(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017697
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】電機子、冷却ユニットおよびリニアモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 41/03 20060101AFI20240201BHJP
H02K 9/19 20060101ALI20240201BHJP
H02K 41/02 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
H02K41/03 A
H02K9/19 Z
H02K41/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120513
(22)【出願日】2022-07-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000132725
【氏名又は名称】株式会社ソディック
(72)【発明者】
【氏名】小林 清志
(72)【発明者】
【氏名】望月 慶
【テーマコード(参考)】
5H609
5H641
【Fターム(参考)】
5H609BB08
5H609PP06
5H609PP09
5H609QQ04
5H609RR38
5H641BB06
5H641GG03
5H641GG05
5H641GG07
5H641HH02
5H641JB05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】渦電流の影響を最小限に抑えることが可能で、ユニットの剛性を維持することができる冷却ユニット、電機子およびリニアモータを提供する。
【解決手段】リニアモータの電機子10は、単線を巻回して並設された複数のコイルと、冷却媒体を流す複数の流路を有する第1の冷却ユニット15および第2の冷却ユニット16を備える。第1の冷却ユニットおよび第2の冷却ユニットは、平板状の流路プレートと蓋プレート163とを備え、流路プレートは、流路プレートの一端から他端に向けて電機子の移動方向と平行となるように設けられた複数の溝と、隣接する溝の間を区切るための複数の仕切とを備え、流路プレートの仕切には電機子の移動方向と平行に形成された複数の第1の切込が設けられ、蓋プレートには電機子の移動方向と平行に形成された複数の第2の切込が設けられる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単線を巻回して並設された複数のコイルと、冷却媒体を流す複数の流路を有する第1の冷却ユニットおよび第2の冷却ユニットを備えたリニアモータの電機子であって、
前記第1の冷却ユニットおよび前記第2の冷却ユニットは、平板状の流路プレートと蓋プレートを備え、
前記流路プレートは、前記流路プレートの一端から他端に向けて前記電機子の移動方向と平行となるように設けられた複数の溝と、隣接する前記溝の間を区切るための複数の仕切を備え、
前記流路プレートと前記蓋プレートが重ね合わされて、前記溝および前記仕切により前記流路プレートと前記蓋プレートの間に前記電機子の移動方向と平行な複数の前記流路が形成され、
前記流路プレートの前記仕切には前記電機子の移動方向と平行に形成された複数の第1の切込が設けられ、前記蓋プレートには前記電機子の移動方向と平行に形成された複数の第2の切込が設けられ、
前記流路プレートまたは前記蓋プレートの背面に前記コイルが密着固定されて前記第1の冷却ユニットおよび前記第2の冷却ユニットにより前記コイルが挟持されていることを特徴とする電機子。
【請求項2】
前記第2の切込は、上下方向において前記第1の切込と同じ位置に設けられていることを特徴とする請求項1記載の電機子。
【請求項3】
前記溝には複数の補強柱が設けられていることを特徴とする請求項1記載の電機子。
【請求項4】
前記電機子は、前記コイルの上部に固定された上側保冷部材と、前記コイルの下部に固定された下側保冷部材を備え、
前記上側保冷部材および前記下側保冷部材の厚みは、前記コイルの厚みと同一であり、前記第1の冷却ユニットおよび前記第2の冷却ユニットに挟まれた状態で固定されることを特徴とする請求項1記載の電機子。
【請求項5】
複数の前記コイルは並設されて第1のコイル列および第2のコイル列が形成され、前記第1のコイル列と前記第2のコイル列に挟まれた状態で密着固定された第3の冷却ユニットを備えることを特徴とする請求項1記載の電機子。
【請求項6】
冷却媒体が流通する複数の流路を備えたリニアモータのコイルを冷却するための冷却ユニットであって、
前記冷却ユニットは、平板状の流路プレートと蓋プレートを備え、
前記流路プレートは、前記流路プレートの一端から他端に向けて電機子の移動方向と平行となるように設けられた複数の溝と、隣接する前記溝の間を区切るための複数の仕切を備え、
前記流路プレートと前記蓋プレートが重ね合わされて、前記溝および前記仕切により前記流路プレートと前記蓋プレートの間に前記電機子の移動方向と平行な複数の流路が形成され、
前記流路プレートの前記仕切には前記電機子の移動方向と平行に形成された複数の第1の切込が設けられ、前記蓋プレートには前記電機子の移動方向と平行に形成された複数の第2の切込が設けられたことを特徴とする冷却ユニット。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか一項記載の電機子と、異なる極性が隣り合うように配置された複数の永久磁石が列設された界磁を備えたことを特徴とするリニアモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアモータに搭載されたコイルを冷却するための冷却ユニット、その冷却ユニットを備えた電機子およびリニアモータに関する。
【背景技術】
【0002】
リニアモータはボールネジ構造のモータと比較して移動速度と位置決め精度に優れており、機械的接触も少ないため高い応答性と長期的安定性を有している。中でもリニアモータの一種であるコアレスリニアモータは、コア付リニアモータと比較して小推力であるもののコギングが発生しないため、高速かつ高精度な動きが要求される精密工作機械や放電加工機、半導体製造装置等の搬送装置の駆動源として使用されている。
【0003】
コアレスリニアモータは、励磁する1次側のコアレスコイルと、磁気ギャップを形成するように永久磁石片を配置した2次側のヨークとを相対的に直線移動可能とした構造のものが用いられる。例えば、可動子側を磁石、固定子側をコイルとする可動磁石型リニアモータや、可動子側をコイル、固定子側を磁石とする可動コイル型リニアモータが知られている。
搬送装置の駆動源として、可動子の高速化や高精度化を行うと、コイルの発熱量は増加し、コイルからの熱がコイル周辺に設けられた構成部材に伝達され、モータ性能及び搬送装置性能の悪化を引き起こす。よって、コイルの発熱を抑えるために、コアレスリニアモータには冷却ユニットが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5859360号公報
【特許文献2】特許第5859361号公報
【特許文献3】特許第6482401号公報
【特許文献4】特許第3832556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
冷却ユニットを備えた電機子を製造する場合、予め作成した冷却ユニットにコイルを入れ隙間をモールドで埋めて製造する方法がある。しかしながら、モールドが充填された隙間により、コイルと磁石間の距離が増えて冷却効率が落ちる問題や、電機子及び外壁等の構造が複雑であるという問題がある。
【0006】
また冷却ユニットの構成部材の一部はステンレス等の金属材料で形成されているため、コイルに流れる電流を変化させることによって磁界が変化した場合や、冷却ユニットが界磁の磁束内を移動する場合に構成部材に渦電流が発生し、渦電流と界磁の磁束によって発生した力が粘性抵抗的に作用し、リニアモータの性能が低下する問題がある(特許文献4)。このような粘性制動力の大きさは、冷却ユニットの厚さや幅に比例する。
【0007】
上記の問題から、冷却ユニットの構造を簡易化して薄く形成した冷却構造が知られている(特許文献1-3)。本発明は従来の冷却ユニットの構造をさらに改良することで、粘性制動力の変動を抑えるとともに剛性を維持した電機子、冷却ユニットおよびリニアモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、単線を巻回して並設された複数のコイルと、冷却媒体を流す複数の流路を有する第1の冷却ユニットおよび第2の冷却ユニットを備えたリニアモータの電機子であって、前記第1の冷却ユニットおよび前記第2の冷却ユニットは、平板状の流路プレートと蓋プレートを備え、前記流路プレートは、前記流路プレートの一端から他端に向けて前記電機子の移動方向と平行となるように設けられた複数の溝と、隣接する前記溝の間を区切るための複数の仕切を備え、前記流路プレートと前記蓋プレートが重ね合わされて、前記溝および前記仕切により前記流路プレートと前記蓋プレートの間に前記電機子の移動方向と平行な複数の前記流路が形成され、前記流路プレートの前記仕切には前記電機子の移動方向と平行に形成された複数の第1の切込が設けられ、前記蓋プレートには前記電機子の移動方向と平行に形成された複数の第2の切込が設けられ、前記流路プレートまたは前記蓋プレートの背面に前記コイルが密着固定されて前記第1の冷却ユニットおよび前記第2の冷却ユニットにより前記コイルが挟持されていることを特徴とする。
また本開示は、冷却媒体が流通する複数の流路を備えたリニアモータのコイルを冷却するための冷却ユニットであって、前記冷却ユニットは、平板状の流路プレートと蓋プレートを備え、前記流路プレートは、前記流路プレートの一端から他端に向けて電機子の移動方向と平行となるように設けられた複数の溝と、隣接する前記溝の間を区切るための複数の仕切を備え、前記流路プレートと前記蓋プレートが重ね合わされて、前記溝および前記仕切により前記流路プレートと前記蓋プレートの間に前記電機子の移動方向と平行な複数の流路が形成され、前記流路プレートの前記仕切には前記電機子の移動方向と平行に形成された複数の第1の切込が設けられ、前記蓋プレートには前記電機子の移動方向と平行に形成された複数の第2の切込が設けられたことを特徴とする。
【0009】
本開示によれば、冷却ユニットの両面である流路プレートと蓋プレートに複数の切込が設けられているため、切込により渦電流の影響を最小限に抑えることが可能で、さらに切込は仕切に設けられているため冷却ユニットの剛性を維持することができる。
【0010】
本開示の第2の切込は、上下方向において前記第1の切込と同じ位置に設けられていることを特徴とする。
【0011】
本開示によれば、第1の切込と第2の切込が上下方向において同じ位置に設けられているため、流路プレートおよび蓋プレートに渦電流が発生した場合でも切込によって絶縁され、両部材の渦電流を適切に分断することが可能となる。
【0012】
本開示の溝には複数の補強柱が設けられていることを特徴とする。
【0013】
粘性力低減を考慮して冷却ユニットを薄くした場合、冷却ユニット内を流れる冷却媒体の圧力によって冷却ユニット自体が膨張変形してしまい、最悪の場合は電機子が破損してしまう問題がある。本開示によれば、複数の補強柱を溝に設けることで、冷却媒体が通過する位置の流路プレートと蓋プレートの固着を強固なものとすることができ、冷却ユニットの圧力による変形を抑制することができる。
【0014】
本開示の電機子は、前記コイルの上部に固定された上側保冷部材と、前記コイルの下部に固定された下側保冷部材を備え、前記上側保冷部材および前記下側保冷部材の厚みは、前記コイルの厚みと同一であり、前記第1の冷却ユニットおよび前記第2の冷却ユニットに挟まれた状態で固定されることを特徴とする。
【0015】
本開示によれば、コイルの周囲を上側保冷部材、下側保冷部材、第1の冷却ユニットおよび第2の冷却ユニットにより固定しているため、第1および第2の冷却ユニットにのみ冷却媒体が流れている状態であっても適切にコイル全体を冷却することができる。
【0016】
本開示の電機子は、複数のコイルが並設されて第1のコイル列および第2のコイル列が形成され、前記第1のコイル列と前記第2のコイル列に挟まれた状態で密着固定された第3の冷却ユニットを備えることを特徴とする。
【0017】
本開示によれば、電機子が3組の冷却ユニットにより冷却されているため、コイルが積層されて厚みのある部材であっても適切に冷却することが可能である。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、冷却ユニットの流路プレートおよび蓋プレートに複数の切込が設けられているため渦電流の影響を最小限に抑えることが可能で、さらに切込は仕切に設けられているため冷却ユニットの剛性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るリニアモータ100を示す模式図である。
【
図2】上記実施形態に係る電機子10を示す斜視図である。
【
図3】上記実施形態に係る電機子10を示す側面図である。
【
図4】上記実施形態に係る電機子10を示す分解図である。
【
図5】上記実施形態に係る第1の冷却ユニット15を示す正面図である。
【
図6】上記実施形態に係る第1の冷却ユニット15を示す側面図である。
【
図7】上記実施形態に係る第1の冷却ユニット15を示す平面図である。
【
図8】上記実施形態に係る第1の冷却ユニット15を示す分解図である。
【
図10】上記実施形態に係る第1の冷却ユニット15の流路プレート152を示す模式図である。
【
図12】上記実施形態に係る第1の冷却ユニット15に発生する渦電流iを示した模式図である。
【
図13】本発明の第2の実施形態に係る電機子110を示す斜視図である。
【
図14】上記実施形態に係る電機子110を示す正面図である。
【
図15】上記実施形態に係る電機子110を示す平面図である。
【
図16】本発明の第3の実施形態に係る第1および第2のコイル211,311を示す斜視図である。
【
図17】上記実施形態に係る電機子210を示す正面図である。
【
図18】本発明の第4の実施形態に係る流路プレート452を示す模式図である。
【
図19】上記実施形態に係る流路プレート452のその他の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を用いて本発明の冷却ユニット、電機子10およびリニアモータ100について図を参照しながら説明を行う。なお、各図において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0021】
<1.第1の実施形態>
(1.1.リニアモータ100および電機子10の構成)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るリニアモータ100を示す模式図であり、
図2は、本実施形態に係る電機子10を示す斜視図である。
図3は、本実施形態に係る電機子10を示す側面図であり、
図4は、本実施形態に係る電機子10を示す分解図である。
【0022】
本実施形態のリニアモータ100は、複数のコイル11を備えた1次側の電機子10と、永久磁石21を列設した2次側の界磁20を備える。コイル11に三相交流を通電して電機子10に磁界を発生させると、この磁界にて界磁20の永久磁石21に電機子10が順次磁気吸引反発されることにより、可動子としての電機子10が固定子としての界磁20に対して相対的に直線運動を行う。
【0023】
電機子10は、複数のコイル11と、コイル11を冷却するための第1および第2の冷却ユニット15,16と、上側保冷部材12と、下側保冷部材13と、取付部材14を備える。電機子10は全体として断面T字型に形成されている。
【0024】
コイル11は、単線を集中巻回することで扁平ドーナツ板状に形成されており、複数のコイル11が並設されて電機子10内に配置されている。コイル11は、3枚でU、V、Wの3相を構成し、移動方向にU、V,Wの相順に配列されている。
【0025】
第1および第2の冷却ユニット15,16は、コイル11を両側から挟んで固定する一対の平板状の冷却部材であり、流路プレート152,162と蓋プレート153,163の間に冷却水等の冷却媒体を流すための流路151が形成されている。コイル11は、電機子10の内平板である流路プレート152,162の背面152e,162eにネジ止め等の機械的接合またはPVA樹脂やエポキシ樹脂等の接着剤によりモールド樹脂を介さずに直接密着して固定されている。第1の冷却ユニット15は、紙面上コイル11の右側に配置される冷却ユニットであり、第2の冷却ユニット16は紙面上コイル11の左側に配置される冷却ユニットである(
図3)。第1および第2の冷却ユニット15,16の各部材はコイル11を介して面対称に配置される。第1および第2の冷却ユニット15,16の厚みは、界磁20に設けられた永久磁石21とコイル11との距離を最小限とする目的から約3mm以下に形成されている。
このように第1および第2の冷却ユニット15,16はコイル11に密着して冷却する機能とコイル11を保持する機能を有する。
【0026】
上側保冷部材12は、電機子10の上部の温度上昇を防ぐための部材であり、ブロック状に形成されている。上側保冷部材12は、コイル11の上部に当接または近接して配置される。上側保冷部材12の厚みは、コイル11の厚みと同一とされており、第1および第2の冷却ユニット15,16に挟まれて設置される。上側保冷部材12は、金属、セラミックスまたは樹脂で形成されている。
【0027】
下側保冷部材13は、電機子10の下部の温度上昇を防ぐための部材であり、ブロック状に形成されている。下側保冷部材13は、コイル11の下部に当接または近接して配置される。下側保冷部材13の厚みも上側保冷部材12の厚みと同様でコイル11の厚みと同一とされており、第1および第2の冷却ユニット15,16に挟まれて設置される。上側保冷部材13は、金属、セラミックスまたは樹脂で形成されている。
【0028】
取付部材14は、電機子10の上部に設けられた一対のブロック状部材である。取付部材14、第1の冷却ユニット15、上側保冷部材12、第2の冷却ユニット16、取付部材14の順に配置し、第1および第2の冷却ユニット15,16でコイル11を挟んだ状態で外側からボルト締結により連結して固定する。また取付部材14は、可動子ベースとしても機能する。
【0029】
界磁20は、電機子10と磁気的空隙を介して対向配置された一対のサイドヨーク22と、複数の永久磁石21と、センタヨーク23から構成される。
サイドヨーク22は平板状に形成され、一対のサイドヨーク22の対向する内側面には異なる極性が隣り合うように配置された複数の永久磁石21が列設されている。永久磁石21は、矩形板状に形成されている。サイドヨーク22の端縁間はセンタヨーク23で結合されている。
【0030】
(1.2.第1および第2の冷却ユニット15,16の構成)
図5は、本実施形態に係る第1の冷却ユニット15を示す正面図であり、
図6は第1の冷却ユニット15を示す側面図である。
図7は、本実施形態に係る第1の冷却ユニット15を示す平面図であり、
図8は、第1の冷却ユニット15を示す分解図である。
図9は、
図5のA―A断面拡大図である。電機子10は2組の第1および第2の冷却ユニット15,16を備えるが、第1および第2の冷却ユニット15,16はコイル11を介して面対称の構造を有するため、ここでは第1の冷却ユニット15に関して代表して説明を行い、第2の冷却ユニット16の説明は省略する。
【0031】
第1の冷却ユニット15は、流路プレート152と、蓋プレート153と、冷却媒体が流出入する一対の流出入部材154と、一対の分岐部材155を備える。
流路プレート152および蓋プレート153は全体形状が同一の平板状の部材であり、流路プレート152と蓋プレート153を重ね合わせることにより複数の流路151が形成される(
図9)。流路プレート152および蓋プレート153は、金属等の導電性を有する材質で形成されている。流路プレート152と蓋プレート153は拡散接合により両部材を固定することができる。
【0032】
図10は、本実施形態に係る第1の冷却ユニット15の流路プレート152を示す模式図であり、
図11は、
図10のB―B断面拡大図である。
図10においては、便宜上、溝152aの領域を複数の点の領域として示されている。
図12は、本実施形態に係る第1の冷却ユニット15に発生する渦電流iを示した模式図である。
流路プレート152は、流路151となる溝152aと、溝152aの両端に設けられ分岐部材155に接続する長孔152bと、溝152aと溝152aの間を区切るための仕切152cと、仕切152cの中心に設けられた第1の切込152dを備える。
溝152aは、流路プレート152の正面に設けられた直線状の凹部であり、流路プレート152の一端から他端に向けて電機子10の移動方向と平行となるように設けられている(
図10)。溝152aは、流路プレート152と蓋プレート153を重ね合わせることにより、流路151を構成する(
図9)。溝152aは平板をエッチング等により加工することで形成される。溝152aの幅は、流路プレート152の厚さや材質を考慮し、最適なサイズが選定される。例えば、第1の冷却ユニット15の厚みが1.5mmである場合、冷却媒体を通過させた際に圧力の影響が抑制される12mm以下が望ましい。
仕切152cは、隣り合う溝152aを仕切るための直線状の凸部であり、流路プレート152の一端から他端に向けて電機子10の移動方向と平行となるように設けられている(
図10)。流路プレート152と蓋プレート153を重ね合わせると、仕切152cの蓋プレート153側の面が蓋プレート153と当接し、仕切152cによって隣り合う流路151同士が独立した構成となり、流路151内の冷却媒体を流路プレート152の一端から他端に向けて流すことができる。仕切152cの中心位置には、第1の切込152dが設けられている。
第1の切込152dは、電機子10の移動方向と平行に設けられた長尺状の貫通孔であり、流路プレート152の一端から他端にかけて直線状に複数設けられている。コイル11に通電させる電流を変化させ電機子10に発生させた磁界が変化する、もしくは第1の冷却ユニット15が界磁20の磁束内を移動することにより、流路プレート152内部に渦電流が発生し、渦電流と界磁20の磁束によって発生した力が第1の冷却ユニット15の移動と逆方向に粘性抵抗的に作用し、リニアモータ100の性能が低下する原因となる。よって、流路プレート152に複数の第1の切込152dを設けることで、リニアモータ100に対する渦電流の影響を最小限に抑えている。また第1の切込152dを仕切152cに設けているため、流路151と第1の切込152dが独立し、冷却性能に影響を及ぼすことがなく、また第1の冷却ユニット15の剛性を損なうこともない。第1の切込152dは、レーザー加工機等でスリット加工することで形成される。
長孔152bは、分岐部材155から流入する、または分岐部材155から流出する冷却媒体を通す連通口であり、流路プレート152の紙面左右端(
図10)に各々設けられている。長孔152bは貫通孔であり、流路プレート152の上下方向に沿って直線状に形成されている。長孔152bは、流路151を連結または分岐させて流路151と分岐部材155を接続する機能を有する。
【0033】
蓋プレート153は、流路プレート152に重ね合わせることにより流路プレート152の溝152aに蓋をして流路151を形成する平板状部材であり、複数の第2の切込153dと、連通孔153aを有する。
第2の切込153dは、第1の切込152dと同様、渦電流の影響を最小限に抑えるために設けられた長尺状の貫通孔である。第2の切込153dは、蓋プレート153の一端から他端にかけて電機子10の移動方向と平行に直線状に設けられている。第2の切込153dは、蓋プレート153の紙面上下方向に複数列を成し、これにより渦電流iを分断して渦電流iの影響を最小限に抑えることができる(
図12)。
第2の切込153dは、紙面上下方向(
図9)において第1の切込152dの位置と同じ位置に設けられている。そうすれば流路プレート152および蓋プレート153に渦電流iが発生した場合でも、第1の切込152dおよび第2の切込153dによって絶縁され、両部材の渦電流iを適切に分断することが可能となる。さらに流路151と重ならない位置に第1の切込152dおよび第2の切込153dが設けられているため剛性を損なうことがない。第2の切込153dも、第1の切込152dと同様レーザー加工機等でスリット加工することで形成される。第1の切込152dや第2の切込153dは電機子10の移動方向と平行に一直線状に連続して設けられていてもよいし、複数に分割されていてもよい。
連通孔153aは、流出入部材154と流路151を連通するための貫通孔である。
【0034】
一対の流出入部材154は、冷却媒体を流路151に流出入するためのブロック状の部材であり、上部に設けられた開口154aと、流路151と連結するための連通孔を有する。流出入部材154は、コイル11を介して2組の第1および第2の冷却ユニット15,16を取り付けても邪魔にならない位置に設けることが重要であり、例えばコイル11を取り付けるプレートと対向するプレートである蓋プレート153の正面153bの両端上部に取り付けることが望ましい。
【0035】
一対の分岐部材155は、一方の流出入部材154から流入した冷却媒体を複数の流路151に分岐する部材であり、また複数の流路151を連結して冷却媒体を集め、他方の流出入部材154から排出する部材である。分岐部材155は、例えばマニホールドが使用される。分岐部材155は長方形状であり、中心部に長方形状の溝155aを備える。分岐部材155は、流路プレート152のコイル11を取り付ける背面152e両端に上下方向に伸長して各々設けられる。分岐部材155は、コイル11を挟んだ状態でコイル11と当接しているかもしくは絶縁材を介して密着している。また分岐部材155の厚みは、コイル11の厚みと同じかもしくはコイル11の厚みより小さく形成されている。
溝155aは、流出入部材154から流入する冷却媒体もしくは複数の流路151から流出した冷却媒体を一時的に貯める空間である。溝155aの紙面上下方向(
図8)の断面形状は、流路プレート152の長孔152bと同一の形状をなす。
【0036】
(1.3.第1の冷却ユニット15内の冷却媒体の流れ)
次に第1の冷却ユニット15内の冷却媒体の流れの説明を行う。
一方の流出入部材154の開口154aから流入された冷却媒体は、蓋プレート153の連通孔153a、流路プレート152の長孔152bを介して一方の分岐部材155の溝155aに流入し、その後、複数の流路151に分岐して電機子10の移動方向と平行に第1の冷却ユニット15の一端から他端へ流れる。そして、冷却媒体は複数の流路151から長孔152bを介して他方の分岐部材155の溝155aに集められ、蓋プレート153の連通孔153aを介して他方の流出入部材154の開口154aから流出する。
【0037】
(1.4.電機子10の製造方法)
電機子10を製造する場合、並設されたコイル11の上部に当接または近接して上側保冷部材12を配置し、下部にコイル11と当接または近接して下側保冷部材13を配置する。そして流路プレート152,162の背面152e,162eにコイル11を密着させ、第1および第2の冷却ユニット15,16によりコイル11を挟んで配置する。第1および第2の冷却ユニット15,16でコイル11を挟んで配置すると、両端の分岐部材155,165とコイル11の端部が当接もしくは近接した状態となる。最後に、蓋プレート153,163の正面153b,163bの上側に取付部材14を各々配置し、ボルト締結により上部および下部の複数個所を固定して電機子10を形成する。
上記製造方法では流路プレート152,162の背面152e,162eにコイル11を密着させていた例を説明したが、蓋プレート153,163の背面にコイル11を密着させてコイル11を挟んで配置してもよい。
【0038】
このように、コイル11は上側保冷部材12、下側保冷部材13、第1および第2の冷却ユニット15,16により周囲が固定されているため、第1および第2の冷却ユニット15,16にのみ冷却媒体が流れている状態であってもコイル11全体を適切に冷却することができる。さらにモールド樹脂を介さずにコイル11が第1および第2の冷却ユニット15,16に挟まれた状態で固定されているため、モールド樹脂を介して固定するよりも電機子10の強度を向上することが可能となり、振動特性が優れた電機子10を提供することができる。
また、第1および第2の冷却ユニット15,16は各々独立して流出入部材154,164、分岐部材155,165を備えているため、電機子10に2組の冷却ユニットを使用していたとしても冷却ユニット単体で液漏れ等の試験をすることができ、生産性が優れた冷却ユニットを提供することができる。
そして、第1の冷却ユニット15の流路プレート152および蓋プレート153には、第1の切込152dおよび第2の切込153dが設けられ、この第1の切込152dおよび第2の切込153dは流路プレート152の仕切152cおよび仕切152c周辺の比較的強度の高い箇所に設けられているため、剛性を損なうことなく渦電流の影響を最小限に抑えることが可能となる。
【0039】
<2.第2の実施形態>
(2.1.第1、第2および第3の冷却ユニット15,16,17の構成)
図13は、本発明の第2の実施形態に係る電機子110を示す斜視図であり、
図14は、上記実施形態に係る電機子110を示す正面図である。
図15は、上記実施形態に係る電機子110を示す平面図である。
本発明の第1の実施形態に係る電機子10は、2組の冷却ユニットを使用した構成であったが、本発明の第2の実施形態に係る電機子110は、3組の冷却ユニットを使用した構成であり、その他の構成は第1の実施形態と同様であるため、同様の構成に関しては同一の符号を付して説明を省略する。
【0040】
本発明の第2の実施形態に係る電機子110は、第1のコイル列111aと、第2のコイル列111bと、コイル11を冷却するための第1の冷却ユニット15と、第2の冷却ユニット16と、第3の冷却ユニット17と、第1の上側保冷部材112aと、第2の上側保冷部材112bと、第1の下側保冷部材113aと、第2の下側保冷部材113bと、取付部材14を備える。電機子110は全体として断面T字型に形成されている。
【0041】
複数のコイル11が所定の方向に並設されており、第1のコイル列111aおよび第2のコイル列111bが形成されている。
【0042】
第1の冷却ユニット15および第2の冷却ユニット16は、コイル11を両側から挟んで固定する一対の平板状の冷却部材であり、第1の実施形態の第1および第2の冷却ユニット15,16と同様の構成である。
【0043】
第3の冷却ユニット17は、第1のコイル列111aと第2のコイル列111bに挟まれるように配置される冷却部材であり(
図13)、第1のコイル列111aと第2のコイル列111bの間にネジ止め等の機械的接合またはPVA樹脂やエポキシ樹脂等の接着剤によりモールド樹脂を介さずに直接密着されている。
第3の冷却ユニット17は、流路プレート172と、蓋プレート173と、冷却媒体が流出入する一対の流出入部材174と、一対の分岐部材175を備える。
流路プレート172および蓋プレート173は全体形状が同一の平板状の部材であり、第1および第2の冷却ユニット15,16と同様、重ね合わせることにより、流路プレート172と蓋プレート173の間に複数の流路を形成する。
流路プレート172および蓋プレート173の紙面左右方向の大きさは(
図14)、第1および第2の冷却ユニット15,16の流路プレート152,162、蓋プレート153,163と比較して流出入部材154,164の大きさの2倍分大きく形成されている。よって、電機子110を製造する際に3組の冷却ユニットを使用しても、流出入部材174の厚みに依存することなく薄く形成することができる。
また、第1および第2の冷却ユニット15,16と同様に、第3の冷却ユニット17の流路プレート172は流路となる溝と、溝と溝の間を区切るための仕切と、仕切の中心に設けられた第1の切込を備え、蓋プレート173は第2の切込を有する。また、第3の冷却ユニット17内の冷却媒体の流れやその他の構造も第1および第2の冷却ユニット15,16と同様である。
【0044】
第1および第2の上側保冷部材112a,112bは、電機子110の上部の温度上昇を防ぐためのブロック状の部材である。第1の上側保冷部材112aは、第1のコイル列111aの上部に第1のコイル列111aと当接するかまたは近接した状態で配置される。また、第2の上側保冷部材112bは、第2のコイル列111bの上に、第2のコイル列111bと当接するかまたは近接した状態で配置される。第1の上側保冷部材112aの厚みは、第1のコイル列111aの厚みと同一であり、第2の上側保冷部材112bの厚みは、第2のコイル列111bの厚みと同一である。第1の上側保冷部材112aは、第1および第3の冷却ユニット15,17に挟まれて設置され、第2の上側保冷部材112bは、第2および第3の冷却ユニット16,17に挟まれて設置される。第1および第2の上側保冷部材112a,112bは、金属、セラミックスまたは樹脂で形成されている。
【0045】
第1および第2の下側保冷部材113a,113bは、電機子110の下部の温度上昇を防ぐためのブロック状の部材であり、第1のコイル列111aおよび第2のコイル列111bの下部に各々当接または近接して配置される。第1の下側保冷部材113aの厚みは、第1のコイル列111aの厚みと同一であり、第2の下側保冷部材113bの厚みは、第2のコイル列111bの厚みと同一である。第1の下側保冷部材113aは、第1および第3の冷却ユニット15,17に挟まれて設置され、第2の下側保冷部材113bは、第2および第3の冷却ユニット16,17に挟まれて設置される。第1および第2の下側保冷部材113a,113bは、金属、セラミックスまたは樹脂で形成されている。
【0046】
(2.2.電機子110の製造方法)
電機子110を製造する場合、第3の冷却ユニット17を第1のコイル列111aと第2のコイル列111bに挟まれるように配置し、第1のコイル列111aの上部に当接または近接して第1の上側保冷部材112aを配置し、下部に第1の下側保冷部材113aを配置する。同様に、第2のコイル列111bの上部に当接または近接して第2の上側保冷部材112bを配置し、下部に第2の下側保冷部材113bを配置する。そして流路プレート152の背面152eに第1のコイル列111aを密着させ、流路プレート162の背面162eに第2のコイル列111bを密着させ、第1および第2の冷却ユニット15,16を配置する。最後に、蓋プレート153,163の正面153b,163bの上側に取付部材14を各々配置し、ボルト締結により上部および下部の複数個所を固定して電機子110を形成する。
【0047】
このように、本実施形態の電機子110は、3組の冷却ユニットを使用して冷却するため、コイルが積層されて厚みのある部材であったとしても適切に冷却することが可能である。さらに、冷却ユニットは各々構造が独立しているため、電機子110に3組の冷却ユニットを使用していたとしても冷却ユニット単体で液漏れ等の試験をすることができ、生産性が優れた冷却ユニットを提供することができる。
【0048】
<3.第3の実施形態>
図16は、本発明の第3の実施形態に係る第1および第2のコイル211,311を示す斜視図であり、
図17は、上記実施形態に係る電機子210を示す正面図である。
本発明の第1および第2の実施形態に係る電機子10,110は、コイル11,第1および第2のコイル列111a,111bが平板状に形成されているのに対し、本発明の第3の実施形態に係る電機子210は、第1のコイル211が平板状ではない立体形状に形成されている点が相違し、その他の構成部材は第1および第2の実施形態と同様であるため、同様の構成に関しては同一の符号を付して説明を省略する。
【0049】
本発明の第3の実施形態に係る電機子210は、第1のコイル211と、第2のコイル311と、第1および第2のコイル211,311を冷却するための第1の冷却ユニット115および第2の冷却ユニットを含む。
【0050】
第1のコイル211は、単線を巻回することでドーナツ状に形成されたコイルであり、平板状の一対の平板部211a,211aと、隣り合う平板部211aの両端を接続する一対の屈曲部211b,211bと、中心に設けられた孔211cから構成されている。屈曲部211bは、正面視でコの字形状をなし、平板部211aの両端から立直して設けられている。第1のコイル211が複数所定の方向に並設されて第3のコイル列211dをなす。
【0051】
第2のコイル311は、単線を集中巻回することで扁平ドーナツ板状に形成されている。第2のコイル311は、平板状の一対の平板部311a,311aと、第2のコイル311の中心に設けられた孔311cを備える。第2のコイル311が所定の方向に並設されて第4のコイル列311dをなす。
【0052】
隣り合う第1のコイル211の平板部211a同士が当接した箇所を、第4のコイル列311dの孔に311cに挿入し、隣り合う第2のコイル311の平板部311a同士が当接した箇所を、第3のコイル列211dの孔に311cに挿入すると、第3および第4のコイル列211d,311dが屈曲部211bで積層され、かつ第3および第4のコイル列211d,311dの平板部211a,311aが平面状に連なったコイルの集合体が形成される。
【0053】
第1の冷却ユニット115および第2の冷却ユニットは、第3および第4のコイル列211d,311dを両側から挟んで固定する一対の平板状の冷却部材であり、第1および第2のコイル211,311の平板部211a,311aの領域のみ冷却するように平板部211a,311aの領域の正面および背面に設けられている。その他の構成は第1の実施形態の第1および第2の冷却ユニット15,16と同様の構成であるため説明を省略する。
【0054】
このように、形状が平板状ではなく立体的に形成されたコイルを使用した電機子210であっても、第1の冷却ユニット115および第2の冷却ユニットを平板状に形成された平板部211a,311aの正面および背面に取り付けることで、大幅な構造の変更を必要とせず、生産性が優れた冷却ユニットを提供することができる。
【0055】
<4.第4の実施形態>
(4.1.流路プレート452の構成)
図18および
図19は、本発明の第4の実施形態に係る流路プレート452を示す模式図である。
図20は、
図19のC―C断面拡大図である。第4の実施形態に係る流路プレート452は、(1)第1の実施形態に係る流路プレート152の長孔152bと分岐部材155にかえて分岐・合流部452bを設けている点、(2)溝152aまたは分岐・合流部452bの少なくともいずれかひとつの領域に複数の補強柱452fを設けている点が相違し、その他の構成部材は第1の実施形態と同様であるため、同様の構成に関しては同一の符号を付して説明を省略する。ここで、
図18および
図19は便宜上、冷却媒体が通る領域を複数の点の領域として示している。また流路プレートは、第1の冷却ユニット15の流路プレート452と第2の冷却ユニット16の流路プレートが存在するが、同様の構造であるため流路プレート452に関して代表して説明を行い、第2の冷却ユニット16の流路プレートの説明は省略する。
【0056】
流路プレート452は、流路151となる溝152aと、溝152aの両端に設けられた分岐・合流部452bと、溝152aと溝152aの間を区切るための仕切152cと、仕切152cの中心に設けられた第1の切込152dと、溝152aまたは分岐・合流部452bの少なくともいずれかひとつの領域に複数の補強柱452fを備える(
図18―
図20)。
【0057】
分岐・合流部452bは、溝152aの両端に設けられた一方の領域が流出入部材154から流入した冷却媒体を複数の流路151に分岐する領域であり、他方の領域が複数の流路151を連結して冷却媒体を集め、他方の流出入部材154から排出する領域である。分岐・合流部452bは、複数の溝152aから連続して凹状に形成されており、紙面上下方向に伸長して設けられる(
図18,
図19)。
【0058】
補強柱452fは、溝152aまたは分岐・合流部452bの底面から凸状に立設して形成された補強部材であり、溝152aや分岐・合流部452bに所定の間隔で複数設けられている。また補強柱452fは、断面円状で直径が約3mm以下に形成されている。補強柱452fは分岐・合流部452bだけに設けられていても(
図18)、分岐・合流部452bと溝152aに設けられていてもよい(
図19)。補強柱452fの直径、配置する数、配置する間隔および配置する位置は、補強柱452fを配置することによる圧力損失、冷却媒体の流速、安全率、最大応力および最大変位を考慮し、最適な数値や位置が選定される。
流路プレート452と蓋プレート153を重ね合わせると、補強柱452fの蓋プレート153側の面が蓋プレート153と当接して蓋プレート153と接着される。溝152a、分岐・合流部452b、補強柱452fは平板をエッチング等により加工することで一体として形成される。
【0059】
粘性力低減を考慮して冷却ユニットを薄くした場合、冷却ユニット内を流れる冷却媒体の圧力によって冷却ユニット自体が膨張変形してしまい、最悪の場合は電機子が破損してしまう問題がある。よって、複数の補強柱452fを溝152aや分岐・合流部452bに設けることで、冷却媒体が通過する位置の流路プレート452と蓋プレート153の固着を強固なものとし、圧力による変形を抑制することができる。
【0060】
(4.2.第1の冷却ユニット15内の冷却媒体の流れ)
次に第1の冷却ユニット15内の冷却媒体の流れの説明を行う。
一方の流出入部材154の開口154aから流入された冷却媒体は、蓋プレート153の連通孔153aを介して一方の分岐・合流部452bに流入する。その後、冷却媒体は複数の流路151に分岐して電機子10の移動方向と平行に第1の冷却ユニット15の一端から他端へ流れ、他方の分岐・合流部452bに集められる。そして、蓋プレート153の連通孔153aを介して他方の流出入部材154の開口154aから流出する。
【0061】
以上、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0062】
10,110,210 電機子
12 上側保冷部材
13 下側保冷部材
14 取付部材
15 第1の冷却ユニット
152,162,452 流路プレート
153,163 蓋プレート
154,164 流出入部材
155,165 分岐部材
16 第2の冷却ユニット
17 第3の冷却ユニット
20 界磁
100 リニアモータ
【手続補正書】
【提出日】2023-07-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単線を巻回して並設された複数のコイルと、冷却媒体を流す複数の流路を有する第1の冷却ユニットおよび第2の冷却ユニットを備えたリニアモータの電機子であって、
前記第1の冷却ユニットおよび前記第2の冷却ユニットは、平板状の流路プレートと蓋プレートを備え、
前記流路プレートは、前記流路プレートの一端から他端に向けて前記電機子の移動方向と平行となるように設けられた複数の溝と、隣接する前記溝の間を区切るための複数の仕切を備え、
前記流路プレートと前記蓋プレートが重ね合わされて、前記溝および前記仕切により前記流路プレートと前記蓋プレートの間に前記電機子の移動方向と平行な複数の前記流路が形成され、
前記流路プレートの前記仕切には前記電機子の移動方向と平行に形成された複数の第1の切込が設けられ、前記蓋プレートには前記電機子の移動方向と平行に形成された複数の第2の切込が設けられ、
前記流路プレートまたは前記蓋プレートの背面に前記コイルが密着固定されて前記第1の冷却ユニットおよび前記第2の冷却ユニットにより前記コイルが挟持されていることを特徴とする電機子。
【請求項2】
前記第2の切込は、前記蓋プレート面に形成される平面において前記移動方向に直交する直線方向に沿って前記第1の切込と同じ位置に設けられていることを特徴とする請求項1記載の電機子。
【請求項3】
前記溝には複数の補強柱が設けられていることを特徴とする請求項1記載の電機子。
【請求項4】
前記電機子は、前記蓋プレート面に形成される平面において前記移動方向に直交する直線方向を上下方向として配置されるときの前記コイルの上部に固定された上側保冷部材と、前記コイルの下部に固定された下側保冷部材を備え、
前記移動方向と前記上下方向とに共に直交する直線方向における大きさを厚みとした前記上側保冷部材および前記下側保冷部材の厚みは、前記移動方向と前記上下方向とに共に直交する直線方向における大きさを厚みとした前記コイルの厚みと同一であり、前記第1の冷却ユニットおよび前記第2の冷却ユニットに挟まれた状態で固定されることを特徴とする請求項1記載の電機子。
【請求項5】
複数の前記コイルは並設されて第1のコイル列および第2のコイル列が形成され、前記第1のコイル列と前記第2のコイル列に挟まれた状態で密着固定された第3の冷却ユニットを備えることを特徴とする請求項1記載の電機子。
【請求項6】
冷却媒体が流通する複数の流路を備えたリニアモータのコイルを冷却するための冷却ユニットであって、
前記冷却ユニットは、平板状の流路プレートと蓋プレートを備え、
前記流路プレートは、前記流路プレートの一端から他端に向けて電機子の移動方向と平行となるように設けられた複数の溝と、隣接する前記溝の間を区切るための複数の仕切を備え、
前記流路プレートと前記蓋プレートが重ね合わされて、前記溝および前記仕切により前記流路プレートと前記蓋プレートの間に前記電機子の移動方向と平行な複数の流路が形成され、
前記流路プレートの前記仕切には前記電機子の移動方向と平行に形成された複数の第1の切込が設けられ、前記蓋プレートには前記電機子の移動方向と平行に形成された複数の第2の切込が設けられたことを特徴とする冷却ユニット。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか一項記載の電機子と、異なる極性が隣り合うように配置された複数の永久磁石が列設された界磁を備えたことを特徴とするリニアモータ。