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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176952
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】点灯システム、及び照明器具
(51)【国際特許分類】
   H05B 47/24 20200101AFI20241212BHJP
   H05B 45/375 20200101ALI20241212BHJP
   H05B 45/38 20200101ALI20241212BHJP
   H05B 45/50 20220101ALI20241212BHJP
   H05B 47/105 20200101ALI20241212BHJP
   H05B 45/10 20200101ALI20241212BHJP
【FI】
H05B47/24
H05B45/375
H05B45/38
H05B45/50
H05B47/105
H05B45/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095857
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 健
(72)【発明者】
【氏名】下村 優太郎
(72)【発明者】
【氏名】日野 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】森脇 淑也
(72)【発明者】
【氏名】関 圭介
(72)【発明者】
【氏名】杉本 正暁
(72)【発明者】
【氏名】中山 航
【テーマコード(参考)】
3K273
【Fターム(参考)】
3K273AA09
3K273BA03
3K273BA22
3K273BA27
3K273BA34
3K273CA01
3K273CA02
3K273CA03
3K273EA06
3K273EA22
3K273EA36
3K273EA44
3K273FA03
3K273FA06
3K273FA11
3K273FA14
3K273FA27
3K273FA39
3K273FA41
3K273GA02
3K273GA08
3K273GA12
3K273GA14
3K273GA25
(57)【要約】
【課題】 入力される交流電圧を検出するための回路規模を小さくできる点灯システム、及び照明器具を提供する。
【解決手段】 点灯システムA1では、整流回路1は、交流電源8の交流電圧Viを整流して、整流電圧V1を出力する。電源回路2は、整流電圧V1によるインダクタ電流IL2が流れるインダクタL2、及びインダクタ電流IL2を導通、遮断するスイッチング素子Q1を有して、整流電圧V1を直流の中間電圧V2に変換することで中間電力を生成する。電力変換回路3は、中間電力を出力電力に変換する電力変換動作を行う。補助巻線N1は、インダクタL2に磁気的に結合する。電力制御部4は、補助巻線N1に生じた電圧である検出電圧Vdに基づいて電力変換動作を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源から供給された交流電力を直流の出力電力に変換し、前記出力電力を照明負荷に供給する点灯システムであって、
前記交流電源の交流電圧を整流して、整流電圧を出力する整流回路と、
前記整流電圧によるインダクタ電流が流れるインダクタ、及び前記インダクタ電流を導通、遮断するスイッチング素子を有して、前記整流電圧を直流の中間電圧に変換することで中間電力を生成する電源回路と、
前記中間電力を前記出力電力に変換する電力変換動作を行う電力変換回路と、
前記インダクタに磁気的に結合した補助巻線と、
前記補助巻線に生じた電圧である検出電圧に基づいて前記電力変換動作を制御する電力制御部と、を備える
点灯システム。
【請求項2】
前記電力制御部は、
前記検出電圧に基づいて前記交流電圧の大きさが所定範囲を外れたか否かを判定し、
前記交流電圧の大きさが前記所定範囲を外れたと判定すれば、前記電力変換動作を停止させる
請求項1の点灯システム。
【請求項3】
前記電力制御部は、
前記検出電圧の大きさとして前記検出電圧の実効値を求め、
前記検出電圧の実効値に基づいて前記電力変換動作を制御する
請求項1の点灯システム。
【請求項4】
前記電源回路を制御する電源制御部を更に備え、
前記電源制御部は、前記検出電圧を制御電圧として用いて動作する
請求項1の点灯システム。
【請求項5】
前記電力制御部は、プログラムを実行することで前記電力変換動作を制御するマイクロコントローラを備える
請求項1の点灯システム。
【請求項6】
前記電力制御部は、前記電力制御部が起動してから所定時間が経過するまでのマスク期間では、前記検出電圧の大きさに基づく前記電力変換動作の制御を停止する
請求項1の点灯システム。
【請求項7】
前記電力変換動作は、前記電力変換回路の発振動作を含む
請求項1の点灯システム。
【請求項8】
前記電源回路は、SEPIC回路を含む
請求項1の点灯システム。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1つの点灯システムと、
前記照明負荷と、を備える
照明器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、点灯システム、及び照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の電源装置は、交流電源に接続されており、整流部、PFC制御部、DC/DCコンバータ、入力電圧検出回路などを備える。交流電源は例えば200V系統であり、交流電源の入力交流電圧は、整流部で全波整流されて、入力電圧(直流電圧)となる。入力電圧は、PFC制御部で力率改善制御されて出力電圧となる。出力電圧は、DC/DCコンバータで降圧及び定電流制御された直流電圧として、LED照明装置などの負荷に出力される。
【0003】
入力電圧検出回路は、直列接続された2つの検出抵抗を有して、整流部で全波整流された直流の入力電圧を検出する。入力電圧検出回路は、検出抵抗に入力電圧が印加されている間、DC/DCコンバータにON信号を入力する。そして、電源装置では、入力電圧検出回路で入力電圧を検出し、入力電圧が印加されていない間は、PFC制御部を動作させない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-4576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献1の電源装置は、交流電源の入力交流電圧を全波整流することで、直流の入力電圧を生成し、直流の入力電圧を入力電圧検出回路で検出する。PFC制御部の動作は、入力電圧検出回路の検出結果に基づいて制御される。
【0006】
しかしながら、交流電源の入力交流電圧は例えば200Vであり、入力交流電圧を全波整流した直流の入力電圧は比較的高くなる。したがって、入力電圧検出回路には耐圧性が要求され、回路規模が大きくなってしまう、という課題があった。
【0007】
本開示の目的は、入力される交流電圧を検出するための回路規模を小さくできる点灯システム、及び照明器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る点灯システムは、交流電源から供給された交流電力を直流の出力電力に変換し、前記出力電力を照明負荷に供給する。前記点灯システムは、整流回路と、電源回路と、電力変換回路と、補助巻線と、電力制御部と、を備える。前記整流回路は、前記交流電源の交流電圧を整流して、整流電圧を出力する。前記電源回路は、前記整流電圧によるインダクタ電流が流れるインダクタ、及び前記インダクタ電流を導通、遮断するスイッチング素子を有して、前記整流電圧を直流の中間電圧に変換することで中間電力を生成する。前記電力変換回路は、前記中間電力を前記出力電力に変換する電力変換動作を行う。前記補助巻線は、前記インダクタに磁気的に結合する。前記電力制御部は、前記補助巻線に生じた電圧である検出電圧に基づいて前記電力変換動作を制御する。
【0009】
本開示の一態様に係る照明器具は、上述の点灯システムと、前記照明負荷と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示の点灯システム、及び照明器具は、入力される交流電圧を検出するための回路規模を小さくできるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本開示の実施形態に係る点灯システムを示す回路図である。
図2図2は、同上の点灯システムが備える電力変換回路の具体構成の一例を示す回路図である。
図3図3は、同上の点灯システムにおいて交流電圧が投入されてから後の各部の波形を示す波形図である。
図4図4は、同上の点灯システムを備える照明器具を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の実施形態は、一般に、点灯システム、及び照明器具に関する。より詳細には、交流電源から供給された交流電力を直流の出力電力に変換し、出力電力を光源に供給する点灯システム、及び照明器具に関する。
【0013】
なお、以下の実施形態は、本開示の実施形態の一例にすぎない。本開示は、以下の実施形態に限定されず、本開示の効果を奏することができれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0014】
本実施形態の点灯システム、及び照明器具は、例えばオフィス、工場、店舗、戸建住宅若しくは集合住宅の住戸などの屋内、又はトンネル、道路若しくはグラウンドなどの屋外で用いられる。なお、本実施形態の点灯システム、及び照明器具が用いられる場所は、特定の場所に限定されない。
【0015】
以下に実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
(実施形態)
(1)点灯システムの概略
図1は、実施形態の点灯システムとして、照明負荷9を点灯させる点灯システムA1のブロック構成を示す。
【0017】
点灯システムA1は、交流電源8から供給された交流電力を直流の出力電力に変換し、出力電力を照明負荷9に供給する。点灯システムA1は、整流回路1と、電源回路2と、電力変換回路3と、補助巻線N1と、電力制御部4と、を備える。
【0018】
整流回路1は、交流電源8の交流電圧Viを整流して、整流電圧V1を出力する。
【0019】
電源回路2は、整流電圧V1によるインダクタ電流IL2が流れるインダクタL2、及びインダクタ電流IL2を導通、遮断するスイッチング素子Q1を有して、整流電圧V1を直流の中間電圧V2に変換することで中間電力を生成する。
【0020】
電力変換回路3は、中間電力を出力電力に変換する電力変換動作を行う。
【0021】
補助巻線N1は、インダクタL2に磁気的に結合する。
【0022】
電力制御部4は、補助巻線N1に生じた電圧である検出電圧Vdに基づいて電力変換動作を制御する。
【0023】
上述の点灯システムA1では、交流電圧Viが大きい程、整流電圧V1も大きくなる。そして、インダクタ電流IL2は整流電圧V1が直接的又は間接的に作用することによってインダクタL2に流れる電流であり、整流電圧V1が大きい程、インダクタ電流IL2も大きくなる。そして、インダクタ電流IL2が大きい程、検出電圧Vdも大きくなる。すなわち、交流電圧Viが大きい程、検出電圧Vdは大きくなり、検出電圧Vdは、交流電圧Viの検出結果に相当する。補助巻線N1は、交流電圧Viを直接的に検出するのではなく、交流電圧Viを間接的に検出する。そして、補助巻線N1によって生成される検出電圧Vdを交流電圧Vi(整流電圧V1)に比べて低圧とすることは容易である。したがって、交流電圧Viを検出するための補助巻線N1などの部品に求められる耐圧性能は比較的低くなり、補助巻線N1などの部品を容易に小型化でき、部品点数も抑えられる。この結果、点灯システムA1は、入力される交流電圧Viを検出するための回路規模を小さくできる。
【0024】
(2)詳細
図1に示す点灯システムA1は、交流電源8から供給された交流電力を直流の出力電力に変換し、出力電力を照明負荷9に供給する。
【0025】
照明負荷9は、複数の固体発光素子を有する。例えば、照明負荷9は、複数の固体発光素子に相当する複数のLED(Light Emitting Diode)が直列接続されたLEDアレイを有している。なお、照明負荷9は、固体発光素子としてLEDを有する構成に限らない。照明負荷9は、例えば、有機EL(Organic Electro Luminescence、OEL)、又は半導体レーザダイオード(Laser Diode、LD)などの他の固体発光素子を有していてもよい。また、固体発光素子の数は、複数に限らず、1つであってもよい。複数の固体発光素子の電気的な接続関係は直列接続であるが、この接続関係に限らない。複数の固体発光素子の電気的な接続関係は、並列接続であってもよいし、直列接続と並列接続とを組み合わせた接続関係であってもよい。
【0026】
図1に示すように、点灯システムA1は、整流回路1、電源回路2、電力変換回路3、電力制御部4、電源制御部5、起動回路6、検出回路7、一対の入力端子T11、T12、及び一対の出力端子T21、T22を備える。
【0027】
(2.1)整流回路
一対の入力端子T11、T12は、交流電源8に接続されて、交流電圧Viを印加される。入力端子T11、T12は、整流回路1に更に接続される。整流回路1は、例えばフルブリッジ接続された複数のダイオードを備えて、交流電圧Viを全波整流し、直流の整流電圧V1を出力する。
【0028】
(2.2)電源回路
電源回路2は、SEPIC(Single Ended Primary Inductor Converter)回路を含む。SEPIC回路は、直流の整流電圧V1を直流の中間電圧V2に変換する昇降圧チョッパ回路である。
【0029】
電源回路2は、整流回路1から整流電圧V1を入力されて、直流の中間電圧V2を出力する。電源回路2は、電源制御部5によって制御される。
【0030】
具体的に、電源回路2は、インダクタL1、L2、コンデンサC1、C2、出力コンデンサC3、ダイオードD1、及びスイッチング素子Q1を備える。インダクタL1、L2は、同じ鉄心に巻き回されていてもよいし、それぞれ別の鉄心に巻き回されていてもよい。コンデンサC1は整流回路1の出力端間に接続されて、コンデンサC1の両端間には整流電圧V1が印加される。コンデンサC1の正極(整流電圧V1の高電位)と負極(整流電圧V1の低電位)との間には、コンデンサC1の正極からインダクタL1、コンデンサC2、ダイオードD1、出力コンデンサC3を順に接続した直列回路が接続されている。インダクタL1とコンデンサC2との接続点とコンデンサC1の負極との間には、スイッチング素子Q1が接続されている。スイッチング素子Q1は、Nチャネルのエンハンスメント型のMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)である。スイッチング素子Q1のドレインは、インダクタL1とコンデンサC2との接続点に接続され、スイッチング素子Q1のソースは、コンデンサC1の負極に接続される。なお、スイッチング素子Q1は、MOSFET以外に、例えばバイポーラトランジスタなどの他の半導体スイッチング素子であってもよい。
【0031】
コンデンサC2とダイオードD1との接続点とコンデンサC1の負極との間には、インダクタL2が接続されている。そして、出力コンデンサC3の両端電圧が中間電圧V2になる。なお、ダイオードD1のアノードはコンデンサC2に接続され、ダイオードD1のカソードは出力コンデンサC3の正極に接続されている。また、出力コンデンサC3は、電解コンデンサであることが好ましい。
【0032】
そして、スイッチング素子Q1がオンすると、整流回路1の正側出力(整流電圧V1の高電位)、インダクタL1、スイッチング素子Q1、整流回路1の負側出力(整流電圧V1の低電位)の順序で電流が流れて、インダクタL1にエネルギー(磁気エネルギー)が蓄積される。また、スイッチング素子Q1のオフ時には整流電圧V1によってコンデンサC2に電荷が蓄積されており、スイッチング素子Q1がオンすると、コンデンサC2に蓄積された電荷によって、コンデンサC2、スイッチング素子Q1、インダクタL2、コンデンサC2の順序で電流(インダクタ電流IL2)が流れて、インダクタL2にエネルギー(磁気エネルギー)が蓄積される。すなわち、インダクタ電流IL2は、整流電圧V1によってコンデンサC2に蓄積された電荷による電流であり、整流電圧V1による電流である。
【0033】
次に、スイッチング素子Q1がオフすると、インダクタL1の電流、及びインダクタ電流IL2が遮断され、インダクタL1及びインダクタL2に蓄積されているエネルギーによって、出力コンデンサC3が充電される。また、スイッチング素子Q1がオフすると、インダクタL1を通じて整流電圧V1によってコンデンサC2が充電される。
【0034】
そして、スイッチング素子Q1がスイッチング周波数でオンオフすることによって、整流電圧V1を入力とする昇降圧動作が行われ、出力コンデンサC3の両端間に直流の中間電圧V2が発生する。電源回路2の後段には電力変換回路3が接続されており、電源回路2は、中間電圧V2を電力変換回路3へ出力する。すなわち、電源回路2は、整流電圧V1を直流の中間電圧V2に変換することで中間電力を生成し、中間電力を後段の電力変換回路3へ供給する。
【0035】
(2.3)電力変換回路
電力変換回路3は、電源回路2から供給された中間電力を出力電力に変換する電力変換動作を行い、出力電力を照明負荷9へ供給することで照明負荷9を点灯させる。
【0036】
具体的に、電力変換回路3は、降圧回路31、及び電力制御部4を備える。
【0037】
降圧回路31は、中間電圧V2を降圧することで直流の出力電圧Voを生成し、出力電圧Voを一対の出力端子T21、T22に出力する。出力端子T21、T22の間には照明負荷9が接続されており、出力電圧Voは照明負荷9の両端間に印加される。そして、降圧回路31は、出力電圧Voを調整することで、電力変換回路3から照明負荷9へ供給される出力電流Ioを調整し、照明負荷9を所望の調光レベルで点灯させる。降圧回路31は、例えば降圧チョッパ回路を有する。降圧回路31が行う電力変換動作は、降圧回路31(降圧チョッパ回路)の発振動作を含む。発振動作は、スイッチング素子をオンオフ駆動することによって電圧変換を行うチョッピング動作を含む。
【0038】
電力制御部4は、降圧回路31の発振動作を制御(発振制御)する。電力制御部4が降圧回路31に発振動作を行わせることで、降圧回路31は、中間電圧V2を降圧した出力電圧Voを生成する。電力制御部4が降圧回路31の発振動作を停止させることで、降圧回路31は、出力電圧Voをゼロとする。
【0039】
(2.4)電源制御部
電源制御部5は、電源回路2のスイッチング素子Q1をオンオフ駆動する。電源制御部5は、スイッチング素子Q1のスイッチング周波数及びオンデューティの少なくとも一方を制御することで、中間電圧V2を制御する。
【0040】
(2.5)起動回路
起動回路6は、整流回路1の出力端間に接続されて、整流電圧V1を入力される。起動回路6は、交流電圧Viが点灯システムA1に投入されてから所定時間が経過するまでの起動期間において、整流電圧V1を降圧することで起動電圧Vsを生成し、起動電圧Vsを電源制御部5へ出力する。起動期間において、電源制御部5は、起動電圧Vsを制御電圧Vcとして用いて動作し、電源回路2のスイッチング素子Q1のオンオフ駆動を開始する。すなわち、起動期間において、電源制御部5は、起動回路6を制御電源として用いる。この結果、電源制御部5は、電源回路2においてスイッチング素子Q1のスイッチングが開始されておらず、後述の検出電圧Vdを制御電圧Vcとして用いることができない場合でも、起動電圧Vsを制御電圧Vcとして用いて電源回路2を駆動することができる。
【0041】
(2.6)検出回路
検出回路7は、補助巻線N1、及びダイオードD2を備える。
【0042】
補助巻線N1は、電源回路2のインダクタL2に磁気的に結合している。補助巻線N1の第1端は、コンデンサC1の負極に接続される。補助巻線N1の第2端は、ダイオードD2のアノード、及びダイオードD11のアノードに接続される。ダイオードD2のカソードは、電力変換回路3に接続される。ダイオードD11のカソードは、電源制御部5に接続される。
【0043】
補助巻線N1の両端間には、インダクタL2を流れるインダクタ電流IL2に応じた電圧である検出電圧Vdが発生する。検出電圧Vdは、補助巻線N1からダイオードD11を介して電源制御部5に出力される。また、検出電圧Vdは、補助巻線N1からダイオードD2を介して電力変換回路3に出力される。
【0044】
電源回路2では、整流電圧V1は、交流電圧Viが高い程高くなり、交流電圧Viが低い程低くなる。スイッチング素子Q1のオフ時にコンデンサC2に蓄積される電荷量は、整流電圧V1が高い程多くなり、整流電圧V1が低い程少なくなる。スイッチング素子Q1のオン時にインダクタL2を流れるインダクタ電流IL2は、コンデンサC2に蓄積される電荷量が多い程大きくなり、コンデンサC2に蓄積される電荷量が少ない程小さくなる。すなわち、インダクタ電流IL2は、交流電圧Vi及び整流電圧V1に依存する。
【0045】
したがって、インダクタ電流IL2によって発生する検出電圧Vdは、整流電圧V1及び交流電圧Viに依存する。言い換えると、検出電圧Vdの大きさは、整流電圧V1及び交流電圧Viの大きさに相当する。
【0046】
電源回路2のスイッチング素子Q1がオンオフ駆動され、インダクタ電流IL2がインダクタL2を流れると、補助巻線N1に検出電圧Vdが発生する。検出電圧Vdが発生すると、電源制御部5は、ダイオードD11を介して入力される検出電圧Vdを制御電圧Vcとして用いて電源回路2を駆動することができる。すなわち、電源制御部5は、検出電圧Vdを制御電圧Vcとして用いて動作することができる。したがって、電源制御部5は、定常時は、検出電圧Vdを制御電圧Vcとして用いて動作するので、補助巻線N1が電源制御部5の制御電源を兼用でき、構成の簡略化を図ることができる。
【0047】
電力変換回路3では、電力制御部4は、ダイオードD2を介して検出電圧Vdを入力され、検出電圧Vdに基づいて交流電圧Viの大きさを判定し、判定結果に基づいて降圧回路31の動作を制御する。以下、電力変換回路3における検出電圧Vdを用いた制御について説明する。
【0048】
(2.7)検出電圧による制御
電力変換回路3では、電力制御部4は、ダイオードD2を介して検出電圧Vdを入力される。そして、電力制御部4は、検出電圧Vdに基づいて交流電圧Viの大きさが所定範囲を外れたか否かを判定し、交流電圧Viの大きさが所定範囲を外れたと判定すれば、降圧回路31の電力変換動作を停止させる。
【0049】
具体的に、電力制御部4は、検出電圧Vdの実効値を演算する。検出電圧Vdの実効値は、交流電圧Viの大きさに相当するので、電力制御部4は、検出電圧Vdの実効値を監視することで、交流電圧Viの大きさを監視することができる。電力制御部4は、検出電圧Vdの実効値を、交流電圧Viの大きさとして求めることで、交流電圧Viの大きさを精度よく、容易に判定できる。
【0050】
電力制御部4は、検出電圧Vdの実効値と比較する閾値のデータとして、下限閾値及び上限閾値のデータを予め保持している。下限閾値以上、上限閾値以下の範囲が、上述の所定範囲に相当する。電力制御部4は、検出電圧Vdの実効値が下限閾値以上、上限閾値以下であれば、交流電圧Viは正常であると判定して、降圧回路31の発振動作を継続させる。電力制御部4は、検出電圧Vdの実効値が下限閾値未満に低下すると、交流電圧Viのディップ又は瞬停が発生したと判定して、降圧回路31の発振動作を停止させる。電力制御部4は、検出電圧Vdの実効値が上限閾値を上回ると、交流電圧Viの過電圧異常が発生したと判定して、降圧回路31の発振動作を停止させる。
【0051】
したがって、点灯システムA1の異常動作、故障を未然に抑制でき、点灯システムA1の信頼性が向上する。
【0052】
また、電力制御部4は、降圧回路31の発振動作を停止させた後、検出電圧Vdの実効値が下限閾値以上、上限閾値以下の範囲内に復帰すれば、降圧回路31の発振動作を自動的に再開してもよいし、ユーザによるリセット操作の後に降圧回路31の発振動作を再開してもよい。
【0053】
また、電力制御部4は、検出電圧Vdの実効値が変動した場合、交流電圧Viの大きさが変動していると判定し、交流電圧Viの変動による照明負荷9のちらつきを抑制するように、降圧回路31の発振動作を制御してもよい。
【0054】
図2は、電力変換回路3の具体構成の一例を示す。電力変換回路3では、降圧回路31は降圧IC(Integrated Circuit)311を備え、電力制御部4はマイクロコントローラ41を備える。電力変換回路3は、インダクタL31、及び抵抗R31を更に備える。
【0055】
マイクロコントローラ41は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)などの演算装置、及びROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などの記憶装置を有する。そして、記憶装置にはプログラムが格納されており、演算装置は、記憶装置に格納されているプログラムを読み出し、プログラムを実行することで降圧IC311の発振動作を制御する。すなわち、電力制御部4は、プログラムを実行することで電力変換動作を制御するマイクロコントローラ41を備える。なお、マイクロコントローラ41は、中間電圧V2からマイクロコントローラ41の制御電圧を生成することで動作する。
【0056】
電力制御部4では、記憶装置に格納するプログラムを書き換えることで、マイクロコントローラ41による降圧IC311の制御内容を変更することができる。したがって、電力制御部4をハードウェアのみで構成した場合に比べて、照明負荷9の点灯制御をフレキシブルに変更でき、点灯システムA1の汎用性が向上する。例えば、照明負荷9の定格電力、定格電圧などに応じて、降圧IC311の制御内容(例えば目標電流値、目標電圧値など)を容易に変更することができる。
【0057】
降圧IC311は、スイッチング素子、抵抗、コンデンサ、インダクタなどの素子を有する降圧チョッパ回路を構成する集積回路であり、マイクロコントローラ41によって駆動、制御される。降圧IC311は、中間電圧V2を降圧することで直流の出力電圧Voを生成する。降圧IC311の正側の出力端と出力端子T21との間にはインダクタL31が接続されており、降圧IC311は、出力電圧Voを一対の出力端子T21、T22を介して出力する。降圧IC311は、出力電圧Voを調整することで出力電流Ioを調整し、照明負荷9を所望の調光レベルで点灯させる。そして、図2では、出力端子T22には抵抗R31が直列接続されており、抵抗R31の両端には、出力電流Ioに比例する電圧が発生する。そこで、マイクロコントローラ41は、抵抗R31の両端電圧を取得し、抵抗R31の両端電圧が目標電圧値に一致するように出力電圧Voを調整することで、出力電流Ioを目標電流値に一致させる。
【0058】
また、マイクロコントローラ41には、ダイオードD2を介して検出電圧Vdが入力される。マイクロコントローラ41は、検出電圧Vdの実効値を演算し、検出電圧Vdの実効値に基づいて、降圧回路31の発振動作を継続又は停止させる。しかしながら、交流電圧Viが点灯システムA1に投入されてから点灯システムA1の動作が安定するまでには、検出電圧Vdが不安定となる不安定期間がある。この不安定期間では、マイクロコントローラ41は検出電圧Vdの実効値に基づく降圧IC311の発振制御を行わないことが好ましい。
【0059】
図3は、交流電圧Viが投入されてから後の各部の波形を示す。図3では、交流電圧Vi、出力電流Io、検出電圧Vd、電源制御部5の制御電圧Vcの各波形を示す。
【0060】
時間t1において交流電圧Viが投入されると、電源制御部5は、起動電圧Vsを制御電圧Vcとして用いて起動し、時間t2において電源回路2のスイッチング素子Q1のオンオフ駆動を開始する。スイッチング素子Q1がオンオフ駆動され、補助巻線N1に検出電圧Vdが発生すると、電源制御部5は、検出電圧Vdを制御電圧Vcとして用いて動作し、スイッチング素子Q1のオンオフ駆動を継続させる。また、スイッチング素子Q1がオンオフ駆動されると、電源回路2は中間電圧V2を出力する。マイクロコントローラ41は、時間t3において、中間電圧V2からマイクロコントローラ41の制御電圧を生成することで起動し、降圧IC311の発振動作を開始させる。降圧IC311が発振動作を開始すると、降圧IC311は、出力電圧Voを生成し、照明負荷9へ供給する出力電流Ioを目標電流値Io1まで増加させる。
【0061】
ここで、交流電圧Viが投入された時間t1から、マイクロコントローラ41が起動する時間t3の直後までは、検出電圧Vdは不安定である。そこで、時間t3から一定時間が経過したタイミングを時間t4とし、時間t1~t4までの期間を、検出電圧Vdが不安定となりやすい不安定期間W1とする。時間t4以降を、検出電圧Vdが安定する安定期間W2とする。
【0062】
マイクロコントローラ41は、時間t3で起動してから時間t4までの期間をマスク期間Wmとする。マイクロコントローラ41は、マスク期間Wmにおいては、検出電圧Vdの入力をマスクして、検出電圧Vdを予め決められた正常値(下限閾値以上、上限閾値以下の値)として扱う。すなわち、マイクロコントローラ41は、マスク期間Wmにおいては、検出電圧Vdの実効値に基づく降圧回路31の発振制御を停止する。
【0063】
上述のように、電力制御部4は、マイクロコントローラ41(電力制御部4)が起動してから所定時間が経過するまでのマスク期間Wmでは、検出電圧Vdの大きさに基づく電力変換動作の制御を停止する。したがって、点灯システムA1に交流電圧Viが投入された直後の不安定期間W1に、不安定な検出電圧Vdに基づいて電力変換動作を制御することを抑制できる。この結果、誤動作の抑制、検出電圧Vdの精度向上を図ることができ、信頼性が向上する。
【0064】
(3)照明器具
図4は、点灯システムA1を備える照明器具の一例として、照明器具B1を示す。照明器具B1は、光源ユニット101、及び光源ユニット101を支持する筐体102を備える。
【0065】
光源ユニット101は、長尺箱状の外殻を有し、照明負荷9を外殻内に収納している。照明負荷9は、例えば長尺の基板、及び基板上に長手方向に沿って並んで実装された多数のLED(Light Emitting Diode)を有する。筐体102は長尺形状であり、筐体102の内部に点灯システムA1が収納される。光源ユニット101は、筐体102の一面にて支持され、点灯システムA1と照明負荷9とが接続される。また、筐体102は、長手方向に沿った光源ユニット101の両側縁より斜め上向きに突出する一対の反射板103を備える。
【0066】
照明器具B1は、点灯システムA1を備えることで、入力される交流電圧Viを検出するための回路規模を小さくできる。
【0067】
(4)変形例
補助巻線N1は、インダクタL2ではなく、インダクタL1に磁気的に結合してもよい(図1参照)。
【0068】
電力制御部4は、検出電圧Vdの実効値ではなく、検出電圧Vdの平均値又はピーク値などを演算してもよい。この場合、電力制御部4は、検出電圧Vdの平均値又はピーク値などが所定範囲を外れたか否かを判定する。
【0069】
電源回路2は、SEPIC回路以外で構成されてもよく、例えばCUK回路、ZETA回路、昇圧チョッパ回路、降圧チョッパ回路、及び昇降圧チョッパ回路などのいずれで構成されてもよい。すなわち、電源回路2は、整流電圧V1によるインダクタ電流が流れるインダクタ、及びインダクタ電流を導通、遮断するスイッチング素子を有していればよい。
【0070】
電力変換回路3は、降圧回路31を備える構成に限定されず、降圧回路31の代わりに昇圧回路、昇降圧回路、又は定電流回路などを備えていてもよい。
【0071】
電力制御部4は、電力変換回路3と別体に構成されてもよい。また、電力制御部4と電源制御部5とは一体に構成されてもよい。
【0072】
点灯システムA1は、点灯システムA1を構成する各部が1つの筐体に収納された点灯装置であってもよいし、点灯システムA1を構成する各部が分散して配置された構成であってもよい。
【0073】
点灯システムA1を備える照明器具は照明器具B1(図4参照)以外であってもよく、例えばダウンライト、シーリングライト、ペンダントライト、及びスポットライトなどのいずれであってもよい。
【0074】
(5)まとめ
上述の実施形態に係る第1の態様の点灯システム(A1)は、交流電源(8)から供給された交流電力を直流の出力電力に変換し、出力電力を照明負荷(9)に供給する。点灯システム(A1)は、整流回路(1)と、電源回路(2)と、電力変換回路(3)と、補助巻線(N1)と、電力制御部(4)と、を備える。整流回路(1)は、交流電源(8)の交流電圧(Vi)を整流して、整流電圧(V1)を出力する。電源回路(2)は、整流電圧(V1)によるインダクタ電流(IL2)が流れるインダクタ(L2)、及びインダクタ電流(IL2)を導通、遮断するスイッチング素子(Q1)を有して、整流電圧(V1)を直流の中間電圧(V2)に変換することで中間電力を生成する。電力変換回路(3)は、中間電力を出力電力に変換する電力変換動作を行う。補助巻線(N1)は、インダクタ(L2)に磁気的に結合する。電力制御部(4)は、補助巻線(N1)に生じた電圧である検出電圧(Vd)に基づいて電力変換動作を制御する。
【0075】
上述の点灯システム(A1)では、交流電圧(Vi)を検出するための補助巻線(N1)などの部品に求められる耐圧性能は比較的低くなり、補助巻線(N1)などの部品を容易に小型化でき、部品点数も抑えられる。この結果、点灯システム(A1)は、入力される交流電圧(Vi)を検出するための回路規模を小さくできる。
【0076】
実施形態に係る第2の態様の点灯システム(A1)では、第1の態様において、電力制御部(4)は、検出電圧(Vd)に基づいて交流電圧(Vi)の大きさが所定範囲を外れたか否かを判定することが好ましい。電力制御部(4)は、交流電圧(Vi)の大きさが所定範囲を外れたと判定すれば、電力変換動作を停止させる。
【0077】
上述の点灯システム(A1)は、点灯システム(A1)の異常動作、故障などを未然に抑制でき、点灯システム(A1)の信頼性が向上する。
【0078】
実施形態に係る第3の態様の点灯システム(A1)では、第1又は第2の態様において、電力制御部(4)は、検出電圧(Vd)の大きさとして検出電圧(Vd)の実効値を求めることが好ましい。電力制御部(4)は、検出電圧(Vd)の実効値に基づいて電力変換動作を制御する。
【0079】
上述の点灯システム(A1)は、交流電圧(Vi)の大きさを精度よく、容易に判定できる。
【0080】
実施形態に係る第4の態様の点灯システム(A1)は、第1乃至第3の態様のいずれか1つにおいて、電源回路(2)を制御する電源制御部(5)を更に備えることが好ましい。電源制御部(5)は、検出電圧(Vd)を制御電圧(Vc)として用いて動作する。
【0081】
上述の点灯システム(A1)は、電源制御部(5)のための制御電源の構成の簡略化を図ることができる。
【0082】
実施形態に係る第5の態様の点灯システム(A1)では、第1乃至第4の態様のいずれか1つにおいて、電力制御部(4)は、プログラムを実行することで電力変換動作を制御するマイクロコントローラ(41)を備えることが好ましい。
【0083】
上述の点灯システム(A1)は、照明負荷(9)の点灯制御をフレキシブルに変更でき、点灯システム(A1)の汎用性が向上する。
【0084】
実施形態に係る第6の態様の点灯システム(A1)では、第1乃至第5の態様のいずれか1つにおいて、電力制御部(4)は、電力制御部(4)が起動してから所定時間が経過するまでのマスク期間(Wm)では、検出電圧(Vd)の大きさに基づく電力変換動作の制御を停止することが好ましい。
【0085】
上述の点灯システム(A1)は、誤動作の抑制、検出電圧(Vd)の精度向上を図ることができ、信頼性が向上する。
【0086】
実施形態に係る第7の態様の点灯システム(A1)では、第1乃至第6の態様のいずれか1つにおいて、電力変換動作は、電力変換回路(3)の発振動作を含むことが好ましい。
【0087】
上述の点灯システム(A1)は、電力変換回路(3)の発振動作を制御することで、出力電力を容易に制御できる。
【0088】
実施形態に係る第8の態様の点灯システム(A1)では、第1乃至第7の態様のいずれか1つにおいて、電源回路(2)は、SEPIC回路を含むことが好ましい。
【0089】
上述の点灯システム(A1)は、補助巻線(N1)による検出電圧(Vd)の取得を容易に実現できる。
【0090】
実施形態に係る第9の態様の照明器具(B1)は、第1乃至第8の態様のいずれか1つの点灯システム(A1)と、照明負荷(9)と、を備える。
【0091】
上述の照明器具(B1)は、入力される交流電圧(Vi)を検出するための回路規模を小さくできる。
【符号の説明】
【0092】
A1 点灯システム
B1 照明器具
1 整流回路
2 電源回路
3 電力変換回路
4 電力制御部
41 マイクロコントローラ
5 電源制御部
8 交流電源
9 照明負荷
N1 補助巻線
L2 インダクタ
Q1 スイッチング素子
Vi 交流電圧
V1 整流電圧
V2 中間電圧
Vd 検出電圧
Vc 制御電圧
IL2 インダクタ電流
Wm マスク期間
図1
図2
図3
図4