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  • 特開-注水機能付き吸引装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176953
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】注水機能付き吸引装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/00 20060101AFI20241212BHJP
   A61M 27/00 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
A61M1/00 140
A61M27/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095859
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】598024226
【氏名又は名称】株式会社高山医療機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高山 隆志
【テーマコード(参考)】
4C077
4C267
【Fターム(参考)】
4C077AA15
4C077AA16
4C077AA30
4C077BB10
4C077DD25
4C077EE02
4C077EE04
4C077JJ25
4C077KK25
4C267AA38
4C267JJ14
(57)【要約】      (修正有)
【課題】術者の一つの指で容易に吸引状態と注水状態とを切り替え、小型化できる注水機能付き吸引装置を提供する。
【解決手段】本体部側吸引経路13、14、スイッチ部側吸引経路17、本体部側注水経路15、16、スイッチ部側注水経路18が形成された本体部11と、スイッチ部側注水経路18を形成する可撓性チューブ20と、本体部11に対して回転可能に接続されたスイッチ部12と、を備え、本体部11、スイッチ部12の少なくとも一方は、可撓性チューブ20を押し潰すための突出部21、22を有し、スイッチ部12が第1の回転位置の時、本体部側吸引経路13、14及びスイッチ側吸引経路17が連通し、可撓性チューブ20が押し潰されスイッチ部側注水経路18が非連通となる。スイッチ部12が第2の回転位置の時、可撓性チューブ20が開通し、本体部側注水経路15、16及びスイッチ部側注水経路18が連通し、吸引経路は非連通となる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の本体部側吸引経路と、第2の本体部側吸引経路と、第1の本体部側注水経路と、第2の本体部側注水経路と、が形成された本体部と、
前記第1の本体部側吸引経路と前記第2の本体部側吸引経路との間に位置するスイッチ部側吸引経路が形成され、前記本体部に対して回転可能に接続されたスイッチ部と、
前記第1の本体部側注水経路及び前記第2の本体部側注水経路と連通するスイッチ部側注水経路が形成された可撓性チューブと、
を備え、
前記本体部及び前記スイッチ部の少なくとも一方は、前記可撓性チューブが延びる方向に交差する方向に突出する突出部を有し、
前記スイッチ部が、前記本体部に対して第1の回転位置に位置するとき、
前記スイッチ部側吸引経路が、前記第1の本体部側吸引経路及び前記第2の本体部側吸引経路と連通するよう位置し、
前記突出部が前記可撓性チューブを押し潰すことで、前記スイッチ部側注水経路が閉塞し、
前記スイッチ部が、前記本体部に対して前記第1の回転位置とは異なる第2の回転位置に位置するとき、
前記スイッチ部側吸引経路が、前記第1の本体部側吸引経路及び前記第2の本体部側吸引経路と非連通となるよう位置し、
前記突出部が前記可撓性チューブを押し潰す位置から離れる方向に移動することで、前記スイッチ部側注水経路が開通する、
注水機能付き吸引装置。
【請求項2】
前記スイッチ部は、前記突出部と、術者が一つの指で押圧することが可能な押圧部とを有し、
前記スイッチ部が一体的に形成されていることで、前記押圧部と前記突出部との位置関係が維持されている、
請求項1に記載の注水機能付き吸引装置。
【請求項3】
前記術者が前記押圧部を前記第1の回転位置から前記第2の回転位置に回転する方向に押圧することにより、前記スイッチ部は、前記第1の回転位置から前記第2の回転位置に移行し、
前記術者が前記押圧部を前記第2の回転位置から前記第1の回転位置に回転する方向に押圧することにより、前記スイッチ部は、前記第2の回転位置から前記第1の回転位置に移行する、
請求項2に記載の注水機能付き吸引装置。
【請求項4】
前記押圧部には、前記スイッチ部側吸引経路と連通する調整孔が形成されている、
請求項2に記載の注水機能付き吸引装置。
【請求項5】
前記スイッチ部が前記第1の回転位置に位置するとき、
前記スイッチ部側吸引経路の一端が前記第1の本体部側吸引経路の一端と接続し、前記スイッチ部側吸引経路の他端が前記第2の本体部側吸引経路の一端と接続し、
前記スイッチ部が前記第2の回転位置に位置するとき、
前記スイッチ部側吸引経路が、前記第1の回転位置と前記第2の回転位置との間の角度だけ傾斜することにより、
前記スイッチ部側吸引経路の前記一端が前記第1の本体部側吸引経路の前記一端と非接続となり、前記スイッチ部側吸引経路の前記他端が前記第2の本体部側吸引経路の前記一端と非接続となる、
請求項1に記載の注水機能付き吸引装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注水機能付き吸引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
脳又は外傷等の外科手術の際に、人体又は動物の脳内、外傷内部等の患部にたまった血液、体液、髄液、骨片等を吸引して排出すると共に、患部に注水して患部を洗浄する作業(以下、「吸引及び注水作業」と呼ぶことがある)が生じることがある。外科手術中の吸引及び注水作業に使用される医療用機械器具として、注水機能付き吸引装置が使用されている。
【0003】
吸引及び注水作業に使用される医療用機械器具に関連して、特許文献1には、吸引経路及び注水経路の各々に取り付けられたバルブを制御する制御ボタンを有する注水機能付き吸引装置が開示されている。特許文献1に記載の注水機能付き吸引装置では、術者が吸引側のボタンと注水側のボタンを指で操作することにより、吸引側のバルブ及び注水側のバルブの各々が動作し、吸引状態と注水状態とを切り替えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第9259519号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載されている注水機能付き吸引装置では、吸引状態と注水状態とを切り替える際に、同時に二箇所以上のバルブを制御することが求められる。したがって、吸引状態と注水状態とを切り替える際に、術者は、二本以上の指でボタンを操作する必要があり、吸引状態と注水状態とを切り替える動作が複雑となる。さらに、特許文献1に記載されている注水機能付き吸引装置は、ボタンの動作をバルブの動作に変換する機構を有するため、注水機能付き吸引装置全体を小型化することに限界があった。
【0006】
本発明の目的の一例は、術者の一つの指で容易に吸引状態と注水状態とを切り替えることができ、さらに全体を小型化することができる注水機能付き吸引装置を提供することにある。本発明の他の目的は、本明細書の記載から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、第1の本体部側吸引経路と、第2の本体部側吸引経路と、第1の本体部側注水経路と、第2の本体部側注水経路と、が形成された本体部と、前記第1の本体部側吸引経路と前記第2の本体部側吸引経路との間に位置するスイッチ部側吸引経路が形成され、前記本体部に対して回転可能に接続されたスイッチ部と、前記第1の本体部側注水経路及び前記第2の本体部側注水経路と連通するスイッチ部側注水経路が形成された可撓性チューブと、を備え、前記本体部及び前記スイッチ部の少なくとも一方は、前記可撓性チューブが延びる方向に交差する方向に突出する突出部を有し、前記スイッチ部が、前記本体部に対して第1の回転位置に位置するとき、前記スイッチ部側吸引経路が、前記第1の本体部側吸引経路及び前記第2の本体部側吸引経路と連通するよう位置し、前記突出部が前記可撓性チューブを押し潰すことで、前記スイッチ部側注水経路が閉塞し、前記スイッチ部が、前記本体部に対して前記第1の回転位置とは異なる第2の回転位置に位置するとき、前記スイッチ部側吸引経路が、前記第1の本体部側吸引経路及び前記第2の本体部側吸引経路と非連通となるよう位置し、前記突出部が前記可撓性チューブを押し潰す位置から離れる方向に移動することで、前記スイッチ部側注水経路が開通する、注水機能付き吸引装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の上記態様によれば、術者の一つの指で容易に吸引状態と注水状態とを切り替えることができ、さらに注水機能付き吸引装置全体を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態の吸引装置10の斜視図である。
図2図2は、比較例の吸引装置10Aの説明図である。
図3図3Aは、本実施形態の吸引装置10の上面図である。図3Bは、スイッチ部12を取り外した吸引装置10の上面図である。図3Cは、本実施形態の吸引装置10の側面図である。
図4図4Aは、注水状態の吸引装置10の、図3Aに示されるA-A線の断面図である。図4Bは、吸引状態の吸引装置10の、図3Aに示されるA-A線の断面図である。図4Cは、注水状態の吸引装置10の、図3Aに示されるB-B線の断面図である。図4Dは、吸引状態の吸引装置10の、図3Aに示されるB-B線の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を説明する。各図面に示される同一又は同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。
【0012】
===本実施形態===
<方向等の定義>
まず、図1を参照しつつ、本実施形態の吸引装置10における方向等を定義する。
【0013】
図1は、本実施形態の吸引装置10の斜視図である。
【0014】
吸引装置10の遠位端側から近位端側に向かう方向を「+X方向」とし、その反対方向(すなわち、吸引装置10の近位端側から遠位端側に向かう方向)を「-X方向」とする。ここで、「遠位端」は、吸引装置10の使用中に操作者(術者)から遠い側の吸引装置10の端部を指し、「近位端」は、吸引装置10の使用中に操作者(術者)に近い側の吸引装置10の端部を指す。また、+X方向に垂直な方向のうち、注水管50側から吸引管40側に向かう方向を「+Y方向」とし、その反対方向(すなわち、吸引管40側から注水管50側に向かう方向)を「-Y方向」とする。また、+X方向と+Y方向とに直交する方向であって、本体部11に対するスイッチ部12の方向を、「+Z方向」とし、その反対方向(すなわち、スイッチ部12に対する本体部11の方向)を「-Z方向」とする。
【0015】
+X方向,-X方向,+Y方向,-Y方向,+Z方向及び-Z方向の各々は、向きが決まった方向である。なお、上述したような向きが決まった方向ではなく、+X方向及び-X方向の両方向を、単に「X方向」と呼ぶことがある。同様に、+Y方向及び-Y方向の両方向を、単に「Y方向」と呼ぶことがある。また、+Z方向及び-Z方向の両方向を、単に「Z方向」と呼ぶことがある。
【0016】
図1では、吸引装置10における方向等の理解を容易にするために、+X方向,+Y方向及び+Z方向の各々の方向を矢印付き線分で表している。なお、これらの矢印付き線分の交点は、座標原点を意味するものではない。
【0017】
なお、上述した方向等の定義については、特記した場合を除き、本明細書の他の実施形態においても共通である。
【0018】
<概要>
次に、上述した図1を再び参照しつつ、本実施形態の吸引装置10の概要を説明する。
【0019】
吸引装置10は、吸引及び注水作業に使用される医療用機械器具である。吸引装置10は、注水機能付き吸引装置である。具体的には、吸引装置10は、人体又は動物の脳内、外傷内部等の患部にたまった血液、体液、髄液、骨片等を吸引して排出する機能(以下、「吸引機能」と呼ぶことがある)に加えて、患部に注水して患部を洗浄する機能(以下、「注水機能」と呼ぶことがある)も有する。
【0020】
注水機能付きの吸引装置10を用いることにより、術者は、一方の手にメスや鉗子等の手術器具を持ちながら、他方の手に吸引装置10を持って患部の吸引と洗浄とを繰り返すことができる。ところで、特に難しい外科手術の際に、どの時点で患部の吸引を行い、どの時点で患部の洗浄を行うかの判断は、術者以外の補助者には難しい。このため、注水機能付きの吸引装置10であれば、術者は自らの判断により、片手で注水機能付きの吸引装置10を操作できる。このため、術者は、補助者がいない場合であっても、注水機能付きの吸引装置10を使って円滑に患部の外科手術を実施できる。
【0021】
吸引装置10は、本体部11と、スイッチ部12と、先端部30と、吸引管40と、注水管50と、合流管53とを有する。
【0022】
本体部11は、吸引装置10の本体部分である。本体部11の+X方向側の端部には、注水管50及び吸引管40が接続され、本体部11の-X方向側の端部には、先端部30が接続されている。本体部11は、スイッチ部12が収容されており、本体部11の+Z方向側の面(上面)では、スイッチ部12が露出している。
【0023】
スイッチ部12は、術者の指で操作し、吸引装置10における吸引状態と注水状態とを切り替えるための部分である。スイッチ部12は、上述したように、本体部11の+Z方向側の面(上面)において露出するように、本体部11に収容されている。さらに、本体部11に対して回転軸27(図1では不図示、後述する図4C及び図4Dを参照)において回転可能に接続されている。
【0024】
本実施形態の吸引装置10では、スイッチ部12が、本体部11に対して所定の回転位置(以下、「第1の回転位置」と呼ぶことがある)に位置するとき、吸引装置10の吸引経路が開通状態になると共に注水経路が閉塞状態となることで、吸引装置10が吸引状態となる。また、スイッチ部12が、本体部11に対して第1の回転位置とは異なる別の回転位置(以下、「第2の回転位置」と呼ぶことがある)に位置するとき、吸引装置10の吸引経路が閉塞状態になると共に注水経路が開通状態となることで、吸引装置10が吸引状態となる。第1の回転位置は、後述する図4B及び図4Dに示される状態であり、第2の回転位置は、後述する図4A及び図4Cに示される状態である。吸引装置10の吸引状態と注水状態とが切り替わる態様の詳細については、後述する。
【0025】
先端部30は、吸引装置10のうち患部に向けられるため部分である。先端部30は、自由に曲げることができ、曲げられた状態により一定の形状を維持できる材料で形成されている。つまり、先端部30は、可撓性の部材である。但し、先端部30は、可撓性の部材でなくても良い。
【0026】
先端部30は、開孔部31と、接続部32と、を有する。
【0027】
開孔部31は、患部にたまった血液、体液、髄液、骨片等の吸引対象(以下、単に「吸引対象」と呼ぶことがある)を先端部30の内部に取り入れる部位である。また、開孔部31は、水、蒸留水、滅菌水、生理用食塩水、薬剤水溶液等の患部を洗浄するための洗浄水(以下、単に「洗浄水」と呼ぶことがある)を先端部30の外部に放出する部位でもある。本実施形態の吸引装置10では、開孔部31は、先端部30の-X方向側の端部に形成されている。但し、開孔部31は、先端部30の側面に形成されていてもよい。
【0028】
接続部32は、先端部30の+X方向側の端部と、本体部11の-X方向側の端部とを接続する部位である。接続部32は、本体部11に対して取り外し可能である。これにより、先端部30は、本体部11に対して着脱可能となり、目的に応じて、例えば、径が異なる別の先端部と取り替えることができる。但し、先端部30は、接続部32を有さなくても良く、先端部30は、本体部11に対して固定されていても良い(つまり、先端部30は、本体部11に対して着脱可能でなくても良い)。
【0029】
先端部30は、開孔部31と接続部32との間で、内部が空洞となるように形成されており、液体、気体等の流体や、小片の固体がその内部を自由に通過できる。本実施形態の吸引装置10では、吸引対象が先端部30を介して吸引され、洗浄水が先端部30を介して注水される。
【0030】
吸引管40は、吸引対象が通過する管である。吸引管40の+X方向側の端部41には、吸引用フレキシブルチューブ(不図示)が接続され、吸引用フレキシブルチューブに接続された吸引ポンプ等の吸引手段により、吸引装置10は吸引機能を有することができる。吸引管40の-X方向側の端部42(図1では不図示、後述する図4A及び図4Bを参照)は、本体部11に接続されている。
【0031】
吸引管40は、吸引対象が通過できるよう、内部が空洞となるように形成されている。吸引管40の内部の経路と、本体部11及びスイッチ部12に形成された吸引経路(後述する本体部側吸引経路13、スイッチ部側吸引経路17及び本体部側吸引経路14)と、先端部30の内部の経路とにより、吸引装置10の吸引経路を形成する。吸引装置10の吸引経路の詳細については、後述する。
【0032】
注水管50は、洗浄水が通過する管である。注水管50の+X方向側の端部51には、注水用フレキシブルチューブ(不図示)が接続され、注水用フレキシブルチューブに接続され、吸引装置10よりも高い位置に保持された洗浄水の供給源や、送液ポンプの送液手段により、吸引装置10は注水機能を有することができる。
【0033】
注水管50は、洗浄水が通過できるよう、内部が空洞となるように形成されている。注水管50の内部の経路と、本体部11及びスイッチ部12に形成された注水経路(後述する本体部側注水経路15、スイッチ部側注水経路18及び本体部側注水経路16)と、後述する合流管53の内部の経路と、先端部30の内部の経路とにより、吸引装置10の注水経路を形成する。吸引装置10の注水経路の詳細については、後述する。
【0034】
合流管53は、本体部11及びスイッチ部12に形成された注水経路を、先端部30の接続部32内の経路に合流させるための管である。合流管53の+X方向側の端部は、本体部11に接続され、合流管53の-X方向側の端部は、先端部30の接続部32に接続されている。これにより、先端部30の内部の経路は、吸引状態(吸引経路が開通状態になると共に注水経路が閉塞状態となる状態)では吸引対象が通過することができ、注水状態(吸引経路が閉塞状態になると共に注水経路が開通状態となる状態)では洗浄水が通過することができる。つまり、先端部30の内部の経路は、吸引経路と注水経路とで共通の経路となる。したがって、患部に向けられる先端部30を小型化することができ、患部の術野を広くすることができる。
【0035】
<比較例>
次に、本実施形態の吸引装置10の詳細について説明する前に、図2を参照しつつ、比較例の吸引装置10Aを説明する。
【0036】
図2は、比較例の吸引装置10Aの説明図である。図2は、便宜上、吸引装置10Aの注水経路のみの模式図が示されている。後述する吸引装置10Aの注水経路についての説明は、吸引装置10Aの吸引経路についても同様である。
【0037】
吸引装置10Aは、本実施形態の吸引装置10と同様に、注水機能付き吸引装置であり、吸引機能に加えて、注水機能も有する。しかし、吸引装置10Aは、吸引側のボタンと注水側のボタンとを指で操作することにより、吸引側のバルブ及び注水側のバルブの各々が動作し、吸引状態と注水状態とを切り替えることができる。
【0038】
吸引装置10Aの注水状態に関する操作に関して、吸引装置10Aは、注水側操作ボタン12Aと、変換機構25と、バルブ26とを有する。
【0039】
注水側操作ボタン12Aは、バルブ26を動作させるための操作部である。術者は、注水側操作ボタン12Aを上下に操作する。変換機構25は、注水側操作ボタン12Aの上下方向における運動を、回転運動を介して、バルブ26の注水経路15Aの長手方向における運動に変換する機構である。バルブ26は、注水経路15Aの開通状態及び閉塞状態を切り替える部材である。
【0040】
比較例の吸引装置10Aでは、注水側操作ボタン12Aの下には弾性部材(不図示)が配置されており、術者が注水側操作ボタン12Aを指で下向きに押圧することで、弾性部材の弾性力に抗して注水側操作ボタン12Aが下向きに移動する。そして、変換機構25を介して、注水経路15Aが開通状態となるように、バルブ26が図2に示される閉塞状態から開通状態へ移動する。また、不図示の術者が注水側操作ボタン12Aから指を離すことで、不図示の弾性部材の弾性力により、注水側操作ボタン12Aが上向きに移動する。そして、変換機構25を介して、注水経路15Aが再び閉塞状態となるように、バルブ26が開通状態から、図2に示される閉塞状態へ移動する。したがって、吸引装置10Aの注水状態に関する操作に関して、バルブ26が動作することで注水経路15Aの開通状態と閉塞状態とを切り替えることができる。
【0041】
比較例の吸引装置10Aでは、不図示であるが、上述した注水状態に関する操作と同様に、吸引側操作ボタンを操作することにより、吸引経路の開通状態と閉塞状態とを切り替えることができる。このため、比較例の吸引装置10Aでは、二本以上の指でボタンを操作する必要があり、吸引状態と注水状態とを切り替える動作が複雑となる。さらに、比較例の吸引装置10Aでは、吸引装置10Aの内部に変換機構25やバルブ26が配置されるため、吸引装置10A全体を小型化することに限界があった。
【0042】
<詳細>
比較例の吸引装置10Aに対し、本実施形態の吸引装置10では、術者の一つの指で容易に吸引状態と注水状態とを切り替えることができる。さらに、本実施形態の吸引装置10は、吸引状態と注水状態とを切り替えるための部品点数が少なく、吸引装置10全体を小型化することができる。そこで、図3及び図4を参照しつつ、吸引装置10の詳細を説明する。
【0043】
図3Aは、本実施形態の吸引装置10の上面図である。図3Bは、スイッチ部12を取り外した吸引装置10の上面図である。図3Cは、本実施形態の吸引装置10の側面図である。図4Aは、注水状態の吸引装置10の、図3Aに示されるA-A線の断面図である。図4Bは、吸引状態の吸引装置10の、図3Aに示されるA-A線の断面図である。図4Cは、注水状態の吸引装置10の、図3Aに示されるB-B線の断面図である。図4Dは、吸引状態の吸引装置10の、図3Aに示されるB-B線の断面図である。
【0044】
本体部11の内部には、図3A及び図3Bに示されるように、吸引装置10の吸引経路の一部として、本体部側吸引経路13及び本体部側吸引経路14が形成され、吸引装置10の注水経路の一部として、本体部側注水経路15及び本体部側注水経路16が形成されている。本体部側吸引経路13及び本体部側吸引経路14は、スイッチ部12を挟むように位置する。具体的には、本体部側吸引経路13は、スイッチ部12の+X方向側に位置し、本体部側吸引経路14は、スイッチ部12の-X方向側に位置している。同様に、本体部側注水経路15及び本体部側注水経路16は、スイッチ部12を挟むように位置する。具体的には、本体部側注水経路15は、スイッチ部12の+X方向側に位置し、本体部側注水経路16は、スイッチ部12の-X方向側に位置している。
【0045】
スイッチ部12の内部には、図3Aに示されるように、吸引装置10の吸引経路の一部として、スイッチ部側吸引経路17が形成されている。スイッチ部側吸引経路17は、本体部側吸引経路13と本体部側吸引経路14との間に位置している。
【0046】
吸引装置10は、図3Bに示されるように、X方向に延びる可撓性チューブ20をさらに有する。可撓性チューブ20は、吸引装置10の注水経路の一部であるスイッチ部側注水経路18が形成された管である。可撓性チューブ20は、自由に曲げることができ、曲げられた状態により一定の形状を維持できる材料で形成されている。さらに、可撓性チューブ20は、他の部材から受ける外力により押し潰すことができ、押し潰された状態により一定の形状を維持できる。
【0047】
可撓性チューブ20に形成されるスイッチ部側注水経路18は、+X方向側の端部が本体部側注水経路15に接続され、-X方向側の端部が本体部側注水経路16に接続されている。つまり、スイッチ部側注水経路18は、本体部側注水経路15及び本体部側注水経路16と連通している。
【0048】
本実施形態の吸引装置10では、スイッチ部12は、突出部21を有し、本体部11は、突出部22を有する。突出部21及び突出部22は、可撓性チューブ20を押し潰すための部分である。図4C及び図4Dに示されるように、突出部21は、-Z方向に突出し、突出部22は、+Z方向に突出している。つまり、突出部21及び突出部22は、可撓性チューブ20が延びる方向(X方向)に交差する方向に突出している。これにより、突出部21及び突出部22は、図4Dに示されるように、可撓性チューブ20を挟むようにして可撓性チューブ20を押し潰すことができる。
【0049】
但し、吸引装置10は、突出部21及び突出部22のいずれか一方のみを有していても良い。つまり、本体部11及びスイッチ部12の少なくとも一方が突出部を有していても良い。
【0050】
図4B及び図4Dに示されるように、スイッチ部12が本体部11に対して第1の回転位置に位置するとき、図4Bに示されるように、スイッチ部側吸引経路17が、本体部側吸引経路13及び本体部側吸引経路14と連通するよう位置する。また、図4Dに示されるように、突出部21及び突出部22が可撓性チューブ20を押し潰すことで、スイッチ部側注水経路18が閉塞する。つまり、スイッチ部12が本体部11に対して第1の回転位置に位置するとき、吸引装置10の吸引経路が開通状態になると共に注水経路が閉塞状態となる(つまり、吸引装置10は吸引状態となる)。
【0051】
図4A及び図4Cに示されるように、スイッチ部12が、本体部11に対して第1の回転位置とは異なる第2の回転位置に位置するとき、図4Aに示されるように、スイッチ部側吸引経路17が、本体部側吸引経路13及び本体部側吸引経路14と非連通となるよう位置する。また、図4Cに示されるように、突出部21及び突出部22が可撓性チューブ20を押し潰す位置から離れる方向に移動することで、スイッチ部側注水経路18が開通する。つまり、スイッチ部12が本体部11に対して第2の回転位置に位置するとき、吸引装置10の吸引経路が閉塞状態になると共に注水経路が開通状態となる(つまり、吸引装置10は注水状態となる)。
【0052】
本実施形態の吸引装置10では、スイッチ部12は、図3Cに示されるように、術者が一つの指で押圧することが可能な押圧部23を有する。術者が押圧部23の+X方向側の部分を押圧することにより、スイッチ部12は、第1の回転位置から第2の回転位置に移行する。また、術者が押圧部23の-X方向側の部分を押圧することにより、スイッチ部12は、第2の回転位置から第1の回転位置に移行する。このように、本実施形態の吸引装置10では、術者の一つの指で容易に吸引状態と注水状態とを切り替えることができる。
【0053】
スイッチ部12が第1の回転位置に位置するとき、図4Bに示されるように、スイッチ部側吸引経路17の一端(+X方向側の端部)が本体部側吸引経路13の一端(-X方向側の端部)と接続し、スイッチ部側吸引経路17の他端(-X方向側の端部)が本体部側吸引経路14の一端(+X方向側の端部)と接続する。スイッチ部12が第2の回転位置に位置するとき、図4Aに示されるように、スイッチ部側吸引経路17が、第1の回転位置と第2の回転位置との間の角度だけ傾斜することにより、スイッチ部側吸引経路17の一端(+X方向側の端部)が本体部側吸引経路13の一端(-X方向側の端部)と非接続となり、スイッチ部側吸引経路17の他端(-X方向側の端部)が本体部側吸引経路14の一端(+X方向側の端部)と非接続となる。
【0054】
本実施形態の吸引装置10では、上述したように、術者の一つの指で容易に吸引状態と注水状態とを切り替えることができるだけでなく、さらに吸引装置10全体を小型化することができる。
【0055】
本実施形態の吸引装置10では、押圧部23と突出部21とを有するスイッチ部12が一体的に形成されている。これにより、押圧部23と突出部21との位置関係が維持されている。したがって、術者の一つの指で押圧部23を移動させる分だけ突出部21を移動させることができる。このため、本実施形態の吸引装置10では、比較例の吸引装置10Aのような変換機構25やバルブ26を必要とせず、部品点数を少なくすることができる。さらに、術者にとって感覚的に把握しやすく、容易に吸引状態と注水状態とを切り替えることができる。
【0056】
また、押圧部23には、スイッチ部側吸引経路17と連通する調整孔24が形成されている。調整孔24を指で塞いだり、指を離したりすることで、吸引経路における吸引力の調整をすることができる。
【0057】
===まとめ===
本明細書によれば、以下の態様の注水機能付き吸引装置が提供される。
【0058】
(態様1)
態様1は、本体部側吸引経路13と、本体部側吸引経路14と、本体部側注水経路15と、本体部側注水経路16と、が形成された本体部11と、本体部側吸引経路13と本体部側吸引経路14との間に位置するスイッチ部側吸引経路17が形成され、本体部11に対して回転可能に接続されたスイッチ部12と、本体部側注水経路15及び本体部側注水経路16と連通するスイッチ部側注水経路18が形成された可撓性チューブ20と、を備える吸引装置10である。また、本体部11及びスイッチ部12の少なくとも一方は、可撓性チューブ20が延びる方向に交差する方向に突出する突出部を有する。
【0059】
また、スイッチ部12が、本体部11に対して第1の回転位置に位置するとき、スイッチ部側吸引経路17が、本体部側吸引経路13及び本体部側吸引経路14と連通するよう位置し、突出部が可撓性チューブ20を押し潰すことで、スイッチ部側注水経路18が閉塞し、スイッチ部12が、本体部11に対して第1の回転位置とは異なる第2の回転位置に位置するとき、スイッチ部側吸引経路17が、本体部側吸引経路13及び本体部側吸引経路14と非連通となるよう位置し、突出部が可撓性チューブ20を押し潰す位置から離れる方向に移動することで、スイッチ部側注水経路18が開通する。
【0060】
「第1の本体部側吸引経路」は、上述の態様の「本体部側吸引経路13」に相当し、「第2の本体部側吸引経路」は、上述の態様の「本体部側吸引経路14」に相当し、「第1の本体部側注水経路」は、上述の態様の「本体部側注水経路15」に相当し、「第2の本体部側注水経路」は、上述の態様の「本体部側注水経路16」に相当する。
【0061】
上述の態様で「突出部」は、スイッチ部12の「突出部21」又は本体部11の「突出部22」に相当する。
【0062】
上述の態様によれば、術者の一つの指で容易に吸引状態と注水状態とを切り替えることができ、さらに注水機能付き吸引装置全体を小型化することができる。
【0063】
(態様2)
態様2では、スイッチ部12は、突出部21と、術者が一つの指で押圧することが可能な押圧部23とを有し、スイッチ部12が一体的に形成されていることで、押圧部23と突出部21との位置関係が維持されている。
【0064】
上述の態様によれば、注水機能付き吸引装置全体を小型化することができる。また、指で押圧部23を移動させる分だけ突出部21を移動させることが術者にとって感覚的に把握しやすく、容易に吸引状態と注水状態とを切り替えることができる。
【0065】
(態様3)
態様3では、術者が押圧部23を第1の回転位置から第2の回転位置に回転する方向に押圧することにより、スイッチ部12は、第1の回転位置から第2の回転位置に移行し、術者が押圧部23を第2の回転位置から第1の回転位置に回転する方向に押圧することにより、スイッチ部12は、第2の回転位置から第1の回転位置に移行する。
【0066】
上述の態様によれば、術者の一つの指で容易に吸引状態と注水状態とを切り替えることができ、さらに注水機能付き吸引装置全体を小型化することができる。
【0067】
(態様4)
態様4では、押圧部23には、スイッチ部側吸引経路17と連通する調整孔24が形成されている。
【0068】
上述の態様によれば、調整孔24指で塞いだり、指を離したりすることで、吸引経路における吸引力の調整をすることができる。
【0069】
(態様5)
態様5では、スイッチ部12が第1の回転位置に位置するとき、スイッチ部側吸引経路17の一端が本体部側吸引経路13の一端と接続し、スイッチ部側吸引経路17の他端が本体部側吸引経路14の一端と接続し、スイッチ部12が第2の回転位置に位置するとき、スイッチ部側吸引経路17が、第1の回転位置と第2の回転位置との間の角度だけ傾斜することにより、スイッチ部側吸引経路17の一端が本体部側吸引経路13の一端と非接続となり、スイッチ部側吸引経路17の他端が本体部側吸引経路14の一端と非接続となる。
【0070】
上述の態様によれば、術者の一つの指で容易に吸引状態と注水状態とを切り替えることができ、さらに注水機能付き吸引装置全体を小型化することができる。
【0071】
===その他===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。
【符号の説明】
【0072】
10,10A 吸引装置
11 本体部
12 スイッチ部
12A 注水側操作ボタン
13,14 本体部側吸引経路
15,16 本体部側注水経路
15A,16A 注水経路
17 スイッチ部側吸引経路
18 スイッチ部側注水経路
20 可撓性チューブ
21,22 突出部
23 押圧部
24 調整孔
25 変換機構
26 バルブ
27 回転軸
30 先端部
31 開孔部
32 接続部
40 吸引管
41,42 端部
50 注水管
51,52 端部
53 合流管
図1
図2
図3
図4