(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176949
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】原料樹脂及び酸分解性樹脂
(51)【国際特許分類】
C08G 10/04 20060101AFI20241212BHJP
G03F 7/039 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
C08G10/04
G03F7/039 601
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095851
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000117102
【氏名又は名称】旭有機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(74)【代理人】
【識別番号】100193507
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 俊介
(72)【発明者】
【氏名】窪田 絵美
(72)【発明者】
【氏名】小西 秀和
【テーマコード(参考)】
2H225
4J033
【Fターム(参考)】
2H225AH03
2H225AK05
2H225CA12
2H225CB02
2H225CC03
2H225CC15
4J033CA02
4J033CA03
4J033CA12
4J033CA18
4J033CA28
4J033CA29
4J033CA42
4J033CB03
4J033CB18
4J033CC03
4J033CC08
4J033CC11
4J033HA02
4J033HA04
4J033HA28
4J033HB10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】酸分解性樹脂の原料樹脂として利用されるノボラック樹脂であって、優れた耐熱性と優れた溶解速度とを両立させることができる原料樹脂、及び、この原料樹脂を用いた酸分解性樹脂を提供する。
【解決手段】原料樹脂はメチレン基を介して互いに接続されたユニットを有し、ユニットは、第1ユニット(1)及び第2ユニット(2)のうち少なくとも第2ユニットを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸分解性基の導入によって酸分解性樹脂となる原料樹脂であって、
前記原料樹脂は、メチレン基を介して互いに接続されたユニットを有し、
前記ユニットは、下記式(1)で表される第1ユニット、及び、下記式(2)で表される第2ユニットのうちの少なくとも前記第2ユニットを含み、
【化1】
前記式(1)中のR
11、前記式(2)中のR
21、前記式(2)中のR
31は、少なくとも一部が1価の置換基であり、
前記1価の置換基は、炭素数1~5のアルキル基及びアリール基からなる群より選ばれることを特徴とする原料樹脂。
【請求項2】
前記第1ユニットの数をnとして、前記第2ユニットの数をmとした場合に、0.05≦m/(n+m)≦1を満たす請求項1に記載の原料樹脂。
【請求項3】
平均重量分子量が、2500以上である請求項1に記載の原料樹脂。
【請求項4】
ガラス転移温度が、85℃以上である請求項1に記載の原料樹脂。
【請求項5】
請求項1に記載の前記原料樹脂を構成するヒドロキシ基をなす水素原子のうちの少なくとも一部が、1価の酸分解性基に置換されてなることを特徴とする酸分解性樹脂。
【請求項6】
前記酸分解性基による変性率が10%以上である請求項5に記載の酸分解性樹脂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料樹脂及び酸分解性樹脂に関する。更に詳しくは、酸分解性樹脂の原料として好適な原料樹脂、この原料樹脂を用いた酸分解性樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体部品や電子部品の製造過程では、各種パターニングを行う際に、その都度、対応するフォトマスクが必要となる。フォトマスクは、酸分解性樹脂、光酸発生剤及び溶剤等を含んだ感光性樹脂組成物を塗布・乾燥して得られる樹脂膜(感光性樹脂膜)を露光・現像して所望のパターンを有するフォトマスクへと加工されている。
例えば、下記特許文献1には、ノボラック樹脂に酸分解性保護基を導入して形成された酸分解性樹脂、酸発生剤及び溶剤を含んだ感光性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の通り、感光性樹脂組成物の重要な構成である酸分解性樹脂は、一般に、原料樹脂に酸分解性を示す保護基を導入することにより形成される。このため、得られる酸分解性樹脂の性質は、原料樹脂の性質に依存する側面がある。この点、従来のノボラック樹脂を原料樹脂として用いた場合、溶解速度と耐熱性とのバランスの観点から、改善の余地があった。即ち、従来のノボラック樹脂では、耐熱性を向上させようとすると溶解速度が低下するという課題が存在した。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、酸分解性樹脂の原料樹脂として利用されるノボラック樹脂であって、優れた耐熱性と優れた溶解速度とを両立させることができる原料樹脂、及び、この原料樹脂を用いた酸分解性樹脂を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、本発明には、以下の発明が包含される。
[1]酸分解性基の導入によって酸分解性樹脂となる原料樹脂であって、
前記原料樹脂は、メチレン基を介して互いに接続されたユニットを有し、
前記ユニットは、下記式(1)で表される第1ユニット、及び、下記式(2)で表される第2ユニットのうちの少なくとも前記第2ユニットを含み、
【化1】
前記式(1)中のR
11、前記式(2)中のR
21、前記式(2)中のR
31は、少なくとも一部が1価の置換基であり、
前記1価の置換基は、炭素数1~5のアルキル基及びアリール基からなる群より選ばれることを特徴とする原料樹脂。
[2]前記第1ユニットの数をnとして、前記第2ユニットの数をmとした場合に、0.05≦m/(n+m)≦1を満たす上記[1]に記載の原料樹脂。
[3]平均重量分子量が、2500以上である上記[1]又は上記[2]に記載の原料樹脂。
[4]ガラス転移温度が、85℃以上である上記[1]乃至上記[3]のうちのいずれかに記載の原料樹脂。
[5]上記[1]乃至上記[4]のうちのいずれかに記載の前記原料樹脂を構成するヒドロキシ基をなす水素原子のうちの少なくとも一部が、1価の酸分解性基に置換されてなることを特徴とする酸分解性樹脂。
[6]前記酸分解性基による変性率が10%以上である上記[5]に記載の酸分解性樹脂。
【発明の効果】
【0007】
本発明の原料樹脂によれば、優れた耐熱性と優れた溶解速度とを両立させることができる。
本発明の酸分解性樹脂によれば、耐熱性に優れた感光性樹脂膜を形成できる感光性樹脂組成物を設計できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について具体的な実施形態に基づき説明する。但し、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。これらの実施形態はあくまでも説明のために便宜的に示す例示に過ぎず、本発明は如何なる意味でもこれらに限定されるものではなく、目的、用途に応じて本発明を種々変更することができる。また、本明細書中で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願をそのまま参考として本明細書中にとり入れるものとする。
また、本明細書では「XX~YY」の記載は「XX以上YY以下」を意味するものとする。更に、本明細書で例示する化合物では、表記法が複数ある化合物名の一部にCAS登録番号を併記する場合があるが、CAS登録番号は異性体態等により異なるため、併記した化合物名のうちの一例を表すものであり、化合物名とCAS登録番号とが1対1で対応するものではない。
【0009】
[1]原料樹脂
本原料樹脂は、メチレン基を介して互いに接続されたユニットを有し、
前記ユニットは、下記式(1)で表される第1ユニット、及び、下記式(2)で表される第2ユニットのうちの少なくとも前記第2ユニットを含み、
【化2】
式(1)中のR
11、式(2)中のR
21、式(2)中のR
31は、少なくとも一部が1価の置換基であり、1価の置換基は、炭素数1~5のアルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる(即ち、R
11、R
21及びR
31は、各々独立に、その少なくとも一部が1価の置換基である)。
【0010】
原料樹脂は、どのようにして得たものであってもよいが、例えば、フェノール系化合物(芳香環とフェノール性ヒドロキシ基とを有する化合物)とアルデヒド系化合物とを各単量体とした共重合体(ノボラック樹脂)として得ることができる。即ち、第1ユニット及び第2ユニットは、フェノール系化合物に由来する構成単位であり、メチレン基はアルデヒド系化合物に由来する構成単位とすることができる。
フェノール系化合物は、フェノール性ヒドロキシ基を有する化合物である。即ち、フェノール性ヒドロキシ基は、芳香環を構成する炭素原子であって、当該ヒドロキシ基以外の置換基を有さない炭素原子に結合されたヒドロキシ基である。アルデヒド系化合物は、アルデヒド基(-CHO)を有する化合物である。
【0011】
第1ユニット(上記式(1)で表されるユニット)は、フェノール又はフェノールの2位炭素に1価の置換基(第1ユニットのR11に相当する置換基)を有するフェノール誘導体をベースとするユニットである。この際、1価の置換基(R11)としては、炭素数1~5のアルキル基及びアリール基が含まれる。
従って、式(1)中のR11としては、H(水素原子)、炭素数1~5のアルキル基、アリール基が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。即ち、原料樹脂を構成する第1ユニットは複数存在するため、原料樹脂内には複数のR11が存在する。これらの複数のR11は、互いに同じであってもよく異なってもよい。
【0012】
1価の置換基(R11)のうち炭素数1~5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基(n-プロピル基、イソプロピル基)、ブチル基(n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基)、ペンチル基(n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基など)等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0013】
1価の置換基(R11)のうちアリール基としては、フェニル基、トリル基(p-トリル基、o-トリル基、m-トリル基)、キシリル基(2,3-キシリル基、2,4-キシリル基、2,5-キシリル基、2,6-キシリル基)等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。アリール基を構成する炭素数は限定されないが、6~12とすることができる。
【0014】
即ち、第1ユニットのベースとなる化合物(モノマー)としては、フェノール、2-アルキルフェノール、2-アリールフェノール等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
上記のうち、2-アルキルフェノールとしては、2-メチルフェノール(o-クレゾール)、2-エチルフェノール、2-プロピルフェノール、2-ブチルフェノール、2-ペンチルフェノール等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。また、2-アリールフェノールとしては、2-フェニルフェノール[別称:1,1’-ビフェニル-2-オール]、2-(2-メチルフェニル)フェノール[別称:1,1’-ビフェニル-2-オール,2’-メチル]、1,1’-ビフェニル-2-オール,2’,4’-ジメチル、等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらのなかでも、溶剤に対する溶解性を得るという観点からは、2-アルキルフェノールが好ましく、更には、o-クレゾールがより好ましい。一方、より優れた耐熱性の観点からは、2-フェニルフェノールが好ましい。
【0015】
第2ユニット(上記式(2)で表されるユニット)は、ジヒドロキシビフェニル又はその誘導体をベースとするユニットである。即ち、第2ユニットのベースとなる化合物(モノマー)としては、ジヒドロキシビフェニル及びその誘導体等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0016】
上記のうち、ジヒドロキシビフェニルとしては、2,2’-ジヒドロキシビフェニル、2,3’-ジヒドロキシビフェニル、2,4’-ジヒドロキシビフェニル、2,5’-ジヒドロキシビフェニル、2,6’-ジヒドロキシビフェニル、3,2’-ジヒドロキシビフェニル、3,3’-ジヒドロキシビフェニル、3,4’-ジヒドロキシビフェニル、3,5’-ジヒドロキシビフェニル、3,6’-ジヒドロキシビフェニル、4,2’-ジヒドロキシビフェニル、4,3’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,5’-ジヒドロキシビフェニル、4,6’-ジヒドロキシビフェニル、5,2’-ジヒドロキシビフェニル、5,3’-ジヒドロキシビフェニル、5,4’-ジヒドロキシビフェニル、5,5’-ジヒドロキシビフェニル、5,6’-ジヒドロキシビフェニル、6,2’-ジヒドロキシビフェニル、6,3’-ジヒドロキシビフェニル、6,4’-ジヒドロキシビフェニル、6,5’-ジヒドロキシビフェニル、6,6’-ジヒドロキシビフェニル等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0017】
ジヒドロキシビフェニルの誘導体としては、ビフェニル構造をなす一方のベンゼン環の隣り合った2つの炭素原子に各々ヒドロキシ基と1価の置換基(第2ユニットのR21又はR31のいずれか一方に相当する置換基)を有し、且つ、ビフェニル構造をなす他方のベンゼン環の2~5位のいずれかの炭素にヒドロキシ基を有する化合物(下記式(3)又は下記式(4)で表される化合物)、ジヒドロキシビフェニルの誘導体としては、ビフェニル構造をなす一方のベンゼン環の隣り合った2つの炭素原子に各々ヒドロキシ基と1価の置換基(第2ユニットのR21に相当する置換基)を有し、且つ、ビフェニル構造をなす他方のベンゼン環の隣り合った2つの炭素原子に各々ヒドロキシ基と1価の置換基(第2ユニットのR31に相当する置換基)を有する化合物(下記式(5)で表される化合物)、等が挙げられる。
【0018】
【0019】
1価の置換基(R21又はR31)としては、炭素数1~5のアルキル基及びアリール基が含まれる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
即ち、原料樹脂を構成する第2ユニットは複数存在するため、原料樹脂内には複数のR21及びR31が存在する。これらの複数のR21は、互いに同じであってもよく異なってもよい。同様に、これらの複数のR31は、互いに同じであってもよく異なってもよい。
【0020】
1価の置換基(R21又はR31)のうち炭素数1~5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基(n-プロピル基、イソプロピル基)、ブチル基(n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基)、ペンチル基(n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基など)等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0021】
1価の置換基(R21又はR31)のうちアリール基としては、フェニル基、トリル基(p-トリル基、o-トリル基、m-トリル基)、キシリル基(2,3-キシリル基、2,4-キシリル基、2,5-キシリル基、2,6-キシリル基)等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0022】
従って、上記式(3)又は上記式(4)で表されるジヒドロキシビフェニルの誘導体として、例えば、4,2’-ジヒドロキシ-2-アルキルビフェニル、4,2’-ジヒドロキシ-3-アルキルビフェニル、4,2’-ジヒドロキシ-5-アルキルビフェニル、4,2’-ジヒドロキシ-6-アルキルビフェニル、4,3’-ジヒドロキシ-2-アルキルビフェニル、4,3’-ジヒドロキシ-3-アルキルビフェニル、4,3’-ジヒドロキシ-5-アルキルビフェニル、4,3’-ジヒドロキシ-6-アルキルビフェニル、4,4’-ジヒドロキシ-3-アルキルビフェニル、4,4’-ジヒドロキシ-2-アルキルビフェニル、4,5’-ジヒドロキシ-2-アルキルビフェニル、4,5’-ジヒドロキシ-3-アルキルビフェニル、4,5’-ジヒドロキシ-5-アルキルビフェニル、4,5’-ジヒドロキシ-6-アルキルビフェニル、4,6’-ジヒドロキシ-2-アルキルビフェニル、4,6’-ジヒドロキシ-3-アルキルビフェニル、4,6’-ジヒドロキシ-5-アルキルビフェニル、4,6’-ジヒドロキシ-6-アルキルビフェニル等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0023】
また、上記式(5)で表されるジヒドロキシビフェニルの誘導体として、例えば、3,2’-ジヒドロキシ-2,3’-ジアルキルビフェニル、3,2’-ジヒドロキシ-4,3’-ジアルキルビフェニル、3,3’-ジヒドロキシ-2,2’-ジアルキルビフェニル、3,3’-ジヒドロキシ-4,2’-ジアルキルビフェニル、4,2’-ジヒドロキシ-2,3’-ジアルキルビフェニル、4,2’-ジヒドロキシ-3,3’-ジアルキルビフェニル、4,2’-ジヒドロキシ-3,4’-ジアルキルビフェニル、4,2’-ジヒドロキシ-5,5’-ジアルキルビフェニル、4,2’-ジヒドロキシ-6,6’-ジアルキルビフェニル、4,3’-ジヒドロキシ-2,2’-ジアルキルビフェニル、4,3’-ジヒドロキシ-3,4’-ジアルキルビフェニル、4,3’-ジヒドロキシ-5,5’-ジアルキルビフェニル、4,3’-ジヒドロキシ-6,6’-ジアルキルビフェニル、4,4’-ジヒドロキシ-2,2’-ジアルキルビフェニル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジアルキルビフェニル、4,4’-ジヒドロキシ-2,5’-ジアルキルビフェニル、4,4’-ジヒドロキシ-2,6’-ジアルキルビフェニル、4,5’-ジヒドロキシ-2,2’-ジアルキルビフェニル、4,5’-ジヒドロキシ-3,3’-ジアルキルビフェニル、4,5’-ジヒドロキシ-5,4’-ジアルキルビフェニル、4,5’-ジヒドロキシ-6,6’-ジアルキルビフェニル、4,6’-ジヒドロキシ-2,2’-ジアルキルビフェニル、4,6’-ジヒドロキシ-3,3’-ジアルキルビフェニル、4,6’-ジヒドロキシ-5,4’-ジアルキルビフェニル、4,6’-ジヒドロキシ-6,5’-ジアルキルビフェニル等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0024】
上記式(5)で表されるジヒドロキシビフェニルの誘導体のなかでも、1価の置換基(R21又はR31)としてメチル基を有する化合物としては、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルビフェニル(CAS RN 612-84-0)、4,3’-ジヒドロキシ-3,4’-ジメチルビフェニル、3,3’-ジヒドロキシ-2,2’-ジメチルビフェニル、3,2’-ジヒドロキシ-2,3’-ジメチルビフェニル、3,3’-ジヒドロキシ-4,2’-ジメチルビフェニル、3,2’-ジヒドロキシ-4,3’-ジメチルビフェニル、4,2’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルビフェニル等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0025】
以上から、原料樹脂としては、下記式(6)で表される重合体《1》、及び、下記式(7)で表される重合体《2》が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。即ち、より詳しくは、原料樹脂は、重合体《1》及び重合体《2》のうちの少なくとも一方を含んだ樹脂であるといえる。
【0026】
重合体《1》:メチレン基を介して互いに接続された第2ユニットを有し、第1ユニットを有さない重合体
【化4】
【0027】
この重合体《1》における第1ユニットと第2ユニットとの存在比は、第1ユニットの数をn、第2ユニットの数をm、とした場合にm/(n+m)=1となる。式(6)におけるmの範囲は限定されないが、例えば、1~3000とすることができる。
尚、式(6)では、第2ユニットがメチレン基を伴った繰返構造の数をmと表現している。本原料樹脂はメチレン基を介してユニットを有する構造であることから、上記の繰返構造の数は、第2ユニットの数と一致するためこのように表現できる。
式(6)中のR21及びR31については前述の通りである。また、式(6)中のRE1は、通常、水素原子である。更に、(6)中のRE2は、通常、第2ユニット(式(2)で表される第2ユニットの末端に水素原子が結合された構造)である。即ち、原料樹脂内において、第2ユニットは重合末端をなすこともできる。
【0028】
重合体《2》:メチレン基を介して互いに接続された第1ユニット及び第2ユニットの両方のユニットを有するとともに、第1ユニットの数をn、第2ユニットの数をm、とした場合に0.05≦m/(n+m)<1を満たす重合体
【化5】
【0029】
式(7)におけるmの範囲は限定されないが、例えば、1~3000とすることができる。
尚、式(7)では、第1ユニットがメチレン基を伴った繰返構造の数をnと表現し、第2ユニットがメチレン基を伴った繰返構造の数をmと表現している。本原料樹脂はメチレン基を介して各ユニットを有する構造であることから、上記の各繰返構造の数は、第1ユニットの数又は第2ユニットの数と一致するためこのように表現することができる。
式(7)中のR11、R21及びR31については前述の通りである。即ち、R11、R21及びR31は少なくとも一部が1価の置換基である。従って、複数のR11のうちの少なくとも一部が1価の置換基である場合、複数のR21のうちの少なくとも一部が1価の置換基である場合、複数のR31のうちの少なくとも一部が1価の置換基である場合、が含まれる。更に、R11として1価の置換基を有する場合、R21及びR31は1価の置換基を有していてもよく有していなくてもよい。同様に、R21として1価の置換基を有する場合、R11及びR31は1価の置換基を有していてもよく有していなくてもよい。同様に、R31として1価の置換基を有する場合、R11及びR21は1価の置換基を有していてもよく有していなくてもよい。尚、1価の置換基を有さない場合とは、水素原子である場合を意味する。
【0030】
また、式(7)中のRE1は、通常、水素原子である。更に、(7)中のRE2は、通常、第1ユニット(式(1)で表される第1ユニットの末端に水素原子が結合された構造)、又は、第2ユニット(式(2)で表される第2ユニットの末端に水素原子が結合された構造)である。即ち、原料樹脂内において、第1ユニット及び第2ユニットは重合末端をなすこともできる。
【0031】
また、重合体《2》を、上述の式(7)として表現すると便宜的な記載となるが、式(7)は、各ユニット(前述した繰返構造においても同様)がブロックとして存在することを意味しない。即ち、第1ユニット(前述した第1ユニットを含んだ繰返構造においても同様)はブロック的に存在してもよいし、ランダムに存在してもよい。これらのうちでは、ランダムに存在することがより好ましい。
第1ユニットがブロック的に存在するとは、第1ユニットが第2ユニットよりも多く存在することが顕在化された分子鎖領域を有する場合である。即ち、例えば、メチレン基と第1ユニットとのみが交互に存在する分子鎖領域を有する場合等が挙げられる。第1ユニットがランダムに存在するとは、第1ユニットが分子鎖内にまんべんなく存在すること状態である。即ち、第1ユニットが第2ユニットよりも多く存在することが顕在化された分子鎖領域を有さない場合である。
【0032】
同様に、第2ユニット(前述した第2ユニットを含んだ繰返構造においても同様)はブロック的に存在してもよいし、ランダムに存在してもよい。これらのうちでは、ランダムに存在することがより好ましい。
第2ユニットがブロック的に存在するとは、第2ユニットが第1ユニットよりも多く存在することが顕在化された分子鎖領域を有する場合である。即ち、例えば、メチレン基と第2ユニットとのみが交互に存在する分子鎖領域を有する場合等が挙げられる。第2ユニットがランダムに存在するとは、第2ユニットが分子鎖内にまんべんなく存在すること状態である。即ち、第2ユニットが第1ユニットよりも多く存在することが顕在化された分子鎖領域を有さない場合である。
【0033】
重合体《2》における第1ユニットと第2ユニットとの存在比は、第1ユニットの数をn、第2ユニットの数をm、とした場合に0.05≦m/(n+m)<1である。
この範囲では、本原料樹脂を利用して得られる酸分解性樹脂において優れた解像度と、優れた耐熱性と、を実現できる。m/(n+m)の下限は、更に0.10以上とすることができ、0.15以上とすることができ、0.20以上とすることができ、0.25以上とすることができる。一方、m/(n+m)の上限は、限定されず、0.99とすることができ、0.95とすることができ、0.90とすることができ、0.85とすることができ、0.80とすることができる。これらの上下限は、適宜各々の組合せとすることができる。従って、例えば、0.05~0.99とすることができ、0.10~0.95とすることができ、0.15~0.90とすることができ、0.20~0.85とすることができ、0.25~0.80とすることができる。
【0034】
原料樹脂は、構成単位として、第1ユニット、第2ユニット及びメチレン基のみからなってもよいが、これら以外の他構成単位(他のユニット)を含むことができる。他構成単位を含む場合、第1ユニットの数をn、第2ユニットの数をm、メチレン基の数をs、他構成単位の数をtとした場合に、t/(n+m+s+t)<0.05とすることができ、t/(n+m+s+t)<0.03とすることができ、t/(n+m+s+t)<0.01とすることができる。
【0035】
他構成単位としては、フェノール及び前述したフェノール誘導体以外の他のフェノール系化合物に由来する構成単位、ジヒドロキシビフェニル及び前述したジヒドロキシビフェニル誘導体以外の他のジヒドロキシビフェニル誘導体に由来する構成単位、及び、ホルムアルデヒド以外の他のアルデヒド系化合物に由来する構成単位、が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0036】
上記他のフェノール系化合物としては、1価の置換基(R11)が、アミノ基、ニトロ基、アルコキシ基等であるフェノール系化合物が挙げられる。その他、α-ナフトール、β-ナフトール等のナフトール類、アントロール類、ヒドロキシピレン等のフェノール類(単価フェノール類)及びこれらのアルキル誘導体;レゾルシノール、ヒドロキノン、カテコール、ピロガロール、フロログルシン等の多価フェノール類及びそのアルキル誘導体;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールM、ビスフェノールB、ビスフェノールC、ビスフェノールS等のビスフェノール類;トリスフェノール類;テトラフェノール類;等が挙げられる。多価フェノールが有するフェノール性ヒドロキシ基の数は限定されないが、例えば、2~3とすることができる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
一方、他のジヒドロキシビフェニル誘導体としては、1価の置換基(R21やR31)が、アミノ基、ニトロ基、アルコキシ基等であるジヒドロキシビフェニル誘導体が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0037】
上記他のアルデヒド系化合物としては、脂肪族アルデヒド、芳香族アルデヒドが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
脂肪族アルデヒド類としては、パラホルムアルデヒド、ポリオキシメチレン、トリオキサン、テトラオキシメチレン、グリオキサール、アセトアルデヒド、パラアルデヒド、プロピオンアルデヒド、プロペンアルデヒド、ブタナール、ヘキサナール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、アリルアルデヒド、クロトンアルデヒド、クロラール等が挙げられる。また、これらは、例えば、ホルムアルデヒドの水溶液であるホルマリン等、各種溶液として利用することができる。更には、分解によりアルデヒド化合物を生成するヘキサメチレンテトラミン等のアルデヒド生成化合物を利用することができる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0038】
芳香族アルデヒド類としては、フルフラール、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、トルアルデヒド(o-トルアルデヒド、m-トルアルデヒド、p-トルアルデヒド)、サリチルアルデヒド、ナフトアルデヒド、テレフタルアルデヒド、フェニルベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0039】
原料樹脂は、どのようにして得られたものであってもよいが、前述の通り、フェノール系化合物とアルデヒド系化合物との共重合体(付加縮合体)として得ることができる。
重合は常法に従って、触媒を用いて行うことができる。触媒としては、酸性触媒、塩基性触媒、及びその他の触媒が挙げられる。これらのなかでは、酸性触媒が好ましい。反応条件は用いる成分によって適宜選択できるが、例えば、60~150℃で2~30時間とすることができる。
【0040】
上記のうち、酸性触媒としては、塩酸、硫酸、リン酸(メタリン酸、ピロリン酸、オルトリン酸、三リン酸、四リン酸等のポリリン酸、及び、無水リン酸などを含む)、亜リン酸、ホスホン酸等の無機酸類;シュウ酸、ジエチル硫酸等の硫酸エステル、有機スルホン酸及び有機ホスホン等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
上記のうち、有機スルホン酸としては、パラトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、キシレンスルホン酸等が挙げられる。更に、有機ホスホン酸としては、エチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸、エチレンジアミンビスメチレンホスホン酸、アミノトリスメチレンホスホン酸、β-アミノエチルホスホン酸N,N-ジ酢酸、アミノメチルホスホン酸N,N-ジ酢酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1’-ジホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸等が挙げられる。
【0041】
塩基性触媒としては、金属水酸化物、金属酸化物、アミン化合物等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
このうち、金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;等が挙げられる。また、金属酸化物としては、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属酸化物等が挙げられる。更に、アミン化合物としては、ジメチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン等の脂肪族アミン類;ジメチルベンジルアミン、ナフタレンジアミン等の芳香族アミン類;等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
更には、アンモニア、分解によりアンモニアを生成するヘキサメチレンテトラミン等のアンモニア生成化合物、ナフテン酸塩等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0042】
その他、触媒としては、上記に含まれない金属化合物が挙げられる。例えば、酸化亜鉛、塩化亜鉛、酢酸亜鉛等の亜鉛化合物などの二価金属塩、二価金属化合物が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0043】
上記合成に際しては、反応溶媒を用いることができる。反応溶媒としては、ケトン化合物、エステル化合物、アルコール化合物、エーテル化合物等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
上記のうち、ケトン化合物としては、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、エチルn-ブチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジエチルケトン、ジn-プロピルケトン、メシチルオキシド、メチルn-アミルケトン、メチルn-ブチルケトン、メチルn-プロピルケトン、アセトンなどが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0044】
エステル化合物としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸n-ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸イソブチル、エトキシ酢酸エチル、オキシ酢酸エチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸アリル、イソ吉草酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸イソアミル、炭酸ジエチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸メチル、γ-ブチロラクトン、乳酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0045】
アルコール化合物としては、アミルアルコール(n-アミルアルコール、s-アミルアルコール、t-アミルアルコール)、イソアミルアルコール、2-エチルブタノール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン3-オール、ネオペンチルアルコール、2-メチル-1-ブタノール、4-メチル-2-ペンタノール、エチレングリコールモノアルキルエーテル(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等)、ジエチレングリコールジアルキルエーテル(ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等)、プロピレングリコールモノアルキルエーテル(プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等)などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0046】
エーテル化合物としては、ジエチルエーテル、エチルイソアミルエーテル、エチル-t-ブチルエーテル、1,2-エポキシブタン、ジイソプロピルエーテル、ジエチルアセタール、ジブチルエーテル、2-メチルフラン、エチレングリコールモノアルキルエーテル(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等)、エチレングリコールジアルキルエーテル(エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等)、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル(ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等)、ジエチレングリコールジアルキルエーテル(ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等)、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート(メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等)、プロピレングリコールモノアルキルエーテル(プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等)、プロピレングリコールジアルキルエーテル(プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル等)、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等)、環状エーテル(テトラヒドロフラン、ジオキサン等)などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0047】
原料樹脂を得る際のフェノール系化合物(P)とアルデヒド系化合物(F)との配合比F/P(モル配合比)は限定されないが、酸性触媒を用いてノボラック樹脂を得る観点からは、0.8≦F/P≦1.5とすることが好ましく、0.90≦F/P≦1.30とすることがより好ましく、1.00≦F/P≦1.20とすることが更に好ましい。
【0048】
原料樹脂の分子量は限定されないが、その重量平均分子量の下限は、耐熱性の観点からは、2,500以上であることが好ましい。この重量平均分子量は、更に3,000以上とすることができ、更に4,000以上とすることができ、更に5,000以上とすることができ、更に6,000以上とすることができる。一方、その重量平均分子量の上限は、取り扱い性の観点からは、50,000以下であることが好ましい。この重量平均分子量は、更に40,000以下とすることができ、更に35,000以下とすることができ、更に30,000以下とすることができ、更に25,000以下とすることができ、更に20,000以下とすることができる。これらの上下限は、適宜各々の組合せとすることができる。従って、例えば、1,000~50,000とすることができ、更に2,000~40,000とすることができ、更に3,000~35,000とすることができ、更に4,000~30,000とすることができ、更に5,000~25,000とすることができ、更に6,000~20,000とすることができる。尚、重量平均分子量の測定方法は後述する。
【0049】
原料樹脂のガラス転移温度は限定されないが、本原料樹脂によれば、ガラス転移温度を85℃以上にすることができる。更に90℃以上にすることができ、更に95℃以上にすることができ、更に100℃以上にすることができ、更に125℃以上にすることができ、更に150℃以上にすることができ、更に180℃以上にすることができる。一方、ガラス転移温度の上限は限定されないが、例えば、300℃以下とすることができ、更に250℃以下とすることができる。これらの上下限は、適宜各々の組合せとすることができる。従って、例えば、ガラス転移温度は、85~300℃とすることができ、90~300℃とすることができ、95~300℃とすることができ、100~250℃とすることができ、125~250℃とすることができ、150~250℃とすることができ、180~250℃とすることができる。尚、ガラス転移温度の測定方法は後述する。
【0050】
原料樹脂のアルカリ溶解速度(ADR)は限定されないが、本原料樹脂によれば、ADRを1000Å/s以上とすることができ、1500Å/s以上とすることができ、2000Å/s以上とすることができ、2500Å/s以上とすることができ、3000Å/s以上とすることができ、3500Å/s以上とすることができ、4000Å/s以上とすることができ、4500Å/s以上とすることができる。一方、ADRの上限は限定されないが、例えば、10000Å/s以下とすることができ、9500Å/s以下とすることができ、9000Å/s以下とすることができる。これらの上下限は、適宜各々の組合せとすることができる。従って、例えば、ADRは、1000~10000Å/sとすることができ、1500~10000Å/sとすることができ、2000~9500Å/sとすることができ、2500~9500Å/sとすることができ、3000~9500Å/sとすることができ、3500~9000Å/sとすることができ、4000~9000Å/sとすることができ、4500~9000Å/sとすることができる。尚、アルカリ溶解速度の測定方法は後述する。
【0051】
[2]酸分解性樹脂
本発明の酸分解性樹脂は、前述した原料樹脂を構成するヒドロキシ基をなす水素原子のうちの少なくとも一部が、1価の酸分解性基に置換されてなることを特徴とする。
即ち、本酸分解性樹脂は、メチレン基を介して互いに接続されたユニットを有し、
前記ユニットは、下記式(8)で表される第1ユニット、及び、下記式(9)で表される第2ユニットのうちの少なくとも前記第2ユニットを含み、
【化6】
前記式(8)中のR
11、前記式(9)中のR
21、前記式(9)中のR
31は、少なくとも一部が1価の置換基であり、前記1価の置換基は、炭素数1~5のアルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる(即ち、R
11、R
21及びR
31は、各々独立に、その少なくとも一部が1価の置換基である)。
前記式(8)中のR
12、前記式(9)中のR
22、前記式(9)中のR
32は、少なくとも一部が1価の酸分解性基である(即ち、R
12、R
22及びR
32は、各々独立に、その少なくとも一部が1価の酸分解性基である)。
【0052】
酸分解性樹脂は、どのようにして得たものであってもよいが、通常、前述した原料樹脂に、酸分解性基を導入して得ることができる。即ち、原料樹脂中のフェノール系化合物に由来するフェノール性ヒドロキシ基の少なくとも一部の水素原子を酸分解性基に置換して得ることができる。
また、前述の通り、原料樹脂は、複数の第1ユニットや複数の第2ユニットを備える。このため、原料樹脂はR12、R22、R32を各々複数備えるが、これらのR12、R22、R32は、その全てが酸分解性基であってもよいが、その一部のみが酸分解性基であってもよい。即ち、複数あるR12の一部のみが酸分解性基であることができ、複数あるR22の一部のみが酸分解性基であることができ、複数あるR32の一部のみが酸分解性基であることができる。
【0053】
酸分解性基は、酸の存在下で、酸分解性樹脂から分解される基である。酸分解性基の種類が限定されないが、例えば、アルコキシアルキル基、tert-ブトキシカルボニル基等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
上記のうち、アルコキシアルキル基は、「R81-O-R82-」として表すことができる。この式において、R81及びR82はいずれも炭素数1~5の炭化水素基であり、更には、通常、飽和炭化水素基である。具体的には、メトキシメチル基、1-メトキシエチル基、2-メトキシエチル基、1-エトキシエチル基、2-エトキシエチル基、1-プロポキシエチル基、2-プロポキシエチル基、1-メトキシプロピル基、2-メトキシプロピル基、3-メトキシプロピル基、1-エトキシプロピル基、2-エトキシプロピル基、3-エトキシプロピル基等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0054】
以上から、酸分解性樹脂としては、下記式(10)で表される重合体《3》、及び、下記式(11)で表される重合体《4》が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。即ち、より詳しくは、酸分解性樹脂は、重合体《3》及び重合体《4》のうちの少なくとも一方を含んだ樹脂であるといえる。
【0055】
重合体《3》:メチレン基を介して互いに接続された第2ユニットを有し、第1ユニットを有さない重合体
【化7】
【0056】
この重合体《3》における第1ユニットと第2ユニットとの存在比は、第1ユニットの数をn、第2ユニットの数をm、とした場合にm/(n+m)=1となる。式(10)におけるmの範囲は限定されないが、例えば、1~3000とすることができる。
式(10)中のR21及びR31については前述の通りである。式(10)中のR22及びR32は少なくとも一部が酸分解性基であり、他部は水素原子である。即ち、重合体《3》は、複数の第2ユニットを有し、これら複数の第2ユニットのうちの少なくとも一部のユニットが、1つ又は2つの酸分解性基を有する。従って、複数のR22のうちの少なくとも一部が酸分解性基である場合、複数のR32のうちの少なくとも一部が酸分解性基である場合、が含まれる。更に、R22として酸分解性基を有する場合、R32は酸分解性基を有していてもよく有していなくてもよい。同様に、R32として酸分解性基を有する場合、R22は酸分解性基を有していてもよく有していなくてもよい。
更に、式(10)中のRE1は、通常、水素原子である。また、式(10)中のRE2は、通常、第2ユニット(式(9)で表される第2ユニットの末端に水素原子が結合された構造)である。即ち、原料樹脂内において、第2ユニットは重合末端をなすこともできる。
【0057】
重合体《4》:メチレン基を介して互いに接続された第1ユニット及び第2ユニットの両方のユニットを有するとともに、第1ユニットの数をn、第2ユニットの数をm、とした場合に0.05≦m/(n+m)<1を満たす重合体
【化8】
【0058】
式(11)におけるmの範囲は限定されないが、例えば、1~3000とすることができる。
式(11)中のR11、R21及びR31については前述の通りである。式(11)中のR12、R22及びR32は少なくとも一部が酸分解性基であり、他部は水素原子である。即ち、重合体《4》は、複数の第1ユニットと複数の第2ユニットとを有する。そして、複数の第1ユニットのうちの少なくとも一部のユニットが酸分解性基を有する。更に、複数の第2ユニットのうちの少なくとも一部のユニットが1つ又は2つの酸分解性基を有する。従って、複数のR12のうちの少なくとも一部が酸分解性基である場合、複数のR22のうちの少なくとも一部が酸分解性基である場合、複数のR32のうちの少なくとも一部が酸分解性基である場合、が含まれる。更に、R12として酸分解性基を有する場合、R22及びR32は酸分解性基を有していてもよく有していなくてもよい。同様に、R22として酸分解性基を有する場合、R12及びR32は酸分解性基を有していてもよく有していなくてもよい。同様に、R32として酸分解性基を有する場合、R12及びR22は酸分解性基を有していてもよく有していなくてもよい。
【0059】
更に、式(11)中のRE1は、通常、水素原子である。また、(11)中のRE2は、通常、第1ユニット(式(8)で表される第1ユニットの末端に水素原子が結合された構造)、又は、第2ユニット(式(9)で表される第2ユニットの末端に水素原子が結合された構造)である。即ち、原料樹脂内において、第1ユニット及び第2ユニットは重合末端をなすこともできる。
【0060】
また、重合体《4》を、上述の式(11)として表現すると便宜的な記載となるが、式(11)は、各ユニットがブロックとして存在することを意味しない。即ち、第1ユニットはブロック的に存在してもよいし、ランダムに存在してもよい。これらのうちでは、ランダムに存在することがより好ましい。
第1ユニットがブロック的に存在するとは、第1ユニットが第2ユニットよりも多く存在することが顕在化された分子鎖領域を有する場合である。即ち、例えば、メチレン基と第1ユニットとのみが交互に存在する分子鎖領域を有する場合等が挙げられる。第1ユニットがランダムに存在するとは、第1ユニットが分子鎖内にまんべんなく存在すること状態である。即ち、第1ユニットが第2ユニットよりも多く存在することが顕在化された分子鎖領域を有さない場合である。
【0061】
同様に、第2ユニットはブロック的に存在してもよいし、ランダムに存在してもよい。これらのうちでは、ランダムに存在することがより好ましい。
第2ユニットがブロック的に存在するとは、第2ユニットが第1ユニットよりも多く存在することが顕在化された分子鎖領域を有する場合である。即ち、例えば、メチレン基と第2ユニットとのみが交互に存在する分子鎖領域を有する場合等が挙げられる。第2ユニットがランダムに存在するとは、第2ユニットが分子鎖内にまんべんなく存在すること状態である。即ち、第2ユニットが第1ユニットよりも多く存在することが顕在化された分子鎖領域を有さない場合である。
【0062】
尚、重合体《4》における第1ユニットと第2ユニットとの存在比については、原料樹脂と同様である。更に、酸分解性樹脂を構成するフェノール系化合物に由来する構成単位と、酸分解性樹脂を構成するアルデヒド系化合物に由来する構成単位と、の量比についても、原料樹脂と同様である。また、酸分解性樹脂は、構成単位として、第1ユニット、第2ユニット及びメチレン基のみからなってもよいが、これら以外の他構成単位(他のユニット)を含むことができることも原料樹脂と同様である。
【0063】
酸分解性樹脂における酸分解性基による変性率は、限定されないが、10%以上とすることができる。この範囲では、より優れた解像度及びより優れた耐熱性を発揮することができる。この変性率の下限は、12%以上とすることができ、15%以上とすることができる。一方、変性率の上限は、50%以下とすることができ、48%以下とすることができ、45%以上とすることができる。これらの上下限は、適宜各々の組合せとすることができる。従って、例えば、10~50%とすることができ、10~48%とすることができ、12~48%とすることができ、12~45%とすることができ、15~45%とすることができる。
尚、変性率は、フェノール系化合物に由来する構成単位の総数N0とし、このうちの酸分解性基を備えた構成単位の数をN1とした場合に、(N1/N0)×100として算出される。
【0064】
酸分解性樹脂の分子量は限定されないが、その重量平均分子量の下限は、耐熱性の観点からは、2,500以上であることが好ましい。この重量平均分子量は、更に3,000以上とすることができ、更に4,000以上とすることができ、更に5,000以上とすることができ、更に6,000以上とすることができる。一方、その重量平均分子量の上限は、取り扱い性の観点からは、50,000以下であることが好ましい。この重量平均分子量は、更に40,000以下とすることができ、更に35,000以下とすることができ、更に30,000以下とすることができ、更に25,000以下とすることができ、更に20,000以下とすることができる。これらの上下限は、適宜各々の組合せとすることができる。従って、例えば、1,000~50,000とすることができ、更に2,000~40,000とすることができ、更に3,000~35,000とすることができ、更に4,000~30,000とすることができ、更に5,000~25,000とすることができ、更に6,000~20,000とすることができる。尚、重量平均分子量の測定方法は後述する。
【0065】
酸分解性樹脂のガラス転移温度は限定されないが、本原料樹脂によれば、ガラス転移温度を60℃以上にすることができる。更に65℃以上にすることができ、更に70℃以上にすることができ、更に75℃以上にすることができ、更に80℃以上にすることができ、更に85℃以上にすることができ、更に90℃以上にすることができる。一方、ガラス転移温度の上限は限定されないが、例えば、200℃以下とすることができ、更に150℃以下とすることができる。これらの上下限は、適宜各々の組合せとすることができる。従って、例えば、ガラス転移温度は、60~200℃とすることができ、65~200℃とすることができ、70~200℃とすることができ、75~150℃とすることができ、80~150℃とすることができ、85~150℃とすることができ、90~150℃とすることができる。尚、ガラス転移温度の測定方法は後述する。
【0066】
[3]感光性樹脂組成物
前述した酸分解性樹脂は、感光性樹脂組成物に利用することができる。即ち、前述した酸分解性樹脂と、光酸発生剤と、溶剤と、を含んだ感光性樹脂組成物とすることができる。この感光性樹脂組成物によれば、耐熱性に優れた感光性樹脂膜を形成できる。
【0067】
感光性樹脂組成物に含まれる酸分解性樹脂の量は限定されないが、不揮発成分(感光性樹脂組成物のうちの溶剤以外の成分)の全体を100質量%とした場合に、50~99質量%とすることができ、55~98質量%とすることができ、65~97質量%とすることができる。
【0068】
光酸発生剤は、光照射により酸を発生する化合物を含む。光酸発生剤としては、任意のものを用いることができ、例えば、非イオン系光酸発生剤及びイオン系光酸発生剤が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0069】
非イオン系光酸発生剤としては、有機ハロゲン化物、スルホネートエステル類、スルホン類等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。上記のうち、スルホネートエステル類としては、2-ニトロベンジルエステル、芳香族スルホネート、オキシムスルホネート、N-スルホニルオキシイミド、スルホニルオキシケトン、ジアゾナフトキノン4-スルホネート等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。また、スルホン類としては、ジスルホン、ケトスルホン、スルホニルジアゾメタン等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0070】
イオン系光酸発生剤としては、オニウムカチオンを含むオニウム塩が挙げられる。このオニウムカチオンを含むオニウム塩としては、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。また、オニウム塩のアニオンとしては、スルホン酸アニオン、スルホニルイミドアニオン、スルホニルメチドアニオン等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0071】
上述のなかでも、イオン系光酸発生剤が好ましく、更には、オニウムカチオンを含むオニウム塩がより好ましい。
また、光酸発生剤は、酸としてフッ素含有酸を発生する化合物を含むことが好ましい。このような化合物(フッ素含有酸を発生する化合物)を含むことにより感度を向上させることができる。このような化合物としては、フッ素化アルキルリン酸スルホニウム塩が挙げられる。このフッ素化アルキルリン酸スルホニウム塩は、下記式(12)で表すことができる。
【0072】
【0073】
式(12)中のR51、R52及びR53は、各々独立に、水素原子又は1価の置換基であり、式(12)中のRfは、フッ化アルキル基であり、式(12)中のnは、1~6の整数である。
【0074】
上記1価の置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールチオ基等が挙げられる。1価の置換基を構成する炭素数は限定されないが、1~10とすることができる。
これらのなかでも、アリールチオ基を有することが好ましく、更には、フェニルチオ基(C6H5-S-)を有することがより好ましい。フェニルチオ基を有する場合、フェニルチオ基は、式(12)中のR51、R52及びR53のうちのいずれか1つをなし、他は水素原子であることが好ましい。
上記フッ化アルキル基としては、パーフルオロアルキル基が挙げられる。Rfを構成する炭素数は限定されないが、1~10とすることができる。
【0075】
感光性樹脂組成物に含まれる光酸発生剤の量は限定されないが、不揮発成分(感光性樹脂組成物のうちの溶剤以外の成分)の全体を100質量%とした場合に、0.1~10質量%とすることができ、0.3~8質量%とすることができ、0.5~6質量%とすることができる。
【0076】
溶剤の種類は限定されず、溶剤としては任意のものを用いることができるが、典型的には有機溶剤である。
有機溶剤としては、グリコールエーテルエステル類、グリコールエーテル類、エステル類、ケトン類、ラクトン類等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。このうち、グリコールエーテルエステル類としては、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。グリコールエーテル類としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。エステル類としては、乳酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ピルビン酸エチル等が挙げられる。ラクトン類としては、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。ケトン類としては、非環状ケトン及び環状ケトンが含まれる。このうち、非環状ケトンとしては、アセトン、メチルイソブチルケトン、2-ヘプタノン等が挙げられる。また、環状ケトンとしては、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0077】
上述のなかでも、環状ケトンを含むことが好ましい。より好ましくは溶剤の全量中の90質量%以上、更に好ましくは溶剤の全量中の95質量%以上、特に好ましくは溶剤の全量が、環状ケトンである。
溶剤として環状ケトンを用いることで、感光性樹脂組成物の保管時の経時変化を抑えることができる。より具体的には、感光性樹脂組成物を6ヶ月程度かそれ以上の長期間保管した後においても、残膜率の低下を抑えることができる。
また、環状ケトン溶剤は、他の溶剤(例えば慣用されているプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)に比べて、感光性樹脂膜(感光性樹脂組成物を製膜して得られる膜)の内部に残りにくい。このことにより、感光性樹脂膜全体としてのアルカリ溶解性をより均一にすることができる。その結果、パターンの矩形性の向上やアスペクト比の向上を図ることができる。
尚、パターンの矩形性の向上やアスペクト比の向上の効果については、例えば、乳酸アルキル(乳酸エチル等)を溶剤として用いた場合にも得ることができる。
【0078】
感光性樹脂組成物は、酸分解性樹脂、光酸発生剤及び溶剤以外の他の成分を含むことができる。即ち、酸分解性樹脂、光酸発生剤及び溶剤以外の他の成分を含まない感光性樹脂組成物とすることができるが、酸分解性樹脂、光酸発生剤、溶剤及び他の成分を含んだ感光性樹脂組成物とすることができる。
【0079】
他の成分としては、クエンチャー、防食剤(基板の防食剤等)、界面活性剤、増感剤、溶解抑止剤、安定剤、酸化防止剤、これら以外のフォトレジスト分野で公知の添加剤が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
上記のうち、クエンチャーは、光酸発生剤から発生する酸を捕捉する作用を有する化合物である。具体的には、アミン、アンモニウム塩、塩基性を示す含窒素複素環化合物等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
上記のうち、アミンとしては、脂肪族アミン、芳香族アミン等が挙げられる。更に、脂肪族アミンとしては、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン等が挙げられる。更に、脂肪族アミンとしては、モノアルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン等が挙げられる。芳香族アミンとしては、アニリン、アニリン誘導体等が挙げられる。
【0080】
上記のうち、脂肪族アミンとしては、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、ジブチルメチルアミン、メチルジペンチルアミン、ジヘキシルメチルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、ジヘプチルメチルアミン、メチルジオクチルアミン、メチルジノニルアミン、ジデシルメチルアミン、エチルジブチルアミン、エチルジペンチルアミン、エチルジヘキシルアミン、エチルジヘプチルアミン、エチルジオクチルアミン、エチルジノニルアミン、エチルジデシルアミン、トリス〔2-(2-メトキシエトキシ)エチル〕アミン、トリイソプロパノールアミン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
上記のうち、芳香族アミンとしては、ナフチルアミン、アニリン、ジイソプロピルアニリン、メチルアニリン、ニトロアニリン、N-メチルアニリン、N,N-ジメチルアニリン、ジフェニルアミン、4,4’-ジアミノ-1,2-ジフェニルエタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチルジフェニルメタン等が挙げられる。
【0081】
感光性樹脂組成物の不揮発成分(感光性樹脂組成物のうちの溶剤以外の成分)の濃度は限定されないが、30~60質量%が好ましく、45~60質量%がより好ましい。これらの好ましい範囲では、スピンコーターを用いて比較的厚膜でありながら厚さが均一な感光性樹脂膜を形成できる。そして、その結果、高アスペクト比のパターンを得ることができる。本感光性樹脂組成物の濃度は、どのように調整してもよいが、例えば、前述した溶剤の量及び種類を変えることで調整できる。
【0082】
感光性樹脂組成物は、比較的厚膜のパターン形成において、良好な性能を奏する。より具体的には、高アスペクト比(アスペクト比とは、パターンの「高さ/線幅」の値である)のパターン形成において、パターンの形状を矩形状にしやすい。
また、高アスペクト比やパターン形状の矩形性の効果は、溶剤を適切に選択することでより確実に得ることができる。例えば、前述の環状ケトンや乳酸アルキル等を溶剤として用いることで、高アスペクト比やパターン形状の矩形性を得ることができる。
即ち、感光性樹脂組成物の不揮発成分(溶剤以外の成分)の濃度を、上述のように高めにすることで、厚い樹脂膜を形成しやすくなり、また、その厚い樹脂膜をパターニングすることで高アスペクト比のパターンを得ることができる。
【0083】
感光性樹脂組成物の粘度は限定されないが、25℃における粘度において、50~10,000mPa・sが好ましく、300~10,000mPa・sがより好ましく、500~4,000mPa・sが更に好ましい。これらの好ましい範囲では、スピンコーターを用いて比較的厚膜でありながら厚さが均一な感光性樹脂膜を形成できる。そして、その結果、高アスペクト比のパターンを得ることができる。感光性樹脂組成物の粘度は、どのように調整してもよいが、例えば、前述した溶剤の量及び種類を変えることで調整できる。
尚、感光性樹脂組成物の粘度は、回転式粘度計や、毛細管を使うキャノンフェンスケ粘度計や、音叉型振動式粘度計(エー・アンド・デイ社の装置、型番:SV-10等)により測定することができる。
【0084】
[4]パターン形成方法
上述した感光性樹脂組成物を用いることによりパターン形成を行うことができる。即ち、感光性樹脂組成物を用いて感光性樹脂膜を形成する膜形成工程と、前記感光性樹脂膜を露光する露光工程と、前記感光性樹脂膜を現像する現像工程と、を含むパターン形成方法とすることができる。このパターン形成方法によれば、耐熱性に優れた感光性樹脂膜を利用してパターンニングを行うことができるためパターン設計の自由度を向上させることができる。
【0085】
膜形成工程は、感光性樹脂組成物を用いて感光性樹脂膜を形成する工程である。即ち、基板に感光性樹脂膜を積層する工程であるともいえる。
基板の種類は限定されず、例えば、各種ウエハ(Siウエハ、SiCウエハ、GaNウエハ等)、ガラス基板、セラミック基板、金属基板(アルミ基板、銅基板等)、めっき基板(銅めっき基板)等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらの基板は、未加工の基板であってもよいし、電極や素子等が表面に形成された基板であってもよい。
【0086】
感光性樹脂膜の形成方法は限定されず、電子デバイスの製造分野で利用される公知の形成方法を適宜適用できる。即ち、例えば、スピナーを用いた回転塗布、スプレーコーターを用いた噴霧塗布、浸漬塗布、印刷(インクジェット法等)塗布、ロールコーティングによる塗布等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0087】
また、基板上に塗布された感光性樹脂組成物は、通常、含まれる溶剤を除去して感光性樹脂膜となることから、膜形成工程は、溶剤除去工程を含むことができる。溶剤の除去方法は限定されないが、例えば、加熱処理により行うことができる。加熱処理における加熱温度は限定されないが、例えば、80~140℃、好ましくは90~120℃である。また、加熱時間は限定されず、利用する加熱装置により適宜とすることができるが、例えば、ホットプレートを用いる場合は30~300秒、好ましくは60~180秒とすることができる。また、熱風式オーブンを用いる場合は、5~60分、好ましくは10~30分とすることができる。
【0088】
また、形成する感光性樹脂膜の膜厚は限定されず、適用するアプリケーションや最終的に得ようとするパターン等に応じて適宜調整できるが、例えば、銅のバンプ形成を目的とする場合は、5~100μm、好ましくは10~100μm、より好ましくは15~100μmとすることができる。尚、この膜厚は、上述した不揮発成分の濃度の調整や、塗布方法の選択等により調整することができる。
【0089】
露光工程は、感光性樹脂膜を露光する工程である。この工程は、適宜のフォトマスクを介して活性光線を感光性樹脂膜に当てることにより行うことができる。
活性光線としては、X線、電子線、紫外線、可視光線等が挙げられる。波長でいえば200~500nmの光が好ましい。パターンの解像度や取り扱い性の点で、光源は水銀ランプのg線、h線又はi線が好ましく、特にi線が好ましい。また、1種の光線のみを用いてもよいが、2種以上の光線を混合して用いてもよい。
露光工程は、露光装置を用いて行うことができる。露光装置としては、コンタクトアライナー、ミラープロジェクション、ステッパーなどが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
露光工程における露光の光量は限定されないが、100~500mJ/cm2とすることができる。この露光量は、感光性樹脂膜中の感光剤の量などにより適宜調整することができる。
【0090】
現像工程は、感光性樹脂膜を現像する工程である。即ち、露光された感光性樹脂膜を、現像液で現像することにより、目的とするパターンを得る工程である。
現像は、どのような方法を用いてもよく、例えば、浸漬法、パドル法、回転スプレー法等を用いることができる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
現像により、例えば、感光性樹脂膜の露光部が溶出除去され、ポジ型のパターンを得ることができる。
【0091】
現像液の種類は限定されないが、通常、アルカリ性の液体が用いられる。現像液としては、無機アルカリ水溶液、有機アミン水溶液、4級アンモニウム塩水溶液等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
これらのうち、無機アルカリ水溶液の溶質としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア等が挙げられる。また、有機アミン水溶液の溶質としては、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。また、4級アンモニウム塩水溶液の溶質としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
上述のなかでも、現像液としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液が好ましい。この水溶液におけるテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの濃度は、好ましくは0.1~10質量%であり、更に好ましくは0.5~5質量%とすることができる。
【0092】
パターン形成方法では、膜形成工程、露光工程及び現像工程以外にも他の工程を備えることができる。他の工程としては、感光性樹脂膜を加熱する加熱工程、リンス工程等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0093】
上記のうち、加熱工程は、露光工程後且つ現像工程前に、感光性樹脂膜を加熱する工程である(露光後加熱:Post Exposure Bake)。加熱工程における加熱温度は限定されないが、好ましくは70~150℃、より好ましくは70~120℃である。また、加熱工程における加熱時間は、例えば、ホットプレートを利用する場合、好ましくは30~300秒、より好ましくは60~180秒である。加熱工程を備えることにより、即ち、露光後加熱を行うことにより、脱保護反応を促進でき、一層の高感度化を達することができる。一方で、酸分解性基としての1-エトキシエチル基や1-プロポキシエチル基は、脱保護させやすい基であるため、露光後の加熱工程を設けずとも十分な脱保護が可能である。即ち、露光後加熱をせずとも高感度を得ることができる。このことは、工数低減及び装置削減に繋がり、生産効率を向上させる要素として機能する。
【0094】
上記のうち、リンス工程は、現像工程後、リンス液によりパターン及び/又は基板を洗浄する工程である。リンス液としては、超純水を好適に用いることができる。
【0095】
更に、前述したパターン形成方法により得られるパターンをマスクとして用いることにより電子デバイスを製造することができる。
上記マスクとしては、例えば、ドライエッチング用マスク、イオンインプランテーションプロセス用マスク、金属スパッタ用マスク、金属メッキ用マスク等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
即ち、電子デバイスの製造方法は、前述したパターン形成方法により得られるパターンをマスクとして用いる、ドライエッチング工程、イオンインプランテーションプロセス工程、金属スパッタ工程、金属メッキ工程等を備えることができる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0096】
上記電子デバイスとしては、半導体チップ、半導体素子、プリント配線基板、電気回路ディスプレイ装置、情報通信端末、発光ダイオード、物理電池、化学電池等が挙げられる。即ち、電子デバイスは、電子工学の技術が適用された素子、デバイス、最終製品等を包含する。
【実施例0097】
以下、本発明を実施例に則して更に詳細に説明する。
[1]原料樹脂の調製
下記8種の原料樹脂(実施例1-1~1-5、比較例1-1~1-3)を調製した。また、これらの原料樹脂の重量平均分子量(Mw)、ガラス転移温度(Tg)、アルカリ溶解速度(ADR)を測定した。その結果を表1に示す。各測定方法については後述する。
【0098】
[実施例1-1]
温度計、攪拌装置及び還流管を備えた反応容器に、フェノール系化合物としてo-クレゾールを270質量部、及び、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルビフェニルを229質量部、アルデヒド系化合物としてホルムアルデヒドを119質量部、酸性触媒を、各々投入し、100℃で5時間反応させた後、精製操作を行って実施例1-1の原料樹脂を得た。得られた実施例1-1の原料樹脂の重量平均分子量(Mw)は3809、ガラス転移温度(Tg)は119℃、アルカリ溶解速度(ADR)は4073Å/sであった。
【0099】
[実施例1-2]
温度計、攪拌装置及び還流管を備えた反応容器に、フェノール系化合物としてo-クレゾールを270質量部、及び、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルビフェニルを229質量部、アルデヒド系化合物としてホルムアルデヒドを133質量部、酸性触媒を、各々投入し、100℃で5時間反応させた後、精製操作を行って実施例1-2の原料樹脂を得た。得られた実施例1-2の原料樹脂の重量平均分子量(Mw)は6997、ガラス転移温度(Tg)は157℃、アルカリ溶解速度(ADR)は1662Å/sであった。
【0100】
[実施例1-3]
温度計、攪拌装置及び還流管を備えた反応容器に、フェノール系化合物として4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルビフェニルを500質量部、アルデヒド系化合物としてホルムアルデヒドを227質量部、酸性触媒、反応溶媒を、各々投入し、100℃で10時間反応させた後、精製操作を行って実施例1-3の原料樹脂を得た。得られた実施例1-3の原料樹脂の重量平均分子量(Mw)は11576、ガラス転移温度(Tg)は197℃、アルカリ溶解速度(ADR)は6855Å/sであった。
【0101】
[実施例1-4]
温度計、攪拌装置及び還流管を備えた反応容器に、フェノール系化合物として4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルビフェニルを500質量部、アルデヒド系化合物としてホルムアルデヒドを227質量部、酸性触媒、反応溶媒を、各々投入し、100℃で14.5時間反応させた後、精製操作を行って実施例1-4の原料樹脂を得た。得られた実施例1-4の原料樹脂の重量平均分子量(Mw)は14260、ガラス転移温度(Tg)は199℃、アルカリ溶解速度(ADR)は6299Å/sであった。
【0102】
[比較例1-1]
温度計、攪拌装置及び還流管を備えた反応容器に、フェノール系化合物としてo-クレゾールを500質量部、アルデヒド系化合物としてホルムアルデヒドを158質量部、酸性触媒を、各々投入し、100℃で5時間反応させた後、精製操作を行って比較例1-1の原料樹脂を得た。得られた比較例1-1の原料樹脂の重量平均分子量(Mw)は3795、ガラス転移温度(Tg)は95℃、アルカリ溶解速度(ADR)は1799Å/sであった。
【0103】
[比較例1-2]
温度計、攪拌装置及び還流管を備えた反応容器に、フェノール系化合物としてo-クレゾールを500質量部、アルデヒド系化合物としてホルムアルデヒドを166質量部、酸性触媒を、各々投入し、100℃で5時間反応させた後、精製操作を行って比較例1-2の原料樹脂を得た。得られた比較例1-2の原料樹脂の重量平均分子量(Mw)は4336、ガラス転移温度(Tg)は102℃、アルカリ溶解速度(ADR)は127Å/sであった。
【0104】
[比較例1-3]
温度計、攪拌装置及び還流管を備えた反応容器に、フェノール系化合物としてo-クレゾールを500質量部、アルデヒド系化合物としてホルムアルデヒドを169質量部、酸性触媒を、各々投入し、100℃で5時間反応させた後、精製操作を行って比較例1-3の原料樹脂を得た。得られた比較例1-3の原料樹脂の重量平均分子量(Mw)は6828、ガラス転移温度(Tg)は108℃、アルカリ溶解速度(ADR)は575Å/sであった。
【0105】
【0106】
[2]酸分解性樹脂の調製
下記7種の酸分解性樹脂(実施例2-1~2-4、比較例2-1~2-3)を調製した。また、これらの酸分解性樹脂の変性率(%)、重量平均分子量(Mw)、ガラス転移温度(Tg)を測定した。その結果を表2に示す。各測定方法については後述する。
【0107】
[実施例2-1]
温度計、攪拌装置及び還流管を備えた反応容器に、上記実施例1-1として得られた原料樹脂を120質量部、酸性触媒、反応溶媒を、各々投入し、その後、更に1-プロピルビニルエーテルを30質量部投入して、40℃で3時間反応させた後、精製操作を行って実施例2-1の酸分解性樹脂を得た。得られた実施例2-1の酸分解性樹脂の酸変性基は1-プロポキシエチルであり、その変性率(%)は31%であった。更に、重量平均分子量(Mw)は4152、ガラス転移温度(Tg)は71℃であった。
【0108】
[実施例2-2]
温度計、攪拌装置及び還流管を備えた反応容器に、上記実施例1-2として得られた原料樹脂を120質量部、酸性触媒、反応溶媒を、各々投入し、その後、更に1-プロピルビニルエーテルを24質量部投入して、40℃で3時間反応させた後、精製操作を行って実施例2-2の酸分解性樹脂を得た。得られた実施例2-2の酸分解性樹脂の酸変性基は1-プロポキシエチルであり、その変性率(%)は22%であった。更に、重量平均分子量(Mw)は8003、ガラス転移温度(Tg)は97℃であった。
【0109】
[実施例2-3]
温度計、攪拌装置及び還流管を備えた反応容器に、上記実施例1-3として得られた原料樹脂を120質量部、酸性触媒、反応溶媒を、各々投入し、その後、更に1-プロピルビニルエーテルを34質量部投入して、40℃で3時間反応させた後、精製操作を行って実施例2-3の酸分解性樹脂を得た。得られた実施例2-3の酸分解性樹脂の酸変性基は1-プロポキシエチルであり、その変性率(%)は42%であった。更に、重量平均分子量(Mw)は11921、ガラス転移温度(Tg)は98℃であった。
【0110】
[実施例2-4]
温度計、攪拌装置及び還流管を備えた反応容器に、上記実施例1-3として得られた原料樹脂を120質量部、酸性触媒、反応溶媒を、各々投入し、その後、更に2-プロピルビニルエーテルを34質量部投入して、40℃で3時間反応させた後、精製操作を行って実施例2-4の酸分解性樹脂を得た。得られた実施例2-4の酸分解性樹脂の酸変性基は2-プロポキシエチルであり、その変性率(%)は38%であった。更に、重量平均分子量(Mw)は11980、ガラス転移温度(Tg)は99℃であった。
【0111】
[比較例2-1]
温度計、攪拌装置及び還流管を備えた反応容器に、上記比較例1-1として得られた原料樹脂を120質量部、酸性触媒、反応溶媒を、各々投入し、その後、更に1-プロピルビニルエーテルを24質量部投入して、40℃で3時間反応させた後、精製操作を行って比較例2-1の酸分解性樹脂を得た。得られた比較例2-1の酸分解性樹脂の酸変性基は1-プロポキシエチルであり、その変性率(%)は30%であった。更に、重量平均分子量(Mw)は4152、ガラス転移温度(Tg)は36℃未満であった。
【0112】
[比較例2-2]
温度計、攪拌装置及び還流管を備えた反応容器に、上記比較例1-2として得られた原料樹脂を120質量部、酸性触媒、反応溶媒を、各々投入し、その後、更に1-プロピルビニルエーテルを24質量部投入して、40℃で3時間反応させた後、精製操作を行って比較例2-2の酸分解性樹脂を得た。得られた比較例2-2の酸分解性樹脂の酸変性基は1-プロポキシエチルであり、その変性率(%)は19%であった。更に、重量平均分子量(Mw)は4741、ガラス転移温度(Tg)は42℃であった。
【0113】
[比較例2-3]
温度計、攪拌装置及び還流管を備えた反応容器に、上記比較例1-3として得られた原料樹脂を120質量部、酸性触媒、反応溶媒を、各々投入し、その後、更に1-プロピルビニルエーテルを24質量部投入して、40℃で3時間反応させた後、精製操作を行って比較例2-3の酸分解性樹脂を得た。得られた比較例2-3の酸分解性樹脂の酸変性基は1-プロポキシエチルであり、その変性率(%)は25%であった。更に、重量平均分子量(Mw)は7228、ガラス転移温度(Tg)は47℃であった。
【0114】
【0115】
(1)重量平均分子量(Mw)
重量平均分子量は、高速GPC装置(東ソー株式会社製、型式「HCL-8320GPC」)及び当該高速GPC装置に対応したカラム(東ソー株式会社製、品名「TSKGel G2000HXL,G4000HXL」)を用いて下記条件において測定し、標準ポリスチレン(東ソー株式会社製、品名「F-40、F-20、F-10、F-4、F-2、F-1、A5000、A2500、A1000」、及び、東京化成工業株式会社製、品名「2,2-メチレンビス(4―メチルフェノール)」、及び、関東化学株式会社製、品名「p-クレゾール」)による検量線を用いて換算した値である。
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
測定温度:40℃
流量:1mL/分
試料濃度:実施例:3mg/THF5mL、比較例:30mg/THF5mL
注入量:100μL
【0116】
(2)ガラス転移温度(Tg)
ガラス転移温度は、示差走査熱量計(株式会社リガク社製、型式「Thermo plus EVO2 DSC8231」を用いて測定した値である。この際、DSCチャートは、昇温速度5℃/分により、原料樹脂については25~250℃、酸分解性樹脂については25℃~180℃の範囲で昇温、冷却後、再度昇温することで取得した。また、ガラス転移温度は、取得したDSCチャートにおけるベースラインの変曲点(ガラス転移に基づく)として読み取った。尚、溶媒を含んだ測定対象については、溶媒除去を行ったうえで測定を行った。
【0117】
(3)アルカリ溶解速度(ADR)
アルカリ溶解速度は、以下の手法により測定した。即ち、前述の通り得られた各原料樹脂に溶剤(エチルセロソルブアセテート)を加えて粘度調整した原料樹脂溶液を、スピンコーターを用いて、シリコンウエハの表面に塗布した後、100℃で90秒間加熱して塗膜を得た。得られた塗膜の膜厚D(Å)を、反射分光膜厚計(大塚電子株式会社製、型式「FE-3000」)を用いて測定した。その後、塗膜を有するシリコンウエハを、濃度2.38質量%のテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド溶液に浸漬し、塗膜が溶解するまでの溶解時間T(秒)を測定した。そのうえで、膜厚Dを溶解時間Tで除した値をアルカリ溶解速度(ADR)として算出した。
【0118】
(4)酸分解性基の変性率(%)
酸分解性基の変性率は、核磁気共鳴装置(日本電子株式会社製、型式「JNM-ECZ400S」)を用いて13C-NMRにより測定(観測核:13C、溶媒:ジメチルスルホキシド-d6、基準物質:テトラメチルシラン、積算回数:10240回)した値である。具体的には、酸分解性樹脂の水酸基、又は、酸解離性基が結合した芳香族炭素に帰属されるピーク(156~148ppm)の積分値に対する、酸分解性基に帰属されるピーク(1-プロポキシエチル:105~98ppm、2-プロポキシエチル:105~98ppm)の積分値の割合として算出した。
【0119】
[3]実施例の効果
表1の比較例1-1の原料樹脂は、全ユニットが第1ユニットであり、表1の実施例1-1の原料樹脂は、全ユニットのうち70%が第1ユニット、30%が第2ユニットであり、両者は、3795及び3809とほぼ同じMwを有するが、実施例1-1のTgは比較例1-1に対して25%高く、ADRは2.26倍大きい。
表1の比較例1-3の原料樹脂は、全ユニットが第1ユニットであり、表1の実施例1-2の原料樹脂は、全ユニットのうち70%が第1ユニット、30%が第2ユニットであり、両者は、6828及び6997とほぼ同じMwを有するものの、実施例1-2のTgは比較例1-3に対して45%高く、ADRは2.89倍大きい。
比較例1-1の原料樹脂により得られる1799Å/sのADRと、ほぼ同等の1662Å/sのADRを実施例1-2により得ることができるが、実施例1-2のTgは、比較例1-1より65%高い。
従って、従来の原料樹脂に対して、飛躍的に優れた耐熱温度を実現しながら、優れた溶解速度を得ることができる。更に、溶解速度は幅広くコントロール可能である。
【0120】
実施例2-1~2-4及び比較例2-1~2-3から、酸分解性基の変性率の上昇に伴いTgが下がる傾向があることが分かる。
比較例2-2では比較例1-2の原料樹脂(Tg=102℃)に対して酸分解性基を変性率19%で導入したことによりTgが58.8%低下し、比較例2-3では比較例1-3の原料樹脂(Tg=108℃)に対して酸分解性基を変性率25%で導入したことによりTgが56.5%低下し、比較例2-1では比較例1-1の原料樹脂(Tg=95℃)に対して酸分解性基を変性率30%で導入したことによりTgが61.5%低下した。
実施例2-2では実施例2-2の原料樹脂(Tg=157℃)に対して酸分解性基を変性率22%で導入したことによりTgが38.2%低下し、実施例2-1では実施例1-1の原料樹脂(Tg=119℃)に対して酸分解性基を変性率31%で導入したことによりTgが40.3%低下し、実施例2-4では実施例1-3の原料樹脂(Tg=197℃)に対して酸分解性基を変性率38%で導入したことによりTgが50.9%低下し、実施例2-3では実施例1-3の原料樹脂(Tg=197℃)に対して酸分解性基を変性率42%で導入したことによりTgが50.3%低下した。
従って、比較例に対して、実施例では、変性率を高くしてもTgの低下をより小さく抑えられていることが分かる。