(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176961
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 5/147 20060101AFI20241212BHJP
G03G 5/05 20060101ALI20241212BHJP
G03G 5/06 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
G03G5/147 504
G03G5/05 101
G03G5/06 371
G03G5/147 502
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095870
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 知也
(72)【発明者】
【氏名】藤井 亮介
(72)【発明者】
【氏名】小林 紘子
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 有杜
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 真宏
(72)【発明者】
【氏名】小山田 祐基
(72)【発明者】
【氏名】成田 幸介
【テーマコード(参考)】
2H068
【Fターム(参考)】
2H068AA13
2H068AA19
2H068AA43
2H068AA44
2H068AA49
2H068BA16
2H068BA39
2H068BB23
2H068BB25
2H068BB29
(57)【要約】
【課題】繰り返しの画像形成の初期と終期とで電気特性の差異が少なく、且つ、画像に焼き付きゴーストが発生しにくく、これらが、帯電及び露光の強度に係る比較的広い設定領域にわたって実現される電子写真感光体を提供すること。
【解決手段】電子写真感光体は、導電性基体と下引層と感光層とを備え、下引層が結着樹脂とペリノン化合物とを含有し、感光層がジカルボン酸単位(A2)、ジカルボン酸単位(A3)及びジカルボン酸単位(A4)からなる群から選択される少なくとも1種のジカルボン酸単位(A)とジオール単位(B)とを有するポリエステル樹脂(1)を含有し、感光層に占めるポリエステル樹脂(1)の質量割合が15質量%以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基体と、前記導電性基体上に配置された下引層と、前記下引層上に配置された感光層と、を備え、
前記下引層が、結着樹脂と、下記の式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種のペリノン化合物と、を含有し、
前記感光層が、下記の式(A2)で表されるジカルボン酸単位(A2)、式(A3)で表されるジカルボン酸単位(A3)及び式(A4)で表されるジカルボン酸単位(A4)からなる群から選択される少なくとも1種のジカルボン酸単位(A)と下記の式(B)で表されるジオール単位(B)とを有するポリエステル樹脂(1)を含有し、
前記感光層に占める前記ポリエステル樹脂(1)の質量割合が15質量%以上である、
電子写真感光体。
【化1】
式(1)中、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17及びR
18は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アリールオキシカルボニルアルキル基又はハロゲン原子を表す。R
11とR
12、R
12とR
13及びR
13とR
14は、各々独立に、互いに連結して環を形成してもよい。R
15とR
16、R
16とR
17及びR
17とR
18は、各々独立に、互いに連結して環を形成してもよい。
式(2)中、R
21、R
22、R
23、R
24、R
25、R
26、R
27及びR
28は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アリールオキシカルボニルアルキル基又はハロゲン原子を表す。R
21とR
22、R
22とR
23及びR
23とR
24は、各々独立に、互いに連結して環を形成してもよい。R
25とR
26、R
26とR
27及びR
27とR
28は、各々独立に、互いに連結して環を形成してもよい。
【化2】
式(A2)において、n
201及びn
202はそれぞれ独立に0以上4以下の整数であり、n
201個のRa
201及びn
202個のRa
202はそれぞれ独立に炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数6以上12以下のアリール基又は炭素数1以上6以下のアルコキシ基である。
式(A3)において、n
301及びn
302はそれぞれ独立に0以上4以下の整数であり、n
301個のRa
301及びn
302個のRa
302はそれぞれ独立に炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数6以上12以下のアリール基又は炭素数1以上6以下のアルコキシ基である。
式(A4)において、n
401は0以上6以下の整数であり、n
401個のRa
401はそれぞれ独立に炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数6以上12以下のアリール基又は炭素数1以上6以下のアルコキシ基である。
式(B)において、Ar
B1及びAr
B2はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい芳香環であり、L
Bは単結合、酸素原子、硫黄原子又は-C(Rb
1)(Rb
2)-であり、n
B1は0、1又は2である。Rb
1及びRb
2はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上20以下のアルキル基、炭素数6以上12以下のアリール基又は炭素数7以上20以下のアラルキル基であり、Rb
1とRb
2とが結合し環状アルキル基を形成していてもよい。
【請求項2】
前記下引層に占める前記ペリノン化合物の質量割合が30質量%以上90質量%以下である、請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記下引層がポリウレタンを含有する、請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記下引層の平均厚が5μm以上30μm以下である、請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
前記感光層がさらにポリカーボネート樹脂を含有する、請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項6】
前記ポリエステル樹脂(1)が、下記の式(B1)で表されるジオール単位(B1)、式(B2)で表されるジオール単位(B2)、式(B3)で表されるジオール単位(B3)、式(B4)で表されるジオール単位(B4)、式(B5)で表されるジオール単位(B5)、式(B6)で表されるジオール単位(B6)、式(B7)で表されるジオール単位(B7)及び式(B8)で表されるジオール単位(B8)からなる群から選択される少なくとも1種を有する、請求項1に記載の電子写真感光体。
【化3】
【化4】
式(B1)において、Rb
101は炭素数4以上20以下の分岐アルキル基であり、Rb
201は水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基であり、Rb
401、Rb
501、Rb
801及びRb
901はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基又はハロゲン原子である。
式(B2)において、Rb
102は炭素数4以上20以下の直鎖アルキル基であり、Rb
202は水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基であり、Rb
402、Rb
502、Rb
802及びRb
902はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基又はハロゲン原子である。
式(B3)において、Rb
113及びRb
213はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上3以下の直鎖アルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基又はハロゲン原子であり、dは7以上15以下の整数であり、Rb
403、Rb
503、Rb
803及びRb
903はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基又はハロゲン原子である。
式(B4)において、Rb
104及びRb
204はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基であり、Rb
404、Rb
504、Rb
804及びRb
904はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基又はハロゲン原子である。
式(B5)において、Ar
105は炭素数6以上12以下のアリール基又は炭素数7以上20以下のアラルキル基であり、Rb
205は水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基であり、Rb
405、Rb
505、Rb
805及びRb
905はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基又はハロゲン原子である。
式(B6)において、Rb
116及びRb
216はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上3以下の直鎖アルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基又はハロゲン原子であり、eは4以上6以下の整数であり、Rb
406、Rb
506、Rb
806及びRb
906はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基又はハロゲン原子である。
式(B7)において、Rb
407、Rb
507、Rb
807及びRb
907はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基又はハロゲン原子である。
式(B8)において、Rb
408、Rb
508、Rb
808及びRb
908はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基又はハロゲン原子である。
【請求項7】
前記感光層が電荷発生材料としてガリウムフタロシアニンを含有する、請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の電子写真感光体を備え、
画像形成装置に着脱するプロセスカートリッジ。
【請求項9】
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電装置と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、
トナーを含む現像剤により、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置と、
を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、導電性基体と下引層と感光層とを備え、下引層がペリノン化合物とポリウレタンとを含有する電子写真感光体が開示されている。
【0003】
特許文献2には、導電性基体と下引層と感光層とを備え、下引層がペリノン化合物とアクセプター化合物とを含有する電子写真感光体が開示されている。
【0004】
特許文献3には、導電性基体と下引層と感光層とを備え、下引層がペリノン化合物とイオン化ポテンシャルが5.4eV以上5.9eV以下であるアミン化合物と結着樹脂とを含有する電子写真感光体が開示されている。
【0005】
特許文献4には、導電性支持体上に、N型半導性粒子を含有する中間層と、P型顔料及びN型顔料を含有する感光層とを有する電子写真感光体が開示されている。
【0006】
特許文献5には、導電性支持体上に中間層及び感光層を設けてなる電子写真感光体であって、中間層がポリオレフィン樹脂及び有機電子輸送物質を含有し、有機電子輸送物質が、イミド系化合物、ベンズイミダゾール系化合物、キノン系化合物、シクロペンタジエニリデン系化合物、アゾ系化合物及びそれらの誘導体からなる群から選択される化合物である電子写真感光体が開示されている。
【0007】
特許文献6には、導電性支持体上に下引層及び感光層が積層され、下引層及び感光層の少なくとも一方が式Aで表される化合物(ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド骨格の片側にベンゾイミダゾール環が導入された化合物)を含有する電子写真感光体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2020-046640号公報
【特許文献2】特開2020-046641号公報
【特許文献3】特開2020-101652号公報
【特許文献4】特開2004-354697号公報
【特許文献5】特開2011-095665号公報
【特許文献6】特開2021-015223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示は、感光層に占めるポリエステル樹脂(1)の質量割合が15質量%未満である場合に比べて、繰り返しの画像形成の初期と終期とで電気特性の差異が少なく、且つ、画像に焼き付きゴーストが発生しにくく、これらが、帯電及び露光の強度に係る比較的広い設定領域にわたって実現される電子写真感光体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための具体的手段には、下記の態様が含まれる。各式は、後述する同じ番号の式と同一である。
【0011】
<1>
導電性基体と、前記導電性基体上に配置された下引層と、前記下引層上に配置された感光層と、を備え、
前記下引層が、結着樹脂と、式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種のペリノン化合物と、を含有し、
前記感光層が、式(A2)で表されるジカルボン酸単位(A2)、式(A3)で表されるジカルボン酸単位(A3)及び式(A4)で表されるジカルボン酸単位(A4)からなる群から選択される少なくとも1種のジカルボン酸単位(A)と式(B)で表されるジオール単位(B)とを有するポリエステル樹脂(1)を含有し、
前記感光層に占める前記ポリエステル樹脂(1)の質量割合が15質量%以上である、
電子写真感光体。
<2>
前記下引層に占める前記ペリノン化合物の質量割合が30質量%以上90質量%以下である、<1>に記載の電子写真感光体。
<3>
前記下引層がポリウレタンを含有する、<1>又は<2>に記載の電子写真感光体。
<4>
前記下引層の平均厚が5μm以上30μm以下である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
<5>
前記感光層がさらにポリカーボネート樹脂を含有する、<1>~<4>のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
<6>
前記ポリエステル樹脂(1)が、式(B1)で表されるジオール単位(B1)、式(B2)で表されるジオール単位(B2)、式(B3)で表されるジオール単位(B3)、式(B4)で表されるジオール単位(B4)、式(B5)で表されるジオール単位(B5)、式(B6)で表されるジオール単位(B6)、式(B7)で表されるジオール単位(B7)及び式(B8)で表されるジオール単位(B8)からなる群から選択される少なくとも1種を有する、<1>~<5>のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
<7>
前記感光層が電荷発生材料としてガリウムフタロシアニンを含有する、<1>~<6>のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
<8>
<1>~<7>のいずれか1つに記載の電子写真感光体を備え、
画像形成装置に着脱するプロセスカートリッジ。
<9>
<1>~<7>のいずれか1つに記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電装置と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、
トナーを含む現像剤により、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置と、
を備える画像形成装置。
【発明の効果】
【0012】
<1>、<3>、<5>、<6>又は<7>に係る発明によれば、感光層に占めるポリエステル樹脂(1)の質量割合が15質量%未満である場合に比べて、繰り返しの画像形成の初期と終期とで電気特性の差異が少なく、且つ、画像に焼き付きゴーストが発生しにくく、これらが、帯電及び露光の強度に係る比較的広い設定領域にわたって実現される電子写真感光体が提供される。
<2>に係る発明によれば、下引層に占めるペリノン化合物の質量割合が30質量%未満又は90質量%超である場合に比べて、繰り返しの画像形成の初期と終期とで電気特性の差異が少なく、且つ、画像に焼き付きゴーストが発生しにくく、これらが、帯電及び露光の強度に係る比較的広い設定領域にわたって実現される電子写真感光体が提供される。
<4>に係る発明によれば、下引層の平均厚が5μm未満又は30μm超である場合に比べて、繰り返しの画像形成の初期と終期とで電気特性の差異が少なく、且つ、画像に焼き付きゴーストが発生しにくく、これらが、帯電及び露光の強度に係る比較的広い設定領域にわたって実現される電子写真感光体が提供される。
<8>に係る発明によれば、感光層に占めるポリエステル樹脂(1)の質量割合が15質量%未満である場合に比べて、繰り返しの画像形成の初期と終期とで電気特性の差異が少なく、且つ、画像に焼き付きゴーストが発生しにくく、これらが、帯電及び露光の強度に係る比較的広い設定領域にわたって実現される電子写真感光体を備えるプロセスカートリッジが提供される。
<9>に係る発明によれば、感光層に占めるポリエステル樹脂(1)の質量割合が15質量%未満である場合に比べて、繰り返しの画像形成の初期と終期とで電気特性の差異が少なく、且つ、画像に焼き付きゴーストが発生しにくく、これらが、帯電及び露光の強度に係る比較的広い設定領域にわたって実現される電子写真感光体を備える画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態に係る電子写真感光体の層構成の一例を示す部分断面図である。
【
図2】本実施形態に係る電子写真感光体の層構成の他の一例を示す部分断面図である。
【
図3】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【
図4】本実施形態に係る画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
【
図5】実施例における焼き付きゴーストの評価基準を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本開示の実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
【0015】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0016】
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0017】
本開示において実施形態を、図面を参照して説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
【0018】
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。本開示において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
本開示において各成分に該当する粒子は複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
【0019】
本開示においてアルキル基及びアルキレン基は、特に断らない限り、直鎖状、分岐状及び環状のいずれも含む。
【0020】
本開示において有機基、芳香環、連結基、アルキル基、アルキレン基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基等は、基中の水素原子がハロゲン原子によって置換されていてもよい。
【0021】
本開示において化合物を構造式で示すとき、炭化水素基及び/又は炭化水素鎖における炭素原子及び水素原子を表す記号(C及びH)を省略した構造式で示すことがある。
【0022】
本開示において、共重合体又は樹脂の「構成単位」とは、単量体単位と同義である。
【0023】
<電子写真感光体>
本実施形態に係る電子写真感光体(以下「感光体」ともいう。)は、導電性基体と、導電性基体上に配置された下引層と、下引層上に配置された感光層と、を備える。
【0024】
図1は、本実施形態に係る感光体の層構成の一例を概略的に示す部分断面図である。
図1に示す感光体10Aは、積層型感光層を有する。感光体10Aは、導電性基体1上に下引層2、電荷発生層3及び電荷輸送層4がこの順に積層された構造を有し、電荷発生層3及び電荷輸送層4が感光層5(いわゆる、機能分離型感光層)を構成している。感光体10Aは、下引層2と電荷発生層3との間に中間層(図示せず)を有してもよい。
【0025】
図2は、本実施形態に係る感光体の層構成の他の一例を概略的に示す部分断面図である。
図2に示す感光体10Bは、単層型感光層を有する。感光体10Bは、導電性基体1上に下引層2及び感光層5がこの順に積層された構造を有する。感光体10Bは、下引層2と感光層5との間に中間層(図示せず)を有してもよい。
【0026】
本実施形態に係る感光体は、
下引層が、結着樹脂と、下記の式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種のペリノン化合物と、を含有し、
感光層が、下記の式(A2)で表されるジカルボン酸単位(A2)、式(A3)で表されるジカルボン酸単位(A3)及び式(A4)で表されるジカルボン酸単位(A4)からなる群から選択される少なくとも1種のジカルボン酸単位(A)と下記の式(B)で表されるジオール単位(B)とを有するポリエステル樹脂(1)を含有し、
感光層に占めるポリエステル樹脂(1)の質量割合が15質量%以上である。
【0027】
【0028】
式(1)中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アリールオキシカルボニルアルキル基又はハロゲン原子を表す。R11とR12、R12とR13及びR13とR14は、各々独立に、互いに連結して環を形成してもよい。R15とR16、R16とR17及びR17とR18は、各々独立に、互いに連結して環を形成してもよい。
式(2)中、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27及びR28は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アリールオキシカルボニルアルキル基又はハロゲン原子を表す。R21とR22、R22とR23及びR23とR24は、各々独立に、互いに連結して環を形成してもよい。R25とR26、R26とR27及びR27とR28は、各々独立に、互いに連結して環を形成してもよい。
【0029】
【0030】
式(A2)において、n201及びn202はそれぞれ独立に0以上4以下の整数であり、n201個のRa201及びn202個のRa202はそれぞれ独立に炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数6以上12以下のアリール基又は炭素数1以上6以下のアルコキシ基である。
式(A3)において、n301及びn302はそれぞれ独立に0以上4以下の整数であり、n301個のRa301及びn302個のRa302はそれぞれ独立に炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数6以上12以下のアリール基又は炭素数1以上6以下のアルコキシ基である。
式(A4)において、n401は0以上6以下の整数であり、n401個のRa401はそれぞれ独立に炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数6以上12以下のアリール基又は炭素数1以上6以下のアルコキシ基である。
式(B)において、ArB1及びArB2はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい芳香環であり、LBは単結合、酸素原子、硫黄原子又は-C(Rb1)(Rb2)-であり、nB1は0、1又は2である。Rb1及びRb2はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上20以下のアルキル基、炭素数6以上12以下のアリール基又は炭素数7以上20以下のアラルキル基であり、Rb1とRb2とが結合し環状アルキル基を形成していてもよい。
【0031】
本開示において、式(1)で表される化合物をペリノン化合物(1)といい、式(2)で表される化合物をペリノン化合物(2)という。
【0032】
本実施形態に係る感光体の感光層が、
図1に示す感光体10Aのように電荷発生層及び電荷輸送層からなる積層型感光層である場合、少なくとも電荷輸送層がポリエステル樹脂(1)を含有する。電荷発生層は、ポリエステル樹脂(1)を含有していてもよく、含有していなくてもよい。
【0033】
本実施形態に係る感光体は、繰り返しの画像形成の初期と終期とで電気特性の差異が少なく、且つ、画像に焼き付きゴーストが発生しにくく、これらが、帯電及び露光の強度に係る比較的広い設定領域にわたって実現される。「焼き付きゴースト」とは、露光履歴の多い領域において感光層の表面電位が低下し、ハーフトーン画像の濃度が濃くなる画像欠陥を意味する。
本実施形態に係る感光体が上記の効果を奏する機序は、下記のように推測される。
【0034】
下引層にペリノン化合物(1)及び/又はペリノン化合物(2)を使用すると、良好な初期電気特性が得られることが知られている。
ここで、感光層(積層型感光層の場合は電荷輸送層)にポリエステル樹脂(1)以外の樹脂を使用した場合、露光時の感光層(積層型感光層の場合は電荷発生層)から下引層への電子注入性と、感光層中の電荷発生材料から電荷輸送材料(積層型感光層の場合は、電荷発生層から電荷輸送層)への正孔注入性の差が大きく、露光と帯電の繰り返しで徐々に電荷が蓄積すると考えられる。その結果、繰り返しの画像形成の初期と終期とで電気特性の差異が大きくなる。
また、この電荷の蓄積は露光履歴が多い部分で顕著になると考えられ、その結果、画像に焼き付きゴーストが発生する。
さらに、帯電及び露光の条件設定が変わると、上述の「電子注入性」と「正孔注入性」の差も大きく変動すると考えられる。その結果、繰り返しの画像形成の初期と終期とで電気特性の差異、及び焼き付きゴーストの出方も変化してしまう。
これに対して、感光層(積層型感光層の場合は電荷輸送層)にポリエステル樹脂(1)を使用した場合は、上述の「電子注入性」と「正孔注入性」の差が小さくなると考えられる。
その結果、繰り返しの画像形成の初期と終期とで電気特性の差異が少なく、画像に焼き付きゴーストが発生しにくい。さらにこれらが、帯電及び露光の条件に係る比較的広い設定領域にわたって実現される。
【0035】
本実施形態に係る感光体において、感光層に占めるポリエステル樹脂(1)の質量割合は15質量%以上である。感光層に占めるポリエステル樹脂(1)の質量割合が15質量%未満であると、感光層の膜強度とクラック耐性が不十分となり電気特性の維持性が低下する。この事象を抑制する観点から、感光層に占めるポリエステル樹脂(1)の質量割合は、15質量%以上であり、20質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましい。
感光層に占めるポリエステル樹脂(1)の質量割合は、初期電気特性の観点から、80質量%以下であることが好ましく、75質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることが更に好ましい。
【0036】
本実施形態に係る感光体において、下引層に占めるペリノン化合物の質量割合(ペリノン化合物(1)及びペリノン化合物(2)を合計した質量割合)は、電子写真に適した電気特性を下引層に付与する観点から、30質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましい。
下引層に占めるペリノン化合物の質量割合(ペリノン化合物(1)及びペリノン化合物(2)を合計した質量割合)は、下引層の柔軟性及び弾性の観点から、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下が更に好ましい。
【0037】
以下、ペリノン化合物、ポリエステル樹脂(1)及び感光体の各層について順に詳細に説明する。
【0038】
[ペリノン化合物(1)、ペリノン化合物(2)]
ペリノン化合物(1)は、下記の式(1)で表される化合物である。ペリノン化合物(2)は、下記の式(2)で表される化合物である。
【0039】
【0040】
式(1)中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アリールオキシカルボニルアルキル基又はハロゲン原子を表す。R11とR12、R12とR13及びR13とR14は、各々独立に、互いに連結して環を形成してもよい。R15とR16、R16とR17及びR17とR18は、各々独立に、互いに連結して環を形成してもよい。
【0041】
式(2)中、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27及びR28は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アリールオキシカルボニルアルキル基又はハロゲン原子を表す。R21とR22、R22とR23及びR23とR24は、各々独立に、互いに連結して環を形成してもよい。R25とR26、R26とR27及びR27とR28は、各々独立に、互いに連結して環を形成してもよい。
【0042】
式(1)中、R11~R18で表されるアルキル基としては、置換若しくは無置換のアルキル基が挙げられる。
【0043】
式(1)中、R11~R18で表される無置換のアルキル基としては、炭素数1以上20以下(好ましくは炭素数1以上10以下、より好ましくは炭素数1以上6以下)の直鎖状のアルキル基、炭素数3以上20以下(好ましくは炭素数3以上10以下)の分岐状のアルキル基、炭素数3以上20以下(好ましくは炭素数3以上10以下)の環状のアルキル基が挙げられる。
【0044】
炭素数1以上20以下の直鎖状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-イコシル基等が挙げられる。
【0045】
炭素数3以上20以下の分岐状のアルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、イソノニル基、sec-ノニル基、tert-ノニル基、イソデシル基、sec-デシル基、tert-デシル基、イソドデシル基、sec-ドデシル基、tert-ドデシル基、tert-テトラデシル基、tert-ペンタデシル基等が挙げられる。
【0046】
炭素数3以上20以下の環状のアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、これら単環のアルキル基が連結した多環(例えば、二環、三環、スピロ環)のアルキル基等が挙げられる。
【0047】
上記の中でも、無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基等の直鎖状のアルキル基が好ましい。
【0048】
アルキル基における置換基としては、アルコキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ニトロ基及びハロゲン原子(フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられる。
アルキル基中の水素原子を置換するアルコキシ基としては、式(1)中のR11~R18で表される無置換のアルコキシ基と同様の基が挙げられる。
【0049】
式(1)中、R11~R18で表されるアルコキシ基としては、置換若しくは無置換のアルコキシ基が挙げられる。
【0050】
式(1)中、R11~R18で表される無置換のアルコキシ基としては、炭素数1以上10以下(好ましくは1以上6以下、より好ましくは1以上4以下)の直鎖状、分岐状又は環状のアルコキシ基が挙げられる。
【0051】
直鎖状のアルコキシ基として具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基等が挙げられる。
分岐状のアルコキシ基として具体的には、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、tert-ペンチルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、sec-ヘキシルオキシ基、tert-ヘキシルオキシ基、イソヘプチルオキシ基、sec-ヘプチルオキシ基、tert-ヘプチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、sec-オクチルオキシ基、tert-オクチルオキシ基、イソノニルオキシ基、sec-ノニルオキシ基、tert-ノニルオキシ基、イソデシルオキシ基、sec-デシルオキシ基、tert-デシルオキシ基等が挙げられる。
環状のアルコキシ基として具体的には、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、シクロノニルオキシ基、シクロデシルオキシ基等が挙げられる。
これらの中でも、無置換のアルコキシ基としては、直鎖状のアルコキシ基が好ましい。
【0052】
アルコキシ基における置換基としては、アリール基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、水酸基、カルボキシ基、ニトロ基及びハロゲン原子(フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられる。
アルコキシ基中の水素原子を置換するアリール基としては、式(1)中、R11~R18で表される無置換のアリール基と同様の基が挙げられる。
アルコキシ基中の水素原子を置換するアルコキシカルボニル基としては、式(1)中、R11~R18で表される無置換のアルコキシカルボニル基と同様の基が挙げられる。
アルコキシ基中の水素原子を置換するアリールオキシカルボニル基としては、式(1)中、R11~R18で表される無置換のアリールオキシカルボニル基と同様の基が挙げられる。
【0053】
式(1)中、R11~R18で表されるアラルキル基としては、置換若しくは無置換のアラルキル基が挙げられる。
【0054】
式(1)中、R11~R18で表される無置換のアラルキル基としては、炭素数7以上30以下のアラルキル基であることが好ましく、炭素数7以上16以下のアラルキル基であることがより好ましく、炭素数7以上12以下のアラルキル基であることが更に好ましい。
【0055】
炭素数7以上30以下の無置換のアラルキル基としては、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、4-フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、フェニルヘプチル基、フェニルオクチル基、フェニルノニル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、アントラチルメチル基、フェニル-シクロペンチルメチル基等が挙げられる。
【0056】
アラルキル基における置換基としては、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基及びハロゲン原子(フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられる。
アラルキル基中の水素原子を置換するアルコキシ基としては、式(1)中、R11~R18で表される無置換のアルコキシ基と同様の基が挙げられる。
アラルキル基中の水素原子を置換するアルコキシカルボニル基としては、式(1)中、R11~R18で表される無置換のアルコキシカルボニル基と同様の基が挙げられる。
アラルキル基中の水素原子を置換するアリールオキシカルボニル基としては、式(1)中、R11~R18で表される無置換のアリールオキシカルボニル基と同様の基が挙げられる。
【0057】
式(1)中、R11~R18で表されるアリール基としては、置換若しくは無置換のアリール基が挙げられる。
【0058】
式(1)中、R11~R18で表される無置換のアリール基としては、炭素数6以上30以下のアリール基が好ましく、6以上14以下のアリール基がより好ましく、6以上10以下のアリール基が更に好ましい。
【0059】
炭素数6以上30以下のアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、9-アンスリル基、9-フェナントリル基、1-ピレニル基、5-ナフタセニル基、1-インデニル基、2-アズレニル基、9-フルオレニル基、ビフェニレニル基、インダセニル基、フルオランテニル基、アセナフチレニル基、アセアントリレニル基、フェナレニル基、フルオレニル基、アントリル基、ビアントラセニル基、ターアントラセニル基、クオーターアントラセニル基、アントラキノリル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、プレイアデニル基、ピセニル基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、テトラフェニレニル基、ヘキサフェニル基、ヘキサセニル基、ルビセニル基、コロネニル基等が挙げられる。上記の中でも、フェニル基が好ましい。
【0060】
アリール基における置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基及びハロゲン原子(フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられる。
アリール基中の水素原子を置換するアルキル基としては、式(1)中、R11~R18で表される無置換のアルキル基と同様の基が挙げられる。
アリール基中の水素原子を置換するアルコキシ基としては、式(1)中、R11~R18で表される無置換のアルコキシ基と同様の基が挙げられる。
アリール基中の水素原子を置換するアルコキシカルボニル基としては、式(1)中、R11~R18で表される無置換のアルコキシカルボニル基と同様の基が挙げられる。
アリール基中の水素原子を置換するアリールオキシカルボニル基としては、式(1)中、R11~R18で表される無置換のアリールオキシカルボニル基と同様の基が挙げられる。
【0061】
式(1)中、R11~R18で表されるアリールオキシ基(-O-Ar、Arはアリール基を表す。)としては、置換若しくは無置換のアリールオキシ基が挙げられる。
【0062】
式(1)中、R11~R18で表される無置換のアリールオキシ基としては、炭素数6以上30以下のアリールオキシ基が好ましく、6以上14以下のアリールオキシ基がより好ましく、6以上10以下のアリールオキシ基が更に好ましい。
【0063】
炭素数6以上30以下のアリールオキシ基としては、フェニルオキシ基(フェノキシ基)、ビフェニルオキシ基、1-ナフチルオキシ基、2-ナフチルオキシ基、9-アンスリルオキシ基、9-フェナントリルオキシ基、1-ピレニルオキシ基、5-ナフタセニルオキシ基、1-インデニルオキシ基、2-アズレニルオキシ基、9-フルオレニルオキシ基、ビフェニレニルオキシ基、インダセニルオキシ基、フルオランテニルオキシ基、アセナフチレニルオキシ基、アセアントリレニルオキシ基、フェナレニルオキシ基、フルオレニルオキシ基、アントリルオキシ基、ビアントラセニルオキシ基、ターアントラセニルオキシ基、クオーターアントラセニルオキシ基、アントラキノリルオキシ基、フェナントリルオキシ基、トリフェニレニルオキシ基、ピレニルオキシ基、クリセニルオキシ基、ナフタセニルオキシ基、プレイアデニルオキシ基、ピセニルオキシ基、ペリレニルオキシ基、ペンタフェニルオキシ基、ペンタセニルオキシ基、テトラフェニレニルオキシ基、ヘキサフェニルオキシ基、ヘキサセニルオキシ基、ルビセニルオキシ基、コロネニルオキシ基等が挙げられる。上記の中でも、フェニルオキシ基(フェノキシ基)が好ましい。
【0064】
アリールオキシ基における置換基としては、アルキル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基及びハロゲン原子(フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられる。
アリールオキシ基中の水素原子を置換するアルキル基としては、式(1)中、R11~R18で表される無置換のアルキル基と同様の基が挙げられる。
アリールオキシ基中の水素原子を置換するアルコキシカルボニル基としては、式(1)中、R11~R18で表される無置換のアルコキシカルボニル基と同様の基が挙げられる。
アリールオキシ基中の水素原子を置換するアリールオキシカルボニル基としては、式(1)中、R11~R18で表される無置換のアリールオキシカルボニル基と同様の基が挙げられる。
【0065】
式(1)中、R11~R18で表されるアルコキシカルボニル基(-CO-OR、Rはアルキル基を表す。)としては、置換若しくは無置換のアルコキシカルボニル基が挙げられる。
【0066】
式(1)中、R11~R18で表される無置換のアルコキシカルボニル基におけるアルキル鎖の炭素数としては、1以上20以下であることが好ましく、1以上15以下であることがより好ましく、1以上10以下であることが更に好ましい。
【0067】
アルキル鎖の炭素数が1以上20以下のアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、sec-ブトキシブチルカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、ペンタオキシカルボニル基、ヘキサオキシカルボニル基、ヘプタオキシカルボニル基、オクタオキシカルボニル基、ノナオキシカルボニル基、デカオキシカルボニル基、ドデカオキシカルボニル基、トリデカオキシカルボニル基、テトラデカオキシカルボニル基、ペンタデカオキシカルボニル基、ヘキサデカオキシカルボニル基、ヘプタデカオキシカルボニル基、オクタデカオキシカルボニル基、ノナデカオキシカルボニル基、イコサオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0068】
アルコキシカルボニル基における置換基としては、アリール基、ヒドロキシ基及びハロゲン原子(フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられる。
アルコキシカルボニル基中の水素原子を置換するアリール基としては、式(1)中、R11~R18で表される無置換のアリール基と同様の基が挙げられる。
【0069】
式(1)中、R11~R18で表されるアリールオキシカルボニル基(-CO-OAr、Arはアリール基を表す。)としては、置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニル基が挙げられる。
【0070】
式(1)中、R11~R18で表される無置換のアリールオキシカルボニル基におけるアリール基の炭素数としては、6以上30以下であることが好ましく、6以上14以下であることがより好ましく、6以上10以下であることが更に好ましい。
【0071】
炭素数6以上30以下のアリール基を有するアリールオキシカルボニル基としては、フェノキシカルボニル基、ビフェニルオキシカルボニル基、1-ナフチルオキシカルボニル基、2-ナフチルオキシカルボニル基、9-アンスリルオキシカルボニル基、9-フェナントリルオキシカルボニル基、1-ピレニルオキシカルボニル基、5-ナフタセニルオキシカルボニル基、1-インデニルオキシカルボニル基、2-アズレニルオキシカルボニル基、9-フルオレニルオキシカルボニル基、ビフェニレニルオキシカルボニル基、インダセニルオキシカルボニル基、フルオランテニルオキシカルボニル基、アセナフチレニルオキシカルボニル基、アセアントリレニルオキシカルボニル基、フェナレニルオキシカルボニル基、フルオレニルオキシカルボニル基、アントリルオキシカルボニル基、ビアントラセニルオキシカルボニル基、ターアントラセニルオキシカルボニル基、クオーターアントラセニルオキシカルボニル基、アントラキノリルオキシカルボニル基、フェナントリルオキシカルボニル基、トリフェニレニルオキシカルボニル基、ピレニルオキシカルボニル基、クリセニルオキシカルボニル基、ナフタセニルオキシカルボニル基、プレイアデニルオキシカルボニル基、ピセニルオキシカルボニル基、ペリレニルオキシカルボニル基、ペンタフェニルオキシカルボニル基、ペンタセニルオキシカルボニル基、テトラフェニレニルオキシカルボニル基、ヘキサフェニルオキシカルボニル基、ヘキサセニルオキシカルボニル基、ルビセニルオキシカルボニル基、コロネニルオキシカルボニル基等が挙げられる。上記の中でも、フェノキシカルボニル基が好ましい。
【0072】
アリールオキシカルボニル基における置換基としては、アルキル基、ヒドロキシ基及びハロゲン原子(フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられる。
アリールオキシカルボニル基の水素原子を置換するアルキル基としては、式(1)中、R11~R18で表される無置換のアルキル基と同様の基が挙げられる。
【0073】
式(1)中、R11~R18で表されるアルコキシカルボニルアルキル基(-(CnH2n)-CO-OR、Rはアルキル基を表し、nは1以上の整数を表す。)としては、置換若しくは無置換のアルコキシカルボニルアルキル基が挙げられる。
【0074】
式(1)中、R11~R18で表される無置換のアルコキシカルボニルアルキル基におけるアルコキシカルボニル基(-CO-OR)としては、式(1)中、R11~R18で表されるアルコキシカルボニル基と同様の基が挙げられる。
【0075】
式(1)中、R11~R18で表される無置換のアルコキシカルボニルアルキル基におけるアルキレン鎖(-CnH2n-)としては、炭素数1以上20以下(好ましくは炭素数1以上10以下、より好ましくは炭素数1以上6以下)の直鎖状のアルキレン鎖、炭素数3以上20以下(好ましくは炭素数3以上10以下)の分岐状のアルキレン鎖、炭素数3以上20以下(好ましくは炭素数3以上10以下)の環状のアルキレン鎖が挙げられる。
【0076】
炭素数1以上20以下の直鎖状のアルキレン鎖としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-ヘキシレン基、n-ヘプチレン基、n-オクチレン基、n-ノニレン基、n-デシレン基、n-ウンデシレン基、n-ドデシレン基、トリデシレン基、n-テトラデシレン基、n-ペンタデシレン基、n-ヘプタデシレン基、n-オクタデシレン基、n-ノナデシレン基、n-イコシレン基等が挙げられる。
【0077】
炭素数3以上20以下の分岐状のアルキレン鎖としては、イソプロピレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基、tert-ブチレン基、イソペンチレン基、ネオペンチレン基、tert-ペンチレン基、イソヘキシレン基、sec-ヘキシレン基、tert-ヘキシレン基、イソヘプチレン基、sec-ヘプチレン基、tert-ヘプチレン基、イソオクチレン基、sec-オクチレン基、tert-オクチレン基、イソノニレン基、sec-ノニレン基、tert-ノニレン基、イソデシレン基、sec-デシレン基、tert-デシレン基、イソドデシレン基、sec-ドデシレン基、tert-ドデシレン基、tert-テトラデシレン基、tert-ペンタデシレン基等が挙げられる。
【0078】
炭素数3以上20以下の環状のアルキレン鎖としては、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基等が挙げられる。
【0079】
アルコキシカルボニルアルキル基における置換基としては、アリール基、ヒドロキシ基及びハロゲン原子(フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられる。
アルコキシカルボニルアルキル基の水素原子を置換するアリール基としては、式(1)中、R11~R18で表される無置換のアリール基と同様の基が挙げられる。
【0080】
式(1)中、R11~R18で表されるアリールオキシカルボニルアルキル基(-(CnH2n) -CO-OAr、Arはアリール基を表し、nは1以上の整数を表す。)としては、置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニルアルキル基が挙げられる。
【0081】
式(1)中、R11~R18で表される無置換のアリールオキシカルボニルアルキル基におけるアリールオキシカルボニル基(-CO-OAr、Arはアリール基を表す。)としては、式(1)中、R11~R18で表されるアリールオキシカルボニル基と同様の基が挙げられる。
【0082】
式(1)中、R11~R18で表される無置換のアリールオキシカルボニルアルキル基におけるアルキレン鎖(-CnH2n-)としては、式(1)中、R11~R18で表されるアルコキシカルボニルアルキル基におけるアルキレン鎖と同様の基が挙げられる。
【0083】
アリールオキシカルボニルアルキル基における置換基としては、アルキル基、ヒドロキシ基及びハロゲン原子(フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられる。
アリールオキシカルボニルアルキル基の水素原子を置換するアルキル基としては、式(1)中、R11~R18で表される無置換のアルキル基と同様の基が挙げられる。
【0084】
式(1)中、R11~R18で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0085】
式(1)中、R11とR12、R12とR13、R13とR14、R15とR16、R16とR17又はR17とR18が、互いに連結して形成する環構造としては、ベンゼン環、炭素数10以上18以下の縮合環(ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、クリセン環(ベンゾ[α]フェナントレン環)、テトラセン環、テトラフェン環(ベンゾ[α]アントラセン環)、トリフェニレン環等)などが挙げられる。上記の中でも、形成される環構造としては、ベンゼン環が好ましい。
【0086】
式(2)中、R21~R28で表されるアルキル基としては、式(1)中、R11~R18で表されるアルキル基と同様の基が挙げられる。
式(2)中、R21~R28で表されるアルコキシ基としては、式(1)中、R11~R18で表されるアルコキシ基と同様の基が挙げられる。
式(2)中、R21~R28で表されるアラルキル基としては、式(1)中、R11~R18で表されるアラルキル基と同様の基が挙げられる。
式(2)中、R21~R28で表されるアリール基としては、式(1)中、R11~R18で表されるアリール基と同様の基が挙げられる。
式(2)中、R21~R28で表されるアリールオキシ基としては、式(1)中、R11~R18で表されるアリールオキシ基と同様の基が挙げられる。
式(2)中、R21~R28で表されるアルコキシカルボニル基としては、式(1)中、R11~R18で表されるアルコキシカルボニル基と同様の基が挙げられる。
式(2)中、R21~R28で表されるアリールオキシカルボニル基としては、式(1)中、R11~R18で表されるアリールオキシカルボニル基と同様の基が挙げられる。
式(2)中、R21~R28で表されるアルコキシカルボニルアルキル基としては、式(1)中、R11~R18で表されるアルコキシカルボニルアルキル基と同様の基が挙げられる。
式(2)中、R21~R28で表されるアリールオキシカルボニルアルキル基としては、式(1)中、R11~R18で表されるアリールオキシカルボニルアルキル基と同様の基が挙げられる。
式(2)中、R21~R28で表されるハロゲン原子としては、式(1)中、R11~R18で表されるハロゲン原子と同様の原子が挙げられる。
【0087】
式(2)中、R21とR22、R22とR23、R23とR24、R25とR26、R26とR27又はR27とR28が、互いに連結して形成する環構造としては、ベンゼン環、炭素数10以上18以下の縮合環(ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、クリセン環(ベンゾ[α]フェナントレン環)、テトラセン環、テトラフェン環(ベンゾ[α]アントラセン環)、トリフェニレン環等)などが挙げられる。上記の中でも、形成される環構造としては、ベンゼン環が好ましい。
【0088】
式(1)においてR11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基又はアリールオキシカルボニルアルキル基であることが好ましい。
式(1)においてR11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は、各々独立に、水素原子又はアルキル基であることがより好ましい。ここでアルキル基の好ましい形態は先述のとおりである。
式(1)においてR11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は、水素原子であることが特に好ましい。
【0089】
式(2)においてR21、R22、R23、R24、R25、R26、R27及びR28は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基又はアリールオキシカルボニルアルキル基であることが好ましい。
式(2)においてR21、R22、R23、R24、R25、R26、R27及びR28は、各々独立に、水素原子又はアルキル基であることがより好ましい。ここでアルキル基の好ましい形態は先述のとおりである。
式(2)においてR21、R22、R23、R24、R25、R26、R27及びR28は、水素原子であることが特に好ましい。
【0090】
以下、ペリノン化合物(1)及びペリノン化合物(2)の具体例を示すが、本実施形態はこれに限定されるわけではない。下記の構造式中、Phはフェニル基を示す。
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
ペリノン化合物(2-1)~(2-18)はそれぞれ、ペリノン化合物(1-1)~(1-18)と異性体の関係(シス体とトランス体の関係)にある。ペリノン化合物は、合成法上、異性体の混合物が得られる傾向にある。異性体の混合物は、公知の精製方法に従い、混合物から一方を精製することができる。
【0098】
実施形態の一例において、下引層はペリノン化合物(1)とペリノン化合物(2)とを両方含有する。ペリノン化合物(1)とペリノン化合物(2)とが異性体の関係である場合でもない場合でも、ペリノン化合物(1)とペリノン化合物(2)の質量比は、ペリノン化合物(1):ペリノン化合物(2)=3:97~97:3であることが好ましく、5:95~95:5であることがより好ましく、10:90~90:10であることが更に好ましい。
【0099】
[ポリエステル樹脂(1)]
感光層(積層型感光層の場合は電荷輸送層)は、結着樹脂として少なくともポリエステル樹脂(1)を含む。ポリエステル樹脂(1)は、式(A2)で表されるジカルボン酸単位(A2)、式(A3)で表されるジカルボン酸単位(A3)及び式(A4)で表されるジカルボン酸単位(A4)からなる群から選択される少なくとも1種のジカルボン酸単位(A)と式(B)で表されるジオール単位(B)とを有するポリエステル樹脂である。
ポリエステル樹脂(1)は、ジカルボン酸単位(A)以外のその他のジカルボン酸単位を含んでいてもよい。ポリエステル樹脂(1)は、ジオール単位(B)以外のその他のジオール単位を含んでいてもよい。
【0100】
ジカルボン酸単位(A)は、下記の式(A2)で表されるジカルボン酸単位(A2)、式(A3)で表されるジカルボン酸単位(A3)及び式(A4)で表されるジカルボン酸単位(A4)からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0101】
【0102】
式(A2)において、n201及びn202はそれぞれ独立に0以上4以下の整数であり、n201個のRa201及びn202個のRa202はそれぞれ独立に炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数6以上12以下のアリール基又は炭素数1以上6以下のアルコキシ基である。
n201は0、1又は2であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。
n202は0、1又は2であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。
【0103】
【0104】
式(A3)において、n301及びn302はそれぞれ独立に0以上4以下の整数であり、n301個のRa301及びn302個のRa302はそれぞれ独立に炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数6以上12以下のアリール基又は炭素数1以上6以下のアルコキシ基である。
n301は0、1又は2であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。
n302は0、1又は2であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。
【0105】
【0106】
式(A4)において、n401は0以上6以下の整数であり、n401個のRa401はそれぞれ独立に炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数6以上12以下のアリール基又は炭素数1以上6以下のアルコキシ基である。
n401は0以上4以下の整数であることが好ましく、0、1又は2であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。
【0107】
式(A2)のRa201及びRa202、式(A3)のRa301及びRa302並びに式(A4)のRa401の具体的形態及び好ましい形態は同様であるので、以下、Ra201、Ra202、Ra301、Ra302及びRa401を「Ra」と総称して説明する。
【0108】
Raに係る炭素数1以上10以下のアルキル基は、直鎖状、分岐状及び環状のいずれでもよい。アルキル基の炭素数は、1以上6以下が好ましく、1以上4以下がより好ましく、1又は2が更に好ましい。
炭素数1以上10以下の直鎖アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基が挙げられる。
炭素数3以上10以下の分岐アルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、イソノニル基、sec-ノニル基、tert-ノニル基、イソデシル基、sec-デシル基、tert-デシル基等が挙げられる。
炭素数3以上10以下の環状アルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、及びこれら単環のアルキル基が連結した多環(例えば、二環、三環、スピロ環)のアルキル基が挙げられる。
【0109】
Raに係る炭素数6以上12以下のアリール基は、単環及び多環のいずれでもよい。アリール基の炭素数は、6以上10以下が好ましく、6がより好ましい。
炭素数6以上12以下のアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられる。
【0110】
Raに係る炭素数1以上6以下のアルコキシ基中のアルキル基は、直鎖状、分岐状及び環状のいずれでもよい。炭素数1以上6以下のアルコキシ基中のアルキル基の炭素数は、1以上4以下が好ましく、1以上3以下がより好ましく、1又は2が更に好ましい。
炭素数1以上6以下の直鎖アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基が挙げられる。
炭素数3以上6以下の分岐アルコキシ基としては、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、tert-ペンチルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、sec-ヘキシルオキシ基、tert-ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
炭素数3以上6以下の環状アルコキシ基としては、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0111】
以下に、ジカルボン酸単位(A2)の具体例としてジカルボン酸単位(A2-1)~(A2-3)を示す。ジカルボン酸単位(A2)は、これに限定されるわけではない。
【0112】
【0113】
以下に、ジカルボン酸単位(A3)の具体例としてジカルボン酸単位(A3-1)~(A3-2)を示す。ジカルボン酸単位(A3)は、これに限定されるわけではない。
【0114】
【0115】
以下に、ジカルボン酸単位(A4)の具体例としてジカルボン酸単位(A4-1)~(A4-3)を示す。ジカルボン酸単位(A4)は、これに限定されるわけではない。
【0116】
【0117】
ジカルボン酸単位(A)としては、上記具体例の(A2-3)、(A3-2)及び(A4-3)からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、(A2-3)及び(A3-2)からなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、少なくとも(A2-3)を含むことが更に好ましい。
【0118】
ポリエステル樹脂(1)に占めるジカルボン酸単位(A2)~(A4)の合計質量割合は、15質量%以上60質量%以下が好ましい。
ジカルボン酸単位(A2)~(A4)の合計質量割合が15質量%以上であると、感光層の耐摩耗性が良好である。この観点から、ジカルボン酸単位(A2)~(A4)の合計質量割合は、20質量%以上がより好ましく、25質量%以上が更に好ましい。
ジカルボン酸単位(A2)~(A4)の合計質量割合が60質量%以下であると、感光層の剥がれを抑制できる。この観点から、ジカルボン酸単位(A2)~(A4)の合計質量割合は、55質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましい。
【0119】
ジカルボン酸単位(A2)~(A4)以外のその他のジカルボン酸単位(A)としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えば、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アルケニルコハク酸、アジピン酸、セバシン酸)単位、脂環式ジカルボン酸(例えば、シクロヘキサンジカルボン酸)単位、及びこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステル単位が挙げられる。ポリエステル樹脂(1)に含まれるこれらジカルボン酸単位は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0120】
ポリエステル樹脂(1)に含まれるジカルボン酸単位(A)は、1種でもよく、2種以上でもよい。すなわち、ポリエステル樹脂(1)に含まれるジカルボン酸単位(A2)~(A4)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0121】
ジオール単位(B)は、下記の式(B)で表される構成単位である。
【0122】
【0123】
式(B)において、ArB1及びArB2はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい芳香環であり、LBは単結合、酸素原子、硫黄原子又は-C(Rb1)(Rb2)-であり、nB1は0、1又は2である。Rb1及びRb2はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上20以下のアルキル基、炭素数6以上12以下のアリール基又は炭素数7以上20以下のアラルキル基であり、Rb1とRb2とが結合し環状アルキル基を形成していてもよい。
【0124】
ArB1の芳香環は、単環及び多環のいずれでもよい。芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環が挙げられ、ベンゼン環及びナフタレン環が好ましい。
【0125】
ArB1の芳香環上の水素原子は、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子等で置換されていてもよい。ArB1の芳香環が置換されているときの置換基としては、炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数6以上12以下のアリール基及び炭素数1以上6以下のアルコキシ基が好ましい。
【0126】
ArB2の芳香環は、単環及び多環のいずれでもよい。芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環が挙げられ、ベンゼン環及びナフタレン環が好ましい。
【0127】
ArB2の芳香環上の水素原子は、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子等で置換されていてもよい。ArB2の芳香環が置換されているときの置換基としては、炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数6以上12以下のアリール基及び炭素数1以上6以下のアルコキシ基が好ましい。
【0128】
Rb1及びRb2に係る炭素数1以上20以下のアルキル基は、直鎖状、分岐状及び環状のいずれでもよい。アルキル基の炭素数は、1以上18以下が好ましく、1以上14以下がより好ましく、1以上10以下が更に好ましい。
【0129】
Rb1及びRb2に係る炭素数6以上12以下のアリール基は、単環及び多環のいずれでもよい。アリール基の炭素数は、6以上10以下が好ましく、6がより好ましい。
【0130】
Rb1及びRb2に係る炭素数7以上20以下のアラルキル基中のアルキル基は、直鎖状、分岐状及び環状のいずれでもよい。炭素数7以上20以下のアラルキル基中のアルキル基の炭素数は、1以上4以下が好ましく、1以上3以下がより好ましく、1又は2が更に好ましい。
Rb1及びRb2に係る炭素数7以上20以下のアラルキル基中のアリール基は、単環及び多環のいずれでもよい。アリール基の炭素数は、6以上10以下が好ましく、6がより好ましい。
【0131】
ジオール単位(B)は、下記の式(B1)で表されるジオール単位(B1)、式(B2)で表されるジオール単位(B2)、式(B3)で表されるジオール単位(B3)、式(B4)で表されるジオール単位(B4)、式(B5)で表されるジオール単位(B5)、式(B6)で表されるジオール単位(B6)、式(B7)で表されるジオール単位(B7)及び式(B8)で表されるジオール単位(B8)からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0132】
ジオール単位(B)は、ジオール単位(B1)、ジオール単位(B2)、ジオール単位(B4)、ジオール単位(B5)及びジオール単位(B6)からなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、
ジオール単位(B1)、ジオール単位(B2)、ジオール単位(B5)及びジオール単位(B6)からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが更に好ましく、
ジオール単位(B1)、ジオール単位(B2)及びジオール単位(B6)からなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより更に好ましく、
ジオール単位(B1)及びジオール単位(B2)からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが最も好ましい。
【0133】
【0134】
式(B1)において、Rb101は炭素数4以上20以下の分岐アルキル基であり、Rb201は水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基であり、Rb401、Rb501、Rb801及びRb901はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基又はハロゲン原子である。
【0135】
Rb101に係る炭素数4以上20以下の分岐アルキル基の炭素数は、4以上16以下が好ましく、4以上12以下がより好ましく、4以上8以下が更に好ましい。Rb101の具体例として、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、イソノニル基、sec-ノニル基、tert-ノニル基、イソデシル基、sec-デシル基、tert-デシル基、イソドデシル基、sec-ドデシル基、tert-ドデシル基、tert-テトラデシル基、tert-ペンタデシル基等が挙げられる。
【0136】
【0137】
式(B2)において、Rb102は炭素数4以上20以下の直鎖アルキル基であり、Rb202は水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基であり、Rb402、Rb502、Rb802及びRb902はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基又はハロゲン原子である。
【0138】
Rb102に係る炭素数4以上20以下の直鎖アルキル基の炭素数は、4以上16以下が好ましく、4以上12以下がより好ましく、4以上8以下が更に好ましい。Rb102の具体例として、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-イコシル基等が挙げられる。
【0139】
【0140】
式(B3)において、Rb113及びRb213はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上3以下の直鎖アルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基又はハロゲン原子であり、dは7以上15以下の整数であり、Rb403、Rb503、Rb803及びRb903はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基又はハロゲン原子である。
【0141】
Rb113及びRb213に係る炭素数1以上3以下の直鎖アルキル基の炭素数は、1又は2が好ましく、1がより好ましい。当該基の具体例として、メチル基、エチル基、n-プロピル基が挙げられる。
Rb113及びRb213に係る炭素数1以上4以下のアルコキシ基中のアルキル基は、直鎖状、分岐状及び環状のいずれでもよい。炭素数1以上4以下のアルコキシ基中のアルキル基の炭素数は、1以上3以下が好ましく、1又は2がより好ましく、1が更に好ましい。当該基の具体例として、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基等が挙げられる。
Rb113及びRb213に係るハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0142】
【0143】
式(B4)において、Rb104及びRb204はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基であり、Rb404、Rb504、Rb804及びRb904はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基又はハロゲン原子である。
【0144】
Rb104に係る炭素数1以上3以下のアルキル基は、直鎖状、分岐状及び環状のいずれでもよい。アルキル基の炭素数は、1又は2が好ましく、1がより好ましい。Rb104の具体例として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基が挙げられる。
【0145】
【0146】
式(B5)において、Ar105は炭素数6以上12以下のアリール基又は炭素数7以上20以下のアラルキル基であり、Rb205は水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基であり、Rb405、Rb505、Rb805及びRb905はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基又はハロゲン原子である。
【0147】
Ar105に係る炭素数6以上12以下のアリール基は、単環及び多環のいずれでもよい。アリール基の炭素数は、6以上10以下が好ましく、6がより好ましい。
Ar105に係る炭素数7以上20以下のアラルキル基中のアルキル基は、直鎖状、分岐状及び環状のいずれでもよい。炭素数7以上20以下のアラルキル基中のアルキル基の炭素数は、1以上4以下が好ましく、1以上3以下がより好ましく、1又は2が更に好ましい。Ar105に係る炭素数7以上20以下のアラルキル基中のアリール基は、単環及び多環のいずれでもよい。アリール基の炭素数は、6以上10以下が好ましく、6がより好ましい。炭素数7以上20以下のアラルキル基としては、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、4-フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、フェニルヘプチル基、フェニルオクチル基、フェニルノニル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、アントラチルメチル基、フェニル-シクロペンチルメチル基等が挙げられる。
【0148】
【0149】
式(B6)において、Rb116及びRb216はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上3以下の直鎖アルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基又はハロゲン原子であり、eは4以上6以下の整数であり、Rb406、Rb506、Rb806及びRb906はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基又はハロゲン原子である。
【0150】
Rb116及びRb216に係る炭素数1以上3以下の直鎖アルキル基の炭素数は、1又は2が好ましく、1がより好ましい。当該基の具体例として、メチル基、エチル基、n-プロピル基が挙げられる。
Rb116及びRb216に係る炭素数1以上4以下のアルコキシ基中のアルキル基は、直鎖状、分岐状及び環状のいずれでもよい。炭素数1以上4以下のアルコキシ基中のアルキル基の炭素数は、1以上3以下が好ましく、1又は2がより好ましく、1が更に好ましい。当該基の具体例として、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基等が挙げられる。
Rb116及びRb216に係るハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0151】
【0152】
式(B7)において、Rb407、Rb507、Rb807及びRb907はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基又はハロゲン原子である。
【0153】
【0154】
式(B8)において、Rb408、Rb508、Rb808及びRb908はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基又はハロゲン原子である。
【0155】
式(B1)のRb201、式(B2)のRb202、式(B4)のRb204及び式(B5)のRb205の具体的形態及び好ましい形態は同様であるので、以下、Rb201、Rb202、Rb204及びRb205を「Rb200」と総称して説明する。
【0156】
Rb200に係る炭素数1以上3以下のアルキル基は、直鎖状、分岐状及び環状のいずれでもよい。アルキル基の炭素数は、1又は2が好ましく、1がより好ましい。
炭素数1以上3以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基が挙げられる。
【0157】
式(B1)のRb401、式(B2)のRb402、式(B3)のRb403、式(B4)のRb404、式(B5)のRb405、式(B6)のRb406、式(B7)のRb407及び式(B8)のRb408の具体的形態及び好ましい形態は同様であるので、以下、Rb401、Rb402、Rb403、Rb404、Rb405、Rb406、Rb407及びRb408を「Rb400」と総称して説明する。
【0158】
Rb400に係る炭素数1以上4以下のアルキル基は、直鎖状、分岐状及び環状のいずれでもよい。アルキル基の炭素数は、1以上3以下が好ましく、1又は2がより好ましく、1が更に好ましい。
炭素数1以上4以下の直鎖アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基が挙げられる。
炭素数3又は4の分岐アルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基が挙げられる。
炭素数3又は4の環状アルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基が挙げられる。
【0159】
Rb400に係る炭素数1以上6以下のアルコキシ基中のアルキル基は、直鎖状、分岐状及び環状のいずれでもよい。炭素数1以上6以下のアルコキシ基中のアルキル基の炭素数は、1以上4以下が好ましく、1以上3以下がより好ましく、1又は2が更に好ましい。
炭素数1以上6以下の直鎖アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基が挙げられる。
炭素数3以上6以下の分岐アルコキシ基としては、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、tert-ペンチルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、sec-ヘキシルオキシ基、tert-ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
炭素数3以上6以下の環状アルコキシ基としては、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0160】
Rb400に係るハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0161】
式(B1)のRb501、式(B2)のRb502、式(B3)のRb503、式(B4)のRb504、式(B5)のRb505、式(B6)のRb506、式(B7)のRb507及び式(B8)のRb508の具体的形態及び好ましい形態は同様であるので、以下、Rb501、Rb502、Rb503、Rb504、Rb505、Rb506、Rb507及びRb508を「Rb500」と総称して説明する。
【0162】
Rb500に係る炭素数1以上4以下のアルキル基は、直鎖状、分岐状及び環状のいずれでもよい。アルキル基の炭素数は、1以上3以下が好ましく、1又は2がより好ましく、1が更に好ましい。
炭素数1以上4以下の直鎖アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基が挙げられる。
炭素数3又は4の分岐アルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基が挙げられる。
炭素数3又は4の環状アルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基が挙げられる。
【0163】
Rb500に係る炭素数1以上6以下のアルコキシ基中のアルキル基は、直鎖状、分岐状及び環状のいずれでもよい。炭素数1以上6以下のアルコキシ基中のアルキル基の炭素数は、1以上4以下が好ましく、1以上3以下がより好ましく、1又は2が更に好ましい。
炭素数1以上6以下の直鎖アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基が挙げられる。
炭素数3以上6以下の分岐アルコキシ基としては、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、tert-ペンチルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、sec-ヘキシルオキシ基、tert-ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
炭素数3以上6以下の環状アルコキシ基としては、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0164】
Rb500に係るハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0165】
式(B1)のRb801、式(B2)のRb802、式(B3)のRb803、式(B4)のRb804、式(B5)のRb805、式(B6)のRb806、式(B7)のRb807及び式(B8)のRb808の具体的形態及び好ましい形態は同様であるので、以下、Rb801、Rb802、Rb803、Rb804、Rb805、Rb806、Rb807及びRb808を「Rb800」と総称して説明する。
【0166】
Rb800に係る炭素数1以上4以下のアルキル基は、直鎖状、分岐状及び環状のいずれでもよい。アルキル基の炭素数は、1以上3以下が好ましく、1又は2がより好ましく、1が更に好ましい。
炭素数1以上4以下の直鎖アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基が挙げられる。
炭素数3又は4の分岐アルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基が挙げられる。
炭素数3又は4の環状アルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基が挙げられる。
【0167】
Rb800に係る炭素数1以上6以下のアルコキシ基中のアルキル基は、直鎖状、分岐状及び環状のいずれでもよい。炭素数1以上6以下のアルコキシ基中のアルキル基の炭素数は、1以上4以下が好ましく、1以上3以下がより好ましく、1又は2が更に好ましい。
炭素数1以上6以下の直鎖アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基が挙げられる。
炭素数3以上6以下の分岐アルコキシ基としては、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、tert-ペンチルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、sec-ヘキシルオキシ基、tert-ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
炭素数3以上6以下の環状アルコキシ基としては、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0168】
Rb800に係るハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0169】
式(B1)のRb901、式(B2)のRb902、式(B3)のRb903、式(B4)のRb904、式(B5)のRb905、式(B6)のRb906、式(B7)のRb907及び式(B8)のRb908の具体的形態及び好ましい形態は同様であるので、以下、Rb901、Rb902、Rb903、Rb904、Rb905、Rb906、Rb907及びRb908を「Rb900」と総称して説明する。
【0170】
Rb900に係る炭素数1以上4以下のアルキル基は、直鎖状、分岐状及び環状のいずれでもよい。アルキル基の炭素数は、1以上3以下が好ましく、1又は2がより好ましく、1が更に好ましい。
炭素数1以上4以下の直鎖アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基が挙げられる。
炭素数3又は4の分岐アルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基が挙げられる。
炭素数3又は4の環状アルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基が挙げられる。
【0171】
Rb900に係る炭素数1以上6以下のアルコキシ基中のアルキル基は、直鎖状、分岐状及び環状のいずれでもよい。炭素数1以上6以下のアルコキシ基中のアルキル基の炭素数は、1以上4以下が好ましく、1以上3以下がより好ましく、1又は2が更に好ましい。
炭素数1以上6以下の直鎖アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基が挙げられる。
炭素数3以上6以下の分岐アルコキシ基としては、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、tert-ペンチルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、sec-ヘキシルオキシ基、tert-ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
炭素数3以上6以下の環状アルコキシ基としては、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0172】
Rb900に係るハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0173】
以下に、ジオール単位(B1)の具体例としてジオール単位(B1-1)~(B1-6)を示す。ジオール単位(B1)は、これに限定されるわけではない。
【0174】
【0175】
以下に、ジオール単位(B2)の具体例としてジオール単位(B2-1)~(B2-11)を示す。ジオール単位(B2)は、これに限定されるわけではない。
【0176】
【0177】
以下に、ジオール単位(B3)の具体例としてジオール単位(B3-1)~(B3-4)を示す。ジオール単位(B3)は、これに限定されるわけではない。
【0178】
【0179】
以下に、ジオール単位(B4)の具体例としてジオール単位(B4-1)~(B4-7)を示す。ジオール単位(B4)は、これに限定されるわけではない。
【0180】
【0181】
以下に、ジオール単位(B5)の具体例としてジオール単位(B5-1)~(B5-6)を示す。ジオール単位(B5)は、これに限定されるわけではない。
【0182】
【0183】
以下に、ジオール単位(B6)の具体例としてジオール単位(B6-1)~(B6-4)を示す。ジオール単位(B6)は、これに限定されるわけではない。
【0184】
【0185】
以下に、ジオール単位(B7)の具体例としてジオール単位(B7-1)~(B7-3)を示す。ジオール単位(B7)は、これに限定されるわけではない。
【0186】
【0187】
以下に、ジオール単位(B8)の具体例としてジオール単位(B8-1)~(B8-3)を示す。ジオール単位(B8)は、これに限定されるわけではない。
【0188】
【0189】
ポリエステル樹脂(1)に含まれるジオール単位(B)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0190】
ポリエステル樹脂(1)に占めるジオール単位(B)の質量割合は、25質量%以上80質量%以下が好ましい。
ジオール単位(B)の質量割合が25質量%以上であると、感光層の剥がれを抑制できる。この観点から、ジオール単位(B)の質量割合は、30質量%以上がより好ましく、35質量%以上が更に好ましい。
ジオール単位(B)の質量割合が80質量%以下であると、感光層を形成するための塗布液に対する溶解性を維持して耐摩耗性の向上が可能となる。この観点から、ジオール単位(B)の質量割合は、75質量%以下がより好ましく、70質量%以下が更に好ましい。
【0191】
ジオール単位(B)以外のその他のジオール単位としては、例えば、脂肪族ジオール(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール)単位、脂環式ジオール(例えば、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA)単位が挙げられる。ポリエステル樹脂(1)に含まれるこれらジオール単位は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0192】
ポリエステル樹脂(1)の末端は、製造の際に使用する末端封止剤又は分子量調節剤などで封止又は修飾されていてもよい。末端封止剤又は分子量調節剤としては、例えば、一価フェノール、一価酸クロライド、一価アルコール、一価カルボン酸が挙げられる。
一価フェノールとしては、例えば、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-エチルフェノール、m-エチルフェノール、p-エチルフェノール、o-プロピルフェノール、m-プロピルフェノール、p-プロピルフェノール、o-tert-ブチルフェノール、m-tert-ブチルフェノール、p-tert-ブチルフェノール、ペンチルフェノール、ヘキシルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、2,6-ジメチルフェノール誘導体、2-メチルフェノール誘導体、o-フェニルフェノール、m-フェニルフェノール、p-フェニルフェノール、o-メトキシフェノール、m-メトキシフェノール、p-メトキシフェノール、2,3,5-トリメチルフェノール、2,3,6-トリメチルフェノール、2,3-キシレノール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、2,6-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール、2-フェニル-2-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2-フェニル-2-(2-ヒドロキシフェニル)プロパン、2-フェニル-2-(3-ヒドロキシフェニル)プロパンが挙げられる。
一価酸クロライドとしては、例えば、ベンゾイルクロライド、安息香酸クロライド、メタンスルホニルクロライド、フェニルクロロホルメート、酢酸クロリド、酪酸クロリド、オクチル酸クロリド、塩化ベンゾイル、ベンゼンスルフォニルクロリド、ベンゼンスルフィニルクロリド、スルフィニルクロリド、ベンゼンホスホニルクロリド、これらの置換体等の一官能性酸ハロゲン化物が挙げられる。
一価アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ドデシルアルコール、ステアリルアルコール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコールが挙げられる。
一価カルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、オクタン酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸、トルイル酸、フェニル酢酸、p-tert-ブチル安息香酸、p-メトキシフェニル酢酸が挙げられる。
【0193】
ポリエステル樹脂(1)の重量平均分子量は、3万以上30万以下が好ましく、4万以上25万以下がより好ましく、5万以上20万以下が更に好ましい。
ポリエステル樹脂(1)の分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によって測定したポリスチレン換算の分子量である。GPCは溶離液としてテトラヒドロフランを使用する。
【0194】
ポリエステル樹脂(1)は、ジカルボン酸単位(A)を与えるモノマー及びジオール単位(B)を与えるモノマーと、必要に応じて他のモノマーとを、常法により重縮合させるなどして得ることができる。モノマーの重縮合の方法としては、界面重合法、溶液重合法、溶融重合法などが挙げられる。界面重合法とは、水と相溶しない有機溶剤に溶解させた二価カルボン酸ハライドと、アルカリ水溶液に溶解させた二価アルコールとを混合することによってポリエステルを得る重合方法である。界面重合法に関する文献として、W.M.EARECKSON,J.Poly.Sci.,XL399,1959年、特公昭40-1959号公報などが挙げられる。界面重合法は溶液重合法と比較して反応が速いゆえ、二価カルボン酸ハライドの加水分解を抑えることができ、結果として高分子量のポリエステル樹脂を得ることができる。
【0195】
[導電性基体]
導電性基体としては、例えば、金属(アルミニウム、銅、亜鉛、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、インジウム、金、白金等)又は合金(ステンレス鋼等)を含む金属板、金属ドラム、及び金属ベルト等が挙げられる。また、導電性基体としては、例えば、導電性化合物(例えば導電性ポリマー、酸化インジウム等)、金属(例えばアルミニウム、パラジウム、金等)又は合金を塗布、蒸着又はラミネートした紙、樹脂フィルム、ベルト等も挙げられる。ここで、「導電性」とは体積抵抗率が1×1013Ωcm未満であることをいう。
【0196】
導電性基体の表面は、電子写真感光体がレーザプリンタに使用される場合、レーザ光を照射する際に生じる干渉縞を抑制する目的で、中心線平均粗さRaで0.04μm以上0.5μm以下に粗面化されていることが好ましい。非干渉光を光源に用いる場合、干渉縞防止の粗面化は、特に必要ないが、導電性基体の表面の凹凸による欠陥の発生を抑制するため、より長寿命化に適する。
【0197】
粗面化の方法としては、例えば、研磨剤を水に懸濁させて導電性基体に吹き付けることによって行う湿式ホーニング、回転する砥石に導電性基体を圧接し、連続的に研削加工を行うセンタレス研削、陽極酸化処理等が挙げられる。
【0198】
粗面化の方法としては、導電性基体の表面を粗面化することなく、導電性又は半導電性粉体を樹脂中に分散させて、導電性基体の表面上に層を形成し、その層中に分散させる粒子により粗面化する方法も挙げられる。
【0199】
陽極酸化による粗面化処理は、金属製(例えばアルミニウム製)の導電性基体を陽極とし電解質溶液中で陽極酸化することにより導電性基体の表面に酸化膜を形成するものである。電解質溶液としては、例えば、硫酸溶液、シュウ酸溶液等が挙げられる。しかし、陽極酸化により形成された多孔質陽極酸化膜は、そのままの状態では化学的に活性であり、汚染され易く、環境による抵抗変動も大きい。そこで、多孔質陽極酸化膜に対して、酸化膜の微細孔を加圧水蒸気又は沸騰水中(ニッケル等の金属塩を加えてもよい)で水和反応による体積膨張でふさぎ、より安定な水和酸化物に変える封孔処理を行うことが好ましい。
【0200】
陽極酸化膜の膜厚は、例えば、0.3μm以上15μm以下が好ましい。この膜厚が上記範囲内にあると、注入に対するバリア性が発揮される傾向があり、また繰り返し使用による残留電位の上昇が抑えられる傾向にある。
【0201】
導電性基体には、酸性処理液による処理又はベーマイト処理を施してもよい。
酸性処理液による処理は、例えば、以下のようにして実施される。先ず、リン酸、クロム酸及びフッ酸を含む酸性処理液を調製する。酸性処理液におけるリン酸、クロム酸及びフッ酸の配合割合は、例えば、リン酸が10質量%以上11質量%以下の範囲、クロム酸が3質量%以上5質量%以下の範囲、フッ酸が0.5質量%以上2質量%以下の範囲であって、これらの酸全体の濃度は13.5質量%以上18質量%以下の範囲がよい。処理温度は例えば42℃以上48℃以下が好ましい。被膜の膜厚は、0.3μm以上15μm以下が好ましい。
【0202】
ベーマイト処理は、例えば90℃以上100℃以下の純水中に5分から60分間浸漬すること、又は90℃以上120℃以下の加熱水蒸気に5分から60分間接触させて行う。被膜の膜厚は、0.1μm以上5μm以下が好ましい。これをさらにアジピン酸、硼酸、硼酸塩、燐酸塩、フタル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の被膜溶解性の低い電解質溶液を用いて陽極酸化処理してもよい。
【0203】
[下引層]
下引層は、少なくとも結着樹脂とペリノン化合物とを含有する。
【0204】
下引層の結着樹脂は特に制限なく、公知の樹脂を使用することができる。具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリエチレンオキシド、カゼイン、ポリアミド、ポリアミド酸、ポリウレタン、ポリイミド、セルロース、ゼラチン、ポリエステル、不飽和ポリエステル、ポリオレフィン樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセテート、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン-アルキッド樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、加水分解性シリル基含有樹脂、加水分解性シランの縮合物等が挙げられる。
【0205】
下引層は結着樹脂として少なくともポリウレタンを含有することが好ましい。
下引層の結着樹脂の全量に占めるポリウレタンの質量割合は、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、100質量%であってよい。
【0206】
ポリウレタンは、一般的に、多官能イソシアネートとポリオールとの重付加反応により合成される。
【0207】
多官能イソシアネートとしては、例えば、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート,1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート,m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、3,3'-ジメチル-4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3'-ジメチルビフェニレンジイソシアネート、4,4'-ビフェニレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)等のジイソシアネート;前記ジイソシアネートが三量体化したイソシアヌレート;前記ジイソシアネートのイソシアネート基をブロック剤でブロックしたブロックイソシアネート;などが挙げられる。多官能イソシアネートは、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0208】
ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、3,3-ジメチル-1,2-ブタンジオール、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジメチル-2,4-ペンタンジオール、1,7-ヘプタンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,8-オクタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ハイドロキノン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、4,4'-ジヒドロキシージフェニル-2,2-プロパン、4,4'-ジヒドロキシフェニルスルホン等のジオールが挙げられる。
ポリオールとしては更に、例えば、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリビニルブチラール等が挙げられる。
ポリオールは、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0209】
下引層は、結着樹脂及びペリノン化合物以外のその他の成分を含有していてもよい。以下にその他の成分を説明する。
【0210】
下引層は、有機酸金属塩及び有機金属錯体の少なくとも1種を含有していてもよい。下引層に含まれる有機酸金属塩及び有機金属錯体の少なくとも1種は、例えば、下引層を形成する際にウレタン硬化触媒(すなわち、多官能イソシアネートとポリオールとの重付加反応の触媒)として作用する有機酸金属塩又は有機金属錯体でもよい。
【0211】
有機酸金属塩又は有機金属錯体を構成する金属としては、ビスマス、アルミニウム、ジルコニウム、亜鉛、コバルト、鉄、ニッケル、銅、スズ、白金、パラジウム等が挙げられる。有機酸金属塩の有機酸は、一価カルボン酸であることが好ましく、一価カルボン酸としては、オクチル酸、ナフテン酸又はサリチル酸が好ましく、オクチル酸がより好ましい。
【0212】
下引層に含有される有機酸金属塩及び有機金属錯体の少なくとも1種としては、画像形成を繰り返した際に発生する残留電位の上昇を抑制する観点から、ビスマス、アルミニウム、ジルコニウム、亜鉛、コバルト、鉄、ニッケル及び銅からなる群から選択される金属を含む有機酸金属塩及び有機金属錯体の少なくとも1種が好ましく、ビスマス、アルミニウム及びジルコニウムからなる群から選択される金属を含む有機酸金属塩及び有機金属錯体の少なくとも1種がより好ましい。
【0213】
ビスマスを含む有機酸金属塩又は有機金属錯体としては、例えば、オクチル酸ビスマス、ナフテン酸ビスマス、サリチル酸ビスマス;キングインダストリー社製のK-KAT348、K-KAT XC-C227、K-KAT XK-628、K-KAT XK-640;などが挙げられる。
アルミニウムを含む有機酸金属塩又は有機金属錯体としては、例えば、オクチル酸アルミニウム、ナフテン酸アルミニウム、サリチル酸アルミニウム;キングインダストリー社製のK-KAT5218;などが挙げられる。
ジルコニウムを含む有機酸金属塩又は有機金属錯体としては、例えば、オクチル酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、サリチル酸ジルコニウム;キングインダストリー社製のK-KAT4205、K-KAT6212、K-KATA209;などが挙げられる。
亜鉛を含む有機酸金属塩又は有機金属錯体としては、例えば、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、サリチル酸亜鉛などが挙げられる。
コバルトを含む有機酸金属塩又は有機金属錯体としては、例えば、オクチル酸コバルト、ナフテン酸コバルト、サリチル酸コバルトなどが挙げられる。
鉄を含む有機酸金属塩又は有機金属錯体としては、例えば、オクチル酸鉄、ナフテン酸鉄、サリチル酸鉄などが挙げられる。
ニッケルを含む有機酸金属塩又は有機金属錯体としては、例えば、オクチル酸ニッケル、ナフテン酸ニッケル、サリチル酸ニッケルなどが挙げられる。
銅を含む有機酸金属塩又は有機金属錯体としては、例えば、オクチル酸銅、ナフテン酸銅、サリチル酸銅などが挙げられる。
【0214】
有機酸金属塩及び有機金属錯体は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0215】
下引層が有機酸金属塩及び有機金属錯体の少なくとも1種を含有する場合、下引層の全固形分量に対する有機酸金属塩及び有機金属錯体の総含有量は、0.001質量%以上3質量%以下が好ましく、0.003質量%以上2質量%以下がより好ましく、0.01質量%以上1質量%以下が更に好ましく、0.05質量%以上0.5質量%以下が更に好ましい。
【0216】
下引層は、無機粒子を含有していてもよい。無機粒子としては、例えば、粉体抵抗(体積抵抗率)1×102Ωcm以上1×1011Ωcm以下の無機粒子が挙げられる。
上記抵抗値を有する無機粒子としては、例えば、酸化錫粒子、酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子、酸化ジルコニウム粒子等の金属酸化物粒子が挙げられ、中でも酸化亜鉛粒子が好ましい。
上記以外の無機粒子の例として、シリカ粒子、チタン酸金属化合物粒子が挙げられる。チタン酸金属化合物粒子としては、チタン酸ストロンチウム粒子、チタン酸バリウム粒子、チタン酸カルシウム粒子、チタン酸マグネシウム粒子が挙げられる。
【0217】
無機粒子のBET法による比表面積は、例えば、10m2/g以上がよい。
無機粒子の体積平均粒径は、例えば、50nm以上2000nm以下(好ましくは60nm以上1000nm以下)がよい。
【0218】
無機粒子は、表面処理が施されていてもよい。無機粒子は、表面処理の異なる粒子又は粒子径の異なる粒子を2種以上混合して用いてもよい。
【0219】
表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、界面活性剤等が挙げられる。シランカップリング剤が好ましく、アミノ基を有するシランカップリング剤がより好ましい。
【0220】
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0221】
シランカップリング剤は、2種以上混合して使用してもよい。例えば、アミノ基を有するシランカップリング剤と他のシランカップリング剤とを併用してもよい。この他のシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピル-トリス(2-メトキシエトキシ)シラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0222】
表面処理剤による表面処理方法は、公知の方法であればいかなる方法でもよく、乾式法又は湿式法のいずれでもよい。表面処理剤の処理量は、例えば、無機粒子に対して0.5質量%以上10質量%以下が好ましい。
【0223】
下引層は、無機粒子と共に電子受容性化合物(アクセプター化合物)を含有することが、電気特性の長期安定性、キャリアブロック性が高まる観点からよい。
【0224】
電子受容性化合物としては、例えば、クロラニル、ブロモアニル等のキノン系化合物;テトラシアノキノジメタン系化合物;2,4,7-トリニトロフルオレノン、2,4,5,7-テトラニトロ-9-フルオレノン等のフルオレノン化合物;2-(4-ビフェニル)-5-(4-t-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール、2,5-ビス(4-ナフチル)-1,3,4-オキサジアゾール、2,5-ビス(4-ジエチルアミノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物;キサントン系化合物;チオフェン化合物;3,3’,5,5’-テトラ-t-ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物;ベンゾフェノン化合物;など挙げられる。
電子受容性化合物としては、アントラキノン構造を有する化合物が好ましい。アントラキノン構造を有する化合物としては、例えば、ヒドロキシアントラキノン化合物、アミノアントラキノン化合物、アミノヒドロキシアントラキノン化合物等が好ましく、具体的には、例えば、アントラキノン、アリザリン、キニザリン、アントラルフィン、プルプリン等が好ましい。
【0225】
電子受容性化合物は、下引層中に無機粒子と共に分散して含まれていてもよいし、無機粒子の表面に付着した状態で含まれていてもよい。
【0226】
電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着させる方法としては、例えば、乾式法、又は、湿式法が挙げられる。
【0227】
乾式法は、例えば、無機粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接又は有機溶媒に溶解させた電子受容性化合物を滴下、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させて、電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着する方法である。電子受容性化合物の滴下又は噴霧するときは、溶剤の沸点以下の温度で行うことがよい。電子受容性化合物を滴下又は噴霧した後、更に100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは電子写真特性が得られる温度、時間であれば特に制限されない。
【0228】
湿式法は、例えば、攪拌、超音波、サンドミル、アトライター、ボールミル等により、無機粒子を溶剤中に分散しつつ、電子受容性化合物を添加し、攪拌又は分散した後、溶剤除去して、電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着する方法である。溶剤除去方法は、例えば、ろ過又は蒸留により留去される。溶剤除去後には、更に100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは電子写真特性が得られる温度、時間であれば特に限定されない。湿式法においては、電子受容性化合物を添加する前に無機粒子の含有水分を除去してもよく、その例として溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法が挙げられる。
【0229】
電子受容性化合物の付着は、表面処理剤による表面処理を無機粒子に施す前又は後に行ってよく、電子受容性化合物の付着と表面処理剤による表面処理と同時に行ってもよい。
【0230】
電子受容性化合物の含有量は、無機粒子に対して0.01質量%以上20質量%以下が好ましく、より好ましくは0.01質量%以上10質量%以下である。
【0231】
下引層は、帯電維持性向上、電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために種々の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、イオン化ポテンシャルが5.4eV以上5.9eV以下であるアミン化合物、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料が挙げられる。シランカップリング剤は前述のように無機粒子の表面処理に用いられるが、添加剤としてさらに下引層に添加してもよい。
【0232】
添加剤としてのシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピル-トリス(2-メトキシエトキシ)シラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0233】
ジルコニウムキレート化合物としては、例えば、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
【0234】
チタニウムキレート化合物としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
【0235】
アルミニウムキレート化合物としては、例えば、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
【0236】
これらの添加剤は、単独で、又は複数の化合物の混合物若しくは重縮合物として用いてもよい。
【0237】
下引層は、ビッカース硬度が35以上であることがよい。
下引層の表面粗さ(十点平均粗さ)は、モアレ像抑制のために、使用される露光用レーザ波長λの1/(4n)(nは上層の屈折率)から1/2までに調整されていることがよい。
表面粗さ調整のために下引層中に樹脂粒子等を添加してもよい。樹脂粒子としてはシリコーン樹脂粒子、架橋型ポリメタクリル酸メチル樹脂粒子等が挙げられる。また、表面粗さ調整のために下引層の表面を研磨してもよい。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、湿式ホーニング、研削処理等が挙げられる。
【0238】
下引層の形成は、特に制限はなく、公知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた下引層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱することで行う。
【0239】
下引層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、公知の有機溶剤、例えば、アルコール系溶剤、芳香族炭化水素溶剤、ハロゲン化炭化水素溶剤、ケトン系溶剤、ケトンアルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤等が挙げられる。
これらの溶剤として具体的には、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤が挙げられる。
【0240】
ペリノン化合物(1)及びペリノン化合物(2)は、有機溶剤に溶解しにくいため、有機溶剤に分散させることが望ましい。その分散方法としては、例えば、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカー等の公知の方法が挙げられる。下引層に無機粒子を配合する場合、無機粒子も同様の分散方法で有機溶剤に分散させることが望ましい。
【0241】
下引層形成用塗布液を導電性基体上に塗布する方法としては、例えば、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
【0242】
下引層の平均厚は、耐リーク性の観点から、3μm以上が好ましく、4μm以上がより好ましく、5μm以上が更に好ましい。
下引層の平均厚は、繰り返し使用した際における残留電位の上昇を抑制する観点から、50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下が更に好ましい。
【0243】
感光体の各層の平均厚は、電磁式膜厚計にて測定した測定値の算術平均であり、測定箇所は、中央及び両端近傍において周方向に90°刻みに合計12か所である。
【0244】
[中間層]
下引層と感光層との間に中間層をさらに設けてもよい。
中間層は、例えば、樹脂を含む層である。中間層に用いる樹脂としては、例えば、アセタール樹脂(例えばポリビニルブチラール等)、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、カゼイン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン-アルキッド樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂等の高分子化合物が挙げられる。
中間層は、有機金属化合物を含む層であってもよい。中間層に用いる有機金属化合物としては、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、ケイ素等の金属原子を含有する有機金属化合物等が挙げられる。
これらの中間層に用いる化合物は、単独で又は複数の化合物の混合物若しくは重縮合物として用いてもよい。
【0245】
これらの中でも、中間層は、ジルコニウム原子又はケイ素原子を含有する有機金属化合物を含む層であることが好ましい。
【0246】
中間層の形成は、特に制限はなく、公知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた中間層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥、必要に応じて加熱することで行う。
中間層を形成する塗布方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
【0247】
中間層の平均厚は、0.1μm以上3μm以下が好ましい。
【0248】
[電荷発生層]
電荷発生層は、例えば、電荷発生材料と結着樹脂とを含む層である。また、電荷発生層は、電荷発生材料の蒸着層であってもよい。電荷発生材料の蒸着層は、LED(Light Emitting Diode)、有機EL(Electro-Luminescence)イメージアレー等の非干渉性光源を用いる場合に好適である。
【0249】
電荷発生材料としては、ビスアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料;ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料;ペリレン顔料;ピロロピロール顔料;フタロシアニン顔料;酸化亜鉛;三方晶系セレン等が挙げられる。
【0250】
これらの中でも、近赤外域のレーザ露光に対応させるためには、電荷発生材料としては、金属フタロシアニン顔料又は無金属フタロシアニン顔料を用いることが好ましい。具体的には、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ジクロロスズフタロシアニン及びチタニルフタロシアニンからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、ヒドロキシガリウムフタロシアニン及び/又はクロロガリウムフタロシアニンがより好ましく、ヒドロキシガリウムフタロシアニンが更に好ましい。
【0251】
一方、近紫外域のレーザ露光に対応させるためには、電荷発生材料としては、ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料;チオインジゴ系顔料;ポルフィラジン化合物;酸化亜鉛;三方晶系セレン;ビスアゾ顔料等が好ましい。
【0252】
450nm以上780nm以下に発光の中心波長があるLED,有機ELイメージアレー等の非干渉性光源を用いる場合にも、上記電荷発生材料を用いてもよいが、解像度の観点から、感光層を20μm以下の薄膜で用いるときには、感光層中の電界強度が高くなり、基体からの電荷注入による帯電低下、いわゆる黒点と呼ばれる画像欠陥を生じやすくなる。これは、三方晶系セレン、フタロシアニン顔料等のp-型半導体で暗電流を生じやすい電荷発生材料を用いたときに顕著となる。
【0253】
これに対し、電荷発生材料として、縮環芳香族顔料、ペリレン顔料、アゾ顔料等のn-型半導体を用いた場合、暗電流を生じ難く、薄膜にしても黒点と呼ばれる画像欠陥を抑制し得る。n-型の判定は、通常使用されるタイムオブフライト法を用い、流れる光電流の極性によって判定され、正孔よりも電子をキャリアとして流しやすいものをn-型とする。
【0254】
電荷発生層に用いる結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択され、また、結着樹脂としては、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシラン等の有機光導電性ポリマーから選択してもよい。
結着樹脂としては、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノール類と芳香族2価カルボン酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等が挙げられる。ここで、「絶縁性」とは、体積抵抗率が1×1013Ωcm以上であることをいう。
これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。
【0255】
電荷発生材料と結着樹脂の配合比は、質量比で10:1から1:10までの範囲内であることが好ましい。
【0256】
電荷発生層には、その他、公知の添加剤が含まれていてもよい。
【0257】
電荷発生層の形成は、特に制限はなく、公知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた電荷発生層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱することで行う。電荷発生層の形成は、電荷発生材料の蒸着により行ってもよい。電荷発生層の蒸着による形成は、特に、電荷発生材料として縮環芳香族顔料、ペリレン顔料を利用する場合に好適である。
【0258】
電荷発生層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n-ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等が挙げられる。これら溶剤は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いる。
【0259】
電荷発生層形成用塗布液中に粒子(例えば電荷発生材料)を分散させる方法としては、例えば、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。高圧ホモジナイザーとしては、例えば、高圧状態で分散液を液-液衝突や液-壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式等が挙げられる。
この分散の際、電荷発生層形成用塗布液中の電荷発生材料の平均粒径を0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、更に好ましくは0.15μm以下にすることが有効である。
【0260】
電荷発生層形成用塗布液を下引層上(又は中間層上)に塗布する方法としては、例えばブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
【0261】
電荷発生層の平均厚は、0.1μm以上5.0μm以下が好ましく、0.2μm以上2.0μm以下がより好ましい。
【0262】
[電荷輸送層]
電荷輸送層は、例えば、電荷輸送材料と結着樹脂とを含む層である。電荷輸送層は、高分子電荷輸送材料を含む層であってもよい。
【0263】
電荷輸送材料としては、p-ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物;テトラシアノキノジメタン系化合物;2,4,7-トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物;キサントン系化合物;ベンゾフェノン系化合物;シアノビニル系化合物;エチレン系化合物等の電子輸送性化合物が挙げられる。電荷輸送材料としては、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物等の正孔輸送性化合物も挙げられる。これらの電荷輸送材料は1種を単独で又は2種以上で用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0264】
高分子電荷輸送材料としては、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリシラン等の電荷輸送性を有する公知の化学物質が挙げられる。例えば、ポリエステル系の高分子電荷輸送材が好ましい。高分子電荷輸送材料は、単独で使用してよく、結着樹脂と併用してもよい。
【0265】
電荷輸送材料又は高分子電荷輸送材料としては、多環芳香族化合物、芳香族ニトロ化合物、芳香族アミン化合物、複素環化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、エナミン化合物、ベンジジン化合物、トリアリールアミン化合物(特にはトリフェニルアミン化合物)、ジアミン化合物、オキサジアゾール化合物、カルバゾール化合物、有機ポリシラン化合物、ピラゾリン化合物、インドール化合物、オキサゾール化合物、イソオキサゾール化合物、チアゾール化合物、チアジアゾール化合物、イミダゾール化合物、ピラゾール化合物、トリアゾール化合物、シアノ化合物、ベンゾフラン化合物、アニリン化合物、ブタジエン化合物及びこれらの物質から誘導される基を有する樹脂も挙げられる。具体的には、特開2021-117377号公報の段落0078~0080、特開2019-035900号公報の段落0046~0048、特開2019-012141号公報の段落0052~0053、特開2021-071565号公報の段落0122~0134、特開2021-015223号公報の段落0101~0110、特開2013-097300号公報の段落0116、国際公開第2019/070003号の段落0309~0316、特開2018-159087号公報の段落0103~0107及び特開2021-148818号公報の段落0102~0113それぞれに記載の化合物が挙げられる。
【0266】
電荷輸送材料は、電荷移動度の観点から、下記の式(C1)で表される化合物(C1)、式(C2)で表される化合物(C2)、式(C3)で表される化合物(C3)及び式(C4)で表される化合物(C4)からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0267】
【0268】
式(C1)において、ArT1、ArT2及びArT3はそれぞれ独立にアリール基、-C6H4-C(RT4)=C(RT5)(RT6)又は-C6H4-CH=CH-CH=C(RT7)(RT8)である。RT4、RT5、RT6、RT7及びRT8はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基又はアリール基である。RT5及びRT6がアリール基のとき、アリール基どうしが-C(R51)(R52)-及び/又は-C(R61)=C(R62)-の2価基で連結されていてもよい。R51、R52、R61及びR62はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基である。
【0269】
式(C1)中の基は、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基又は炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基によって置換されていてもよい。
【0270】
化合物(C1)としては、電荷移動度の観点から、アリール基又は-C6H4-CH=CH-CH=C(RT7)(RT8)を少なくとも1個有する化合物が好ましく、下記の式(C’1)で表される化合物(C’1)がより好ましい。
【0271】
【0272】
式(C’1)において、RT111、RT112、RT121、RT122、RT131及びRT132はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基(好ましくは炭素数1以上3以下のアルキル基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1以上3以下のアルコキシ基)、フェニル基又はフェノキシ基である。Tj1、Tj2、Tj3、Tk1、Tk2及びTk3はそれぞれ独立に0、1又は2である。
【0273】
【0274】
式(C2)において、RT201、RT202、RT211及びRT212はそれぞれ独立にハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、炭素数1又は2のアルキル基で置換されたアミノ基、アリール基、-C(RT21)=C(RT22)(RT23)又は-CH=CH-CH=C(RT24)(RT25)である。RT21、RT22、RT23、RT24及びRT25はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基又はアリール基である。RT221及びRT222はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基又は炭素数1以上5以下のアルコキシ基である。Tm1、Tm2、Tn1及びTn2はそれぞれ独立に0、1又は2である。
【0275】
式(C2)中の基は、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基又は炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基によって置換されていてもよい。
【0276】
化合物(C2)としては、電荷移動度の観点から、アルキル基、アリール基、又は-CH=CH-CH=C(RT24)(RT25)を少なくとも1個有する化合物が好ましく、アルキル基、アリール基、又は-CH=CH-CH=C(RT24)(RT25)を2個有する化合物がより好ましい。
【0277】
【0278】
式(C3)において、RT301、RT302、RT311及びRT312はそれぞれ独立にハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、炭素数1又は2のアルキル基で置換されたアミノ基、アリール基、-C(RT31)=C(RT32)(RT33)又は-CH=CH-CH=C(RT34)(RT35)である。RT31、RT32、RT33、RT34及びRT35はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基又はアリール基である。RT321、RT322及びRT331はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基又は炭素数1以上5以下のアルコキシ基である。To1、To2、Tp1、Tp2、Tq1、Tq2及びTr1はそれぞれ独立に0、1又は2である。
【0279】
式(C3)中の基は、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基又は炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基によって置換されていてもよい。
【0280】
【0281】
式(C4)において、RT401、RT402、RT411及びRT412はそれぞれ独立にハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、炭素数1又は2のアルキル基で置換されたアミノ基、アリール基、-C(RT41)=C(RT42)(RT43)又は-CH=CH-CH=C(RT44)(RT45)である。RT41、RT42、RT43、RT44及びRT45はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基又はアリール基である。RT421、RT422及びRT431はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基又は炭素数1以上5以下のアルコキシ基である。Ts1、Ts2、Tt1、Tt2、Tu1、Tu2及びTv1はそれぞれ独立に0、1又は2である。
【0282】
式(C4)中の基は、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基又は炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基によって置換されていてもよい。
【0283】
電荷輸送層に含まれる電荷輸送材料の含有量は、電荷輸送層の全質量に対して、20質量%以上70質量%以下が好ましい。
【0284】
電荷輸送層は結着樹脂として少なくともポリエステル樹脂(1)を含む。
電荷輸送層に含まれる結着樹脂の全量に占めるポリエステル樹脂(1)の割合は、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上が更に好ましく、70質量%以上が特に好ましい。
【0285】
ポリエステル樹脂(1)と他の樹脂とを併用する場合、併用する他の樹脂としてはポリカーボネート樹脂が好ましい。
電荷輸送層の実施形態の一例は、結着樹脂としてポリエステル樹脂(1)及びポリカーボネート樹脂を含有する。この場合、両樹脂の質量比は、ポリエステル樹脂(1):ポリカーボネート樹脂=95:5~30:70が好ましく、95:5~40:60がより好ましい。
電荷輸送層に占めるポリエステル樹脂(1)とポリカーボネート樹脂との合計の質量割合は、15質量%以上80質量%以下が好ましく、20質量%以上75質量%以下がより好ましく、25質量%以上70質量%以下が更に好ましい。
【0286】
ポリカーボネート樹脂としては、芳香環を有する構成単位が連続したポリカーボネート樹脂が好ましく、具体例として、後述の実施例において用いたポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0287】
電荷輸送層は、ポリエステル樹脂(1)及びポリカーボネート樹脂以外のその他の結着樹脂を含んでいてもよい。その他の結着樹脂としては、ポリエステル樹脂(1)以外のポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーンアルキッド樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、スチレン-アルキッド樹脂、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリシラン等が挙げられる。これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上で用いる。
【0288】
電荷輸送層には、その他、公知の添加剤が含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、レベリング剤、消泡剤、フィラー、粘度調整剤などが挙げられる。
【0289】
電荷輸送層の形成は、特に制限はなく、公知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた電荷輸送層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥、必要に応じて加熱することで行う。
【0290】
電荷輸送層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、2-ブタノン等のケトン類;塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状又は直鎖状のエーテル類等の通常の有機溶剤が挙げられる。これら溶剤は、単独で又は2種以上混合して用いる。
【0291】
電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層の上に塗布する際の塗布方法としては、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
【0292】
電荷輸送層の平均厚は、感光体の光感度と摩耗寿命の観点から、20μm以上が好ましく、22μm以上がより好ましく、25μm以上が更に好ましい。
電荷輸送層の平均厚は、残留電位の観点から、50μm以下が好ましく、47μm以下がより好ましく、45μm以下が更に好ましい。
【0293】
[単層型感光層]
単層型感光層(電荷発生/電荷輸送層)は、電荷発生材料と、電荷輸送材料と、結着樹脂と、必要に応じてその他の添加剤と、を含む層である。これら材料は、電荷発生層及び電荷輸送層で説明した材料と同様である。
【0294】
単層型感光層は、結着樹脂として少なくともポリエステル樹脂(1)を含む。
単層型感光層に含まれる結着樹脂の全量に占めるポリエステル樹脂(1)の割合は、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、90質量%以上が特に好ましい。
【0295】
ポリエステル樹脂(1)と他の樹脂とを併用する場合、併用する他の樹脂としてはポリカーボネート樹脂が好ましい。
単層型感光層の実施形態の一例は、結着樹脂としてポリエステル樹脂(1)及びポリカーボネート樹脂を含有する。この場合、両樹脂の質量比は、ポリエステル樹脂(1):ポリカーボネート樹脂=95:5~30:70であることが好ましく、95:5~40:60であることがより好ましい。
単層型感光層に占めるポリエステル樹脂(1)とポリカーボネート樹脂との合計の質量割合は、15質量%以上80質量%以下が好ましく、20質量%以上75質量%以下がより好ましく、25質量%以上70質量%以下が更に好ましい。
【0296】
ポリカーボネート樹脂としては、芳香環を有する構成単位が連続したポリカーボネート樹脂が好ましく、具体例として、後述の実施例において用いたポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0297】
単層型感光層中、電荷発生材料の含有量は、全固形分に対して0.1質量%以上10質量%以下がよく、好ましくは0.8質量%以上5質量%以下である。
【0298】
単層型感光層に含まれる電荷輸送材料の含有量は、全固形分に対して40質量%以上60質量%以下がよい。
【0299】
単層型感光層の形成方法は、電荷発生層や電荷輸送層の形成方法と同様である。
【0300】
単層型感光層の平均厚は、感光体の光感度と摩耗寿命の観点から、20μm以上が好ましく、22μm以上がより好ましく、25μm以上が更に好ましい。
単層型感光層の平均厚は、残留電位の観点から、50μm以下が好ましく、47μm以下がより好ましく、45μm以下が更に好ましい。
【0301】
[保護層]
保護層は、必要に応じて感光層上に設けられる。保護層は、例えば、帯電時の感光層の化学的変化を防止したり、感光層の機械的強度をさらに改善する目的で設けられる。
そのため、保護層は、硬化膜(架橋膜)で構成された層を適用することがよい。これら層としては、例えば、下記1)又は2)に示す層が挙げられる。
【0302】
1)反応性基及び電荷輸送性骨格を同一分子内に有する反応性基含有電荷輸送材料を含む組成物の硬化膜で構成された層(つまり当該反応性基含有電荷輸送材料の重合体又は架橋体を含む層)
2)非反応性の電荷輸送材料と、電荷輸送性骨格を有さず、反応性基を有する反応性基含有非電荷輸送材料と、を含む組成物の硬化膜で構成された層(つまり、非反応性の電荷輸送材料と、当該反応性基含有非電荷輸送材料の重合体又は架橋体と、を含む層)
【0303】
反応性基含有電荷輸送材料の反応性基としては、連鎖重合性基、エポキシ基、-OH、-OR[但し、Rはアルキル基を示す]、-NH2、-SH、-COOH、-SiRQ1
3-Qn(ORQ2)Qn[但し、RQ1は水素原子、アルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表し、RQ2は水素原子、アルキル基、トリアルキルシリル基を表す。Qnは1~3の整数を表す]等の公知の反応性基が挙げられる。
【0304】
連鎖重合性基としては、ラジカル重合しうる官能基であれば特に限定されるものではなく、例えば、少なくとも炭素二重結合を含有する基を有する官能基である。具体的には、ビニル基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、フェニルビニル基、ビニルフェニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びそれらの誘導体から選択される少なくとも一つを含有する基等が挙げられる。なかでも、その反応性に優れることから、連鎖重合性基としては、ビニル基、フェニルビニル基、ビニルフェニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びそれらの誘導体から選択される少なくとも一つを含有する基であることが好ましい。
【0305】
反応性基含有電荷輸送材料の電荷輸送性骨格としては、電子写真感光体における公知の構造であれば特に限定されるものではなく、例えば、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、ヒドラゾン系化合物等の含窒素の正孔輸送性化合物に由来する骨格であって、窒素原子と共役している構造が挙げられる。これらの中でも、トリアリールアミン骨格が好ましい。
【0306】
これら反応性基及び電荷輸送性骨格を有する反応性基含有電荷輸送材料、非反応性の電荷輸送材料、反応性基含有非電荷輸送材料は、公知の材料から選択すればよい。
【0307】
保護層には、その他、公知の添加剤が含まれていてもよい。
【0308】
保護層の形成は、特に制限はなく、公知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた保護層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱等の硬化処理することで行う。
【0309】
保護層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル等のセロソルブ系溶剤;イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶剤等が挙げられる。これら溶剤は、単独で又は2種以上混合して用いる。
保護層形成用塗布液は、無溶剤の塗布液であってもよい。
【0310】
保護層形成用塗布液を感光層(例えば電荷輸送層)上に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
【0311】
保護層の平均厚は、1μm以上20μm以下が好ましく、2μm以上10μm以下がより好ましい。
【0312】
<画像形成装置、プロセスカートリッジ>
本実施形態に係る画像形成装置は、電子写真感光体と、電子写真感光体の表面を帯電する帯電装置と、帯電した電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、トナーを含む現像剤により電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置と、トナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置と、を備える。そして、電子写真感光体として、本実施形態に係る電子写真感光体が適用される。
【0313】
本実施形態に係る画像形成装置は、記録媒体の表面に転写されたトナー像を定着する定着装置を備える装置;電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー像の転写後、帯電前の電子写真感光体の表面をクリーニングするクリーニング装置を備える装置;トナー像の転写後、帯電前に電子写真感光体の表面に除電光を照射して除電する除電装置を備える装置;電子写真感光体の温度を上昇させ、相対温度を低減させるための電子写真感光体加熱部材を備える装置;等の公知の画像形成装置が適用される。
【0314】
中間転写方式の装置の場合、転写装置は、例えば、表面にトナー像が転写される中間転写体と、電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写装置と、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写装置と、を有する構成が適用される。
【0315】
本実施形態に係る画像形成装置は、乾式現像方式の画像形成装置、湿式現像方式(液体現像剤を利用した現像方式)の画像形成装置のいずれであってもよい。
【0316】
本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、電子写真感光体を備える部分が、画像形成装置に対して着脱されるカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る電子写真感光体を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。プロセスカートリッジには、電子写真感光体以外に、例えば、帯電装置、静電潜像形成装置、現像装置、転写装置からなる群から選択される少なくとも一つを備えてもよい。
【0317】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0318】
図3は、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
本実施形態に係る画像形成装置100は、
図3に示すように、電子写真感光体7を備えるプロセスカートリッジ300と、露光装置9(静電潜像形成装置の一例)と、転写装置40(一次転写装置)と、中間転写体50とを備える。画像形成装置100において、露光装置9はプロセスカートリッジ300の開口部から電子写真感光体7に露光し得る位置に配置されており、転写装置40は中間転写体50を介して電子写真感光体7に対向する位置に配置されており、中間転写体50はその一部が電子写真感光体7に接触して配置されている。図示しないが、中間転写体50に転写されたトナー像を記録媒体(例えば用紙)に転写する二次転写装置も有している。中間転写体50、転写装置40(一次転写装置)、及び二次転写装置(不図示)が転写装置の一例に相当する。
【0319】
図3におけるプロセスカートリッジ300は、ハウジング内に、電子写真感光体7、帯電装置8(帯電装置の一例)、現像装置11(現像装置の一例)、及びクリーニング装置13(クリーニング装置の一例)を一体に支持している。クリーニング装置13は、クリーニングブレード(クリーニング部材の一例)131を有しており、クリーニングブレード131は、電子写真感光体7の表面に接触するように配置されている。クリーニング部材は、クリーニングブレード131の態様ではなく、導電性又は絶縁性の繊維状部材であってもよく、これを単独で、又はクリーニングブレード131と併用してもよい。
【0320】
図3には、画像形成装置として、潤滑剤14を電子写真感光体7の表面に供給する繊維状部材132(ロール状)、及び、クリーニングを補助する繊維状部材133(平ブラシ状)を備える例を示してあるが、これらは必要に応じて配置される。
【0321】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の各構成について説明する。
【0322】
-帯電装置-
帯電装置8としては、例えば、導電性又は半導電性の帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触型帯電器が使用される。また、非接触方式のローラ帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器等のそれ自体公知の帯電器等も使用される。
【0323】
-露光装置-
露光装置9としては、例えば、電子写真感光体7表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光を、定められた像様に露光する光学系機器等が挙げられる。光源の波長は電子写真感光体の分光感度領域内とする。半導体レーザの波長としては、780nm付近に発振波長を有する近赤外が主流である。しかし、この波長に限定されず、600nm台の発振波長レーザや青色レーザとして400nm以上450nm以下に発振波長を有するレーザも利用してもよい。また、カラー画像形成のためにはマルチビームを出力し得るタイプの面発光型のレーザ光源も有効である。
【0324】
-現像装置-
現像装置11としては、例えば、現像剤を接触又は非接触させて現像する一般的な現像装置が挙げられる。現像装置11としては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、目的に応じて選択される。例えば、一成分系現像剤又は二成分系現像剤をブラシ、ローラ等を用いて電子写真感光体7に付着させる機能を有する公知の現像器等が挙げられる。中でも現像剤を表面に保持した現像ローラを用いるものが好ましい。
【0325】
現像装置11に使用される現像剤は、トナー単独の一成分系現像剤であってもよいし、トナーとキャリアとを含む二成分系現像剤であってもよい。また、現像剤は、磁性であってもよいし、非磁性であってもよい。これら現像剤は、公知のものが適用される。
【0326】
-クリーニング装置-
クリーニング装置13は、クリーニングブレード131を備えるクリーニングブレード方式の装置が用いられる。クリーニングブレード方式以外にも、ファーブラシクリーニング方式、現像同時クリーニング方式を採用してもよい。
【0327】
-転写装置-
転写装置40としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。
【0328】
-中間転写体-
中間転写体50としては、半導電性を付与したポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ゴム等を含むベルト状のもの(中間転写ベルト)が使用される。また、中間転写体の形態としては、ベルト状以外にドラム状のものを用いてもよい。
【0329】
図4は、本実施形態に係る画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
図4に示す画像形成装置120は、プロセスカートリッジ300を4つ搭載したタンデム方式の多色画像形成装置である。画像形成装置120では、中間転写体50上に4つのプロセスカートリッジ300がそれぞれ並列に配置されており、1色に付き1つの電子写真感光体が使用される構成となっている。画像形成装置120は、タンデム方式であること以外は、画像形成装置100と同様の構成を有している。
【実施例0330】
以下、実施例により発明の実施形態を詳細に説明するが、発明の実施形態は、これら実施例に限定されるものではない。
以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
以下の説明において、特に断りのない限り、合成、製造、処理、測定などは、室温(25℃±3℃)で行った。
【0331】
<ポリエステル樹脂(1)の合成>
ポリステル樹脂(1-1)~(1-6)を合成した。これら樹脂すべての合成において、末端封止剤4-tert-ブチルフェノールの存在下で重合を行い、ポリエステル樹脂の末端を封止した。
表1にポリエステル樹脂(1)を構成する単位及び組成を示す。
表1に記したA2-3等は、既述のジカルボン酸単位(A)の具体例である。
表1に記したB1-4等は、既述のジオール単位(B)の具体例である。
【0332】
【0333】
<積層型感光層を備えた感光体の製造>
[実施例S1]
-下引層の形成-
導電性基体として、外径30mm、長さ250mm、肉厚1mmのアルミニウム製円筒管を用意した。
【0334】
ブロック化イソシアネート(スミジュールBL3175、住友バイエルンウレタン社製、固形分75%)20部と、ブチラール樹脂(ポリビニルブチラール、エスレックBL-1、積水化学工業社製)7.5部とを、メチルエチルケトン150部に溶解した。この溶液に、ペリノン化合物(1-1)とペリノン化合物(2-1)の混合物(質量比50:50)34部を混合し、直径1mmのガラスビーズを用いてサンドミルにて10時間の分散を行い、分散液を得た。この分散液に、カルボン酸ビスマス(K-KAT XK-640、キングインダストリー社製)0.005部と、シリコーン樹脂粒子(トスパール145、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)2部とを添加し、下引層形成用の塗布液を得た。この塗布液を導電性基体上に浸漬塗布し、160℃下で60分間の乾燥硬化を行い、下引層を形成した。下引層の平均厚は表2に記載のとおりである。
【0335】
-電荷発生層の形成-
電荷発生材料としてヒドロキシガリウムフタロシアニン(CuKα特性X線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.5°,9.9°,12.5°,16.3°,18.6°,25.1°及び28.3°の位置に回折ピークを有する。)15部、結着樹脂として塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂(商品名:VMCH、日本ユニカー社製)10部、及びn-酢酸ブチル200部からなる混合物を、直径1mmのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間分散した。分散液にn-酢酸ブチル175部、メチルエチルケトン180部を添加し、攪拌して電荷発生層形成用の塗布液を得た。この塗布液を下引層上に浸漬塗布し、室温で乾燥して、平均厚0.18μmの電荷発生層を形成した。
【0336】
-電荷輸送層の形成-
結着樹脂としてポリエステル樹脂(1-1)17部及びポリカーボネート樹脂(1)43部と、電荷輸送材料としてCTM-1を40部とを、テトラヒドロフラン270部及びトルエン30部に溶解し、電荷輸送層形成用の塗布液を得た。この塗布液を電荷発生層上に浸漬塗布し、145℃で30分間の乾燥を行い、平均厚34μmの電荷輸送層を形成した。
【0337】
【0338】
【0339】
[実施例S2~S23、比較例SC1~SC4]
実施例S1と同様にして、ただし、下引層の結着樹脂の種類及び質量比と、下引層のペリノン化合物の種類及び質量比と、下引層の有機酸金属塩又は有機金属錯体の種類と、下引層の平均厚と、電荷発生層の電荷発生材料の種類と、電荷輸送層の結着樹脂の種類及び質量比と、電荷輸送層の電荷輸送材料の種類及び質量比と、電荷輸送層の平均厚とを表2及び表3に記載の仕様に変更して、それぞれの感光体を作製した。
【0340】
実施例S8においては、下引層形成用の塗布液の溶媒を、メチルエチルケトンから、イソプロパノールと水の混合溶媒(質量比60:40)に変更した。
【0341】
実施例S8において使用したポリオレフィン(1)は、ボンダインHX-8290(住友化学工業株式会社、エチレン-アクリル酸エステル-無水マレイン酸の三元共重合体)の無水マレイン酸部分を加水分解し、トリエチルアミン塩とした樹脂である。具体的には下記のとおり合成した。
反応容器に、ボンダインHX-8290を75部、イソプロパノール90部、樹脂中の無水マレイン酸のカルボキシ基に対して1.2倍当量のトリエチルアミン及び蒸留水200部を仕込み、攪拌しながら145℃で60分間加熱した。次いで、攪拌しながら室温まで冷却し、300メッシュのステンレス製フィルターで加圧濾過し、固形分濃度20%のポリオレフィン(1)の水性分散体を得た。
【0342】
実施例S9においては、下引層形成用の塗布液の溶媒を、メチルエチルケトンから、メタノールとイソプロパノールの混合溶媒(質量比70:30)に変更した。
実施例S9において使用したポリアミド(1)は、CM8000(東レ株式会社)である。
【0343】
表3及び表6に記載の「ヒドロキシGaフタロシアニン」は、ヒドロキシガリウムフタロシアニンである。
表3に記載の「Tiフタロシアニン」は、チタニルフタロシアニンである。
イミド化合物(A)、ポリエステル樹脂(C1)及び電荷輸送材料CTM-2~CTM-4はそれぞれ、下記の化合物である。
【0344】
【0345】
【0346】
【0347】
<単層型感光層を備えた感光体の製造>
[感光体T1]
-下引層の形成-
実施例S1における下引層の形成と同様にして、導電性基体上に下引層を形成した。下引層の平均厚は表5に記載のとおりである。
【0348】
-単層型感光層の形成-
結着樹脂としてポリエステル樹脂(1-1)52.75部と、電荷発生材料としてV型ヒドロキシガリウムフタロシアニン(CuKα特性X線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.3゜、16.0゜、24.9゜、28.0゜の位置に回折ピークを有する。)1.25部と、電子輸送材料であるETM-1を7.8部と、電荷輸送材料であるCTM-1を38.2部(ETM-1とCTM-1の質量比17:83)と、溶剤としてテトラヒドロフラン175部及びトルエン75部とを混合し、直径1mmのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間分散処理を行い、感光層形成用の塗布液を得た。この塗布液を、下引層上に浸漬塗布し、温度110℃且つ40分間の乾燥硬化を行い、平均厚34μmの単層型感光層を形成した。
【0349】
【0350】
[感光体T2~T6、感光体TC1~TC3]
感光体T1と同様にして、ただし、下引層の結着樹脂の種類と、下引層のペリノン化合物の種類と、単層型感光層の結着樹脂の種類と、単層型感光層の電荷輸送材料の種類と、単層型感光層の平均厚とを表5及び表6に記載の仕様に変更して、それぞれの感光体を作製した。
【0351】
<感光体の性能評価>
各実施例又は各比較例の感光体を、富士フイルムビジネスイノベーション社製の画像形成装置ApeosC7070に搭載した。
感光体の表面電位を測定するために、表面電位計(トレック社製、トレック334)に接続したプローブを、感光体の中央であって感光体表面から1mm離れた位置に設置した。
温度28℃且つ相対湿度85%の環境で、実施例S5の感光体(印刷評価前)について、帯電電位及び露光後の電位が下記の設定A及び設定Bとなるように、それぞれ帯電条件及び露光条件を調整した。他の感光体についても、同一の帯電条件及び露光条件で後述の印刷評価を行った。
・設定A:帯電後の表面電位-700V、且つ、露光後の表面電位-240V
・設定B:帯電後の表面電位-800V、且つ、露光後の表面電位-210V
【0352】
[帯電電位の維持性]
温度28℃且つ相対湿度85%の環境で、設定A及び設定Bにてそれぞれ、A3サイズの紙に画像濃度30%の全面ハーフトーン画像を7万枚出力した。1枚目を出力するときの帯電電位と、7万枚目を出力するときの帯電電位との差分を算出し、下記のとおり分類した。評価結果を表4及び表7に示す。
A:帯電電位の差分が20V未満
B:帯電電位の差分が20V以上、30V未満
C:帯電電位の差分が30V以上、40V未満
D:帯電電位の差分が40V以上、50V未満
E:帯電電位の差分が50V以上
【0353】
[露光後電位の維持性]
温度28℃且つ相対湿度85%の環境で、設定A及び設定Bにてそれぞれ、A3サイズの紙に画像濃度30%の全面ハーフトーン画像を7万枚出力した。1枚目を出力し露光した後の残留電位と、7万枚目を出力し露光した後の残留電位との差分を算出し、下記のとおり分類した。評価結果を表4及び表7に示す。
A:残留電位の差分が30V未満
B:残留電位の差分が30V以上、40V未満
C:残留電位の差分が40V以上、50V未満
D:残留電位の差分が50V以上、60V未満
E:残留電位の差分が60V以上
【0354】
[焼き付きゴースト]
温度28℃且つ相対湿度85%の環境で、設定A及び設定Bにてそれぞれ、A3サイズの紙に
図5(A)に示す格子状チャート画像(Cyan色)を3万枚形成した後、連続して画像濃度20%の全面ハーフトーン画像(Cyan色)を1枚出力した。全面ハーフトーン画像上の格子状画像(焼き付きゴースト)の現れ具合を目視にて観察し、下記のとおり分類した。評価結果を表4及び表7に示す。
A:
図5(B)のごとく、格子状画像が確認されない。
B:
図5(C)のごとく、格子状画像がうっすらと確認される。
C:
図5(D)のごとく、格子状画像がはっきりと確認される。
【0355】
【0356】
【0357】
【0358】
【0359】
【0360】
【0361】
本開示の電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び画像形成装置には、下記の態様が含まれる。各式は、先述した同じ番号の式と同一である。
【0362】
(((1)))
導電性基体と、前記導電性基体上に配置された下引層と、前記下引層上に配置された感光層と、を備え、
前記下引層が、結着樹脂と、式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種のペリノン化合物と、を含有し、
前記感光層が、式(A2)で表されるジカルボン酸単位(A2)、式(A3)で表されるジカルボン酸単位(A3)及び式(A4)で表されるジカルボン酸単位(A4)からなる群から選択される少なくとも1種のジカルボン酸単位(A)と式(B)で表されるジオール単位(B)とを有するポリエステル樹脂(1)を含有し、
前記感光層に占める前記ポリエステル樹脂(1)の質量割合が15質量%以上である、
電子写真感光体。
(((2)))
前記下引層に占める前記ペリノン化合物の質量割合が30質量%以上90質量%以下である、(((1)))に記載の電子写真感光体。
(((3)))
前記下引層がポリウレタンを含有する、(((1)))又は(((2)))に記載の電子写真感光体。
(((4)))
前記下引層の平均厚が5μm以上30μm以下である、(((1)))~(((3)))のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
(((5)))
前記感光層がさらにポリカーボネート樹脂を含有する、(((1)))~(((4)))のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
(((6)))
前記ポリエステル樹脂(1)が、式(B1)で表されるジオール単位(B1)、式(B2)で表されるジオール単位(B2)、式(B3)で表されるジオール単位(B3)、式(B4)で表されるジオール単位(B4)、式(B5)で表されるジオール単位(B5)、式(B6)で表されるジオール単位(B6)、式(B7)で表されるジオール単位(B7)及び式(B8)で表されるジオール単位(B8)からなる群から選択される少なくとも1種を有する、(((1)))~(((5)))のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
(((7)))
前記感光層が電荷発生材料としてガリウムフタロシアニンを含有する、(((1)))~(((6)))のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
(((8)))
(((1)))~(((7)))のいずれか1つに記載の電子写真感光体を備え、
画像形成装置に着脱するプロセスカートリッジ。
(((9)))
(((1)))~(((7)))のいずれか1つに記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電装置と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、
トナーを含む現像剤により、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置と、
を備える画像形成装置。
【0363】
(((1)))、(((3)))、(((5)))、(((6)))又は(((7)))に係る発明によれば、感光層に占めるポリエステル樹脂(1)の質量割合が15質量%未満である場合に比べて、繰り返しの画像形成の初期と終期とで電気特性の差異が少なく、且つ、画像に焼き付きゴーストが発生しにくく、これらが、帯電及び露光の強度に係る比較的広い設定領域にわたって実現される電子写真感光体が提供される。
(((2)))に係る発明によれば、下引層に占めるペリノン化合物の質量割合が30質量%未満又は90質量%超である場合に比べて、繰り返しの画像形成の初期と終期とで電気特性の差異が少なく、且つ、画像に焼き付きゴーストが発生しにくく、これらが、帯電及び露光の強度に係る比較的広い設定領域にわたって実現される電子写真感光体が提供される。
(((4)))に係る発明によれば、下引層の平均厚が5μm未満又は30μm超である場合に比べて、繰り返しの画像形成の初期と終期とで電気特性の差異が少なく、且つ、画像に焼き付きゴーストが発生しにくく、これらが、帯電及び露光の強度に係る比較的広い設定領域にわたって実現される電子写真感光体が提供される。
(((8)))に係る発明によれば、感光層に占めるポリエステル樹脂(1)の質量割合が15質量%未満である場合に比べて、繰り返しの画像形成の初期と終期とで電気特性の差異が少なく、且つ、画像に焼き付きゴーストが発生しにくく、これらが、帯電及び露光の強度に係る比較的広い設定領域にわたって実現される電子写真感光体を備えるプロセスカートリッジが提供される。
(((9)))に係る発明によれば、感光層に占めるポリエステル樹脂(1)の質量割合が15質量%未満である場合に比べて、繰り返しの画像形成の初期と終期とで電気特性の差異が少なく、且つ、画像に焼き付きゴーストが発生しにくく、これらが、帯電及び露光の強度に係る比較的広い設定領域にわたって実現される電子写真感光体を備える画像形成装置が提供される。
7 電子写真感光体、8 帯電装置、9 露光装置、11 現像装置、13 クリーニング装置、14 潤滑剤、40 転写装置、50 中間転写体、100 画像形成装置、120 画像形成装置、131 クリーニングブレード、132 繊維状部材(ロール状)、133 繊維状部材(平ブラシ状)、300 プロセスカートリッジ