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特開2024-176931熱交換器およびそれを備える空気調和機に関する。
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176931
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】熱交換器およびそれを備える空気調和機に関する。
(51)【国際特許分類】
   F28F 3/08 20060101AFI20241212BHJP
   F28D 1/03 20060101ALI20241212BHJP
   F28D 9/00 20060101ALI20241212BHJP
   F28F 3/04 20060101ALI20241212BHJP
   F24F 1/0067 20190101ALI20241212BHJP
   B60H 1/32 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
F28F3/08 311
F28D1/03
F28D9/00
F28F3/04 A
F24F1/0067
B60H1/32 613C
B60H1/32 613E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095823
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183265
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 剣一
(72)【発明者】
【氏名】奥村 拓也
【テーマコード(参考)】
3L051
3L103
3L211
【Fターム(参考)】
3L051BE06
3L103AA50
3L103BB38
3L103BB42
3L103CC18
3L103CC22
3L103DD13
3L103DD58
3L211BA60
3L211DA22
3L211DA24
(57)【要約】
【課題】プレート積層型の熱交換器において、熱交換器から水滴が飛び出ることを抑制する。
【解決手段】熱交換器18は、互いに接触し、第1の流体が流れる第1の流路P1を備える複数のフィン46を形成する複数の第1および第2のプレート50、52を有する。複数のフィン46は、第2の流体Aが流れる第2の流路P2を間に形成するように間隔をあけて積層されている。複数のフィン46それぞれにおいて、第1および第2のプレート50、52それぞれにおける第2の流体Aの流れ方向の上流側の端面50j、52jが、互いに対して第2の流体Aの流れ方向にずれている。
【選択図】図12A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接触し、第1の流体が流れる第1の流路を備える複数のフィンを形成する複数の第1および第2のプレートを有し、
前記複数のフィンが、第2の流体が流れる第2の流路を間に形成するように間隔をあけて積層され、
前記複数のフィンそれぞれにおいて、前記第1および第2のプレートそれぞれにおける前記第2の流体の流れ方向の上流側の端面が、互いに対して前記第2の流体の流れ方向にずれている、熱交換器。
【請求項2】
前記第1のプレートが、第1の貫通穴を備え、
前記第2のプレートが、前記第1の貫通穴に接続する第2の貫通穴を備え、
前記複数のフィンそれぞれにおいて、前記第1および第2の貫通穴それぞれにおける前記第2の流体の流れ方向の下流側の内周面の部分が、互いに対して第2の流体の流れ方向にずれている、請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記第1の流路が、前記複数のフィンの積層方向視でミアンダ状であって、
前記第1および第2の貫通穴が、間隔をあけて対向する第1の流路の2つの部分の間に形成されている、請求項2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記第1のプレートと前記第2のプレートが、前記複数のフィンの積層方向視で、同一の輪郭形状を備える、請求項1に記載の熱交換器。
【請求項5】
冷媒を送出する圧縮機と、
冷媒が流れる熱交換器と、
前記熱交換器を通過する空気の流れを発生させるファンと、を備え、
前記熱交換器が、互いに接触し、冷媒が流れる第1の流路を備える複数のフィンを形成する複数の第1および第2のプレートを有し、
前記複数のフィンが、空気が流れる第2の流路を間に形成するように間隔をあけて積層され、
前記複数のフィンそれぞれにおいて、前記第1および第2のプレートそれぞれにおける空気の流れ方向の上流側の端面が、互いに対して空気の流れ方向にずれている、空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱交換器と、その熱交換器を備える空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、特許文献1に記載するように、第1および第2のプレートを接合することによってそれぞれ形成されている複数のフィンを備えるプレート積層型の熱交換器が知られている。複数のフィンそれぞれにおいて、第1および第2のプレートの間には、冷媒が流れる流路が形成されている。複数のフィンの間を流れる空気と、フィンそれぞれの内部を流れる冷媒との間で、熱交換が行われる。
【0003】
このようなプレート積層型の熱交換器における複数のフィンの積層体(フィン積層体)は、第1および第2のプレートを交互に重ねた後、積層方向に押圧しつつ加熱することによって作製される。そのために、第1および第2のプレートそれぞれは、例えば、両面にロウ材層が設けられた金属薄板(ブレージングプレート)をプレス成型することによって作製されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-63637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、プレート積層型の熱交換器の場合、フィンは、2枚のプレートによって構成されているので、1枚のプレートによって構成されるフィンチューブ型熱交換器のフィンに比べて厚さが大きい。そのため、フィンの間を流れる空気の流れ方向の上流側のフィンのエッジに大きな水滴が発生し、その水滴が熱交換器の外部に飛び出すことがある。
【0006】
具体的には、熱交換器によって空気を冷却するとき、湿った空気がフィンの上流側の分厚いエッジにあたって結露し、それにより、そのエッジ上に大きな水滴が発生する。これにより、空気が流れるフィン間の隙間(流路)の通風抵抗が増加し、空気の流速が増加する。この流速が増加した空気が、エッジ上の大きな水滴を熱交換器の外部に吹き飛ばす。熱交換器と熱交換された空気が室内に供給される場合、大きな水滴が室内に吹き出される。
【0007】
そこで、本開示は、プレート積層型の熱交換器において、熱交換器から水滴が飛び出ることを抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために、本開示の一態様によれば、
互いに接触し、第1の流体が流れる第1の流路を備える複数のフィンを形成する複数の第1および第2のプレートを有し、
前記複数のフィンが、第2の流体が流れる第2の流路を間に形成するように間隔をあけて積層され、
前記複数のフィンそれぞれにおいて、前記第1および第2のプレートそれぞれにおける前記第2の流体の流れ方向の上流側の端面が、互いに対して前記第2の流体の流れ方向にずれている、熱交換器が提供される。
【0009】
また、本開示の別態様によれば、
冷媒を送出する圧縮機と、
冷媒が流れる熱交換器と、
前記熱交換器を通過する空気の流れを発生させるファンと、を備え、
前記熱交換器が、互いに接触し、冷媒が流れる第1の流路を備える複数のフィンを形成する複数の第1および第2のプレートを有し、
前記複数のフィンが、空気が流れる第2の流路を間に形成するように間隔をあけて積層され、
前記複数のフィンそれぞれにおいて、前記第1および第2のプレートそれぞれにおける空気の流れ方向の上流側の端面が、互いに対して空気の流れ方向にずれている、空気調和機が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、プレート積層型の熱交換器において、熱交換器から水滴が飛び出ることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の一実施の形態に係る空気調和機の概略図
図2】空気調和機における室内機の概略的断面図
図3】本開示の一実施の形態に係る熱交換器の斜視図
図4】熱交換器におけるフィン積層体の一部の斜視図
図5】フィン積層体の一部の正面図
図6】フィン積層体の一部の断面図
図7】フィンの上方斜視図
図8】フィンの下方斜視図
図9】フィンの上方分解斜視図
図10A】フィンの短手方向に変形した比較例の熱交換器の斜視図
図10B】フィンの長手方向に変形した比較例の熱交器の斜視図
図11】一例の姿勢で配置された状態の熱交換器におけるフィンの上面図
図12A】実施の形態に係る熱交換器において、水滴が発生した状態のフィン積層体の断面図
図12B】比較例に係る熱交換器において、水滴が発生した状態のフィン積層体の断面図
図13】本開示の異なる実施の形態に係る熱交換器において、水滴が発生した状態のフィン積層体の断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の一態様の熱交換器は、互いに接触し、第1の流体が流れる第1の流路を備える複数のフィンを形成する複数の第1および第2のプレートを有し、前記複数のフィンが、第2の流体が流れる第2の流路を間に形成するように間隔をあけて積層され、前記複数のフィンそれぞれにおいて、前記第1および第2のプレートそれぞれにおける前記第2の流体の流れ方向の上流側の端面が、互いに対して前記第2の流体の流れ方向にずれている。
【0013】
このような一態様によれば、プレート積層型の熱交換器において、熱交換器から水滴が飛び出ることを抑制することができる。
【0014】
例えば、前記第1のプレートが、第1の貫通穴を備え、前記第2のプレートが、前記第1の貫通穴に接続する第2の貫通穴を備えてもよい。この場合、前記複数のフィンそれぞれにおいて、前記第1および第2の貫通穴それぞれにおける前記第2の流体の流れ方向の下流側の内周面の部分が、互いに対して第2の流体の流れ方向にずれている。
【0015】
例えば、前記第1の流路が、前記複数のフィンの積層方向視でミアンダ状であってもよい。この場合、前記第1および第2の貫通穴が、間隔をあけて対向する第1の流路の2つの部分の間に形成されている。
【0016】
例えば、前記第1のプレートと前記第2のプレートが、前記複数のフィンの積層方向視で、同一の輪郭形状を備えてもよい。
【0017】
本開示の別態様の空気調和機は、冷媒を送出する圧縮機と、冷媒が流れる熱交換器と、 前記熱交換器を通過する空気の流れを発生させるファンと、を備え、前記熱交換器が、互いに接触し、冷媒が流れる第1の流路を備える複数のフィンを形成する複数の第1および第2のプレートを有し、前記複数のフィンが、空気が流れる第2の流路を間に形成するように間隔をあけて積層され、前記複数のフィンそれぞれにおいて、前記第1および第2のプレートそれぞれにおける空気の流れ方向の上流側の端面が、互いに対して空気の流れ方向にずれている。
【0018】
このような別態様によれば、熱交換器から水滴が飛び出ることを抑制することができる。
【0019】
以下、本開示の一実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、本開示の一実施の形態に係る空気調和機の概略図である。また、図2は、空気調和機における室内機の概略的断面図である。
【0021】
図1に示すように、本実施の形態に係る空気調和機10は、室内に配置される室内機12と、室外に配置される室外機14とを有する。
【0022】
図1および図2に示すように、室内機12は、室内に設置される筺体16と、筺体16内に配置されて室内の空気と熱交換する熱交換器18と、熱交換器18を室内空気が通過するように室内空気の流れを発生させるクロスフローファン20とが搭載されている。筺体16には、上方に開いた吸気口16aと、前方に開いた吸気口16bと、斜め下方向に向いた吹き出し口16cが形成されている。クロスフローファン20が回転すると、室内空気が、吸気口16a、16bを介して筺体16内に流入し、熱交換器18を通過する。熱交換器18を通過した空気は、吹き出し口16cを介して筺体16から室外に吹き出される。なお、熱交換器18の下方には、熱交換器18の表面で結露した空気中の水分を貯えるドレンパン22が設けられている。
【0023】
図1に示すように、室外機14には、室外空気と熱交換する熱交換器24と、熱交換器24を室外空気が通過するように室外空気の流れを発生させる軸流ファン26と、熱交換器18、24内を通過する冷媒(第1の流体)を送出する圧縮機28とが搭載されている。熱交換器18、熱交換器24、および圧縮機28は、冷媒配管30を介して接続されている。その冷媒配管30上には、冷媒を減圧する膨張弁32と、冷媒の流れ方向を変更する四方弁34とが配置されている。
【0024】
冷房運転時、冷媒は、圧縮機28から送出され、四方弁34、室外機14の熱交換器24、膨張弁32、室内機12の熱交換器18を順に経て、圧縮機28に戻る。暖房運転時、冷媒は、圧縮機28から送出され、四方弁34、室内機12の熱交換器18、膨張弁32、室外機14の熱交換器24を順に経て、圧縮機28に戻る。冷房運転時の冷媒の流れと暖房運転時の冷媒の流れは、四方弁34によって切り替えられる。なお、冷房運転時、熱交換器18の表面での室内空気の結露によって発生した水滴は、熱交換器18の表面に沿って流れ、ドレンパン22に落ちる。
【0025】
図3は、本開示の一実施の形態に係る熱交換器の斜視図である。また、図4は、熱交換器におけるフィン積層体の一部の斜視図である。さらに、図5は、フィン積層体の一部の正面図である。そして、図6は、フィン積層体の一部の断面図である。
【0026】
なお、図面に示すX-Y-Z直交座標系は、実施の形態の理解を容易にするためのものであって、実施の形態を限定するものではない。X軸方向は熱交換器におけるフィン構造体を構成するフィンの短手方向を示し、Y軸方向はフィンの長手方向を示し、Z軸方向はフィンの積層方向を示している。また、図中において、白抜き矢印は、熱交換器18に流入する空気A(第2の流体)の流れ方向を示している。本実施の形態の場合、熱交換器18を通過する空気Aは、X軸方向に流れる。
【0027】
図3および図4に示すように、熱交換器18は、フィン積層体40を含んでいる。フィン積層体40は、2つのエンドプレート42、44の間に配置されている。一方のエンドプレート42には、冷媒配管30に接続されて冷媒が流入する流入側接続管42aと、冷媒配管30に接続されて冷媒が流出する流出側接続管42bが設けられている。
【0028】
図4図6に示すように、フィン積層体40は、複数のフィン46を積層することによって形成されている。多数のフィン46が積層されることにより、熱交換器18は、図3に示すように、フィン46の積層方向(Z軸方向)に長い平板状になる。なお、本実施の形態の場合、複数のフィン46は、室内機12の左右方向に積層されている。
【0029】
図6に示すように、複数のフィン46それぞれの内部には、冷媒が流れる第1の流路P1が設けられている。
【0030】
図7は、フィンの上方斜視図である。また、図8は、フィンの下方斜視図である。さらに、図9は、フィンの上方分解斜視図である。
【0031】
図9に示すように、複数のフィン46それぞれは、第1のプレート50と第2のプレート52を、フィン積層体40の積層方向(Z軸方向)に、互いに接合することによって形成されている。図6に示すように、第1のプレート50と第2のプレート52の間に、第1の流路P1が形成されている。
【0032】
本実施の形態の場合、第1のプレート50と第2のプレート52は、両面にロウ材層が設けられた金属薄板、いわゆるブレージングプレートを加工、例えばプレス加工することによって作製されている。ブレージングプレートは、例えば、アルミニウム合金から作製された薄板の両面に、ロウ材としてのアルミシリコン合金層を形成することによって作製されている。第1のプレート50と第2のプレート52は、ロウ材層が加熱によって一度溶けて再び固化することによって接合される。
【0033】
第1のプレート50と第2のプレート52は、互いに接合することにより、その間に冷媒が流れる第1の流路P1を形成する。本実施の形態の場合、第2のプレート52における第1のプレート50に対向する内側表面52aには、ミアンダ状の凹部52bが形成されている。一方、第1のプレート50における第2のプレート52に対向する内側表面50aには、ミアンダ状の凹部52bに蓋をする凸部50bが形成されている。この凹部52bと凸部50bが、複数のフィン46の積層方向(Z軸方向)視でミアンダ状であって、冷媒が流れる第1の流路P1を画定する。その結果、内部に第1の流路P1を備えるフィン46が形成される。また、本実施の形態の場合、第1の流路P1は、積層方向視で、フィン46の長手方向(Y軸方向)の中央部分に形成されている。
【0034】
また、第1の流路P1は、図7および図8に示すように、フィン46の長手方向(Y軸方向)の両端に設けられた管状の第1および第2のヘッダ46a、46bの内部に連通している。すなわち、第1および第2のヘッダ46a、46bの間に、第1の流路P1が配置されている。また、これらの第1および第2のヘッダ46a、46bそれぞれは、第1のプレート50の筒状部50c、50dと第2のプレート52の筒状部52c、52dとが接合することによって形成されている。
【0035】
複数のフィン46それぞれの第1のヘッダ46aが連結して接合することにより、図4に示すように、第1のマニホールド40aが構成されている。第1のマニホールド40aは、エンドプレート42の流入側接続管42aと接続し、流入側接続管42aを通過した冷媒をフィン46それぞれの第1の流路P1に案内する。
【0036】
また、複数のフィン46それぞれの第2のヘッダ46bが連結して接合することにより、図4に示すように、第2のマニホールド40bが構成されている。第2のマニホールド40bは、エンドプレート42の流出側接続管42bと接続し、フィン46それぞれの第1の流路P1から流出した冷媒を、流出側接続管42bに案内する。
【0037】
なお、本実施の形態の場合、図6図9に示すように、第1および第2のプレート50、52それぞれに、フィン46の長手方向(Y軸方向)に延在する第1および第2の貫通穴50e、52eが形成されている。第1および第2の貫通穴50e、52eは互いに接続し、複数のフィン46の積層方向(Z軸方向)に貫通する貫通穴状の断熱部46cをフィン46に形成する。図7および図8に示すように、断熱部46cは、間隔をあけてフィン46の短手方向(X軸方向)に対向する、すなわち空気Aの流れ方向に対向する第1の流路P1の2つの部分の間に形成されている。この断熱部46cにより、第1の流路P1の一部分を流れる冷媒から第1の流路P1の他の部分を流れる冷媒への第1および第2のプレート50、52を介する熱の移動(熱のショートカット)が抑制されている。
【0038】
また、図7および図9に示すように、第1のプレート50の外側表面50fには、複数の切り起こし部50gが設けられている。
【0039】
具体的には、切り起こし部50gは、図7に示すように、空気Aの流れ方向(X軸方向)視で、角括弧形状であって、第1のプレート50をプレス成型することきに形成されている。具体的には、まず2本の平行なスリットが形成され、そのスリット間の部分が押されて延伸することにより、第1の切り起こし部50gが外側表面50fに形成されている。
【0040】
フィン46それぞれの切り起こし部50gは、隣接する他のフィン46との間に空間を確保しつつ、その隣接する他のフィン46を支持するスペーサとして機能する。隣接する他のフィン46における第2のプレート52の外側表面52fが、切り起こし部50gの頂部に接合する。これにより、図5および図6に示すように、複数のフィン46が間隔をあけて積層され、2つのフィン46の間に空気Aが流れる第2の流路P2が形成されている。
【0041】
図7および図8に示すように、第1および第2のプレート50、52それぞれの外側表面50f、52fには、複数の第1および第2のリブ部50h、52hが設けられている。図5に示すように、複数の第1のリブ部50hは、一方に隣接する他のフィン46における第2のプレート52に向かって突出している。また、複数の第2のリブ部52hは、他方に隣接する他のフィン46における第2のプレート52に向かって突出している。隣接する2つのフィン46の一方における第1のリブ部50hと他方のフィン46における第2のリブ部52hが、それらの頂面を介して互いに接合する。
【0042】
また、図7および図8に示すように、理由は後述するが、第1のリブ部50hは、第1および第2のヘッダ46a、46b(筒状部50c、50d)の周囲に、すなわち囲むように、フィン46(第1のプレート50)に設けられている。同様に、第2のリブ部52hは、第1および第2のヘッダ46a、46b(筒状部52c、52d)の周囲に、すなわち囲むように、フィン46(第2のプレート52)に設けられている。その結果、本実施の形態の場合、複数の第1および第2のリブ部50h、52hは、第1および第2のヘッダ46a、46bとともに、フィン46の長手方向(Y軸方向)の両端それぞれに設けられている。
【0043】
このような第1および第2のリブ部50h、52hが互いに接合することにより、フィン積層体40の剛性が向上する。特に、複数のフィン46の積層方向(Z軸方向)に対して直交する方向への変形に対する剛性が向上する。その理由を説明するために、フィンが第1および第2のリブ部を備えていない比較例の熱交換器について説明する。なお、第1および第2のリブ部を備えていない点を除いて、比較例の熱交換器は、本実施の形態の熱交換器18と実質的に同一である。
【0044】
図10Aは、フィンの短手方向に変形した比較例の熱交換器の斜視図である。また、図10Bは、フィンの長手方向に変形した比較例の熱交器の斜視図である。
【0045】
図10Aは、フィンが第1および第2のリブ部を備えていない比較例の熱交換器118におけるフィン積層体140の積層方向(Z軸方向)の中央部分に対して、フィンの短手方向(X軸方向)に外力F1が加わった状態を示している。この外力F1により、比較例のフィン積層体140は、フィンの短手方向にたわみ変形している。
【0046】
また、図10Bは、フィンが第1および第2のリブ部を備えていない比較例の熱交換器118におけるフィン積層体140の積層方向(Z軸方向)の中央部分に対して、フィンの長手方向(Y軸方向)に外力F2が加わった状態を示している。この外力F2により、比較例のフィン積層体140は、フィンの長手方向にたわみ変形している。
【0047】
当然ながら、このような外力F1、F2が大きくなると、フィン積層体140は塑性変形し、元の形状に戻ることができなくなる可能性がある。
【0048】
比較例のフィン積層体140の場合、複数のフィンそれぞれは、第1および第2のヘッダと切り起こし部とを介して、隣接する他のフィンに接合されている。そのため、外力F1、F2がフィン積層体140に加わると、フィンそれぞれは、隣接する他のフィンに対して大きく変位しやすい。
【0049】
これに対して、本実施の形態のフィン積層体40の場合、複数のフィン46それぞれは、第1および第2のヘッダ46a、46bと切り起こし部50gとに加えて、第1および第2のリブ部50h、52hを介して、隣接する他のフィン46に接合されている。第1および第2のリブ部50h、52hの接合により、フィン積層体40は、比較例のフィン積層体140に比べて、剛性が向上している。そのため、同一の外力F1、F2が加わった場合のたわみ量について、フィン積層体40は、比較例のフィン積層体140に比べて小さい。すなわち、実施の形態のフィン積層体40においては、外力F1、F2が加わった場合のフィン46の隣接する他のフィン46に対する変位量が、比較例のフィン積層体140に比べて小さい。
【0050】
特に、本実施の形態の場合、図7および図8に示すように、フィン46の長手方向(Y軸方向)の両端に設けられた第1および第2のヘッダ46a、46bの周囲に、第1および第2のリブ部50h、52hが設けられている。その結果、フィン46は、実質的にその両端で、隣接する他のフィン46に対して接合する。その結果、図10Bに示すようなフィン46の長手方向(Y軸方向)に作用する外力F2に対して、フィン積層体40は高い剛性を備える。また、このような第1および第2のリブ部50h、52hのフィン46の長手方向の両端への配置により、長手方向の中央に配置された第1の流路P1に沿ってフィン46の短手方向(X軸方向)に流れる空気Aを第1および第2のリブ部50h、52hが妨害することが抑制されている。
【0051】
また、本実施の形態の場合、図7および図8に示すように、第1および第2のリブ部50h、52hは、フィン46の短手方向(X軸方向)のサイズが、長手方向(Y軸方向)のサイズに比べて大きくなるように構成されている、これにより、図10Aに示すようなフィン46の短手方向(X軸方向)に作用する外力F1に対して剛性が向上する(第1および第2のリブ部50h、52hにおけるフィン46の短手方向のサイズが長手方向のサイズに比べて小さい場合に比べて)。またこのような形状により、第1および第2のリブ部50h、52hによる空気Aに対する通風抵抗が減少する。
【0052】
なお、空気Aに対する通風抵抗を小さくするためには、相対的に大きな第1および第2のリブ部50h、52hを少数個設けるよりは、相対的に小さい第1および第2のリブ部50h、52hを多数設ける方が好ましい。
【0053】
また、複数の第1および第2のリブ部50h、52hは、第1および第2のヘッダ46a、46bとの間に隙間をあけて設けられるのが好ましい。その理由を図11を用いて説明する。
【0054】
図11は、一例の姿勢で配置された状態の熱交換器におけるフィンの上面図である。
【0055】
図11に示すように、熱交換器18は、場合によっては、フィン46の長手方向(Y軸方向)が鉛直方向Vに概ね一致した状態で使用されることがある。このような場合、熱交換器18が湿った空気Aを冷却するとき、その湿った空気Aがフィン46の表面で結露して発生した水滴は、フィン46の表面に沿って下方に移動する。すなわち、図11に示す例では、下方に位置する第1のヘッダ46aに向かって水滴が移動する。
【0056】
このとき、第1および第2のリブ部50h、52hが第1のヘッダ46aに接続していると、水滴が、第1および第2のリブ部50h、52hと第1のヘッダ46aとによって形成されたコーナー部に溜まる可能性がある。その結果、水滴が、熱交換器18の下方に位置するドレンパン22に落ちることができない可能性がある。
【0057】
そのため、本実施の形態においては、熱交換器18がどのような姿勢で使用されても、結露によってフィン46の表面に発生した水滴がドレンパン22に落下できるように、図7および図11に示すように、第1および第2のヘッダ46a、46bと第1のリブ部50hとの間に隙間が設けられている。同様に、図8に示すように、第1および第2のヘッダ46a、46bと第2のリブ部52hとの間にも、隙間が設けられている。
【0058】
なお、第1および第2のリブ部50h、52hによる効果を検証するために、発明者は、本実施の形態のフィン積層体40と比較例のフィン積層体140の落下による変形をシミュレーションしている。具体的には、発明者は、同一高さ位置からフィンの短手方向にフィン積層体を落下させ、その短手方向のフィン積層体の最大変位量をシミュレーションによって算出した。その結果、実施の形態のフィン積層体40の最大変位量は、比較例のフィン積層体140の最大変位量に比べて25.2%低い値であった。このシミュレーション結果から、第1および第2のリブ部50h、52hにより、フィン積層体の剛性が向上することが実証されている。
【0059】
湿った空気Aの熱交換器18での結露によって発生する水滴に関して、本実施の形態に係る熱交換器はさらなる特徴を備えている。
【0060】
図12Aは、本実施の形態に係る熱交換器において、水滴が発生した状態のフィン積層体の断面図である。また、図12Bは、比較例に係る熱交換器において、水滴が発生した状態のフィン積層体の断面図である。
【0061】
図12Aに示すように、熱交換器18の姿勢によっては、フィン46のそれぞれの空気Aの流れ方向の上流側のエッジ46dに水滴Wが発生しうる。具体的には、空気調和機10が熱交換器18によって空気Aを冷却する冷房運転中に、湿った空気Aがフィン46の上流側エッジ46dに当たって結露すると、そのエッジ46d上に水滴Wが発生する。この水滴Wが大きく成長しないように、本実施の形態のフィン46は構成されている。
【0062】
具体的には、図6図7図11、および図12Aに示すように、フィン46それぞれにおいて、エッジ46dを構成する第1のプレート50における空気Aの流れ方向の上流側端面50jと第2のプレート52における上流側端面52jは、互いに対して空気Aの流れ方向にずれている。本実施の形態の場合、第2のプレート52の上流側端面52jが、第1のプレート50の上流側端面50jに対して、空気Aの流れ方向の上流側に位置する。また、本実施の形態の場合、上流側端面50j、52jは、例えば、0.2~2.0mmずれている。
【0063】
このように第1および第2のプレート50、52の上流側端面50j、52jが互いに対してずれることにより、フィン46のエッジ46dに発生する水滴Wが小さくなる。
【0064】
これと異なり、図12Bに示す比較例の熱交換器118のフィン積層体140のように、第1および第2のプレート150、152の上流側端面150j、152jがずれておらず、空気Aの流れ方向の位置が一致している場合、フィン146のエッジ146d上に大きな水滴Wが発生しうる。
【0065】
具体的に説明すると、図12Aに示すように、本実施の形態の場合、湿った空気Aが当たるフィン46のエッジ46dは、第2のプレート52の上流側端面52jのみで構成されているので小さい。したがって、エッジ46d上で発生した水滴Wは、そのエッジ46d上で大きく成長できない。大きく成長することなく、最終的には、水滴Wは、空気Aの流れに押されてエッジ46dから離れ、ドレンパン22に向かって下方向にフィン46の表面上を移動する。
【0066】
一方、図12Bに示すように、比較例の場合、湿った空気Aが当たるフィン146のエッジ146dは、第1のプレート150の上流側端面150jと第2のプレート152の上流側端面152jから構成されているので大きい。したがって、エッジ146d上で発生した水滴Wは、湿った空気Aから水分を奪い続けてそのエッジ146dで大きく成長する。
【0067】
図12Bに示すように、水滴Wが大きく成長すると、フィン146間の第1の流路P1を流れる空気Aの流速が増加する。具合的には、第2の流路P2の入り口の開口面積が大きな水滴Wによって実質的に減少し、それにより、第2の流路P2に流入するときに、空気Aは、その流速が増加する。
【0068】
第2の流路P2を流れる空気Aの流速が増加すると、大きく成長した水滴Wが、高速の空気Aに吹き飛ばされ、熱交換器118の外部に飛び出すことがある。すなわち、大きく成長した水滴Wが、フィン146の表面上をドレンパンに向かって移動しない場合がある。熱交換器118を飛び出した大きな水滴Wは、ファンに吸い込まれ、最終的にファンから室内に吹き出される可能性がある。
【0069】
したがって、図12Aに示すように、フィン46のエッジ46d上で発生した水滴Wが熱交換器18の外部に飛び出さないように、第1および第2のプレート50、52の上流側端面50j、52jが互いに対してずれている。
【0070】
なお、図6に示すように、本実施の形態の場合、第1のプレート50の下流側端面50kと第2のプレート52の下流側端面52kも、空気Aの流れ方向にずれている。これは、第1および第2のプレート50、52が、フィン46の積層方向(Z軸方向)視で、同一の輪郭形状を備えるからである。すなわち、第1および第2のプレート50、52が、同一の輪郭形状を備える材料プレートをプレス成型して形成されているからである。同一の材料プレートから第1および第2のプレート50、52を作成することにより、フィン積層体40の作製コストが減少するとともに、作製時間が短縮化される。また、そのために、第1および第2のプレート50、52は、実質的に同一の熱容量を備えることができる。それにより、第1および第2のプレート50、52それぞれは、その間を流れる空気Aに対して、実質的に同一の伝熱効率で熱交換を行うことができる。その結果、熱交換器18の熱交換率が向上する。
【0071】
また、発明者は、第1および第2のプレート50、52の上流側端面50j、52jが互いに対してずれている効果を確かめるために、実験を行っている。湿った空気を1m/sの流速で図12Aに示す本実施の形態の熱交換器18と図12Bに示す比較例の熱交換器118それぞれに流入させた結果、本実施の形態の通風抵抗が、比較例の通風抵抗の93%であった。この通風抵抗の低下は、フィンのエッジに大きな水滴が発生していないことを示している。
【0072】
なお、このような水滴Wは、第1および第2のプレート50、52の上流側端面50j、52j以外の部分にも発生しうる。
【0073】
図13は、本開示の異なる実施の形態に係る熱交換器において、水滴が発生した状態のフィン積層体の断面図である。
【0074】
図13に示すように、本開示の異なる実施の形態に係る熱交換器218のフィン積層体240において、フィン246の貫通穴状の断熱部246cは、空気Aの流れ方向(X軸方向)のサイズが大きい。そのため、貫通穴状の断熱部246cの内周面における空気Aの流れ方向の下流側の部分に、水滴Wが発生する可能性がある。この水滴Wが大きく成長しないように、フィン246それぞれにおいて、第1および第2の貫通穴250e、252eそれぞれにおける空気Aの流れ方向の下流側の内周面の部分が、互いに対して空気Aの流れ方向にずれている。その結果、フィン246の貫通穴状の断熱部246cで大きな水滴Wが発生し、その大きな水滴Wが熱交換器218の外部に飛び出すことが抑制されている。
【0075】
以上のような本実施の形態によれば、プレート積層型の熱交換器において、熱交換器から水滴が飛び出ることを抑制することができる。
【0076】
以上、上述の実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本開示は上述の実施の形態に限定されない。
【0077】
例えば、上述の実施の形態の場合、第1および第2のプレート50、52は、両面にロウ材層が設けられた金属薄板から作製されている。このロウ材層により、第1のプレート50と第2のプレート52とが互いに接合されている。しかしながら、本開示の実施の形態はこれに限らない。第1~第3のプレートを互いに接触し、その接触状態を維持できるのであれば、第1のおよび第2のプレートは、ロウ材層が両面に設けられていない金属薄板から作製されてもよい。
【0078】
さらに、上述の実施の形態の熱交換器は、室内空調を行う空気調和機に設けられている。しかしながら、本開示の実施の形態はこれに限らない。本開示の実施の形態に係る熱交換器は、第1の流体と第2の流体との間で熱交換を行う必要がある装置に使用可能である。
【0079】
すなわち、本開示の実施の形態に係る熱交換器は、広義には、互いに接触し、第1の流体が流れる第1の流路を備える複数のフィンを形成する複数の第1および第2のプレートを有し、前記複数のフィンが、第2の流体が流れる第2の流路を間に形成するように間隔をあけて積層され、前記複数のフィンそれぞれにおいて、前記第1および第2のプレートそれぞれにおける前記第2の流体の流れ方向の上流側の端面が、互いに対して前記第2の流体の流れ方向にずれている、熱交換器である。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本開示は、第1の流体と第2の流体との間で熱交換を行う熱交換器に適用可能である。
【符号の説明】
【0081】
18 熱交換器
46 フィン
50 第1のプレート
50j 上流側端面
52 第2のプレート
52j 上流側端面
A 第2の流体(空気)
P1 第1の流路
P2 第2の流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12A
図12B
図13