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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176962
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】層間変形測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/30 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
G01B5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095871
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久家 英夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 吉之
(72)【発明者】
【氏名】井上 修作
(72)【発明者】
【氏名】大渕 正博
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 恭章
【テーマコード(参考)】
2F062
【Fターム(参考)】
2F062AA01
2F062AA02
2F062AA71
2F062CC26
2F062EE01
2F062FF12
2F062GG11
2F062GG41
(57)【要約】
【課題】大型の装置を用いることなく、簡便に層間変形を確認することができる層間変形測定装置を提供する。
【解決手段】層間変形測定装置10は、建物100の架構面内に面内方向に回転可能に取付けられたロッキング式のカーテンウォール106の幅方向左右に設けられた荷重受けファスナー部110の地震時の浮上がり量を測定する変位センサー12を備えている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の架構面内に面内方向に回転可能に取付けられたロッキング式のカーテンウォールの幅方向左右に設けられた荷重受け部の地震時の浮上がり量又は前記カーテンウォールの幅方向左右に設けられた振れ止め部を貫通する部材の地震時の上下の移動量を測定する測定部材を備えた、層間変形測定装置。
【請求項2】
前記測定部材が、時刻毎の浮上がり量又は上下の移動量を検出する変位センサーである請求項1に記載の層間変形測定装置。
【請求項3】
前記測定部材が、前記荷重受け部で押し上げられた位置又は前記振れ止め部を貫通する部材で押し下げられた位置で停止する機械式スケールである請求項1に記載の層間変形測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、層間変形測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の変位を計測する変位計測装置が提案されている。
【0003】
下記特許文献1には、建物の下層階と上層階との間に取り付けられた縦杆と、縦杆と下層階との間に斜めに取り付けられ長手方向に伸縮可能な長尺状の斜材と、斜材の伸縮変位を計測する計測器と、を備える変位計測装置が開示されている。この変位計測装置では、建物の上下層階間にまたがる縦杆の上下端を下層階及び上層階の躯体にピン接合となるように接続し、測定器で斜材の変形を計測することで、層間変形や層間変形角を求めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-159601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の変位計測装置では、建物の下層階と上層階とにまたがる大きな変位計測装置を設置して斜材の変位を計測する必要がある。また、正確な層間変形を計測するためには、縦杆の上下端接合部がピン接点となるように下層階及び上層階の躯体に接合する必要があり、変位計測装置の構成が複雑になる。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、大型の装置を用いることなく、簡便に層間変形を確認することができる層間変形測定装置を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1態様に記載の層間変形測定装置は、建物の架構面内に面内方向に回転可能に取付けられたロッキング式のカーテンウォールの幅方向左右に設けられた荷重受け部の地震時の浮上がり量又は前記カーテンウォールの幅方向左右に設けられた振れ止め部を貫通する部材の地震時の上下の移動量を測定する測定部材を備えている。
【0008】
第1態様に記載の層間変形測定装置によれば、建物の架構面内に取付けられたロッキング式のカーテンウォールは、地震時には、架構の変形に追従して面内方向に回転する。
つまり、左右一方の荷重受け部を支点としてカーテンウォールが回転し、左右他方の荷重受け部が浮上がる。この荷重受け部の浮上がり量を測定部材で測定し、浮上がり量を荷重受け部間の距離で除することで、カーテンウォールの回転角を算出することができる。
又は、振れ止め部の場合は、カーテンウォールの回転により、カーテンウォールから突出して振れ止め部を貫通する部材が上下に移動する。この振れ止め部を貫通する部材の上下の移動量を測定部材で測定し、上下の移動量を振れ止め部を貫通する部材間の距離で除することで、カーテンウォールの回転角を算出することができる。
このカーテンウォールの回転角は、建物の層間変形と階高から算出される層間変形角と同じと見なすことができる。
このため、建物階高に相当する大型の変位計を用いて層間変形を測定する場合と比較して、大型の装置を用いることなく、簡便に層間変形を確認することができる。
【0009】
第2態様に記載の層間変形測定装置は、第1態様に記載の層間変形測定装置において、前記測定部材が、時刻毎の浮上がり量又は上下の移動量を検出する変位センサーである。
【0010】
第2態様に記載の層間変形測定装置によれば、地震時の時刻毎の浮上がり量又は上下の移動量を検出して、演算部に送出することで、建物層間変形の時刻歴波形を導出できる。
【0011】
第3態様に記載の層間変形測定装置は、第1態様に記載の層間変形測定装置において、前記測定部材が、前記荷重受け部で押し上げられた位置又は前記振れ止め部を貫通する部材で押し下げられた位置で停止する機械式スケールである。
【0012】
第3態様に記載の層間変形測定装置によれば、建物層間変形の時刻歴波形を導出する必要がなく、地震時の建物層間変形の最大値を記録できれば足りる場合、装置設置コストを下げることができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示の層間変形測定装置によれば、大型の装置を用いることなく、簡便に層間変形を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態の層間変形測定装置が適用される建物の一例を示す立面図である。
図2】第1実施形態の層間変形測定装置が適用される建物における地震時のカーテンウォールの挙動を示す図である。
図3】第1実施形態の層間変形測定装置を示す拡大構成図である。
図4】(A)~(D)は、第1実施形態の層間変形測定装置において、建物層間変形の時刻歴波形の導出する工程を示す図である。
図5】第2実施形態の層間変形測定装置を示す拡大構成図である。
図6】第3実施形態の層間変形測定装置を示す拡大構成図である。
図7】第4実施形態の層間変形測定装置を示す拡大構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について、図面を基に詳細に説明する。各図面において、本発明と関連性の低いものは図示を省略している。
【0016】
〔第1実施形態〕
図1図4を用いて、第1実施形態の層間変形測定装置について説明する。図1には、第1実施形態の層間変形測定装置が適用される建物100の一例が示されている。また、図2には、建物100の地震時の後述するカーテンウォール106の挙動の一例が示されている。また、図3には、第1実施形態の層間変形測定装置10が示されている。なお、図1及び図2は、構成を分かりやすくするため、層間変形測定装置10の図示を省略している。
【0017】
(建物の構成)
図1及び図2には、建物100の複数階の階層の一部が示されている。図1に示すように、建物100は、複数の柱102と、隣り合う柱102の間に掛け渡された梁104と、隣り合う柱102の間に配置された複数(本実施形態では2枚)のカーテンウォール106と、を備えている。
【0018】
1枚のカーテンウォール106の下部106Aは、2つの荷重受けファスナー部110を用いて下側の梁104に取り付けられている。また、1枚のカーテンウォール106の上部106Bは、2つの振れ止めファスナー部112を用いて上側の梁104に取り付けられている。一例として、カーテンウォール106は、建物100の2層にまたがって取付けられている。
【0019】
カーテンウォール106とは、建物100の荷重を負担せずに内部と外部の空間をカーテンのように仕切る壁のことである。カーテンウォール106は、地震や台風などの外力に対して十分な耐力を持ち、さらに建物100の上下階に変位差が生じても、荷重受けファスナー部110と振れ止めファスナー部112により脱落又は破損することなく追従するようになっている。第1実施形態では、カーテンウォール106は、建物100の架構面内に、荷重受けファスナー部110と振れ止めファスナー部112によって面内方向に回転可能に取付けられたロッキング式のカーテンウォールである。ここで、ロッキング式とは、カーテンウォール106を面内方向へ回転(ロッキング)させることにより、層間変位に追従させる方式をいう。
【0020】
2つの荷重受けファスナー部110は、カーテンウォール106の下部106Aの幅方向左右に間隔をおいて設けられている。荷重受けファスナー部110は、荷重受け部の一例である。荷重受けファスナー部110は、カーテンウォール106の自重(鉛直力)及び水平荷重(面外力、面内力)を負担する取付け金具である。図3に示すように、荷重受けファスナー部110は、梁104に取付けられた台座ピン120と、カーテンウォール106に取付けられた荷重受けアングル122と、を備えている(図1及び図2参照)。
【0021】
図3に示すように、台座ピン120は、取付具(図示省略)により梁104の上部に固定された台座120Aと、台座120Aから上方に延びたピン120Bと、を備えている。台座ピン120は、カーテンウォール106の水平反力を負担する。
【0022】
荷重受けアングル122は、カーテンウォール106の自重による鉛直力を負担する。荷重受けアングル122は、L字状の部材であり、縦板部122Aと、縦板部122Aの下端部から横方向に屈曲された横板部122Bと、を備えている。縦板部122Aは、取付具(図示省略)によりカーテンウォール106の側面に固定されている。横板部122Bには、孔部124が形成されており、孔部124の内径は、ピン120Bの外径よりも大きい。孔部124は、ルーズホールであり、台座ピン120との水平方向の施工誤差を吸収可能である。ピン120Bは、孔部124に挿通された状態で、孔部124に対して相対的に軸方向に移動可能とされている。図示を省略するが、横板部122Bと台座120Aとの間には、ピン120Bが貫通する貫通部を備えた複数の連結プレートが介在されていてもよい。
【0023】
図1に示すように、通常の状態(地震が発生していない状態)では、台座120Aと荷重受けアングル122の横板部122Bとが面接触している。図2に示すように、地震時には、左右一方の荷重受けファスナー部110の荷重受けアングル122を支点としてカーテンウォール106が回転(例えば、矢印R方向に回転)し、左右他方の荷重受けファスナー部110の荷重受けアングル122が浮上がる。
【0024】
図1及び図2に示すように、2つの振れ止めファスナー部112は、上部の梁104の幅方向左右に間隔をおいて設けられている。振れ止めファスナー部112は、カーテンウォール106の水平荷重を負担する取付け金具である。振れ止めファスナー部112は、梁104に取付けられた取付けアングル130と、カーテンウォール106に一部が埋め込まれたアンカーボルト132と、を備えている。
【0025】
取付けアングル130は、L字状の部材であり、横板部130Aと、横板部130Aの一端部から縦方向に屈曲された縦板部130Bと、を備えている。横板部130Aは、取付具(図示省略)により梁104の下部に固定されている。縦板部130Bには、長孔136が形成されており、カーテンウォール106が通常の状態(地震が発生していない状態)で、長孔136の長手方向は鉛直方向となるように配置されている(図1参照)。長孔136の短手方向の内径は、アンカーボルト132の軸部の外径よりも大きい。アンカーボルト132の軸部は、長孔136に挿通された状態で、アンカーボルト132が長孔136の長手方向に相対的に移動可能とされている。アンカーボルト132の頭部には、ナット134が締結されており、ナット134の外径は長孔136の短手方向の内径よりも大きい。ナット134により、アンカーボルト132が長孔136から抜けない構成とされている。
【0026】
図示を省略するが、縦板部130Bとカーテンウォール106との間には、アンカーボルト132の軸部が貫通する貫通孔が形成されたすべり材が介在されてもよい。また、図示を省略するが、縦板部130Bとナット134との間には、アンカーボルト132の軸部が貫通する貫通孔が形成されたすべり材や、ナット134と長孔136との干渉を防止するプレートが介在されていてもよい。
【0027】
図2に示すように、地震時には、カーテンウォール106が回転し(図2中の矢印R方向参照)、カーテンウォール106に固定されたアンカーボルト132が取付けアングル130の長孔136内を相対的に移動する。
【0028】
(層間変形測定装置の全体構成)
次に、第1実施形態の層間変形測定装置10について説明する。
【0029】
図3に示すように、層間変形測定装置10は、荷重受けファスナー部110を構成する荷重受けアングル122の地震時の浮上がり量を測定する変位センサー12を備えている。変位センサー12は、測定部材の一例である。変位センサー12は、カーテンウォール106の下部106Aの幅方向左右に配置された荷重受けファスナー部110にそれぞれ設けられている。2つの変位センサー12は同様の構成である。
【0030】
2つの変位センサー12は、それぞれユーザー端末30に電気的に接続されている。第1実施形態では、2つの変位センサー12は、有線でユーザー端末30に電気的に接続されているが、無線通信によりユーザー端末30にデータを送信する構成でもよい。
【0031】
図示を省略するが、一例として、複数のカーテンウォール106の下部106Aの幅方向左右に配置された荷重受けファスナー部110にそれぞれ変位センサー12が設けられている。それぞれの変位センサー12は、ユーザー端末30に有線により電気的に接続され、又は無線通信によりユーザー端末30にデータを送信する。
【0032】
(変位センサー)
変位センサー12は、梁104に取付けられる取付部14と、取付部14の上部に支持されたセンサー本体16と、センサー本体16から下方側に延びると共に鉛直方向に移動可能な接触子18と、を備えている。
【0033】
取付部14は、梁104の上部に取付けられる基台14Aと、基台14Aから上方に延びたアーム14Bと、を備えている。基台14Aは、取付具(図示省略)により梁104の上部に固定されている。アーム14Bは、L字状であり、基台14Aから上方に延びたロッドの上端部から水平方向に屈曲されている。アーム14Bの上端部における水平方向に屈曲された部分は、基台14Aから荷重受けファスナー部110の側に斜めに張り出す形状とされている。アーム14Bの上端部における水平方向に屈曲された部分は、荷重受けアングル122の上方に張り出している。
【0034】
センサー本体16は、アーム14Bにおける水平方向に屈曲された部分の先端に支持されている。センサー本体16は、荷重受けアングル122の横板部122Bの上方側に配置されている。センサー本体16は、筒状のケースを備えており、軸方向が上下方向となるように配置されている。センサー本体16は、センサー本体16の下部から下方側に延びた接触子18を鉛直方向に移動可能に支持している。
【0035】
接触子18の下端部は、荷重受けアングル122の横板部122Bの上面に接触している。地震時に荷重受けアングル122が梁104に対して上方側に変位すると、接触子18は、荷重受けアングル122の横板部122Bの位置に応じて鉛直方向に移動する。一例として、接触子18は、常に荷重受けアングル122の横板部122Bの上面に接触しており、荷重受けアングル122の横板部122Bの上下方向の変位に応じて鉛直方向に移動する。変位センサー12は、接触子18の移動位置により、荷重受けファスナー部110を構成する荷重受けアングル122の地震時の浮上がり量を測定する。図示を省略するが、一例として、変位センサー12は、建物100の各階に設けられている。
【0036】
第1実施形態では、変位センサー12は、荷重受けアングル122の時刻毎の浮上がり量を測定する。変位センサー12は、測定された時刻毎の浮上がり量の情報(すなわち、測定データ)をユーザー端末30に出力する。
【0037】
ユーザー端末30は、カーテンウォール106の下部106Aの幅方向左右の2つの変位センサー12によって測定された時刻毎の浮上がり量の情報を受信する。一例として、ユーザー端末30は、パーソナルコンピューター(PC)である。ユーザー端末30は、演算部(図示省略)を備えており、演算部は、カーテンウォール106の回転角を算出することで、建物100の層間変形を導出する。
【0038】
次に、ユーザー端末30により、建物100の層間変形を導出する手法について説明する。
【0039】
まず、建物100の層間変形の導出方法の原理について説明する。図2に示すように、カーテンウォール106は、地震時に建物100の変形に対して矢印Rに示すように回転することで、カーテンウォール106そのものを変形させることなく建物100の変形に追従する。このとき、カーテンウォール106の回転角は、荷重受けファスナー部110の荷重受けアングル122の上下変位Δhを、2つの荷重受けファスナー部110の支点間の寸法(すなわち、支点間の距離)Lで除した値となる。
【0040】
ここで、荷重受けファスナー部110の支点(すなわち支持点)は、台座ピン120の角部と荷重受けアングル122との接触点である。第1実施形態では、台座ピン120の角部と荷重受けアングル122との接触点の鉛直方向上側に変位センサー12の接触子18と荷重受けアングル122の接触点を配置している。このため、2つの荷重受けファスナー部110の支点間の寸法(距離)Lは、2つの荷重受けファスナー部110の接触子18の中心間の距離と等しい(図2参照)。
【0041】
一方、建物100の層間変形δと階高Hから算出される層間変形角は、図2に示すようにカーテンウォール106の回転角と同じとみなすことができる。すなわち、上記の回転角のつり合いを利用すれば、比較的小さな変位センサー12で荷重受けファスナー部110の上下変位Δhを計測するだけで、建物100の層間変形δを容易に推定することができる。
【0042】
図2に示すように、建物100の層間変形をδ、階高をH、上下変位をΔh、支点間距離をLとしたとき、建物100の層間変形角とカーテンウォール106の回転角のつり合いは、下記の数式(1)で示される。
層間変形角: δ/H=Δh/L ・・・数式(1)
【0043】
数式(1)を下記の数式(2)のように変形すると、建物100の層間変形が導出される。
層間変形: δ=Δh×H/L ・・・数式(2)
【0044】
しかし、実際の地震時には建物100は左右両側に変形するため、図2と反対側に層間変形が進んだ場合は、荷重受けファスナー部110の左側支点の上下変位Δhの値は0となり、逆に右側支点の上下変位が大きくなる。このため、左右両側の層間変形を推定するためには、荷重受けファスナー部110の両支点で上下変位の計測が必要になる。
【0045】
また、上述したように建物100が左右どちらかに変形しているとき、片方の支点の上下変位は常に0となっているため、両支点の上下変位の時刻歴波形を記録して同時刻で合成すれば、建物100の層間変形の左右の動きを連続的に再現することが可能となる。
【0046】
図4(A)~(D)は、層間変形測定装置10を用いた建物100の層間変形の時刻歴波形の導出工程を示す図である。図3に示すように、左右の荷重受けファスナー部110の支点に設置された変位センサー12により、地震時の左右の荷重受けファスナー部110の時刻歴変位を測定する。
【0047】
図4(A)に示すように、ユーザー端末30の演算部は、左側の変位センサー12により測定された荷重受けファスナー部110(すなわち、荷重受けアングル122)の上下変位42Aを記録する。この上下変位42Aは、0から+側に変位した変位量である。図4(B)に示すように、ユーザー端末30の演算部は、右側の変位センサー12により測定された荷重受けファスナー部110(すなわち、荷重受けアングル122)の上下変位を、極性を反転させた上下変位42Bとして記録する。この上下変位42Bは0から-側に変位した変位量である。このとき、左側の上下変位42Aと右側の上下変位42Bは時間軸上(すなわち、横軸t上)でずれている(図4(A)、(B)参照)。
【0048】
図4(C)に示すように、地震時の左右の変位センサー12の上下変位42A、42Bの記録を互いに極性を逆向きにした状態で、時間軸上で合成することで、合成した上下変位42A、42Bとする。さらに、図4(D)に示すように、上記の数式(2)を用いて層間変形を算出し、建物100の層間変形の時刻歴波形44を作成する。これにより、建物100の層間変形を推定することができる。
【0049】
(作用及び効果)
次に、第1実施形態の作用及び効果について説明する。
【0050】
第1実施形態の層間変形測定装置10では、建物100の架構面内に面内方向に回転可能に取付けられたロッキング式のカーテンウォール106の幅方向左右に設けられた荷重受けファスナー部110の地震時の浮上がり量を測定する変位センサー12が設けられている。
【0051】
建物100の架構面内に取付けられたロッキング式のカーテンウォール106は、地震時には、架構の変形に追従して面内方向に回転する。つまり、左右一方の荷重受けファスナー部110の荷重受けアングル122を支点としてカーテンウォール106が回転し、左右他方の荷重受けファスナー部110の荷重受けアングル122が浮上がる。この荷重受けファスナー部110の荷重受けアングル122の浮上がり量を変位センサー12で測定し、浮上がり量を荷重受けファスナー部110の支点間の距離で除することで、カーテンウォールの回転角を算出することができる。
【0052】
このカーテンウォールの回転角は、建物100の層間変形と階高から算出される層間変形角と同じと見なすことができる。
【0053】
このため、層間変形測定装置10では、建物100の階高に相当する大型の変位計を用いて層間変形を測定する場合と比較して、大型の装置を用いることなく、簡便に層間変形を確認することができる。
【0054】
一般的に、建物の層間変形を直接計測するために、測定対象とする上下階の高さと同規模の大型の変位計を設置する場合がある。この場合、大型の変位計を設置するためのスペースが必要となり、簡易な計測を困難にしている。この問題を解決するため、地震計の加速度記録を積分して各階の相対変形を評価することも試みられているが、積分定数やノイズなどの影響の除去が難しく精度の点で課題がある。特に残留変形の評価が難しい。
【0055】
これに対して、第1実施形態の層間変形測定装置10では、カーテンウォール106の幅方向左右に設けられた荷重受けファスナー部110の地震時の浮上がり量を測定する変位センサー12が設けられている。このため、層間変形測定装置10では、大型の装置を用いることなく、簡便に建物100の層間変形を確認することができる。
【0056】
また、層間変形測定装置10は、変位センサー12が時刻毎の浮上がり量を検出する変位センサーである。
【0057】
このため、層間変形測定装置10では、変位センサー12で地震時の時刻毎の浮上がり量を検出して、ユーザー端末30の演算部に送出することで、建物100の層間変形の時刻歴波形を導出できる。
【0058】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態の層間変形測定装置について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0059】
図5には、第2実施形態の層間変形測定装置50が示されている。第2実施形態では、図1に示す建物100のカーテンウォール106の幅方向左右の荷重受けファスナー部110に設けられた第1実施形態の層間変形測定装置10(図3参照)に代えて、層間変形測定装置50が設けられている。層間変形測定装置50は、カーテンウォール106の下部106Aの幅方向左右に設けられた荷重受けファスナー部110の地震時の浮上がり量を測定する測定部材52を備えている。
【0060】
測定部材52は、荷重受けファスナー部110の荷重受けアングル122で押し上げられた位置で停止する機械式スケールの一例である。具体的には、測定部材52は、台座ピン120のピン120Bに沿って上下方向に移動し、かつ荷重受けアングル122で矢印C方向に押し上げられた位置で停止する移動片54と、移動片54の停止位置に対応する位置に配置されたスケール部材56と、を備えている。
【0061】
移動片54は、ピン120Bの軸方向と直交する水平方向に延びており、移動片54の下面は荷重受けアングル122の横板部122Bに接触している。移動片54は、ピン120Bの外周面に沿った湾曲形状の凹部54Aを備えており、移動片54の凹部54A内にピン120Bが嵌まり込んでいる。一例として、移動片54は、少なくとも凹部54Aの内面付近がゴム製である。これにより、移動片54は、ピン120Bとの摩擦力により、荷重受けアングル122の横板部122Bで矢印C方向に押し上げられた位置で停止する。
【0062】
スケール部材56は、上記数式(1)及び数式(2)を用いて予め準備した層間変形角及び層間変形の目盛りを振ったノギス様のスケールである。例えば、建物100の損傷評価を行う場合、層間変形について必ずしも時刻歴の変形記録が必要ではなく、最大値が分かれば良い場合がある。スケール部材56には、移動片54の上面の移動位置に対応して、層間変形角及び層間変形の最大値の目盛りを振っている。
【0063】
図5では、カーテンウォール106の幅方向の左右の一方の荷重受けファスナー部110に測定部材52が設けられている。図示を省略するが、カーテンウォール106の幅方向の左右の他方の荷重受けファスナー部110にも、同様に測定部材52が設けられている。なお、層間変形測定装置50の他の構成は、第1実施形態の層間変形測定装置10と同様である。
【0064】
層間変形測定装置50は、第1実施形態の層間変形測定装置10と同様の構成による作用及び効果に加えて、以下の作用及び効果を得ることができる。
【0065】
層間変形測定装置50では、カーテンウォール106の幅方向左右に設けられた荷重受けファスナー部110の地震時の浮上がり量を測定する測定部材52を備えている。測定部材52では、移動片54が荷重受けファスナー部110の荷重受けアングル122で矢印C方向に押し上げられた位置で停止する。そして、移動片54の上面の位置に対応するスケール部材56の層間変形角と層間変形の目盛りを読み取ることで、地震後に地震時の最大層間変形量を確認することができる。
【0066】
このため、層間変形測定装置50では、建物100の層間変形の時刻歴波形を導出する必要がなく、地震時の建物100の層間変形の最大値を記録できれば足りる場合、装置設置コストを下げることができる。
【0067】
また、層間変形測定装置50は、第1実施形態の層間変形測定装置10よりも低コストになり、かつメンテナンスフリーを実現できるため、高層ビルなど多層階を有する建物への適用が容易になる。
【0068】
〔第3実施形態〕
次に、第3実施形態の層間変形測定装置について説明する。なお、前述した第1及び第2実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0069】
図6には、第3実施形態の層間変形測定装置60が示されている。第3実施形態では、図1に示す建物100のカーテンウォール106の幅方向左右の荷重受けファスナー部110に設けられた第1実施形態の層間変形測定装置10(図3参照)に代えて、層間変形測定装置60が設けられている。層間変形測定装置60は、カーテンウォール106の下部106Aの幅方向左右に設けられた荷重受けファスナー部110の地震時の浮上がり量を測定する測定部材62を備えている。
【0070】
測定部材62は、荷重受けファスナー部110の荷重受けアングル122で押し上げられた位置で停止する機械式スケールの一例である。具体的には、測定部材62は、台座ピン120のピン120Bに沿って上下方向に移動し、かつ荷重受けアングル122で矢印C方向に押し上げられた位置で停止するキャップ64を備えている。
【0071】
キャップ64は、円錐状の頂部を切断した形状であり、正面視にて台形状の部材である。キャップ64は、ピン120Bが貫通する孔部64Aを備えている。キャップ64の下面は荷重受けアングル122の横板部122Bに接触している。一例として、キャップ64は、少なくとも孔部64Aの内周面付近がゴム製である。これにより、キャップ64は、ピン120Bとの摩擦力により、荷重受けアングル122の横板部122Bで矢印C方向に押し上げられた位置で停止する。
【0072】
層間変形測定装置60では、地震時にキャップ64が矢印C方向に押し上げられた位置で停止する。地震後にキャップ64の移動量を計測し、上記の数式(1)及び数式(2)から、建物100の層間変位角や最大層間変形を算出する。なお、層間変形測定装置60の他の構成は、第1実施形態の層間変形測定装置10と同様である。
【0073】
層間変形測定装置60は、第1実施形態の層間変形測定装置10と同様の構成による作用及び効果に加えて、以下の作用及び効果を得ることができる。
【0074】
層間変形測定装置60では、カーテンウォール106の幅方向左右に設けられた荷重受けファスナー部110の地震時の浮上がり量を測定する測定部材62を備えている。測定部材62では、地震時にキャップ64が荷重受けファスナー部110の荷重受けアングル122で矢印C方向に押し上げられた位置で停止する。そして、キャップ64の移動量を計測することで、地震後に地震時の最大層間変形量を確認することができる。
【0075】
このため、層間変形測定装置60では、建物100の層間変形の時刻歴波形を導出する必要がなく、地震時の建物100の層間変形の最大値を記録できれば足りる場合、装置設置コストを下げることができる。
【0076】
また、層間変形測定装置60は、第1実施形態の層間変形測定装置10よりも低コストになり、かつメンテナンスフリーを実現できるため、高層ビルなど多層階を有する建物への適用が容易になる。
【0077】
〔第4実施形態〕
次に、第4実施形態の層間変形測定装置について説明する。なお、前述した第1~第3実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0078】
(層間変形測定装置の全体構成)
図7には、第4実施形態の層間変形測定装置70が示されている。第4実施形態の層間変形測定装置70では、図1に示す建物100のカーテンウォール106の幅方向左右の荷重受けファスナー部110に設けられた第1実施形態の層間変形測定装置10の変位センサー12(図3参照)に代えて、カーテンウォール106の幅方向左右の振れ止めファスナー部112に変位センサー72が設けられている。振れ止めファスナー部112は、振れ止め部の一例である。
【0079】
図7に示すように、変位センサー72は、測定部材の一例であり、カーテンウォール106の上部106Bの幅方向左右に設けられた振れ止めファスナー部112を貫通するアンカーボルト132の地震時の上下変位量を測定する。変位センサー72は、カーテンウォール106の上部106Bの幅方向左右に配置された振れ止めファスナー部112にそれぞれ設けられている。アンカーボルト132は、振れ止め部を貫通する部材の一例である。
【0080】
2つの変位センサー72は、有線でそれぞれユーザー端末90に電気的に接続されている。なお、2つの変位センサー72は、無線通信によりユーザー端末90にデータを送信する構成でもよい。変位センサー72は、測定されたデータをユーザー端末90に送信する。
【0081】
(変位センサー)
変位センサー72は、梁104の下部に取付けられる取付部74と、取付部74の下部に支持されたセンサー本体76と、センサー本体76から上方側に延びると共に鉛直方向に移動可能な接触子78と、を備えている。
【0082】
取付部74は、梁104の下部に取付具(図示省略)により取付けられる基台74Aと、基台74Aから下方に延びたアーム74Bと、を備えている。アーム74Bは、L字状であり、基台74Aから下方に延びたロッドの下端部から水平方向に屈曲されている。アーム74Bは、梁104の下部に固定された基台74Aから振れ止めファスナー部112の側に斜めに張り出す形状とされている。
【0083】
センサー本体76は、アーム74Bにおける水平方向に屈曲された部分の先端に支持されている。センサー本体76は、センサー本体76の上部から上方側に延びた接触子78を鉛直方向に移動可能に支持している。
【0084】
一例として、接触子78の上端部には、板状体78Aが接合されており、板状体78Aの上面は、接触子78の長手方向と略直交する方向に延びている。板状体78Aの上面は、アンカーボルト132に締結されたナット134に接触している。図示を省略するが、接触子78は、バネ等の弾性部材により常にナット134の下部に接触するように上方に向けて押し付け力が付与されている。地震時にカーテンウォール106が右回りに回転すると図7中の左側のアンカーボルト132が上方に移動し、カーテンウォール106が左回りに回転すると図7中の左側のアンカーボルト132が下方に移動する。すなわち、カーテンウォール106から突き出たアンカーボルト132が、カーテンウォール106の回転に応じて長孔136内を上下に移動する。これにより、アンカーボルト132に締結されたナット134に接触する接触子78が上下に移動する。このとき、接触子78における板状体78Aの上面がナット134に接触することで、ナット134が板状体78Aから外れることが抑制される。変位センサー72は、接触子78の移動位置により、アンカーボルト132の地震時の上下の移動量を測定する。
【0085】
第4実施形態では、変位センサー72は、アンカーボルト132の時刻毎の上下の移動量を測定する。変位センサー72は、測定された時刻毎の上下の移動量の情報をユーザー端末90に出力する。
【0086】
ユーザー端末90は、カーテンウォール106の上部106Bの幅方向左右の2つの変位センサー72によって測定された時刻毎の上下の移動量の情報を受信する。ユーザー端末90は、演算部(図示省略)を備えており、演算部は、カーテンウォール106の回転角を算出することで、建物100の層間変形を導出する。カーテンウォール106の回転角の算出方法、建物100の層間変形の導出方法は、第1実施形態の層間変形測定装置10と以下の点で異なる。
【0087】
第4実施形態では、左右のアンカーボルト132はそれぞれ鉛直方向に沿った長孔136の中心を起点に上下対称に動くため、第1実施形態のカーテンウォール106の下部の測定(図3参照)と異なり、左右どちらかの片側の変位センサー72の測定のみで層間変形が算出できるようになる。
【0088】
また、上記の動作のため、層間変形δの算出方法は、第1実施形態の層間変形測定装置10に対して以下のように変更される。
【0089】
層間変形: δ=Δh×H/L ・・・数式(2)
数式(2)において、Lを左右のアンカーボルト132間の距離とする。上下変位Δhは左右どちらかの変位センサー72の測定値(±y)を用いて算出し、Δh=±y×2になる。このΔhの変位波形は、図4の(C)の波形と同様のイメージとなる。
【0090】
(作用及び効果)
次に、第4実施形態の作用及び効果について説明する。
【0091】
層間変形測定装置70では、ロッキング式のカーテンウォール106の幅方向左右に設けられた振れ止めファスナー部112を貫通するアンカーボルト132の地震時の上下の移動量を測定する変位センサー72を備えている。
【0092】
建物100の架構面内に取付けられたロッキング式のカーテンウォール106は、地震時には、架構の変形に追従して面内方向に回転する。つまり、振れ止めファスナー部112の場合は、カーテンウォール106の回転により、カーテンウォール106から突出して振れ止めファスナー部112を貫通するアンカーボルト132が上下に移動する。この振れ止めファスナー部112を貫通するアンカーボルト132の上下の移動量を変位センサー72で測定し、上下の移動量を左右のアンカーボルト132間の距離(第4実施形態では、2つの変位センサー72の接触子78の中心間の距離)で除することで、カーテンウォール106の回転角を算出することができる。
【0093】
このカーテンウォール106の回転角は、建物100の層間変形と階高から算出される層間変形角と同じと見なすことができる。
【0094】
このため、層間変形測定装置70では、建物100の階高に相当する大型の変位計を用いて層間変形を測定する場合と比較して、大型の装置を用いることなく、簡便に層間変形を確認することができる。
【0095】
また、層間変形測定装置70では、変位センサー72は、時刻毎の上下の移動量を検出する。このため、層間変形測定装置70では、地震時の時刻毎の上下の移動量を検出して、演算部に送出することで、建物100の層間変形の時刻歴波形を導出できる。
【0096】
〔その他〕
第2実施形態では、図5に示す層間変形測定装置50の測定部材52は、荷重受けファスナー部110に設けられているが、本開示はこの構成にされるものではない。例えば、層間変形測定装置50の測定部材52を振れ止めファスナー部112に設けてもよい。すなわち、測定部材52は、振れ止めファスナー部112で押し下げられた位置で停止する機械式スケールであってもよい。具体的には、測定部材52は、振れ止めファスナー部112の取付けアングル130で押し下げられた位置で停止する移動片54と、移動片54の位置に対応するスケール部材56と、を設ける構成でもよい。
【0097】
第3実施形態では、図6に示す層間変形測定装置60の測定部材62は、荷重受けファスナー部110に設けられているが、本開示はこの構成にされるものではない。例えば、層間変形測定装置60の測定部材62を振れ止めファスナー部112に設けてもよい。すなわち、測定部材62は、振れ止めファスナー部112を貫通するアンカーボルト132で押し下げられた位置で停止する機械式スケールであってもよい。具体的には、測定部材62は、振れ止めファスナー部112を貫通するアンカーボルト132で押し下げられた位置で停止するキャップ64を備える構成でもよい。
【0098】
また、第3実施形態では、キャップ64の移動量を計測し、最大層間変形を算出したが、本開示はこの構成に限定されるものではない。例えば、キャップ64の移動位置に応じて、層間変形角及び層間変形の最大値の目盛りを振ったスケール部材を設けてもよい。
【0099】
第1実施形態において、変位センサー12は、建物100の全階に設けられているが、この構成に代えて、変位センサー12は、地震時に大きな層間変形が予想される、又は損傷が予想される任意の階に設定してもよい。変位センサー12を任意の階に設置する場合、変位センサー12を設置しない階には、変形状況を把握するために第2実施形態の測定部材52又は第3実施形態の測定部材62を併用してもよい。これにより、安価でメンテナンスフリーの測定部材52又は測定部材62により、変位センサー12を設けた階以外の他の階の測定を補うことができる。また、最初から建物100の全階に第2実施形態の測定部材52又は第3実施形態の測定部材62を設けてもよい。
【0100】
第2実施形態では、移動片54の構成は変更可能である。例えば、移動片54全体をゴムで構成し、移動片54がピン120Bに沿って移動した状態で停止する構成でもよい。
【0101】
第3実施形態では、キャップ64の構成は変更可能である。例えば、キャップ64全体をゴムで構成し、キャップ64がピン120Bに沿って移動した状態で停止する構成でもよい。
【0102】
第4実施形態では、カーテンウォール106の左右の振れ止めファスナー部112を貫通するアンカーボルト132の地震時の上下の移動量を測定する変位センサー72が設けられていたが、本開示はこの構成に限定されるものではない。例えば、左右のアンカーボルト132はそれぞれ鉛直方向に沿った長孔136の中心を起点に上下対称に動くため、左右の振れ止めファスナー部112のどちらかの片側のみに、アンカーボルト132の地震時の上下の移動量を測定する変位センサー72を設ける構成でもよい。
【0103】
また、第4実施形態では、変位センサー72の接触子78はナット134に接触していたが、本開示はこの構成に限定されず、変位センサー72の接触子78がアンカーボルト132に接触する構成でもよい。
また、変位センサーは、接触型の変位センサーに限らずワイヤー式の変位センサーでもよい。
【0104】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。
【符号の説明】
【0105】
10 層間変形測定装置
12 変位センサー(測定部材の一例)
50 層間変形測定装置
52 測定部材
54 移動片(機械式スケールの一例)
56 スケール部材(機械式スケールの一例)
60 層間変形測定装置
62 測定部材
64 キャップ(機械式スケールの一例)
70 層間変形測定装置
72 変位センサー(測定部材の一例)
100 建物
106 カーテンウォール
110 荷重受けファスナー部(荷重受け部の一例)
112 振れ止めファスナー部(振れ止め部の一例)
132 アンカーボルト(振れ止め部を貫通する部材の一例)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7