(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176938
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】媒体処理装置
(51)【国際特許分類】
B65H 7/02 20060101AFI20241212BHJP
G07F 19/00 20060101ALI20241212BHJP
G07D 11/00 20190101ALI20241212BHJP
【FI】
B65H7/02
G07F19/00
G07D11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095833
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129067
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 能章
(74)【代理人】
【識別番号】100183162
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 義文
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 孝洋
【テーマコード(参考)】
3E141
3F048
【Fターム(参考)】
3E141AA06
3E141AA07
3E141BA16
3E141FG11
3E141FK04
3E141FK05
3F048AA06
3F048AB03
3F048BA05
3F048BB02
3F048CC03
3F048CC04
3F048DB07
3F048DC12
3F048EA13
3F048EB40
(57)【要約】
【課題】媒体の端部によってセンサがちらつく場合でも当該媒体を適切に処理することができる媒体処理装置を提供するものである。
【解決手段】媒体処理装置1は、挿入された媒体を挿入搬送路である挿入排出搬送路9b上の第1位置まで搬送させ、続けて前記第1位置から所定距離だけ装置奥側へ進んだ第2位置まで搬送させ、第1センサS1が前記第2位置での前記媒体を検知する場合には前記媒体を装置奥側へ搬送させ、第1センサS1が前記第2位置での前記媒体を検知しない場合には第1センサS1が前記媒体を検知するまで装置手前側へ搬送させたのち前記媒体を装置奥側へ搬送させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体が挿入される挿入口と、
挿入された前記媒体が搬送される挿入搬送路と、
前記挿入搬送路に設置され、前記媒体の存在を検知するセンサと、
前記媒体の搬送を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、挿入された前記媒体を前記挿入搬送路上の第1位置まで搬送させ、続けて前記第1位置から所定距離だけ装置奥側へ進んだ第2位置まで搬送させ、前記センサが前記第2位置での前記媒体を検知する場合には前記媒体を装置奥側へ搬送させ、前記センサが前記第2位置での前記媒体を検知しない場合には前記センサが前記媒体を検知するまで装置手前側へ搬送させたのち前記媒体を装置奥側へ搬送させる、
ことを特徴とする媒体処理装置。
【請求項2】
前記センサは、媒体長を算出する際に前記媒体の後端を検知する第1センサであり、
前記第1センサよりも装置奥側に設置されており、媒体長を算出する際に前記媒体の前端を検知する第2センサをさらに備え、
前記制御部は、
最初に、挿入された前記媒体の前端が前記第2センサを越える前記第1位置まで搬送させ、前記第2センサによって前端を検知させ、
続けて、前記第1位置から所定距離だけ装置奥側へ進んだ前記第2位置まで前記媒体を搬送させ、
前記第1センサが前記第2位置での前記媒体を検知する場合には前記媒体を装置奥側へ搬送させ、前記第1センサによって後端を検知させ、
前記第1センサが前記第2位置での前記媒体を検知しない場合には前記第1センサが前記媒体を検知するまで装置手前側へ搬送させたのちに前記媒体を装置奥側へ搬送させ、前記第1センサによって後端を検知させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記媒体の挿入時には前記第1センサに対する監視を行わずに、前記媒体が前記第1位置まで搬送された後で前記第1センサによる監視を開始する、
ことを特徴とする請求項2に記載の媒体処理装置。
【請求項4】
前記センサは、媒体長を算出する際に前記媒体の前端を検知する前端検知センサおよび後端を検知する後端検知センサとして動作し、
前記制御部は、
最初に、挿入された前記媒体を前記挿入搬送路上の第1位置まで搬送させ、前記センサによって前端を検知させ、
続けて、前記第1位置から所定距離だけ装置奥側へ進んだ前記第2位置まで前記媒体を搬送させ、
前記センサが前記第2位置での前記媒体を検知する場合には前記媒体を装置奥側へ搬送させ、前記センサによって後端を検知させ、
前記センサが前記第2位置での前記媒体を検知しない場合には前記センサが前記媒体を検知するまで装置手前側へ搬送させたのちに前記媒体を装置奥側へ搬送させ、前記センサによって後端を検知させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
媒体長の検出に関して、複数のセンサを用いて搬送方向の長さを検出する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、媒体である通帳や伝票に印字する通帳伝票プリンタが存在する。この通帳伝票プリンタは、例えば、金融機関に設置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通帳伝票プリンタでは、媒体長の異なる媒体を処理するのが一般的である。そのため、従来の通帳伝票プリンタでは、媒体が挿入された場合に、最初に媒体長を検出する制御(媒体長検出制御)を実施する。
図8を参照して、従来の通帳伝票プリンタにおける媒体長検出制御について説明する。
図8に示す従来の通帳伝票プリンタ101は、媒体B9が挿入される挿入口106と、挿入口106から連続しており、挿入された媒体B9が搬送される挿入搬送路109bを有する。挿入搬送路109bには、第1センサS101および第2センサS102が設置されている。
【0005】
従来の媒体長検出制御では、挿入口106から挿入された媒体B9を
図8に示す第1位置に搬送させ、その過程で第2センサS102が媒体B9の前端を検知する。次に、第1位置にある媒体B9の存在を第1センサS101で検知し、第1センサS101で媒体B9を検知した場合(つまり、媒体B9の後端が第1センサS101よりも装置手前側(符号P1で示す位置)にある場合)には、媒体B9を装置奥側に搬送して第1センサS101で媒体B9の後端を検知する。この制御は、長尺な媒体B9に対する制御である。
【0006】
一方、第1位置にある媒体B9の存在を第1センサS101で検知し、第1センサS101で媒体B9を検知できない場合(つまり、媒体B9の後端が第1センサS101よりも装置奥側(符号P2で示す位置)にある場合)には、媒体B9を装置奥側に搬送して第1センサS101で媒体B9の後端位置を検知することができない。その場合には、第1センサS101が媒体B9を検知するまで装置手前側へ搬送させたのち媒体Bを装置奥側へ搬送させ、第1センサS101で媒体B9の後端を検知する。この制御は、短尺な媒体B9に対する制御である。
【0007】
しかしながら、第1位置にある媒体B9の後端が第1センサS101の位置(符号P3で示す位置)にある場合には、時間経過に伴って第1センサS101の検知結果が切り替わる現象(ちらつき)が発生する。このちらつきが発生した場合、長尺な媒体B9として第1位置から装置奥側に搬送すればよいのか、短尺な媒体B9として装置手前側へ一度搬送させればよいのかを第1センサS101の検知結果によって判断することができない。
【0008】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたものであり、媒体の端部によってセンサがちらつく場合でも当該媒体を適切に処理することができる媒体処理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明の一態様に係る媒体処理装置は、媒体が挿入される挿入口と、挿入された前記媒体が搬送される挿入搬送路と、前記挿入搬送路に設置され、前記媒体の存在を検知するセンサと、前記媒体の搬送を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、挿入された前記媒体を前記挿入搬送路上の第1位置まで搬送させ、続けて前記第1位置から所定距離だけ装置奥側へ進んだ第2位置まで搬送させ、前記センサが前記第2位置での前記媒体を検知する場合には前記媒体を装置奥側へ搬送させ、前記センサが前記第2位置での前記媒体を検知しない場合には前記センサが前記媒体を検知するまで装置手前側へ搬送させたのち前記媒体を装置奥側へ搬送させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、媒体の端部によってセンサがちらつく場合でも当該媒体を適切に処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1および第2実施形態に係る通帳伝票プリンタ(媒体処理装置)の概略構成図である。
【
図2】第1位置での媒体と第1センサおよび第2センサとの位置関係を説明するためのイメージ図であり、(a)は第1媒体での位置関係を示しており、(b)は第2媒体での位置関係を示しており、(c)は第3媒体での位置関係を示している。
【
図3】第2位置での媒体と第1センサおよび第2センサとの位置関係を説明するためのイメージ図であり、(a)は第1媒体での位置関係を示しており、(b)は第2媒体での位置関係を示しており、(c)は第3媒体での位置関係を示している。
【
図4】第2位置からの制御を説明するための図であり、(a)は第1媒体での制御を示し、(b)は第2媒体での制御を示し、(c)は第3媒体での制御を示している。
【
図5】第2位置からの制御を説明するための図であり、(a)は第1媒体での制御を示し、(b)は第2媒体での制御を示し、(c)は第3媒体での制御を示している。
【
図6】第1位置での媒体と第3センサとの位置関係を説明するためのイメージ図であり、(a)は第4媒体での位置関係を示しており、(b)は第5媒体での位置関係を示しており、(c)は第6媒体での位置関係を示している。
【
図7】第2位置での媒体と第3センサとの位置関係を説明するためのイメージ図であり、(a)は第4媒体での位置関係を示しており、(b)は第5媒体での位置関係を示しており、(c)は第6媒体での位置関係を示している。
【
図8】従来の通帳伝票プリンタで実施される媒体長検出制御を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるにすぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、参照する図面において、本発明を構成する部材の寸法は、説明を明確にするために誇張等して表現されている場合がある。なお、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0013】
[第1実施形態]
<第1実施形態に係る媒体処理装置の構成について>
図1を参照して、第1実施形態に係る媒体処理装置1の構成について説明する。
図1は、媒体処理装置1の概略構成図である。媒体処理装置1の説明における「上下」、「前後」は、
図1の矢印に従う。当該方向は、説明の便宜上定めるものであり、本発明を限定するものではない。なお、
図1における前側は、「装置手前側」の例示であり、後側は、「装置奥側」の例示である。
【0014】
媒体処理装置1は、媒体の処理を行う装置である。媒体は、例えば通帳類、伝票類、カード類、券類などである。本実施形態では、媒体処理装置1として通帳伝票プリンタを想定して説明する。通帳伝票プリンタは、種類の異なる媒体である通帳および伝票に印字する装置である。通帳伝票プリンタは、例えば金融機関の窓口業務を担当する者(オペレータ)によって操作される。
【0015】
図1に示す媒体処理装置1(本実施形態では、通帳伝票プリンタを想定)は、主に、インサータユニット2と、印字ユニット3と、オートターンページ(ATP)ユニット4とを備える。これらのユニットは、筐体1a内に前後方向に並べて設置される。また、媒体処理装置1は、インサータユニット2、印字ユニット3およびオートターンページユニット4の動作を制御する制御部20を備える。制御部20が行う制御には、媒体の搬送に関する制御が含まれる。
【0016】
媒体処理装置1内には、媒体が搬送される搬送路9が設けられており、搬送路9には媒体の存在を検知する複数のセンサSが設置されている。センサSは、例えば光電センサであり、光量の変化によって媒体の存在を検知可能である。センサSは、例えば明/暗状態により媒体の「なし/ある」を検知する。本実施形態では、センサSが媒体の存在を検知している場合にON状態となり、媒体の存在を検知していない場合にOFF状態となることにする。センサSは、ON/OFF状態に対応した信号を制御部20に送信する。
搬送路9は、媒体をガイドする上下のガイド部12、媒体を搬送する搬送フィードローラ10、搬送フィードローラ10に媒体を押し付ける搬送プレッシャローラ11等から構成される。
【0017】
搬送フィードローラ10は、搬送用パルスモータ(図示せず)に接続されており、搬送用パルスモータの駆動力によって回動する。搬送プレッシャローラ11は、搬送フィードローラ10に対向して配置される。
搬送路9は、インサータユニット2、印字ユニット3およびオートターンページユニット4に亘って設けられており、媒体は、搬送路9を介してユニット間を移動可能である。
【0018】
図1に示すインサータユニット2は、媒体処理装置1の前側に実装される。インサータユニット2は、オペレータによる通帳や伝票等の媒体のセットを受け、セットされた媒体を取り込むとともに、印字処理の終了した媒体を排出する機能を備える。
インサータユニット2は、上側インサータ部2aと、下側インサータ部2bとを有する。上側インサータ部2aと下側インサータ部2bとは上下方向に並べて配置される。
【0019】
上側インサータ部2aは、伝票を受け入れるための構成となっており、伝票をセットするための伝票ステージ(図示せず)と、伝票を装置内に挿入および装置外に排出するための伝票挿入排出口5とを有する。
下側インサータ部2bは、通帳を受け入れるための構成となっており、通帳をセットするための通帳ステージ(図示せず)と、通帳を装置内に挿入および装置外に排出するための通帳挿入排出口6とを有する。
【0020】
伝票挿入排出口5から連続しており、伝票挿入排出口5から挿入および伝票挿入排出口5に排出される媒体が搬送される搬送路9を特に「挿入排出搬送路9a」と呼ぶことにする。挿入排出搬送路9aは、例えば、伝票挿入排出口5と印字ユニット3との間の部分である。
また、通帳挿入排出口6から連続しており、通帳挿入排出口6に挿入および通帳挿入排出口6に排出される媒体が搬送される搬送路9を特に「挿入排出搬送路9b」と呼ぶことにする。挿入排出搬送路9bは、例えば、通帳挿入排出口6と印字ユニット3との間の部分である。
【0021】
図1に示すように、挿入排出搬送路9aおよび挿入排出搬送路9bは、印字ユニット3が備える読取部7の前側(上流側)で合流している。これにより、伝票挿入排出口5から挿入された伝票および通帳挿入排出口6から挿入された通帳は、挿入される場所は別であるが搬送路が合流する地点より装置後側(下流側)では同一の搬送路9を通過する。なお、挿入排出搬送路9bは、挿入排出搬送路9aよりも短くなっている。挿入排出搬送路9aおよび挿入排出搬送路9bは、「挿入搬送路」および「排出搬送路」の一例である。
【0022】
図1に示すように、挿入排出搬送路9bには、第1センサS1および第2センサS2が設置されている。第1センサS1は、媒体の搬送方向(前後方向)における長さ(「媒体長」と称する)を検出する際に、媒体の後端を検知するために使用される。第2センサS2は、媒体長を検出する際に、媒体の前端を検知するために使用される。第2センサS2は、第1センサS1よりも装置奥側(後側)に設置される。
また、挿入排出搬送路9aには、第3センサS3が設置されている。第3センサS3は、媒体長を検出する際に、媒体の前端を確定する前端検知センサおよび媒体の後端を確定する後端検知センサとして動作する。
なお、媒体長の検出は、媒体処理装置1に媒体が挿入された場合に実施される。媒体長検出制御の詳細は後述する。
【0023】
図1に示す印字ユニット3は、インサータユニット2の後方に実装される。印字ユニット3は、媒体(伝票および通帳)への印字機能、及び印字のための印字済行の検出機能を備える。具体的には、印字ユニット3は、読取部7と、印字ヘッド8とを有する。
読取部7は、媒体である通帳のページマークや印字済行、また、伝票の印字行を読み取る。印字ヘッド8は、媒体である通帳や伝票に対して印字を行う。
【0024】
図1に示すオートターンページユニット4は、印字ユニット3の後方に実装される。オートターンページユニット4は、通帳のページをめくる捲り機能を備える。ページめくりが必要と判断された場合に、印字ユニット3からオートターンページユニット4に通帳が搬送され、オートターンページユニット4は、ページめくりを実行した後に通帳を印字ユニット3に送り返す。
【0025】
(第1実施形態に係る媒体取込制御(「媒体長検出制御」を含む)に関して)
図2ないし
図5を参照して(適宜、
図1を参照)、第1実施形態における媒体取込制御を説明する。第1実施形態では、通帳挿入排出口6を介した通帳の取込みに着目することにする(つまり、下側インサータ部2bでの取込み動作に着目する)。なお、伝票挿入排出口5を介した伝票の取込み(つまり、上側インサータ部2aでの取込み動作)については、第2実施形態で説明する。
ここで、媒体処理装置1は媒体長の異なる通帳や伝票を処理することが可能であり、第1実施形態では、媒体長が異なる通帳の制御を例示する。制御部20は、通帳が挿入された場合に、最初に媒体長を検出する制御を実施する。
【0026】
図2に示すように、制御部20(
図1参照)は、ラインフィード(LF)して、通帳挿入排出口6から挿入された媒体Bを、挿入排出搬送路9b上の第1位置まで搬送する。
図2は、第1位置での媒体Bと第1センサS1および第2センサS2との位置関係を説明するためのイメージ図であり、(a)は第1媒体B1での位置関係を示しており、(b)は第2媒体B2での位置関係を示しており、(c)は第3媒体B3での位置関係を示している。
【0027】
図2に示す第1位置は、媒体長LBを検出するための最初の位置であり、「クランプ位置」などと呼ばれることがある。第1位置では、媒体Bの挿入方向における前端が第2センサS2をわずかに越えている(例えば、数mmだけ越えている)。
図2(a)に示す第1媒体B1は、長尺な媒体であり、第1センサS1と第2センサS2との間のセンサ間距離LS12よりも寸法が長くなっている。第1位置での第1媒体B1の挿入方向における後端は、第1センサS1よりも装置手前側である。
図2(b)に示す第2媒体B2は、短尺な媒体であり、第1センサS1と第2センサS2との間のセンサ間距離LS12よりも寸法が短くなっている。第1位置での第2媒体B2の後端は、第1センサS1よりも装置奥側である。
図2(c)に示す第3媒体B3は、第1センサS1と第2センサS2との間のセンサ間距離LS12と同じ(またはセンサ間距離LS12よりも少しだけ長い)寸法となっている。これにより、第1媒体B1、第2媒体B2および第3媒体B3の媒体長LBの関係は、「媒体長LB2<媒体長LB3<媒体長LB1」である。
【0028】
第2センサS2は、第1位置に搬送される媒体Bの前端を検知する。例えば、第2センサS2は、媒体Bの前端が通過する前は「OFF状態(媒体なし)」を検知しており、媒体Bの前端が通過することにより「ON状態(媒体あり)」に切り替わる。第2センサS2は、検知結果(ON/OFF状態)を制御部20に送信し、制御部20は、第2センサS2の検知結果に基づいて媒体Bの前端位置を確定する。例えば、OFF状態からON状態へ切り替わるタイミングと、搬送用パルスモータ(図示せず)のパルス数とに基づいて媒体Bの前端位置を確定する。第1位置は、第2センサS2がON状態(媒体あり)を検知してから、媒体Bを停止させるまでの停止距離に対応した位置であってもよい。
【0029】
なお、制御部20は、媒体Bが第1位置に搬送される際には、第2センサS2のみを監視対象としており、第1センサS1を監視対象としていない。つまり、本実施形態で想定する媒体処理装置1は、センサS毎に独立したタスクを持たず、一つのメカ制御タスクで複数のセンサSを監視するというシンプルな制御を行うことを前提としている。そのため、第1位置への媒体Bの搬送に際して、第2媒体B2の後端が第1センサS1を通過したとしても、制御部20は、第2媒体B2の後端位置を確定しない。制御部20は、媒体Bが第1位置に搬送された後で、監視対象を第2センサS2から第1センサS1に変更する。
【0030】
図2(a)に示す第1媒体B1の場合、第1センサS1は、ON状態(媒体あり)を検知する。
図2(b)に示す第2媒体B2の場合、第1センサS1は、OFF状態(媒体なし)を検知する。
図2(c)に示す第3媒体B3の場合、第3媒体B3の後端が第1センサS1に重なることで、第1センサS1は、時間経過に伴ってON状態(媒体あり)とOFF状態(媒体なし)とを繰り返し検知する。つまり、ON状態(媒体あり)とOFF状態(媒体なし)とが切り替わる現象(ちらつき)が発生する。
【0031】
続いて、
図3に示すように、制御部20(
図1参照)は、ラインフィード(LF)して、第1位置から所定距離だけ装置奥側へ進んだ第2位置まで媒体Bを搬送する。第1位置から第2位置への搬送は、媒体長LBに関係なくすべての媒体Bで共通して実施される。
図3は、第2位置での媒体Bと第1センサS1および第2センサS2との位置関係を説明するためのイメージ図であり、(a)は第1媒体B1での位置関係を示しており、(b)は第2媒体B2での位置関係を示しており、(c)は第3媒体B3での位置関係を示している。
【0032】
これにより、
図3(c)に示す第3媒体B3では、後端が第1センサS1の装置奥側に位置することになり、ちらつきが解消する。そのため、制御部20は、第1センサS1からOFF状態(媒体なし)の信号を取得する。第1位置から第2位置までの距離は、第1センサS1でちらつきを解消できる程度の距離(例えば2~3mm)であってよい。
なお、
図3(a)に示す第1媒体B1では、第1センサS1はON状態のままである。また、
図3(b)に示す第2媒体B2では、第1センサS1はOFF状態のままである。
【0033】
続いての制御は、第2位置での第1センサS1の検知結果によって異なる。
図4および
図5を参照して、第2位置からの媒体Bの搬送について説明する。
図4および
図5は、第2位置からの制御を説明するための図であり、(a)は第1媒体B1での制御を示し、(b)は第2媒体B2での制御を示し、(c)は第3媒体B3での制御を示している。
【0034】
(第2位置で第1センサS1がOFF状態(媒体なし)の場合)
図4(b),(c)に示す第2媒体B2および第3媒体B3の場合、制御部20は、逆方向ラインフィード(BLF)して装置手前側へ搬送し、第1センサS1がON状態(媒体あり)となる第3位置まで搬送する。第3位置では、媒体Bの後端が第1センサS1をわずかに越えている(例えば、数mmだけ越えている)。第3位置は、第1センサS1がON状態(媒体あり)を検知してから、媒体Bを停止させるまでの停止距離に対応した位置であってもよい。これにより、第2位置での第1媒体B1(
図3(a)参照)と同様に、第1センサS1がON状態(媒体あり)となり、すべての媒体Bで同じ搬送制御が可能となる。
【0035】
(第2位置で第1センサS1がON状態(媒体あり)の場合)
図4(a)に示す第1媒体B1の場合、逆方向ラインフィード(BLF)して装置手前側へ搬送させない。言い換えれば、第1媒体B1の場合、第2媒体B2および第3媒体B3とは異なり搬送せずに第2位置で留まらせる(
図4(a)参照)。
【0036】
次に、
図5に示すように、制御部20は、第1センサS1がOFF状態(媒体なし)となるまで媒体Bをラインフィード(LF)して装置奥側へ搬送する。当該制御は、媒体長LBに関係なくすべての媒体Bで共通して実施される。第1センサS1は、検知結果(ON/OFF状態)を制御部20に送信し、制御部20は、第1センサS1の検知結果に基づいて媒体Bの後端位置を確定する。例えば、ON状態からOFF状態へ切り替わるタイミングと、搬送用パルスモータ(図示せず)のパルス数とに基づいて媒体Bの後端位置を確定する。
【0037】
そして、制御部20は、確定された前端位置および後端位置に基づいて、媒体Bの媒体長LBを算出する。例えば、「媒体長LB=前端位置-後端位置」によって媒体長LBを算出する。制御部20は、媒体長検出制御が終了した後で、媒体Bを装置奥側へ搬送し、印字ユニット3やオートターンページユニット4による処理を実施する。
【0038】
以上のように、第1実施形態では、挿入排出搬送路9bの第1位置から所定距離だけ装置奥側へ進んだ第2位置まで媒体Bを搬送し、第2位置での媒体Bを第1センサS1によって検知する。そのため、
図2(c)に示すように、第1位置で第3媒体B3の後端が第1センサS1に重なっていたとしても、第2位置ではその状態を解消できる。その結果、第3媒体B3を適切に処理することができる。
【0039】
なお、第1実施形態で媒体処理装置1として取り扱う媒体Bが予め決められている場合は、取り扱う媒体Bの媒体長LBを考慮して第2位置を設定することで、第1位置で媒体Bの後端が第1センサS1に重なっていなかったものが第2位置で重なったものとなることを防ぐことが可能である。なお、第1実施形態で第1位置から第2位置に所定距離だけ搬送したとき、第1媒体B1の後側が第1センサS1をちらつかせてしまう場合が考えられるが、その場合にはさらに所定距離だけ媒体B1を装置奥側へ搬送させ、ちらつきを解消させればよい。ちらつき解消後は、センサS1はOFF状態となっているため、第2位置においてセンサS1をOFF状態にしている媒体B2およびB3と同様の搬送を行えばよい。
【0040】
また、媒体処理装置の装置構成において当初想定していなかったサイズの媒体を新たに取り扱う状況が生じることがある。その際に、新たに取り扱う媒体の後端がセンサに重なることでちらつきが発生する場合は、媒体処理装置に第1の実施形態を適用することで装置の構成や制御を大幅に変更することなく媒体の搬送制御の一部を変更するのみで新たに取り扱う媒体のちらつきを解消することが可能である。
【0041】
[第2実施形態]
第1実施形態では、通帳挿入排出口6を介した通帳の取込みに着目して説明を行った(つまり、下側インサータ部2bでの取込み動作に着目して説明した)。第2実施形態では、伝票挿入排出口5を介した伝票の取込みに着目して説明を行う(つまり、上側インサータ部2aでの取込み動作を説明する)。
【0042】
(第2実施形態に係る媒体取込制御(「媒体長検出制御」を含む)に関して)
図6に示すように、制御部20(
図1参照)は、ラインフィード(LF)して、伝票挿入排出口5から挿入された媒体Bを、挿入排出搬送路9a上の第1位置まで搬送する。
図6は、第1位置での媒体Bと第3センサS3との位置関係を説明するためのイメージ図であり、(a)は第4媒体B4での位置関係を示しており、(b)は第5媒体B5での位置関係を示しており、(c)は第6媒体B6での位置関係を示している。第4媒体B4の媒体長LB4、第5媒体B5の媒体長LB5および第6媒体B6の媒体長LB6の関係は、第1実施形態での第1媒体B1の媒体長LB1、第2媒体B2の媒体長LB2および第3媒体B3の媒体長LB3の関係と同様である。つまり、「媒体長LB5<媒体長LB6<媒体長LB4」である。
【0043】
図6に示す第1位置は、媒体長LBを検出するための最初の位置であり、「クランプ位置」などと呼ばれることがある。
図6に示す第1位置では、媒体Bの前端が挿入排出搬送路9a,9bの合流部分を越えている。挿入排出搬送路9a,9bの合流部分(分岐部分)には、搬送経路を切り替えるためのブレードが設けられている。なお、
図6における第1位置は、あくまで例示であり、例えば、媒体Bの前端が挿入排出搬送路9a,9bの合流部分の装置手前側に位置していてもよい。
【0044】
第3センサS3は、第1位置に搬送される媒体Bの前端を検知する。例えば、第3センサS3は、媒体Bの前端が通過する前は「OFF状態(媒体なし)」を検知しており、媒体Bの前端が通過することにより「ON状態(媒体あり)」に切り替わる。第3センサS3は、検知結果(ON/OFF状態)を制御部20に送信し、制御部20は、第3センサS3の検知結果に基づいて媒体Bの前端位置を確定する。例えば、OFF状態からON状態へ切り替わるタイミングと、搬送用パルスモータ(図示せず)のパルス数とに基づいて媒体Bの前端位置を確定する。
【0045】
なお、制御部20は、媒体Bが第1位置に搬送される際には、第3センサS3による前端検知のみを監視対象としており、第3センサS3による後端検知を監視対象としていない。そのため、第1位置への媒体Bの搬送に際して、第2媒体B2の後端が第3センサS3を通過したとしても、制御部20は、第2媒体B2の後端位置を確定しない。制御部20は、媒体Bが第1位置に搬送された後で、第3センサS3による監視対象を後端検知に変更する。
【0046】
図6(a)に示す第4媒体B4の場合、第3センサS3は、ON状態(媒体あり)を検知する。
図6(b)に示す第5媒体B5の場合、第3センサS3は、OFF状態(媒体なし)を検知する。
図6(c)に示す第6媒体B6の場合、第6媒体B6の後端が第3センサS3に重なることで、第3センサS3は、時間経過に伴ってON状態(媒体あり)とOFF状態(媒体なし)とを繰り返し検知する。つまり、ON状態(媒体あり)とOFF状態(媒体なし)とが切り替わる現象(ちらつき)が発生する。
【0047】
続いて、
図7に示すように、制御部20(
図1参照)は、ラインフィード(LF)して、第1位置から所定距離だけ装置奥側へ進んだ第2位置まで媒体Bを搬送する。第1位置から第2位置への搬送は、媒体長LBに関係なくすべての媒体Bで共通して実施される。
図7は、第2位置での媒体Bと第3センサS3との位置関係を説明するためのイメージ図であり、(a)は第4媒体B4での位置関係を示しており、(b)は第5媒体B5での位置関係を示しており、(c)は第6媒体B6での位置関係を示している。
【0048】
これにより、
図7(c)に示す第6媒体B6では、後端が第3センサS3の装置奥側に位置することになり、ちらつきが解消する。そのため、制御部20は、第3センサS3からOFF状態(媒体なし)の信号を取得する。第1位置から第2位置までの距離は、第3センサS3でちらつきを解消できる程度の距離(例えば2~3mm)であってよい。
なお、
図7(a)に示す第4媒体B4では、第3センサS3はON状態のままである。また、
図7(b)に示す第5媒体B5では、第3センサS3はOFF状態のままである。
【0049】
以降の制御は、第1実施形態と同様である。つまり、第2位置での第3センサS3の検知結果によって制御が異なる。
(第2位置で第3センサS3がOFF状態(媒体なし)の場合)
第5媒体B5および第6媒体B6の場合、制御部20は、逆方向ラインフィード(BLF)して装置手前側へ搬送し、第3センサS3がON状態(媒体あり)となる第3位置まで搬送させたのちに装置奥側へ搬送する。
(第2位置で第3センサS3がON状態(媒体あり)の場合)
第4媒体B4の場合、装置手前側へ搬送させずに、第2位置から装置奥側へ搬送する。
【0050】
第3センサS3は、検知結果(ON/OFF状態)を制御部20に送信し、制御部20は、第3センサS3の検知結果に基づいて媒体Bの後端位置を確定する。例えば、ON状態からOFF状態へ切り替わるタイミングと、搬送用パルスモータ(図示せず)のパルス数とに基づいて媒体Bの後端位置を確定する。そして、制御部20は、確定された前端位置および後端位置に基づいて、媒体Bの媒体長LBを算出する。
【0051】
以上説明した第2実施形態によっても、第1実施形態と同等の効果を奏することができる。つまり、挿入排出搬送路9aの第1位置から所定距離だけ装置奥側へ進んだ第2位置まで媒体Bを搬送し、第2位置での媒体Bを第3センサS3によって検知する。そのため、
図6(c)に示すように、第1位置で第6媒体B6の後端が第3センサS3に重なっていたとしても、第2位置ではその状態を解消できる。その結果、第6媒体B6を適切に処理することができる。
【0052】
[変形例]
各実施形態では、媒体処理装置1として通帳伝票プリンタを想定して説明したが、通帳伝票プリンタに限らず媒体Bを処理する装置に本発明を適用可能である。
【0053】
また、各実施形態では、媒体長検出制御で後端位置を確定させる場合を想定して説明したが、媒体長検出制御に限らず媒体後端位置を確定させる必要のある制御に関して同様に本発明を適用可能である。
【0054】
各実施形態および上記した変形例では、挿入口と排出口とが一つになった構成(伝票挿入排出口5、通帳挿入排出口6)を想定して説明したが、挿入口と排出口とを別々に設ける装置に対しても本発明を適用可能である。つまり、伝票挿入排出口5および通帳挿入排出口6は、「挿入口」および「排出口」の一例である。
各実施形態では、上側インサータ部2aが伝票を受け入れるための構成とし、下側インサータ部2bは、通帳を受け入れるための構成としたが、これに限らず、例えば、上側インサータ部2aが通帳を受け入れる構成とし、下側インサータ部2bが伝票を受け入れるための構成としても良い。また、上下のインサータ部に挿入される媒体は通帳と伝票に限らず、その他の媒体が挿入されても良い。
【符号の説明】
【0055】
1 媒体処理装置
1a 筐体
2 インサータユニット
2a 上側インサータ部
2b 下側インサータ部
3 印字ユニット
4 オートターンページユニット
5 伝票挿入排出口(挿入口、排出口)
6 通帳挿入排出口(挿入口、排出口)
7 読取部
8 印字ヘッド
9 搬送路
9a 挿入排出搬送路(挿入搬送路、排出搬送路)
9b 挿入排出搬送路(挿入搬送路、排出搬送路)
10 搬送フィードローラ
11 搬送プレッシャローラ
12 ガイド部
20 制御部
S センサ
B 媒体