(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176948
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、パターン形成方法及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/039 20060101AFI20241212BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20241212BHJP
C08G 8/36 20060101ALI20241212BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
G03F7/039 601
G03F7/004 503A
G03F7/004 501
C08G8/36
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095850
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000117102
【氏名又は名称】旭有機材株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】506166549
【氏名又は名称】イーケムソリューションズジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(74)【代理人】
【識別番号】100193507
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 俊介
(72)【発明者】
【氏名】窪田 絵美
(72)【発明者】
【氏名】小西 秀和
(72)【発明者】
【氏名】井川 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】塩田 英和
【テーマコード(参考)】
2H197
2H225
4J033
【Fターム(参考)】
2H197CA05
2H197CE10
2H197HA02
2H197HA03
2H197HA04
2H197HA10
2H197JA30
2H225AF23P
2H225AF78P
2H225AH03
2H225AH04
2H225AH49
2H225AK05
2H225AN41P
2H225AN63P
2H225BA26P
2H225CA12
2H225CB05
2H225CC03
2H225CC15
4J033CD04
4J033HA12
4J033HA28
4J033HB10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ノボラック樹脂を用いた感光性樹脂組成物であって、解像度及び耐熱性に優れた感光性樹脂組成物、これを用いたパターン形成方法、及び、このパターン形成方法を含んだ電子デバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】第2ユニットを含み、式(1)のR
1及び式(2)のR
2及びR
3は、酸分解性基である酸分解性樹脂と、光酸発生剤と、溶剤と、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチレン基を介して互いに接続されたユニットを有し、
前記ユニットは、下記式(1)で表される第1ユニット、及び、下記式(2)で表される第2ユニットのうちの少なくとも前記第2ユニットを含み、
【化1】
前記式(1)中のR
1、前記式(2)中のR
2、前記式(2)中のR
3は、少なくとも一部が酸分解性基であり、
前記酸分解性基は、1-エトキシエチル基及び1-プロポキシエチル基からなる群より選ばれ、
前記第1ユニットの数をnとして、前記第2ユニットの数をmとした場合に、0.2≦m/(n+m)≦1を満たす酸分解性樹脂と、
光酸発生剤と、
溶剤と、を含むことを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記酸分解性基による変性率が10~50%である請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記光酸発生剤が、光照射によりフッ素含有酸を発生する化合物を含む請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記溶剤が、環状ケトンを含む請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちのいずれかに記載の感光性樹脂組成物を用いて感光性樹脂膜を形成する膜形成工程と、
前記感光性樹脂膜を露光する露光工程と、
前記感光性樹脂膜を現像する現像工程と、を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項6】
請求項5に記載のパターン形成方法を含むことを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、パターン形成方法及び電子デバイスの製造方法に関する。更に詳しくは、酸分解性樹脂、光酸発生剤及び溶剤を含んだ感光性樹脂組成物、これを用いたパターン形成方法、及び、このパターン形成方法を含んだ電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
感光性樹脂組成物は、電子部品を製造する過程、例えば、電子基板のエッチングやイオンインプランテーション、金属スパッタ、金属メッキ等を行う際に利用される。感光性樹脂組成物は、酸分解性樹脂、光酸発生剤及び溶剤などを含んだ組成物としてなり、その塗布・乾燥により感光性樹脂膜を形成し、当該感光性樹脂膜を露光・現像して所望の微細パターンを得る目的で利用される。
例えば、下記特許文献1には、保護基を導入したノボラック樹脂、酸発生剤及び溶剤を含んだ感光性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のノボラック樹脂を用いた感光性樹脂組成物では、解像度及び耐熱性の観点から、改善の余地があった。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、ノボラック樹脂を用いた感光性樹脂組成物であって、解像度及び耐熱性に優れた感光性樹脂組成物、これを用いたパターン形成方法、及び、このパターン形成方法を含んだ電子デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち、本発明には、以下が包含される。
[1]メチレン基を介して互いに接続されたユニットを有し、
前記ユニットは、下記式(1)で表される第1ユニット、及び、下記式(2)で表される第2ユニットのうちの少なくとも前記第2ユニットを含み、
【化1】
前記式(1)中のR
1、前記式(2)中のR
2、前記式(2)中のR
3は、少なくとも一部が酸分解性基であり、
前記酸分解性基は、1-エトキシエチル基及び1-プロポキシエチル基からなる群より選ばれ、
前記第1ユニットの数をnとして、前記第2ユニットの数をmとした場合に、0.2≦m/(n+m)≦1を満たす酸分解性樹脂と、
光酸発生剤と、
溶剤と、を含むことを特徴とする感光性樹脂組成物。
[2]前記酸分解性基による変性率が10~50%である上記[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[3]前記光酸発生剤が、光照射によりフッ素含有酸を発生する化合物を含む上記[1]又は上記[2]に記載の感光性樹脂組成物。
[4]前記溶剤が、環状ケトンを含む上記[1]乃至上記[3]のうちのいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[5]上記[1]乃至上記[4]のうちのいずれかに記載の感光性樹脂組成物を用いて感光性樹脂膜を形成する膜形成工程と、
前記感光性樹脂膜を露光する露光工程と、
前記感光性樹脂膜を現像する現像工程と、を含むことを特徴とするパターン形成方法。
[6]上記[5]に記載のパターン形成方法を含むことを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本感光性樹脂組成物によれば、ノボラック樹脂を用いた感光性樹脂組成物において優れた解像度と、優れた耐熱性と、を実現できる。
本パターン形成方法によれば、上記感光性樹脂組成物を用いたパターン形成を実現できる。
本電子デバイスの製造方法によれば、上記パターン形成方法を用いた電子デバイスの製造を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明について具体的な実施形態に基づき説明する。但し、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。これらの実施形態はあくまでも説明のために便宜的に示す例示に過ぎず、本発明は如何なる意味でもこれらに限定されるものではなく、目的、用途に応じて本発明を種々変更することができる。また、本明細書中で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願をそのまま参考として本明細書中にとり入れるものとする。
また、本明細書では「XX~YY」の記載は「XX以上YY以下」を意味するものとする。更に、本明細書で例示する化合物では、表記法が複数ある化合物名の一部にCAS登録番号を併記する場合があるが、CAS登録番号は異性体態等により異なるため、併記した化合物名のうちの一例を表すものであり、化合物名とCAS登録番号とが1対1で対応するものではない。
【0008】
[1]感光性樹脂組成物
本感光性樹脂組成物は、酸分解性樹脂と、光酸発生剤と、溶剤と、を含む。以下、これらの成分について、各々詳述する。
【0009】
<1>酸分解性樹脂
本発明において、酸分解性樹脂は、メチレン基を介して互いに接続されたユニットを有し、
前記ユニットは、下記式(1)で表される第1ユニット、及び、下記式(2)で表される第2ユニットのうちの少なくとも前記第2ユニットを含み、
【化2】
前記式(1)中のR1、前記式(2)中のR2、前記式(2)中のR3は、少なくとも一部が酸分解性基であり、
前記酸分解性基は、1-エトキシエチル基及び1-プロポキシエチル基からなる群より選ばれ、
前記第1ユニットの数をnとして、前記第2ユニットの数をmとした場合に、0.2≦m/(n+m)≦1を満たす。
【0010】
酸分解性樹脂は、どのようにして得たものであってもよいが、例えば、フェノール系化合物とアルデヒド系化合物とを各単量体とした共重合体(ノボラック樹脂)と表現することができる。即ち、第1ユニット及び第2ユニットは、フェノール系化合物に由来する構成単位であり、メチレン基はアルデヒド系化合物に由来する構成単位である。
フェノール系化合物は、フェノール性ヒドロキシ基を有する化合物である。即ち、フェノール性ヒドロキシ基は、芳香環を構成する炭素原子であって、当該ヒドロキシ基以外の置換基を有さない炭素原子に結合されたヒドロキシ基である。アルデヒド系化合物は、アルデヒド基(-CHO)を有する化合物である。
【0011】
第1ユニット及び第2ユニットは、その少なくとも一部に酸分解性基を備える。酸分解性基は、酸の存在下で、酸分解性樹脂から分解される基である。本発明では、1-エトキシエチル基と、1-プロポキシエチル基とが酸分解性基に含まれる。
【0012】
第1ユニット(上記式(1)で表されるユニット)は、o-クレゾールをベースとするユニットである。第1ユニットを構成する「R1」は、H(水素原子)又は酸分解性基である。例えば、酸分解性樹脂が、複数の第1ユニットを含む場合、各々の第1ユニットに含まれる「R1」は、全て同じ構造でもよいが、異なる構造でもよい。更に、酸分解性樹脂に、複数の第1ユニットが含まれる場合、第1ユニットが有する「R1」は、一部のみが酸分解性基であり、他部がHである態様とすることができる。そして、この酸分解性基は、1-エトキシエチル基のみであってもよいし、1-プロポキシエチル基のみであってもよいし、1-エトキシエチル基及び1-プロポキシエチル基の両方であってもよい。
尚、酸分解性樹脂内において、第1ユニットは重合末端をなすこともできる。
【0013】
第2ユニット(上記式(2)で表されるユニット)は、o-クレゾールビフェニルをベースとするユニットである。o-クレゾールビフェニルは、2つのo-クレゾールが結合された化合物ということができる。即ち、o-クレゾールは、ベンゼン環と、このベンゼン環を構成する隣り合った2つの炭素原子に各々結合されたメチル基とヒドロキシ基とを備えた化合物ということができる。これに対して、o-クレゾールビフェニルは、2つのo-クレゾールが、各々のベンゼン環を構成する炭素原子同士によって結合された化合物ということができる。
【0014】
具体的には、o-クレゾールビフェニルとしては、3,3’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジオール(CAS RN 612-84-0)、3,4’-ジメチルビフェニル-4,3’-ジオール、2,2’-ジメチルビフェニル-3,3’-ジオール、2,3’-ジメチルビフェニル-3,2’-ジオール、4,2’-ジメチルビフェニル-3,3’-ジオール、4,3’-ジメチルビフェニル-3,2’-ジオール、3,3’-ジメチルビフェニル-4,2’-ジオール等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0015】
第2ユニットを構成する「R2」及び「R3」は、H(水素原子)又は酸分解性基である。酸分解性樹脂が複数の第2ユニットを含む場合、各々の第2ユニットに含まれる「R2」は、全て同じ構造でもよいが、異なる構造でもよい。即ち、酸分解性樹脂に複数の「R2」が含まれる場合、「R2」のうちの一部のみが酸分解性基であり、他部がHである態様とすることができる。そして、「R2」として複数の酸分解性基を備える場合、これらの酸分解性基は、1-エトキシエチル基のみであってもよいし、1-プロポキシエチル基のみであってもよいし、1-エトキシエチル基及び1-プロポキシエチル基の両方であってもよい。
同様に、酸分解性樹脂に複数の「R3」が含まれる場合、「R3」のうちの一部のみが酸分解性基であり、他部がHである態様とすることができる。そして、「R3」として複数の酸分解性基を備える場合、これらの酸分解性基は、1-エトキシエチル基のみであってもよいし、1-プロポキシエチル基のみであってもよいし、1-エトキシエチル基及び1-プロポキシエチル基の両方であってもよい。
尚、酸分解性樹脂内において、第2ユニットは重合末端をなすこともできる。
【0016】
以上から、酸分解性樹脂としては、下記式(3)で表される重合体《1》、及び、下記式(4)で表される重合体《2》が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。即ち、より詳しくは、酸分解性樹脂は、重合体《1》及び重合体《2》のうちの少なくとも一方を含んだ樹脂であるといえる。
【0017】
重合体《1》:メチレン基を介して互いに接続された第2ユニットを有し、第1ユニットを有さない重合体
【化3】
【0018】
この重合体《1》における第1ユニットと第2ユニットとの存在比は、第1ユニットの数をn、第2ユニットの数をm、とした場合にm/(n+m)=1となる。式(3)におけるmの範囲は限定されないが、例えば、1~3000とすることができる。
また、式(3)中のR2及びR3は、少なくとも一部が酸分解性基であり、他部は水素原子である。即ち、重合体《1》は、複数の第2ユニットを有し、これら複数の第2ユニットのうちの少なくとも一部のユニットが、1つ又は2つの酸分解性基を有する。従って、重合体《1》が有することができる第2ユニットの種類としては、R2及びR3の両方が水素原子である第2ユニット、R2が水素原子でありR3が酸分解性基である第2ユニット、R2が酸分解性基でありR3が水素原子である第2ユニットが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0019】
また、上述の酸分解性基は、1-エトキシエチル基及び1-プロポキシエチル基からなる群より選ばれる。従って、重合体《1》が有することができる第2ユニットのうち、酸分解性基を有する第2ユニットの種類としては、R2が水素原子でありR3が1-エトキシエチル基である第2ユニット、R2が水素原子でありR3が1-プロポキシエチル基である第2ユニット、R2が1-エトキシエチル基でありR3が1-エトキシエチル基である第2ユニット、R2が1-エトキシエチル基でありR3が1-プロポキシエチル基である第2ユニット、R2が1-プロポキシエチル基でありR3が1-エトキシエチル基である第2ユニット、R2が1-プロポキシエチル基でありR3が1-プロポキシエチル基である第2ユニット、が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0020】
また、式(3)中のRE1は、通常、水素原子である。更に、(3)中のRE2は、通常、第2ユニット(式(2)で表される第2ユニットの末端に水素原子が結合された構造)である。
【0021】
重合体《2》:メチレン基を介して互いに接続された第1ユニット及び第2ユニットの両方のユニットを有するとともに、第1ユニットの数をn、第2ユニットの数をm、とした場合に0.2≦m/(n+m)<1を満たす重合体
【化4】
【0022】
式(4)中のR1~R3は、少なくとも一部が酸分解性基であり、他部は水素原子である。そして、酸分解性基は、1-エトキシエチル基及び1-プロポキシエチル基からなる群より選ばれる。
また、式(4)中のRE1は、通常、水素原子である。更に、(4)中のRE2は、通常、第1ユニット(式(1)で表される第1ユニットの末端に水素原子が結合された構造)、又は、第2ユニット(式(2)で表される第2ユニットの末端に水素原子が結合された構造)である。
【0023】
また、重合体《2》を、上述の式(4)として表現すると便宜的な記載となるが、式(4)は、各ユニットがブロックとして存在することを意味しない。即ち、第1ユニットはブロック的に存在してもよいし、ランダムに存在してもよい。これらのうちでは、ランダムに存在することがより好ましい。
第1ユニットがブロック的に存在するとは、第1ユニットが第2ユニットよりも多く存在することが顕在化された分子鎖領域を有する場合である。即ち、例えば、メチレン基と第1ユニットとのみが交互に存在する分子鎖領域を有する場合等が挙げられる。第1ユニットがランダムに存在するとは、第1ユニットが分子鎖内にまんべんなく存在すること状態である。即ち、第1ユニットが第2ユニットよりも多く存在することが顕在化された分子鎖領域を有さない場合である。
【0024】
同様に、第2ユニットはブロック的に存在してもよいし、ランダムに存在してもよい。これらのうちでは、ランダムに存在することがより好ましい。
第2ユニットがブロック的に存在するとは、第2ユニットが第1ユニットよりも多く存在することが顕在化された分子鎖領域を有する場合である。即ち、例えば、メチレン基と第2ユニットとのみが交互に存在する分子鎖領域を有する場合等が挙げられる。第2ユニットがランダムに存在するとは、第2ユニットが分子鎖内にまんべんなく存在すること状態である。即ち、第2ユニットが第1ユニットよりも多く存在することが顕在化された分子鎖領域を有さない場合である。
【0025】
重合体《2》における第1ユニットと第2ユニットとの存在比は、第1ユニットの数をn、第2ユニットの数をm、とした場合に0.2≦m/(n+m)<1である。式(4)におけるmの範囲は限定されないが、例えば、1~3000とすることができる。
この範囲では、ノボラック樹脂を用いた感光性樹脂組成物において優れた解像度と、優れた耐熱性と、を実現できる。m/(n+m)の下限は、更に0.25以上とすることができる。一方、m/(n+m)の上限は、限定されず、0.95とすることができ、0.90とすることができる。これらの上下限は、適宜各々の組合せとすることができる。従って、例えば、0.20~0.95とすることができ、0.25~0.95とすることができ、0.25~0.90とすることができる。
【0026】
酸分解性樹脂は、構成単位として、第1ユニット、第2ユニット及びメチレン基のみからなってもよいが、これら以外の他構成単位(他のユニット)を含むことができる。他構成単位を含む場合、第1ユニットの数をn、第2ユニットの数をm、メチレン基の数をs、他構成単位の数をtとした場合に、t/(n+m+s+t)<0.05とすることができ、t/(n+m+s+t)<0.03とすることができ、t/(n+m+s+t)<0.01とすることができる。
【0027】
他構成単位としては、o-クレゾール及びo-クレゾールビフェニル以外の他のフェノール系化合物に由来する構成単位、及び、ホルムアルデヒド以外の他のアルデヒド系化合物に由来する構成単位、が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0028】
上記他のフェノール系化合物としては、フェノール、モノアルキルフェノール(p-クレゾール、m-クレゾール、p-t-ブチルフェノール等)、ジアルキルフェノール(2,3-ジメチルフェノール、2,4-ジメチルフェノール、2,5-ジメチルフェノール、2,6-ジメチルフェノール、3,4-ジメチルフェノール、3,5-ジメチルフェノール等のキシレノールなど)、トリアルキルフェノール(トリメチルフェノール等)、ジヒドロキシベンゼン(カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン等)、ビスフェノール(ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF等)などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
上記他のアルデヒド系化合物としては、脂肪族アルデヒド(ブチルアルデヒド等)、芳香族アルデヒド(ベンズアルデヒド等)などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0029】
酸分解性樹脂は、どのようにして得られたものであってもよいが、前述の通り、フェノール系化合物とアルデヒド系化合物との共重合体に、酸分解性基を導入して得ることができる。即ち、フェノール系化合物が備えるフェノール性ヒドロキシ基の少なくとも一部の水素原子を酸分解性基に置換して得ることができる。
酸分解性樹脂における酸分解性基による変性率は、限定されないが、10~50%とすることができる。この範囲では、より優れた解像度及びより優れた耐熱性を発揮することができる感光性樹脂組成物とすることができる。この変性率の下限は、12%以上とすることができ、15%以上とすることができる。一方、変性率の上限は、48%以下とすることができ、45%以上とすることができる。これらの上下限は、適宜各々の組合せとすることができる。従って、例えば、10~48%とすることができ、12~48%とすることができ、12~45%とすることができ、15~45%とすることができる。
尚、変性率は、フェノール系化合物に由来する構成単位の総数N0とし、このうちの酸分解性基を備えた構成単位の数をN1とした場合に、(N1/N0)×100として算出される。
【0030】
酸分解性樹脂を構成するフェノール系化合物に由来する構成単位と、酸分解性樹脂を構成するアルデヒド系化合物に由来する構成単位と、の量比は限定されないが、例えば、0.9~1.1とすることができる。
【0031】
酸分解性樹脂の分子量は限定されないが、その重量平均分子量の下限は、耐熱性の観点からは、1,000以上であることが好ましい。この重量平均分子量は、更に2,000以上とすることができ、更に3,000以上とすることができ、更に4,000以上とすることができ、更に5,000以上とすることができ、更に6,000以上とすることができる。一方、その重量平均分子量の上限は、取り扱い性の観点からは、50,000以下であることが好ましい。この重量平均分子量は、更に40,000以下とすることができ、更に35,000以下とすることができ、更に30,000以下とすることができ、更に25,000以下とすることができ、更に20,000以下とすることができる。これらの上下限は、適宜各々の組合せとすることができる。従って、例えば、1,000~50,000とすることができ、更に2,000~40,000とすることができ、更に3,000~35,000とすることができ、更に4,000~30,000とすることができ、更に5,000~25,000とすることができ、更に6,000~20,000とすることができる。
尚、重量平均分子量は、ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により求めることができる。
【0032】
酸分解性樹脂は、どのような方法によって得られてもよく、公知の合成方法を適宜適用できる。典型的には、フェノール系化合物及びアルデヒド系化合物をモノマー原料として、付加縮合によりノボラック樹脂を合成し(ノボラック樹脂の合成)、得られたノボラック樹脂に酸分解性基を導入すること(酸分解性基の導入)により得ることができる。
【0033】
上記合成は常法に従って、酸触媒を用いるなどして行うことができる。この際には、例えば、60~150℃で2~30時間の反応条件を用いることができる。
酸触媒としては、塩酸、硫酸、過塩素酸、燐酸等の無機酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、トリクロロ酢酸、p-トルエンスルホン酸等の有機酸、酢酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸マグネシウム等の金属塩(二価金属塩)が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0034】
上記合成においては、反応溶媒を用いることができる。反応溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、エタノール、ブタノール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、エトキシエチルアルコール等のエーテルアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエーテルエステルなどが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0035】
酸分解性基の導入はどのように行ってもよく、その方法は限定されないが、例えば、酸触媒下で上述のフェノール性ヒドロキシ基を有するノボラック樹脂に対して、エチルビニルエーテルを反応させることにより、1-エトキシエチル基を導入することができる。同様に、酸触媒下で上述のフェノール性ヒドロキシ基を有するノボラック樹脂に対して、プロピルビニルエーテルを反応させることにより、1-プロポキシエチル基を導入することができる。
【0036】
また、上記合成や上記酸分解性基の導入後には、未反応成分、オリゴマー、不純物等を除去することができる。例えば、塩基性化合物を添加して酸触媒を中和し、中和塩を水洗により除去することにより、酸触媒を除去できる。
【0037】
尚、本感光性樹脂組成物は、良好な感度と残膜率を示す限りにおいて、2種以上の酸分解性樹脂を含んでいてもよい。2種以上の酸分解性樹脂を含む場合、(i)全ての酸分解性樹脂が上記の樹脂であってもよいし、(ii)一部の樹脂が、上記に該当しない樹脂であってもよい。但し、良好な感度と残膜率の観点からは、本実施形態の感光性樹脂組成物は、上記(ii)に該当しないことが好ましい。
【0038】
感光性樹脂組成物に含まれる酸分解性樹脂の量は限定されないが、不揮発成分(溶剤以外の成分)の全体を100質量%とした場合に、50~99質量%、好ましくは55~98質量%、より好ましくは65~97質量%である。
【0039】
<2>光酸発生剤
光酸発生剤は、光照射により酸を発生する化合物を含む。光酸発生剤としては、任意のものを用いることができ、例えば、非イオン系光酸発生剤及びイオン系光酸発生剤が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0040】
非イオン系光酸発生剤としては、有機ハロゲン化物、スルホネートエステル類、スルホン類等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。上記のうち、スルホネートエステル類としては、2-ニトロベンジルエステル、芳香族スルホネート、オキシムスルホネート、N-スルホニルオキシイミド、スルホニルオキシケトン、ジアゾナフトキノン4-スルホネート等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。また、スルホン類としては、ジスルホン、ケトスルホン、スルホニルジアゾメタン等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0041】
イオン系光酸発生剤としては、オニウムカチオンを含むオニウム塩が挙げられる。このオニウムカチオンを含むオニウム塩としては、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。また、オニウム塩のアニオンとしては、スルホン酸アニオン、スルホニルイミドアニオン、スルホニルメチドアニオン等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0042】
上述のなかでも、イオン系光酸発生剤が好ましく、更には、オニウムカチオンを含むオニウム塩がより好ましい。
また、光酸発生剤は、酸としてフッ素含有酸を発生する化合物を含むことが好ましい。このような化合物(フッ素含有酸を発生する化合物)を含むことにより感度を向上させることができる。このような化合物としては、フッ素化アルキルリン酸スルホニウム塩が挙げられる。このフッ素化アルキルリン酸スルホニウム塩は、下記式(5)で表すことができる。
【0043】
【0044】
式(5)中のR51、R52及びR53は、各々独立に、水素原子又は1価の置換基であり、式(5)中のRfは、フッ化アルキル基であり、式(5)中のnは、1~6の整数である。
【0045】
上記1価の置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールチオ基等が挙げられる。1価の置換基を構成する炭素数は限定されないが、1~10とすることができる。
これらのなかでも、アリールチオ基を有することが好ましく、更には、フェニルチオ基(C6H5-S-)を有することがより好ましい。フェニルチオ基を有する場合、フェニルチオ基は、式(5)中のR51、R52及びR53のうちのいずれか1つをなし、他は水素原子であることが好ましい。
上記フッ化アルキル基としては、パーフルオロアルキル基が挙げられる。Rfを構成する炭素数は限定されないが、1~10とすることができる。
【0046】
感光性樹脂組成物に含まれる光酸発生剤の量は限定されないが、不揮発成分(溶剤以外の成分)の全体を100質量%とした場合に、0.1~10質量%、好ましくは0.3~8質量%、より好ましくは0.5~6質量%である。
【0047】
<3>溶剤
溶剤の種類は限定されず、溶剤としては任意のものを用いることができるが、典型的には有機溶剤である。
有機溶剤としては、グリコールエーテルエステル類、グリコールエーテル類、エステル類、ケトン類、ラクトン類等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。このうち、グリコールエーテルエステル類としては、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。グリコールエーテル類としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。エステル類としては、乳酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ピルビン酸エチル等が挙げられる。ラクトン類としては、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。ケトン類としては、非環状ケトン及び環状ケトンが含まれる。このうち、非環状ケトンとしては、アセトン、メチルイソブチルケトン、2-ヘプタノン等が挙げられる。また、環状ケトンとしては、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0048】
上述のなかでも、本発明では、環状ケトンを含むことが好ましい。より好ましくは溶剤の全量中の90質量%以上、更に好ましくは溶剤の全量中の95質量%以上、特に好ましくは溶剤の全量が、環状ケトンである。
溶剤として環状ケトンを用いることで、感光性樹脂組成物の保管時の経時変化を抑えることができる。より具体的には、感光性樹脂組成物を6ヶ月程度かそれ以上の長期間保管した後においても、残膜率の低下を抑えることができる。
また、環状ケトン溶剤は、他の溶剤(例えば慣用されているプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)に比べて、感光性樹脂膜(感光性樹脂組成物を製膜して得られる膜)の内部に残りにくい。このことにより、感光性樹脂膜全体としてのアルカリ溶解性をより均一にすることができる。その結果、パターンの矩形性の向上やアスペクト比の向上を図ることができる。
尚、パターンの矩形性の向上やアスペクト比の向上の効果については、例えば、乳酸アルキル(乳酸エチル等)を溶剤として用いた場合にも得ることができる。
【0049】
<4>他の成分
本感光性樹脂組成物は、所期の効果が得られる範囲で、酸分解性樹脂、光酸発生剤及び溶剤以外の他の成分を含むことができる。
他の成分としては、クエンチャー、防食剤(基板の防食剤等)、界面活性剤、増感剤、溶解抑止剤、安定剤、酸化防止剤、これら以外のフォトレジスト分野で公知の添加剤が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
上記のうち、クエンチャーは、光酸発生剤から発生する酸を捕捉する作用を有する化合物である。具体的には、アミン、アンモニウム塩、塩基性を示す含窒素複素環化合物等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
上記のうち、アミンとしては、脂肪族アミン、芳香族アミン等が挙げられる。更に、脂肪族アミンとしては、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン等が挙げられる。更に、脂肪族アミンとしては、モノアルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン等が挙げられる。芳香族アミンとしては、アニリン、アニリン誘導体等が挙げられる。
【0050】
上記のうち、脂肪族アミンとしては、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、ジブチルメチルアミン、メチルジペンチルアミン、ジヘキシルメチルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、ジヘプチルメチルアミン、メチルジオクチルアミン、メチルジノニルアミン、ジデシルメチルアミン、エチルジブチルアミン、エチルジペンチルアミン、エチルジヘキシルアミン、エチルジヘプチルアミン、エチルジオクチルアミン、エチルジノニルアミン、エチルジデシルアミン、トリス〔2-(2-メトキシエトキシ)エチル〕アミン、トリイソプロパノールアミン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
上記のうち、芳香族アミンとしては、ナフチルアミン、アニリン、ジイソプロピルアニリン、メチルアニリン、ニトロアニリン、N-メチルアニリン、N,N-ジメチルアニリン、ジフェニルアミン、4,4’-ジアミノ-1,2-ジフェニルエタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチルジフェニルメタン等が挙げられる。
【0051】
<5>感光性樹脂組成物の濃度/粘度
本感光性樹脂組成物の不揮発成分(溶剤以外の成分)の濃度は限定されないが、30~60質量%が好ましく、45~60質量%がより好ましい。これらの好ましい範囲では、スピンコーターを用いて比較的厚膜でありながら厚さが均一な感光性樹脂膜を形成できる。そして、その結果、高アスペクト比のパターンを得ることができる。本感光性樹脂組成物の濃度は、どのように調整してもよいが、例えば、前述した溶剤の量及び種類を変えることで調整できる。
【0052】
本感光性樹脂組成物は、比較的厚膜のパターン形成において、良好な性能を奏する。より具体的には、高アスペクト比(アスペクト比とは、パターンの「高さ/線幅」の値である)のパターン形成において、パターンの形状を矩形状にしやすい。
また、高アスペクト比やパターン形状の矩形性の効果は、溶剤を適切に選択することでより確実に得ることができる。例えば、前述の環状ケトンや乳酸アルキル等を溶剤として用いることで、高アスペクト比やパターン形状の矩形性を得ることができる。
即ち、感光性樹脂組成物の不揮発成分(溶剤以外の成分)の濃度を、上述のように高めにすることで、厚い樹脂膜を形成しやすくなり、また、その厚い樹脂膜をパターニングすることで高アスペクト比のパターンを得ることができる。
【0053】
本感光性樹脂組成物の粘度は限定されないが、25℃における粘度において、50~10,000mPa・sが好ましく、300~10,000mPa・sがより好ましく、500~4,000mPa・sが更に好ましい。これらの好ましい範囲では、スピンコーターを用いて比較的厚膜でありながら厚さが均一な感光性樹脂膜を形成できる。そして、その結果、高アスペクト比のパターンを得ることができる。本感光性樹脂組成物の粘度は、どのように調整してもよいが、例えば、前述した溶剤の量及び種類を変えることで調整できる。
尚、感光性樹脂組成物の粘度は、回転式粘度計や、毛細管を使うキャノンフェンスケ粘度計や、音叉型振動式粘度計(エー・アンド・デイ社の装置、型番:SV-10等)により測定することができる。
【0054】
[2]パターン形成方法
本パターン形成方法は、膜形成工程と、露光工程と、現像工程と、を含む。以下、これらの工程について、各々詳述する。
【0055】
<1>膜形成工程
膜形成工程は、感光性樹脂組成物を用いて感光性樹脂膜を形成する工程である。即ち、基板に感光性樹脂膜を積層する工程であるともいえる。
基板の種類は限定されず、例えば、各種ウエハ(Siウエハ、SiCウエハ、GaNウエハ等)、ガラス基板、セラミック基板、金属基板(アルミ基板、銅基板等)、めっき基板(銅めっき基板)等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらの基板は、未加工の基板であってもよいし、電極や素子等が表面に形成された基板であってもよい。
【0056】
感光性樹脂膜の形成方法は限定されず、電子デバイスの製造分野で利用される公知の形成方法を適宜適用できる。即ち、例えば、スピナーを用いた回転塗布、スプレーコーターを用いた噴霧塗布、浸漬塗布、印刷(インクジェット法等)塗布、ロールコーティングによる塗布等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0057】
また、基板上に塗布された感光性樹脂組成物は、通常、含まれる溶剤を除去して感光性樹脂膜となることから、膜形成工程は、溶剤除去工程を含むことができる。溶剤の除去方法は限定されないが、例えば、加熱処理により行うことができる。加熱処理における加熱温度は限定されないが、例えば、80~140℃、好ましくは90~120℃である。また、加熱時間は限定されず、利用する加熱装置により適宜とすることができるが、例えば、ホットプレートを用いる場合は30~300秒、好ましくは60~180秒とすることができる。また、熱風式オーブンを用いる場合は、5~60分、好ましくは10~30分とすることができる。
【0058】
また、形成する感光性樹脂膜の膜厚は限定されず、適用するアプリケーションや最終的に得ようとするパターン等に応じて適宜調整できるが、例えば、銅のバンプ形成を目的とする場合は、5~100μm、好ましくは10~100μm、より好ましくは15~100μmとすることができる。尚、この膜厚は、上述した不揮発成分の濃度の調整や、塗布方法の選択等により調整することができる。
【0059】
露光工程は、感光性樹脂膜を露光する工程である。この工程は、適宜のフォトマスクを介して活性光線を感光性樹脂膜に当てることにより行うことができる。
活性光線としては、X線、電子線、紫外線、可視光線等が挙げられる。波長でいえば200~500nmの光が好ましい。パターンの解像度や取り扱い性の点で、光源は水銀ランプのg線、h線又はi線が好ましく、特にi線が好ましい。また、1種の光線のみを用いてもよいが、2種以上の光線を混合して用いてもよい。
露光工程は、露光装置を用いて行うことができる。露光装置としては、コンタクトアライナー、ミラープロジェクション、ステッパーなどが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
露光工程における露光の光量は限定されないが、100~500mJ/cm2とすることができる。この露光量は、感光性樹脂膜中の感光剤の量などにより適宜調整することができる。
【0060】
現像工程は、感光性樹脂膜を現像する工程である。即ち、露光された感光性樹脂膜を、現像液で現像することにより、目的とするパターンを得る工程である。
現像は、どのような方法を用いてもよく、例えば、浸漬法、パドル法、回転スプレー法等を用いることができる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
現像により、例えば、感光性樹脂膜の露光部が溶出除去され、ポジ型のパターンを得ることができる。
【0061】
現像液の種類は限定されないが、通常、アルカリ性の液体が用いられる。現像液としては、無機アルカリ水溶液、有機アミン水溶液、4級アンモニウム塩水溶液等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
これらのうち、無機アルカリ水溶液の溶質としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア等が挙げられる。また、有機アミン水溶液の溶質としては、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。また、4級アンモニウム塩水溶液の溶質としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
上述のなかでも、現像液としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液が好ましい。この水溶液におけるテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの濃度は、好ましくは0.1~10質量%であり、更に好ましくは0.5~5質量%とすることができる。
【0062】
本パターン形成方法では、膜形成工程、露光工程及び現像工程以外にも他の工程を備えることができる。他の工程としては、感光性樹脂膜を加熱する加熱工程、リンス工程等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0063】
上記のうち、加熱工程は、露光工程後且つ現像工程前に、感光性樹脂膜を加熱する工程である(露光後加熱:Post Exposure Bake)。加熱工程における加熱温度は限定されないが、好ましくは70~150℃、より好ましくは70~120℃である。また、加熱工程における加熱時間は、例えば、ホットプレートを利用する場合、好ましくは30~300秒、より好ましくは60~180秒である。加熱工程を備えることにより、即ち、露光後加熱を行うことにより、脱保護反応を促進でき、一層の高感度化を達することができる。一方で、酸分解性基としての1-エトキシエチル基や1-プロポキシエチル基は、脱保護させやすい基であるため、露光後の加熱工程を設けずとも十分な脱保護が可能である。即ち、露光後加熱をせずとも高感度を得ることができる。このことは、工数低減及び装置削減に繋がり、生産効率を向上させる要素として機能する。
【0064】
上記のうち、リンス工程は、現像工程後、リンス液によりパターン及び/又は基板を洗浄する工程である。リンス液としては、超純水を好適に用いることができる。
【0065】
[3]電子デバイスの製造方法
本電子デバイスの製造方法は、上述したパターン形成方法を含むことを特徴とする。具体的には、前述したパターン形成方法により得られるパターンをマスクとして用いて電子デバイスを製造することができる。
上記マスクとしては、例えば、ドライエッチング用マスク、イオンインプランテーションプロセス用マスク、金属スパッタ用マスク、金属メッキ用マスク等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
即ち、本電子デバイスの製造方法は、前述したパターン形成方法により得られるパターンをマスクとして用いる、ドライエッチング工程、イオンインプランテーションプロセス工程、金属スパッタ工程、金属メッキ工程等を備えることができる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0066】
上記電子デバイスとしては、半導体チップ、半導体素子、プリント配線基板、電気回路ディスプレイ装置、情報通信端末、発光ダイオード、物理電池、化学電池等が挙げられる。即ち、電子デバイスは、電子工学の技術が適用された素子、デバイス、最終製品等を包含する。
【実施例0067】
以下、本発明を実施例に則して更に詳細に説明する。
【0068】
[1]感光性樹脂組成物の調製
(1)酸分解性樹脂
下記7種の酸分解性樹脂A~Gを用意した。
表1に酸分解性樹脂のユニット構成の詳細(各ユニットの種類、量比、形態)、酸分解性基の詳細(種類、変性率)、酸分解性樹脂の重量平均分子量を示した。
尚、「形態」は、酸分解性樹脂A~Gのうちのいずれかのみを用いたものには「単独」と記載し、2種以上の酸分解性樹脂を混合したものには「混合」と記載した。また、「混合」の形態ではその混合比を示した。
【0069】
上記のうち、酸分解性基の変性率は、核磁気共鳴装置(日本電子株式会社製、型式「JNM-ECZ400S」)を用いて13C-NMRにより測定(観測核:13C、溶媒:ジメチルスルホキシド-d6、基準物質:テトラメチルシラン、積算回数:10240回)した値である。具体的には、酸分解性樹脂の水酸基、又は、酸解離性基が結合した芳香族炭素に帰属されるピーク(156~148ppm)の積分値に対する、酸分解性基に帰属されるピーク(プロポキシエチル:105~98ppm、エトキシエチル:105~98ppm)の積分値の割合として算出した。
【0070】
上記のうち、酸分解性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、高速GPC装置(東ソー株式会社製、型式「HCL-8320GPC」)及び当該高速GPC装置に対応したカラム(東ソー株式会社製、品名「TSKGel G2000HXL,G4000HXL」)を用いて下記条件において測定し、標準ポリスチレン(東ソー株式会社製、品名「F-40、F-20、F-10、F-4、F-2、F-1、A5000、A2500、A1000」、及び、東京化成工業株式会社製、品名「2,2-メチレンビス(4-メチルフェノール)」、及び、関東化学株式会社製、品名「p-クレゾール」)による検量線を用いて換算した値である。
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
測定温度:40℃
流量:1mL/分
試料濃度:実施例:3mg/THF5mL、比較例:30mg/THF5mL
注入量:100μL
【0071】
・酸分解性樹脂A:o-クレゾールビフェニルとホルムアルデヒドとの付加縮合体に酸分解性基として1-プロポキシエチル基を導入した重合体(式(3)で表される重合体、m/(n+m)=1)。重量平均分子量11921、酸分解性基の変性率42%
【0072】
・酸分解性樹脂B:o-クレゾール及びo-クレゾールビフェニルとホルムアルデヒドとの付加縮合体に酸分解性基として1-プロポキシエチル基を導入した重合体(式(4)で表される重合体、m/(n+m)=0.3)。重量平均分子量8003、酸分解性基の変性率22%
【0073】
・酸分解性樹脂C:o-クレゾール及びo-クレゾールビフェニルとホルムアルデヒドとの付加縮合体に酸分解性基として1-プロポキシエチル基を導入した重合体(式(4)で表される重合体、m/(n+m)=0.2)。重量平均分子量6176、酸分解性基の変性率25%
【0074】
・酸分解性樹脂D:o-クレゾール及びo-クレゾールビフェニルとホルムアルデヒドとの付加縮合体に酸分解性基として1-エトキシエチル基を導入した重合体(式(4)で表される重合体、m/(n+m)=0.2)。重量平均分子量6176、酸分解性基の変性率25%
【0075】
・酸分解性樹脂E:上記酸分解性樹脂1と下記酸分解性樹脂6とを質量比3:7で混合した樹脂。
【0076】
・酸分解性樹脂F:o-クレゾールとホルムアルデヒドとの付加縮合体に酸分解性基として1-プロポキシエチル基を導入した重合体。重量平均分子量4740、酸分解性基の変性率18%
【0077】
・酸分解性樹脂G:o-クレゾール及びo-クレゾールビフェニルとホルムアルデヒドとの付加縮合体に酸分解性基として1-プロポキシエチル基を導入した重合体(式(4)で表される重合体、m/(n+m)=0.1)。重量平均分子量5458、酸分解性基の変性率20%
【0078】
【0079】
イエローライト下の部屋で、上記(1)に示す各酸分解性樹脂A~Gと、下記(2)~(4)に示す各成分を表2に示す量比で混合し、3時間、室温にて攪拌して溶液を得た。得られた溶液を孔径1.0μmのポリプロピレン製メンブランカプセルフィルタにより窒素加圧ろ過し、ろ液として、実施例1~5及び比較例1~2の感光性樹脂組成物を得た。表2に、各成分の配合を示した。
【0080】
(2)光酸発生剤
下記光酸発生剤を用意した。
・光酸発生剤:サンアプロ株式会社製、フッ素化アルキルリン酸スルホニウム塩〈ジフェニル[4-(フェニルスルファニル)フェニル]スルホニウム=トリフルオリドトリス(ペンタフルオロエタン-1-イド)ホスファート〉、品名「CPI-210S」
【0081】
(3)溶剤
下記溶剤を用意した。
・溶剤:シクロペンタノン
【0082】
(4)クエンチャー
下記クエンチャーを用意した。
・クエンチャー:トリエチルアミン(TEA)
【0083】
【0084】
[2]感光性樹脂組成物の評価
(1)パターン形成
上記[1]で得られた実施例1~5及び比較例1~2の感光性樹脂組成物を、各々4インチのシリコンウエハ上に滴下し、スピンコーターを用いて塗布後、ホットプレート上で100℃、120秒間プリベークした。プリベーク後の感光性樹脂膜の膜厚を光学式膜厚計(FILMMETRICS社製、型式「F-20」)により測定した。目標膜厚を4umとして、スピンスピードを調整しながら、塗布-ベークを数回繰り返して、膜厚4um±0.1umの感光性樹脂膜を得た(膜形成工程)。
その後、超高圧水銀ランプ(g線、h線、i線混合波長)を光源とした露光装置(ミカサ株式会社製、型式「マスクアライナーMA-20」)を用いて、ラインとスペース幅とが1:1である種々の線幅のテストパターンを含んだマスクを通して露光を行った(露光工程)。
露光後、2.38%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液に浸漬して現像(現像工程)した。
現像後、超純水にて水洗を行い(リンス工程)、レジストパターンを得た。
尚、露光後ベーク(PEB)工程は行わなかった。
【0085】
(2)感度の評価
上記(1)のパターン形成における露光工程で、ウエハの一部のみに露光されるようにマスキングし、その非露光部を適宜ずらしながら露光量を変化させることを繰り返した。これにより、10mJ/cm2のステップで、100~300mJ/cm2の段階的に露光量を増加させた露光済みウエハを得た。
得られたウエハを現像工程及びリンス工程に供した後、得られたパターンを光学顕微鏡により観察し、マスクの4umライン&スペースのスペース部が正常にオープン(現像)され、下地のSiウエハが見えている最小露光量(10mJ/cm2刻み)を下記に示す「高」、「中」、「低」の3段階に帰属した。これらの帰属を表3の「感度」の欄に示し、上述の最小露光量を「実測値(mJ/cm2)」の欄に示した。
【0086】
高:感度100mJ/cm2以下
中:感度150mJ/cm2以上、250mJ/cm2以下
低:感度300mJ/cm2以上
【0087】
(3)残膜率の評価
上記(2)における現像工程及びリンス工程に供した後のパターンにおける未露光部の膜厚を測定し、初期膜厚(4um)にて除した値を百分率に換算した。得られた百分率値を下記に示す「高」、「中」、「低」の3段階に帰属した。これらの帰属を表3の「残膜率」の欄に示し、上述の百分率値を「実測値(%)」の欄に示した。
【0088】
高:96%以上
中:90%以上、96%未満
低:90%未満
【0089】
(4)パターンプロファイルの評価
上記(2)における現像工程及びリンス工程に供した後のパターンにおける最小露光量より1ステップ露光量が多い場所(+10mJ/cm2)での4umラインレジストの断面形状を、電子顕微鏡画像(SEM画像)を用いて観察し、「垂直性」、「ひさし」、「ギザ」の3種の観点について下記に示す基準に沿って評価し、評価結果を表3の「パターンプロファイル」の欄に示した。
尚、最小露光量より1ステップ露光量が多い場所を観察した理由は、以下の通りである。即ち、光学顕微鏡で観察した最小露光量ではレジストパターンの裾部分がまだ抜けきれていないことが普通であり、レジスト線幅も、マスク線幅よりも若干太めであることが多い。そのため、最適露光量は最小露光量の1.1~2.0倍ぐらいと考えるのが妥当であるため、本プロファイルの観察場所を1ステップ多めの露光量、即ち、最適露光量の点とした。
【0090】
垂直性:ラインレジスト断面における立ち上がりの垂直性を評価した。即ち、立ち上がりの垂直性が高く、矩形性に優れたプロファイルであり、電子デバイスの製造工程に適したプロファイルであるものを「垂直」と評価し、それ以外のものを「非垂直」と評価した。
ひさし:ラインレジスト断面における上端の両端のひさし(突き出し)の有無を評価した。即ち、上端の両端がひさしのように突き出た断面形状(T-top形状とも称される)が明らかに認められるものを「有り」、軽微ではあるもののひさしが認められるものを「若干有り」、ひさしが全く認められないものを「無し」と評価した。尚、ひさしは、電子デバイスの製造工程において出現しない方が好ましい形態である。
ギザ:ひさしの評価において「有り」又は「若干有り」である場合において、ひさしにのこぎり刃のようにギザギザが認められるものを「有り」、認められないものを「無し」と評価した。尚、ギザは、電子デバイスの製造工程において出現しない方が好ましい形態である。
【0091】
(5)解像度の評価
上記(4)で用いたSEM画像において、前述した4umライン&スペースよりも更に細い部分を観察し、スペース部がオープンしている最小線幅(um)を評価して、その結果を表2の「解像度」の欄に示した。尚、使用したマスクは、10um以下は1umステップ刻みで、最小1umまでのライン&スペースパターンが存在するマスクである。
【0092】
(6)アスペクト比の評価
初期膜厚(4um)を、上記(5)で得られた最小線幅(um)で除した値をアスペクト比として、その値を表3の「アスペクト比」の欄に示した。尚、アスペクト比は、解像度と同様、レジスト性能の良否を判定する指標となる。アスペクト比はレジストプロファイルの高さ(膜厚)/線幅の比率である。
【0093】
(7)耐熱性の評価
上記(1)においてレジストパターンを形成した現像後のウエハを、120℃に加熱したホットプレート上で3分間加熱し、加熱前後でのレジストパターンの変化を、SEM画像を用いて評価し、その結果を表3の「耐熱性」の欄に示した。即ち、加熱前に対して加熱後のレジストパターン形状が保たれているものを「良」を評価し、ダレが認められるものを「悪」と評価した。
【0094】
【0095】
表3の結果から、「m/(n+m)=1」である酸分解性樹脂を含んだ感光性樹脂組成物(実施例1、実施例5)、「m/(n+m)=0.3」である酸分解性樹脂を含んだ感光性樹脂組成物(実施例2)、「m/(n+m)=0.2」である酸分解性樹脂を含んだ感光性樹脂組成物(実施例3、実施例4)を用いてパターン形成を行ったところ、耐熱性に優れた結果が得られた。また、感度と残膜率との両方についても優れた結果が得られた。
【0096】
一方、o-クレゾールビフェニルに由来する構成単位を有さない酸分解性樹脂、即ち、第2ユニットを有さない酸分解性樹脂を含んだ感光性樹脂組成物(比較例1)、「m/(n+m)=0.1」である酸分解性樹脂しか含まない感光性樹脂組成物(比較例2)、を用いてパターン形成を行ったところ、耐熱性に劣る結果であった。
【0097】
尚、実施例1~5の感光性樹脂組成物では、露光後加熱を行わずとも十分に高い感度が得られている。これには、o-クレゾールビフェニルのアルカリ溶解性の高さに由来すると考えられる。この「露光後加熱を行わずとも十分に高い感度が得られる」という特性は、装置削減、タクトタイムの短縮など、生産効率上大変好ましい。