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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017693
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】クリーンルームシステム
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/06 20060101AFI20240201BHJP
   F24F 9/00 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
F24F7/06 C
F24F9/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120506
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 彰悟
(72)【発明者】
【氏名】天野 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】千葉 友樹
(72)【発明者】
【氏名】曽根 大二郎
(72)【発明者】
【氏名】清水 耕平
【テーマコード(参考)】
3L058
【Fターム(参考)】
3L058BF04
3L058BG04
(57)【要約】
【課題】ハザード物質等の封じ込め対象物質を処理室に封じ込めた上で、扉を開閉することなく、一の処理室から他の処理室へ移動することができるクリーンルームシステムを得る。
【解決手段】クリーンルームシステムは、封じ込め対象物質を扱う複数の処理室と、
複数の処理室に対して入退室を可能とする開口部を介して接続された通路部と、通路部に対して清浄空気を供給する供給部と、複数の処理室に夫々設けられ、供給部から供給されて開口部を通過した清浄空気を外部に排気する排気部と、開口部に夫々設けられ、処理室と通路部とを仕切るエアカーテンを形成するエアバリア部と、開口部を通過する通過物を検知する検知部と、検知部が開口部を通過する通過物を検知すると、エアバリア部を稼動させて、通過物が通過する開口部にエアカーテンを形成し、検知部が開口部を通過物が通過したのを検知すると、エアバリア部を非稼働とする制御部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
封じ込め対象物質を扱う複数の処理室と、
複数の前記処理室に対して入退室を可能とする開口部を介して接続された通路部と、
前記通路部に対して清浄空気を供給する供給部と、
複数の前記処理室に夫々設けられ、前記供給部から供給されて前記開口部を通過した清浄空気を外部に排気する排気部と、
前記開口部に夫々設けられ、前記処理室と前記通路部とを仕切るエアカーテンを形成するエアバリア部と、
前記開口部を通過する通過物を検知する検知部と、
前記検知部が前記開口部を通過する通過物を検知すると、前記エアバリア部を稼動させて、通過物が通過する前記開口部にエアカーテンを形成させ、前記検知部が前記開口部を通過物が通過したのを検知すると、前記エアバリア部を非稼働とする制御部と、
を備えるクリーンルームシステム。
【請求項2】
前記供給部は、夫々の前記開口部に対応するように複数設けられている、
請求項1に記載のクリーンルームシステム。
【請求項3】
水平方向で対向するように一対設けられ、前記供給部から供給された空気を前記開口部へ案内する案内部が前記通路部に配置され、
前記エアバリア部は、清浄空気を押し出す押出部と、前記押出部によって押し出された清浄空気を引き込む引込部とを備え、
前記押出部は、一方の前記案内部に設けられ、前記引込部は、他方の前記案内部に設けられている、
請求項1に記載のクリーンルームシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、クリーンルームシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のクリーンブースでは、外部空気給気口から作業ブースに給気される清浄空気(外部空気)によって外部空気給気口から第1出入口に向かって前後方向(一方向)へ流れる気流が作業ブースの内部に発生するように、ファンフィルターユニットの給気風量が調節され、第1出入口から第2出入口に向かって緩衝スペースを通流する空気が第1出入口から作業ブースの内部に逆流することなく、作業ブースの内部の空気が第1出入口から緩衝スペースに流出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-95152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、ハザード物質等の封じ込め対象物質を扱うクリーンルームである処理室が複数設けられている場合には、夫々の処理室に更衣室が設けられている。ここで、ハザード物質等の封じ込め対象物質を処理室に封じ込める必要があるため、処理室と更衣室とは、開閉される扉で仕切られている。これによって、一の処理室から他の処理室への移動は、一の処理室から扉を開閉して一の処理室を退室した後、他の更衣室へ入り、他の更衣室の扉を開閉して他の処理室へ移動していた。このため、一の処理室から他の処理室への移動に、手間がかかっていた。
【0005】
本願の課題は、ハザード物質等の封じ込め対象物質を処理室に封じ込めた上で、扉を開閉することなく、一の処理室から他の処理室へ移動することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様に係るクリーンルームシステムは、封じ込め対象物質を扱う複数の処理室と、複数の前記処理室に対して入退室を可能とする開口部を介して接続された通路部と、前記通路部に対して清浄空気を供給する供給部と、複数の前記処理室に夫々設けられ、前記供給部から供給されて前記開口部を通過した清浄空気を外部に排気する排気部と、前記開口部に夫々設けられ、前記処理室と前記通路部とを仕切るエアカーテンを形成するエアバリア部と、前記開口部を通過する通過物を検知する検知部と、前記検知部が前記開口部を通過する通過物を検知すると、前記エアバリア部を稼動させて、通過物が通過する前記開口部にエアカーテンを形成させ、前記検知部が前記開口部を通過物が通過したのを検知すると、前記エアバリア部を非稼働とする制御部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
第1態様に係る構成によれば、供給部から供給された清浄空気は、開口部を通過して処理室へ流入して排気部から排気される。これにより、通路部から処理室へ向かう一方向の空気の流れが形成されているため、ハザード物質等の封じ込め対象物質が処理室に封じ込められる。
【0008】
さらに、検知部が開口部を通過する通過物を検知すると、エアバリア部が稼動し、処理室と通路部とを仕切るエアカーテンが開口部に形成される。このため、通過物が開口部を通過することで、ハザード物質等の封じ込め対象物質が処理室から通路部へ漏れるのが抑制される。
【0009】
ここで、通路部から夫々の処理室に対して入退室を可能とする開口部には扉が設けられていない。つまり、ハザード物質等の封じ込め対象物質を処理室に封じ込めた上で、扉を開閉することなく、一の処理室から他の処理室へ移動することができる。
【0010】
第2態様に係るクリーンルームシステムは、第1態様に係るクリーンルームシステムにおいて、前記供給部は、夫々の前記開口部に対応するように複数設けられていることを特徴とする。
【0011】
第2態様に係る構成によれば、供給部は、夫々の開口部に対応するように複数設けられている。このため、供給部が1個の場合と比して、通路部から処理室へ向かう一方向の空気の流れを効果的に形成することができる。
【0012】
第3態様に係るクリーンルームシステムは、第1態様に係るクリーンルームシステムにおいて、水平方向で対向するように一対設けられ、前記供給部から供給された空気を前記開口部へ案内する案内部が前記通路部に配置され、前記エアバリア部は、清浄空気を押し出す押出部と、前記押出部によって押し出された清浄空気を引き込む引込部とを備え、前記押出部は、一方の前記案内部に設けられ、前記引込部は、他方の前記案内部に設けられていることを特徴とする。
【0013】
第3態様に係る構成によれば、供給部によって通路部へ供給された清浄空気は、案内部によって案内されて処理室へ流入する。これにより、開口部へ向かう清浄空気の流れが整えられて速くなることで、ハザード物質等の封じ込め対象物質が、処理室から通路部へ漏れるのを抑制することができる。
【0014】
また、エアバリア部を構成する押出部は、一方の案内部に設けられ、エアバリア部を構成する引込部は、他方の案内部に設けられている。このため、エアバリア部と案内部とが別個に設けられる場合と比して、省スペース化されている。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、ハザード物質等の封じ込め対象物質を処理室に封じ込めた上で、扉を開閉することなく、一の処理室から他の処理室へ移動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(A)(B)本開示の実施形態に係るクリーンルームシステムを示した概略構成図である。
図2】本開示の実施形態に係るクリーンルームシステムにおいて、作業員等が開口部を通過していない状態を示した断面図である。
図3】本開示の実施形態に係るクリーンルームシステムにおいて、作業員等が開口部を通過している状態を示した側断面図である。
図4】本開示の実施形態に係るクリーンルームシステムにおいて、作業員等が開口部を通過している状態を示した側断面図である。
図5】本開示の実施形態に係るクリーンルームシステムにおいて、作業員等が開口部を通過していない状態を示した平断面図である。
図6】本開示の実施形態に係るクリーンルームシステムにおいて、作業員等が開口部を通過している状態を示した平断面図である。
図7】本開示の実施形態に係るクリーンルームシステムに備えられた制御部の制御系を示したブロック図である。
図8】(A)(B)本開示の実施形態に対する比較形態に係るクリーンルームシステムを示した概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示の実施形態に係るクリーンルームシステムの一例について図1図8を用いて説明する。
【0018】
各図に示す矢印Hは、クリーンルームシステムが設けられた構造物の上下方向であって、矢印Dは、構造物の奥行き方向であって、矢印Wは、構造物の幅方向である。なお、上下方向は、鉛直方向であって、奥行き方向及び幅方向は、水平方向である。
【0019】
クリーンルームシステム100を備えた構造物10には、図1(A)(B)に示されるように、クリーンルームシステム100を構成すると共に幅方向に並んだ複数の処理室12が設けられている。さらに、構造物10には、クリーンルームシステム100を構成すると共に幅方向に延びる通路部14と、作業員が着替えを行う更衣室16と、器材が通過する準備室18とが設けられている。
【0020】
(更衣室16、準備室18)
更衣室16及び準備室18は、図1(A)(B)に示されるように、幅方向に並んで配置され、夫々1室設けられている。つまり、複数の処理室12に対して更衣室16及び準備室18は、夫々1室設けられている。
【0021】
更衣室16及び準備室18は、幅方向に延びる通路部14に臨んでいる。そして、更衣室16には、更衣室16に入室するための扉16aと、更衣室16から通路部14へ移動するための扉16bとが設けられている。
【0022】
同様に、準備室18には、準備室18に入室するための扉18aと、準備室18から通路部14へ移動するための扉18bとが設けられている。
【0023】
さらに、更衣室16の天井には、清浄空気を更衣室16へ供給する供給部16cが設けられ、更衣室16の側壁には、供給部16cによって更衣室16に供給された清浄空気を外部へ排気する排気部16dが設けられている。同様に、準備室18には、清浄空気を準備室18へ供給する供給部18cと、供給部18cによって準備室18に供給された清浄空気を外部へ排気する排気部18dとが設けられている。
【0024】
この構成において、更衣室16の清浄度、及び準備室18の清浄度は、一例としてグレードCとされている。
【0025】
(通路部14、処理室12)
通路部14は、図1(A)(B)に示されるように、幅方向に延びており、幅方向に並んだ複数の処理室12は、通路部14を挟んで更衣室16及び準備室18の反対側に配置されている。
【0026】
本実施形態では、処理室12は、3室設けられている。以下説明の便宜上、処理室12については、幅方向の一方側(図中左側)から他方側(図中右側)へ、処理室12a、処理室12b、及び処理室12cと称することがある。なお、夫々の処理室12を区別しない場合は、末尾のアルファベットを省略する。
【0027】
また、以下の説明では、処理室12に対応して夫々設けられる部材の符号の末尾にaが付されている部材については、処理室12aに対応した部材であって、末尾にbが付されている部材については、処理室12bに対応した部材であって、末尾にcが付されている部材については、処理室12cに対応した部材である。
【0028】
処理室12の側壁には、通路部14からの入退室を可能とする開口部22が設けられている。換言すれば、通路部14は、複数の処理室12に対して入退室を可能とする開口部22を介して接続されている。そして、開口部22には、扉は設けられておらず、開口部22は、上下方向に延びる矩形状とされており、作業員及び器材が通過可能とされている。
【0029】
さらに、処理室12において開口部22と奥行き方向で対向する側壁には、処理室12から退室するための扉26が一対設けられている。一方の扉26が作業員の退室に用いれ、他方の扉26が器材を退室させるのに用いられる。そして、この処理室12は、ハザード物質等の封じ込め対象物質(以下単に「対象物質」と記載することがある)が発生する部屋、又は対象物質を扱う部屋である。
【0030】
〔供給部24、案内部28、排気部36〕
通路部14の天井には、図1(A)、図2に示されるように、清浄空気を通路部14に供給する供給部24が複数設けられている。具体的には、夫々の供給部24は、上方から見て夫々の開口部22と奥行方向で並ぶように配置されている。また、供給部24から供給された空気を開口部22へ案内する一対の案内部28が、図5に示されるように、幅方向で対向して配置されている。具体的には、一対の案内部28は、通路部14に配置されており、一対の案内部28には、供給部24から供給された清浄空気を開口部22へ案内する案内面30が夫々形成されている。この案内面30は、幅方向から見て、上下方向に延びる矩形状とされ、案内面30の縁部は、開口部22の縁部に接している。
【0031】
また、処理室12の側壁には、図1(A)(B)、図2に示されるように、供給部24によって通路部14へ供給され、案内部28によって案内されて処理室12へ流入した清浄空気を外部へ排気する排気部36が設けられている。具体的には、排気部36は、処理室12において開口部22と奥行き方向で対向する側壁の下方部分に配置されている。
【0032】
この構成において、図2図5に示されるように、供給部24によって通路部14へ供給された清浄空気は、案内部28によって案内されて処理室12へ流入する。さらに、処理室12へ流入した清浄空気は、排気部36から排気される。このように、通路部14から処理室12へ向かう一方向の空気の流れが形成される。
【0033】
これにより、通路部14の清浄度、及び処理室12の清浄度は、一例としてグレードBとされる。換言すれば、通路部14及び処理室12は、クリーンルームとされる。
【0034】
〔エアバリア部40〕
夫々の開口部22には、図6に示されるように、処理室12と通路部14とを仕切るエアカーテンを形成するエアバリア部40が設けられている。このエアバリア部40は、清浄空気を押し出す押出部42と、押出部42によって押し出された空気を引き込む引込部44とを備えている。本実施形態では、エアバリア部40には、所謂プッシュプル装置が用いられている。
【0035】
そして、押出部42は、一方の案内部28に設けられ、引込部44は、他方の案内部28に設けられている。
【0036】
この構成において、エアバリア部40を稼動させることで、図6に示されるように、押出部42が引込部44へ向かって清浄空気を押し出し、引込部44が押出部42によって押し出された清浄空気を引き込む。これにより、処理室12と通路部14とを仕切るエアカーテンが、開口部22の上下方向に亘って形成される。
【0037】
ここで、本実施形態では、通路部14から処理室12へ向かう一方向の空気の流れによって、開口部22に形成するエアカーテン気流が阻害されないように、各部によって生じる風力が決められている。
【0038】
〔検知部50、52〕
また、処理室12の天井、及び通路部14の天井には、図3図4に示されるように、開口部22を通過する作業員又は器材(以下「作業員等」)を非接触で検知する一対の検知部50、52が設けられている。具体的には、処理室12の天井には、検知部50が設けられ、通路部14の天井には、検知部52が設けられている。なお、作業員等は、通過物の一例である。
【0039】
この構成において、検知部52が、開口部22を通過しようとしている作業員等を検知し、検知部50が、開口部22を通過した作業員等を検知する(図3参照)。又は、検知部50が、開口部22を通過しようとしている作業員等を検知し、検知部52が、開口部22を通過した作業員等を検知する(図4参照)。
【0040】
〔制御部60〕
制御部60は、図7に示されるように、検知部50、52から検知情報を取得するようになっている。また、制御部60は、供給部24、排気部36、及びエアバリア部40を制御するようになっている。なお、制御部60による各部の制御については、後述する作用と共に説明する。
【0041】
(作用)
次に、本実施形態に係るクリーンルームシステム100の作用について、比較形態に係るクリーンルームシステム300と比較しつつ説明する。先ず、比較形態に係るクリーンルームシステム300の構成についてクリーンルームシステム100と異なる部分を主に説明する。
【0042】
〔比較形態に係るクリーンルームシステム300の構成〕
比較形態に係るクリーンルームシステム300を備えた構造物310には、図8(A)(B)に示されるように、クリーンルームシステム300を構成すると共に幅方向に並んだ複数の処理室312が設けられている。処理室312は、3個設けられている。以下説明の便宜上、処理室312については、幅方向の一方側(図中左側)から他方側(図中右側)へ、処理室312a、処理室312b、及び処理室312cと称することがある。なお、夫々の処理室312を区別しない場合は、末尾のアルファベットを省略する。
【0043】
さらに、構造物310には、処理室312毎に、更衣室316及び準備室318が夫々設けられている。
【0044】
また、更衣室316には、更衣室316に入室するための扉314と、更衣室316から処理室312へ移動するための扉315が設けられている。また、準備室318には、準備室318に入室するための扉317と、準備室318から処理室312へ移動するための扉319が設けられている。
【0045】
さらに、処理室312には、処理室312から退室するための一対の扉326が設けられている。一方の扉326が作業員の退室に用いれ、他方の扉326が器材を退室させるのに用いられる。
【0046】
また、更衣室316の天井には、清浄空気を更衣室316へ供給する供給部330が設けられ、更衣室316の側壁には、供給部330によって更衣室316に供給された清浄空気を外部へ排気する排気部332が設けられている。同様に、準備室318には、清浄空気を準備室318へ供給する供給部336と、供給部336によって準備室318に供給された清浄空気を外部へ排気する排気部338とが設けられている。
【0047】
この構成において、更衣室316の清浄度、及び準備室318の清浄度は、一例としてグレードCとされている。
【0048】
さらに、夫々の処理室312の天井には、清浄空気を処理室312へ供給する一対の供給部340が設けられ、処理室312の側壁には、供給部340によって処理室312に供給された清浄空気を外部へ排気する排気部342が設けられている。
【0049】
この構成において、処理室312の清浄度は、一例としてグレードBとされている。
【0050】
〔比較形態に係るクリーンルームシステム300の作用〕
比較形態に係るクリーンルームシステム300においては、処理室312aへ入室しようとする作業員は、図8(B)の実線矢印で示されるように、扉314aを開閉して更衣室316aへ入室する。さらに、作業員は、扉315aを開閉して処理室312aへ入室する。
【0051】
処理室312aへ入室した作業員が処理室312bへ移動する場合には、処理室312aの作業員は、扉326aを開閉して処理室312の外部へ移動する。また、作業員は、扉314bを開閉して更衣室316bへ入室する。さらに、作業員は、扉315bを開閉して処理室312bへ入室する。
【0052】
このように、クリーンルームシステム300においては、処理室312aから処理室312bへ移動するために、作業員は、扉326aを開閉し、扉314bを開閉し、扉315bを開閉する。つまり、作業員は、扉を3回開閉する。
【0053】
〔クリーンルームシステム100の作用〕
【0054】
これに対して、本実施形態に係るクリーンルームシステム100においては、図2図5に示されるように、制御部60(図7参照)の制御によって、夫々の供給部24及び排気部36が稼動しており、通路部14から処理室12へ向かう一方向の空気の流れが形成されている。具体的には、開口部22を介して通路部14と処理室12と間で作業員等の入退室がない場合は、供給部24によって通路部14へ供給された清浄空気は、案内部28によって案内されて処理室12へ流入する。さらに、処理室12へ流入した清浄空気は、排気部36から排気される。このように、通路部14から処理室12へ向かう一方向の空気の流れが形成されている。
【0055】
ここで、処理室12aへ入室しようとする作業員は、図1(B)の実線矢印で示されるように、扉16aを開閉して更衣室16へ入室する。さらに、作業員は、扉16bを開閉して通路部14へ移動する。そして、通路部14に移動した作業員が、処理室12aへ入室しようとすると、図3に示す検知部52aが、開口部22aを通過しようとしている作業員等を検知する。
【0056】
検知部52aが作業員等を検知すると、制御部60は、エアバリア部40aを稼動させる。そうすると、図6に示されるように、押出部42aが引込部44aへ向かって清浄空気を押し出し、引込部44aが押出部42aによって押し出された清浄空気を引き込む。これにより、処理室12aと通路部14とを仕切るエアカーテンが、開口部22aの上下方向に亘って形成される。
【0057】
そして、作業員等は、エアカーテンを通過して処理室12aへ入室すると、図3に示す検知部50aが、開口部22aを通過した作業員等を検知する。検知部50aが作業員等を検知すると、制御部60は、エアバリア部40aを非稼働とする。エアバリア部40aを非稼働とすることで、通路部14から処理室12aへの一方向の空気の流れが形成される。
【0058】
さらに、処理室12aへ入室した作業員が処理室12bへ移動する場合には、図4に示す検知部50aが、開口部22aを通過しようとしている作業員等を検知する。
【0059】
検知部50aが作業員等を検知すると、制御部60は、エアバリア部40aを稼動させる。そうすると、図6に示されるように、押出部42aが引込部44bへ向かって空気を押し出し、引込部44aが押出部42aによって押し出された清浄空気を引き込む。これにより、処理室12aと通路部14とを仕切るエアカーテンが、開口部22aの上下方向に亘って形成される。
【0060】
そして、作業員等は、エアカーテンを通過して通路部14へ移動する。さらに、図4に示す検知部52aが、開口部22aを通過した作業員等を検知する。検知部52aが作業員等を検知すると、制御部60は、エアバリア部40aを非稼働とする。エアバリア部40aを非稼働とすることで、通路部14から処理室12aへの一方向の空気の流れが形成される。
【0061】
通路部14に移動した作業員が、処理室12bへ入室しようとすると、図3に示す検知部52bが、開口部22bを通過しようとしている作業員等を検知する。
【0062】
検知部52bが作業員等を検知すると、制御部60は、エアバリア部40bを稼動させる。そうすると、図6に示されるように、押出部42bが引込部44bへ向かって清浄空気を押し出し、引込部44bが押出部42bによって押し出された空気を引き込む。これにより、処理室12bと通路部14とを仕切るエアカーテンが、開口部22bの上下方向に亘って形成される。
【0063】
そして、作業員等は、エアカーテンを通過して処理室12bへ入室する。さらに、図3に示す検知部50bが、開口部22bを通過した作業員等を検知する。検知部50bが作業員等を検知すると、制御部60は、エアバリア部40bを非稼働とする。エアバリア部40bを非稼働とすることで、通路部14から処理室12bへの一方向の空気の流れが形成される。
【0064】
このように、クリーンルームシステム100においては、処理室12aから処理室12bへ移動するために、作業員は、扉を開閉することがない。
【0065】
(まとめ)
以上説明したように、クリーンルームシステム100においては、作業員等が開口部22を通過しない通常時にはエアバリア部40aが非稼働とされ、通路部14から処理室12へ向かう一方向の空気の流れが形成されている。このため、処理室12において扱われている対象物質が、処理室12から通路部14へ漏れるのを抑制することができる。換言すれば、対象物質を処理室12に封じ込めることができる。
【0066】
また、クリーンルームシステム100においては、作業員等が、開口部22を通過するときには、エアバリア部40が稼動し、処理室12と通路部14とを仕切るエアカーテンが開口部22の上下方向に亘って形成される。これにより、作業員等の開口部22の通過による外乱によって、対象物質が、処理室12から通路部14へ漏れるのを抑制することができる。
【0067】
なお、エアカーテンを形成させるのを作業員等が開口部22を通過するときに限定するのは、エアカーテンによって、周囲の空気が誘引され、処理室12の空気の流れを乱すためである。さらに、エアカーテンによって、処理室12の換気効率が低下するのを抑制するためである。
【0068】
このように、クリーンルームシステム100においては、開口部22を作業員等が通過しない通常時には、通路部14から処理室12へ向かう一方向の空気の流れが形成されている。さらに、作業員等が、開口部22を通過するときには、エアバリア部40が稼動し、処理室12と通路部14とを仕切るエアカーテンが開口部22の上下方向に亘って形成される。
【0069】
以上により、クリーンルームシステム100においては、処理室12aから処理室12bへ移動するために、作業員は、扉を開閉することがない。つまり、クリーンルームシステム100においては、対象物質を処理室12に封じ込めた上で、扉を開閉することなく、一の処理室12から他の処理室12へ移動することができる。
【0070】
また、クリーンルームシステム100においては、供給部24は、夫々の開口部22に対応するように複数設けられている。このため、供給部が1個の場合と比して、通路部14から処理室12へ向かう一方向の空気の流れを効果的に形成することができる。
【0071】
また、クリーンルームシステム100においては、供給部24から供給された空気(清浄空気)を開口部22へ案内する案内部28が通路部14に配置されている。そして、供給部24によって通路部14へ供給された清浄空気は、案内部28によって案内されて処理室12へ流入する。これにより、開口部22へ向かう清浄空気の流れが整えられて速くなるため、対象物質が、処理室12から通路部14へ漏れるのを抑制することができる。
【0072】
なお、本開示を特定の実施形態について詳細に説明したが、本開示は係る実施形態に限定されるものではなく、本開示の範囲内にて他の種々の実施形態をとることが可能であることは当業者にとって明らかである。上記実施形態では、検知部50、52は、作業員等を非接触で検知したが、例えば、開口部22を通過しようとする作業員が、検知部を操作することで、検知部が作業員等を検知してもよい。つまり、作業員が検知部である検知スイッチを操作することで、開口部22を通過しようとする作業員等が検知されてもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、特に説明しなかったが、図1(B)、図5(B)に示す実線矢印は、作業員の移動を示し、二点鎖線の矢印は、器材の移動を示す。
【符号の説明】
【0074】
12 処理室
14 通路部
22 開口部
24 供給部
28 案内部
36 排気部
40 エアバリア部
42 押出部
44 引込部
50 検知部
52 検知部
60 制御部
100 クリーンルームシステム
図1
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図7
図8