(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176950
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】耐熱性重合体
(51)【国際特許分類】
C08G 8/04 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
C08G8/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095852
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000117102
【氏名又は名称】旭有機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(74)【代理人】
【識別番号】100193507
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 俊介
(72)【発明者】
【氏名】窪田 絵美
(72)【発明者】
【氏名】小西 秀和
【テーマコード(参考)】
4J033
【Fターム(参考)】
4J033CA02
4J033CA03
4J033CA12
4J033CA18
4J033CA28
4J033CA29
4J033CB03
4J033CC03
4J033CC08
4J033CD02
4J033CD03
4J033HA02
4J033HA04
4J033HA12
4J033HB06
4J033HB08
4J033HB10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】優れた耐熱性を発揮できるノボラック型フェノール樹脂である耐熱性重合体を提供する。
【解決手段】本耐熱性重合体は、C1~5のアルキレン基及び/又は式(3)の構造を介して接続されたジヒドロキシビフェニル又はその誘導体をベースとするユニットを少なくとも有し、式(3)において、R
41、R
42は、少なくとも一部が置換基R
04であり、置換基R
04は、C1~5のアルキル基、アリール基から選ばれる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数1~5のアルキレン基及び/又は下記式(3)で表される構造を介して互いに接続されたユニットを有し、
前記ユニットは、下記式(1)で表される第1ユニット、及び、下記式(2)で表される第2ユニットのうちの少なくとも前記第2ユニットを含み、
【化1】
前記式(1)中のR
11、前記式(2)中のR
21、前記式(2)中のR
31は、少なくとも一部が置換基R
01であり、
前記置換基R
01は、炭素数1~5のアルキル基、アリール基からなる群より選ばれる基であり、
前記式(1)中のR
12、前記式(2)中のR
22、前記式(2)中のR
32は、少なくとも一部が置換基R
02であり、
前記置換基R
02は、炭素数1~5のアルキル基、炭素数2~10のアルコキシアルキル基からなる群より選ばれ、
前記式(3)中のR
41、前記式(3)中のR
42は、少なくとも一部が置換基R
04であり、
前記置換基R
04は、炭素数1~5のアルキル基、アリール基からなる群より選ばれることを特徴とする耐熱性重合体。
【請求項2】
前記第1ユニットの数をnとして、前記第2ユニットの数をmとした場合に、0.05≦m/(n+m)≦1を満たす請求項1に記載の耐熱性重合体。
【請求項3】
平均重量分子量が、2500以上である請求項1に記載の耐熱性重合体。
【請求項4】
ガラス転移温度が、85℃以上である請求項1に記載の耐熱性重合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性重合体に関する。更に詳しくは、ノボラック型フェノール樹脂に属する耐熱性重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
フェノール類とアルデヒド類とを用いて得られるノボラック型フェノール樹脂は、従来、様々な分野において樹脂原料として利用されている。例えば、電子部品製造における封止剤、ドライレジスト、ウェットレジスト、繊維強化材料を製造する際の繊維集束剤、繊維強化材料のマトリックス材、各種の熱硬化性樹脂、建設資材用硬化樹脂、ウレタンフォーム、エポキシ樹脂組成物、塗料等が挙げられる。これらの原料成分として利用する際は、一般に、より高い耐熱性が要求されるという実情がある。
例えば、下記特許文献1には、ノボラック型フェノール樹脂の耐熱性能を向上させる目的でサリチルアルデヒド等のモノヒドロキシ芳香族アルデヒドを利用できることの開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の通り、ノボラック型フェノール樹脂はその用途が非常に幅広く多岐にわたるため、アルデヒド類の交換以外にもより多くの耐熱性向上策が求められる。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、優れた耐熱性を発揮できるノボラック型フェノール樹脂である耐熱性重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち、本発明には、以下の発明が包含される。
[1]炭素数1~5のアルキレン基及び/又は下記式(3)で表される構造を介して互いに接続されたユニットを有し、
前記ユニットは、下記式(1)で表される第1ユニット、及び、下記式(2)で表される第2ユニットのうちの少なくとも前記第2ユニットを含み、
【化1】
前記式(1)中のR
11、前記式(2)中のR
21、前記式(2)中のR
31は、少なくとも一部が置換基R
01であり、
前記置換基R
01は、炭素数1~5のアルキル基、アリール基からなる群より選ばれる基であり、
前記式(1)中のR
12、前記式(2)中のR
22、前記式(2)中のR
32は、少なくとも一部が置換基R
02であり、
前記置換基R
02は、炭素数1~5のアルキル基、炭素数2~10のアルコキシアルキル基からなる群より選ばれ、
前記式(3)中のR
41、前記式(3)中のR
42は、少なくとも一部が置換基R
04であり、
前記置換基R
04は、炭素数1~5のアルキル基、アリール基からなる群より選ばれることを特徴とする耐熱性重合体。
[2]前記第1ユニットの数をnとして、前記第2ユニットの数をmとした場合に、0.05≦m/(n+m)≦1を満たす上記[1]に記載の耐熱性重合体。
[3]平均重量分子量が、2500以上である上記[1]又は[2]に記載の耐熱性重合体。
[4]ガラス転移温度が、85℃以上である上記[1]乃至上記[3]のうちのいずれかに記載の耐熱性重合体。
【発明の効果】
【0006】
本発明の耐熱性重合体によれば、優れた耐熱性を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明について具体的な実施形態に基づき説明する。但し、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。これらの実施形態はあくまでも説明のために便宜的に示す例示に過ぎず、本発明は如何なる意味でもこれらに限定されるものではなく、目的、用途に応じて本発明を種々変更することができる。また、本明細書中で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願をそのまま参考として本明細書中にとり入れるものとする。
また、本明細書では「XX~YY」の記載は「XX以上YY以下」を意味するものとする。更に、本明細書で例示する化合物では、表記法が複数ある化合物名の一部にCAS登録番号を併記する場合があるが、CAS登録番号は異性体態等により異なるため、併記した化合物名のうちの一例を表すものであり、化合物名とCAS登録番号とが1対1で対応するものではない。
【0008】
[1]耐熱性重合体
本耐熱性重合体は、炭素数1~5のアルキレン基及び/又は下記式(3)で表される構造を介して互いに接続されたユニットを有し、
ユニットは、下記式(1)で表される第1ユニット、及び、下記式(2)で表される第2ユニットのうちの少なくとも第2ユニットを含む。
【化2】
但し、式(1)中のR
11、式(2)中のR
21、式(2)中のR
31は、少なくとも一部が置換基R
01であり(即ち、R
11、R
21及びR
31は、各々独立に、その少なくとも一部が置換基R
01である)、置換基R
01は、炭素数1~5のアルキル基、アリール基からなる群より選ばれる基である。
また、式(1)中のR
12、式(2)中のR
22、式(2)中のR
32は、少なくとも一部が置換基R
02であり(即ち、R
12、R
22及びR
32は、各々独立に、その少なくとも一部が置換基R
02である)、置換基R
02は、炭素数1~5のアルキル基、炭素数2~10のアルコキシアルキル基からなる群より選ばれる。
更に、式(3)中のR
41、前記式(3)中のR
42は、少なくとも一部が置換基R
04であり、置換基R
04は、炭素数1~5のアルキル基、アリール基からなる群より選ばれる。
【0009】
耐熱性重合体は、どのようにして得たものであってもよいが、例えば、フェノール系化合物(芳香環とフェノール性ヒドロキシ基とを有する化合物)とアルデヒド系化合物とを各単量体とした共重合体(ノボラック樹脂)として得ることができる。即ち、第1ユニット及び第2ユニットは、フェノール系化合物に由来する構成単位であり、炭素数1~5のアルキレン基はアルデヒド系化合物に由来する構成単位とすることができる。
フェノール系化合物は、フェノール性ヒドロキシ基を有する化合物である。即ち、フェノール性ヒドロキシ基は、芳香環を構成する炭素原子であって、当該ヒドロキシ基以外の置換基を有さない炭素原子に結合されたヒドロキシ基である。アルデヒド系化合物は、アルデヒド基(-CHO)を有する化合物である。
【0010】
ユニット同士を接続する基(以下、単に「ユニット接続基」ともいう)は、炭素数1~5のアルキレン基及び/又は式(3)で表される構造である(後述する式(7)中のR5、式(8)中のR4、式(8)中のR5)。
即ち、ユニット接続基となるアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基(n-プロピレン基、イソプロピレン基など)、ブチレン基(n-ブチレン基、1-メチルプロピレン基、2-メチルプロピレン基、1,1-ジメチルエチレン基、1,2-ジメチルエチレン基など)、ペンチレン基(n-ペンチレン基、1-メチルブチレン基、2-メチルブチレン基、1,1-ジメチルプロピレン基、1,2-ジメチルプロピレン基、1,3-ジメチルプロピレン基、1-メチル-2,2-ジメチルエチレン基など)等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0011】
ユニット接続基となるアルキレン基のベースとなる化合物(モノマー)は、炭素数1~5のアルキレン基であるユニット接続基を形成できればよく、その種類は限定されないが、前述の通りアルデヒド系化合物が挙げられる。具体的には、脂肪族アルデヒドが挙げられる。また、脂肪族アルデヒドを生成することができる脂肪族アルデヒド生成化合物を用いることもできる。
脂肪族アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロパナール、ブタナール(n-ブタナール、2-メチルプロパナールなど)、ペンタナール(n-ペンタナール、2-メチルブタナール、3-メチルブタナールなど)、アクロレイン、グリオキサール、グリオキシル酸、スクシンジアルデヒド、マロンジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、アリルアルデヒド、クロトンアルデヒド等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
脂肪族アルデヒド生成化合物としては、ヘキサメチレンテトラミン、トリオキサン、テトラオキサン、ポリオキシメチレン、パラアルデヒド、メタアルデヒド等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0012】
一方、ユニット接続基となる式(3)で表される構造は、R
41及びR
42の少なくとも一部が置換基R
04である。
【化3】
ユニット接続基は、1つの耐熱性重合体分子内に複数存在する。そのため、1つの耐熱性重合体分子内にR
41及びR
42も複数存在する。これらR
41及びR
42は、その少なくとも一部が置換基R
04である。即ち、R
41及びR
42の一部は置換基R
04ではなくてもよい。その場合、R
41及びR
42は水素原子となる。
また、R
41及びR
42が置換基R
04である場合、R
41及びR
42は、各々独立に置換基R
04となることができる。即ち、1つのユニット接続基内において、R
41及びR
42の両方が各々置換基R
04であってもよく、R
41及びR
42の一方のみが置換基R
04であり、他方が水素原子であってもよく、R
41及びR
42の両方が水素原子であってもよい。更に、R
41及びR
42の両方が置換基R
04である場合、これらの置換基は同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、R
41及びR
42の一方のみが置換基R
04である場合、他のユニット接続基が有する置換基R
04と同じであってもよいし、異なっていてもよい。更に、R
41及びR
42が置換基R
04である場合、R
41とR
42とは1つの置換基R
04を構成してもよい。
【0013】
置換基R04は、炭素数1~5のアルキル基及び/又はアリール基である。
このうち、炭素数1~5のアルキル基としては、前述したメチル基、エチル基、プロピル基(n-プロピル基、イソプロピル基など)、ブチル基(n-ブチル基、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、1,1-ジメチルエチル基、1,2-ジメチルエチル基など)、ペンチル基(n-ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、1,3-ジメチルプロピル基、1-メチル-2,2-ジメチルエチル基など)等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0014】
また、アリール基としては、単環式のアリール基及び多環式のアリール基が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
単環式のアリール基としては、フェニル基、トリル基(p-トリル基、o-トリル基、m-トリル基)、キシリル基(2,3-キシリル基、2,4-キシリル基、2,5-キシリル基、2,6-キシリル基)等が挙げられる。
多環式のアリール基としては、ナフチル基(1-ナフチル基、2-ナフチル基など)、アントラセニル基(1-アントラセニル基、2-アントラセニル基、9-アントラセニル基など)、フェナントレニル基、ピレニル基、フルオロレニル基などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。アリール基を構成する炭素数は限定されないが、6~20とすることができる。
【0015】
第1ユニット(上記式(1)で表されるユニット)は、フェノール又はフェノールの2位炭素に置換基R01(第1ユニットにおいてはR11)を有するフェノール誘導体をベースとするユニットである。この際、置換基R01(第1ユニットにおいてはR11)としては、炭素数1~5のアルキル基及びアリール基が含まれる(但し、第1ユニットが第2ユニットと同じ化学構造となることはない)。
従って、式(1)中のR11としては、H(水素原子)、炭素数1~5のアルキル基、アリール基が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。即ち、耐熱性重合体を構成する第1ユニットは複数存在するため、耐熱性重合体内には複数のR11が存在する。これらの複数のR11は、互いに同じであってもよく異なってもよい。
【0016】
置換基R01(第1ユニットにおいてはR11)のうち炭素数1~5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基(n-プロピル基、イソプロピル基)、ブチル基(n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基)、ペンチル基(n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基など)等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0017】
置換基R01(第1ユニットにおいてはR11)のうちアリール基としては、フェニル基、トリル基(p-トリル基、o-トリル基、m-トリル基)、キシリル基(2,3-キシリル基、2,4-キシリル基、2,5-キシリル基、2,6-キシリル基)等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。アリール基を構成する炭素数は限定されないが、6~12とすることができる。
【0018】
即ち、第1ユニットのベースとなる化合物(モノマー)としては、フェノール、2-アルキルフェノール、2-アリールフェノール等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
上記のうち、2-アルキルフェノールとしては、2-メチルフェノール(o-クレゾール)、2-エチルフェノール、2-プロピルフェノール、2-ブチルフェノール、2-ペンチルフェノール等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。また、2-アリールフェノールとしては、2-フェニルフェノール[別称:1,1’-ビフェニル-2-オール]、2-(2-メチルフェニル)フェノール[別称:1,1’-ビフェニル-2-オール,2’-メチル]、1,1’-ビフェニル-2-オール,2’,4’-ジメチル等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらのなかでも、溶剤に対する溶解性を得るという観点からは、2-アルキルフェノールが好ましく、更には、o-クレゾールがより好ましい。一方、より優れた耐熱性の観点からは、2-フェニルフェノールが好ましい。
【0019】
第2ユニット(上記式(2)で表されるユニット)は、ジヒドロキシビフェニル又はその誘導体をベースとするユニットである。即ち、第2ユニットのベースとなる化合物(モノマー)としては、ジヒドロキシビフェニル及びその誘導体等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0020】
上記のうち、ジヒドロキシビフェニルとしては、2,2’-ジヒドロキシビフェニル、2,3’-ジヒドロキシビフェニル、2,4’-ジヒドロキシビフェニル、2,5’-ジヒドロキシビフェニル、2,6’-ジヒドロキシビフェニル、3,2’-ジヒドロキシビフェニル、3,3’-ジヒドロキシビフェニル、3,4’-ジヒドロキシビフェニル、3,5’-ジヒドロキシビフェニル、3,6’-ジヒドロキシビフェニル、4,2’-ジヒドロキシビフェニル、4,3’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,5’-ジヒドロキシビフェニル、4,6’-ジヒドロキシビフェニル、5,2’-ジヒドロキシビフェニル、5,3’-ジヒドロキシビフェニル、5,4’-ジヒドロキシビフェニル、5,5’-ジヒドロキシビフェニル、5,6’-ジヒドロキシビフェニル、6,2’-ジヒドロキシビフェニル、6,3’-ジヒドロキシビフェニル、6,4’-ジヒドロキシビフェニル、6,5’-ジヒドロキシビフェニル、6,6’-ジヒドロキシビフェニル等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0021】
ジヒドロキシビフェニルの誘導体としては、ビフェニル構造をなす一方のベンゼン環の隣り合った2つの炭素原子に各々ヒドロキシ基と置換基R01(第2ユニットにおいてはR21又はR31のいずれか一方)を有し、且つ、ビフェニル構造をなす他方のベンゼン環の2~5位のいずれかの炭素にヒドロキシ基を有する化合物(下記式(4)又は下記式(5)で表される化合物)、ジヒドロキシビフェニルの誘導体としては、ビフェニル構造をなす一方のベンゼン環の隣り合った2つの炭素原子に各々ヒドロキシ基と置換基R01(第2ユニットにおいてはR21)を有し、且つ、ビフェニル構造をなす他方のベンゼン環の隣り合った2つの炭素原子に各々ヒドロキシ基と置換基R01(第2ユニットにおいてはR31)を有する化合物(下記式(6)で表される化合物)、等が挙げられる。
【0022】
【0023】
置換基R01(第2ユニットにおいてはR21、R31)としては、炭素数1~5のアルキル基及びアリール基が含まれる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
即ち、耐熱性重合体を構成する第2ユニットは複数存在するため、耐熱性重合体内には複数のR21及びR31が存在する。これらの複数のR21は、互いに同じであってもよく異なってもよい。同様に、これらの複数のR31は、互いに同じであってもよく異なってもよい。
【0024】
置換基R01(第2ユニットにおいてはR21又はR31)のうち炭素数1~5のアルキル基としては、第1ユニットの説明において前述した各種の基等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
置換基R01(第2ユニットにおいてはR21又はR31)のうちアリール基としては、第1ユニットの説明において前述した各種の基等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0025】
従って、上記式(4)又は上記式(5)で表されるジヒドロキシビフェニルの誘導体として、例えば、4,2’-ジヒドロキシ-2-アルキルビフェニル、4,2’-ジヒドロキシ-3-アルキルビフェニル、4,2’-ジヒドロキシ-5-アルキルビフェニル、4,2’-ジヒドロキシ-6-アルキルビフェニル、4,3’-ジヒドロキシ-2-アルキルビフェニル、4,3’-ジヒドロキシ-3-アルキルビフェニル、4,3’-ジヒドロキシ-5-アルキルビフェニル、4,3’-ジヒドロキシ-6-アルキルビフェニル、4,4’-ジヒドロキシ-3-アルキルビフェニル、4,4’-ジヒドロキシ-2-アルキルビフェニル、4,5’-ジヒドロキシ-2-アルキルビフェニル、4,5’-ジヒドロキシ-3-アルキルビフェニル、4,5’-ジヒドロキシ-5-アルキルビフェニル、4,5’-ジヒドロキシ-6-アルキルビフェニル、4,6’-ジヒドロキシ-2-アルキルビフェニル、4,6’-ジヒドロキシ-3-アルキルビフェニル、4,6’-ジヒドロキシ-5-アルキルビフェニル、4,6’-ジヒドロキシ-6-アルキルビフェニル等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0026】
また、上記式(6)で表されるジヒドロキシビフェニルの誘導体として、例えば、3,2’-ジヒドロキシ-2,3’-ジアルキルビフェニル、3,2’-ジヒドロキシ-4,3’-ジアルキルビフェニル、3,3’-ジヒドロキシ-2,2’-ジアルキルビフェニル、3,3’-ジヒドロキシ-4,2’-ジアルキルビフェニル、4,2’-ジヒドロキシ-2,3’-ジアルキルビフェニル、4,2’-ジヒドロキシ-3,3’-ジアルキルビフェニル、4,2’-ジヒドロキシ-3,4’-ジアルキルビフェニル、4,2’-ジヒドロキシ-5,5’-ジアルキルビフェニル、4,2’-ジヒドロキシ-6,6’-ジアルキルビフェニル、4,3’-ジヒドロキシ-2,2’-ジアルキルビフェニル、4,3’-ジヒドロキシ-3,4’-ジアルキルビフェニル、4,3’-ジヒドロキシ-5,5’-ジアルキルビフェニル、4,3’-ジヒドロキシ-6,6’-ジアルキルビフェニル、4,4’-ジヒドロキシ-2,2’-ジアルキルビフェニル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジアルキルビフェニル、4,4’-ジヒドロキシ-2,5’-ジアルキルビフェニル、4,4’-ジヒドロキシ-2,6’-ジアルキルビフェニル、4,5’-ジヒドロキシ-2,2’-ジアルキルビフェニル、4,5’-ジヒドロキシ-3,3’-ジアルキルビフェニル、4,5’-ジヒドロキシ-5,4’-ジアルキルビフェニル、4,5’-ジヒドロキシ-6,6’-ジアルキルビフェニル、4,6’-ジヒドロキシ-2,2’-ジアルキルビフェニル、4,6’-ジヒドロキシ-3,3’-ジアルキルビフェニル、4,6’-ジヒドロキシ-5,4’-ジアルキルビフェニル、4,6’-ジヒドロキシ-6,5’-ジアルキルビフェニル等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0027】
上記式(6)で表されるジヒドロキシビフェニルの誘導体のなかでも、置換基R01(第2ユニットにおいてはR21又はR31)としてメチル基を有する化合物としては、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルビフェニル(CAS RN 612-84-0)、4,3’-ジヒドロキシ-3,4’-ジメチルビフェニル、3,3’-ジヒドロキシ-2,2’-ジメチルビフェニル、3,2’-ジヒドロキシ-2,3’-ジメチルビフェニル、3,3’-ジヒドロキシ-4,2’-ジメチルビフェニル、3,2’-ジヒドロキシ-4,3’-ジメチルビフェニル、4,2’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルビフェニル等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0028】
以上から、フェノール系化合物として、前述した第2ユニットのベースとなる化合物を用い、前述した第1ユニットのベースとなる化合物を用いずに得た耐熱性重合体としては、下記式(7)で表される重合体《1》が挙げられる。また、フェノール系化合物として、前述した第1ユニットのベースとなる化合物及び前述した第2ユニットのベースとなる化合物を用いて得た耐熱性重合体としては、下記式(8)で表される重合体《2》が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。即ち、耐熱性重合体は、重合体《1》及び/又は重合体《2》を含んだ樹脂とすることができる。
【0029】
重合体《1》:ユニット接続基R
5を介して互いに接続された第2ユニットを有し、第1ユニットを有さない重合体
【化5】
【0030】
この重合体《1》における第1ユニットと第2ユニットとの存在比は、第1ユニットの数をn、第2ユニットの数をm、とした場合にm/(n+m)=1となる。式(7)におけるmの範囲は限定されないが、例えば、1~3000とすることができる。
尚、式(7)では、第2ユニットがユニット接続基R5を伴った繰返構造の数をmと表現している。本耐熱性重合体はユニット接続基を介してユニットを有する構造であることから、上記の繰返構造の数は、第2ユニットの数と一致するためこのように表現できる。
【0031】
式(7)中のR21及びR31については前述の通りである。また、式(7)中のRE1は、通常、水素原子である。更に、(7)中のRE2は、通常、第2ユニット(式(2)で表される第2ユニットの末端に水素原子が結合された構造)である。即ち、原料樹脂内において、第2ユニットは重合末端をなすこともできる。
【0032】
重合体《1》としては、後述する実施例に示す通りユニット接続基R
5としてメチレン基を選択することができる。その他、例えば、ユニット接続基R
5は、前述の通り式(3)で表される基であり、式(3)中のR
41とR
42とは1つの置換基R
04を構成できる。そして、置換基R
04としてアリール基を選択でき、更に、多環式アリール基を選択でき、更に、フルオロレニル基を選択できる。フルオロレニル基は、フルオレン骨格を有する1価又は2価の基であり、特にフルオロレニル基が、フルオレンの9位炭素が2つの結合手を有する2価の置換基であり、当該9位炭素が、耐熱性重合体の主鎖に組み込まれた場合、本耐熱性重合体はカルド構造を得ることができ、優れた耐熱性を得ることができる。具体的には、上記式(7)において、ユニット接続基R
5が2価のフルオロレニル基であり、フルオロレニル基の9位炭素が、主鎖に組み込まれた重合体は、下記式(9)として例示できる。
【化6】
尚、式(9)において、「m’」は、R
E1とR
E2とに挟まれた化学構造が繰返構造であることを意味する。m’の範囲は限定されないが、例えば、1~1500とすることができる。
式(9)で表される重合体は、フェノール系化合物として前述したジヒドロキシビフェニル及び/又はその誘導体を用い、アルデヒド系化合物としてフルオレノンを用い、これらを各単量体とした共重合体(ノボラック樹脂)として得ることができる。
【0033】
重合体《2》:ユニット接続基R
4及びR
5を介して互いに接続された第1ユニット及び第2ユニットの両方のユニットを有するとともに、第1ユニットの数をn、第2ユニットの数をm、とした場合に0.05≦m/(n+m)<1を満たす重合体
【化7】
【0034】
式(8)におけるmの範囲は限定されないが、例えば、1~3000とすることができる。
尚、式(8)では、第1ユニットがユニット接続基R4を伴った繰返構造の数をnと表現し、第2ユニットがユニット接続基R5を伴った繰返構造の数をmと表現している。本耐熱性重合体はユニット接続基を介して各ユニットを有する構造であることから、上記の各繰返構造の数は、第1ユニットの数又は第2ユニットの数と一致するためこのように表現することができる。
【0035】
式(8)中のR11、R21及びR31については前述の通りである。即ち、R11、R21及びR31は少なくとも一部は置換基R01である。従って、複数のR11のうちの少なくとも一部が置換基R01である場合、複数のR21のうちの少なくとも一部が置換基R01である場合、複数のR31のうちの少なくとも一部が置換基R01である場合、が含まれる。更に、R11として置換基R01を有する場合、R21及びR31は置換基R01を有していてもよく有していなくてもよい。同様に、R21として置換基R01を有する場合、R11及びR31は置換基R01を有していてもよく有していなくてもよい。同様に、R31として置換基R01を有する場合、R11及びR21は置換基R01を有していてもよく有していなくてもよい。尚、置換基R01を有さない場合とは、R01が水素原子である場合を意味する。
【0036】
また、式(8)中のR4及びR5については、ユニット接続基として前述した通りである。更に、式(8)中のRE1は、通常、水素原子である。更に、(8)中のRE2は、通常、第1ユニット(式(1)で表される第1ユニットの末端に水素原子が結合された構造)、又は、第2ユニット(式(2)で表される第2ユニットの末端に水素原子が結合された構造)である。即ち、原料樹脂内において、第1ユニット及び第2ユニットは重合末端をなすこともできる。
【0037】
また、重合体《2》を、上述の式(8)として表現すると便宜的な記載となるが、式(8)は、各ユニット(前述した繰返構造においても同様)がブロックとして存在することを意味しない。即ち、第1ユニット(前述した第1ユニットを含んだ繰返構造においても同様)はブロック的に存在してもよいし、ランダムに存在してもよい。これらのうちでは、ランダムに存在することがより好ましい。
第1ユニットがブロック的に存在するとは、第1ユニットが第2ユニットよりも多く存在することが顕在化された分子鎖領域を有する場合である。即ち、例えば、ユニット接続基と第1ユニットとのみが交互に存在する分子鎖領域を有する場合等が挙げられる。第1ユニットがランダムに存在するとは、第1ユニットが分子鎖内にまんべんなく存在すること状態である。即ち、第1ユニットが第2ユニットよりも多く存在することが顕在化された分子鎖領域を有さない場合である。
【0038】
同様に、第2ユニット(前述した第2ユニットを含んだ繰返構造においても同様)はブロック的に存在してもよいし、ランダムに存在してもよい。これらのうちでは、ランダムに存在することがより好ましい。
第2ユニットがブロック的に存在するとは、第2ユニットが第1ユニットよりも多く存在することが顕在化された分子鎖領域を有する場合である。即ち、例えば、ユニット接続基と第2ユニットとのみが交互に存在する分子鎖領域を有する場合等が挙げられる。第2ユニットがランダムに存在するとは、第2ユニットが分子鎖内にまんべんなく存在すること状態である。即ち、第2ユニットが第1ユニットよりも多く存在することが顕在化された分子鎖領域を有さない場合である。
【0039】
重合体《2》における第1ユニットと第2ユニットとの存在比は、第1ユニットの数をn、第2ユニットの数をm、とした場合に0.05≦m/(n+m)<1である。
この範囲では、それ以外の耐熱性重合体に比べて、より優れた耐熱性を有することができる。m/(n+m)の下限は、更に0.10以上とすることができ、0.15以上とすることができ、0.20以上とすることができ、0.25以上とすることができる。一方、m/(n+m)の上限は、限定されず、0.99とすることができ、0.95とすることができ、0.90とすることができ、0.85とすることができ、0.80とすることができる。これらの上下限は、適宜各々の組合せとすることができる。従って、例えば、0.05~0.99とすることができ、0.10~0.95とすることができ、0.15~0.90とすることができ、0.20~0.85とすることができ、0.25~0.80とすることができる。
【0040】
また、重合体《2》は、重合体《1》の場合と同様に、ユニット接続基R4及びR5は、前述の通り式(3)で表される基であり、式(3)中のR41とR42とが1つの置換基R04を構成し、置換基R04としてフルオロレニル基を選択できる。特にフルオロレニル基が、フルオレンの9位炭素が2つの結合手を有する2価の置換基であり、当該9位炭素が、耐熱性重合体の主鎖に組み込まれた場合、本耐熱性重合体はカルド構造を得ることができ、優れた耐熱性を得ることができる。
【0041】
また、上述した式(7)で表される重合体《1》が備えるフェノール性ヒドロキシ基の水素原子は、その一部又は全部を置換基R02(R22、R32)へ置換することができる。そして、この置換がなされた重合体は、下記式(10)の重合体《3》として表すことができる。
更に、上述した式(8)で表される重合体《2》が備えるフェノール性ヒドロキシ基の水素原子は、その一部又は全部を置換基R02(R12、R22、R32)へ置換することができる。そして、この置換がなされた重合体は、下記式(11)の重合体《4》として表すことができる。
即ち、本耐熱性重合体としては、重合体《1》、重合体《2》、重合体《3》及び重合体《4》からなる群から選択される1種以上の重合体を含むことができる。
【0042】
重合体《3》:ユニット接続基R
5を介して互いに接続された第2ユニットを有し、第1ユニットを有さない重合体
【化8】
【0043】
この重合体《3》における第1ユニットと第2ユニットとの存在比は、第1ユニットの数をn、第2ユニットの数をm、とした場合にm/(n+m)=1となる。式(10)におけるmの範囲は限定されないが、例えば、1~3000とすることができる。
尚、式(10)では、第2ユニットがユニット接続基R5を伴った繰返構造の数をmと表現している。本耐熱性重合体はユニット接続基を介してユニットを有する構造であることから、上記の繰返構造の数は、第2ユニットの数と一致するためこのように表現できる。
【0044】
式(10)中のR21及びR31については前述の通りである。また、式(10)中のR5については、ユニット接続基として前述した通りである。更に、式(10)中のRE1は、通常、水素原子である。また、式(10)中のRE2は、通常、第2ユニット(式(2)で表される第2ユニットの末端に水素原子が結合された構造、但し、R22及びR32を備える得る)である。即ち、原料樹脂内において、第2ユニットは重合末端をなすこともできる。
【0045】
式(10)中のR22、式(10)中のR32は、少なくとも一部が置換基R02である(即ち、R22及びR32は、各々独立に、その少なくとも一部が置換基R02である)。前述の通り、重合体《3》は、複数の第2ユニットを備える。このため、重合体《3》はR22及びR32を各々複数備えるが、これらのR22及びR32は、その全てが置換基R02であってもよいが、その一部のみが置換基R02であってもよい。即ち、複数あるR22の一部のみが置換基R02であることができ、複数あるR32の一部のみが置換基R02であることができる。
【0046】
重合体《4》:ユニット接続基R
4及びR
5を介して互いに接続された第1ユニット及び第2ユニットの両方のユニットを有するとともに、第1ユニットの数をn、第2ユニットの数をm、とした場合に0.05≦m/(n+m)<1を満たす重合体
【化9】
【0047】
式(11)におけるmの範囲は限定されないが、例えば、1~3000とすることができる。
尚、式(11)では、第1ユニットがユニット接続基R4を伴った繰返構造の数をnと表現し、第2ユニットがユニット接続基R5を伴った繰返構造の数をmと表現している。本耐熱性重合体はユニット接続基を介して各ユニットを有する構造であることから、上記の各繰返構造の数は、第1ユニットの数又は第2ユニットの数と一致するためこのように表現することができる。
【0048】
式(11)中のR11、R21及びR31については前述の通りである。式(11)中のR12、R22及びR32は少なくとも一部が置換基R02である。即ち、重合体《4》は、複数の第1ユニットと複数の第2ユニットとを有する。そして、複数の第1ユニットのうちの少なくとも一部のユニットが置換基R02を有する。更に、複数の第2ユニットのうちの少なくとも一部のユニットが1つ又は2つの置換基R02を有する。従って、複数のR12のうちの少なくとも一部が置換基R02である場合、複数のR22のうちの少なくとも一部が置換基R02である場合、複数のR32のうちの少なくとも一部が置換基R02である場合、が含まれる。更に、R12として置換基R02を有する場合、R22及びR32は置換基R02を有していてもよく有していなくてもよい。同様に、R22として置換基R02を有する場合、R12及びR32は置換基R02を有していてもよく有していなくてもよい。同様に、R32として置換基R02を有する場合、R12及びR22は置換基R02を有していてもよく有していなくてもよい。尚、置換基R02を有さない場合とは、R02が水素原子である場合を意味する。
【0049】
更に、式(11)中のRE1は、通常、水素原子である。また、(11)中のRE2は、通常、第1ユニット(式(1)で表される第1ユニットの末端に水素原子が結合された構造、但し、R12を備える得る)、又は、第2ユニット(式(2)で表される第2ユニットの末端に水素原子が結合された構造、但し、R22及びR32を備える得る)である。即ち、原料樹脂内において、第1ユニット及び第2ユニットは重合末端をなすこともできる。
【0050】
また、重合体《4》を、上述の式(11)として表現すると便宜的な記載となるが、式(11)は、各ユニット(前述した繰返構造においても同様)がブロックとして存在することを意味しないことは、重合体《2》の場合と同様である。
即ち、第1ユニット(前述した第1ユニットを含んだ繰返構造においても同様)はブロック的に存在してもよいし、ランダムに存在してもよい。これらのうちでは、ランダムに存在することがより好ましい。
同様に、第2ユニット(前述した第2ユニットを含んだ繰返構造においても同様)はブロック的に存在してもよいし、ランダムに存在してもよい。これらのうちでは、ランダムに存在することがより好ましい。
【0051】
重合体《4》における第1ユニットと第2ユニットとの存在比は、第1ユニットの数をn、第2ユニットの数をm、とした場合に0.05≦m/(n+m)<1である。このことは、重合体《2》の場合と同様である。
この範囲では、それ以外の耐熱性重合体に比べて、より優れた耐熱性を有することができる。m/(n+m)の下限は、更に0.10以上とすることができ、0.15以上とすることができ、0.20以上とすることができ、0.25以上とすることができる。一方、m/(n+m)の上限は、限定されず、0.99とすることができ、0.95とすることができ、0.90とすることができ、0.85とすることができ、0.80とすることができる。これらの上下限は、適宜各々の組合せとすることができる。従って、例えば、0.05~0.99とすることができ、0.10~0.95とすることができ、0.15~0.90とすることができ、0.20~0.85とすることができ、0.25~0.80とすることができる。
【0052】
また、上述した式(10)で表される重合体《3》、上述した式(11)で表される重合体《4》が備える置換基R02(R12、R22、R32)は、炭素数1~5のアルキル基、炭素数2~10のアルコキシアルキル基からなる群より選ばれる基である。
このうち、炭素数1~5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基(n-プロピル基、イソプロピル基)、ブチル基(n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基)、ペンチル基(n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基など)等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0053】
また、炭素数2~10のアルコキシアルキル基からなる群より選ばれる基である。アルコキシアルキル基は、例えば、「R81-O-R82-」として表すことができる。この式において、R81及びR82は、これらの炭素数の合計数が10以下であればよい。従って、例えば、R81及びR82は、いずれも炭素数1~9の炭化水素基とすることができる。
このようなアルコキシアルキル基としては、R81がメチル基であり且つR82が炭素数1~9のアルキル基である基(メトキシメチル基、メトキシエチル基、メトキシプロピル基、メトキシブチル基、メトキシペンチル基、メトキシヘキシル基、メトキシヘプチル基、メトキシオクチル基、メトキシノニル基など);R81がエチル基であり且つR82が炭素数1~8のアルキル基である基(エトキシメチル基、エトキシエチル基、エトキシプロピル基、エトキシブチル基、エトキシペンチル基、エトキシヘキシル基、エトキシヘプチル基、エトキシオクチル基など);R81がプロピル基であり且つR82が炭素数1~7のアルキル基である基(プロポキシメチル基、プロポキシエチル基、プロポキシプロピル基、プロポキシブチル基、プロポキシペンチル基、プロポキシヘキシル基、プロポキシヘプチル基など);R81がブチル基であり且つR82が炭素数1~6のアルキル基である基(ブトキシメチル基、ブトキシエチル基、ブトキシプロピル基、ブトキシブチル基、ブトキシペンチル基、ブトキシヘキシル基など);R81がペントキシ基であり且つR82が炭素数1~5のアルキル基である基(ペントキシメチル基、ペントキシエチル基、ペントキシプロピル基、ペントキシブチル基、ペントキシペンチル基など);R81がヘキソキシ基であり且つR82が炭素数1~4のアルキル基である基(ヘキソキシメチル基、ヘキソキシエチル基、ヘキソキシプロピル基、ヘキソキシブチル基など);R81がヘプトキシ基であり且つR82が炭素数1~3のアルキル基である基(ヘプトキシメチル基、ヘプトキシエチル基、ヘプトキシプロピル基など);R81がオクトキシ基であり且つR82が炭素数1~2のアルキル基である基(オクトキシメチル基、オクトキシエチル基など);R81がノノキシ基であり且つR82がメチル基である基(ノノキシメチル基など);等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0054】
重合体《3》及び重合体《4》における置換基R02による変性率は、限定されないが、10%以上とすることができる。この範囲では、置換基R02の導入によるメリットをより多く享受することができる。この変性率の下限は、12%以上とすることができ、15%以上とすることができる。一方、変性率の上限は、50%以下とすることができ、48%以下とすることができ、45%以上とすることができる。これらの上下限は、適宜各々の組合せとすることができる。従って、例えば、10~50%とすることができ、10~48%とすることができ、12~48%とすることができ、12~45%とすることができ、15~45%とすることができる。
尚、変性率は、フェノール系化合物に由来する構成単位の総数N0とし、このうちの置換基R02を備えた構成単位の数をN1とした場合に、(N1/N0)×100として算出される。
【0055】
耐熱性重合体は、構成単位として、第1ユニット、第2ユニット及びユニット接続基のみからなってもよいが、これら以外の他構成単位(他のユニット)を含むことができる。他構成単位を含む場合、第1ユニットの数をn、第2ユニットの数をm、ユニット接続基の数をs、他構成単位の数をtとした場合に、t/(n+m+s+t)<0.05とすることができ、t/(n+m+s+t)<0.03とすることができ、t/(n+m+s+t)<0.01とすることができる。
【0056】
他構成単位としては、フェノール及び前述したフェノール誘導体以外の他のフェノール系化合物に由来する構成単位、ジヒドロキシビフェニル及び前述したジヒドロキシビフェニル誘導体以外の他のジヒドロキシビフェニル誘導体に由来する構成単位、及び、前述した脂肪族アルデヒド及びその生成化合物以外の他のアルデヒド系化合物に由来する構成単位、が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0057】
上記他のフェノール系化合物としては、1価の置換基(R11)が、アミノ基、ニトロ基、アルコキシ基等であるフェノール系化合物が挙げられる。その他、α-ナフトール、β-ナフトール等のナフトール類、アントロール類、ヒドロキシピレン等のフェノール類(単価フェノール類)及びこれらのアルキル誘導体;レゾルシノール、ヒドロキノン、カテコール、ピロガロール、フロログルシン等の多価フェノール類及びそのアルキル誘導体;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールM、ビスフェノールB、ビスフェノールC、ビスフェノールS等のビスフェノール類;トリスフェノール類;テトラフェノール類;等が挙げられる。多価フェノールが有するフェノール性ヒドロキシ基の数は限定されないが、例えば、2~3とすることができる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
一方、他のジヒドロキシビフェニル誘導体としては、1価の置換基(R21やR31)が、アミノ基、ニトロ基、アルコキシ基等であるジヒドロキシビフェニル誘導体が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0058】
上記他のアルデヒド系化合物としては、炭素数6以上のユニット接続基を形成する脂肪族アルデヒド、ヘテロ原子を含んだユニット接続基を形成する脂肪族アルデヒド、芳香族アルデヒド化合物、これらの化合物を生成する化合物等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
上記のうち、炭素数6以上のユニット接続基を形成する脂肪族アルデヒドとしては、2-エチルブタナール、シクロヘキシルアルデヒド、5-ノルボルネン-2-カルボキシアルデヒド等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
ヘテロ原子を含んだユニット接続基を形成する脂肪族アルデヒドとしては、クロラール等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0059】
芳香族アルデヒド化合物としては、フルフラール、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、トルアルデヒド(o-トルアルデヒド、m-トルアルデヒド、p-トルアルデヒド)、ジフェニルアセトアルデヒド、サリチルアルデヒド、ナフトアルデヒド、テレフタルアルデヒド、フェニルベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0060】
耐熱性重合体は、どのようにして得られたものであってもよいが、前述の通り、フェノール系化合物とアルデヒド系化合物との共重合体(付加縮合体)として得ることができる。この重合は常法に従って、触媒を用いて行うことができる。触媒としては、酸性触媒、塩基性触媒、及びその他の触媒が挙げられる。これらのなかでは、酸性触媒が好ましい。反応条件は用いる成分によって適宜選択できるが、例えば、60~150℃で2~30時間とすることができる。
【0061】
上記のうち、酸性触媒としては、塩酸、硫酸、リン酸(メタリン酸、ピロリン酸、オルトリン酸、三リン酸、四リン酸等のポリリン酸、及び、無水リン酸などを含む)、亜リン酸、ホスホン酸等の無機酸類;シュウ酸、ジエチル硫酸等の硫酸エステル、有機スルホン酸及び有機ホスホン等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
上記のうち、有機スルホン酸としては、パラトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、キシレンスルホン酸等が挙げられる。更に、有機ホスホン酸としては、エチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸、エチレンジアミンビスメチレンホスホン酸、アミノトリスメチレンホスホン酸、β-アミノエチルホスホン酸N,N-ジ酢酸、アミノメチルホスホン酸N,N-ジ酢酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1’-ジホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸等が挙げられる。
【0062】
塩基性触媒としては、金属水酸化物、金属酸化物、アミン化合物等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
このうち、金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;等が挙げられる。また、金属酸化物としては、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属酸化物等が挙げられる。更に、アミン化合物としては、ジメチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン等の脂肪族アミン類;ジメチルベンジルアミン、ナフタレンジアミン等の芳香族アミン類;等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
更には、アンモニア、分解によりアンモニアを生成するヘキサメチレンテトラミン等のアンモニア生成化合物、ナフテン酸塩等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0063】
その他、触媒としては、上記に含まれない金属化合物が挙げられる。例えば、酸化亜鉛、塩化亜鉛、酢酸亜鉛等の亜鉛化合物などの二価金属塩、二価金属化合物が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0064】
上記合成に際しては、反応溶媒を用いることができる。反応溶媒としては、ケトン化合物、エステル化合物、アルコール化合物、エーテル化合物等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
上記のうち、ケトン化合物としては、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、エチルn-ブチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジエチルケトン、ジn-プロピルケトン、メシチルオキシド、メチルn-アミルケトン、メチルn-ブチルケトン、メチルn-プロピルケトン、アセトンなどが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0065】
エステル化合物としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸n-ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸イソブチル、エトキシ酢酸エチル、オキシ酢酸エチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸アリル、イソ吉草酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸イソアミル、炭酸ジエチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸メチル、γ-ブチロラクトン、乳酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0066】
アルコール化合物としては、アミルアルコール(n-アミルアルコール、s-アミルアルコール、t-アミルアルコール)、イソアミルアルコール、2-エチルブタノール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン3-オール、ネオペンチルアルコール、2-メチル-1-ブタノール、4-メチル-2-ペンタノール、エチレングリコールモノアルキルエーテル(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等)、ジエチレングリコールジアルキルエーテル(ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等)、プロピレングリコールモノアルキルエーテル(プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等)などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0067】
エーテル化合物としては、ジエチルエーテル、エチルイソアミルエーテル、エチル-t-ブチルエーテル、1,2-エポキシブタン、ジイソプロピルエーテル、ジエチルアセタール、ジブチルエーテル、2-メチルフラン、エチレングリコールモノアルキルエーテル(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等)、エチレングリコールジアルキルエーテル(エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等)、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル(ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等)、ジエチレングリコールジアルキルエーテル(ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等)、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート(メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等)、プロピレングリコールモノアルキルエーテル(プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等)、プロピレングリコールジアルキルエーテル(プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル等)、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等)、環状エーテル(テトラヒドロフラン、ジオキサン等)などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0068】
耐熱性重合体を得る際のフェノール系化合物(P)とアルデヒド系化合物(F)との配合比F/P(モル配合比)は限定されないが、酸性触媒を用いてノボラック樹脂を得る観点からは、0.8≦F/P≦1.5とすることが好ましく、0.90≦F/P≦1.30とすることがより好ましく、1.00≦F/P≦1.20とすることが更に好ましい。
【0069】
耐熱性重合体の分子量は限定されないが、その重量平均分子量の下限は、耐熱性の観点からは、2,500以上であることが好ましい。この重量平均分子量は、更に3,000以上とすることができ、更に4,000以上とすることができ、更に5,000以上とすることができ、更に6,000以上とすることができる。一方、その重量平均分子量の上限は、取り扱い性の観点からは、50,000以下であることが好ましい。この重量平均分子量は、更に40,000以下とすることができ、更に35,000以下とすることができ、更に30,000以下とすることができ、更に25,000以下とすることができ、更に20,000以下とすることができる。これらの上下限は、適宜各々の組合せとすることができる。従って、例えば、1,000~50,000とすることができ、更に2,000~40,000とすることができ、更に3,000~35,000とすることができ、更に4,000~30,000とすることができ、更に5,000~25,000とすることができ、更に6,000~20,000とすることができる。尚、重量平均分子量の測定方法は後述する。
【0070】
耐熱性重合体のガラス転移温度は限定されないが、本耐熱性重合体によれば、ガラス転移温度を85℃以上にすることができる。更に90℃以上にすることができ、更に95℃以上にすることができ、更に100℃以上にすることができ、更に125℃以上にすることができ、更に150℃以上にすることができ、更に180℃以上にすることができる。一方、ガラス転移温度の上限は限定されないが、例えば、300℃以下とすることができ、更に250℃以下とすることができる。これらの上下限は、適宜各々の組合せとすることができる。従って、例えば、ガラス転移温度は、85~300℃とすることができ、90~300℃とすることができ、95~300℃とすることができ、100~250℃とすることができ、125~250℃とすることができ、150~250℃とすることができ、180~250℃とすることができる。尚、ガラス転移温度の測定方法は後述する。
【実施例0071】
以下、本発明を実施例に則して更に詳細に説明する。
[1]耐熱性重合体の調製
下記8種の耐熱性重合体(実施例1~4、比較例1~3)を調製した。また、これらの耐熱性重合体の重量平均分子量(Mw)、ガラス転移温度(Tg)を測定した。その結果を表1に示す。各測定方法については後述する。
【0072】
[実施例1]
温度計、攪拌装置及び還流管を備えた反応容器に、フェノール系化合物としてo-クレゾールを270質量部、及び、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルビフェニルを229質量部、アルデヒド系化合物としてホルムアルデヒドを119質量部、酸性触媒を、各々投入し、100℃で5時間反応させた後、精製操作を行って実施例1の耐熱性重合体を得た。得られた実施例1の耐熱性重合体の重量平均分子量(Mw)は3809、ガラス転移温度(Tg)は119℃であった。
【0073】
[実施例2]
温度計、攪拌装置及び還流管を備えた反応容器に、フェノール系化合物としてo-クレゾールを270質量部、及び、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルビフェニルを229質量部、アルデヒド系化合物としてホルムアルデヒドを133質量部、酸性触媒を、各々投入し、100℃で5時間反応させた後、精製操作を行って実施例2の耐熱性重合体を得た。得られた実施例2の耐熱性重合体の重量平均分子量(Mw)は6997、ガラス転移温度(Tg)は157℃であった。
【0074】
[実施例3]
温度計、攪拌装置及び還流管を備えた反応容器に、フェノール系化合物として4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルビフェニルを500質量部、アルデヒド系化合物としてホルムアルデヒドを227質量部、酸性触媒、反応溶媒を、各々投入し、100℃で10時間反応させた後、精製操作を行って実施例3の耐熱性重合体を得た。得られた実施例4の耐熱性重合体の重量平均分子量(Mw)は11576、ガラス転移温度(Tg)は197℃であった。
【0075】
[実施例4]
温度計、攪拌装置及び還流管を備えた反応容器に、フェノール系化合物として4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルビフェニルを500質量部、アルデヒド系化合物としてホルムアルデヒドを227質量部、酸性触媒、反応溶媒を、各々投入し、100℃で14.5時間反応させた後、精製操作を行って実施例4の耐熱性重合体を得た。得られた実施例5の耐熱性重合体の重量平均分子量(Mw)は14260、ガラス転移温度(Tg)は199℃であった。
【0076】
[比較例1]
温度計、攪拌装置及び還流管を備えた反応容器に、フェノール系化合物としてo-クレゾールを500質量部、アルデヒド系化合物としてホルムアルデヒドを158質量部、酸性触媒を、各々投入し、100℃で5時間反応させた後、精製操作を行って比較例1の耐熱性重合体を得た。得られた比較例1の耐熱性重合体の重量平均分子量(Mw)は3795、ガラス転移温度(Tg)は95℃であった。
【0077】
[比較例2]
温度計、攪拌装置及び還流管を備えた反応容器に、フェノール系化合物としてo-クレゾールを500質量部、アルデヒド系化合物としてホルムアルデヒドを166質量部、酸性触媒を、各々投入し、100℃で5時間反応させた後、精製操作を行って比較例2の耐熱性重合体を得た。得られた比較例2の耐熱性重合体の重量平均分子量(Mw)は4336、ガラス転移温度(Tg)は102℃であった。
【0078】
[比較例3]
温度計、攪拌装置及び還流管を備えた反応容器に、フェノール系化合物としてo-クレゾールを500質量部、アルデヒド系化合物としてホルムアルデヒドを169質量部、酸性触媒を、各々投入し、100℃で5時間反応させた後、精製操作を行って比較例3の耐熱性重合体を得た。得られた比較例3の耐熱性重合体の重量平均分子量(Mw)は6828、ガラス転移温度(Tg)は108℃であった。
【0079】
【0080】
[2]評価
(1)重量平均分子量(Mw)
重量平均分子量は、高速GPC装置(東ソー株式会社製、型式「HCL-8320GPC」)及び当該高速GPC装置に対応したカラム(東ソー株式会社製、品名「TSKGel G2000HXL,G4000HXL」)を用いて下記条件において測定し、標準ポリスチレン(東ソー株式会社製、品名「F-40、F-20、F-10、F-4、F-2、F-1、A5000、A2500、A1000」、及び、東京化成工業株式会社製、品名「2,2-メチレンビス(4-メチルフェノール)」、及び、関東化学株式会社製、品名「p-クレゾール」)による検量線を用いて換算した値である。
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
測定温度:40℃
流量:1mL/分
試料濃度:実施例:3mg/THF5mL、比較例:30mg/THF5mL
注入量:100μL
【0081】
(2)ガラス転移温度(Tg)
ガラス転移温度は、示差走査熱量計(株式会社リガク社製、型式「Thermo plus EVO2 DSC8231」を用いて測定した値である。この際、DSCチャートは、昇温速度5℃/分により、25~250℃の範囲で昇温、冷却後、再度昇温することで取得した。また、ガラス転移温度は、取得したDSCチャートにおけるベースラインの変曲点(ガラス転移に基づく)として読み取った。尚、溶媒を含んだ測定対象については、溶媒除去を行ったうえで測定を行った。
【0082】
[3]実施例の効果
表1の比較例1の重合体は、全ユニットが第1ユニットであり、表1の実施例1の重合体は、全ユニットのうち70%が第1ユニット、30%が第2ユニットであり、両者は、3795及び3809とほぼ同じMwを有するが、実施例1のTgは比較例1に対して25%高い。表1の比較例3の重合体は、全ユニットが第1ユニットであり、表1の実施例2の重合体は、全ユニットのうち70%が第1ユニット、30%が第2ユニットであり、両者は、6828及び6997とほぼ同じMwを有するものの、実施例2のTgは比較例3に対して45%高い。
そして、比較例1と比較例3との比較から、Mwが3795から6828へ大きくなったことに伴う、Tgの変化は95℃→108℃であり、その変化率は0.43%である。一方、実施例1と実施例2との比較から、Mwが3809から6997へ大きくなったことに伴う、Tgの変化は119℃→197℃であり、その変化率は1.20%である。即ち、第2ユニットの導入により、効率よくTgを向上させられることが分かる。
更に、実施例3及び実施例4の結果から、全ユニットが第2ユニットからなる重合体では、Tgは、各々197℃及び199℃と極めて高いものとなっていることが分かる。