(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176937
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】媒体処理装置
(51)【国際特許分類】
G07D 11/20 20190101AFI20241212BHJP
B65H 7/02 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
G07D11/20
B65H7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095832
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129067
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 能章
(74)【代理人】
【識別番号】100183162
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 義文
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 孝洋
【テーマコード(参考)】
3E141
3F048
【Fターム(参考)】
3E141AA07
3E141BA16
3E141FG11
3F048AA06
3F048AB03
3F048BA05
3F048BB02
3F048CA03
3F048CC03
3F048DC12
3F048EA13
3F048EB40
(57)【要約】
【課題】媒体長が未検出の媒体を適切に排出することができる媒体処理装置を提供するものである。
【解決手段】媒体処理装置1は、通帳挿入排出口6と、挿入および排出される前記媒体が搬送される挿入排出搬送路9bと、挿入排出搬送路9bに設置され、前記媒体の存在を検知する第1センサS1と、前記媒体の搬送を制御する制御部20と、を備える。制御部20は、挿入後に挿入排出搬送路9b上の第1位置まで搬送させた前記媒体を排出する場合に、前記第1位置から排出方向へ戻した第2位置に搬送させ、前記媒体が前記第2位置にある状態での第1センサS1の検知結果に基づいた排出位置に前記媒体を搬送させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる長さを有する媒体が挿入および排出される挿入排出口と、
挿入および排出される前記媒体が搬送される挿入排出搬送路と、
前記挿入排出搬送路に設置され、前記媒体の存在を検知するセンサと、
前記媒体の搬送を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、挿入後に前記挿入排出搬送路上の第1位置まで搬送させた前記媒体を排出する場合に、前記第1位置から排出方向へ戻した第2位置に搬送させ、前記媒体が前記第2位置にある状態での前記センサの検知結果に基づいた排出位置に前記媒体を搬送させる、
ことを特徴とする媒体処理装置。
【請求項2】
前記挿入排出口から挿入される媒体には、第1媒体と、前記第1媒体よりも短い第2媒体とがあり、
前記制御部は、
前記媒体が前記第2位置にある状態での前記センサの検知結果に基づいて排出される前記媒体が前記第1媒体および前記第2媒体の何れであるかを判定し、
前記第1媒体であると判定した場合に、第1排出距離だけ前記第2位置から排出方向に前記第1媒体を搬送させ、
前記第2媒体であると判定した場合に、前記第1排出距離よりも長い第2排出距離だけ前記第2位置から排出方向に前記第2媒体を搬送させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、挿入後に前記挿入排出搬送路上の第1位置まで搬送させた前記媒体を排出する場合に、前記第1位置から排出方向に所定距離だけ戻すことによって第2位置に搬送させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項4】
前記センサは、媒体長を算出する際に前記媒体の後端を検知する第1センサであり、
前記第1センサよりも挿入方向に設置されており、媒体長を算出する際に前記媒体の前端を検知する第2センサをさらに備え、
前記制御部は、挿入された前記媒体の前端が前記第2センサを越える前記第1位置まで搬送させた前記媒体を排出する場合に、前記第2センサが前記媒体の前端を検知するまで排出方向に戻すことによって第2位置に搬送させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項5】
前記挿入排出口から挿入される媒体には、異なる長さを有するN種類(N≧3)の媒体があり、
前記センサは、媒体長を算出する際に前記媒体の後端を検知する第1センサであり、
前記第1センサよりも挿入方向に設置されており、媒体長を算出する際に前記媒体の前端を検知する第2センサと、
前記第1センサと前記第2センサとの間に設置される一つ以上の第3センサと、をさらに備え、
前記制御部は、
挿入された前記媒体の前端が前記第2センサを越える前記第1位置まで搬送させた前記媒体を排出する場合に、前記媒体の先端を前記第2センサの位置に揃えることで前記第2位置に搬送させ、
前記媒体が前記第2位置にある状態での前記第1センサおよび前記第3センサの検知結果に基づいて、排出される前記媒体の区分を判定し、前記判定した区分に基づいた排出位置に前記媒体を搬送させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項6】
異なる長さを有する媒体が挿入および排出される挿入排出口と、
挿入および排出される前記媒体が搬送される挿入排出搬送路と、
前記挿入排出搬送路に設置され、前記媒体の存在を検知するセンサと、
前記媒体の搬送を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、挿入後に前記挿入排出搬送路上の第1位置まで搬送させた前記媒体を排出する場合に、前記媒体が前記第1位置にある状態での前記センサの検知結果に基づいた排出位置に前記媒体を搬送させる、
ことを特徴とする媒体処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
媒体を処理する媒体処理装置の排出制御として、媒体の後端(排出側の端部)を基準にして排出位置に当該媒体を搬送するものがある(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載される媒体処理装置は、媒体を搬送路に沿って搬送して所定の処理を行った後、前記媒体を逆方向に搬送して前記挿入排出口に排出した状態で、前記挿入排出口至近の搬送ローラのニップを開放する。前記媒体を排出する際に、前記媒体の後端が前記搬送路の基準位置から所定距離だけ排出方向に離間した所定の停止位置で止まるように前記媒体を搬送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、媒体長が未検出の媒体に関する排出制御が示されていないので、媒体長が未検出の媒体(排出側の端部の位置が未確定の媒体を含む)を適切に排出することができなかった。
例えば、媒体処理装置の一つとして通帳伝票プリンタが知られており、この通帳伝票プリンタでは、媒体長の異なる媒体を処理するのが一般的である。そのため、通帳伝票プリンタでは、媒体が挿入された場合に、最初に媒体長を検出する制御(媒体長検出制御)を実施する。しかしながら、媒体長検出制御を実施する前に処理がキャンセルされた場合に、媒体長が未検出の状態の媒体を排出するので、適切な排出位置を算出できないという問題があった。
【0005】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたものであり、媒体長が未検出の媒体を適切に排出することができる媒体処理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明の一態様に係る媒体処理装置は、異なる長さを有する媒体が挿入および排出される挿入排出口と、挿入および排出される前記媒体が搬送される挿入排出搬送路と、前記挿入排出搬送路に設置され、前記媒体の存在を検知するセンサと、前記媒体の搬送を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、挿入後に前記挿入排出搬送路上の第1位置まで搬送させた前記媒体を排出する場合に、前記第1位置から排出方向へ戻した第2位置に搬送させ、前記媒体が前記第2位置にある状態での前記センサの検知結果に基づいた排出位置に前記媒体を搬送させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、媒体長が未検出の媒体を適切に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1および第2実施形態に係る通帳伝票プリンタ(媒体処理装置)の概略構成図である。
【
図2】第1位置での媒体と第1センサおよび第2センサとの位置関係を説明するためのイメージ図であり、(a)は第1媒体での位置関係を示しており、(b)は第2媒体での位置関係を示している。
【
図3】第2位置での媒体と第1センサおよび第2センサとの位置関係を説明するためのイメージ図であり、(a)は第1媒体での位置関係を示しており、(b)は第2媒体での位置関係を示している。
【
図4】排出制御での媒体の排出位置を説明するためのイメージ図であり、(a)は第1媒体に対応する第1排出位置を示しており、(b)は第2媒体に対応する第2排出位置を示している。
【
図5】第2実施形態に係るインサータユニットの概略構成図である。
【
図6】第2位置での媒体Bと第1センサ、第2センサおよび第3センサとの位置関係を説明するためのイメージ図であり、(a)は第1媒体での位置関係を示しており、(b)は第2媒体での位置関係を示しており、(c)は第3媒体での位置関係を示している。
【
図7】排出制御での媒体の排出位置を説明するためのイメージ図であり、(a)は第1媒体に対応する第1排出位置を示しており、(b)は第2媒体に対応する第2排出位置を示しており、(c)は第3媒体に対応する第3排出位置を示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるにすぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、参照する図面において、本発明を構成する部材の寸法は、説明を明確にするために誇張等して表現されている場合がある。なお、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0010】
[第1実施形態]
<第1実施形態に係る媒体処理装置の構成について>
図1を参照して、第1実施形態に係る媒体処理装置1の構成について説明する。
図1は、媒体処理装置1の概略構成図である。媒体処理装置1の説明における「上下」、「前後」は、
図1の矢印に従う。当該方向は、説明の便宜上定めるものであり、本発明を限定するものではない。なお、
図1における前側は、「排出方向」の例示であり、後側は、「挿入方向」の例示である。
【0011】
媒体処理装置1は、媒体の処理を行う装置である。媒体は、例えば通帳類、伝票類、カード類、券類などである。本実施形態では、媒体処理装置1として通帳伝票プリンタを想定して説明する。通帳伝票プリンタは、種類の異なる媒体である通帳および伝票に印字する装置である。通帳伝票プリンタは、例えば金融機関の窓口業務を担当する者(オペレータ)によって操作される。
【0012】
図1に示す媒体処理装置1(本実施形態では、通帳伝票プリンタを想定)は、主に、インサータユニット2と、印字ユニット3と、オートターンページ(ATP)ユニット4とを備える。これらのユニットは、筐体1a内に前後方向に並べて設置される。また、媒体処理装置1は、インサータユニット2、印字ユニット3およびオートターンページユニット4の動作を制御する制御部20を備える。制御部20が行う制御には、媒体の搬送に関する制御が含まれる。
【0013】
媒体処理装置1内には、媒体が搬送される搬送路9が設けられており、搬送路9には媒体の存在を検知する複数のセンサSが設置されている。センサSは、例えば光電センサであり、光量の変化によって媒体の存在を検知可能である。センサSは、例えば明/暗状態により媒体の「なし/ある」を検知する。本実施形態では、センサSが媒体の存在を検知している場合にON状態となり、媒体の存在を検知していない場合にOFF状態となることにする。センサSは、ON/OFF状態に対応した信号を制御部20に送信する。
搬送路9は、媒体をガイドする上下のガイド部12、媒体を搬送する搬送フィードローラ10、搬送フィードローラ10に媒体を押し付ける搬送プレッシャローラ11等から構成される。
【0014】
搬送フィードローラ10は、搬送用パルスモータ(図示せず)に接続されており、搬送用パルスモータの駆動力によって回動する。搬送プレッシャローラ11は、搬送フィードローラ10に対向して配置される。
搬送路9は、インサータユニット2、印字ユニット3およびオートターンページユニット4に亘って設けられており、媒体は、搬送路9を介してユニット間を移動可能である。
【0015】
図1に示すインサータユニット2は、媒体処理装置1の前側に実装される。インサータユニット2は、オペレータによる通帳や伝票等の媒体のセットを受け、セットされた媒体を取り込むとともに、印字処理の終了した媒体を排出する機能を備える。
インサータユニット2は、上側インサータ部2aと、下側インサータ部2bとを有する。上側インサータ部2aと下側インサータ部2bとは上下方向に並べて配置される。
【0016】
上側インサータ部2aは、伝票を受け入れるための構成となっており、伝票をセットするための伝票ステージ(図示せず)と、伝票を装置内に挿入および装置外に排出するための伝票挿入排出口5とを有する。
下側インサータ部2bは、通帳を受け入れるための構成となっており、通帳をセットするための通帳ステージ(図示せず)と、通帳を装置内に挿入および装置外に排出するための通帳挿入排出口6とを有する。
【0017】
伝票挿入排出口5から連続しており、伝票挿入排出口5から挿入および伝票挿入排出口5に排出される媒体が搬送される搬送路9を特に「挿入排出搬送路9a」と呼ぶことにする。挿入排出搬送路9aは、例えば、伝票挿入排出口5と印字ユニット3との間の部分である。
また、通帳挿入排出口6から連続しており、通帳挿入排出口6に挿入および通帳挿入排出口6に排出される媒体が搬送される搬送路9を特に「挿入排出搬送路9b」と呼ぶことにする。挿入排出搬送路9bは、例えば、通帳挿入排出口6と印字ユニット3との間の部分である。
【0018】
図1に示すように、挿入排出搬送路9aおよび挿入排出搬送路9bは、印字ユニット3が備える読取部7の前側(上流側)で合流している。これにより、伝票挿入排出口5から挿入された伝票および通帳挿入排出口6から挿入された通帳は、挿入される場所は別であるが搬送路が合流する地点より装置後側(下流側)では同一の搬送路9を通過する。なお、挿入排出搬送路9bは、挿入排出搬送路9aよりも短くなっている。挿入排出搬送路9aおよび挿入排出搬送路9bは、「挿入搬送路」および「排出搬送路」の一例である。
【0019】
図1に示すように、挿入排出搬送路9bには、第1センサS1および第2センサS2が設置されている。第1センサS1は、媒体の搬送方向(前後方向)における長さ(「媒体長」と称する)を検出する際に、媒体の後端を検知するために使用される。第2センサS2は、媒体長を検出する際に、媒体の前端を検知するために使用される。第2センサS2は、第1センサS1よりも挿入方向側(後側)に設置される。
また、挿入排出搬送路9aには、第4センサS4が設置されている。第4センサS4は、媒体長を検出する際に、媒体の前端を確定する前端検知センサおよび媒体の後端を確定する後端検知センサとして動作する。
なお、媒体長の検出は、媒体処理装置1に媒体が挿入された場合に実施される。媒体長検出制御の詳細は後述する。
【0020】
図1に示す印字ユニット3は、インサータユニット2の後方に実装される。印字ユニット3は、媒体(伝票および通帳)への印字機能、及び印字のための印字済行の検出機能を備える。具体的には、印字ユニット3は、読取部7と、印字ヘッド8とを有する。
読取部7は、媒体である通帳のページマークや印字済行、また、伝票の印字行を読み取る。印字ヘッド8は、媒体である通帳や伝票に対して印字を行う。
【0021】
図1に示すオートターンページユニット4は、印字ユニット3の後方に実装される。オートターンページユニット4は、通帳のページをめくる捲り機能を備える。ページめくりが必要と判断された場合に、印字ユニット3からオートターンページユニット4に通帳が搬送され、オートターンページユニット4は、ページめくりを実行した後に通帳を印字ユニット3に送り返す。
【0022】
(媒体取込制御(「媒体長検出制御」を含む)に関して)
図2を参照して(適宜、
図1を参照)、第1実施形態における媒体取込制御を説明する。第1実施形態では、通帳挿入排出口6を介した通帳の取込みに着目することにする(つまり、下側インサータ部2bでの取込み動作に着目する)。媒体処理装置1は媒体長の異なる通帳や伝票を処理することが可能であり、媒体長が異なる通帳の制御を例示する。制御部20は、通帳が挿入された場合に、最初に媒体長を検出する制御を実施する。
【0023】
図2は、第1位置での媒体Bと第1センサS1および第2センサS2との位置関係を説明するためのイメージ図であり、(a)は第1媒体B1での位置関係を示しており、(b)は第2媒体B2での位置関係を示している。
図2(a)に示す第1媒体B1は、長尺な媒体であり、第1センサS1と第2センサS2との間のセンサ間距離LS12よりも寸法が長くなっている。
図2(b)に示す第2媒体B2は、短尺な媒体であり、第1センサS1と第2センサS2との間のセンサ間距離LS12よりも寸法が短くなっている。
【0024】
媒体長検出制御では、最初に、通帳挿入排出口6から挿入された媒体Bを
図2に示す第1位置に搬送させ、その過程で第2センサS2が媒体Bの前端を検知する。
図2に示す第1位置は、媒体長LBを検出するための最初の位置であり、「クランプ位置」などと呼ばれることがある。第1位置では、媒体Bの挿入方向における前端が第2センサS2をわずかに越えている(例えば、数mmだけ越えている)。これにより、制御部20は、媒体Bの前端位置を確定する。第1位置での第1媒体B1の挿入方向における後端は、第1センサS1よりも装置手前側(排出方向側)である。一方、第1位置での第2媒体B2の後端は、第1センサS1よりも装置奥側(挿入方向側)である。
【0025】
次に、第1位置にある媒体Bの存在を第1センサS1で検知する。そして、
図2(a)に示すように、第1センサS1で媒体Bを検知した場合(つまり、長尺な第1媒体B1であることによって後端が第1センサS1よりも排出方向側にある場合)には、媒体Bを挿入方向に搬送して第1センサS1で媒体Bの後端を検知する。一方、
図2(b)に示すように、第1センサS1で媒体Bを検知しない場合(つまり、短尺な第2媒体B2であることによって後端が第1センサS1よりも挿入方向側にある場合)には、第1センサS1が媒体Bを検知するまで排出方向へ搬送させたのち媒体Bを挿入方向へ搬送させ、第1センサS1で媒体Bの後端を検知する。これにより、制御部20は、媒体Bの後端位置を確定する。
【0026】
そして、制御部20は、確定された前端位置および後端位置に基づいて、媒体Bの媒体長LBを算出する。例えば、「媒体長LB=前端位置-後端位置」によって媒体長LBを算出する。制御部20は、媒体長検出制御が終了した後で、媒体Bを挿入方向へ搬送し、印字ユニット3やオートターンページユニット4による処理を実施する。
【0027】
(第1実施形態に係る媒体長検出前の排出制御に関して)
図2ないし
図4を参照して(適宜、
図1を参照)、第1実施形態における媒体長検出前の排出制御を説明する。当該排出制御が実施されるのは、例えば媒体長の検出が開始する前に取引の中止(キャンセル)がなされた場合である。
【0028】
媒体長検出前の排出制御では、制御部20は、最初に、媒体Bを
図2に示す第1位置に搬送させ、その過程で第2センサS2が媒体Bの前端を検知する。ここまでは、媒体長検出制御と同様である。第1位置では、媒体Bの前端が第2センサS2をわずかに越えている(例えば、数mmだけ越えている)。これにより、制御部20は、媒体Bの前端位置を確定する。なお、上記において第1位置では、媒体Bの前端が第2センサS2をわずかに越えているとしたが、媒体Bの前端をセンサS2が検知してから搬送する距離はセンサS2の位置に応じて決定される。例えば、センサS2が
図2の位置よりも装置手前側に配置されている場合は、第1位置はセンサS2を例えば、数cm超えた位置に搬送されてもよい。
【0029】
制御部20は、第1位置に媒体Bを停止させ、取引の中止に関する指示があるか否かを操作者に問い合わせてもよい。例えば、第1位置に媒体Bを停止させた状態で、取引の中止を行うためのボタンを有する画面を表示部に表示させてもよい。
続いて、
図3に示すように、制御部20は、媒体Bの先端が第2センサS2の位置となるように、排出前に媒体Bを第1位置から第2位置に一旦搬送する。第1位置から第2位置への搬送は、媒体長LBに関係なくすべての媒体Bで共通して実施される。
図3は、第2位置での媒体Bと第1センサS1および第2センサS2との位置関係を説明するためのイメージ図であり、(a)は第1媒体B1での位置関係を示しており、(b)は第2媒体B2での位置関係を示している。
図3に示すように、第2位置では、第1媒体B1および第2媒体B2の先端は、共に第2センサS2の位置に揃えられる。
【0030】
制御部20は、例えば、所定距離だけ媒体Bを排出方向へ搬送することで、媒体Bを第2位置まで搬送する。ここでの所定距離は、第1位置での媒体Bの先端の位置と第2センサS2の位置との差である。また、制御部20は、第2センサS2がOFF状態(媒体なし)となるまで搬送することで、媒体Bを第2位置まで搬送してもよい。
【0031】
制御部20は、媒体Bが第2位置にある状態での第1センサS1の検知結果を確認し、当該検知結果に基づいた排出位置に媒体Bを搬送させる。例えば、第1センサS1の検知結果がON状態(媒体あり)である場合には、第1センサS1と第2センサS2との間のセンサ間距離LS12よりも長い第1媒体B1(
図3(a)参照)であると判定できるので、制御部20は、長尺の第1媒体B1に適した第1排出位置に当該第1媒体B1を排出する(
図4(a)参照)。一方、第1センサS1の検知結果がOFF状態(媒体なし)である場合には、第1センサS1と第2センサS2との間のセンサ間距離LS12よりも短い第2媒体B2(
図3(b)参照)であると判定できるので、制御部20は、短尺の第2媒体B2に適した第2排出位置に当該第2媒体B2を排出する(
図4(b)参照)。なお、
図4は、排出制御での媒体の排出位置を説明するためのイメージ図であり、(a)は第1媒体B1に対応する第1排出位置を示しており、(b)は第2媒体B2に対応する第2排出位置を示している。
【0032】
操作者が掴みやすい位置に媒体Bを排出する場合、通帳挿入排出口6からの媒体Bの排出量が問題となり、例えば、通帳挿入排出口6から排出位置での媒体Bの後端までの距離を掴み易い基準値(または、それ以上)に設定する。通帳挿入排出口6から第1排出位置での第1媒体B1の後端までの距離と、通帳挿入排出口6から第2排出位置での第2媒体B2の後端までの距離とを同じにする場合、第1媒体B1を第2位置から第1排出位置に搬送する第1排出距離に比べて、第2媒体B2を第2位置から第2排出位置に搬送する第2排出距離は長くなる。なお、この場合の第1排出位置における第1媒体B1の前端の位置と、第2排出位置における第2媒体B2の前端の位置とは異なっている。
【0033】
媒体処理装置1で取り扱う媒体Bの媒体長LBが既知である場合を想定する。その場合、媒体Bの区分に応じて排出距離を予め登録しておき、制御部20は、登録された排出距離に応じて媒体Bを第2位置から搬送するようにするのがよい。例えば、長尺な第1媒体B1に対応づけて第1排出距離を登録しておき、また、短尺な第2媒体B2に対応づけて第1排出距離を登録しておく。
【0034】
以上のように、第1実施形態では、媒体長LBが長い第1媒体B1と、短い第2媒体B2という二つの区分に分けて、それぞれの媒体Bを適切な排出位置に排出できる。そのため、長い第1媒体B1を排出する際に、排出量が多すぎて媒体を落下させることを防止することができ、さらに、短い第2媒体B2を排出する際に、排出量が少なすぎて媒体を掴みづらくなることを防止することができる。
【0035】
[第2実施形態]
第1実施形態では、第1センサS1と第2センサS2との間のセンサ間距離LS12を基準にして媒体長LBの長短を判定することで、二つの区分に分けてそれぞれの媒体Bを適切な排出位置に排出していた。
第2実施形態では、三つのセンサSを用いて、三つの区分に分けてそれぞれの媒体Bを適切な排出位置に排出する。
【0036】
図5は、第2実施形態に係るインサータユニット102の概略構成図である。
図2に示すように、第2実施形態に係るインサータユニット102の挿入排出搬送路9bには、第1センサS1、第2センサS2、および第3センサS3が設置されている。第3センサS3は、第1センサS1と第2センサS2との間に設置される。
【0037】
(第2実施形態に係る媒体長検出前の排出制御に関して)
図6および
図7を参照して、第2実施形態における媒体長検出前の排出制御を説明する。当該排出制御が実施されるのは、例えば媒体長の検出が開始する前に取引の中止(キャンセル)がなされた場合である。
【0038】
図6(a)に示す第1媒体B1は、長尺な媒体であり、第1センサS1と第2センサS2との間のセンサ間距離LS12よりも媒体長LB1が長くなっている。
図6(b)に示す第2媒体B2は、中くらいの長さの媒体であり、第1センサS1と第2センサS2との間のセンサ間距離LS12よりも媒体長LB2が短く、かつ、第3センサS3と第2センサS2との間のセンサ間距離LS23よりも媒体長LB2が長くなっている。
図6(c)に示す第3媒体B3は、短尺な媒体であり、第3センサS3と第2センサS2との間のセンサ間距離LS23よりも媒体長LB3が短くなっている。
つまり、第1媒体B1、第2媒体B2および第3媒体B3の媒体長LBの関係は、「媒体長LB3<媒体長LB2<媒体長LB1」である。
【0039】
図6に示すように、制御部20は、媒体Bの先端が第2センサS2の位置となるように、排出前に媒体Bを第1位置から第2位置に一旦搬送する。第1位置から第2位置への搬送は、媒体長LBに関係なくすべての媒体Bで共通して実施される。
図6は、第2位置での媒体Bと第1センサS1、第2センサS2および第3センサS3との位置関係を説明するためのイメージ図であり、(a)は第1媒体B1での位置関係を示しており、(b)は第2媒体B2での位置関係を示しており、(c)は第3媒体B3での位置関係を示している。
【0040】
制御部20は、例えば、所定距離だけ媒体Bを排出方向へ搬送することで、媒体Bを第2位置まで搬送する。ここでの所定距離は、第1位置での媒体Bの先端の位置と第2センサS2の位置との差である。また、制御部20は、第2センサS2がOFF状態(媒体なし)となるまで搬送することで、媒体Bを第2位置まで搬送してもよい。
【0041】
制御部20は、媒体Bが第2位置にある状態での第1センサS1および第3センサS3の検知結果を確認することで排出される媒体Bの区分を判定し、判定した区分に基づいた排出位置に媒体Bを搬送させる。
例えば、第1センサS1および第3センサS3の検知結果が共にON状態(媒体あり)である場合には、第1センサS1と第2センサS2との間のセンサ間距離LS12よりも長い第1媒体B1(
図6(a)参照)であると判定できるので、制御部20は、長尺の第1媒体B1に適した第1排出位置に当該第1媒体B1を排出する(
図7(a)参照)。
【0042】
また、第1センサS1の検知結果がOFF状態(媒体なし)かつ第3センサS3の検知結果がON状態(媒体あり)である場合には、第1センサS1と第2センサS2との間のセンサ間距離LS12よりも短くまた第3センサS3と第2センサS2との間のセンサ間距離LS23よりも長い第2媒体B2(
図6(b)参照)であると判定できるので、制御部20は、中くらいの長さの第2媒体B2に適した第2排出位置に当該第2媒体B2を排出する(
図7(b)参照)。
【0043】
また、第1センサS1および第3センサS3の検知結果が共にOFF状態(媒体なし)である場合には、第3センサS3と第2センサS2との間のセンサ間距離LS23よりも短い第3媒体(
図6(c)参照)であると判定できるので、制御部20は、短尺の第3媒体B3に適した第3排出位置に当該第3媒体B3を排出する(
図7(c)参照)。
図7は、排出制御での媒体の排出位置を説明するためのイメージ図であり、(a)は第1媒体B1に対応する第1排出位置を示しており、(b)は第2媒体B2に対応する第2排出位置を示しており、(c)は第3媒体B3に対応する第3排出位置を示している。
【0044】
以上のように、第2実施形態では、媒体長LBが長い第1媒体B1と、中くらいの長さの第2媒体B2と、短い第3媒体B3という三つの区分に分けて、それぞれの媒体Bを適切な排出位置に排出できる。
なお、同様にしてインサータユニット102に実装するセンサSの数を増やすことで、4区分、5区分と排出位置をより細かく分けて設定することも可能である。
【0045】
[変形例]
各実施形態では、媒体処理装置1として通帳伝票プリンタを想定して説明したが、通帳伝票プリンタに限らず媒体Bを処理する装置に本発明を適用可能である。
【0046】
また、各実施形態では、媒体長LBを判定するための第2位置として媒体Bの先端を第2センサS2の位置としていたが、第2位置を第2センサS2の位置とせずに他の位置とすることも可能である。例えば、モータのパルス数等を用いて仮想的に媒体Bの先端の位置を管理する装置においては、第2センサS2は物理的に実装されている必要はなく、搬送目標位置を仮想的に求めることもできる。
【0047】
また、各実施形態では、クランプ位置である第1位置から、媒体Bの先端が第2センサS2の位置となるように、第1位置から第2位置に一旦搬送した後、第2位置における第1センサS1の検知結果により媒体Bの排出位置を制御する方法について述べた。このように、第1位置よりも通帳挿入排出口6に近い第2位置において、第1センサS1の検知状態を利用することで、媒体Bを区分けする基準となる長さ(第2位置から第1センサS1までの長さ)を任意に設定することが可能である。つまり、クランプ位置である第1位置は、排出する媒体Bを区分けするのに適した位置では必ずしもないので、第1位置から第1センサS1までの長さが排出する媒体Bを区分けする基準として適切でない場合もある。その場合には、第1位置での第1センサS1の検知状態を利用して媒体Bを区分けしたときに、媒体Bを適切に排出することができない。例えば、第1位置がセンサS2よりかなり装置奥側である場合において、第1位置での第1センサS1の検知状態を利用して媒体Bを区分けすることを想定する。この場合、媒体Bを区分けする基準となる長さ(第1位置から第1センサS1までの長さ)がかなり長くなる。仮に短尺の媒体Bにも長さの違いがあり短尺の媒体Bの中で比較的短い媒体Bを基準にして短尺の媒体B全体の排出距離を設定していたとすると、短尺の媒体Bの中でも比較的長い媒体Bを排出したときに、装置の外に媒体Bが出過ぎてしまい、媒体Bが装置外に落下してしまうことがあり得る。
【0048】
また、第1位置がセンサS2と略同じ位置である場合(第1位置から第1センサS1までの長さが媒体Bを区分けする基準として適している場合)は、第1位置から第2位置へ搬送することなく、第1位置において第1センサS1の検知結果により媒体Bの排出位置を制御してもよい。
つまり、媒体挿入後に挿入排出搬送路上の第1位置まで搬送させた媒体を排出する場合に、第1位置において、第1センサS1の検知結果がON状態(媒体あり)である場合には、第1センサS1と第2センサS2との間のセンサ間距離LS12よりも長い第1媒体B1であると判定できるので、制御部20は、長尺の第1媒体B1に適した第1排出位置に当該第1媒体B1を排出する。一方、第1センサS1の検知結果がOFF状態(媒体なし)である場合には、第1センサS1と第2センサS2との間のセンサ間距離LS12よりも短い第2媒体B2であると判定できるので、制御部20は、短尺の第2媒体B2に適した第2排出位置に当該第2媒体B2を排出する。
【0049】
また、各実施形態では、通帳挿入排出口6を介した通帳の取込みに着目し、下側インサータ部2bでの排出制御について説明した。しかしながら、上側インサータ部2aについても同様に媒体長LBを判定するためのセンサSを追加することで、本発明を実現可能である。また、センサSを追加しない場合でも、前述したように第2位置を仮想的に設けて、モータのパルス数等を用いて媒体Bの先端を仮想的な第2位置に揃え、当該第2位置にある媒体Bを第4センサS4で検知することで排出位置を決定してもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 媒体処理装置
1a 筐体
2 インサータユニット
2a 上側インサータ部
2b 下側インサータ部
3 印字ユニット
4 オートターンページユニット
5 伝票挿入排出口(挿入排出口)
6 通帳挿入排出口(挿入排出口)
7 読取部
8 印字ヘッド
9 搬送路
9a 挿入排出搬送路(挿入排出搬送路)
9b 挿入排出搬送路(挿入排出搬送路)
10 搬送フィードローラ
11 搬送プレッシャローラ
12 ガイド部
20 制御部
S センサ
B 媒体