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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176943
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】車載スマート制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 11/02 20060101AFI20241212BHJP
   G06F 3/01 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B60R11/02 W
G06F3/01 510
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095839
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】河原 悠
(72)【発明者】
【氏名】近藤 義徳
【テーマコード(参考)】
3D020
5E555
【Fターム(参考)】
3D020BA06
3D020BA09
3D020BB01
3D020BD05
3D020BE03
5E555AA74
5E555BA23
5E555BB06
5E555BC02
5E555BC13
5E555BD07
5E555CC01
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】車両の安全な運転状態を維持しつつ、携帯端末の利用による各種車両装備の操作を可能にすること。
【解決手段】車両装備の操作要求を所望の携帯端末40からの入力について受付可能な要求入力部11と、車両側の所定のセンサ35~38から車両の走行環境に関するデータを取得可能な環境データ入力部12と、所望の車両装備を制御可能な機器制御部13と、前記要求入力部に入力された操作要求について車両装備操作の実行可否を判定する操作判定部14とを備え、前記操作判定部は取得した車両の走行環境に基づいて操作の実行可否を判定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両装備に対する操作要求を携帯端末からの入力について受付可能な要求入力部と、
車両側の所定のセンサから車両の走行環境に関するデータを取得可能な環境データ入力部と、
所望の車両装備を制御可能な機器制御部と、
前記要求入力部に入力された操作要求について、車両装備操作の実行可否を判定する操作判定部と、を備え、
前記操作判定部は、前記環境データ入力部が取得した車両の走行環境に基づいて操作の実行可否を判定する、
車載スマート制御装置。
【請求項2】
前記操作判定部は、前記環境データ入力部が取得した車両の走行環境のデータに基づき自車両の走行速度を把握し、走行速度の違いを含む条件で判定を実施する、
請求項1に記載の車載スマート制御装置。
【請求項3】
複数種類の車両装備のそれぞれと、操作要求の種類と、車両の走行環境のシーンを特定するための条件との関係を表す事前に定めたデータを保持する判定テーブルを有する、
請求項1に記載の車載スマート制御装置。
【請求項4】
前記操作判定部は、前記環境データ入力部が取得した車両の走行環境のデータに基づき自車両の走行環境のシーン毎に危険度の高低を把握し、危険度の高低に従って操作の実行可否を判定する、
請求項1に記載の車載スマート制御装置。
【請求項5】
前記環境データ入力部は自車両の走行速度、降雨状況、環境の照度、及びタイヤの空気圧のうち少なくとも2つのデータを取得し、
前記操作判定部は、前記環境データ入力部が取得した複数の走行環境のデータに基づいて車両の走行環境のシーンを特定し、シーンに応じて判定を実施する、
請求項1に記載の車載スマート制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載スマート制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、車両上で例えばスマートフォンのようなスマートデバイスを運転者やその他の乗員が利用する機会が増えている。また、車両上でスマートデバイスを便利に利用するための様々な技術開発も進められている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されている車両アクセス制限装置は、携帯通信端末(1)からの操作指示に基づき、車両装備品(テールゲート、ドアロック機構、ヘッドランプ、及び、ハザードランプ)を作動制御する車両装備品制御部(17)と、車両装備品制御部(17)に対し、前記車両装備品に対する作動制御を禁止する禁止指令を行うことを可能とする車両装備品作動禁止指令部(16)とを備えている。この構成により、車両アクセス制限装置は、悪意あるハッカー等からの不正アクセスを抑制し、車両(2)への影響を低減させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2019/188748号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術を利用すれば、第三者からの不正アクセスによる操作指示に対して、車両装備品が作動するのを制限可能になる。しかし、自車両の運転者など正規のユーザが携帯通信端末から操作指示を出した場合には、車両装備品の作動を制限できない。
【0006】
したがって、例えばテールゲート、ドアロック機構、ヘッドランプ、ハザードランプなど、特定の車両装備品に対して操作することが危険な車両の運転状況であったり、運転者等の正規ユーザが意図していない入力操作を携帯通信端末が誤って検知したような場合であっても、車両装備品が作動してしまう可能性がある。そのため、自車両の乗員が車両上で、又はその近傍で携帯通信端末を利用する場合には、車両の安全な運転状態に悪影響を及ぼす可能性が懸念される。一方、乗員の利便性の観点からは、車両上で、又はその近傍でスマートフォンのような携帯通信端末を利用して各種車両装備を操作可能にすることは望ましいことである。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両の安全な運転状態を維持しつつ、携帯端末の利用による各種車両装備の操作を可能にする車載スマート制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
【0009】
車両装備に対する操作要求を携帯端末からの入力について受付可能な要求入力部と、
車両側の所定のセンサから車両の走行環境に関するデータを取得可能な環境データ入力部と、
所望の車両装備を制御可能な機器制御部と、
前記要求入力部に入力された操作要求について、車両装備操作の実行可否を判定する操作判定部と、を備え、
前記操作判定部は、前記環境データ入力部が取得した車両の走行環境に基づいて操作の実行可否を判定する、
車載スマート制御装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明の車載スマート制御装置によれば、車両の安全な運転状態を維持しつつ、携帯端末の利用による各種車両装備の操作が可能になる。
【0011】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施形態の車載スマート制御装置を含む車載システムの構成を示すブロック図である。
図2図2は、スマート制御ユニットの主要な機能を示すブロック図である。
図3図3は、制御条件テーブルの構成例を示す模式図である。
図4図4は、スマート制御ユニットの動作例を示すフローチャートである。
図5図5は、スマート制御ユニットの別の構成1を示すブロック図である。
図6図6は、スマート制御ユニットの別の構成2を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態の車載スマート制御装置を含む車載システム100の構成を示すブロック図である。図1中のスマート制御ユニット10が本実施形態における車載スマート制御装置に相当する。
【0015】
図1に示した車載システム100は、スマート制御ユニット10、制御条件テーブル20、補機系ECU31、近距離通信ユニット32、車速センサ35、雨滴センサ36、照度センサ37、空気圧センサ38、及び多数の車両装備33を備え、車両上に搭載された状態で使用される。
【0016】
車両装備33は、ヘッドランプ33a、ブレーキランプ33b、ターンシグナル回路33c、ワイパー33d、デフロスター33e、ホーン33f、ドアロック33g等を含んでいる。これらの車両装備33は、様々な種類の車両に一般的に備わっている機器であり、それぞれの車両に標準的に備わっている固有のスイッチなどを運転者等の乗員が操作することで各機能のオンオフなどの操作を行うことができる。
【0017】
一方、図1に示したスマート制御ユニット10は、運転者やその他の乗員が用意したスマートフォン40などのスマートデバイス(携帯端末)を利用した正規ユーザの操作入力に従って、各車両装備33を安全を確保した状態で制御するためのスマート制御機能を備えている。
【0018】
スマート制御ユニット10は、マイクロコンピュータなどの制御要素を主体とする電子回路により構成され、予め用意された所定のプログラムを読み込んで実行することで、スマート制御ユニット10に必要とされる様々な機能を実現する。
【0019】
制御条件テーブル20は、スマート制御ユニット10のマイクロコンピュータが正しい判断をするために必要な予め決定された制御条件のデータを保持している。制御条件テーブル20のデータは、例えば不揮発性メモリ上に保持されている。制御条件テーブル20の具体例については後で説明する。
【0020】
補機系ECU(電子制御ユニット)31は、スマート制御ユニット10からの指示に従い、又は車両上の固有のスイッチ(図示せず)からの指示に従い、下流側に接続されている各車両装備33のオンオフ等を制御する。なお、補機系ECU31を省略し、各車両装備33をスマート制御ユニット10で直接制御してもよい。
【0021】
近距離通信ユニット32は、例えばBluetooth(登録商標)のような標準的な無線通信規格に対応した通信システムを利用して比較的近距離の通信を可能にする通信モジュールであり、自車両上又はその近傍に配置されたスマートフォン40と、自車両上のスマート制御ユニット10との間で非接触で通信するための機能を提供する。
【0022】
なお、近距離通信の手段として、電波以外の通信手段も利用可能である。例えば、QRコード(登録商標)を表示するディスプレイと、表示されたQRコードを読み取り可能なカメラとを組み合わせて光学的に通信を行うこともできる。
【0023】
車速センサ35は、車両に標準的に備わっている速度センサであり、例えば変速機の出力軸が一定量回転する毎に1つのパルス信号を出力することができる。したがって、このパルス信号のパルス数を監視することで自車両の走行速度(km/h)を把握できる。
【0024】
雨滴センサ36は、自車両の窓ガラスに付着した雨滴の状況を表す信号を出力できる。例えば、ウインドシールドの車室内側に設置した反射型光学センサ、あるいはカメラを用いてガラス面に付着した水滴の状況を検出することで、降雨状況や運転者の視界に悪影響を及ぼす環境の状況を推定可能になる。
【0025】
照度センサ37は、例えばウインドシールドの近傍に配置され、環境照度の明るさを表す信号を出力できる。照度センサ37が検出した信号を利用することで、昼夜の環境の違いを把握したり、トンネル内への侵入や脱出などに起因する照度変化を把握することが可能になる。
空気圧センサ38は、自車両の各車輪における空気圧が正常か否かを表す信号を出力できる。
【0026】
スマート制御ユニット10は、各車両装備33に対する操作指示がスマートフォン40から入力された場合に、車速センサ35、雨滴センサ36、照度センサ37、及び空気圧センサ38を利用して自車両の走行環境の状況を把握すると共に、制御条件テーブル20に登録されている制御条件に従い、操作の可否などを判定する。これにより、自車両の安全を確保しつつスマートフォン40を利用した利便性の高い操作も可能になる。詳細については後述する。
【0027】
図2は、スマート制御ユニット10の主要な機能を示すブロック図である。
図2に示すように、スマート制御ユニット10は、スマートデバイス連携部11、センサデータ取得部12、車両装備操作部13、及び安全判断部14を備えている。また、スマートフォン40は、当該スマートフォン40の画面操作やセンサ入力に基づき、各車両装備33に対する操作指示の要求を発生する操作要求発生部41を備えている。
【0028】
スマートデバイス連携部11は、正規ユーザのスマートフォン40などの携帯端末とスマート制御ユニット10との間の連携ができるように通信の制御を実施する。例えば、運転者などが所有している特定のスマートフォン40と、この運転者が所有している車両上のスマート制御ユニット10との間で通信のペアリングなどの操作を事前に行い、通信の暗号化で使用する鍵などのデータの受け渡しを行って、連携が可能なスマートフォン40を正規の端末のみに制限する。また、スマートデバイス連携部11は、スマートフォン40の操作要求発生部41から、各車両装備33に対する操作指示の要求を取得する。
【0029】
センサデータ取得部12は、車速センサ35、雨滴センサ36、照度センサ37、空気圧センサ38等から最新の走行環境を表すデータを例えば定期的に取得して安全判断部14に渡す。
【0030】
車両装備操作部13は、安全判断部14からの操作指示に従い、操作対象の各車両装備33を操作するための信号を車両装備33に出力する。
安全判断部14は、各車両装備33に対する操作指示の要求がスマートフォン40から入力された場合に、車速センサ35、雨滴センサ36、照度センサ37、空気圧センサ38等の出力から把握した自車両の走行環境の状況と、制御条件テーブル20の各制御条件とに基づいて操作の可否などを判定する。
【0031】
図3は、制御条件テーブル20の構成例を示す模式図である。
図3に示した制御条件テーブル20は、制御対象項目21、操作要求種別22、制御可否項目23、シーン判定条件24、及び危険度項目25のそれぞれのデータを互いに関連付けた状態で保持している。
【0032】
図3の例では、制御対象項目21に示したようにヘッドランプ、ブレーキランプ、ターンシグナル回路、ワイパー、ウオッシャー、デフロスター、ホーン、ドアロック、室内灯、メータ、ブレーキ、モータ、及びバッテリの各車両装備に対応付けたデータがそれぞれ事前に登録されている。
【0033】
また、複数種類の操作要求を受付可能な各車両装備については、複数の操作要求区分が以下のように操作要求種別22の項目に登録されている。
・ヘッドランプをオフ(OFF)にする操作要求
・ヘッドランプをオン(ON)にする操作要求
・ワイパーをオフにする操作要求
・ワイパーをオンにする操作要求
・デフロスターをオフにする操作要求
・デフロスターをオンにする操作要求
・ドアロックを開にする操作要求
・ドアロックを閉にする操作要求
・室内灯をオフにする操作要求
・室内灯をオンにする操作要求
なお、車両装備のモータに対する操作要求は、トルク特性の切り替えを指示するための要求である。
【0034】
制御条件テーブル20の制御可否項目23は、スマートフォン40からの操作を許容可能か否かに相当する「○」又は「×」を表す事前に決定されたデータを保持している。
制御条件テーブル20のシーン判定条件24は、走行条件24a、降雨状況24b、環境照度状況24c、及びタイヤ空気圧状況24dの4つの項目に区分されたデータを保持している。
【0035】
走行条件24aのデータは、車速センサ35により検出された自車両の走行車速(km/h)や進行方向について、操作の危険の有無を状況判断するために利用可能なデータである。
【0036】
降雨状況24bのデータは、雨滴センサ36により検出された自車両の走行環境における降雨の有無、すなわち「雨」や「晴れ」の気象条件を状況判断するために利用可能なデータである。
【0037】
環境照度状況24cのデータは、照度センサ37により検出された自車両の走行環境における環境照度の明るさ、すなわち「明るい」、「暗い」などを状況判断するために利用可能なデータである。
【0038】
タイヤ空気圧状況24dのデータは、空気圧センサ38により検出された自車両の各車輪の空気圧が適正か否かを状況判断するために利用可能なデータである。
制御条件テーブル20の危険度項目25は、シーン判定条件24の走行条件24a、降雨状況24b、環境照度状況24c、及びタイヤ空気圧状況24dの1つ又は全ての条件を満たすシーンにおけるスマートフォン40からの操作の危険度の高、低などを表す事前に定めたデータを保持している。
【0039】
例えば、スマートフォン40の操作対象の車両装備が「ヘッドランプ」、操作要求種別22が「OFF」、現在の走行車速が5km/h以上、且つ環境照度状況24cの「暗い」の条件を満たす場合には、危険度が高いシーンであることが制御条件テーブル20の危険度項目25のデータから判明する。
【0040】
また、例えばスマートフォン40の操作対象の車両装備が「ワイパー」、操作要求種別22が「OFF」、且つ現在の雨滴センサ36の出力が降雨状況24bの「雨」の条件を満たす場合には、危険度が高いシーンであることが制御条件テーブル20の危険度項目25のデータから判明する。
【0041】
図4は、スマート制御ユニット10の動作例を示すフローチャートである。図4に示した動作について以下に説明する。
【0042】
なお、車載システム100に接続された車両装備を操作可能な正規のスマートフォン40は、車載システム100と連携するために用意された専用のアプリケーションソフトウェア(アプリ)を事前に組み込んである。また、スマートフォン40上で前記アプリを起動した状態で、スマートフォン40と車載システム100とが安全に通信できるように事前に所定のペアリングを行ってある。したがって、車載システム100の近傍でスマートフォン40を操作する乗員は、前記アプリの画面を見ながら車載システム100と連携した入力操作を行うことができる。
【0043】
乗員がスマートフォン40を操作して、所望の車両装備の操作要求を発生すると、この操作要求が近距離通信ユニット32を介してスマート制御ユニット10に入力される(S11)。
【0044】
スマート制御ユニット10は、S11で受領した操作要求について、操作対象が制御可能な機器に該当するか否かをS12で識別する。具体的には、制御条件テーブル20の制御可否項目23において、該当する操作対象機器が制御可能であることを表す「○」のデータが登録されている場合は、制御可能な機器とみなして次のS13の処理に進む。該当する操作対象機器が制御不可能であることを表す「×」のデータが登録されている場合は、制御不可能な機器とみなしてS20に進み、当該要求を却下する。
【0045】
スマート制御ユニット10は、車速センサ35、雨滴センサ36、照度センサ37、及び空気圧センサ38からS13で最新の情報を取得し、走行状況、降雨状況、環境照度、タイヤ空気圧などの現在の状態を正しく把握する。
【0046】
スマート制御ユニット10は、S13で取得した現在の状態の情報と、制御条件テーブル20上のシーン判定条件24の走行条件24a、降雨状況24b、環境照度状況24c、及びタイヤ空気圧状況24dとをS14で比較して、該当する操作が危険なシーンと一致するか否かを識別する。一致を検知した場合は次のS15に進み、一致しない場合はS19に進む。
【0047】
スマート制御ユニット10は、S14で一致を検知したシーンについて、制御条件テーブル20の危険度項目25のデータをS15で参照して危険度の高低を把握する。そして、危険度が「低」の場合はS16に進む。危険度が「高」の場合はS20に進み、該当する要求を却下する。
【0048】
スマート制御ユニット10は、要求元のスマートフォン40に対して、そのユーザ(乗員)の操作意思についての確認要求をS16で送信する。
一方、スマートフォン40上のアプリは、スマート制御ユニット10からの確認要求を受信すると、確認要求があったことを画面上でユーザに通知して、車両装備の操作を行うことの確認入力を求める。そして、画面上のボタン操作などによりユーザの確認入力を受け付けると、スマートフォン40上のアプリは、その確認の回答を示す情報をスマート制御ユニット10へ送信する。
【0049】
スマート制御ユニット10は、要求元のスマートフォン40から確認の回答をS17で受領すると、その回答が「操作OK」であるか否かを次のS18で識別する。スマート制御ユニット10は、「操作OK」の回答を検知した場合はS19に進み、スマートフォン40のユーザから操作を指示された特定の車両装備の操作(オンオフ等)を実行する。「操作OK」以外の回答を検知した場合は、スマート制御ユニット10はS18からS20に進み、該当する車両装備に対する操作要求を却下する。
【0050】
以上のように、本実施形態のスマート制御ユニット10を利用することにより、自車両の運転者やその他の乗員は、スマートフォン40のようなスマートデバイスを利用して、ヘッドランプ33a、ブレーキランプ33b、ターンシグナル回路33c、ワイパー33d、デフロスター33e、・・・のような車両装備33を必要に応じて操作できる。しかも、図4に示した動作のように自車両の走行状態などの環境が危険度の低い状況である場合のみスマート制御ユニット10が操作を許可するので、安全の確保が容易になる。
【0051】
また、図4に示した動作のようにスマート制御ユニット10がスマートフォン40からの操作要求を受信した場合に、操作者の確認を要求し(S16)、操作者からの回答を受け取って(S17)、操作者に操作の意図があることを確認できた(S18)場合のみ車両装備33の操作を実行するので、信頼度の高い制御が実現する。例えば、スマートフォン40のユーザが意図していない入力操作を車両装備33の操作要求とみなす誤検知がスマートフォン40側で発生した場合に、その操作要求をスマート制御ユニット10がS20で却下できる。
【0052】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0053】
例えば、スマート制御ユニットは、一例として、以下の図5図6のような構成になっていてもよい。なお、上述した実施形態と同一の構成要素については説明を省略する。
図5は、スマート制御ユニットの別の構成1を示すブロック図である。この構成においては、各車両装備33に対する操作指示の要求を発生する操作要求発生部41は、スマートフォン40の代わりに、スマート制御ユニット10に備えられている。スマート制御ユニット10の操作要求発生部41は、スマートデバイス連携部11を介して、スマートフォン40から画面操作やセンサ入力に応じたデータを取得し、各車両装備33に対する操作指示の要求を発生する。
【0054】
図6は、スマート制御ユニットの別の構成2を示すブロック図である。この構成においては、安全判断部14は、スマート制御ユニット10の代わりに、スマートフォン40に備えられている。安全判断部14は、操作要求発生部41から、各車両装備33に対する操作指示の要求を取得すると、該当する操作が危険なシーンと一致しない場合や、図4に示すS18において「操作OK」の場合には、スマート制御ユニット10のスマートデバイス連携部11に操作指示の要求を渡す。
【0055】
ここで、上述した本発明の実施形態に係る車載スマート制御装置の特徴をそれぞれ以下[1]~[5]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 車両装備(33)に対する操作要求を所望の携帯端末(スマートフォン40)からの入力について受付可能な要求入力部(スマートデバイス連携部11)と、
車両側の所定のセンサ(車速センサ35、雨滴センサ36、照度センサ37、空気圧センサ38)から車両の走行環境に関するデータを取得可能な環境データ入力部(センサデータ取得部12)と、
所望の車両装備を制御可能な機器制御部(車両装備操作部13)と、
前記要求入力部に入力された操作要求について、車両装備操作の実行可否を判定する操作判定部(安全判断部14)と、
を備え、前記操作判定部は前記環境データ入力部が取得した車両の走行環境に基づいて操作の実行可否を判定する、
車載スマート制御装置(スマート制御ユニット10)。
【0056】
上記[1]の構成の車載スマート制御装置によれば、自車両の実際の走行環境において危険度が低いと予想される状況でのみ携帯端末からの操作を許可できる。したがって、車両の安全を確保しつつ利便性の高い操作が可能になる。
【0057】
[2] 前記操作判定部は、前記環境データ入力部が取得した車両の走行環境のデータに基づき自車両の走行速度を把握し、走行速度の違いを含む条件で判定を実施する、
上記[1]に記載の車載スマート制御装置。
【0058】
上記[2]の構成の車載スマート制御装置によれば、操作判定部が自車両の走行速度の違いを反映するように判定を実施するので、車両における危険度の高低を考慮して適切な判定を行うことが容易になる。
【0059】
[3] 複数種類の車両装備のそれぞれと、操作要求の種類と、車両の走行環境のシーンを特定するための条件との関係を表す事前に定めたデータを保持する判定テーブル(制御条件テーブル20)を有する、
上記[1]又は[2]に記載の車載スマート制御装置。
【0060】
上記[3]の構成の車載スマート制御装置によれば、様々な種類の車両装備のそれぞれ固有の特性を考慮して、検出すべき危険なシーンの条件を個別に決めることができる。これにより、精度が高く信頼性の高い制御が容易に実現する。
【0061】
[4] 前記操作判定部は、前記環境データ入力部が取得した車両の走行環境のデータに基づき自車両の走行環境のシーン毎に危険度の高低を把握し、危険度の高低に従って操作の実行可否を判定する(S14、S15)、
上記[1]から[3]のいずれかに記載の車載スマート制御装置。
【0062】
上記[4]の構成の車載スマート制御装置によれば、自車両の様々な走行環境のシーンについて個別に危険度の高低を把握できるので、精度が高く信頼性の高い制御が容易に実現する。
【0063】
[5] 前記環境データ入力部は自車両の走行速度、降雨状況、環境の照度、及びタイヤの空気圧のうち少なくとも2つのデータを取得し(S13)、
前記操作判定部は、前記環境データ入力部が取得した複数の走行環境のデータに基づいて車両の走行環境のシーンを特定し、シーンに応じて判定を実施する(S14)、
上記[1]から[5]のいずれかに記載の車載スマート制御装置。
【0064】
上記[5]の構成の車載スマート制御装置によれば、例えばほぼ停車状態、通常の走行状態、降雨中の走行状態、夜間の走行状態など自車両の様々な走行環境のシーンについて個別に危険度の高低を把握できるので、精度が高く信頼性の高い制御が容易に実現する。
【符号の説明】
【0065】
10 スマート制御ユニット
11 スマートデバイス連携部
12 センサデータ取得部
13 車両装備操作部
14 安全判断部
20 制御条件テーブル
21 制御対象項目
22 操作要求種別
23 制御可否項目
24 シーン判定条件
24a 走行条件
24b 降雨状況
24c 環境照度状況
24d タイヤ空気圧状況
25 危険度項目
31 補機系ECU
32 近距離通信ユニット
33 車両装備
33a ヘッドランプ
33b ブレーキランプ
33c ターンシグナル回路
33d ワイパー
33e デフロスター
33f ホーン
33g ドアロック
35 車速センサ
36 雨滴センサ
37 照度センサ
38 空気圧センサ
40 スマートフォン
41 操作要求発生部
100 車載システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6