(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176981
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】無人飛行体制御システム及び無人飛行体制御方法
(51)【国際特許分類】
B64C 13/20 20060101AFI20241212BHJP
B64U 10/13 20230101ALI20241212BHJP
G05D 1/00 20240101ALI20241212BHJP
【FI】
B64C13/20 Z
B64U10/13
G05D1/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095911
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】523078421
【氏名又は名称】株式会社山進
(74)【代理人】
【識別番号】100160831
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 元
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 進一
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA06
5H301AA10
5H301BB05
5H301CC04
5H301CC07
5H301CC10
5H301DD06
5H301DD17
5H301GG07
5H301GG17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】操縦引継を簡便に行う無人飛行体操縦システムの提供。
【解決手段】無人飛行体と遠隔操縦する操縦端末31と、操作指示により無人飛行体及び操縦端末31を制御する制御部とを有する無人飛行体制御システムで、操縦端末31は少なくとも2つの操縦端末31a、31bを有し、操縦端末31a、31bは、相互間での通知信号を送受信する通信部56と、通知信号を受信した際に受信表示を行う表示灯54、スピーカ59とを有し、制御部はスイッチ部58の送信指示に基づき第1の操縦端末31aの通信部56から第2の操縦端末31bへ引き継ぎを通知する通知信号を送信させ、第2の操縦端末31bの表示灯54、スピーカ59による受信表示を行い、第2の操縦端末31bの通信部56から第1の操縦端末31aへ受信確認の通知信号を送信させ、第2の操縦端末31bが無人飛行体の操縦を開始して遠隔操縦を引き継ぐ。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無人飛行体と、該無人飛行体を遠隔操縦する操縦端末と、操作指示に基づき前記無人飛行体及び前記操縦端末を制御する制御部と、を有する無人飛行体制御システムであって、
前記操縦端末は、少なくとも2つの操縦端末と、を有し、
前記操縦端末は、操縦端末相互間での通知信号を送受信する通知信号送受信手段と、
前記通知信号を受信した際に受信表示を行う受信表示手段と、を有し、
前記制御部は、送信指示に基づき第1の操縦端末の前記通知信号送受信手段から第2の操縦端末へ引き継ぎを通知する通知信号を送信させ、前記第2の操縦端末の前記受信表示手段により受信表示を行い、前記第2の操縦端末の前記通知信号送受信手段から前記第1の操縦端末へ受信確認の通知信号を送信させ、前記第2の操縦端末が前記無人飛行体の操縦を開始して遠隔操縦を引き継ぐ、無人飛行体制御システム。
【請求項2】
前記受信表示手段は、受信音を発生する受信音発生手段及び/又は点灯表示する点灯表示手段を有する請求項1に記載の無人飛行体制御システム。
【請求項3】
前記無人飛行体は、飛行経路の途中である所定位置の位置情報を取得する位置情報取得手段と、該位置情報取得手段により取得された位置情報を記憶する記憶手段と、を有し、
前記第1の操縦端末及び/又は前記第2の操縦端末は、前記無人飛行体の記憶手段に記憶された前記位置情報による所定位置を飛行経路として前記無人飛行体を遠隔操縦する所定位置飛行手段を有する請求項1に記載の無人飛行体制御システム。
【請求項4】
前記無人飛行体は、飛行経路の途中である所定位置の位置情報を取得する位置情報取得手段を有し、前記第1の操縦端末及び前記第2の操縦端末は、前記位置情報取得手段により取得された位置情報を記憶する記憶手段を有し、
前記第1の操縦端末及び/又は前記第2の操縦端末は、前記第1の操縦端末又は前記第2の操縦端末の記憶手段に記憶された前記位置情報による所定位置を飛行経路として前記無人飛行体を遠隔操縦する所定位置飛行手段を有する請求項1に記載の無人飛行体制御システム。
【請求項5】
前記第1の操縦端末及び前記第2の操縦端末は、前記位置情報取得手段に対して前記所定位置の位置情報を取得する取得指示を送信する位置情報取得指示手段を有する請求項3又は4に記載の無人飛行体制御システム。
【請求項6】
前記無人飛行体は、少なくとも4台の人工衛星からの電波を受信する第1GPS受信機と、1台の人工衛星からの電波を受信する第2GPS受信機を2個有し、前記第2GPS受信機は、前記無人飛行体の所定位置にそれぞれ設けられ、前記位置情報取得手段は、前記第1GPS受信機の計測値又は2個の前記第2GPS受信機の計測値及び前記無人飛行体に搭載されるセンサの計測値に基づいて前記位置情報を取得する請求項3乃至5の何れかに記載の無人飛行体制御システム。
【請求項7】
前記無人飛行体は、更に荷物の搭載時における無人飛行体の水平維持を確保する水平維持手段を有する請求項1乃至4の何れかに記載の無人飛行体制御システム。
【請求項8】
無人飛行体を遠隔操縦する無人飛行体制御方法であって、
前記無人飛行体を遠隔操縦する第1の操縦端末における送信指示に基づいて、前記第1の操縦端末から第2の操縦端末へ遠隔操縦の引き継ぎを通知する通知信号を送信するステップと、
前記通知信号の受信により前記第2の操縦端末において受信表示を行うステップと、
前記第2の操縦端末における送信指示に基づいて、前記第2の操縦端末から受信確認の通知信号を前記第1の操縦端末へ送信するステップと、
前記第2の操縦端末からの前記通知信号の受信により前記第1の操縦端末において受信表示を行うステップと、
前記受信表示がされた前記第1の操縦端末が前記無人飛行体の遠隔操縦を停止するステップと、
前記第1の操縦端末へ前記受信確認の通知信号を送信した前記第2の操縦端末が前記無人飛行体の操縦を開始して遠隔操縦を引き継ぐステップと、
を有する無人飛行体制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人飛行体の遠隔操縦の引き継ぎを行う無人飛行体制御システム及び無人飛行体制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コントローラ等の操縦端末により操縦される無人飛行体(ドローン)は、建築資材、工具等の比較的重量のある荷物運搬にも利用されており、スタート地点から目的地までの距離が長く、例えば全運行行程の視界の確保が難しい山岳、森林地帯の場合には、運行途中において他者に操縦の引き継ぎが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によれば、一の操縦端末からの飛行制御信号を受信しなくなったときに、無人飛行体をホバリング状態にし、その後他の操縦端末からの飛行制御信号の受信によりホバリングを解除して飛行状態に移行することで引き継ぎを行うとされているが、一の操縦端末と他の操縦端末を操縦する者同士の間で引き継ぎ時の連絡を別途行う必要がある。しかしながら、特許文献1では引き継ぎ時期の連絡については何ら言及されていない。円滑な引き継ぎを行うためには、操縦者相互間の簡便かつ迅速な連絡が必要とされる。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、無人飛行体の操縦の引継ぎに際して、操縦者同士の間で引き継ぎの連絡をより簡便に行うことができる無人飛行体操縦システム、無人飛行体制御方法の提供をすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る無人飛行体制御システムは、無人飛行体と、該無人飛行体を遠隔操縦する操縦端末と、操作指示に基づき前記無人飛行体及び前記操縦端末を制御する制御部と、を有する無人飛行体制御システムであって、前記操縦端末は、少なくとも2つの操縦端末と、を有し、前記操縦端末は、操縦端末相互間での通知信号を送受信する通知信号送受信手段と、前記通知信号を受信した際に受信表示を行う受信表示手段と、を有し、前記制御部は、送信指示に基づき第1の操縦端末の前記通知信号送受信手段から第2の操縦端末へ引き継ぎを通知する通知信号を送信させ、前記第2の操縦端末の前記受信表示手段により受信表示を行い、前記第2の操縦端末の前記通知信号送受信手段から前記第1の操縦端末へ受信確認の通知信号を送信させ、前記第2の操縦端末が前記無人飛行体の操縦を開始して遠隔操縦を引き継ぐ、構成である。
【0007】
このような構成によれば、無人飛行体を遠隔操縦している第1の操縦端末から第2の操縦端末へ遠隔操縦の引き継ぎをする際に、制御部は、第1の操縦端末におけるスイッチ操作等の送信指示に基づき、第1の操縦端末の通知信号送受信手段により引き継ぎ用の通知信号を送信させ、更に引き継ぎ用の通知信号を受信した第2の操縦端末においては送信指示に基づき受信確認の通知信号を通知信号送受信手段により第1の操縦端末に送信させる。第2の操縦端末からの通知信号を受信した第1の操縦端末は遠隔操縦を停止し、第2の操縦端末による無人飛行体の遠隔操縦が開始されて引き継ぎを完了できる。なお、通知信号の受信の際には、制御部は、受信表示手段により受信表示させるので、操縦者は通知信号の受信を容易に確認することができる。従来、携帯電話等の他の通信機器で引き継ぎの連絡をする場合には、通信機器の操作により操縦端末の操縦を中断するおそれがあるが、このように、引き継ぎの為に通知信号のやり取りを行うことで、無人飛行体の制御を中断することなく、更に無人飛行体に引き継ぎ用の装置構成等を要することなく、簡便かつ迅速に引き継ぎを行うことができる。なお、無人飛行体の目視を安定的にするために、無人飛行体を低速状態又はホバリング状態にした状態で引き継ぎを行うことが好ましい。
【0008】
本発明に係る無人飛行体制御システムにおいて、前記受信表示手段は、受信音を発生する受信音発生手段及び/又は点灯表示する点灯表示手段を有する構成とすることができる。
【0009】
このような構成によれば、通知信号を受信した際に受信音、点灯表示の少なくとも何れかが発生することで、引き継ぎを受ける操縦者への通知がより確実になる。更に引き継ぎの確実性を増すために、送信側にも送信音、点灯表示の少なくとも何れかを発生させることが好ましい。
【0010】
本発明に係る無人飛行体制御システムにおいて、前記無人飛行体は、飛行経路の途中である所定位置の位置情報を取得する位置情報取得手段と、該位置情報取得手段により取得された位置情報を記憶する記憶手段と、を有し、前記第1の操縦端末及び/又は前記第2の操縦端末は、前記無人飛行体の記憶手段に記憶された前記位置情報による所定位置を飛行経路として前記無人飛行体を遠隔操縦する所定位置飛行手段を有する構成とすることができる。
【0011】
このような構成によれば、無人飛行体の飛行経路の途中にある所定位置の位置情報を取得することで、荷物の繰り返し搬送による場合には、所定位置情報に基づいて遠隔操縦すれば、夜間又は視界の悪いときでも安定した飛行が可能で、操縦の引き継ぎも良好に行うことができる。2地点の往復を繰り返す飛行の場合には、視界が良く天候の安定したときに予め試験飛行により飛行経路の途中位置の位置情報を取得しておけば、実際の荷物搬送のときに位置情報を利用することで、確実な飛行と引き継ぎにより作業効率を上昇させることができる。位置情報を取得する所定地点は、一か所でも良いが、二か所以上であることが望ましい。位置情報を取得した所定位置が引き継ぎを行う双方の操縦者にとって視界が良好で地形的に安全な地点であれば、無人飛行体が所定位置に到達したときに確実に引き継ぎを行うことができる。
【0012】
本発明に係る無人飛行体制御システムにおいて、前記無人飛行体は、飛行経路の途中である所定位置の位置情報を取得する位置情報取得手段を有し、前記第1の操縦端末及び前記第2の操縦端末は、前記位置情報取得手段により取得された位置情報を記憶する記憶手段を有し、前記第1の操縦端末及び/又は前記第2の操縦端末は、前記第1の操縦端末又は前記第2の操縦端末の記憶手段に記憶された前記位置情報による所定位置を飛行経路として前記無人飛行体を遠隔操縦する所定位置飛行手段を有する構成とすることができる。
【0013】
このような構成によれば、無人飛行体の位置情報取得手段により取得した位置情報を第1の操縦端末及び第2の操縦端末の記憶手段に記憶させ、位置情報に基づいて遠隔操縦することで、安定した飛行と確実な引き継ぎを行うことができる。
【0014】
本発明に係る無人飛行体制御システムにおいて、前記第1の操縦端末及び前記第2の操縦端末は、前記位置情報取得手段に対して前記所定位置の位置情報を取得する取得指示を送信する位置情報取得指示手段を有する構成とすることができる。
【0015】
このような構成によれば、遠隔操縦された無人飛行体が所定地点に到達した際に、遠隔操縦している第1の操縦端末又は第2の操縦端末から位置情報取得指示手段により取得指示を送信すると、無人飛行体の位置情報取得手段は位置情報を取得する。飛行経路として最適な所定地点、又は引き継ぎの最適な所定地点としての選択をすることができる。
【0016】
本発明に係る無人飛行体制御システムにおいて、前記無人飛行体は、少なくとも4台の人工衛星からの電波を受信する第1GPS受信機と、1台の人工衛星からの電波を受信する第2GPS受信機を2個有し、前記第2GPS受信機は、前記無人飛行体の所定位置にそれぞれ設けられ、前記位置情報取得手段は、前記第1GPS受信機の計測値又は2個の前記第2GPS受信機の計測値及び前記無人飛行体に搭載されるセンサの計測値に基づいて前記位置情報を取得する構成とすることができる。
【0017】
このような構成によれば、4台の人工衛星からの電波を受信する第1GPS受信機の計測値で位置情報を取得する他に、無人飛行体の所定位置にそれぞれ設けられた、2台のGPS受信機がそれぞれ1台の人工衛星から受信した電波による計測値と、無人飛行体に搭載されたセンサの計測値とにより位置情報を取得することができる。センサには、高度を計測可能な気圧センサ、超音波センサ、更に無人飛行体の運動方向、傾き、方角等を計測できる加速度センサ、角速度センサ(ジャイロセンサ)、地磁気センサが含まれる。マルチコプタに搭載される各種センサを利用することで、位置情報の取得に際して簡便な構造の第2GPS受信機の使用を可能とするものである。
【0018】
本発明に係る無人飛行体制御システムにおいて、前記無人飛行体は、更に荷物の搭載時における無人飛行体の水平維持を確保する水平維持手段を有する構成とすることができる。
【0019】
このような構成によれば、荷物を搭載しての遠距離移動、高度のある地点への移動などの自然の影響を受け易い場合でも、水平維持を確保することができるので、無人飛行体での荷物輸送を安定的に行うことができ、途中での引き継ぎも確実に行うことができる。
【0020】
また本発明に係る無人飛行体制御方法は、無人飛行体を遠隔操縦する無人飛行体制御方法であって、前記無人飛行体を遠隔操縦する第1の操縦端末における送信指示に基づいて、前記第1の操縦端末から第2の操縦端末へ遠隔操縦の引き継ぎを通知する通知信号を送信するステップと、前記通知信号の受信により前記第2の操縦端末において受信表示を行うステップと、前記第2の操縦端末における送信指示に基づいて、前記第2の操縦端末から受信確認の通知信号を前記第1の操縦端末へ送信するステップと、前記第2の操縦端末からの前記通知信号の受信により前記第1の操縦端末において受信表示を行うステップと、前記受信表示がされた前記第1の操縦端末が前記無人飛行体の遠隔操縦を停止するステップと、前記第1の操縦端末へ前記受信確認の通知信号を送信した前記第2の操縦端末が前記無人飛行体の操縦を開始して遠隔操縦を引き継ぐステップと、を有する構成である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、無人飛行体の遠隔操縦を飛行途中での引き継ぎについて、操縦端末相互間で引き継ぎの通知を行うので、無人飛行体に引き継ぎ用の装置構成を設けることなく、簡便に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る無人飛行体であるマルチコプタの概略斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すマルチコプタのブロック構成図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る操縦端末のブロック構成図である。
【
図4】
図4は、マルチコプタの遠隔操縦の引き継ぎの手順を示すフロー図である。
【
図5】
図5は、
図1に示すマルチコプタの遠隔操縦の引き継ぎの概略説明図である。
【
図6】
図6は、
図1に示すマルチコプタの位置情報取得の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0024】
図1に示すように、無人飛行体であるマルチコプタ11(ドローン)は、電源や制御等の機器が搭載される本体部12と、本体部12から四方に突き出た、4個の棒状のアーム部13(13a、13b、13c、13d)(適宜「アーム部13」と略称する)と、アーム部13(13a、13b、13c、13d)の先端に設けられた4個の駆動ユニット15(15a、15b、15c、15d)(適宜「駆動ユニット15」と略称する)と、駆動ユニット15(15a、15b、15c、15d)の上端に設けられた4個の回転翼17(17a、17b、17c、17d)(適宜「回転翼17」と略称する)と、本体部12の底面に設けられた一対の脚部18a、18bと、を有する。本体部12の中央部分には第1GPS受信機28、本体部12の対称位置となる両端側には第2GPS受信機51、52がそれぞれ設けられている。
【0025】
駆動ユニット15(15a、15b、15c、15d)は、回転翼17(17a、17b、17c、17d)を回転駆動させるモータ21(21a、21b、21c、21d)(適宜「モータ21」と略称する)と、モータ21の回転を制御する駆動制御部22(22a、22c、22d)(適宜「駆動制御部22」と略称する)と、を有する(
図2参照)。回転翼17は、モータ21と回転シャフト(不図示)を介して接続される。モータ21には、例えばサーボモータが使用される。本実施形態では、回転翼17は4個であるが、これに限定されるものでなく、6個、8個等であってもよいが、安定した飛行を維持するために偶数個であることが求められる。隣り合う回転翼17同士が逆方向に回転することで、回転モーメントによる作用、反作用が打ち消され、マルチコプタ11の姿勢を安定させることができるからである。
【0026】
マルチコプタ11の中心部に位置する本体部12は、円筒形状の箱体であり、本体部12の底面に設けられた脚部18a、18bは略U字形状の部材から成り、マルチコプタ11が荷物を搬送する際にはその取付け部の役割を有する。マルチコプタ11の材質には、合成樹脂、アルミニウム等が利用されており、特に強度、剛性が求められる場合には、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics:炭素繊維強化プラスチック)が利用される。
【0027】
次に、マルチコプタ11の構成をブロック構成図である
図2を参照して説明する。マルチコプタ11の本体部12には、操縦端末31(31a、31b:
図3参照)と送受信する通信部25と、モータ21等に電力を供給する電源26(バッテリー)と、マルチコプタ11の周囲を撮影するカメラ27と、人工衛星から電波を受信して位置情報を計測する第1GPS受信機28と、第2GPS受信機51、52と、加速度センサ等の各種のセンサ類を格納するセンサ部30と、前記した通信部25、カメラ27、第1GPS受信機28、第2GPS受信機51、52、センサ部30等を制御する制御部33と、マルチコプタ11の各種機能の制御を行うためのプログラムや計測したデータ類等を記憶する不揮発性メモリの記憶部35(例えば、フラッシュメモリ等)と、が含まれる。駆動ユニット15に含まれる駆動制御部22は、制御部33による指示を受けてモータ21の回転数の増減、作動、停止等の制御を行うものである。制御部33により、各駆動制御部22(22a、22b、22c、22d)が各モータ21(21a、21b、21c、21d)の駆動をそれぞれ独立して制御することで、回転翼17(17a、17b、17c、17d)を個別に駆動して、マルチコプタ11の上昇、下降、左右旋回、ホバリング等を行うことができる。
【0028】
制御部33は、いわゆるフライトコントローラと呼ばれるもので、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備え、ROM又は記憶部35に記憶された各種プログラムに従って各種制御を実行する。カメラ27は、一般的なカメラの他に、赤外線カメラ、ステレオカメラ等であってもよい。カメラ27で撮影した画像は、制御部33により通信部25を介して操縦端末31(
図3参照)に送信され、操縦端末31の表示部55(
図3参照)に表示される。
【0029】
マルチコプタ11の本体部12の中央部分にもうけられた第1GPS受信機28は、少なくとも4個の人工衛星からの電波を受信してマルチコプタ11の位置情報を取得するものである(
図1参照)。また、本体部12の対称位置となる両端側にそれぞれ設けられた第2GPS受信機51、52(
図1参照)は、1個の人工衛星からの電波を受信すると共に、後述するセンサ部30の気圧センサ、高度センサ(超音波センサ)、加速度センサ、角速度センサ(ジャイロセンサ)、地磁気センサの計測値を利用してマルチコプタ11の位置情報を取得するものである。例えば、最初に第1GPS受信機30で位置情報を取得した後は、第1GPS受信機30の使用を停止して、第2GPS受信機51、52の人工衛星からの受信情報と、上記した各センサから取得した計測値によりその後の位置情報を取得することができる。制御部33と第1GPS受信機28とで位置情報取得手段を構成し、又は制御部33、第2GPS受信機51、52及びセンサ部30とで位置情報取得手段を構成する。位置情報取得のためのプログラムや取得した位置情報を記憶する記憶部35が記憶手段に相当する。
【0030】
センサ部30には、前述したように、気圧センサ、高度センサ(超音波センサ)、加速度センサ、角速度センサ(ジャイロセンサ)、地磁気センサ等が含まれる。気圧センサは気圧の変化を感知するセンサで、ドローンの高度を割り出すことができるが、気象条件等により気圧センサが正常に機能しないことがあるため、超音波センサが併用される。超音波センサは、超音波を発生させてその跳ね返りにかかる時間を計測することで地面との距離を検出するセンサである。加速度センサは、加速度検出により移動距離を検知するセンサであり、角速度センサ(ジャイロセンサ)は、一定時間のうちに機体が回転した回数を検知するセンサである。地磁気センサは、磁力により方角を検出するセンサである。制御部33及びセンサ部30の各種センサにより無人飛行体の水平維持を確保する水平維持手段を構成する。
【0031】
次に、
図3に基づいて操縦端末31(31a、31b)の装置構成を説明する。
図3に示すように、操縦端末31は、マルチコプタ11を遠隔操縦するためにマルチコプタ11の通信部25と送受信を行う通信部56と、通信部56を介してマルチコプタ11の操縦を行う操作部57と、マルチコプタ11のカメラ27が撮影した画像や各指示等の操作用タッチパネルを表示するディスプレイの表示部55と、第1の操縦端末31aと第2の操縦端末31bとの間で通知信号を送信するための送信指示を行うスイッチ部58と、通知信号の受信時に着信音を発生するスピーカ59及び出力回路60と、通知信号の受信時に点灯表示する表示灯54と、これらの機能を制御する制御部61と、各機器の制御や操縦のためのプログラム、計測データ等を記憶する記憶部62と、を有する。なお、操縦端末31にも電源となるバッテリ(不図示)が組み込まれている。
【0032】
操作部57によるマルチコプタ11の操縦は、例えば操縦端末31の表面の左右に並んだスティック(不図示)を操作することにより行われるものである。右側のスティックを上に倒すと「上昇」、下に倒すと「下降」、左に倒すと「左移動」、右に倒すと「右移動」、左のスティックを上に倒すと「前進」、下に倒すと「後退」、左に倒すと「左旋回」、右に倒すと「右旋回」となっており、「上昇」させてゆっくりと上昇を停止させ、揚力とマルチコプタ11の重力とをバランスさせることでホバリング状態とすることができる。なお、表示部55に表示される操作用タッチパネルでの操作により、ホバリング状態に自動的に設定することも可能である。
【0033】
表示部55の画面には、上記したカメラ27の撮影画像、操作用タッチパネルのほかに、飛行しているマルチコプタ11の現在の位置情報(緯度、経度、高度)も表示される。また、表示された現在の位置情報を記憶部62および/またはマルチコプタ11の記憶部35に、表示部55の操作用タッチパネルでの所定の操作により記憶させることができる。スイッチ部58は、引き継ぎの際に操作することで他の操縦端末31に通知信号を送信するものであり、通知信号を受信した操縦端末31bではスピーカ59により受信音が発生し、表示灯54で点灯表示もされる。なお、スイッチ部58を操作した、送信側の操縦端末31aでも送信音、点灯表示が発生するように設定することが可能である。制御部61、スイッチ部58及び通信部56で通知信号送受信手段を構成する。また、制御部61、出力回路60及びスピーカ59で受信音発生手段、制御部61及び表示灯54で点灯表示手段を構成する(受信表示手段)。また、表示部55に表示された操作用タッチパネル及び制御部61で所定位置飛行手段、位置情報取得指示手段を構成する。スイッチ部58の操作(押下等)が送信指示となる。
【0034】
次に、
図4を参照してマルチコプタ11の操縦の引き継ぎを説明する。第1の操縦端末31aによりマルチコプタ11の遠隔操縦を開始する(S1)。例えば、運搬用の荷物等を搭載したマルチコプタ11を山の麓から頂上の現場などへ飛行させるときは、第1の操縦端末の操縦者には頂上の着陸地点、頂上付近の地形等を目視することが困難であり、マルチコプタ11のカメラ27で撮影された周囲の画像を確認することもできるが、複雑な地形である場合には安定した飛行、着陸が難しい場合がある。このようなときに、山の麓の操縦者から頂上付近にいる別の操縦者に操縦を途中で引き継ぐことで、頂上付近の目標地点に目視により安全に着陸することができる。
【0035】
第1の操縦端末31aによりスタート地点から移動したマルチコプタ11が所定の引き継ぎ地点に到達したときに、第1の操縦端末31aから第2の操縦端末31bへ引き継ぎの連絡のために、送信指示となるスイッチ部58の操作をすると、制御部61は第1の操縦端末31bへ通知信号を送信する(S2:通知信号送受信手段)。この通知信号を受信した第2の操縦端末31bでは、制御部61は出力回路60を介してスピーカ59から着信音を発生させ(受信音発生手段)、更に表示灯54を点灯させる(点灯表示手段)。送信指示となるスイッチ部58の操作をすると、制御部61は受信確認のための通知信号を第1の操縦端末31aへ送信する(S3:通知信号送受信手段)。
【0036】
上記した受信確認の通知信号を受信した第1の操縦端末31aでは、制御部61が出力回路60を介してスピーカ59から着信音を発生させると共に(受信音発生手段)、表示灯54を点灯させ(点灯表示手段)、更にマルチコプタ11の遠隔操縦を停止する(S4)。受信確認の通知信号を送信した第2の操縦端末31bでは、送信後迅速に遠隔操縦を開始する(S5)。これにより、マルチコプタ11の操縦が迅速に引き継がれるので、飛行の支障を抑えることができ、遠隔操縦の引き継ぎが完了する(S6)。なお、通知信号の受信の際には着信音の発生、表示灯の点灯があるので、受信側への連絡の確実性が向上する。
【0037】
次に、
図5を参照して飛行経路の途中地点の位置情報を利用した引き継ぎについて説明する。山の麓の出発点Sから山の頂上の到着点Eにマルチコプタ11を利用して荷物を搬送する場合を例とする。出発点Sにおいてマルチコプタ11に荷物を搭載させ、第1の操縦端末31により頂上に向けて上昇飛行させる。飛行ルートして出発点Aの上空(頂上より高い位置)に中継点A、中継点Aから水平方向に進み、到着点Eの上空に中継点Bを設定する。
【0038】
中継点A、Bの位置情報(位置座標)は、実際の荷物搬送を行う前に事前に予備飛行を行うことにより取得される。予備飛行は、日中で自然条件の良好な時に行い、第1GPS受信機28、第2GPS受信機51,52、各種センサ等を適宜選択して、中継点A、Bの位置情報(位置座標)を取得する。出発点Sから上昇飛行させ、頂上よりやや高い任意の地点を中継点Aとして、表示部55に表示された位置情報(緯度、経度、高度)を操作用タッチパネルの操作により制御部33が位置情報を取得して操縦端末31の記憶部62(記憶手段)及び/又はマルチコプタ11の記憶部35(記憶手段)に記憶させる(位置情報取得指示手段、位置情報取得手段)。同様に、中継点Aから水平飛行させた、到着点Eの上空にある中継点Bの位置情報を取得して、記憶部62及び/又は記憶部35に記憶させる。実際の遠隔操縦のときに、飛行経路として中継点A、Bの位置情報を入力することができ、マルチコプタ11は、制御部33により中継点A、Bを経由した飛行が可能となる(所定位置飛行手段)。
【0039】
このように、中継点A、Bの位置情報を事前の予備飛行(空荷)で取得しておくので、実際の荷物の搬送時が荒天、視界不良、夜間のときでも、中継点A、Bの位置情報をもとに遠隔操縦することができる。第1の操縦端末31aから第2の操縦端末31bへの引き継ぎを中継点A、Bのいずれかで行うことも可能である。例えば、第1の操縦端末31aによりマルチコプタ11を出発点Sから発進させる。中継点A、Bの位置情報を利用した遠隔操縦であるから、マルチコプタ11は、中継点A、Bを経由して飛行する。このとき、中継点A、Bのいずれかに到達したときに第1の操縦端末31aから第2の操縦端末31bへ引き継ぎのための通知信号を送信し、通知信号を受信した第2の操縦端末31bからの確認の通知信号を受信した第1の操縦端末31aが遠隔操縦を停止し、確認の通知信号を送信した第2の操縦端末31が遠隔操縦を開始して引き継ぎを完了させることができる。
【0040】
引き継ぎを中継点A、Bの何れかにすることで、引き継ぎの動作の確実性が向上し、安定した荷物の運搬の飛行が可能となる。例えば、山の頂上、高所、森林地帯のように、単独操縦での目視飛行が困難な場合、中継点の位置情報を利用した遠隔飛行であれば、夜間飛行、荒天時の飛行であっても引き継ぎが容易になり、往復の繰り返しの搬送の場合等は搬送効率が向上する。
【0041】
次に、
図6を参照してマルチコプタ11の第2GPS受信機51、52を利用した位置情報(緯度、経度、高度)の取得について説明する。前述したように、第1GPS受信機28が少なくとも4台の人工衛星からの電波を受信して位置情報(位置座標)を取得するのに対して、第2GPS受信機51、52は、1台の人工衛星71からの電波を受信し、マルチコプタ11に搭載される各種センサの計測値を使用してマルチコプタ11の位置情報を取得するものである。
【0042】
人工衛星71からの電波を受信した第2GPS受信機51、52は、人工衛星71の位置情報と時間差から、それぞれ人工衛星71と第2GPS受信機51、52との距離を求める。第2GPS受信機51、52相互間の距離は既知であるから、人工衛星71、第GPS受信機51、52の作る三角形と、マルチコプタ11の高度Hを気圧センサ、高度センサ(超音波センサ)により求め、マルチコプタ11の位置情報(緯度、経度、高度)を求める。また、例えば、
図5で示した出発地点Aの位置情報のみを第1GPS受信機28で求め、その後は第2GPS受信機と、気圧センサ、高度センサ(超音波センサ)、更に加速度センサ、角速度センサ(ジャイロセンサ)及び地磁気センサの計測値を利用して、到着点Eに至るまでの途中地点の位置情報を求めることができる。このように、従来の第1GPS受信機28を使用する替わりに、簡便な装置構成の第2GPS受信機51、52と搭載された各種センサを利用して、マルチコプタの位置情報(位置座標)を取得することができる。
【0043】
本実施形態のマルチコプタ11は、比較的重量のある荷物を高低差のある場所へ搬送する場合もあり、風などの自然現象の影響を受けやすい環境も考慮した遠隔操縦が必要となる。通常の飛行プログラムに加え、飛行中の重量物の片寄り等の場合における水平維持を図る必要がある。気圧センサ、高度センサ(超音波センサ)、更に加速度センサ、角速度センサ(ジャイロセンサ)及び地磁気センサの計測値に基づき、マルチコプタ11の制御部33は、記憶部35に記憶された水平維持のプログラムに基づき、駆動制御部22(22a、22b、22c、22d)により、回転翼17(17a、17b、17c、17d)のそれぞれの回転数を制御することで水平を維持することができる(水平維持手段)。
【0044】
本実施形態に係るマルチコプタ11は、4個の回転翼を有する構成であるが、これに限定するものではなく、6個、8個等であってもよい。また、第1の操縦端末と第2の操縦端末とで遠隔操縦の引き継ぎを行っているが、操縦端末は2個に限定されず、3個、4個等いずれでもよい。また、引き継ぎに際してはマルチコプタ11を低速飛行又はホバリング状態にしてから引き継ぎを行ってもよい。本実施形態では、第1の操縦端末31a、第2の操縦端末31bにそれぞれ設けられた制御部61が、通知信号送受信手段による通知信号の送受信、受信表示手段による受信表示を制御しているが、これに限定するものでなく、例えばマルチコプタ11(無人飛行体)の制御部によりこれらを制御してもよい。
【0045】
以上、本発明のいくつかの実施形態及び各部の変形例を説明したが、この実施形態や各部の変形例は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上述したこれら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上、説明したように、本発明に係る無人飛行体制御システム及び無人飛行体制御方法によれば、操縦端末相互間で引き継ぎの通知を行うので、無人飛行体に引き継ぎ用の装置構成を設けることなく、簡便に行うことができるという効果を奏するので、無人飛行体と、該無人飛行体を遠隔操縦する操縦端末と、を有する無人飛行体の制御システム及び制御方法として有用である。
【符号の説明】
【0047】
11 マルチコプタ(無人飛行体)
12 本体部
13(13a、13b、13c、13d) アーム部
15(15a、15b、15c、15d) 駆動ユニット
17(17a、17b、17c、17d) 回転翼
18a、18b 脚部
21(21a、21b、21c、21d) モータ
22(22a、22b、22c、22d) 駆動制御部
25 通信部
26 電源
27 カメラ
28 第1GPS
30 センサ部
31 操縦端末
31a 第1の操縦端末
31b 第2の操縦端末
33 制御部
35 記憶部
51、52 第2GPS
54 表示灯
55 表示部
56 通信部
57 操作部
58 スイッチ部
61 制御部
62 記憶部
71 人工衛星