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特開2024-17698医療デバイス、医療システム並びに、診断および治療方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017698
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】医療デバイス、医療システム並びに、診断および治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20240201BHJP
   A61B 10/00 20060101ALI20240201BHJP
   A61B 90/30 20160101ALI20240201BHJP
【FI】
A61B1/00 511
A61B10/00 E
A61B1/00 715
A61B90/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120514
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141829
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 牧人
(74)【代理人】
【識別番号】100123663
【弁理士】
【氏名又は名称】広川 浩司
(72)【発明者】
【氏名】秦 まゆ
(72)【発明者】
【氏名】末原 達
(72)【発明者】
【氏名】藤間 大貴
【テーマコード(参考)】
4C161
【Fターム(参考)】
4C161CC04
4C161CC07
4C161DD01
4C161FF23
4C161FF40
4C161FF46
4C161QQ04
4C161WW17
(57)【要約】
【課題】狭い生体内での励起光の出射と蛍光の受光を両立しつつ、蛍光を高い感度で検出できる医療デバイス、医療システム並びに、診断および治療方法を提供する。
【解決手段】生体内へ励起光を照射して励起光により励起された光感受性物質が発する蛍光を検出する医療デバイス10であって、基端から先端へ延びる軸心Xを備えた長尺なシャフト11を有し、シャフト11は、励起光を出射する出射部32と、蛍光を受光する受光部42であり、出射部32の先端と受光部42の先端とがシャフトの軸方向において異なる位置に配置される受光部42と、出射部32および受光部42のうち、基端側に配置されたものから軸心Xに沿って先端側へ延びる直線Lを横切る位置、かつ出射部32および受光部42の間に配置される遮光部50と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体内へ励起光を照射して前記励起光により励起された光感受性物質が発する蛍光を検出する医療デバイスであって、
基端から先端へ延びる軸心を備えた長尺なシャフトを有し、
前記シャフトは、
前記励起光を出射する出射部と、
前記蛍光を受光する受光部であり、前記出射部の先端と前記受光部の先端とが前記シャフトの軸方向において異なる位置に配置される前記受光部と、
前記出射部および前記受光部のうち、基端側に配置されたものから前記軸心に沿って先端側へ延びる直線を横切る位置、かつ前記出射部および前記受光部の間に配置される遮光部と、を有することを特徴とする医療デバイス。
【請求項2】
前記受光部は、前記出射部の先端よりも先端側に配置されることを特徴とする請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項3】
前記出射部の光を出射する出射面は、前記シャフトの軸心と垂直な側方向へ向く法線成分を有する、または光を散乱させる散乱体に形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の医療デバイス。
【請求項4】
前記遮光部は、先端側を向いて光を吸収する吸光部と、基端側を向いて光を反射する反射部と、を有することを特徴とする請求項1または2に記載の医療デバイス。
【請求項5】
前記遮光部は、前記シャフトの軸心と垂直な側方向へ向く法線成分を有する外縁部を有し、前記外縁部は、光を吸収する吸光部および/または光を反射する反射部であることを特徴とする請求項1または2に記載の医療デバイス。
【請求項6】
前記受光部の光を受光する受光面の面積は、前記出射部の光を出射する出射面の面積よりも大きいことを特徴とする請求項1または2に記載の医療デバイス。
【請求項7】
前記シャフトは、前記出射部および前記受光部を覆う光透過性を有する外装部を有し、
前記吸光部は、前記出射部から直接的に出射された前記励起光、前記外装部で反射した前記励起光、または、前記生体内で反射した前記励起光の少なくとも1つを吸収可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の医療デバイス。
【請求項8】
前記外装部は、先端に穿刺機能を有することを特徴とする請求項7に記載の医療デバイス。
【請求項9】
前記外装部とは別体の穿刺部を有することを特徴とする請求項7に記載の医療デバイス。
【請求項10】
前記遮光部は、前記出射部から出射された前記励起光を吸収して、前記励起光の前記受光部への直接入射を抑制する吸光部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の医療デバイス。
【請求項11】
前記遮光部は、前記出射部から出射された前記励起光を反射して、前記励起光の前記受光部への直接入射を抑制する反射部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の医療デバイス。
【請求項12】
生体内へ励起光を照射して前記励起光により励起された光感受性物質が発する蛍光を検出する医療システムであって、
基端から先端へ延びる軸心へ長尺なシャフトを有する医療デバイスと、前記医療デバイスに接続される光源と、を有し、
前記シャフトは、
前記励起光を出射する出射部と、
前記蛍光を受光する受光部であり、前記出射部の先端と前記受光部の先端とが前記シャフトの軸方向において異なる位置に配置される前記受光部と、
前記出射部および前記受光部のうち、基端側に配置されたものから前記軸心に沿って先端側へ延びる直線を横切る位置、かつ前記出射部および前記受光部の間に配置される遮光部と、を有することを特徴とする医療システム。
【請求項13】
前記受光部は、前記出射部の先端よりも先端側に配置されことを特徴とする請求項12に記載の医療システム。
【請求項14】
前記受光部により受光した前記蛍光を電気信号へ変換する光センサを有することを特徴とする請求項12または13に記載の医療システム。
【請求項15】
前記光センサで取得した情報を表示する表示デバイスを有することを特徴とする請求項12または13に記載の医療システム。
【請求項16】
前記医療デバイスを挿入可能な光透過性を有する穿刺部を有することを特徴とする請求項12または13のいずれか1項に記載の医療システム。
【請求項17】
前記出射部および前記受光部を覆う光透過性を有する外装部を有する請求項12または13に記載の医療システム。
【請求項18】
前記外装部は、先端に穿刺機能を有することを特徴とする請求項17に記載の医療システム。
【請求項19】
前記外装部とは別体の穿刺部を有することを特徴とする請求項17に記載の医療デバイス。
【請求項20】
生体内へ励起光を照射して前記励起光により励起された光感受性物質が発する蛍光を検出する診断および治療方法であって、
光感受性物質を体内に投与するステップと、
前記投与後に、基端から先端へ延びる軸心を備えた長尺なシャフトを有し、前記シャフトが、前記励起光を出射する出射部と、前記蛍光を受光する受光部であり、前記出射部の先端と前記受光部の先端とが前記シャフトの軸方向におい異なる位置に配置される前記受光部と、前記出射部および前記受光部のうち、基端側に配置されたものから前記軸心に沿って先端側へ延びる直線を横切る位置、かつ前記出射部および前記受光部の間に配置される遮光部と、を有する医療デバイスの前記シャフトを生体内に挿入するステップと、
前記生体内の前記出射部より前記光感受性物質へ前記励起光を照射するステップと、
前記励起光の照射を行いながら、前記励起光を受けて前記光感受性物質が発する蛍光を前記生体内の前記受光部により受光するステップと、を有することを特徴とする診断および治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療デバイス、医療システム並びに、診断および治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
がんの局所治療として、腫瘍細胞選択性を有する光反応物質を用いて行う光線力学的療法や光免疫療法が知られている。なかでも、光感受性物質(親水性フタロシアニン)を用いた治療法は、腫瘍に集積した光感受性物質に対して励起光(例えば、近赤外線)を照射することで、正常細胞などの非標的細胞を破壊せずに、標的細胞を特異的に破壊することができ、副作用を軽減しながら高い治療効果が得られることを期待されている。
【0003】
ところで、特許文献1には、被検体の体外に配置される光源から被検体内の蛍光剤に励起光を照射し、被検体の体外の光源から離れて配置される検出部により、蛍光剤が発する蛍光を検出するイメージング装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6760370号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
被検体の体外から励起光を出射し、体外で蛍光を受光する場合には、皮下腫瘍の最も表面的な部分しか撮影できない。しかしながら、励起光を出射する出射部と受光部を生体内の狭い領域に挿入するためには、出射部と受光部を近接させることになり、出射部から出射される励起光が受光部に直接入射しやすく、蛍光の検出感度が低下しやすい。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、狭い生体内での励起光の出射と蛍光の受光を両立しつつ、蛍光を高い感度で検出できる医療デバイス、医療システム並びに、診断および治療方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明に係る医療デバイスは、生体内へ励起光を照射して前記励起光により励起された光感受性物質が発する蛍光を検出する医療デバイスであって、基端から先端へ延びる軸心を備えた長尺なシャフトを有し、前記シャフトは、前記励起光を出射する出射部と、前記蛍光を受光する受光部であり、前記出射部の先端と前記受光部の先端とが前記シャフトの軸方向において異なる位置に配置される前記受光部と、前記出射部および前記受光部のうち、基端側に配置されたものから前記軸心に沿って先端側へ延びる直線を横切る位置、かつ前記出射部および前記受光部の間に配置される遮光部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上記のように構成した医療デバイスは、遮光部によって出射部から出射された励起光が受光部へ直接的に入射することを抑制できるため、出射部と受光部を同じシャフトに近接して配置可能である。このため、本医療デバイス、医療システムおよび治療方法は、出射部および受光部を備えるシャフトを生体内へ挿入することで、狭い生体内での励起光の出射と蛍光の受光を両立しつつ、シャフトに配置される遮光部により、蛍光を高い感度で検出できる。
【0009】
前記受光部は、前記出射部の先端よりも先端側に配置されてもよい。これにより、医療デバイスは、蛍光を受光可能な位置まで受光部を効果的に到達させることができる。
【0010】
前記出射部の光を出射する出射面は、前記シャフトの軸心と垂直な側方向へ向く法線成分を有する、または光を散乱させる散乱体に形成されてもよい。これにより、医療デバイスは、出射面から出射する励起光を、広範囲へ照射できる。
【0011】
前記遮光部は、先端側を向いて光を吸収する吸光部と、基端側を向いて光を反射する反射部と、を有してもよい。これにより、医療デバイスは、出射部から出射される励起光を、出射部が配置される側を向く反射部により反射させることで、励起光を効率よく広範囲へ照射できる。さらに、医療デバイスは、組織や医療デバイスの一部で反射した励起光を、受光部が配置される側を向く吸光部により吸収することで、励起光が受光部へ入射することを抑制し、受光部により蛍光を高い感度で検出できる。
【0012】
前記遮光部は、前記シャフトの軸心と垂直な側方向へ向く法線成分を有する外縁部を有し、前記外縁部は、光を吸収する吸光部および/または光を反射する反射部であってもよい。これにより、医療デバイスは、励起光を外縁部の反射部により反射させることで、励起光を効率よく広範囲へ照射できる。さらに、医療デバイスは、励起光を、外縁部の吸光部により吸収することで、励起光が受光部へ入射することを抑制し、受光部により蛍光を高い感度で検出できる。
【0013】
前記受光部の光を受光する受光面の面積は、前記出射部の光を出射する出射面の面積よりも大きくてもよい。これにより、医療デバイスは、励起光よりもエネルギの小さい蛍光を、出射面よりも大きな面積を有する受光面によって効果的に受光できる。
【0014】
前記シャフトは、前記出射部および前記受光部を覆う光透過性を有する外装部を有し、前記吸光部は、前記出射部から直接的に出射された前記励起光、前記外装部で反射した前記励起光、または、前記生体内で反射した前記励起光の少なくとも1つを吸収可能であってもよい。これにより、医療デバイスは、吸光部によって励起光の一部を吸収することで、励起光が受光部へ入射することを抑制し、受光部により蛍光を高い感度で検出できる。
【0015】
前記外装部は、先端に穿刺機能を有してもよい。これにより、医療デバイスは、外装部とは別体の穿刺機能を有する部材を使用することなく、外装部によって組織の穿刺を行うことができる。
【0016】
前記外装部とは別体の穿刺部を有してもよい。これにより、医療デバイスは、穿刺部を外装部とは独立して操作可能であるため、組織の穿刺における操作性が向上する。
【0017】
前記遮光部は、前記出射部から出射された前記励起光を吸収して、前記励起光の前記受光部への直接入射を抑制する吸光部を有してもよい。これにより、医療デバイスは、励起光の受光部への直接入射を吸光部によって抑制できるため、受光部により蛍光を高い感度で検出できる。
【0018】
前記遮光部は、前記出射部から出射された前記励起光を反射して、前記励起光の前記受光部への直接入射を抑制する反射部を有してもよい。これにより、医療デバイスは、励起光の受光部への直接入射を反射部によって抑制できるため、受光部により蛍光を高い感度で検出できる。
【0019】
上記目的を達成する本発明に係る医療システムは、生体内へ励起光を照射して前記励起光により励起された光感受性物質が発する蛍光を検出する医療システムであって、基端から先端へ延びる軸心へ長尺なシャフトを有する医療デバイスと、前記医療デバイスに接続される光源と、を有し、前記シャフトは、前記励起光を出射する出射部と、前記蛍光を受光する受光部であり、前記出射部の先端と前記受光部の先端とが前記シャフトの軸方向において異なる位置に配置される前記受光部と、前記出射部および前記受光部のうち、基端側に配置されたものから前記軸心に沿って先端側へ延びる直線を横切る位置、かつ前記出射部および前記受光部の間に配置される遮光部と、を有することを特徴とする。
【0020】
上記のように構成した医療システムは、遮光部によって出射部から出射された励起光が受光部へ直接的に入射することを抑制できるため、出射部と受光部を同じシャフトに近接して配置可能である。このため、本医療システムは、出射部および受光部を備えるシャフトを生体内へ挿入することで、狭い生体内での励起光の出射と蛍光の受光を両立しつつ、シャフトに配置される遮光部により、蛍光を高い感度で検出できる。
【0021】
前記受光部は、前記出射部の先端よりも先端側に配置されてもよい。これにより、医療システムは、蛍光を受光可能な位置まで受光部を効果的に到達させることができる。
【0022】
前記医療システムは、前記受光部により受光した前記蛍光を電気信号へ変換する光センサを有してもよい。これにより、医療システムは、蛍光の情報を電気信号に変換できるため、蛍光の情報の送受信や演算処理を容易にすることができる。
【0023】
前記医療システムは、前記光センサで取得した情報を表示する表示デバイスを有してもよい。これにより、医療システムは、術者等が視覚で理解できるように、光センサで取得した情報を表示デバイスに表示させることができる。
【0024】
前記医療システムは、前記医療デバイスを挿入可能な光透過性を有する穿刺部を有してもよい。これにより、医療システムは、穿刺部を介して、出射部から励起光を照射したり、受光部により蛍光を受光したりすることができる。
【0025】
前記医療システムは、前記出射部および前記受光部を覆う光透過性を有する外装部を有してもよい。これにより、医療システムは、出射部および受光部を覆う外装部を介して、出射部から励起光を照射したり、受光部により蛍光を受光したりすることができる。また、医療システムは、出射部および受光部を、外装部によって保護することができる。
【0026】
前記外装部は、先端に穿刺機能を有してもよい。これにより、医療システムは、外装部とは別体の穿刺機能を有する部材を使用することなく、外装部によって組織の穿刺を行うことができる。
【0027】
前記外装部とは別体の穿刺部を有してもよい。これにより、医療システムは、穿刺部を外装部とは独立して操作可能であるため、組織の穿刺における操作性が向上する。
【0028】
上記目的を達成する本発明に係る診断および治療方法は、生体内へ励起光を照射して前記励起光により励起された光感受性物質が発する蛍光を検出する診断および治療方法であって、光感受性物質を体内に投与するステップと、前記投与後に、基端から先端へ延びる軸心を備えた長尺なシャフトを有し、前記シャフトが、前記励起光を出射する出射部と、前記蛍光を受光する受光部であり、前記出射部の先端と前記受光部の先端とが前記シャフトの軸方向において異なる位置に配置される前記受光部と、前記出射部および前記受光部のうち、基端側に配置されたものから前記軸心に沿って先端側へ延びる直線を横切る位置、かつ前記出射部および前記受光部の間に配置される遮光部と、を有する医療デバイスの前記シャフトを生体内に挿入するステップと、前記生体内の前記出射部より前記光感受性物質へ前記励起光を照射するステップと、前記励起光の照射を行いながら、前記励起光を受けて前記光感受性物質が発する蛍光を前記生体内の前記受光部により受光するステップと、を有することを特徴とする。
【0029】
上記のように構成した診断および治療方法は、遮光部によって出射部から出射された励起光が受光部へ直接的に入射することを抑制できるため、出射部と受光部を同じシャフトに近接して配置可能である。このため、本診断および治療方法は、出射部および受光部を備えるシャフトを生体内へ挿入することで、狭い生体内での励起光の出射と蛍光の受光を両立しつつ、シャフトに配置される遮光部により、蛍光を高い感度で検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】実施形態に係る医療システムを示す平面図である。
図2】外装部を透過して示す医療システムの先端部の平面図である。
図3】穿刺部および外装部を透過して示す医療システムの先端部の平面図である。
図4】外装部を透過して示す医療システムの第1変形例の先端部の平面図である。
図5】外装部を透過して示す医療システムの第2変形例の先端部の平面図である。
図6】外装部を透過して示す医療システムの第3変形例の先端部の平面図である。
図7】外装部を透過して示す医療システムの第4変形例の先端部の平面図である。
図8】外装部を透過して示す医療システムの第5変形例の先端部の平面図である。
図9】子宮頸管に医療システムを挿入した状態を示す概略図である。
図10】子宮頸管に挿入された出射部から出射される励起光を説明するための医療システムの先端部を示す概略図である。
図11】子宮頸管に挿入された受光部により受光する蛍光を説明するための医療システムの先端部を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法は、説明の都合上、誇張されて実際の寸法とは異なる場合がある。また、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。本明細書において、デバイスの生体管腔に挿入する側を「先端側」、操作する側を「基端側」と称することとする。
【0032】
本実施形態に係る医療システム1は、子宮頸部の腫瘍の治療に使用される。本医療システム1は、標的細胞の腫瘍に集積した光感受性物質に、光感受性物質の励起光である近赤外線を照射して、標的細胞を破壊する光免疫療法に用いられる。標的細胞は、がん細胞や、前がん病変の細胞等の腫瘍細胞である。この治療方法では、腫瘍細胞の表面にある特有の抗原のみに特異的に結合する抗体と、その抗体に結合された光感受性物質とを、薬剤として使用する。抗体は、特に限定されないが、例えば、パニツムバブ、トラスツズマブ、HuJ591、ペルツズマブ、ラパチニブ、パルボシクリブ、オラパリブ等である。光感受性物質は、例えば、約700nmの波長の近赤外線に反応する物質(IR700)である親水性フタロシアニンであるが、これに限定されない。IR700は、約660~740nmの波長の近赤外線を受けると、水溶性を担保している官能基のリガンドが切れ、水溶性から疎水性へ構造変化を生じる。この構造変化によって膜たんぱく質が引き抜かれ、細胞膜に穴が開いて細胞内に水が入り込むことで、腫瘍細胞を破裂させて破壊することができる。また、IR700は、近赤外線を受けて励起され、励起波長と異なる波長の蛍光を発する。例えば、IR700は、689nmの波長の近赤外線を受けて励起されると、704nmの波長の蛍光を発する。IR700は、光反応により蛍光を発しつつ構造変化し、腫瘍細胞を破壊して薬剤としての役割を果たすと、蛍光を発しなくなる。
【0033】
図1に示す医療システム1は、子宮頸部Uの腫瘍(例えば、子宮頸がん)を治療するために、図6に示すように、膣Vを経由して子宮頸部Uの子宮頸管CCに挿入される。
【0034】
医療システム1は、図1および2に示すように、生体内へ挿入される医療デバイス10と、医療デバイス10が接続される光源70と、医療デバイス10が接続される光検出デバイス80と、光検出デバイス80が接続される表示デバイス90とを有している。
【0035】
医療デバイス10は、基端から先端へ延びる軸心Xを備えた長尺なシャフト11と、シャフト11の基端部に連結された操作部60とを有している。シャフト11は、光感受性物質の励起光を照射する光照射部30と、励起された光感受性物質が発する蛍光を検出するために受光する蛍光検出部40と、励起光を遮光する遮光部50とを有している。シャフト11は、さらに、長尺な管状の外装部20を有しても良い。
【0036】
外装部20は、操作部60から先端方向へ延在する管状体である。外装部20は、光照射部30、蛍光検出部40および遮光部50を内腔に収容している。外装部20は、遮光部50に隙間なく密着して配置されると好ましい。これにより光照射部30から出射された励起光が蛍光検出部40へ直接入ることを抑制できる。外装部20の基端部は、操作部60に固定されている。外装部20の内腔は、外装部20の先端にて閉じて密封されている。外装部20の内腔は、外装部20の基端にて開いており、光照射部30および蛍光検出部40を受け入れ可能となっている。外装部20は、直線状に延在する円管であるが、曲がっていてもよく、円管でなくてもよい。また、外装部20は、光照射部30、蛍光検出部40および遮光部50を、シャフト11の軸心Xに沿って移動可能に収容してもよい。
【0037】
外装部20は、少なくとも先端部に、励起光および蛍光を透過可能な光透過部21を有している。光透過部21は、外装部20の少なくとも先端部の所定範囲に配置される。光透過部21の少なくとも一部は、外子宮口Oから子宮頸管CCへ挿入される部位である(図6を参照)。光透過部21は、光照射部30が発する波長の励起光および光感受性物質が発する波長の蛍光を透過できる光透過性を備えた透明または半透明の材料により形成されている。外装部20の光透過部21よりも基端側の部位は、透明であっても、透明でなくてもよい。外装部20の全体が、光透過部21であってもよい。
【0038】
外装部20は、術者が操作部60を把持して目的の位置まで押し込むことができるように、ある程度の剛性を有することが好ましい。光透過部21の構成材料は、特に限定されないが、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン等に代表される樹脂、ガラス等である。外装部20の材料は弾性を有し、子宮頸管CCに挿入された後、子宮頸管CCに沿ってたわみながら変形することができる物性であることがより好ましい。これにより子宮頸管形状の個体差へ対応することができ、子宮頸管内面への負担を軽減すると共に子宮頸管内面への密着性をより高めることができる。
【0039】
外装部20の光透過部21よりも基端側の部位は、光透過部21と同じ材料により形成されてもよいが、異なる材料により形成されてもよい。この場合、外装部20の光透過部21よりも基端側の部位は、励起光および蛍光を透過できない材料により形成されてもよく、例えばステンレス鋼、アルミニウム、チタン合金、錫、マグネシウム合金等に代表される金属、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミド、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリイミド等に代表される樹脂等により形成される。
【0040】
シャフト11は、図3に示すように、外装部20とは別体の穿刺部22を有してもよい。穿刺部22は管状であり、光照射部30、蛍光検出部40および遮光部50を覆う外装部20を、シャフト11の軸心Xに沿って移動可能に収容できる。なお、外装部20は、図4に示す第1変形例のように、先端に、鋭利な穿刺部22を有してもよい。また、シャフト11は、外装部20を有さなくてもよい。シャフト11に外装部20がない場合、蛍光検出部40の先端が斜めに切断されて穿刺機能を有してもよい。
【0041】
光照射部30は、図2に示すように、長尺な照射用光導波路31と、照射用光導波路31の先端側に配置されて光を出射する出射部32とを有している。光照射部30および蛍光検出部40は、外装部20の内腔を、シャフト11の軸心Xに沿って移動不能であるが、移動可能であってもよい。また、図5に示す第2変形例のように、光照射部30は、蛍光検出部40の外周を囲むように周方向に並ぶ複数の照射用光導波路31を有してもよい。そして、出射部32は、複数の照射用光導波路31の先端に形成される複数の出射面33により形成される。この場合、遮光部50は、蛍光検出部40の外表面の全体を囲むようにリング状に形成されることが好ましい。なお、複数の照射用光導波路31は、蛍光検出部40の外周の一部のみ(360度未満の範囲)を囲むように周方向に並ぶ複数の照射用光導波路31を有してもよい。この場合、遮光部50は、蛍光検出部40の外表面の360度未満の範囲を囲むように形成されてもよい。
【0042】
照射用光導波路31は、光を伝播する長尺な部材である。照射用光導波路31は、例えば1本の光ファイバにより形成される。光ファイバの材質として例えば石英ガラスの様な硬いものが選択されると、蛍光検出部40が穿刺機能を有することが可能である。なお、照射用光導波路31は、複数本の光ファイバにより形成されてもよい。照射用光導波路31の基端部は、図1に示すように、光を出力する光源70に接続可能である。照射用光導波路31は、光源70から近赤外線を受け、近赤外線を出射部32へ伝播することができる。なお、光照射部30は、光ファイバ以外の光導波路により形成されてもよい。
【0043】
出射部32は、図2に示すように、光を出射する出射面33を有する。出射面33は、例えば、照射用光導波路31を構成する光ファイバの先端側の断端である。出射面33は、広い面積を確保するために、シャフト11の軸心Xと垂直な側方向Yへ向く法線成分を有する平面(軸心Xと垂直な面に対して90度未満の角度で傾斜する平面)であると好ましい。これにより、出射面33は、軸方向Xと垂直な面である場合よりも広い面積を備えることができ、励起光を効果的に出射できる。なお、出射面33は、軸心Xと垂直であってもよい。出射面33の法線成分が向く側方向Yと、後述する受光部42の受光面43の法線成分が向く側方向Yは、ほぼ反対の向きであり、例えば軸心Xを中心として30度~60度の角度差を有することが好ましい。これにより、出射面33から出射された励起光が受光面43へ直接入ることを抑制できる。そして、出射面33および受光面43が、軸心Xと垂直な面に対して90度未満の角度で傾斜する平面であるとより好ましい。または、図6に示す第3変形例のように、出射部32は、照射用光導波路31を構成する光ファイバの先端側の断端に接続された散乱体であり、出射面33は、散乱体に形成されてもよい。散乱体の形状は、特に限定されないが、例えば半球状である。出射部32は、光ファイバの切断された断端に配置されるミラーおよび/またはレンズを構成に備えてもよい。出射部32は、照射用光導波路31から伝播される光を、広い範囲へ出射可能である。なお、出射部32は、照射用光導波路31から伝播される光を、外装部20の軸方向X(または照射用光導波路31の軸方向X)と垂直な側方向Yへ照射可能である。なお、光照射部30は、側方向Y以外の方向へ照射可能であってよい。出射部32は、電力により光を発するLED等であってもよい。
【0044】
蛍光検出部40は、図2に示すように、長尺な検出用光導波路41と、検出用光導波路41の先端側に配置された受光部42とを有している。
【0045】
検出用光導波路41は、光を伝播する長尺な部材である。検出用光導波路41は、例えば1本の光ファイバにより形成される。なお、検出用光導波路41は、複数本の光ファイバにより形成されてもよい。検出用光導波路41は、照射用光導波路31と略平行となるように照射用光導波路31に隣接して配置される。検出用光導波路41の先端は、受光部42に連結され、検出用光導波路41の基端部は、光を受けて電気信号に変換し、情報を表示デバイス90へ出力させるための演算を行う光検出デバイス80に接続可能である。
【0046】
受光部42は、受光した蛍光を検出用光導波路41へ伝播させることが可能な部材である。受光部42は、光を受光する受光面43を有する。受光面43は、例えば、検出用光導波路41を構成する光ファイバの先端側の断端である。受光面43は、広い面積を確保するために、シャフト11の軸心Xと垂直な側方向Yへ向く法線成分を有する平面(軸心Xと垂直な面に対して90度未満の角度で傾斜する平面)である。これにより、受光面43は、軸方向Xと垂直な面である場合よりも広い面積を備えることができ、蛍光を効果的に受光できる。なお、受光面43は、軸心Xと垂直であってもよい。または、受光部42は、検出用光導波路41の先端側の断端に接続される散乱体であってもよい。散乱体の形状は、例えば半球状であるが、形状は限定されない。蛍光を受けた散乱体は、検出用光導波路41の断端へ蛍光を伝播させることができる。また、受光部42は、ミラーおよび/またはレンズを構成に備えてもよい。受光部42は、光を電気信号に変換するセンサであってもよい。この場合、蛍光検出部40は、受光部42の基端側に、電子信号を送信可能な導線を有する。
【0047】
受光面43の面積は、出射面33の面積よりも大きいことが好ましい。出射部32から出射される励起光のエネルギよりも、励起光により励起された物質が発する蛍光のエネルギの方が小さいことから、蛍光を効果的に受光することが好ましいためである。なお、受光面43の面積は、出射面33の面積以下であってもよい。受光部42(受光面43)は、出射部32(出射面33)よりも先端側に配置される。出射部32から出射される励起光よりもエネルギの小さい蛍光を、受光部42で効果的に受光するために、受光部42を、励起光を照射されて蛍光を発する腫瘍細胞Cに近づけることが好ましいためである。
【0048】
遮光部50は、出射部32から出射された励起光が、受光部42へ直接入ることを防止するとともに、出射部32から出射されて外装部20や生体組織で反射した励起光が受光部42へ入ることを抑制する部材である。遮光部50は、出射部32の先端側に配置されるとともに、受光部42の基端側に配置される。すなわち、遮光部50は、シャフト11の軸方向において、出射部32および受光部42の間に配置される。さらに、遮光部50は、出射部32から軸心Xに沿って先端側へ延びる直線Lを横切る位置に配置される。遮光部50は、直線Lと垂直に交差してもよく、または直線Lと垂直に交差しなくてもよい。すなわち、遮光部50は、軸心Xと垂直な面に対して平行であってもよく、または傾斜してもよい。遮光部50は、光を吸収する吸光部51を有することが望ましい。なお、遮光部50は、光を遮ることができれば、光を吸収する機能を有さなくてもよい。吸光部51は、例えば黒鉛、四酸化三鉄、または銅・クロム・亜鉛複合酸化物等により形成される。吸光部51は、全体が同一の材料により形成された部材であってもよく、またはコーティングにより部材の表面のみに形成されてもよい。
【0049】
遮光部50は、図7に示す第4変形例のように、吸光部51と、光を反射する反射部52とを備えてもよい。反射部52は、出射部32に近い側(基端側)に配置され、吸光部51は、受光部42に近い側(先端側)に配置される。すなわち、反射部52は、受光部42の基端側に配置される。反射部52は、例えばミラーや反射するコーティングにより形成される。反射部52は、光を反射可能な材料により形成され、例えば酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、銀、またはアルミニウム等により形成される。反射部52は、全体が同一の材料により形成された部材であってもよく、またはコーティングにより部材の表面のみに形成されてもよい。遮光部50は、シャフト11の軸心Xと垂直な側方向Yへ向く法線成分を有する外縁部53を有し、外縁部53は、光を吸収する吸光部51および/または光を反射する反射部52であってもよい。
【0050】
遮光部50は、図2~7に示すように、蛍光検出部40の外表面の全周を囲むように配置される。すなわち、遮光部50は、出射部32(出射面33)の全体の先端側を、出射部32から離れた位置で覆っている。なお、遮光部50は、出射部32から軸心Xに沿って先端側へ延びる直線Lを横切る位置に配置されるのであれば、蛍光検出部40の外周の一部にのみ隣接して配置されてもよい。
【0051】
また、図8に示す第5変形例のように、受光部42が出射部32よりも基端側に配置されてもよい。遮光部50は、シャフト11の軸方向において、出射部32および受光部42の間に配置される。さらに、遮光部50は、受光部42から軸心Xに沿って先端側へ延びる直線Lを横切る位置に配置される。
【0052】
操作部60は、図1に示すように、術者が把持して操作する部位である。操作部60は、外装部20の基端部が固定されている。操作部60からは、検出用光導波路41および照射用光導波路31が導出されている。なお、操作部60の構成は、特に限定されない。
【0053】
光源70は、光照射部30の照射用光導波路31へ、任意の波長の光を任意の強度(パワー)やエネルギで出力できる。光源70は、例えば660~740nmの波長の近赤外線である励起光を、例えば1mW~5Wの強度(パワー)で、例えば1~50Jcm-2のエネルギで光を照射できるように、照射用光導波路31へ出力を行う。励起光は、定量的に照射されてもよく、または間歇的にパルス照射されてもよい。
【0054】
光検出デバイス80は、検出用光導波路41の基端部が接続されて、蛍光検出部40の受光部42が受光した蛍光を受ける。光検出デバイス80は、受けた光を電気信号に変換する光センサ81と、所定の演算処理を行い、表示デバイス90に画像情報として表示させることができる演算部82とを有している。演算部82は、例えば記憶回路および演算回路を備えたコンピュータである。光検出デバイス80は、検出した光から励起光を取り除き蛍光を残すフィルタを有してもよい。フィルタは、例えば、蛍光の波長の光を残すバントパスフィルタや、パルス照射される励起光を特定して取り除くフィルタである。光センサ81は、受光部42に配置されてもよい。この場合、蛍光伝搬部の代わりに、受光部42にて変換された電気信号を光検出デバイス80へ送信するためのケーブルが配置される。
【0055】
表示デバイス90は、視覚で認識可能な画像を表示可能なモニターである。表示デバイス90は、光検出デバイス80から画像データを含む信号を受信できるように、光検出デバイス80に接続されている。表示デバイス90に表示される画像は、光検出デバイス80により取得される画像情報または文字情報等である。表示デバイス90は、光検出デバイス80から受け取るデータに基づいて、画像を表示する。
【0056】
次に、本実施形態に係る医療デバイス10を用いた治療方法を説明する。
始めに、光感受性物質を、体内に投与する。光感受性物質を体内に投与する方法は、光感受性物質を腫瘍細胞Cまで到達させることができるのであれば特に限定されないが、例えば血管内投与であり、本実施形態では静脈内投与である。静脈内投与から約12~36時間経過後に、術者は、図9に示すように、医療デバイス10の外装部20を、膣口から膣V内へ挿入する。術者は、外装部20の先端部を目視で確認しつつ、外子宮口Oから子宮頸管CCへ挿入する。
【0057】
次に、術者は、出射部32および受光部42が腫瘍細胞Cの近傍に配置されるように、外装部20を位置決めする。出射部32および受光部42が、外装部20に対して移動可能である場合には、外装部20を所定の位置に配置した後に、出射部32および受光部42を外装部20の内部で移動させて、望ましい位置に配置できる。この後、術者は、光源70を操作し、光照射部30へ励起光を供給する。これにより、図10に示すように、外装部20の内部の出射部32は、子宮頸部Uに位置する腫瘍細胞Cへ、励起光を効果的に照射できる。出射部32からの励起光の照射方向は、外装部20の軸心Xと垂直な側方向Yを含んでいる。このため、出射部32は、子宮頸管CCから子宮頸部Uに位置する腫瘍細胞Cへ、励起光を効果的に照射できる。励起光は、出射部32から直接的に、または外装部20や生体組織で反射されて間接的に、腫瘍細胞Cに吸着した光感受性物質に到達できる。術者は、外装部20の内部で出射部32を軸心Xに沿って移動させつつ、励起光を照射させてもよい。
【0058】
励起光を照射すると、子宮頸部Uの腫瘍細胞Cに吸着した光感受性物質に、励起光が到達する。これにより、励起光により励起された光感受性物質は蛍光を発する。一定以上のエネルギの励起光が照射されると、光感受性物質に化学変化が生じ、さらに光感受性物質の構造変化が起こることで細胞膜に穴が開く。これにより、励起光を照射された腫瘍細胞Cが破壊される。
【0059】
出射部32の先端側には、遮光部50が配置されているため、出射部32から出射された励起光は、遮光部50により、受光部42へ直接的に入ることを抑制される。このため、狭い生体内に挿入される出射部32および受光部42が、同じシャフト11の近い位置に配置されても、受光部42は、出射部32により出射される励起光に妨げられることなく、蛍光を高い感度で検出できる。遮光部50が吸光部51を備える場合には、遮光部50は、励起光を吸収することで、出射部32により出射される励起光が受光部42へ到達することを効果的に抑制できる。
【0060】
術者は、出射部32から励起光を照射しつつ、図11に示すように、励起光により励起された光感受性物質が発する蛍光を受光部42で受光し、光検出デバイス80(図1を参照)により検出する。受光部42は、側方向Yからの蛍光を検出できるため、子宮頸部Uに位置する腫瘍細胞Cが発する蛍光を、子宮頸管CCから効果的に検出できる。そして、術者は、出射部32から励起光を照射しつつ、出射部32および受光部42を軸心Xに沿って移動させながら蛍光を受光してもよい。術者は、表示デバイス90に表示される画像から、腫瘍細胞Cに吸着した光感受性物質が励起されて発する蛍光および消光を観察することで、腫瘍細胞Cの存在と、その破壊の程度を特定(診断)できる。
【0061】
遮光部50が、図7に示す第4変形例のように、反射部52および吸光部51を有する場合には、出射部32から出射された励起光は、遮光部50の基端側に配置される反射部52により反射されるため、広い範囲へ効率よく伝播することができる。また、遮光部50の先端側に、吸光部51が配置されるため、出射部32から出射された励起光が直接的に、または外装部20や生体組織によって反射されて間接的に、受光部42へ入ることが抑制される。これにより、医療システム1は、受光部42により蛍光を高い感度で検出できる。
【0062】
図3に示すように、外装部20と別体の穿刺部22が配置される場合や、図4に示す第1変形例のように、外装部20の先端に穿刺部22が配置される場合、術者は、シャフト11を子宮頸部Uの子宮頸管CCに挿入するのではなく、穿刺部22を子宮頸部Uに突き刺すことで、出射部32および受光部42を、腫瘍細胞Cの近くに到達させることができる。そして、受光部42が出射部32よりも先端側にあり、穿刺部22の近くに位置するため、穿刺する深さを抑えつつ、蛍光を受光可能な位置まで受光部42を効果的に到達させることができる。
【0063】
また、図6に示す第3変形例のように、出射面33が散乱体に形成される場合、照射用光導波路31から出射部32へ伝播する励起光を、散乱体によって散乱させて、生体内の広い範囲へ照射できる。
【0064】
そして、本医療システム1は、励起光を照射することによる腫瘍細胞Cの破壊と、蛍光を検出することによる病変部位の診断を、同時に行うことができる。なお、診断とは、腫瘍細胞Cのある病変範囲の特定や、腫瘍細胞Cの破壊の確認(消滅や減少の確認)を行うことを含んでいる。
【0065】
術者は、表示デバイス90により蛍光が消失したと判断する場合や、所定時間が経過したと判断する場合に、腫瘍細胞Cの破壊が十分に行われたと判断し、励起光の照射を停止する。蛍光が消失したと判断する場合とは、表示デバイス90により蛍光が消失したことを確認した場合や、蛍光が予め設定されていた閾値以下(または閾値未満)へ減少した場合が挙げられる。腫瘍細胞Cの破壊が十分に行われたか否かの判断は、術者によって行われてもよいが、光検出デバイス80等に設けられるプログラム等により自動的に行われてもよい。光検出デバイス80は、判断の結果を表示デバイス90に表示させることができてもよい。
【0066】
以上のように、本発明の態様(1)は、図2に示すように、生体内へ励起光を照射して励起光により励起された光感受性物質が発する蛍光を検出する医療デバイス10であって、基端から先端へ延びる軸心Xを備えた長尺なシャフト11を有し、シャフト11は、励起光を出射する出射部32と、蛍光を受光する受光部42であり、出射部32の先端と受光部42の先端とがシャフト11の軸方向において異なる位置に配置される受光部42と、出射部32および受光部42のうち、基端側に配置されたものから軸心Xに沿って先端側へ延びる直線Lを横切る位置、かつ出射部32および受光部42の間に配置される遮光部50と、を有する。
【0067】
上記のように構成した本発明の態様(1)では、医療デバイス10は、遮光部50によって出射部32から出射された励起光が受光部42へ直接的に入射することを抑制できるため、出射部32と受光部42を同じシャフト11に近接して配置可能である。このため、本医療デバイス10は、出射部32および受光部42を備えるシャフト11を生体内へ挿入することで、狭い生体内での励起光の出射と蛍光の受光を両立しつつ、シャフト11に配置される遮光部50により、蛍光を高い感度で検出できる。また、本医療デバイス10は、出射部32と受光部42を近接して配置可能であるため、シャフト11を細径化でき、低侵襲にシャフト11を生体内へ送達できる。また、本医療デバイス10は、シャフト11の細径化と広範囲への励起光の照射を両立できる。また、本医療デバイス10は、シャフト11の細径化と蛍光の高い検出感度を両立できる。
【0068】
本発明の態様(2)は、前記態様(1)に記載の医療デバイス10であって、受光部42は、出射部32の先端よりも先端側に配置されることを特徴とする。これにより、医療デバイス10は、蛍光を受光可能な位置まで受光部42を効果的に到達させることができる。
【0069】
本発明の態様(3)は、前記態様(1)または(2)に記載の医療デバイス10であって、出射部32の光を出射する出射面33は、シャフト11の軸心Xと垂直な側方向Yへ向く法線成分を有する(図2、3および5を参照)、または光を散乱させる散乱体に形成される(図4を参照)ことを特徴とする。これにより、医療デバイス10は、出射面33から出射する励起光を、広範囲へ照射できる。
【0070】
本発明の態様(4)は、前記態様(1)~(3)のいずれか1つに記載の医療デバイス10であって、遮光部50は、先端側を向いて光を吸収する吸光部51と、基端側を向いて光を反射する反射部52と、を有することを特徴とする(図5を参照)。これにより、医療デバイス10は、出射部32から出射される励起光を、出射部32が配置される側を向く反射部52により反射させることで、励起光を効率よく広範囲へ照射できる。さらに、医療デバイス10は、組織や医療デバイス10の一部で反射した励起光を、受光部42が配置される側を向く吸光部51により吸収することで、励起光が受光部42へ入射することを抑制し、受光部42により蛍光を高い感度で検出できる。
【0071】
本発明の態様(5)は、前記態様(1)~(4)のいずれか1つに記載の医療デバイス10であって、遮光部50は、シャフト11の軸心Xと垂直な側方向Yへ向く法線成分を有する外縁部53を有し、外縁部53は、光を吸収する吸光部51および/または光を反射する反射部52であることを特徴とする。これにより、医療デバイス10は、励起光を外縁部53の反射部52により反射させることで、励起光を効率よく広範囲へ照射できる。さらに、医療デバイス10は、励起光を、外縁部53の吸光部51により吸収することで、励起光が受光部42へ入射することを抑制し、受光部42により蛍光を高い感度で検出できる。
【0072】
本発明の態様(6)は、前記態様(1)~(5)のいずれか1つに記載の医療デバイス10であって、受光部42の光を受光する受光面43の面積は、図2~5に示すように、出射部32の光を出射する出射面33の面積よりも大きいことを特徴とする。これにより、医療デバイス10は、励起光よりもエネルギの小さい蛍光を、出射面33よりも大きな面積を有する受光面43によって効果的に受光できる。
【0073】
本発明の態様(7)は、前記態様(1)~(6)のいずれか1つに記載の医療デバイス10であって、シャフト11は、出射部32および受光部42を覆う光透過性を有する外装部20を有し、吸光部51は、出射部32から直接的に出射された励起光、外装部20で反射した励起光、または、生体内で反射した励起光の少なくとも1つを吸収可能であることを特徴とする。これにより、医療デバイス10は、吸光部51によって励起光の一部を吸収することで、励起光が受光部42へ入射することを抑制し、受光部42により蛍光を高い感度で検出できる。
【0074】
本発明の態様(8)は、前記態様(7)に記載の医療デバイス10であって、外装部20は、先端に穿刺機能を有することを特徴とする。これにより、医療デバイス10は、外装部20とは別体の穿刺機能を有する部材を使用することなく、外装部20によって組織の穿刺を行うことができる。
【0075】
本発明の態様(9)は、前記態様(7)に記載の医療デバイス10であって、外装部20とは別体の穿刺部22を有することを特徴とする。これにより、医療デバイス10は、穿刺部22を外装部20とは独立して操作可能であるため、組織の穿刺における操作性が向上する。
【0076】
本発明の態様(10)は、前記態様(1)~(9)のいずれか1つに記載の医療デバイス10であって、遮光部50は、図5に示すように、出射部32から出射された励起光を吸収して、励起光の受光部42への直接入射を抑制する吸光部51を有することを特徴とする。これにより、医療デバイス10は、励起光の受光部42への直接入射を吸光部51によって抑制できるため、受光部42により蛍光を高い感度で検出できる。
【0077】
本発明の態様(11)は、前記態様(1)~(10)のいずれか1つに記載の医療デバイス10であって、遮光部50は、出射部32から出射された励起光を反射して、励起光の受光部42への直接入射を抑制する反射部52を有することを特徴とする。これにより、医療デバイス10は、励起光の受光部42への直接入射を反射部52によって抑制できるため、受光部42により蛍光を高い感度で検出できる。
【0078】
本発明の態様(12)は、図1および2に示すように、生体内へ励起光を照射して励起光により励起された光感受性物質が発する蛍光を検出する医療システム1であって、基端から先端へ延びる軸心Xへ長尺なシャフト11を有する医療デバイス10と、医療デバイス10に接続される光源70と、を有し、シャフト11は、励起光を出射する出射部32と、蛍光を受光する受光部42であり、出射部32の先端と受光部42の先端とがシャフトの軸方向において異なる位置に配置される受光部42と、出射部32および受光部42のうち、基端側に配置されたものから軸心Xに沿って先端側へ延びる直線Lを横切る位置、かつ出射部32および受光部42の間に配置される遮光部50と、を有することを特徴とする。
【0079】
上記のように構成した態様(12)の医療システム1は、遮光部50によって出射部32から出射された励起光が受光部42へ直接的に入射することを抑制できるため、出射部32と受光部42を同じシャフト11に近接して配置可能である。このため、本医療システム1は、出射部32および受光部42を備えるシャフト11を生体内へ挿入することで、狭い生体内での励起光の出射と蛍光の受光を両立しつつ、シャフト11に配置される遮光部50により、蛍光を高い感度で検出できる。また、本医療システム1は、出射部32と受光部42を近接して配置可能であるため、シャフト11を細径化でき、低侵襲にシャフト11を生体内へ送達できる。また、本医療システム1は、シャフト11の細径化と広範囲への励起光の照射を両立できる。また、本医療システム1は、シャフト11の細径化と蛍光の高い検出感度を両立できる。
【0080】
本発明の態様(13)は、前記態様(12)に記載の医療システム1であって、受光部42は、出射部32の先端よりも先端側に配置されることを特徴とする。これにより、医療システム1は、蛍光を受光可能な位置まで受光部42を効果的に到達させることができる。
【0081】
本発明の態様(14)は、前記態様(12)または(13)に記載の医療システム1であって、受光部42により受光した蛍光を電気信号へ変換する光センサ81を有することを特徴とする。これにより、医療システム1は、蛍光の情報を電気信号に変換できるため、蛍光の情報の送受信や演算処理を容易にすることができる。
【0082】
本発明の態様(15)は、前記態様(12)~(14)のいずれか1つに記載の医療システム1であって、光センサ81で取得した情報を表示する表示デバイス90を有することを特徴とする。これにより、医療システム1は、術者等が視覚で理解できるように、光センサ81で取得した情報を表示デバイス90に表示させることができる。
【0083】
本発明の態様(16)は、前記態様(12)~(15)のいずれか1つに記載の医療システム1であって、医療デバイス1を挿入可能な光透過性を有する穿刺部22を有することを特徴とする。これにより、医療システム1は、穿刺部22を介して、出射部32から励起光を照射したり、受光部42により蛍光を受光したりすることができる。また、医療システム1は、出射部32および受光部42を、穿刺部22によって保護することができる。
【0084】
本発明の態様(17)は、前記態様(12)~(16)のいずれか1つに記載の医療システム1であって、出射部32および受光部42を覆う光透過性を有する外装部20を有することを特徴とする。これにより、医療システム1は、出射部32および受光部42を覆う外装部20を介して、出射部32から励起光を照射したり、受光部42により蛍光を受光したりすることができる。また、医療システム1は、出射部32および受光部42を、外装部20によって保護することができる。
【0085】
本発明の態様(18)は、前記態様(17)に記載の医療システム1であって、外装部20は、先端に穿刺機能を有することを特徴とする。これにより、医療システム1は、外装部20とは別体の穿刺機能を有する部材を使用することなく、外装部20によって組織の穿刺を行うことができる。
【0086】
本発明の態様(19)は、前記態様(17)に記載の医療システム1であって、外装部20とは別体の穿刺部22を有することを特徴とする。これにより、医療システム1は、穿刺部22を外装部20とは独立して操作可能であるため、組織の穿刺における操作性が向上する。
【0087】
また、本発明の態様(20)は、図2に示すように、生体内へ励起光を照射して前記励起光により励起された光感受性物質が発する蛍光を検出する診断および治療方法であって、光感受性物質を体内に投与するステップと、投与後に、基端から先端へ延びる軸心Xを備えた長尺なシャフト11を有し、シャフト11が、励起光を出射する出射部32と、蛍光を受光する受光部42であり、出射部32の先端と受光部42の先端とがシャフトの軸方向において異なる位置に配置される受光部42と、出射部32および受光部42のうち、基端側に配置されたものから軸心Xに沿って先端側へ延びる直線Lを横切る位置、かつ出射部32および受光部42の間に配置される遮光部50と、を有する医療デバイス10のシャフト11を生体内に挿入するステップと、生体内の出射部32より光感受性物質へ励起光を照射するステップと、励起光の照射を行いながら、励起光を受けて光感受性物質が発する蛍光を生体内の受光部42により受光するステップと、を有することを特徴とする。
【0088】
上記のように構成した態様(20)の診断および治療方法は、遮光部50によって出射部32から出射された励起光が受光部42へ直接的に入射することを抑制できるため、出射部32と受光部42を同じシャフト11に近接して配置可能である。このため、本診断および治療方法は、出射部32および受光部42を備えるシャフト11を生体内へ挿入することで、狭い組織内での励起光の出射と蛍光の受光を両立しつつ、シャフト11に配置される遮光部50により、蛍光を高い感度で検出できる。
【0089】
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。したがって、実施形態に係る医療デバイス10は、子宮頸部U以外の治療に使用されてもよい。
【符号の説明】
【0090】
1 医療システム
10 医療デバイス
11 シャフト
20 外装部
21 光透過部
22 穿刺部
30 光照射部
31 照射用光導波路
32 出射部
33 出射面
40 蛍光検出部
41 検出用光導波路
42 受光部
43 受光面
50 遮光部
51 吸光部
52 反射部
53 外縁部
60 操作部
70 光源
80 光検出デバイス
81 光センサ
82 演算部
90 表示デバイス
C 腫瘍細胞
CC 子宮頸管
O 外子宮口
U 子宮頸部
V 膣
X 軸心
Y 側方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図11