(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176927
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】電磁接触器
(51)【国際特許分類】
H01H 50/38 20060101AFI20241212BHJP
H01H 50/54 20060101ALI20241212BHJP
H01H 1/54 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H01H50/38 A
H01H50/54 D
H01H1/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095811
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】小西 弘純
(72)【発明者】
【氏名】堤 貴志
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 裕也
(72)【発明者】
【氏名】草野 祐馬
【テーマコード(参考)】
5G051
【Fターム(参考)】
5G051NB15
(57)【要約】
【課題】電磁接触器において、短絡時における接点部の離間をより効果的に抑制する。
【解決手段】カプセルケース12は、樹脂製である。固定ヨーク51は、一対の固定接触子14の間に配置され、カプセルケース12を構成する躯体61内に少なくとも一部が保持されている。可動ヨーク52は、可動接触子15に設けられ、固定ヨーク51に対向する。固定ヨーク51及び可動ヨーク52は、接点部23を閉じているときに可動接触子15に流れる通電方向の軸周りに磁路を形成することで互いに吸引し合う。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の容器と、
前記容器を貫通して固定され、前記容器内となる一端側に固定接点が形成された一対の固定接触子と、
両端側に前記固定接点に対向する可動接点が形成され、前記容器内で奥行方向に沿って変位するときに、前記可動接点及び前記固定接点で構成される接点部を開閉させる可動接触子と、
一対の前記固定接触子の間に配置され、前記容器を構成する躯体内に少なくとも一部が保持された固定ヨークと、
前記可動接触子に設けられ、前記固定ヨークに対向する可動ヨークと、を備え、
前記固定ヨーク及び前記可動ヨークは、前記接点部を閉じているときに前記可動接触子に流れる通電方向の軸周りに磁路を形成することで互いに吸引し合うことを特徴とする電磁接触器。
【請求項2】
前記躯体には、前記固定ヨークの一部を露出させる開口部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁接触器。
【請求項3】
前記固定ヨークは、奥行方向から見て前記可動接触子と直交する方向に延びる平板状に形成され、
前記躯体内に埋設された埋設部と、
前記開口部から突出した露出部と、を備えていることを特徴とする請求項2に記載の電磁接触器。
【請求項4】
前記埋設部は、前記露出部の突出方向から見て前記開口部よりも大きいことを特徴とする請求項3に記載の電磁接触器。
【請求項5】
前記固定ヨークは、前記埋設部が前記躯体内に密着していることを特徴とする請求項3に記載の電磁接触器。
【請求項6】
前記可動ヨークは、前記可動接触子を通電方向から見て前記固定ヨークに向かって開いたコ字状に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の電磁接触器。
【請求項7】
前記容器は、粘土結晶の積層膜によってガスバリアコーティングされていることを特徴とする請求項1に記載の電磁接触器。
【請求項8】
前記固定ヨークは、インサート成形によって前記躯体内に一体化されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁接触器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁接触器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、短絡電流が流れたときの電磁反発力による接点部の離間(浮き上がり)を抑制するために、固定ヨーク及び可動ヨークを設けることが開示されている。固定ヨーク及び可動ヨークは、可動接触子に流れる通電方向の軸周りに磁路を形成し、互いに吸引し合うように構成されており、固定ヨークは、可動鉄心に連動するホルダに固定され、可動ヨークは、可動接触子に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
可動鉄心に連動するホルダに固定ヨークを固定した構成では、固定ヨークが可動鉄心と共に変位する。そのため、固定ヨーク及び可動ヨークが互いに引き合うときに、電磁石による投入方向の力を低減させてしまい、電磁反発力による接点部の離間を効果的に抑制できない可能性がある。
本発明の目的は、電磁接触器において、短絡時における接点部の離間をより効果的に抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る電磁接触器は、容器と、一対の固定接触子と、可動接触子と、固定ヨークと、可動ヨークと、を備えている。容器は、樹脂製である。一対の固定接触子は、容器を貫通して固定され、容器内となる一端側に固定接点が形成されている。可動接触子は、両端側に固定接点に対向する可動接点が形成され、容器内で奥行方向に沿って変位するときに、可動接点及び固定接点で構成される接点部を開閉させる。固定ヨークは、一対の固定接触子の間に配置され、容器を構成する躯体内に少なくとも一部が保持されている。可動ヨークは、可動接触子に設けられ、固定ヨークに対向する。固定ヨーク及び可動ヨークは、接点部を閉じているときに可動接触子に流れる通電方向の軸周りに磁路を形成することで互いに吸引し合う。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、固定ヨークが樹脂製の容器を構成する躯体内に保持されているので、固定ヨーク及び可動ヨークが互いに吸引し合うとしても、電磁石による投入方向の力を低減させることがない。したがって、短絡時の接点部の離間をより効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図6】カプセルケースに保持された固定ヨークを示す図である。
【
図7】カプセルケースに保持された固定ヨークを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0009】
《実施形態》
《構成》
以下の説明では、互いに直交する三方向を、便宜的に、縦方向、幅方向、及び奥行方向とする。
図1は、電磁接触器11を示す図である。
ここでは、電磁接触器11を、縦方向の一方、幅方向の一方、及び奥行方向の手前から見た状態を示している。電磁接触器11は、カプセルケース12(容器)と、カプセルカバー13と、を備えている。カプセルケース12は、絶縁性を有する樹脂製であり、縦方向の両側、幅方向の両側、及び奥行方向の手前が閉塞され、奥行方向の奥が開放された深型の容器状に形成されている。カプセルカバー13は、絶縁性を有する樹脂製であり、縦方向の両側、幅方向の両側、及び奥行方向の奥が閉塞され、奥行方向の手前が開放された浅型の容器状に形成され、カプセルケース12における奥行方向の奥に嵌め合わされ、密閉されている。
【0010】
カプセルケース12、及びカプセルカバー13には、水素や窒素等の加圧された遮断用ガスが封入されている。そのため、カプセルケース12と、カプセルカバー13と、をエポキシ樹脂系の接着剤で固定したうえ、境界部を含む外周面の全てが粘土結晶の積層膜によってガスバリアコーティングされている。具体的には、精製したスメクタイトの層間イオンを置換し、PVA(ポリビニルアルコール)や水溶性ナイロン等の有機バインダーでつなぎ合わせることで、迷路効果を発現し、水素や窒素等のガス分子の透過を防いでいる。積層膜は厚み方向に積層されており、厚さは例えば2μmである。ガスバリアコーティングは、例えば塗液をミスト化してカプセルケース12及びカプセルカバー13に塗布するスプレー方式とし、例えば150℃以上の、層間イオンが粘土結晶内に取り込まれる温度で焼成されることで完成される。このように、外周面の全てがガスバリアコーティングされる関係で、カプセルケース12、及びカプセルカバー13の外周形状は、できるだけ凹凸が少なく直線的な平面で構成した多角形とすることが好ましい。
【0011】
図2は、電磁接触器11の断面図である。
ここでは、電磁接触器11において、幅方向の中心を通り縦方向及び奥行方向に沿った断面を、幅方向の一方から見た状態を示している。
図3は、電磁接触器11の断面図である。
ここでは、電磁接触器11において、縦方向の中心を通り幅方向及び奥行方向に沿った断面を、縦方向の一方から見た状態を示している。
まず電磁接触器11の基本的な構造について説明する。電磁接触器11は、一対の固定接触子14と、可動接触子15と、接点支え16と、電磁石部17と、を備えている。
一対の固定接触子14は、導電性を有する金属であり、奥行方向に延びた略円柱状に形成されている。一対の固定接触子14は、縦方向に間隔をあけて並び、カプセルケース12の内側から外側へと突き抜けており、インサート成形によってカプセルケース12に一体化されている。固定接触子14は、奥行方向の奥を向いた端面のうち縦方向の内側端部が固定接点21となる。
【0012】
可動接触子15は、導電性を有する金属であり、縦方向に延び、縦方向及び幅方向に沿った平板状に形成され、一対の固定接触子14より奥行方向の奥に配置されている。可動接触子15は、奥行方向の手前を向いた端面のうち縦方向の両外側端部が、固定接点21に対向する可動接点22となる。これら固定接点21及び可動接点22によって接点部23が構成されており、可動接触子15の奥行方向に沿った変位によって接点部23が開閉する。
接点支え16は、幅方向の両側、及び奥行方向の両側を閉塞した枠状に形成され、その内側には、可動接触子15及び接触スプリング26が保持されている。接触スプリング26は、奥行方向に伸縮する圧縮コイルばねであり、可動接触子15を奥行方向の手前へと付勢している。カプセルケース12の内側には、接点部23のアークを誘導する永久磁石27及びヨーク28が保持されている。永久磁石27は、平板状であり、可動接触子15を挟んで縦方向の両側に配置されている。ヨーク28は、縦方向の外側、及び幅方向の両側を閉塞し、縦方向の内側に向かって開いたコ字状の継鉄であり、永久磁石27における縦方向の外側に配置されている。
【0013】
電磁石部17は、奥行方向の奥に配置され、スプール31と、プランジャ32と、外ヨーク33と、底面ヨーク34と、永久磁石35と、補助ヨーク36と、バックスプリング37と、を備えている。
スプール31は、絶縁性を有する樹脂製であり、奥行方向に延びる円筒状の巻き軸41にコイル42が巻かれている。巻き軸41の内側には、奥行方向の手前に円筒状のプランジャリング43が嵌め合わされ、奥行方向の奥に円筒状の摺動カラー44が嵌め合わされている。スプール31には、奥行方向の奥に、奥行方向と直交した四方、つまり縦方向の両側、及び幅方向の両側を取り囲むリブ45が形成されている。
プランジャ32は、奥行方向に延びる円柱状の可動鉄心であり、軸方向に進退可能な状態でプランジャリング43及び摺動カラー44に挿入されている。プランジャ32は、巻き軸41よりも長く、奥行方向の手前端部に接点支え16が連結されており、奥行方向の奥端部にアーマチュア46が連結されている。アーマチュア46は、縦方向及び幅方向に沿った円板状の継鉄である。
【0014】
外ヨーク33は、幅方向から見て奥行方向の奥に向かって開いた略コ字状に形成されている継鉄であり、スプール31における縦方向の両側、及び奥行方向の手前を覆うように設けられている。外ヨーク33には、奥行方向に貫通した丸穴にプランジャリング43の手前端部が嵌まり合っている。
底面ヨーク34は、縦方向及び幅方向に沿った板状の継鉄であり、スプール31における巻き軸41よりも奥行方向の奥に配置され、外ヨーク33における両側の奥端部に固定されている。底面ヨーク34は、奥行方向に貫通した丸穴にプランジャ32が通り抜けている。
【0015】
永久磁石35は、縦方向及び幅方向に沿った平板状で、奥行方向に貫通した丸穴が形成されており、リブ45の内側に嵌まり合い、且つ底面ヨーク34の奥面に吸着している。
補助ヨーク36は、縦方向及び幅方向に沿った平板状で、奥行方向に貫通した丸穴が形成されており、リブ45の内側に嵌まり合い、且つ永久磁石35の奥面に吸着されている。プランジャ32のアーマチュア46は、底面ヨーク34と補助ヨーク36との間に配置されている。
バックスプリング37は、奥行方向に伸縮する圧縮コイルばねであり、摺動カラー44とアーマチュア46との間に介在し、アーマチュア46を介してプランジャ32を奥行方向の奥へと付勢している。
【0016】
上記の構成により、コイル42に通電がない非励磁の状態では、永久磁石35の磁力とバックスプリング37の反発力によって、プランジャ32が奥行方向の奥に変位した配置となる。永久磁石35の磁束は、永久磁石35の手前面から、底面ヨーク34、外ヨーク33、プランジャリング43、プランジャ32、アーマチュア46、及び補助ヨーク36を順に経て、永久磁石35の奥面へと至る。この閉ループとなる磁気回路によって、アーマチュア46が補助ヨーク36の手前面に吸着される。こうして、プランジャ32が奥行方向の奥へと変位しているときに、接点支え16を介して接点が開いて釈放状態となる。このとき、底面ヨーク34の奥面に対してアーマチュア46が離間している。
【0017】
この状態から、コイル42に通電され励磁されると、コイル42の磁力によって、底面ヨーク34の奥面にアーマチュア46が吸着される。これにより、プランジャ32が永久磁石35の磁力とバックスプリング37の反発力に逆らって奥行方向の手前に変位した配置となる。コイル42の磁束は、プランジャリング43の内周面から、プランジャ32、アーマチュア46、底面ヨーク34、外ヨーク33を順に経て、プランジャリング43の外周面へと至る。この閉ループとなる磁気回路によって、底面ヨーク34の奥面にアーマチュア46が吸着される。こうして、プランジャ32が奥行方向の手前へと変位しているときに、接点支え16を介して接点が閉じて投入状態となる。このとき、補助ヨーク36の手前面に対してアーマチュア46が離間している。
【0018】
次に、短絡電流が流れたときの電磁反発力による接点部23の離間(浮き上がり)を抑制する構造について説明する。
電磁接触器11は、固定ヨーク51と、可動ヨーク52と、を備えている。固定ヨーク51は、一対の固定接触子14の間に配置され、カプセルケース12を構成する躯体内に少なくとも一部が保持されている。可動ヨーク52は、可動接触子15に設けられ、接点部23を閉じているときに固定ヨーク51に対向する。固定ヨーク51及び可動ヨーク52は、接点部23を閉じているときに可動接触子15に流れる通電方向の軸周りに磁路を形成することで互いに吸引し合う。
【0019】
図4は、固定ヨーク51及び可動ヨーク52を示す図である。
図中の(a)は、固定ヨーク51を縦方向の一方、幅方向の一方、及び奥行方向の手前から見た状態を示している。固定ヨーク51は、幅方向に延び、幅方向及び縦方向に沿った平板状の継鉄であり、大寸部53と、小寸部54と、を備え、奥行方向から見て略十字状に形成されている。大寸部53は、縦方向の寸法が相対的に大きく、小寸部54は、縦方向の寸法が相対的に小さい。網掛けで示した領域は、カプセルケース12の躯体内に埋め込まれる埋設部55であり、それ以外の領域は、露出部56となる。大寸部53は、全体が埋設部55である。小寸部54は、幅方向の内側、及び奥行方向の手前が埋設部55であり、幅方向の外側、及び奥行方向の奥が露出部56である。露出部56として、縦方向における両側の端面と、幅方向における外側の端面と、奥行方向における奥の端面と、が確保されている。
【0020】
図中の(b)は、可動ヨーク52を縦方向の一方、幅方向の一方、及び奥行方向の手前から見た状態を示している。可動ヨーク52は、縦方向から見て奥行方向の手前に向かって開いた略コ字状に形成されている継鉄であり、可動接触子15における幅方向の両側、及び奥行方向の奥を覆う。可動ヨーク52は、幅方向の内寸法が可動接触子15における幅方向の寸法に対応し、幅方向の外寸法が可動ヨーク52における幅方向の寸法に対応している。可動ヨーク52は、幅方向の両側で奥行方向に向かって延びる壁体の先端面が、固定ヨーク51における一対の露出部56に対向する。
【0021】
図5は、接点支え16を示す図である。
図中の(a)は、接点支え16を、縦方向の一方、幅方向の一方、及び奥行方向の手前から見た状態を示している。図中の(b)は、接点支え16において、縦方向の中心を通り幅方向及び奥行方向に沿った断面を、縦方向の一方から見た状態を示している。接点支え16は、縦方向から見て奥行方向の手前に向かって開いた略コ字状に形成されており、幅方向の両端側には、ケージ57がインサート成形によって一体化されている。ケージ57は、縦方向から見て奥行方向の奥に向かって開いた略コ字状に形成されており、接点支え16における奥行方向の手前を閉塞している。したがって、接点支え16は、ケージ57と共に、縦方向から見て略ロ字状に形成されている。ケージ57には、幅方向における両端側の曲げ部分に、開口部58が形成されている。接点支え16及びケージ57の内側には、奥行方向の手前から順に、可動接触子15、可動ヨーク52、及び接触スプリング26が嵌め込まれており、ケージ57の開口部58から可動ヨーク52の両端が奥行方向の手前に突出している。
【0022】
図6は、カプセルケース12に保持された固定ヨーク51を示す図である。
ここでは、カプセルケース12において、固定接触子14よりも奥行方向の奥を通り縦方向及び幅方向に沿った断面を、奥行方向の奥から見た状態を示している。カプセルケース12の天井を構成する躯体61に固定ヨーク51が埋設されており、固定ヨーク51における幅方向の両端側にある露出部56が露出している。一対の露出部56と、可動ヨーク52における幅方向の両端とが、奥行方向に対向し合う。接点ワイプ量を確保するために、接点部23を閉じた状態で、固定ヨーク51と可動ヨーク52とが非接触になるように設定されている。
【0023】
図7は、カプセルケース12に保持された固定ヨーク51を示す図である。
図中の(a)は、カプセルケース12において、躯体61よりも奥行方向の奥を通り縦方向及び幅方向に沿った断面を、縦方向の一方、幅方向の他方、及び奥行方向の奥から見た状態を示している。図中の(b)は、カプセルケース12において、固定ヨーク51を通り縦方向及び幅方向に沿った断面を、縦方向の一方、幅方向の他方、及び奥行方向の奥から見た状態を示している。躯体61における幅方向の両端面には、開口部62が形成されており、開口部62から固定ヨーク51の小寸部54が突出し、露出部56が露出している。すなわち、躯体61には、幅方向に貫通した空洞があり、そこに固定ヨーク51が保持されている。固定ヨーク51は、インサート成形によってカプセルケース12の躯体61に一体化されているため、埋設部55が開口部62に密着している。
【0024】
《作用効果》
次に、実施形態の主要な作用効果について説明する。
電磁接触器11は、カプセルケース12と、一対の固定接触子14と、可動接触子15と、固定ヨーク51と、可動ヨーク52と、を備えている。カプセルケース12は、樹脂製である。一対の固定接触子14は、カプセルケース12を貫通して固定され、カプセルケース12内となる一端側に固定接点21が形成されている。可動接触子15は、両端側に固定接点21に対向する可動接点22が形成され、カプセルケース12内で奥行方向に沿って変位するときに、可動接点22及び固定接点21で構成される接点部23を開閉させる。固定ヨーク51は、一対の固定接触子14の間に配置され、カプセルケース12を構成する躯体61内に少なくとも一部が保持されている。可動ヨーク52は、可動接触子15に設けられ、固定ヨーク51に対向する。固定ヨーク51及び可動ヨーク52は、接点部23を閉じているときに可動接触子15に流れる通電方向の軸周りに磁路を形成することで互いに吸引し合う。これによれば、固定ヨーク51が樹脂製のカプセルケース12を構成する躯体61内に保持されているので、固定ヨーク51及び可動ヨーク52が互いに吸引し合うとしても、電磁石部17による投入方向の力を低減させることがない。したがって、短絡時の接点部23の離間をより効果的に抑制することができる。カプセルケース12を樹脂製とすることで、躯体61内に固定ヨーク51を保持するための構造において、設計の自由度が向上する。
【0025】
躯体61には、固定ヨーク51の一部を露出させる開口部62が形成されている。これにより、インサート成形の際に、成形後に露出する一部によって固定ヨーク51を金型へ装着することができる。
固定ヨーク51は、奥行方向から見て可動接触子15と直交する方向に延びる平板状に形成され、埋設部55と、露出部56と、を備えている。埋設部55は、躯体61内に埋設されている。露出部56は、開口部62から突出している。これにより、インサート成形の際に、成形後に開口部62から突出した一部によって固定ヨーク51を金型へ装着することができる。特に、露出部56として、縦方向における両側の端面と、幅方向における外側の端面と、奥行方向における奥の端面と、が確保されていることで、金型に対して固定ヨーク51の位置決めを行なうことができる。
【0026】
埋設部55は、露出部56の突出方向から見て開口部62よりも大きい。これにより、躯体61に対して固定ヨーク51の位置ずれや脱落を抑制することができる。
固定ヨーク51は、埋設部55が躯体61内に密着している。これにより、固定ヨーク51のガタつきを抑制することができる。
可動ヨーク52は、可動接触子15を通電方向から見て固定ヨーク51に向かって開いたコ字状に形成されている。これにより、接点部23を閉じているときに可動接触子15に流れる通電方向の軸周りに磁路を形成することができる。また、固定ヨーク51の側をコ字状に形成する構成では、接点部23を閉じるときに固定ヨークの内側に可動接触子15を進入させることになり、高精度な動作が要求されることで設計コストが増大する。これに対して、可動ヨーク52の側をコ字状に形成する構成では、可動接触子15に可動ヨーク52に嵌まり合って一体化させているため、接点部23を閉じるときに高精度な動作が要求されることはなく、設計コストを抑制することができる。
【0027】
カプセルケース12は、粘土結晶の積層膜によってガスバリアコーティングされている。これにより、水素や窒素等のガス分子の透過が抑制され、加圧された遮断用ガスの漏洩を防ぐことができる。
固定ヨーク51は、インサート成形によって躯体61内に一体化されている。これにより、固定ヨーク51の埋設部55を躯体61内に密着させて、固定ヨーク51のガタつきを抑制することができる。また、躯体61内への固定ヨーク51の組み付けが必要なくなり、接合強度も向上する。
【0028】
次に、比較例について説明する。
ここでは、可動鉄心と共に連動するホルダに固定ヨークを固定し、可動接触子に可動ヨークを固定した構造を、比較例として説明する。このように、可動鉄心に連動するホルダに固定ヨークを固定した構成では、固定ヨークが可動鉄心と共に変位することになる。そのため、固定ヨーク及び可動ヨークが互いに引き合うときに、電磁石部による投入方向の力を低減させてしまい、電磁反発力による接点部の離間を効果的に抑制できない可能性があった。
【0029】
《変形例》
実施形態では、固定接触子14を円柱状に形成した構成について説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、固定接触子14の形状は任意であり、例えば縦方向に延び、縦方向及び幅方向に沿った平板状に形成してもよい。
実施形態では、カプセルケース12の内側に仕切壁を設け、接点部23と永久磁石27と隔てているが、これに限定されるものではない。すなわち、カプセルケース12の内側にアークバリアとなる絶縁ホルダを追加することで、接点部23と永久磁石27と隔てる構成としてもよい。
【0030】
以上、限られた数の実施形態を参照しながら説明したが、権利範囲はそれらに限定されるものではなく、上記の開示に基づく実施形態の改変は、当業者にとって自明のことである。
【符号の説明】
【0031】
11…電磁接触器、12…カプセルケース、13…カプセルカバー、14…固定接触子、15…可動接触子、17…電磁石部、21…固定接点、22…可動接点、23…接点部、26…接触スプリング、27…永久磁石、28…ヨーク、31…スプール、32…プランジャ、33…外ヨーク、34…底面ヨーク、35…永久磁石、36…補助ヨーク、37…バックスプリング、41…巻き軸、42…コイル、43…プランジャリング、44…摺動カラー、45…リブ、46…アーマチュア、51…固定ヨーク、52…可動ヨーク、53…大寸部、54…小寸部、55…埋設部、56…露出部、57…ケージ、58…開口部、61…躯体、62…開口部