(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176970
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20241212BHJP
H01M 50/627 20210101ALI20241212BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M50/627
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095884
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 尊
(72)【発明者】
【氏名】村田 卓也
【テーマコード(参考)】
5H023
5H028
【Fターム(参考)】
5H023AA03
5H023AS01
5H028AA07
5H028BB03
5H028CC01
5H028CC07
5H028CC08
5H028CC19
5H028HH01
5H028HH05
(57)【要約】
【課題】活物質層への電解液の含浸性が向上した電池の提供。
【解決手段】集電体と、間に溝16A、16Bが設けられ分割された活物質層16aと、を含む電極が積層されてなる電極積層体と、集電体15間に電解液が収容される内部空間Vを形成し内部空間Vを封止する封止体12と、封止体12に形成され内部空間Vと外部とを連通する注液口Pと、を備え、内部空間Vは、溝16A、16Bと、活物質層16の周囲において活物質層が設けられていない未塗工領域150と、により形成され、封止体12によって封止される内部の領域は、電極積層体の積層方向から見たときに多角形状であり、溝16A、16Bは活物質層の間を注液口Pの側からそれと反対方向に向かって延在し、溝として幅の異なる溝16A及び溝16Bを有し、溝16Aが溝16Bよりも幅が大きい、電池。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体と、前記集電体の一方又は両方の面に設けられ、間に複数の溝が設けられて複数の領域に分割された活物質層と、を含む電極が積層されてなる電極積層体と、
隣り合う前記集電体間に電解液が収容される内部空間を形成すると共に前記内部空間を封止する封止体と、
前記封止体に形成され、前記内部空間と外部とを連通する注液口と、を備え、
前記内部空間は、前記溝と、前記活物質層の周囲において前記活物質層が設けられていない未塗工領域と、により形成され、
前記封止体によって封止される内部の領域は、前記電極積層体の積層方向から見たときに多角形状であり、
前記封止体における前記注液口が形成された辺における前記内部空間側の面を注液口側面としたとき、
前記溝は前記活物質層の間を、前記注液口側面の側から前記注液口側面と反対方向に向かって延在し、
前記複数の溝として幅の異なる溝A及び溝Bを少なくとも有し、前記溝Aが前記溝Bよりも幅が大きい、電池。
【請求項2】
前記封止体によって封止される内部の領域は、前記電極積層体の積層方向から見たときに四角形状であり、
前記四角形状における1つの辺に面する領域の前記封止体にのみ前記注液口を有する、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記溝Aのうちの少なくとも一つが下記(A1)及び(A2)の少なくとも一方の要件を満たす、請求項1に記載の電池。
(A1)前記複数の溝のうち、前記注液口に最も近い位置に設けられる
(A2)前記複数の溝が並ぶ方向において、最も端に設けられた溝と反対側の端に設けられた溝から等距離の位置に、最も近い位置に設けられる
【請求項4】
前記溝Aの幅[dA]に対する前記溝Bの幅[dB]の比([dB]/[dA])が0.07以上0.40以下である、請求項1に記載の電池。
【請求項5】
前記溝Bの幅[dB]が0.5mm以上4.0mm以下である請求項1に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電池の製造方法として、セパレータを挟んで対向配置された電極間の空間に電解液を注液する工程を含む製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また特許文献2には、電池の内部空間へ電解液の浸透させる際に、内部空間を第1圧力まで減圧する第1減圧工程と、予め設定された所定量の電解液を保持する保持部から注液口を通じて、第1減圧工程で減圧された内部空間に所定量の電解液を注液する第1注液工程と、保持部及び注液口を通じ、所定量の電解液が注液された内部空間を第2圧力まで減圧して、内部空間から保持部に電解液の一部を逆流させる第2減圧工程と、逆流した電解液を保持する保持部の内部を第2圧力よりも高い圧力にして、保持部から注液口を通じて、内部空間に電解液を注液する第2注液工程と、を含み、第2減圧工程は、内部空間を第1減圧工程S20よりも低い減圧速度で減圧する初期減圧工程を含む、バイポーラ型蓄電装置の製造方法、が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-191450号公報
【特許文献2】特開2022-188536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の電池では、電池容量を向上させる観点から、集電体上における活物質層が形成されていない未塗工領域の体積(幅)を小さくすることが検討されていた。しかし、未塗工領域の幅を小さくしすぎると、活物質層に設けられた溝に対する電解液の液回り性が悪化するという問題があった。
【0006】
本開示は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、活物質層への電解液の含浸性が向上した電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段は、以下の態様を含む。
<1> 集電体と、前記集電体の一方又は両方の面に設けられ、間に複数の溝が設けられて複数の領域に分割された活物質層と、を含む電極が積層されてなる電極積層体と、
隣り合う前記集電体間に電解液が収容される内部空間を形成すると共に前記内部空間を封止する封止体と、
前記封止体に形成され、前記内部空間と外部とを連通する注液口と、を備え、
前記内部空間は、前記溝と、前記活物質層の周囲において前記活物質層が設けられていない未塗工領域と、により形成され、
前記封止体によって封止される内部の領域は、前記電極積層体の積層方向から見たときに多角形状であり、
前記封止体における前記注液口が形成された辺における前記内部空間側の面を注液口側面としたとき、
前記溝は前記活物質層の間を、前記注液口側面の側から前記注液口側面と反対方向に向かって延在し、
前記複数の溝として幅の異なる溝A及び溝Bを少なくとも有し、前記溝Aが前記溝Bよりも幅が大きい、電池。
<2> 前記封止体によって封止される内部の領域は、前記電極積層体の積層方向から見たときに四角形状であり、
前記四角形状における1つの辺に面する領域の前記封止体にのみ前記注液口を有する、<1>に記載の電池。
<3> 前記溝Aのうちの少なくとも一つが下記(A1)及び(A2)の少なくとも一方の要件を満たす、<1>又は<2>に記載の電池。
(A1)前記複数の溝のうち、前記注液口に最も近い位置に設けられる
(A2)前記複数の溝が並ぶ方向において、最も端に設けられた溝と反対側の端に設けられた溝から等距離の位置に、最も近い位置に設けられる
<4> 前記溝Aの幅[dA]に対する前記溝Bの幅[dB]の比([dB]/[dA])が0.07以上0.40以下である、<1>~<3>のいずれか1項に記載の電池。
<5> 前記溝Bの幅[dB]が0.5mm以上4.0mm以下である<1>~<4>のいずれか1項に記載の電池。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、活物質層への電解液の含浸性が向上した電池が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係るバイポーラ型蓄電装置の構成を示す概略的な断面図である。
【
図2】
図1に示される蓄電モジュールの内部構成を示す概略的な断面図である。
【
図3】
図2に示される蓄電モジュールの積層方向に直交する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本開示の実施形態に係る電池について説明する。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
【0011】
図1は、一実施形態に係るバイポーラ型蓄電装置の構成を示す概略的な断面図である。
図1に示すバイポーラ型蓄電装置1(以下、単に「蓄電装置1」とも言う)は、例えば、フォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリに用いられる装置である。蓄電装置1は、例えばニッケル水素二次電池又はリチウムイオン二次電池等の二次電池である。本実施形態では、蓄電装置1がリチウムイオン二次電池である場合を例示する。蓄電装置1は、モジュール積層体2と、モジュール積層体2に対してモジュール積層体2の積層方向に拘束荷重を付加する拘束部材3とを備える。
【0012】
モジュール積層体2は、蓄電モジュール4と、蓄電モジュール4に積層配置された導電板5と、を備える。モジュール積層体2は、複数(ここでは3つ)の蓄電モジュール4と、複数(ここでは4つ)の導電板5とを含む。蓄電モジュール4は、バイポーラ電池であり、積層方向から見て矩形状をなす。
【0013】
積層方向に互いに隣り合う蓄電モジュール4同士は、導電板5を介して電気的に接続される。導電板5は、積層方向に互いに隣り合う蓄電モジュール4間と、積層端に位置する蓄電モジュール4の外側とにそれぞれ配置される。積層端に位置する蓄電モジュール4の外側に配置された一方の導電板5には、正極端子6が接続される。積層端に位置する蓄電モジュール4の外側に配置された他方の導電板5には、負極端子7が接続される。正極端子6及び負極端子7は、例えば導電板5の縁部から積層方向に交差する方向に引き出される。正極端子6及び負極端子7により、蓄電装置1の充放電が実施される。
【0014】
導電板5の内部には、空気等の冷媒を流通させる複数の流路5aが設けられる。流路5aは、例えば積層方向と、正極端子6及び負極端子7の引き出し方向と、にそれぞれ交差(直交)する方向に沿って延在する。導電板5は、蓄電モジュール4同士を電気的に接続する接続部材としての機能のほか、これらの流路5aに冷媒を流通させることにより、蓄電モジュール4で発生した熱を放熱する放熱板としての機能を併せ持つ。
【0015】
拘束部材3は、モジュール積層体2を積層方向に挟む一対のエンドプレート8と、エンドプレート8同士を締結する締結ボルト9及びナット10とによって構成される。エンドプレート8におけるモジュール積層体2側の面には、電気絶縁性を有するフィルムFが設けられ、フィルムFによりエンドプレート8と導電板5との間が絶縁される。
【0016】
次に、蓄電モジュール4の構成について詳細に説明する。
図2は、
図1に示された蓄電モジュールの内部構成を示す概略断面図である。
図2に示されるように、蓄電モジュール4は、電極積層体11と、電極積層体11を封止する樹脂製の封止体12とを備える。蓄電モジュール4は、例えば、直方体形状に形成される。
【0017】
電極積層体11は、セパレータ13を介して積層方向Dに沿って積層された複数の電極と、電極積層体11の積層端に位置する集電体(金属板20A、20B)と、を含んでいる。複数の電極は、負極終端電極18と、正極終端電極19と、負極終端電極18及び正極終端電極19の間に積層された複数のバイポーラ電極14と、を有する。複数のバイポーラ電極14の積層体は負極終端電極18及び正極終端電極19の間に設けられる。
【0018】
バイポーラ電極14は、一方面15a及び一方面15aの反対側に設けられた他方面15bを含む、集電体としての金属板15と、一方面15aに設けられた正極16と、他方面15bに設けられた負極17とを有する。一方面15aは、積層方向Dの一方を向く面であり、例えば重力方向の上方を向く。他方面15bは、積層方向Dの他方を向く面であり、例えば重力方向の下方を向く。正極16は、正極活物質が金属板15に塗工されることにより形成される正極活物質層である。負極17は、負極活物質が金属板15に塗工されることにより形成される負極活物質層である。電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の正極16は、セパレータ13を挟んで積層方向Dの一方に隣り合う別のバイポーラ電極14の負極17と対向する。電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の負極17は、セパレータ13を挟んで積層方向Dの他方に隣り合う別のバイポーラ電極14の正極16と対向する。
【0019】
負極終端電極18は、金属板15と、金属板15の他方面15bに設けられた負極17とを有する。負極終端電極18は、他方面15bが電極積層体11における積層方向Dの中央側を向くように、積層方向Dの一端側に配置される。負極終端電極18の金属板15の一方面15aには、金属板20Aが更に積層され、この金属板20Aを介して蓄電モジュール4に隣接する一方の導電板5と電気的に接続される。負極終端電極18の金属板15の他方面15bに設けられた負極17は、セパレータ13を介して、積層方向Dの一端のバイポーラ電極14の正極16と対向する。
【0020】
正極終端電極19は、金属板15と、金属板15の一方面15aに設けられた正極16とを有する。正極終端電極19は、一方面15aが電極積層体11における積層方向Dの中央側を向くように、積層方向Dの他端側に配置される。正極終端電極19の金属板15の他方面15bには、金属板20Bが更に積層され、この金属板20Bを介して蓄電モジュール4に隣接する他方の導電板5と電気的に接続される。正極終端電極19の金属板15の一方面15aに設けられた正極16は、セパレータ13を介して、積層方向Dの他端のバイポーラ電極14の負極17と対向する。
【0021】
金属板15は、例えば、Al、SUS、Ni、Cu等といった金属からなる。各金属板15は、いずれも電極積層体11に含まれる金属板の一つである。金属板15の縁部15cは、矩形枠状をなし、正極活物質及び負極活物質が塗工されない未塗工領域15d(
図3参照)の一部をなす。正極16を構成する正極活物質としては、例えば酸化物活物質が挙げられる。酸化物活物質としては、例えば、LiCoO
2、LiMnO
2、LiNiO
2、LiVO
2、LiNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2等の岩塩層状型活物質、LiMn
2O
4、Li(Ni
0.5Mn
1.5)O
4等のスピネル型活物質、LiFePO
4、LiMnPO
4、LiNiPO
4、LiCuPO
4等のオリビン型活物質が挙げられる。負極17を構成する負極活物質としては、例えばカーボン活物質、酸化物活物質及び金属活物質が挙げられる。本実施形態では、金属板15の他方面15bにおける負極17の形成領域は、金属板15の一方面15aにおける正極16の形成領域に対して一回り大きくなっている。電極積層体11は、積層された複数の金属板15、20A、20Bを有する。
【0022】
セパレータ13は、金属板15同士の短絡を防止するための部材であり、例えばシート状に形成される。セパレータ13としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等が例示される。セパレータ13は、フッ化ビニリデン樹脂化合物で補強されたものであってもよい。なお、セパレータ13は、シート状に限られず、袋状のものを用いてもよい。
【0023】
金属板20A、20Bは、金属板15と実質的に同一の部材であり、例えばAl、SUS、Ni、Cu等といった金属からなる。金属板20A、20Bは、いずれも電極積層体11に含まれる金属板の一つである。金属板20A、20Bは、一方面20a及び他方面20bに正極活物質層及び負極活物質層のいずれもが塗工されていない未塗工電極をなす。即ち、金属板20A、20Bは、両面に活物質層が設けられていない未塗工電極である。
【0024】
金属板20Aにより、負極終端電極18は、積層方向Dに沿って金属板20Aとバイポーラ電極14との間に配置された状態となる。金属板20Aの他方面20bと負極終端電極18の金属板15の一方面15aとは、間に何も介さずに直接接触することで、電気的に接続される。金属板20Bにより、正極終端電極19は、積層方向Dに沿って金属板20Bとバイポーラ電極14との間に配置された状態となる。金属板20Bの一方面20aと正極終端電極19の金属板15の他方面15bとは、間に何も介さずに直接接触することで、電気的に接続される。
【0025】
電極積層体11では、電極積層体11の中央領域(バイポーラ電極14、負極終端電極18、及び正極終端電極19において活物質層が配置される領域)が、その周りの領域に比べて積層方向Dに膨らんでいる。このため、金属板20A、20Bは、金属板20A、20Bの中央領域が互いに離間する方向に屈曲する。金属板20Aの一方面20a及び金属板20Bの他方面20bの中央領域は、導電板5と接触する。
【0026】
封止体12は、例えば絶縁性の樹脂によって、全体として矩形の筒状に形成される。封止体12は、例えば一対の短辺部分12aと、一対の長辺部分12b(
図3参照)とを有する長方形の筒状に形成される。封止体12は、電極積層体11の側面11aを囲むように設けられる。封止体12は、側面11aにおいて縁部15cを保持する。
【0027】
封止体12は、電極積層体11に含まれる金属板の縁部(即ち、金属板15の縁部15c及び金属板20A、20Bの縁部20c)にそれぞれ設けられた枠状の複数の第1封止部21(樹脂部)と、側面11aに沿って第1封止部21を外側から包囲し、第1封止部21のそれぞれに結合された第2封止部22とを有する。第1封止部21及び第2封止部22は、例えば、絶縁性の樹脂であり、樹脂の構成材料としては、例えばポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)などが挙げられる。
【0028】
第1封止部21は、金属板15の縁部15c及び金属板20A、20Bの縁部20cの全周にわたって連続的に設けられ、積層方向Dから見て矩形枠状をなす。第1封止部21と金属板15、及び、第1封止部21と金属板20A、20Bは、それぞれ、気密に接合される。第1封止部21は、積層方向Dから見て、金属板15の縁部15c又は金属板20A、20Bの縁部20cよりも外側にまで延びる。第1封止部21は、金属板15又は金属板20A、20Bの縁よりも外側に張り出した外側部分21aと、金属板15又は金属板20A、20Bの縁よりも内側に位置する内側部分21bと、を含む。第1封止部21の外側部分21aの先端部(外縁部)には、溶着層23が形成される。
【0029】
複数の第1封止部21は、バイポーラ電極14及び正極終端電極19に設けられた複数の第1封止部21Aと、負極終端電極18に設けられた第1封止部21Bと、金属板20Aに設けられた第1封止部21Cと、金属板20Bに設けられた第1封止部21D、21Eと、を有する。
【0030】
第1封止部21Aは、バイポーラ電極14及び正極終端電極19の金属板15の一方面15aに接合される。第1封止部21Aの内側部分21bは、積層方向Dに互いに隣り合う金属板15の縁部15c同士の間に位置する。金属板15の一方面15aにおける縁部15cと、第1封止部21Aとが重なる領域は、金属板15と第1封止部21Aとの結合領域となる。
【0031】
本実施形態では、第1封止部21Aは、1枚のフィルムが二つに折りたたまれることによって、二層構造で形成される。第2封止部22に埋設される第1封止部21Aの外縁部は、フィルムの折り返し部(屈曲部)である。第1封止部21Aを構成する一層目のフィルムは、一方面15aに接合される。二層目のフィルムの内縁は、一層目のフィルムの内縁よりも外側に位置し、セパレータ13が載置される段差部を形成する。二層目のフィルムの内縁は、金属板15の縁よりも内側に位置する。
【0032】
第1封止部21Bは、負極終端電極18の金属板15の一方面15aに接合される。第1封止部21Bの内側部分21bは、積層方向Dに互いに隣り合う負極終端電極18の金属板15の縁部15cと、金属板20Aの縁部20cとの間に位置する。金属板15の一方面15aにおける縁部15cと第1封止部21Bの内側部分21bとが重なる領域は、金属板15と第1封止部21Bとの結合領域となる。第1封止部21Bは、金属板20Aの他方面20bにも接合される。金属板20Aの他方面20bにおける縁部20cと、第1封止部21Bとが重なる領域は、金属板20Aと第1封止部21Bとの結合領域となる。本実施形態では、第1封止部21Bは、金属板20Aの他方面20bにおける縁部20cにも接合される。
【0033】
第1封止部21Cは、金属板20Aの一方面20a(外面)に接合される。金属板20Aの一方面20aにおける縁部20cと、第1封止部21Cとが重なる領域は、金属板20Aと第1封止部21Cとの結合領域となる。金属板20Aの一方面20aは、第1封止部21Cから露出する露出面20dを有する。導電板5は、露出面20dに接触して配置される。
【0034】
本実施形態では、第2封止部22に埋設される第1封止部21B、21Cの外縁部同士は連続する。即ち、第1封止部21B、21Cは、1枚のフィルムが金属板20Aの縁部20cを挟んで二つに折りたたまれることによって形成される。第1封止部21B、21Cの外縁部は、フィルムの折り返し部である。第1封止部21B、21Cを構成するフィルムは、金属板20Aの一方面20a及び他方面20bの両方において縁部20cと接合される。
【0035】
第1封止部21Dは、金属板20Bの一方面20aに接合される。第1封止部21Dの内側部分21bは、積層方向Dに互いに隣り合う正極終端電極19の金属板15の縁部15cと、金属板20Bの縁部20cとの間に位置する。金属板20Bの一方面20aにおける縁部20cと、第1封止部21Dとが重なる領域は、金属板20Bと第1封止部21Dとの結合領域となる。
【0036】
第1封止部21Eは、金属板20Bの他方面20b(外面)における縁部20cに配置される。本実施形態では、第1封止部21Eは、金属板20Bに接合されていない。金属板20Bの他方面20bは、第1封止部21Eから露出する露出面20dを有する。導電板5は、露出面20dに接触して配置される。
【0037】
本実施形態では、第2封止部22に埋設される第1封止部21D、21Eの外縁部同士は連続する。即ち、第1封止部21D、21Eは、1枚のフィルムが金属板20Bの縁部20cを挟んで二つに折りたたまれることにより形成される。第1封止部21D、21Eの外縁部は、フィルムの折り返し部である。第1封止部21D、21Eを構成するフィルムは、金属板20Bの一方面20aにおいて縁部20cと接合される。
【0038】
電極積層体11内には複数の内部空間Vが設けられる。各内部空間Vは、隣り合う金属板間に設けられる。内部空間Vは、積層方向Dで隣り合う金属板間において、当該金属板と封止体12とにより気密及び液密に仕切られた空間である。この内部空間Vには、例えば電解液(不図示)が収容される。電解液は、例えば非水溶媒と支持塩とを含有する。非水溶媒としては、例えばカーボネート類、エーテル類、エステル類、ニトリル類、スルホン類、ラクトン類等の有機溶媒を挙げることができる。支持塩としては、例えば、LiPF6等のリチウム塩を挙げることができる。電解液は、セパレータ13、正極16及び負極17内に含浸される。
【0039】
図3は、
図2に示される蓄電モジュールの積層方向に直交する断面図である。
図3に示すように、封止体12の一方の短辺部分12aには、注液口Pが設けられる。注液口Pは、封止体12の長辺方向に封止体12を貫通する。注液口Pは、内部空間Vと外部空間とに連通する。注液口Pが、封止体12の一方の短辺部分12aにおいて設けられる位置は、対応する内部空間Vの積層方向D(
図2参照)における位置によって異なる。注液口Pは、積層方向D(
図2参照)で隣り合う注液口P同士が重ならないように、封止体12の短辺方向にずらして設けられる。
図3の例では、注液口Pは封止体12の一方の短辺部分12aの一端部に設けられている。
【0040】
封止体12によって封止される内部の領域の積層方向から見たときの形状(つまり
図3に示す内部空間Vと封止体12との界面の形状)は、矩形状である。なお、封止体12によって封止される内部の領域の形状は、矩形状に限られず、四角形状、四角以外の多角形状等であってもよい。また、多角形状における角は丸みを帯びた形状であってもよい。
【0041】
図3では、封止体12によって封止される内部の領域(矩形状の領域)において、注液口Pが矩形における1つの辺に面する領域の封止体120にのみ形成されている。ただし、注液口Pは複数の箇所に設けられてもよく、例えば封止体12によって封止される内部の領域が多角形状であり、注液口Pがこの多角形状における2つ以上の辺に面する領域の封止体120に、計2つ以上形成されていてもよい。
【0042】
正極16は、金属板15の一方面15a上において溝16A、16Bにより分割された複数の分割領域16aを含んでいる。封止体12における注液口Pが形成された辺における内部空間V側の面を注液口側面150Pとしたとき、溝16A、16Bは注液口側面150Pの側から注液口側面150Pと反対方向(
図3におけるY方向)に向かって延在する。したがって、
図3では、溝16A、16Bは一方面15aの長辺方向に沿って延在する。溝16A、16Bの底面は、一方面15aにより構成される。
なお、封止体12における注液口Pが形成された辺とは、電極積層体11を積層方向から見たときの、注液口Pが形成された辺を表す。
【0043】
複数の分割領域16aは、一方面15aの短辺方向において互いに離間して配置される。本実施形態では、正極16は、5本の溝16A、16Bにより6つの分割領域16aに分割される。複数の分割領域16aは、一方面15aの長辺方向を長辺方向とし、一方面15aの短辺方向を短辺方向とする矩形状を有する。
【0044】
金属板15の一方面15a上の複数の分割領域16aの周囲には、正極16が形成されていない未塗工領域150が設けられる。未塗工領域150は、注液口側面150Pに面する領域に設けられる未塗工領域150A、複数の分割領域16aを挟んで未塗工領域150Aとは反対側に設けられる未塗工領域150B、及び未塗工領域150Aと未塗工領域150Bとの間の領域であって複数の分割領域16aの外側の領域に設けられる未塗工領域150Cを有する。なお、溝16A、16Bと未塗工領域150とによって内部空間Vが形成される。
【0045】
図示を省略するが、負極17も正極16と同様に溝により分割された複数の分割領域を含んでいる。負極17の溝は、積層方向D(
図2参照)から見て、正極16の溝16A、16Bと重なるように設けられる。また、複数の分割領域に分割された負極17の周囲にも未塗工領域が設けられる。
【0046】
内部空間Vへの電解液の注液の際、正極16の溝と負極17の溝とが組み合わされてなる空隙は、一方面15aの未塗工領域150と、他方面15bの未塗工領域の間の空隙と同様に、電解液の流路として機能する。
【0047】
複数の溝には、幅の異なる溝16A及び溝16Bがあり、溝16Aの幅[d
A]が溝16Bの幅[d
B]よりも大きい幅となるよう設定される。
図3では、1本の溝16Aと4本の溝16Bを有する態様を示しているが、これに限定されず、幅の大きい溝16Aを2本以上有していてもよい。なお、溝16B同士は、例えば互いに等しい形状を有する。また、
図3と異なり、幅の大きい溝16Aを複数有する場合には、溝16A同士も、例えば互いに等しい形状を有する。
図3では、溝16A、16Bの形状(溝16A、16Bが延在する方向(
図3におけるY方向)と直交する断面での形状)は矩形状である。なお、溝16A、16Bの形状は、特に限定されるものではなく、例えば正方形状、長方形状、三角形状、台形状等であってもよい。
図3では、溝16A、16Bの延在する方向での形状(溝16A、16Bを上面視した際の形状)は直線状である。なお、溝16A、16Bの延在する方向での形状も、特に限定されるものではなく、例えば波状、折れ線状、格子状等であってもよい。
【0048】
ここで、従来の電池について説明する。従来の電池では、電池容量を向上させる観点から、集電体上における活物質層が形成されていない未塗工領域の体積を小さくすることが検討されていた。しかし、電解液を浸透させるために複数の活物質層の間に設けられる溝に対して、電解液が浸透しにくくなることがあった。これは、未塗工領域の体積が小さくなることで、電解液の浸透経路が狭くなり、単位時間当たりの電解液の浸透量が減るために、内部空間全体に電解液が行き渡るまでに時間を要するためと考えられる。
【0049】
これに対し、本開示の実施形態では、幅の異なる溝16A及び溝16Bがあり、溝16Aの幅[dA]が溝16Bの幅[dB]よりも大きい幅となるよう設定される。そのため、内部空間のうち注液口Pから最初に未塗工領域150Aに電解液が浸透した後、幅の大きい溝16Aを通じて、未塗工領域150Bにも電解液が素早く供給される。その後、未塗工領域150Bに浸透した電解液が、未塗工領域150B側からも幅の狭い溝16B内に浸透し、内部空間V全体に電解液が行き渡り易くなる。その結果、電池の製造において電極積層体11全体に電解液の浸透が完了するまでに要する時間が短縮化される。また、電解液の注入完了後における、活物質層全体へ電解液が行き渡り切らない欠陥の発生も抑制される。
【0050】
ここで、幅の大きい溝16Aの形成位置について説明する。幅の大きい溝16Aは、下記(A1)及び(A2)の少なくとも一方の要件を満たす位置に設けられることが、電解液注入の際に内部空間V全体に電解液が行き渡り易くなる観点で、好ましい。
(A1)溝16Aは、複数の溝16A、16Bのうち、注液口Pに最も近い位置に設けられる
(A2)溝16Aは、複数の溝16A、16Bが並ぶ方向において、最も端に設けられた溝(例えば
図3では最も左側の溝)と反対側の端に設けられた溝(例えば
図3では最も右側の溝)から等距離の位置に、最も近い位置に設けられる
図3では、(A2)の要件を満たす位置に溝16Aが設けられている。
【0051】
なお、幅の大きい溝16Aを複数有する場合には、溝16Aのうちの少なくとも一つが、上記(A1)及び(A2)の少なくとも一方の要件を満たすことが好ましい。
【0052】
溝16Aの幅[dA]に対する溝16Bの幅[dB]の比([dB]/[dA])は、0.07以上0.40以下であることが好ましく、0.10以上0.30以下であることがより好ましい。[dB]/[dA]が上記下限値以上であることで、電解液注入の際に内部空間V全体に電解液が行き渡り易くなる。[dB]/[dA]が上記上限値以下であることで、電池容量を向上させ易い点で好ましい。
【0053】
溝16Aの幅[dA]は、5.0mm以上15.0mm以下であることが好ましく、7.0mm以上10.0mm以下であることがより好ましい。幅[dA]が上記下限値以上であることで、電解液注入の際に内部空間V全体に電解液が行き渡り易くなる。幅[dA]が上記上限値以下であることで、電池容量を向上させ易い点で好ましい。
【0054】
溝16Bの幅[dB]は、0.5mm以上4.0mm以下であることが好ましく、1.0mm以上3.0mm以下であることがより好ましい。幅[dB]が上記下限値以上であることで、電解液注入の際に内部空間V全体に電解液が行き渡り易くなる。幅[dB]が上記上限値以下であることで、電池容量を向上させ易い点で好ましい。
【0055】
溝16Aの幅[dA]及び溝16Bの幅[dB]とは、それぞれの溝が延在する方向と直交する方向における溝の寸法を意味する。溝における幅の測定は、溝を上面視した際の、溝が延在する方向と直交する方向における溝の寸法(長さ)を、任意の5箇所で測定し、その算術平均値とする。
【0056】
上記の一実施形態では、正極16及び負極17の両方の活物質層に溝を有する態様を説明した。ただし、これに限定されるものではなく、正極活物質層のみ、又は負極活物質層のみに溝を有していてもよい。なお、リチウムの析出を抑制する観点から、溝は正極活物質層のみに形成されていることが好ましい。
【0057】
本開示の実施形態に係る電池における電極積層体の寸法は、特に限定されるものではないが、電極積層体における積層方向から見たときの電極積層体の面積は、例えば0.5m2以上とすることができる。また、電極積層体の面積の上限としては4.0m2以下とすることができる。
【0058】
なお、本開示の構成は上記実施形態に限定されるものではなく、課題を解決し得る限り、適宜構成を変更することができる。
【0059】
次に、本開示の実施形態に係る電池の効果を、シミュレーション実験により確認した。
【0060】
(実施例1、比較例1)
図3に示す構成を有し、集電体としての金属板の一方面に活物質層を有し、活物質層が溝によって分割された分割領域を有し、活物質層の周囲に活物質層が設けられていない未塗工領域を有する電極積層体について、シミュレーション(CEA)を行った。溝及び未塗工領域における断面の形状は矩形状とした。ただし、溝の数は14本とし、中央の2本の溝を「溝A」とし、残りの12本の溝(2本の溝Aに対し一方の側に6本、もう一方の側に6本)を「溝B」とした。
溝A、溝B、封止体によって封止される内部の領域において、封止体における注液口が形成された辺に面する領域に設けられる未塗工領域A(
図3における未塗工領域150A)、活物質層の分割領域を挟んで未塗工領域Aとは反対側に設けられる未塗工領域B(
図3における未塗工領域150B)、及び未塗工領域Aと未塗工領域Bとの間の領域であって活物質層の分割領域の外側の領域に設けられる未塗工領域C(
図3における未塗工領域150C)における、「幅」を表1に示す。
【0061】
シミュレーション実験として、電極積層体全体に電解液の浸透が完了するまでに要する時間(浸透時間)を算出した。結果を表1に示す。
【0062】
【0063】
表1に示す通り、溝Aの幅が溝Bの幅よりも大きいとの要件を満たす実施例1では、該要件を満たさない比較例1に比べて、電極積層体全体に電解液の浸透が完了するまでに要する時間を短くすることができることが分かる。このことから、実施例1では活物質層への電解液の含浸性が向上した電池が得られたことが分かる。
【符号の説明】
【0064】
1 バイポーラ型蓄電装置、11 電極積層体、12 封止体、13 セパレータ、14 バイポーラ電極、15 金属板(集電体)、15a 一方面、15b 他方面、16 正極、17 負極、D 積層方向、P 注液口、V 内部空間