(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176945
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】血中成分濃度検出装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/1455 20060101AFI20241212BHJP
B60K 28/06 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
A61B5/1455
B60K28/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095843
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】磯部 直希
【テーマコード(参考)】
3D037
4C038
【Fターム(参考)】
3D037FA03
3D037FB14
4C038KK00
4C038KK04
4C038KL05
4C038KL07
4C038KM01
4C038KX01
4C038KY10
(57)【要約】
【課題】血中の所定の成分の濃度を高精度で検出する血中成分濃度検出装置を提供する。
【解決手段】血中成分濃度検出装置1は、対象者の測定対象部位Fの血中の所定の成分の濃度を検出する装置であり、検出位置Sにある測定対象部位Fの所定の血管の位置を検出する血管位置検出機構10と、検出位置Sにある測定対象部位Fの所定の血管内の血液中の所定の成分の濃度を検出する血中成分濃度検出機構20と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の測定対象部位の血中の所定の成分の濃度を検出する装置であって、
検出位置にある前記測定対象部位の所定の血管の位置を検出する血管位置検出機構と、
前記検出位置にある前記測定対象部位の前記所定の血管内の血液中の前記所定の成分の濃度を検出する血中成分濃度検出機構と、を備える、
血中成分濃度検出装置。
【請求項2】
前記血管位置検出機構及び前記血中成分濃度検出機構を移動させる移動機構を備える、
請求項1に記載の血中成分濃度検出装置。
【請求項3】
前記血管位置検出機構を移動させて前記所定の血管の位置を特定し、当該特定した血管の位置に前記血中成分濃度検出機構を移動させるように、前記移動機構を制御する制御装置を備える、
請求項2に記載の血中成分濃度検出装置。
【請求項4】
前記血管位置検出機構は、所定の波長の光を発する発光装置と、前記発光装置が発した光を前記測定対象部位に当てて吸収又は反射した光の強度を測定する受光装置と、を有する、
請求項1に記載の血中成分濃度検出装置。
【請求項5】
前記発光装置が発する光が緑色の光である、
請求項4に記載の血中成分濃度検出装置。
【請求項6】
前記受光装置が測定した前記光の強度が、閾値を含む所定の範囲にある場合の位置を、前記所定の血管の位置と特定する、
請求項4又は請求項5に記載の血中成分濃度検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、血液中の所定の成分の濃度を検出する血中成分濃度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
飲酒運転防止のために、運転者の飲酒状態を検出し、検出した飲酒状態が所定基準以上の場合に車両のエンジンの始動を禁止する技術が知られている。飲酒状態を検出するものとして、異なる波長の2つの光を指先に照射する発光素子群と、指先に照射されて生体組織で反射し散乱した光の一部を受光して脈波を検出する受光素子とを備え、脈波に基づいて血中アルコール濃度の指標を算出するものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の検出装置は、指の先端が置かれることが想定される位置の下に受光素子が、それよりも指の根本の側に発光素子群が、それぞれ筐体の内部に固定配置されている。そのため、検出対象者の指の長さや太さによっては、あるいは筐体に対する指の置き方(例えば斜めに置かれた場合)によっては、血中アルコール濃度の指標を算出する基となる脈波を正確に検出できないおそれがある。
【0005】
本開示は上述の課題に鑑み、血中の所定の成分の濃度を高精度で検出することができる血中成分濃度検出装置を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様に係る血中成分濃度検出装置は、対象者の測定対象部位の血中の所定の成分の濃度を検出する装置であって、検出位置にある前記測定対象部位の所定の血管の位置を検出する血管位置検出機構と、前記検出位置にある前記測定対象部位の前記所定の血管内の血液中の前記所定の成分の濃度を検出する血中成分濃度検出機構と、を備える。ここで、所定の血管は、典型的には、所定の成分の濃度を検出しやすい血管である。
【0007】
上記本開示の第1の態様に係る血中成分濃度検出装置によれば、所定の成分の濃度を検出しやすい血管の位置を把握することができ、血中の所定の成分の濃度の検出精度を向上させることができる。
【0008】
また、本開示の第2の態様に係る血中成分濃度検出装置は、上記本開示の第1の態様に係る血中成分濃度検出装置において、前記血管位置検出機構及び前記血中成分濃度検出機構を移動させる移動機構を備える。
【0009】
上記本開示の第2の態様に係る血中成分濃度検出装置によれば、所定の血管を求めて血管位置検出機構を移動させることができると共に、所定の血管の位置又はその近傍に血中成分濃度検出機構を移動させることが可能になる。
【0010】
また、本開示の第3の態様に係る血中成分濃度検出装置は、上記本開示の第2の態様に係る血中成分濃度検出装置において、前記血管位置検出機構を移動させて前記所定の血管の位置を特定し、当該特定した血管の位置に前記血中成分濃度検出機構を移動させるように、前記移動機構を制御する制御装置を備える。
【0011】
上記本開示の第3の態様に係る血中成分濃度検出装置によれば、血管位置検出機構を移動させることにより測定対象部位中の所定の血管を探索したうえで、特定した所定の血管の位置に血中成分濃度検出機構を移動させて所定の血管内の血中の所定の成分の濃度を検出することができる。
【0012】
また、本開示の第4の態様に係る血中成分濃度検出装置は、上記本開示の第1の態様乃至第3の態様のいずれか1つの態様に係る血中成分濃度検出装置において、前記血管位置検出機構は、所定の波長の光を発する発光装置と、前記発光装置が発した光を前記測定対象部位に当てて吸収又は反射した光の強度を測定する受光装置と、を有する。ここで、所定の波長の光は、典型的には、血液に吸収されやすい波長の光である。
【0013】
上記本開示の第4の態様に係る血中成分濃度検出装置によれば、受光装置が受光した光の強度を測定することで、血液流量が多い血管を特定することが可能になる。
【0014】
また、本開示の第5の態様に係る血中成分濃度検出装置は、上記本開示の第4の態様に係る血中成分濃度検出装置において、前記発光装置が発する光が緑色の光である。
【0015】
上記本開示の第5の態様に係る血中成分濃度検出装置によれば、発光装置が、血液中に比較的多く含まれるヘモグロビンに吸収されやすい光を発することができる。
【0016】
また、本開示の第6の態様に係る血中成分濃度検出装置は、上記本開示の第4の態様又は第5の態様に係る血中成分濃度検出装置において、前記受光装置が測定した前記光の強度が、閾値を含む所定の範囲にある場合の位置を、前記所定の血管の位置と特定する。
【0017】
上記本開示の第6の態様に係る血中成分濃度検出装置によれば、所定の血管の位置を簡便に特定することができる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、所定の成分の濃度を検出しやすい血管の位置を把握することができ、血中の所定の成分の濃度の検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】(A)は一実施の形態に係る血中成分濃度検出装置の使用態様を示す概略図、(B)は当該血中成分濃度検出装置の概略構成図である。
【
図2】一実施の形態に係る血中成分濃度検出装置が備える第1光センサにおける吸光度を例示するグラフである。
【
図3】一実施の形態に係る血中成分濃度検出装置が備える制御装置のハードウェア構成のブロック図である。
【
図4】一実施の形態に係る血中成分濃度検出装置の動作手順を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0021】
まず
図1(A)及び
図1(B)を参照して、一実施の形態に係る血中成分濃度検出装置1(以下、単に「検出装置1という。」)を説明する。
図1(A)は検出装置1の使用態様を示す概略図、
図1(B)は検出装置1の概略構成図である。検出装置1は、本実施の形態では、自動車に実装され、自動車の運転者が運転を開始する前に、運転者の指Fの血液中のアルコール濃度(所定の成分の濃度に相当)を検出する装置であるとして説明する。したがって、本実施の形態では、運転者が対象者に相当し、その運転者の指Fが測定対象部位に相当する。なお、本実施の形態では、検出装置1が自動車のエンジンのスタートボタンを兼ねている。
【0022】
検出装置1は、
図1(A)に示すように指Fを検出位置Sに合わせることで、指Fの血液中のアルコール濃度を検出することができるようになっている。検出位置Sは、指Fの血中アルコール濃度を検出するために指Fが合わせられるべき範囲を示すものであり、典型的には、指Fの第1関節(DIP関節)と指先との間の部分(指紋がある部分)を包含する大きさに形成されている。検出位置Sは、境界(外縁)が、本実施の形態では円形になっているが、四角形や六角形等の多角形、又は楕円等、円形以外の形状であってもよい。検出位置Sの区画は、典型的には、平坦な板状で光を透過させる材料によって形成されている。検出位置Sは、典型的には自動車のステアリングシャフトの脇のダッシュボードの部分に設けられるが、自動車のステアリングホイールの裏面等に設けられていてもよい。検出位置Sには、本実施の形態では、静電スイッチや感圧スイッチ等の、指Fが検出位置Sに合わせられたことを検出することができる測定対象部位検出器(不図示)が設けられている。検出装置1は、
図1(B)に示すように、第1光センサ10と、第2光センサ20と、移動機構30と、制御装置50とを備えている。
【0023】
第1光センサ10は、検出位置Sにある運転者の指Fの所定の血管の位置を検出するものであり、血管位置検出機構に相当する。所定の血管は、典型的には、血中アルコール濃度(所定の成分の濃度)を検出しやすい血管であり、例えば比較的太い血管が該当し得る。ここで、手の甲の側を「上」、手のひらの側を「下」とすると、指Fは、一般に、骨の下にある屈筋腱の両側に比較的太い血管が通っていることが知られており、この屈筋腱の両側にある比較的太い血管が所定の血管に該当し得る。なお、静脈は動脈よりも表皮に近い位置に存在することが多いため、第1光センサ10が検出する所定の血管は静脈であることが好ましい。また、静脈は血液中の酸素飽和度が低いため、比較的濃い赤色を反射し、動脈は酸素飽和度が高いため、赤色の反射が比較的薄くなる。第1光センサ10は、典型的には分光センサを適用することができる。第1光センサ10は、光源11と、検出器13とを有している。
【0024】
光源11は、ヘモグロビンに吸収されやすい波長の光を発するものにすることができる。第1光センサ10が検出する所定の血管として静脈を意図する場合、光源11は、還元ヘモグロビンに吸収されやすい波長の光を発するものにするとよい。光源11は、本実施の形態では、波長が概ね490nm~550nm、好ましくは520nm~530nmの光を含む光を発するLED等の発光素子を含むことができる。例示した波長の光は、緑色の光であり、ヘモグロビンに吸収されやすい。光源11は、ヘモグロビンに吸収されやすい波長という所定の波長の光を発するものであり、発光装置に相当する。光源11は、発光素子から発せられた光を所望の波長の光に分けることができる、回折格子やプリズム等で構成された分光部を有していてもよい。
【0025】
検出器13は、本実施の形態では、光源11が発した光のうち、指Fで反射した光を受け、受けた光の強度を測定するものであり、受光装置に相当する。検出器13は、光を受けるフォトダイオード等の受光素子を含むことができる。光源11から発せられて検出器13が受ける光は、前述のようにヘモグロビンに吸収されやすい波長の光であるので、反射する指Fの血中のヘモグロビンの量が多いほど検出器13が受ける光量が少なくなる。ヘモグロビンの量は血液量に比例するため、検出器13の受光量によって、血液量(血流量)の大小の位置を推定することができる。検出器13の受光量は、光源11の発光量に対する比で表されてもよい。検出器13は、受けた光の強度を出力することができるようになっている。検出器13は、制御装置50と制御信号線(有線又は無線。以下同じ。)で接続されており、受けた光の強度の出力のデータを、信号として制御装置50に送信することができるように構成されている。検出器13は、本実施の形態では、光源11に隣接して配置されている。
【0026】
第2光センサ20は、検出位置Sにある運転者の指Fの血中アルコール濃度を検出するセンサであり、血中成分濃度検出機構に相当する。第2光センサ20は、典型的には分光センサを適用することができる。第2光センサ20は、光源21と、検出器23とを有している。
【0027】
光源21は、アルコールに吸収されやすい波長の光を発するものである。光源21は、例えば、波長が910nm及び1190nmの光を含む光を発するLED等の発光素子を含むことができる。光源21は、発光素子から発せられた光を所望の波長の光に分けることができる、回折格子やプリズム等で構成された分光部を有していてもよい。光源21は、光源11と比較して、主として発する光の波長の相違に基づく構成を除き、同じ構成であってもよい。
【0028】
検出器23は、本実施の形態では、光源21が発した光のうち、指Fで反射した光を受けるものになっている。検出器23は、光を受けるフォトダイオード等の受光素子を含むことができる。光源21から発せられて検出器23が受ける光は、前述のようにアルコールに吸収されやすい波長の光であるので、指Fの血中アルコール濃度が高いほど検出器23が受ける光量が少なくなる。換言すれば、検出器23の受光量によって、指Fの血中アルコール濃度を推定することができる。検出器23の受光量は、光源21の発光量に対する比で表されてもよい。検出器23は、受けた光の波長ごとの強度を出力することができるようになっている。検出器23は、検出器13と同じ構成であってもよい。検出器23は、制御装置50と制御信号線で接続されており、受けた光の波長ごとの強度の出力のデータを、信号として制御装置50に送信することができるように構成されている。検出器23は、本実施の形態では、光源21に隣接して配置されている。
【0029】
移動機構30は、第1光センサ10及び第2光センサ20を移動させるものである。移動機構30は、本実施の形態では、第1光センサ10及び第2光センサ20を、検出位置Sの範囲内で、少なくとも往復直線移動させることができるようになっている。移動機構30は、典型的にはリニアモータを適用することができるが、ボールねじ等の、対象物を直線移動させることができる機構を適用してもよい。
【0030】
移動機構30は、本実施の形態では、可動子31と、固定子33と、ドライバ35とを有している。移動機構30は、ドライバ35による電流供給量の調節により、可動子31を、固定子33に沿って、任意の方向に、固定子33上の任意の位置へ、移動させることができるように構成されている。固定子33は、直線状に延びた部材であり、可動子31の軌跡を決定する。固定子33は、典型的には、平面視における検出位置Sの外側境界を形成する円の直径の位置、かつ、設計上の指Fが置かれる位置(例えば
図1(A)において二点鎖線で示す位置)にある指Fが延びる方向に対して直交する位置に、配置されている。以下、説明の便宜上、固定子33が延びる方向をx方向ということがあり、固定子33が仮想的な平面座標(仮想座標)におけるx軸を形成しているとみなす場合がある。
【0031】
可動子31には、第1光センサ10及び第2光センサ20が配置されている。第1光センサ10は、光源11と検出器13とが、x方向に隣接して配置されている。第2光センサ20は、光源21と検出器23とが、x方向に隣接して配置されている。第1光センサ10及び第2光センサ20は、本実施の形態では、
図1(B)に示すように、平面視においてx軸に対して直交する方向に隣接して配置されている。第1光センサ10及び第2光センサ20は、極力近接して配置されていることが好ましい。検出位置Sの円の直径に配置された固定子33上を移動する可動子31に第1光センサ10及び第2光センサ20が配置されていることで、第1光センサ10及び第2光センサ20を検出位置Sの範囲内で機能させることができるようになっている。
【0032】
ドライバ35は、直線状に延びる固定子33の一方の端部に設けられている。ドライバ35は、本実施の形態では、固定子33の内部に設けられたコイルへの電流の供給を調節するものとなっている。ドライバ35は、制御装置50と制御信号線で接続されており、制御装置50からの指令に基づいて、コイルへ供給する電流の大きさ及び方向を調節するように構成されている。本実施の形態では、便宜上、固定子33上を往復直線移動する可動子31が、その可動範囲で最もドライバ35に近づいた位置を仮想座標における原点とし、ドライバ35から遠ざかるに連れて仮想座標におけるx軸上の値が増加することにする。ここまで説明した第1光センサ10及び第2光センサ20並びに移動機構30は、典型的には、検出位置Sを形成する透光性の板状部材の裏側(指Fが合わせられる側とは反対側)に配置されている。
【0033】
制御装置50は、検出装置1の動作を制御する機器である。制御装置50は、第1光センサ10及び第2光センサ20と個別に制御信号線で接続されており、制御信号を送信することによって、各光源11、21からの発光の有無を調節することができるように構成されている。また、制御装置50は、制御信号線を介して、各検出器13、23が受けた光の強度の出力のデータを、信号として受信することができるように構成されている。また、制御装置50は、移動機構30と制御信号線で接続されており、制御信号を送信することによって可動子31を固定子33上の任意の位置に移動させることができると共に、仮想座標におけるx軸上の位置を把握することができるように構成されている。このことから、制御装置50は、
図2に示すような、仮想座標におけるx軸上の位置と第1光センサ10の検出器13が受けた光の強度との関係を把握することができるようになっている。また、制御装置50は、運転者の指Fにおける所定の血管であると一応推定し得る、検出器13が受ける光の強度の値が、閾値として記憶されている。また、制御装置50は、静電スイッチや感圧スイッチ等の測定対象部位検出器(不図示)と制御信号線で接続されており、検出位置Sに指Fが合わせられたことを検出することができるように構成されている。その他、制御装置50は、本検出装置1が実装された自動車のイグニッションスイッチ(不図示)と制御信号線で接続されており、制御信号を送信することによって、イグニッションスイッチの起動を制御することができるように構成されている。
【0034】
ここで
図3に示すブロック図を参照して、制御装置50のハードウェア構成を説明する。
図3に示すブロック図は、制御装置50の物理的な構成の概念を示している。制御装置50は、プロセッサ55と、メモリ56と、ストレージ57と、通信インターフェース58とを有している。プロセッサ55は、制御装置50における各種の情報を処理する。プロセッサ55が処理する各種の情報として、第1光センサ10及び第2光センサ20並びに移動機構30とのデータ(制御指令を含む)の送受信や、血中アルコール濃度に基づく運転の可否の判断等がある。プロセッサ55は、単一のプロセッサであってもよく、2つ以上のプロセッサであってもよい。プロセッサ55は、中央処理装置(CPU)、マイクロプロセッサ、回路基板、又は他の電気回路を含んでいてもよい。プロセッサ55は、プログラムを実行し、データを操作して、本開示において説明される任意のアルゴリズム、方法、機能、プロセス、フロー、及び手順を用いる動作を含む制御装置50の動作を実行することができる。
【0035】
メモリ56は、制御装置50における情報処理に用いられるプログラム及び/又はデータを、一時的に又は永続的に記録する。メモリ56は、制御装置50が受信した各検出器13、23が受けた光の強度の出力のデータがx軸上の位置ごとに記録されてもよく、及び/又は、制御装置50が各種の判定や判断を行う際のプログラムが記憶されていてもよい。このプログラムは、事後的に(つまり制御装置50の製造後に)追加・変更することが可能である。メモリ56は、単一のメモリであってもよく、2つ以上のメモリであってもよい。メモリ56は、RAMやキャッシュ等の揮発性メモリ及びROM等の不揮発性メモリを含んでいてもよい。
【0036】
ストレージ57は、所定の血管と推定するための閾値や、血中アルコール濃度の基準値等が記憶されている。ストレージ57は、制御装置50が各種の判定や判断を行う際のプログラムが記憶されていてもよい。ストレージ57は、制御装置50又は他の機器で実行可能な、オペレーティングシステムを含むその他のプログラムを保持していてもよい。ストレージ57は、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)、及び/又はフラッシュメモリ等を含んでいてもよい。
【0037】
通信インターフェース58は、第1光センサ10及び第2光センサ20並びに移動機構30と通信を行う。通信インターフェース58は、第1光センサ10及び第2光センサ20へ、各光源11、21から発せられる光の強度に関する制御信号を送信することができる。通信インターフェース58は、第1光センサ10及び第2光センサ20から、各検出器13、23が受けた光の強度の出力のデータを受信することができる。通信インターフェース58は、移動機構30へ、可動子31を所望の位置に移動させるための電流値に関する制御信号を送信することができる。また、通信インターフェース58は、測定対象部位検出器(不図示)及びイグニッションスイッチ(不図示)と通信を行う。
【0038】
制御装置50の各コンポーネント(プロセッサ55、メモリ56、ストレージ57、及び通信インターフェース58を含む)は、システムバスやコントロールバス等のバスにより互いに接続されていて互いに通信することができる。また、制御装置50は、電源59を有している。電源59は、典型的には、商用電源又はその他の電源からの電力を取り込む電源プラグを含んでいる。電源59は、交換可能又は交換不可能なバッテリを含んでいてもよく、バッテリは商用電源又はその他の電源からの電力を受けて充電できるものであってもよい。
【0039】
次に
図4を参照して、検出装置1の作用を説明する。
図4は、検出装置1の動作手順を説明するフローチャートである。ここでの説明では、自動車のエンジンの始動を行う際の検出装置1の動作を例示する。以降の説明において、検出装置1の構成に言及しているときは、適宜
図1(A)~
図3を参照することとする。また、以下の説明において、検出装置1の動作は、特に断りがある場合を除き、制御装置50によって制御される。
【0040】
検出装置1が作動していないとき、可動子31は、典型的には仮想座標の原点に位置している。検出装置1が実装された自動車を運転しようとする運転者は、まず、検出位置Sに指Fをセットする(S1)。検出位置Sに指Fを合わせると、測定対象部位検出器(不図示)が指Fの存在を検出し、制御装置50を介して、第1光センサ10の作動を開始する(S2)。第1光センサ10は、作動を開始すると、光源11から所定の波長の光を発すると共に、光源11から発せられた光のうち指F等で反射して返ってきた光を検出器13が受ける。このとき、光源11から発せられた光は、本実施の形態では、ヘモグロビンに吸収されやすい波長を有する緑色の光であるので、血流量が多くなるほど血液に吸収される量が多くなって検出器13における受光量が少なくなる。
【0041】
第1光センサ10が作動を開始したら、第1光センサ10の移動を開始する(S3)。第1光センサ10の移動は、制御装置50の指令によって可動子31を固定子33上で移動させることによって行われる。これにより、第1光センサ10は、仮想座標のx軸上を移動することになる。なお、本実施の形態では、可動子31に、第1光センサ10と共に第2光センサ20が設けられているので、第1光センサ10の移動に伴って第2光センサ20も移動することとなるが、この段階では第2光センサ20は作動(発光及び受光)していない。第1光センサ10は、x軸上を移動中、検出器13が受光量を連続して測定している。このことにより、
図2に示すような、x軸上の位置と検出器13における受光量との関係を得ることができる。
図2に例示する測定結果は、典型的には制御装置50(特にメモリ56)に一時的に記録される。
【0042】
第1光センサ10の移動中に取得した、x軸上の位置と検出器13における受光量との関係から、制御装置50は、所定の血管の位置を検出する(S4)。所定の血管は、前述のように、典型的には血中アルコール濃度を検出しやすい血管であり、換言すれば比較的太い血管(血流量が比較的多い血管)である。上述のように、検出器13における受光量は、血流量が多くなるほど少なくなるから、検出器13における受光量が少ない位置を、所定の血管の位置と推定することができる。
図2に示す例では、検出器13における受光量が、x1の位置で急に減り始め、x2からx3の位置で最低となり、x4の位置においてx1の位置と同様の値になっている。したがって、
図2に示す例では、制御装置50は、一時的に記録した検出器13の測定結果に基づいて、x2からx3の位置に所定の血管が存在すると特定する。
【0043】
なお、所定の血管を特定するために第1光センサ10をx軸方向へ移動させる際、指Fの幅の端から端まで検出器13による測定を行って受光量が最も少ない位置を所定の血管と特定してもよいが、以下のような簡略化した特定手法を用いてもよい。その簡略化した特定手法では、第1光センサ10の検出器13で所定の血管を検出したときの受光量を、閾値としてあらかじめ制御装置50に記憶させておく。そして、第1光センサ10をx軸方向へ移動させながら検出器13で検出した受光量を監視し、受光量が閾値を含む所定の範囲にある場合にそのときの位置に所定の血管があると判断して、以降の検出器13による検出を行わず、速やかに次工程に移るものである。このとき、検出器13の受光量が少ないほど所定の血管に近づくので、閾値を含む所定の範囲とは、受光量が閾値よりも少なくなることを意味している。所定の血管の位置を特定したら、第1光センサ10は役割を果たしたことになるので、第1光センサ10の作動を停止してもよい。
【0044】
所定の血管の位置を特定したら、第2光センサ10を、仮想座標のx軸上において第1光センサ10が所定の血管の位置を特定した位置にセットする(S5)。本実施の形態では、第1光センサ10の光源11と第2光センサ20の光源21、及び第1光センサ10の検出器13と第2光センサ20の検出器23が、それぞれ、x軸の同じ位置に配置されている。したがって、第1光センサ10をx軸上における所定の血管の位置に移動させると、第2光センサ20もx軸上における所定の血管の位置に存在することとなる。
【0045】
第2光センサ20を所定の血管の位置にセットしたら、第2光センサ20による血中アルコール濃度の測定を開始する(S6)。第2光センサ20が測定を開始すると、光源21から光を発すると共に、光源21から発せられた光のうち指F等で反射して返ってきた光を検出器23が受ける。このとき、光源21から発せられた光は、本実施の形態では、アルコールに吸収されやすい波長を有する光であるので、血中アルコール濃度が高くなるほど検出器23における受光量が少なくなる。
【0046】
血中アルコール濃度を測定したら、測定したアルコール濃度が正常値か否かを判断する(S7)。この判断は、典型的には、制御装置50が、第2光センサ20で検出したアルコール濃度を、制御装置50(典型的にはストレージ57)に記憶されている基準値に照らして行われる。検出したアルコール濃度が、記憶されている基準値以上である場合、正常値ではないと判断して、第1光センサ10の移動を開始する工程(S3)に戻り、上述の手順を繰り返す。実際に運転者の血中アルコール濃度が基準値以上の場合、再び血中アルコール濃度の測定を開始してアルコール濃度が正常値か否かを判断しても、通常は正常値にならないため、この判断(S7)までの手順が繰り返される。一般に、血中アルコール濃度が基準値未満に低下するまでに相当の時間を要するため、このタイミングでは、運転者が交代するまで、この自動車は始動できない可能性が高い。
【0047】
検出したアルコール濃度が正常値か否かを判断する工程(S7)において、検出したアルコール濃度が基準値未満であって、正常値であると判断した場合、自動車のエンジンを始動する(S8)。このエンジンの始動は、典型的には、制御装置50がイグニッションスイッチ(不図示)に始動する旨の信号を送信することで行われる。これで、エンジンの始動を行う際の検出装置1の一連の動作が終了する。なお、上述した判断を伴う工程(S7)において、あらかじめ決められた時間にわたって次工程に進めない場合は、処理を中断して待機状態に戻ることとしてもよい。
【0048】
以上で説明したように、本実施の形態に係る検出装置1によれば、第1光センサ10で所定の血管の位置を特定し、特定した所定の血管の位置に第2光センサ20を移動させてアルコール濃度を測定するので、血中アルコール濃度の検出精度を向上させることができる。また、所定の血管の位置を特定するための第1光センサ10と、血中アルコール濃度を検出するための第2光センサ20と、を別々に設けているので、それぞれの用途で高精度の測定を行うことができる。
【0049】
以上の説明では、一例として、検出装置1が自動車に実装されることとした。しかしながら、検出装置1は、自動車以外の、バス、フォークリフト、及び鉄道車両等の乗り物、あるいはクレーン及び遠隔操作機器等の操作者(オペレーター)による状況に応じた操作が必要な機器等に適用することもできる。
【0050】
以上の説明では、第2光センサ20が検出する血中の所定の成分の濃度がアルコール濃度であることとしたが、目的又は用途に応じて、酸素濃度等の、アルコール以外の成分の濃度であってもよい。
【0051】
以上の説明では、測定対象部位が指であるとしたが、頸部等、指以外の対象者の体の部分であってもよい。
【0052】
以上の説明では、第1光センサ10及び第2光センサ20が設けられた可動子31を、仮想座標のx軸方向に一次元的に移動可能であることとした。しかしながら、例えば移動機構30全体を、検出位置Sが広がる面に沿ってx軸に直交する軸(以下「y軸」という。)が延びる方向に移動可能に構成して、可動子31をx-y平面上で二次元的に移動可能にしてもよい。このように構成すると、y軸方向における第1光センサ10と第2光センサ20との距離をあらかじめ把握しておくことで、x-y平面上において、所定の血管を検出したときの第1光センサ10の位置に、第2光センサ20を移動させることができる。換言すれば、第2光センサ20を、x軸方向において所定の血管の位置に移動させると共にy軸方向に第1光センサ10と第2光センサ20との距離の分だけ移動させることで、第1光センサ10が特定した所定の血管の位置に第2光センサ20を置くことができる。一般に、指Fの中の比較的太い血管は、指Fの長手方向に沿って存在していることが多く、指Fをy軸に沿って検出位置Sに置けば、一次元的な移動で第1光センサ10及び第2光センサ20の両方を所定の血管の位置に移動させることができると考えられる。しかし、可動子31を二次元的に移動させることができれば、例えば指Fをy軸に対して斜めになるように検出位置Sに置いてしまった場合等、特定された所定の血管がy軸に平行に延びていない場合でも、第2光センサ20による測定を適切に行うことができる。
【0053】
以上の説明では、第1光センサ10及び第2光センサ20が、1つの可動子31に配置されていて同時に移動することとしたが、別々の可動子に配置されていて個別にx方向に移動することとしてもよい。
【0054】
以上の説明では、第1光センサ10の光源11が、緑色の光(可視光)を発することとしたが、赤外線等の、緑色の光以外で血液に吸収されやすい光を発するように構成されていてもよい。
【0055】
以上の説明では、血管位置検出機構が第1光センサ10であることとしたが、指Fの血管の脈動を測定可能な力センサを用いることとしてもよい。血管位置検出機構として力センサを用いる場合、血管を検出する指Fの面を力センサに接触させるため、指Fの腹の形状に沿った湾曲面を力センサに形成するとよい。
【0056】
その他、本開示は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施することができる。そして、それらはすべて、本開示の技術思想に含まれるものである。
【符号の説明】
【0057】
1 検出装置(血中成分濃度検出装置)
10 第1光センサ(血管位置検出機構)
11 光源(発光装置)
13 検出器(受光装置)
20 第2光センサ(血中成分濃度検出機構)
30 移動機構
50 制御装置
F 指(測定対象部位)
S 検出位置