺度(表面のヌルつきの評価尺度)に基づいて0.5点刻みで評点付けした後、5名の評点の平均値を算出した。
尚、専門パネルは、予め試験1と同様に訓練された。
官能評価の結果を下表4に示す。
【0077】
【0078】
表4に示されるように、30℃における粘度が479mPa・sであるバッター液が用いられた実施例10、11の冷凍食品を焼成調理して得られた焼き餃子は、いずれも表面にヌルつきがほとんどなかった。また、これらの焼き餃子は、いずれも焼き面に焦げ付きがほとんどなかった。
一方、30℃における粘度が2090mPa・sであるバッター液が用いられた比較例4の冷凍食品を焼成調理して得られた焼き餃子は、表面にややヌルつきがあった。また、当該焼き餃子は、焼き面に焦げ付きがあった。
実施例10、11の冷凍食品は、いずれも比較例4の冷凍食品に比べて焼成調理時間(すなわち、焼成調理開始から、喫食に適した状態になるまでの時間)が短かった。
【0079】
<試験3>
(実施例12及び比較例5のバッター液の作製)
水及び大豆タンパク質を混合した後、菜種油を混合し、撹拌(撹拌条件:6000rpm、7分間)して乳化させた。得られた乳化物に、小麦粉及びキサンタンガムを混合した後、95℃に達温するまで加熱し、次いで30℃に調温して、実施例12及び比較例5のバッター液をそれぞれ作製した。各バッター液の原料(水、大豆タンパク質、菜種油、小麦粉、キサンタンガム)の配合は、下表5に示す割合とした。
【0080】
(実施例12及び比較例5の冷凍食品の作製)
実施例12及び比較例5のバッター液、並びに生餃子を用いて、製造工程Aにより、冷凍食品を作製した。
ここで、冷凍餃子への実施例12及び比較例5のバッター液の塗布は、いずれも冷凍餃子の底面にバッター液が付着するように行われ、また、当該バッター液の冷凍餃子への付着量は、いずれも冷凍餃子1個当たり4.5gとした。
以下において、実施例12及び比較例5のバッター液を用いて得られた冷凍食品を、それぞれ実施例12及び比較例5の冷凍食品と称する場合がある。
【0081】
(バッター液の30℃における粘度の測定)
実施例12及び比較例5のバッター液を、-35℃に設定した冷凍庫にて凍結させ、次いで30℃に調整した恒温槽により解凍し、その後、試験1と同様の手法で粘度を測定した。測定結果を下表5に示す。
【0082】
(実施例12及び比較例5の冷凍食品の焼成調理(実施例12及び比較例5の焼き餃子の作製))
実施例12及び比較例5の冷凍食品を、試験1と同様の手順で焼成調理し、得られた焼き餃子を後述の官能評価に供した。また、各食品の焼成調理時間を計測した。計測結果を下表5に示す。
以下において、実施例12及び比較例5の冷凍食品を焼成調理して得られた焼き餃子を、それぞれ実施例12及び比較例5の焼き餃子と称する場合がある。
【0083】
(実施例12及び比較例5の焼き餃子の官能評価)
実施例12及び比較例5の各焼き餃子における焼き面(底面)の焦げ付きの程度を、5名の専門パネルが目視で確認し、試験1と同じ尺度(焼き面の焦げ付きの評価尺度)に基づいて0.5点刻みで評点付けした後、5名の評点の平均値を算出した。
また、実施例12及び比較例5の各焼き餃子を5名の専門パネルが喫食し、口腔内で感じられる焼き餃子の表面のヌルつきの程度について、試験1と同じ尺度(表面のヌルつきの評価尺度)に基づいて0.5点刻みで評点付けした後、5名の評点の平均値を算出した。
尚、専門パネルは、予め試験1と同様に訓練された。
官能評価の結果を下表5に示す。
【0084】
【0085】
表5に示されるように、30℃における粘度が479mPa・sであるバッター液が用いられた実施例12の冷凍食品を焼成調理して得られた焼き餃子は、表面にヌルつきがなかった。また、当該焼き餃子は、焼き面に焦げ付きがなかった。
一方、30℃における粘度が2090mPa・sであるバッター液が用いられた比較例5の冷凍食品を焼成調理して得られた焼き餃子は、焼き面に焦げ付きがあった。
実施例12の冷凍食品は、比較例5の冷凍食品に比べて焼成調理時間(すなわち、焼成調理開始から、喫食に適した状態になるまでの時間)が短かった。
【0086】
<試験4>
(実施例13、14及び比較例6、7のバッター液の作製)
水及び大豆タンパク質を混合した後、菜種油を混合し、撹拌(撹拌条件:6000rpm、7分間)して乳化させた。得られた乳化物に、小麦粉及びキサンタンガムを混合した後、30℃に調温して、実施例13、14及び比較例6、7のバッター液をそれぞれ作製した。各バッター液の原料(水、大豆タンパク質、菜種油、小麦粉、キサンタンガム)の配合は、下表6に示す割合とした。
【0087】
(実施例13及び比較例6の冷凍食品の作製)
実施例13及び比較例6のバッター液、並びに生餃子を用いて、下記の製造工程(「製造工程C」と称する場合がある)により、冷凍食品を作製した。
[製造工程C]
30℃に調温されたバッター液をトレイに充填し、次いで、当該バッター液に生餃子の底面が接するように、生餃子をトレイに移載する。当該トレイ上のバッター液及び生餃子を、90℃に設定した蒸し庫で8分30秒間蒸した後、-35℃に設定した冷凍庫にて凍結させて冷凍食品を作製する。
ここで、実施例13及び比較例6のバッター液の冷凍餃子(凍結状態の餃子)への付着量は、いずれも冷凍餃子1個当たり4.5gとした。
以下において、実施例13及び比較例6のバッター液を用いて得られた冷凍食品を、それぞれ実施例13及び比較例6の冷凍食品と称する場合がある。
【0088】
(実施例14及び比較例7の冷凍食品の作製)
実施例14及び比較例7のバッター液、並びに生餃子を用いて、下記の製造工程(「製造工程D」と称する場合がある)により、冷凍食品を作製した。
[製造工程D]
生餃子をトレイに移載し、当該トレイ上の生餃子を、90℃に設定した蒸し庫で8分30秒間蒸した後、30℃に調温されたバッター液を上掛けし、その後、-35℃に設定した冷凍庫にて凍結させて冷凍食品を作製する。
ここで、実施例14及び比較例7のバッター液の冷凍餃子への付着量は、いずれも冷凍餃子1個当たり4.5gとした。
以下において、実施例14及び比較例7のバッター液を用いて得られた冷凍食品を、それぞれ実施例14及び比較例7の冷凍食品と称する場合がある。
【0089】
(バッター液の30℃における粘度の測定)
実施例13及び比較例6のバッター液を、90℃に設定した蒸し庫で8分30秒間蒸し、次いで、-35℃に設定した冷凍庫にて凍結させ、30℃に調整した恒温槽により解凍し、その後、試験1と同様の手法で粘度を測定した。
実施例14及び比較例7のバッター液を、-35℃に設定した冷凍庫にて凍結させ、次いで30℃に調整した恒温槽により解凍し、その後、試験1と同様の手法で粘度を測定した。
測定結果を下表6に示す。
【0090】
(実施例13、14及び比較例6、7の冷凍食品の焼成調理(実施例13、14及び比較例6、7の焼き餃子の作製))
実施例13、14及び比較例6、7の冷凍食品を、試験1と同様の手順で焼成調理し、得られた焼き餃子を後述の官能評価に供した。また、各食品の焼成調理時間を計測した。計測結果を下表6に示す。
以下において、実施例13、14及び比較例6、7の冷凍食品を焼成調理して得られた焼き餃子を、それぞれ実施例13、14及び比較例6、7の焼き餃子と称する場合がある。
【0091】
(実施例13、14及び比較例6、7の焼き餃子の官能評価)
実施例13、14及び比較例6、7の各焼き餃子における焼き面(底面)の焦げ付きの程度を、5名の専門パネルが目視で確認し、試験1と同じ尺度(焼き面の焦げ付きの評価尺度)に基づいて0.5点刻みで評点付けした後、5名の評点の平均値を算出した。
また、実施例13、14及び比較例6、7の各焼き餃子を5名の専門パネルが喫食し、口腔内で感じられる焼き餃子の表面のヌルつきの程度について、試験1と同じ尺度(表面のヌルつきの評価尺度)に基づいて0.5点刻みで評点付けした後、5名の評点の平均値を算出した。
尚、専門パネルは、予め試験1と同様に訓練された。
官能評価の結果を下表6に示す。
【0092】
【0093】
表6に示されるように、30℃における粘度が537mPa・s又は277mPa・sであるバッター液が用いられた実施例13、14の冷凍食品を焼成調理して得られた焼き餃子は、いずれも表面にヌルつきがほとんどなかった。また、これらの焼き餃子は、いずれも焼き面に焦げ付きがほとんどなかった。
一方、30℃における粘度が2220mPa・s又は4300mPa・sであるバッター液が用いられた比較例6、7の冷凍食品を焼成調理して得られた焼き餃子は、いずれも表面にややヌルつきがあった。また、これらの焼き餃子は、いずれも焼き面に焦げ付きがあった。
実施例13、14の冷凍食品は、いずれも比較例6、7の冷凍食品に比べて焼成調理時間(すなわち、焼成調理開始から、喫食に適した状態になるまでの時間)が短かった。
【0094】
上記試験1~4の結果から、凍結状態の包餡麺帯食品と当該包餡麺帯食品に付着している凍結状態のバッター組成物とを含む冷凍食品において、凍結状態のバッター組成物の30℃における粘度を特定の範囲に調整することによって、喫食に適した状態になるまで焼成調理が施された当該冷凍食品において、包餡麺帯食品の表面のヌルつきが改善し得ることが示唆された。また、凍結状態のバッター組成物の30℃における粘度が特定の範囲であることによって、喫食に適した状態になるまで当該冷凍食品に焼成調理が施されたときに包餡麺帯食品の焼き面に生じる焦げ付きが抑えられ得ることも示唆された。更に、凍結状態のバッター組成物の30℃における粘度が特定の範囲であることによって、当該冷凍食品の焼成調理時間を短縮し得ることも示唆された。
本発明によれば、凍結状態の包餡麺帯食品と当該包餡麺帯食品に付着している凍結状態のバッター組成物とを含む冷凍食品であって、喫食に適した状態になるまで焼成調理が施されたときの、包餡麺帯食品の表面のヌルつき(ぬめり)が改善した冷凍食品及びその製造方法が提供され得る。
また、本発明によれば、凍結状態の包餡麺帯食品と当該包餡麺帯食品に付着している凍結状態のバッター組成物とを含む冷凍食品であって、喫食に適した状態になるまで焼成調理が施されたときに包餡麺帯食品の焼き面に生じる焦げ付きが抑えられた冷凍食品及びその製造方法が提供され得る。
また、本発明によれば、凍結状態の包餡麺帯食品と当該包餡麺帯食品の外表面の少なくとも一部に付着している凍結状態のバッター組成物とを含む冷凍食品の、焼成調理時間の短縮方法も提供され得る。
また、本発明によれば、凍結状態の包餡麺帯食品と当該包餡麺帯食品の外表面の少なくとも一部に付着している凍結状態のバッター組成物とを含む冷凍食品に、喫食に適した状態になるまで焼成調理が施されたときに当該包餡麺帯食品の焼き面に生じる焦げ付きの抑制方法も提供され得る。