(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176982
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】蓄電デバイス、変形抑制部材、蓋ユニット
(51)【国際特許分類】
H01M 50/105 20210101AFI20241212BHJP
H01M 50/474 20210101ALI20241212BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20241212BHJP
H01M 50/15 20210101ALI20241212BHJP
H01M 50/477 20210101ALI20241212BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20241212BHJP
【FI】
H01M50/105
H01M50/474
H01M50/103
H01M50/15
H01M50/477
H01G11/78
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095915
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】宮代 香衣
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 美帆
(72)【発明者】
【氏名】瓜生 敏史
(72)【発明者】
【氏名】金澤 早陽子
【テーマコード(参考)】
5E078
5H011
5H021
【Fターム(参考)】
5E078AA10
5E078AB12
5E078HA02
5E078HA12
5E078HA13
5E078HA21
5H011AA01
5H011BB03
5H011CC10
5H011DD12
5H011FF03
5H021AA02
5H021BB11
5H021CC08
(57)【要約】
【課題】蓄電デバイスの内圧が変化した場合に、外装体が変形することを抑制できる蓄電デバイス、この蓄電デバイスに用いられる変形抑制部材、および、この変形抑制部材を備える蓋ユニットを提供する。
【解決手段】蓄電デバイスは、電極体と、電極体を封止する外装体と、を備え、外装体は、電極体を包む外装フィルムを含み、蓄電デバイスの変化が上昇した場合に外装体の変形を抑制する変形抑制部材を備える。
【選択図】
図5A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極体と、
前記電極体を封止する外装体と、を備え、
前記外装体は、前記電極体を包む外装フィルムを含み、
蓄電デバイスの内圧が変化した場合に前記外装体の変形を抑制する変形抑制部材を備える
蓄電デバイス。
【請求項2】
前記変形抑制部材は、前記蓄電デバイスの内圧が上昇した場合に前記外装体の膨張を抑制するように構成される
請求項1に記載の蓄電デバイス。
【請求項3】
前記変形抑制部材は、前記外装体によって封止される
請求項1または2に記載の蓄電デバイス。
【請求項4】
前記変形抑制部材は、前記外装フィルムの内面と接合される
請求項1または2に記載の蓄電デバイス。
【請求項5】
前記変形抑制部材は、前記電極体と面する第1面、前記第1面と反対の第2面、および、前記第1面と前記第2面とを繋ぐ側面を含み、
前記側面の少なくとも一部と前記外装フィルムの内面とが接合される
請求項4に記載の蓄電デバイス。
【請求項6】
前記変形抑制部材は、前記電極体と面する第1面、および、前記第1面と反対の第2面を有し、
前記第2面の少なくとも一部と前記外装フィルムとが接合される
請求項4に記載の蓄電デバイス。
【請求項7】
前記第2面の全体と前記外装フィルムとが接合される
請求項6に記載の蓄電デバイス。
【請求項8】
前記第2面の縁と前記外装フィルムとが接合される
請求項6に記載の蓄電デバイス。
【請求項9】
前記外装体は、前記外装フィルムの互いに向き合う面同士がシールされた第1封止部を有し、
前記変形抑制部材は、前記外装体のうちの前記第1封止部と連続する部分の膨張を抑制するように配置される
請求項1または2に記載の蓄電デバイス。
【請求項10】
前記外装体は、前記外装フィルムとともに前記電極体を封止する蓋体を有し、
前記変形抑制部材は、前記蓋体および前記外装フィルムの少なくとも一方と接合される
請求項1または2に記載の蓄電デバイス。
【請求項11】
前記変形抑制部材は、電解液が通過可能な通過部を有する
請求項1または2に記載の蓄電デバイス。
【請求項12】
前記変形抑制部材は、前記外装体の外部に配置される
請求項1に記載の蓄電デバイス。
【請求項13】
前記外装体は、前記外装フィルムとともに前記電極体を封止する蓋体を有し、
前記変形抑制部材は、前記蓋体と接続される
請求項12に記載の蓄電デバイス。
【請求項14】
電極体と、
前記電極体を封止する外装体と、を備え、
前記外装体は、
前記電極体を包む外装フィルムを含み、
前記外装フィルムは、蓄電デバイスの内圧が変化した場合に前記外装体が変形することを抑制する変形抑制構造を部分的に有する
蓄電デバイス。
【請求項15】
蓄電デバイスの外装体として用いられる蓋体と、
前記蓋体と接合され、前記蓄電デバイスの内圧が変化した場合に前記外装体の変形を抑制する変形抑制部材と、を備える
蓋ユニット。
【請求項16】
蓄電デバイスに用いられる変形抑制部材であって、
前記蓄電デバイスの内圧が変化した場合に前記蓄電デバイスの外装体の変形を抑制するように構成される
変形抑制部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイス、変形抑制部材、および、蓋ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、蓄電デバイスの一例を開示している。この蓄電デバイスは、電極体と、電極体を封止する外装体と、を備える。外装体は、電極体を包む外装フィルムと、外装フィルムと接合される蓋体と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記蓄電デバイスでは、充放電に伴う正極活物質および負極活物質の体積変化、ならびに、ガスが発生すること等によって、蓄電デバイスの内圧が上昇することがある。蓄電デバイスの内圧が上昇した場合、外装体が膨張することによって外装フィルムが伸びるため、外装フィルムの機械的強度が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、蓄電デバイスの内圧が変化した場合に外装体が変形することを抑制できる蓄電デバイス、この蓄電デバイスに用いられる変形抑制部材、および、この変形抑制部材を備える蓋ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点に係る蓄電デバイスは、電極体と、前記電極体を封止する外装体と、を備え、前記外装体は、前記電極体を包む外装フィルムを含み、蓄電デバイスの内圧が変化した場合に前記外装体の変形を抑制する変形抑制部材を備える。
【0007】
本発明の第2観点に係る蓄電デバイスは、第1観点に係る蓄電デバイスであって、前記変形抑制部材は、前記蓄電デバイスの内圧が上昇した場合に前記外装体の膨張を抑制するように構成される。
【0008】
本発明の第3観点に係る蓄電デバイスは、第1観点または第2観点に係る蓄電デバイスであって、前記変形抑制部材は、前記外装体によって封止される。
【0009】
本発明の第4観点に係る蓄電デバイスは、第1観点または第2観点に係る蓄電デバイスであって、前記変形抑制部材は、前記外装フィルムの内面と接合される。
【0010】
本発明の第5観点に係る蓄電デバイスは、第4観点に係る蓄電デバイスであって、前記変形抑制部材は、前記電極体と面する第1面、前記第1面と反対の第2面、および、前記第1面と前記第2面とを繋ぐ側面を含み、前記側面の少なくとも一部と前記外装フィルムの内面とが接合される。
【0011】
本発明の第6観点に係る蓄電デバイスは、第4観点に係る蓄電デバイスであって、前記変形抑制部材は、前記電極体と面する第1面、および、前記第1面と反対の第2面を有し、前記第2面の少なくとも一部と前記外装フィルムとが接合される。
【0012】
本発明の第7観点に係る蓄電デバイスは、第6観点に係る蓄電デバイスであって、前記第2面の全体と前記外装フィルムとが接合される。
【0013】
本発明の第8観点に係る蓄電デバイスは、第6観点に係る蓄電デバイスであって、前記第2面の縁と前記外装フィルムとが接合される。
【0014】
本発明の第9観点に係る蓄電デバイスは、第1観点~第8観点のいずれか1つに係る蓄電デバイスであって、前記外装体は、前記外装フィルムの互いに向き合う面同士がシールされた第1封止部を有し、前記変形抑制部材は、前記外装体のうちの前記第1封止部と連続する部分の膨張を抑制するように配置される。
【0015】
本発明の第10観点に係る蓄電デバイスは、第1観点~第9観点のいずれか1つに係る蓄電デバイスであって、前記外装体は、前記外装フィルムとともに前記電極体を封止する蓋体を有し、前記変形抑制部材は、前記蓋体および前記外装フィルムの少なくとも一方と接合される。
【0016】
本発明の第11観点に係る蓄電デバイスは、第1観点~第10観点のいずれか1つに係る蓄電デバイスであって、前記変形抑制部材は、電解液が通過可能な通過部を有する。
【0017】
本発明の第12観点に係る蓄電デバイスは、第1観点に係る蓄電デバイスであって、前記変形抑制部材は、前記外装体の外部に配置される。
【0018】
本発明の第13観点に係る蓄電デバイスは、第12観点に係る蓄電デバイスであって、前記外装体は、前記外装フィルムとともに前記電極体を封止する蓋体を有し、前記変形抑制部材は、前記蓋体と接続される。
【0019】
本発明の第14観点に係る蓄電デバイスは、電極体と、前記電極体を封止する外装体と、を備え、前記外装体は、前記電極体を包む外装フィルムを含み、前記外装フィルムは、蓄電デバイスの内圧が変化した場合に前記外装体が変形することを抑制する変形抑制構造を部分的に有する。
【0020】
本発明の第15観点に係る蓋ユニットは、蓄電デバイスの外装体として用いられる蓋体と、前記蓋体と接合され、前記蓄電デバイスの内圧が変化した場合に前記外装体の変形を抑制する変形抑制部材と、を備える。
【0021】
本発明の第16観点に係る変形抑制部材は、蓄電デバイスに用いられる変形抑制部材であって、前記蓄電デバイスの内圧が変化した場合に前記蓄電デバイスの外装体の変形を抑制するように構成される。
【発明の効果】
【0022】
本発明に関する蓄電デバイス、変形抑制部材、および、蓋ユニットによれば、蓄電デバイスの内圧が変化した場合に外装体が変形することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1B】
図1Aの蓄電デバイスの第2封止部のシール強度の測定方法に関する図
【
図2】
図1Aの蓄電デバイスが備える外装フィルムの層構成の一例を示す断面図。
【
図3】
図1Aの蓄電デバイスが備える外装フィルムを広げた状態の図。
【
図4】
図1Aの蓄電デバイスが備える蓋体の斜視図。
【
図5B】
図1の蓄電デバイスの使用状態の一例を示す図。
【
図6】
図1Aの蓄電デバイスが備える変形抑制部材の斜視図。
【
図7】
図1Aの蓄電デバイスが備える蓋ユニットの斜視図。
【
図8】
図1Aの蓄電デバイスの製造方法の一例を示すフローチャート。
【
図9】
図8の蓄電デバイスの製造方法の第3工程に関する図。
【
図10】
図8の蓄電デバイスの製造方法の第4工程に関する図。
【
図11】
図8の蓄電デバイスの製造方法の第5工程に関する図。
【
図12】
図8の蓄電デバイスの製造方法の第6工程に関する図。
【
図13】
図8の蓄電デバイスの製造方法の第8工程に関する図。
【
図14】第1変形例の蓄電デバイスが備える変形抑制部材の第2面のシールされる領域の一例を示す図。
【
図15】第1変形例の蓄電デバイスが備える変形抑制部材の第2面のシールされる領域の別の一例を示す図。
【
図16】第2変形例の蓄電デバイスが備える変形抑制部材の斜視図。
【
図17】第2変形例の別の変形例の蓄電デバイスが備える変形抑制部材の斜視図。
【
図18】第2変形例のさらに別の変形例の蓄電デバイスが備える変形抑制部材の斜視図。
【
図20】第4変形例の蓄電デバイスが備える外装フィルムを広げた状態の図。
【
図21】第6変形例の蓄電デバイスが備える変形抑制部材の第2面の大きさと外装フィルムの内面の大きさとの関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係る蓄電デバイスについて説明する。なお、本明細書において、「~」で示される数値範囲は「以上」、「以下」を意味する。例えば、2~15mmとの表記は、2mm以上15mm以下を意味する。
【0025】
[実施形態]
<1-1.蓄電デバイスの構成>
図1Aは、実施形態の蓄電デバイス10を模式的に示す斜視図である。
図1Bは、
図1の蓄電デバイス10の第2封止部80のシール強度の測定方法に関する図である。
図2は、
図1Aの蓄電デバイス10が備える外装フィルム50の層構成の一例を示す断面図である。
図3は、
図1Aの蓄電デバイス10が備える外装フィルム50を広げた状態の図である。
図4は、
図1Aの蓄電デバイス10が備える蓋体60の斜視図である。なお、
図1Aにおいて、矢印UD方向は蓄電デバイス10の厚み方向を示し、矢印LR方向は蓄電デバイス10の幅方向を示し、矢印FB方向は、蓄電デバイス10の奥行方向を示す。矢印UDLRFBの各々が示す方向は、以後の各図においても共通である。
【0026】
蓄電デバイス10は、電極体20と、電極端子30と、外装体40と、を備える。電極体20は、例えば、リチウムイオン電池、キャパシタ、全固体電池、半固体電池、擬固体電池、ポリマー電池、全樹脂電池、鉛蓄電池、ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル・鉄蓄電池、ニッケル・亜鉛蓄電池、酸化銀・亜鉛蓄電池、金属空気電池、多価カチオン電池、または、コンデンサー等の蓄電部材を構成する電極(正極および負極)ならびに、セパレータ等を含む。本実施形態では、電極体20の形状は、略直方体である。なお、「略直方体」とは、完全な直方体の他に、例えば、外面の一部の形状を修正することによって直方体とみなせるような立体を含む。電極体20の形状は、例えば、円柱または多角柱であってもよい。
【0027】
本実施形態では、蓄電デバイス10は、2つの電極端子30を備える。電極端子30は、電極体20における電力の入出力に用いられる金属端子である。電極端子30の一方の端部は、電極体20に含まれる電極(正極または負極)に電気的に接続される。電極端子30の他方の端部は、例えば、外装体40の端縁から外側に突出する。なお、電極端子30は、電極体20の電力の入出力が可能であればよく、例えば、外装体40から突出していなくてもよい。後述する蓋体60が例えば、金属によって構成される場合、蓋体60が電極端子30の機能を兼ねる場合があり、この場合、電極端子としての機能を有する蓋体60は、外装体40から突出してもよく、突出していなくてもよい。
【0028】
電極端子30を構成する金属材料は、例えば、アルミニウム、ニッケル、または、銅等である。例えば、電極体20がリチウムイオン電池である場合、正極に接続される電極端子30は、通常、アルミニウム等によって構成され、負極に接続される電極端子30は、通常、銅、ニッケル等によって構成される。なお、電極体20の最外層は、必ずしも電極である必要はなく、例えば、保護テープまたはセパレータであってもよい。
【0029】
外装体40は、電極体20を封止する。外装体40は、外装フィルム50および蓋体60を備える。外装フィルム50は、一対の開口部40Aが形成されるように電極体20を包む。本実施形態では、外装フィルム50は、一対の開口部40Aが形成されるように電極体20に巻き付けられる。なお、一対の開口部40Aが形成されるように筒状に構成された外装フィルム50の内部に電極体20を収容し、開口部40Aを蓋体60によって閉じてもよい。外装体40は、一対の第1面41A、41B、および、一対の第2面42A、42Bを有する。本実施形態では、一対の第1面41A、41Bは、実質的に同じ大きさである。本実施形態では、一対の第2面42A、42Bは、実質的に同じ大きさである。一対の第1面41A、41Bは、一対の第2面42A、42Bよりも面積が大きい。一対の蓋体60は、一対の開口部40Aを閉じるように電極体20の側方にそれぞれ配置される。
【0030】
例えば、冷間成形を通じて外装フィルム50に電極体20を収容する窪みを形成する方法がある。しかし、このような方法によって深い窪みを形成することは必ずしも容易ではない。冷間成形によって窪みを深く(たとえば成形深さ15mm)形成しようとすると外装フィルム50にピンホールまたはクラックが発生し、電池性能の低下を招く可能性が高くなる。一方、外装体40は、外装フィルム50を電極体20に巻き付けることによって電極体20を封止しているため、電極体20の厚みに拘わらず容易に電極体20を封止することができる。なお、蓄電デバイス10の体積エネルギー密度を向上させるべく電極体20と外装フィルム50との間のデッドスペースを削減するためには、外装フィルム50が電極体20の外表面に接するように巻き付けられた状態が好ましい。また、全固体電池においては、電池性能を発揮させるために高い圧力を電池外面から均一に掛けることが必要とされている観点からも電極体20と外装フィルム50との間の空間を無くすことが必要とされるため、外装フィルム50が電極体20の外表面に接するように巻き付けられた状態が好ましい。
【0031】
図2に示されるように、外装フィルム50は、例えば、基材層51、バリア層52、および、熱融着性樹脂層53をこの順に有する積層体(ラミネートフィルム)である。なお、外装フィルム50には、これらの層がすべて含まれている必要はなく、例えば、バリア層52が含まれていなくてもよい。すなわち、外装フィルム50は、フレキシブル性を有し曲げやすい材料で構成されていればよく、例えば、樹脂フィルムで構成されていてもよい。なお、外装フィルム50は、ヒートシール可能であることが好ましい。外装フィルム50は、最内層および最外層が熱融着性樹脂層53であってもよい。この場合、外装フィルム50は、最外層と最内層とが接合されることによって、電極体20および蓋体60を包んでもよい。
【0032】
外装フィルム50に含まれる基材層51は、耐熱性を外装フィルム50に付与し、加工または流通の際に起こり得るピンホールの発生を抑制するための層である。基材層51は、例えば、延伸ポリエステル樹脂層および延伸ポリアミド樹脂層の少なくとも一層を含んで構成される。例えば、基材層51が延伸ポリエステル樹脂層および延伸ポリアミド樹脂層の少なくとも一層を含むことにより、外装フィルム50の加工時にバリア層52を保護し、外装フィルム50の破断を抑制することができる。また、外装フィルム50の引張伸びを大きくする観点から、延伸ポリエステル樹脂層は二軸延伸ポリエステル樹脂層であることが好ましく、延伸ポリアミド樹脂層は二軸延伸ポリアミド樹脂層であることが好ましい。さらに、突刺強度または衝撃強度に優れる点から、延伸ポリエステル樹脂層は二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムであることがより好ましく、延伸ポリアミド樹脂層は二軸延伸ナイロン(ONy)フィルムであることがより好ましい。なお、基材層51は、延伸ポリエステル樹脂層および延伸ポリアミド樹脂層の両層を含んで構成されていてもよい。基材層51の厚さは、フィルム強度の点から、例えば5~300μmであることが好ましく、5~150μmであることがより好ましい。
【0033】
バリア層52は、少なくとも水分の浸入を抑止する層である。バリア層52は、例えば、接着層54を介して基材層51と接合される。バリア層52としては、例えば、バリア性を有する金属箔、蒸着膜、樹脂層などが挙げられる。蒸着膜としては金属蒸着膜、無機酸化物蒸着膜、炭素含有無機酸化物蒸着膜などが挙げられ、樹脂層としてはポリ塩化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)を主成分としたポリマー類やテトラフルオロエチレン(TFE)を主成分としたポリマー類やフルオロアルキル基を有するポリマー、およびフルオロアルキル単位を主成分としたポリマー類などのフッ素含有樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体などが挙げられる。また、バリア層52としては、これらの蒸着膜及び樹脂層の少なくとも1層を設けた樹脂フィルムなども挙げられる。バリア層52は、複数層設けてもよい。バリア層52は、金属材料により構成された層を含むことが好ましい。バリア層52を構成する金属材料としては、具体的には、アルミニウム合金、ステンレス鋼、チタン鋼、鋼板などが挙げられ、金属箔として用いる場合は、アルミニウム合金箔、及びステンレス鋼箔の少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0034】
バリア層52において、前述した金属材料により構成された層は、金属材料のリサイクル材を含んでいてもよい。金属材料のリサイクル材としては、例えば、アルミニウム合金、ステンレス鋼、チタン鋼、又は鋼板のリサイクル材が挙げられる。これらのリサイクル材は、それぞれ、公知の方法で入手できる。アルミニウム合金のリサイクル材は、例えば、国際公開第2022/092231号に記載の製造方法によって入手できる。バリア層52は、リサイクル材のみによって構成されてもよいし、リサイクル材とバージン材との混合材料によって構成されもよい。なお、金属材料のリサイクル材とは、いわゆる市中で使用された各種製品や、製造工程から出る廃棄物などを回収・単離・精製などを行って再利用可能な状態にした金属材料をいう。また、金属材料のバージン材とは、金属の天然資源(原材料)から精錬された新品の金属材料であって、リサイクル材でないものをいう。
【0035】
アルミニウム合金箔は、外装フィルム50の成形性を向上させる観点から、例えば、焼きなまし処理済みのアルミニウム合金などにより構成された軟質アルミニウム合金箔であることがより好ましく、より成形性を向上させる観点から、鉄を含むアルミニウム合金箔であることが好ましい。鉄を含むアルミニウム合金箔(100質量%)において、鉄の含有量は、0.1~9.0質量%であることが好ましく、0.5~2.0質量%であることがより好ましい。鉄の含有量が0.1質量%以上であることにより、より優れた成形性を有する外装フィルム50を得ることができる。鉄の含有量が9.0質量%以下であることにより、より柔軟性に優れた外装フィルム50を得ることができる。軟質アルミニウム合金箔としては、例えば、JIS H4160:1994 A8021H-O、JIS H4160:1994 A8079H-O、JIS H4000:2014 A8021P-O、又はJIS H4000:2014 A8079P-Oで規定される組成を備えるアルミニウム合金箔が挙げられる。また必要に応じて、ケイ素、マグネシウム、銅、マンガンなどが添加されていてもよい。また軟質化は焼鈍処理などで行うことができる。
【0036】
また、ステンレス鋼箔としては、オーステナイト系、フェライト系、オーステナイト・フェライト系、マルテンサイト系、析出硬化系のステンレス鋼箔などが挙げられる。さらに成形性に優れた外装フィルム50を提供する観点から、ステンレス鋼箔は、オーステナイト系のステンレス鋼により構成されていることが好ましい。
【0037】
ステンレス鋼箔を構成するオーステナイト系のステンレス鋼の具体例としては、SUS304、SUS301、SUS316Lなどが挙げられ、これら中でも、SUS304が特に好ましい。
【0038】
バリア層52の厚みは、金属箔の場合、少なくとも水分の浸入を抑止するバリア層としての機能を発揮すればよく、例えば9~200μm程度が挙げられる。バリア層52の厚みは、好ましくは約85μm以下、より好ましくは約50μm以下、さらに好ましくは約40μm以下、特に好ましくは約35μm以下である。また、バリア層52の厚みは、好ましくは約10μm以上、さらに好ましくは約20μm以上、より好ましくは約25μm以上である。また、バリア層52の厚みの好ましい範囲としては、10~85μm程度、10~50μm程度、10~40μm程度、10~35μm程度、20~85μm程度、20~50μm程度、20~40μm程度、20~35μm程度、25~85μm程度、25~50μm程度、25~40μm程度、25~35μm程度が挙げられる。バリア層52がアルミニウム合金箔により構成されている場合、上述した範囲が特に好ましい。また、外装フィルム50に高成形性及び高剛性を付与する観点からは、バリア層52の厚みは、好ましくは約35μm以上、より好ましくは約45μm以上、さらに好ましくは約50μm以上、さらに好ましくは約55μm以上であり、また、好ましくは約200μm以下、より好ましくは約85μm以下、さらに好ましくは約75μm以下、さらに好ましくは約70μm以下であり、好ましい範囲としては、35~200μm程度、35~85μm程度、35~75μm程度、35~70μm程度、45~200μm程度、45~85μm程度、45~75μm程度、45~70μm程度、50~200μm程度、50~85μm程度、50~75μm程度、50~70μm程度、55~200μm程度、55~85μm程度、55~75μm程度、55~70μm程度である。外装フィルム50が高成形性を備えることにより、深絞り成形が容易となり、蓄電デバイスの高容量化に寄与し得る。また、蓄電デバイスが高容量化されると、蓄電デバイスの重量が増加するが、外装フィルム50の剛性が高められることにより、蓄電デバイスの高い密封性に寄与できる。また、特に、バリア層52がステンレス鋼箔により構成されている場合、ステンレス鋼箔の厚みは、好ましくは約60μm以下、より好ましくは約50μm以下、さらに好ましくは約40μm以下、さらに好ましくは約30μm以下、特に好ましくは約25μm以下である。また、ステンレス鋼箔の厚みは、好ましくは約10μm以上、より好ましくは約15μm以上である。また、ステンレス鋼箔の厚みの好ましい範囲としては、10~60μm程度、10~50μm程度、10~40μm程度、10~30μm程度、10~25μm程度、15~60μm程度、15~50μm程度、15~40μm程度、15~30μm程度、15~25μm程度が挙げられる。
【0039】
また、バリア層52がアルミニウム箔の場合は、溶解や腐食の防止などのために、少なくとも基材層51と反対側の面に耐腐食性皮膜を備えていることが好ましい。バリア層52は、耐腐食性皮膜を両面に備えていてもよい。ここで、耐腐食性皮膜とは、例えば、ベーマイト処理などの熱水変成処理、化成処理、陽極酸化処理、ニッケルやクロムなどのメッキ処理、コーティング剤を塗工する腐食防止処理をバリア層52の表面に行ない、バリア層52に耐腐食性(例えば耐酸性、耐アルカリ性など)を備えさせる薄膜をいう。耐腐食性皮膜は、具体的には、バリア層52の耐酸性を向上させる皮膜(耐酸性皮膜)、バリア層52の耐アルカリ性を向上させる皮膜(耐アルカリ性皮膜)などを意味している。耐腐食性皮膜を形成する処理としては、1種類を行なってもよいし、2種類以上を組み合わせて行なってもよい。また、1層だけではなく多層化することもできる。さらに、これらの処理のうち、熱水変成処理および陽極酸化処理は、処理剤によって金属箔表面を溶解させ、耐腐食性に優れる金属化合物を形成させる処理である。なお、これらの処理は、化成処理の定義に包含される場合もある。また、バリア層52が耐腐食性皮膜を備えている場合、耐腐食性皮膜を含めてバリア層52とする。
【0040】
耐腐食性皮膜は、外装フィルム50の成形時において、バリア層52(例えば、アルミニウム合金箔)と基材層51との間のデラミネーション防止、電解質と水分とによる反応で生成するフッ化水素により、バリア層52表面の溶解、腐食、特にバリア層52がアルミニウム合金箔である場合にバリア層52表面に存在する酸化アルミニウムが溶解、腐食することを防止し、かつ、バリア層52表面の接着性(濡れ性)を向上させ、ヒートシール時の基材層51とバリア層52とのデラミネーション防止、成形時の基材層51とバリア層52とのデラミネーション防止の効果を示す。
【0041】
熱融着性樹脂層53は、例えば、接着層55を介してバリア層52と接合される。外装フィルム50に含まれる熱融着性樹脂層53は、外装フィルム50にヒートシールによる封止性を付与する層である。熱融着性樹脂層53としては、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂などのポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、または、これらのポリオレフィン系樹脂を無水マレイン酸等の酸でグラフト変性させた酸変性ポリオレフィン系樹脂からなる樹脂フィルムが挙げられる。熱融着性樹脂層53の厚さは、シール性および強度の点から、例えば20~300μmであることが好ましく、40~150μmであることがより好ましい。
【0042】
外装フィルム50は、熱融着性樹脂層53よりも外側に、より好ましくは、バリア層52よりも外側に1または複数の緩衝機能を有する層(以下では、「緩衝層」という)を有していることが好ましい。緩衝層は、基材層51の外側に積層されてもよく、基材層51が緩衝層の機能を兼ね備えてもよい。外装フィルム50が複数の緩衝層を有する場合、複数の緩衝層は、隣接していてもよく、基材層51またはバリア層52等を介して積層されてもよい。
【0043】
緩衝層を構成する材料は、クッション性を有する材料から任意に選択可能である。クッション性を有する材料は、例えば、ゴム、不織布、または、発泡シートである。ゴムは、例えば、天然ゴム、フッ素ゴム、または、シリコンゴムである。ゴム硬度は、20~90程度であることが好ましい。不織布を構成する材料は、耐熱性に優れる材料であることが好ましい。緩衝層が不織布によって構成される場合、緩衝層の厚さの下限値は、好ましくは、100μm、さらに好ましくは、200μm、さらに好ましくは、1000μmである。緩衝層が不織布によって構成される場合、緩衝層の厚さの上限値は、好ましくは、5000μm、さらに好ましくは、3000μmである。緩衝層の厚さの好ましい範囲は、100μm~5000μm、100μm~3000μm、200μm~5000μm、200μm~3000μm、1000μm~5000μm、または、1000μm~3000μmである。この中でも、緩衝層の厚さの範囲は、1000μm~3000μmが最も好ましい。
【0044】
緩衝層がゴムによって構成される場合、緩衝層の厚さの下限値は、好ましくは、0.5mmである。緩衝層がゴムによって構成される場合、緩衝層の厚さの上限値は、好ましくは、10mm、さらに好ましくは、5mm、さらに好ましくは、2mmである。緩衝層がゴムによって構成される場合、緩衝層の厚さの好ましい範囲は、0.5mm~10mm、0.5mm~5mm、または、0.5mm~2mmである。
【0045】
外装フィルム50が緩衝層を有する場合、緩衝層がクッションとして機能するため、蓄電デバイス10が落下したときの衝撃、または、蓄電デバイス10の製造時のハンドリングによって、外装フィルム50が破損することが抑制される。
【0046】
蓋体60は、例えば、板状であり、例えば、樹脂材料によって構成される。なお、蓋体60は、外装フィルム50を例えば冷間成形することによって形成されてもよく、金属成形品であってもよい。蓋体60を構成する材料は、金属酸化物、カーボン材料、および、ゴム材料のうちの少なくとも2種類以上の材料を含んでいてもよく、金属酸化物、カーボン材料、および、ゴム材料をそれぞれ含んでいてもよい。
【0047】
図4に示されるように、蓋体60は、第1面61、第2面62、および、蓋シール部63を有する。第1面61は、電極体20と面する。第2面62は、第1面61と反対側の面である。蓋シール部63は、第1面61および第2面62と繋がり、外装フィルム50の熱融着性樹脂層53とヒートシールされる。蓋シール部63は、第1シール面63A、第2シール面63B、第3シール面63C、および、第4シール面63Dを含む。第1シール面63Aは、蓋体60の上面を構成する。第1シール面63Aは、蓋体60の正面視において、第1方向(本実施形態では、LR方向)に延びる。第2シール面63Bおよび第3シール面63Cは、第1シール面63Aと繋がり、蓋体60の側面を構成する。第2シール面63Bおよび第3シール面63Cは、蓋体60の正面視において、第1方向と交差する第2方向(本実施形態では、UD方向)に延びる。本実施形態では、蓋体60の正面視において、第1方向と第2方向とは、直交する。第1方向と第2方向とは、蓋体60の正面視において、直交していなくてもよい。第4シール面63Dは、蓋体60の下面を構成する。第4シール面63Dは、蓋体60の正面視において、第1方向(本実施形態では、LR方向)に延びる。
【0048】
蓋体60が板状である場合、蓄電デバイス10が重ねて配置された場合であっても、外装体40が変形することが抑制されるように、蓋体60は、ある程度の厚さを有していることが好ましい。別の観点では、蓋体60が板状である場合、第2封止部80を形成する際に、蓋体60の蓋シール部63と外装フィルム50とを好適にヒートシールできるように、蓋体60の蓋シール部63は、ある程度の厚さを有していることが好ましい。蓋体60の厚さの最小値は、例えば、1.0mmであり、3mmがより好ましく、4mmがさらに好ましい。蓋体60の厚さの最大値は、例えば、10mmであり、8.0mmがより好ましく、7.0mmがさらに好ましい。蓋体60の厚さの最大値は、10mm以上であってもよい。蓋体60を構成する材料の厚さの好ましい範囲は、1.0mm~10mm、1.0mm~8.0mm、1.0mm~7.0mm、3.0mm~10mm、3.0mm~8.0mm、3.0mm~7.0mm、4.0mm~10mm、4.0mm~8.0mm、4.0mm~7.0mmである。本実施形態において、蓋体60が板状と表現される場合、蓋体60がJIS(日本工業規格)の[包装用語]規格によって規定されるフィルムのみによって構成される態様は含まれない。なお、蓋体60の厚さは、蓋体60の部位によって異なっていてもよい。蓋体60の厚さが部位によって異なる場合、蓋体60の厚さは、最も厚い部分の厚さである。
【0049】
蓋シール部63は、境界64、65、66、67をさらに含む。境界64は、第1シール面63Aと第2シール面63Bとの境界である。境界65は、第1シール面63Aと第3シール面63Cとの境界である。境界66は、第4シール面63Dと第2シール面63Bとの境界である。境界67は、第4シール面63Dと第3シール面63Cとの境界である。境界64~67の形状は、角であってもよく、R加工が施されることによって丸みを帯びていてもよい。本実施形態では、境界64~67は、角である。
【0050】
本実施形態では、蓋体60は、樹脂材料から構成される。ここで、「樹脂材料から構成される」とは、蓋体60を構成する材料の全体を100質量%としたときに、樹脂材料の含有率が50質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であることをいうものとする。すなわち、蓋体60を構成する材料は、樹脂材料に加え、樹脂材料以外の材料を含有することができる。
【0051】
樹脂の具体例としては、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン、珪素樹脂、及びフェノール樹脂などの樹脂や、これらの樹脂の変性物等の熱可塑性樹脂が挙げられる。また、樹脂材料は、これらの樹脂の混合物であってもよいし、共重合物であってもよいし、共重合物の変性物であってもよい。樹脂材料は、これらの中でも、ポリエステル、ポリオレフィンなどの熱融着性樹脂であることが好ましく、ポリオレフィンがより好ましい。樹脂材料が樹脂である場合、蓋体60は、どのような成形方法で成形されてもよい。
【0052】
ポリエステルとしては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、共重合ポリエステル等が挙げられる。また、共重合ポリエステルとしては、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル等が挙げられる。具体的には、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてエチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムスルホイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/フェニル-ジカルボキシレート)、ポリエチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)等が挙げられる。樹脂材料は、これらの中でも、耐熱性及び耐圧性を高める観点から、ポリブチレンテレフタレートであることが好ましい。
【0053】
また、ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;エチレン-αオレフィン共重合体;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等のポリプロピレン;プロピレン-αオレフィン共重合体;エチレン-ブテン-プロピレンのターポリマー等が挙げられる。共重合体である場合のポリオレフィン樹脂は、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。樹脂材料は、これらの中でも、熱融着性及び耐電解液性に優れることから、ポリプロピレンが好ましい。
【0054】
上記樹脂材料としての樹脂は、必要に応じてフィラーを含有してもよい。フィラーの具体例としては、ガラスビーズ、グラファイト、ガラス繊維、及びカーボン繊維等が挙げられる。樹脂材料としての樹脂が上記フィラーを含有することにより、蓋体60の温度変化に対する変形耐性を向上させることができる。
【0055】
蓋体60を構成する材料に含まれる樹脂材料のメルトマスフローレートは、1g/10min~80g/10minの範囲に含まれることが好ましく、5g/10min~60g/10minの範囲に含まれることがさらに好ましい。メルトマスフローレートは、JIS K7210-1:2014に基づいて測定される。
【0056】
別の例では、蓋体60は、金属材料から構成されてもよい。ここで、「金属材料から構成される」とは、蓋体60を構成する材料の全体を100質量%としたときに、金属材料の含有率が50質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であることをいうものとする。すなわち、蓋体60を構成する材料は、金属材料に加え、金属材料以外の材料を含有することができる。蓋体60を構成する金属材料は、任意に選択可能である。蓋体60を構成する金属材料は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、銅、または、銅合金である。例えば、電極体20がリチウムイオン電池である場合、正極に接続される蓋体60は、アルミニウムまたはアルミニウム合金によって構成されることが好ましい。負極に接続される蓋体60は、ニッケル、銅、または、銅合金によって構成されることが好ましい。負極に接続される蓋体60を構成する材料は、銅にニッケルめっきを施したものとしてもよい。蓋体60を構成する材料は、金属材料のリサイクル材を含んでいてもよい。
【0057】
本実施形態では、蓋体60には、電極端子30が挿入される貫通孔60Xが形成される。貫通孔60Xは、第1面61および第2面62を貫通する。電極体20が収納された状態で電極端子30は、蓋体60に形成される貫通孔60Xを通って外装体40の外部に突出する。蓋体60の貫通孔60Xと電極端子30との僅かな隙間は、例えば、樹脂によって埋められる。なお、蓄電デバイス10において、電極端子30が外部に突出する位置は、任意に選択可能である。例えば、電極端子30は、外装体40が有する6面のうちいずれかの面に形成された孔から外部に突出していてもよい。この場合には、外装体40と電極端子30との間の僅かな隙間が、例えば、樹脂によって埋められる。電極端子30は、蓋体60と外装フィルム50との間から突出していてもよく、後述する第1封止部70から突出していてもよい。蓄電デバイス10においては、蓋体60と電極端子30とが別体として設けられているが、蓋体60と電極端子30とは一体的に形成されていてもよい。なお、電極端子30が外装体40の端縁から突出しない場合、蓋体60には、貫通孔60Xが形成されていなくてもよい。
【0058】
本実施形態では、開口部40Aを有するように電極体20の周囲に外装フィルム50が巻き付けられた状態で、外装フィルム50の互いに向き合う面(熱融着性樹脂層53)同士がヒートシールされることによって、第1封止部70が形成される。
【0059】
第1封止部70は、
図3に示される外装フィルム50の第1縁50Aを含む部分と第2縁50Bを含む部分とがヒートシールされることによって形成される。第1封止部70は、外装体40の長手方向(FB方向)に延びる。外装体40において、第1封止部70が形成される位置は、任意に選択可能である。本実施形態では、第1封止部70の根本70Xは、外装体40の第1面41Aと第2面42Aとの境界の辺43上に位置することが好ましい。第1面41Aは、第2面42Aよりも面積が大きい。第1封止部70の根本70Xは、外装体40の任意の面上に位置していてもよい。本実施形態では、第1封止部70は、平面視において、電極体20よりも外側に張り出している。第1封止部70は、例えば、外装体40の第2面42Aに向けて折り畳まれていてもよく、第1面41Aに向けて折り畳まれていてもよい。
【0060】
本実施形態では、外装フィルム50の熱融着性樹脂層53と蓋体60の蓋シール部63とがヒートシールされることによって、第2封止部80が形成される。以下では、外装フィルム50の熱融着性樹脂層53と蓋体60の蓋シール部63とのシール強度を、第2封止部80のシール強度と称する場合がある。なお、第2封止部80のシール強度は、蓋シール部63のうちの長辺の部分、すなわち、
図1AにおけるLR(幅)方向に延びる蓋シール部63における熱融着性樹脂層53と蓋体60とのシール強度である。
【0061】
第2封止部80のシール強度は、次のように測定される。まず、外装フィルム50のうちの外装体40の第1面41Aを構成している部分に切れ込みを形成し、LR方向に並ぶ3つの帯状部材41X、41Y、41Z(
図1Bの二点鎖線参照)を形成する。3つの帯状部材41X、41Y、41ZのLR方向における幅は、15mmである。帯状部材41X、41Y、41Zの端部は、第2封止部80において、蓋体60と接合されている。蓋体60のLR方向の長さは、45mm以上である。次に帯状部材41X、41Y、41Zのうちの蓋体60と接合されている端部と反対側の端部をUD方向における上方(第1面41Bと反対の方向)に引っ張ることによって、帯状部材41X、41Y、41Zのシール強度をそれぞれ測定する。本実施形態では、第2封止部80のシール強度は、帯状部材41X、41Y、41Zのシール強度の平均値である。蓋体60のLR方向の長さが45mm未満である場合、15mm未満である任意の幅Xmmの3つの帯状部材を形成し、蓋体60のLR方向の長さが45mm以上であると同様の方法によって3つの帯状部材のシール強度を測定する。得られたシール強度をそれぞれ任意の幅Xmmで除し、15を乗ずることによって、15mm幅における3つの帯状部材のシール強度にそれぞれ換算する。第2封止部80のシール強度は、15mm幅に換算された3つの帯状部材のシール強度の平均値である。なお、蓋体60が、長辺および短辺を含む複数のパーツに分割されている場合の第2封止部80のシール強度は、複数のパーツの蓋シール部63のうちの長辺の部分におけるシール強度である。
【0062】
外装体40によって電極体20が密封された状態を好適に維持する観点から、第2封止部80のシール強度は、好ましくは、40N/15mm以上、さらに好ましくは、50N/15mm以上、さらに好ましくは、60N/15mm以上、さらに好ましくは、70N/15mm以上、さらに好ましくは、85N/15mm以上である。第2封止部80のシール強度が40N/15mm以上である場合、蓄電デバイス10を、例えば、数年間(10年未満)使用しても、外装体40によって電極体20が密封された状態が好適に維持される。第2封止部80のシール強度が85N/15mm以上である場合、蓄電デバイス10を、例えば、10年以上使用しても、外装体40によって電極体20が密封された状態が好適に維持される。第2封止部80のシール強度は、好ましくは、200N/15mm以下である。第2封止部80のシール強度の好ましい範囲は、40N/15mm~150N/15mm、50N/15mm~150N/15mm、60N/15mm~150N/15mm、70N/15mm~150N/15mm、または、85N/15mm~150N/15mmである。
【0063】
蓄電デバイス10では、充放電に伴う電極体20の正極活物質および負極活物質の体積変化、ならびに、ガスが発生すること等によって、蓄電デバイス10の内圧が上昇することがある。蓄電デバイス10の内圧が上昇した場合、外装体40が膨張することによって外装フィルム50が伸びるため、外装フィルム50の機械的強度が低下するおそれがある。本実施形態では、蓄電デバイス10は、外装フィルム50の膨張を抑制する変形抑制部材90を備える。なお、変形抑制部材90は、蓄電デバイス10の製造工程において、外装フィルム50と電極体20との密着度を高めるために真空引きを実施する場合、外装フィルム50が収縮することに起因する外装体40の変形を抑制するという付随的な効果も有する。
【0064】
本実施形態では、変形抑制部材90は、外装体40の変形を抑制するという機能に特化した構成要素であり、蓋体60とは、独立した構成要素である。なお、変形抑制部材90が蓋体60とは独立した構成要素であるとは、変形抑制部材90が機能的に蓋体60とは独立した構成要素であることを意味する。このため、変形抑制部材90は、構造的には、蓋体60と一体的に構成されてもよく、別体で構成されてもよい。本実施形態では、変形抑制部材90は、外装体40の面のうちの蓋体60によって構成される面以外の面の少なくとも一部、すなわち、外装フィルム50によって構成される面の少なくとも一部と電極体20との間に配置される。外装フィルム50によって構成される面は、第1面41A、第1面41B、第2面42A、および、第2面42Bである。
【0065】
図5Aは、
図1AのD5-D5線に沿う断面図である。
図5Bは、
図1の蓄電デバイス10の使用状態の一例を示す図である。
図6は、
図5の変形抑制部材90の斜視図である。
図7は、
図1Aの蓄電デバイス10が備える蓋ユニット60Zの斜視図である。
【0066】
変形抑制部材90が配置される箇所は、外装体40のうちの変形し得る箇所であれば任意に選択可能である。本実施形態の蓄電デバイス10は、例えば、複数の蓄電デバイス10の第2面42Bが冷却機構200(
図5B参照)に接触するように並べて使用される。
図5Bのように配置された蓄電デバイス10において、第2面42Bは冷却機構200と接触し、第1面41Aは、隣り合う蓄電デバイス10の第1面41Bと直接的に接触する、または、板状部材および緩衝材等を介して間接的に接触する。このため、例えば、外装体40の変形の一態様としての膨張を考えた場合、
図5Bのように並べられた蓄電デバイス10では、外装体40のうち第1面41A、第1面41B、および、第2面42Bは、蓄電デバイス10の内圧が上昇した場合であっても、比較的膨張しにくい。
【0067】
一方、外装体40の第2面42Aは、蓄電デバイス10等の他の要素と接触していないため、蓄電デバイス10の内圧が上昇した場合に膨張しやすい。このため、本実施形態では、変形抑制部材90は、外装体40の内部において、外装体40の第2面42Aの膨張を抑制するように配置される。換言すれば、変形抑制部材90は、外装体40によって封止される。なお、変形抑制部材90は、外装体40の変形の一態様としての収縮についても考慮して、外装体40の内部において、外装体40の第1面41A、第1面41B、および、第2面42Bの少なくとも1つの変形を抑制するように配置されてもよい。
【0068】
変形抑制部材90の形状は、任意に選択可能である。本実施形態では、変形抑制部材90は、FB方向に延びる板状である。変形抑制部材90の材料に関する諸元は、蓋体60の材料に関する諸元と同様である。変形抑制部材90は、第1面91、第2面92、および、側面93を有する。第1面91は、電極体20と面する。蓄電デバイス10の体積エネルギー密度を向上させるべく電極体20と外装フィルム50との間のデッドスペースを削減する観点から、変形抑制部材90の第1面91と電極体20との隙間は、極力小さいことが好ましい。変形抑制部材90が金属材料から構成される場合、電解液による腐食を抑制する観点から、第1面91の少なくとも一部には、耐腐食コーティングが施されることが好ましい。変形抑制部材90が金属材料から構成される場合、電極体20の短絡を抑制する観点から、第1面91の少なくとも一部には、絶縁シート等が接合されることが好ましい。第2面92は、第1面91と反対側の面であり、外装フィルム50の内面(本実施形態では、熱融着性樹脂層53)と面する。なお、本実施形態では、第2面92は、外装フィルム50の内面と接合されない。第2面92の少なくとも一部は、外装フィルム50の内面と接合されてもよい。第1面91および第2面92の形状は、外装体40の第2面42Aの形状と同じであることが好ましい。
【0069】
側面93は、第1面91および第2面92と繋がり、蓋体60、および、外装フィルム50の熱融着性樹脂層53とヒートシールされる。側面93は、第1側面93A、第2側面93B、第3側面93C、および、第4側面93Dを含む。
【0070】
第1側面93Aは、変形抑制部材90の上面を構成する。第1側面93Aは、変形抑制部材90の第1面91から視た正面視において、FB方向に延びる。第1側面93Aは、外装フィルム50のうちの第1面41Aを構成する部分の熱融着性樹脂層53とヒートシールされる。
【0071】
第2側面93Bおよび第3側面93Cは、第1側面93Aと繋がり、変形抑制部材90の側面を構成する。第2側面93Bおよび第3側面93Cは、変形抑制部材90の第1面91から視た正面視において、UD方向に延びる。第2側面93Bは、一方の蓋体60の第1面61とヒートシールされる。第3側面93Cは、他方の蓋体60の第1面61とヒートシールされる。蓋ユニット60Zの製造においては、変形抑制部材90と蓋体60とを、例えば、ヒートシール、溶接、または、熱板溶着等で接合することができる。
【0072】
第4側面93Dは、変形抑制部材90の下面を構成する。第4側面93Dは、変形抑制部材90の第1面91から視た正面視において、FB方向に延びる。第4側面93Dは、外装フィルム50のうちの第1面41Bを構成する部分の熱融着性樹脂層53とヒートシールされる。なお、蓄電デバイス10は、一対の蓋体60と一対の変形抑制部材90とが予め接合された蓋ユニット60Zを用いて製造されてもよく、一対の蓋体60と一対の変形抑制部材90とが分離した状態のものを用いて製造されてもよい。
【0073】
側面93は、境界94、95、96、97をさらに含む。境界94は、第1側面93Aと第2側面93Bとの境界である。境界95は、第1側面93Aと第3側面93Cとの境界である。境界96は、第4側面93Dと第2側面93Bとの境界である。境界97は、第4側面93Dと第3側面93Cとの境界である。境界94~97の形状は、角であってもよく、R加工が施されることによって丸みを帯びていてもよい。本実施形態では、境界94~97は、角である。
【0074】
変形抑制部材90は、蓋体60および外装フィルム50と側面93とがシールされているため、変形抑制部材90の第2面92と外装フィルム50の内面との間の僅かな隙間は密閉される。このため、例えば、蓄電デバイス10の内部でガスが発生した場合であっても、ガスは、変形抑制部材90の第2面92と外装フィルム50の内面との間の僅かな隙間に侵入しない。このため、外装体40の第2面42Aが膨張することが抑制される。
【0075】
また、本実施形態では、変形抑制部材90は、外装体40のうちの第1封止部70と連続する部分、すなわち、第2面42Aの膨張を抑制するように配置される。このため、蓄電デバイス10の内圧が上昇した場合であっても、外装体40のうちの第2面42Aを構成する部分が膨張することに起因して第1封止部70が剥離することが抑制される。
【0076】
<1-2.蓄電デバイスの製造方法>
図8は、蓄電デバイス10の製造方法の一例を示すフローチャートである。蓄電デバイス10の製造方法は、例えば、第1工程、第2工程、第3工程、第4工程、第5工程、第6工程、第7工程、第8工程、および、第9工程を含む。第1工程~第9工程は、例えば、蓄電デバイス10の製造装置によって実施される。第1工程~第9工程の少なくとも一部は、作業者によって実施されてもよい。なお、第1工程~第9工程は、蓄電デバイス10の製造方法の各工程の名称を便宜的に規定したものであって、各工程の順序を必ずしも意味するものではない。以下の各工程の順序は、任意に変更可能である。
【0077】
ステップS11の第1工程では、製造装置は、電極端子30が接合された蓋ユニット60Zを電極体20に対して配置し、電極端子30と電極体20とを電気的に接続する。なお、第1工程においては、電極体20と電気的に接続された電極端子30に対して、蓋体60を接合し、その後、蓋体60に対して変形抑制部材90を例えば、ヒートシールまたは溶接等によって接合してもよい。また、第1工程においては、電極端子30が接合された状態の蓋体60と、電極体20とを電気的に接続し、その後、蓋体60と変形抑制部材90とを例えば、ヒートシールまたは溶接等によって接合してもよい。
【0078】
ステップS12の第2工程は、第1工程よりも後に実施される。第2工程では、製造装置は、電極体20および蓋ユニット60Zを外装フィルム50によって包む。なお、第2工程においては、後述するガスポケット300を形成するために、完成品の蓄電デバイス10が有する外装フィルム50よりも面積の大きい外装フィルム50が用いられる。第2工程では、製造装置は、規制手段によって電極体20および蓋体60の移動を規制しつつ、外装フィルム50にテンションが作用した状態で外装フィルム50を電極体20および蓋体60に巻き付ける。規制手段は、例えば、電極体20および蓋体60が嵌め込まれる溝である。規制手段は、電極体20および蓋体60が移動しないように、電極体20および蓋体60に外力を作用させる装置であってもよい。規制手段は、外装フィルム50が引っ張られる方向と反対方向の力を電極体20および蓋体60に作用させる装置であってもよい。なお、規制手段は、外装フィルム50のしわを取り除くために、外装フィルム50が引っ張られている状態において、外装フィルム50上を走行するローラーを含んでいてもよい。
【0079】
ステップS13の第3工程は、第2工程よりも後に実施される。
図9に示されるように、第3工程では、製造装置は、中央に未シール部71Zを有する第1FB方向シール部71を形成する。なお、
図9における斜線部分は、第1FB方向シール部71が形成される領域の一例を示している。
【0080】
ステップS14の第4工程は、第3工程よりも後に実施される。
図10に示されるように、第4工程では、製造装置は、第2短辺シール部82を形成する。第2短辺シール部82は、蓋体60の第2シール面63Bおよび第3シール面63Cと、外装フィルム50とがヒートシールされた部分である。なお、
図10における斜線部分は、第2短辺シール部82が形成される領域の一例を示している。
【0081】
ステップS15の第5工程は、第4工程よりも後に実施される。
図11に示されるように、第5工程では、製造装置は、第2長辺シール部81を形成する。第2長辺シール部81は、蓋体60の第1シール面63Aおよび第4シール面63Dと、外装フィルム50とがヒートシールされた部分である。なお、
図11における斜線部分は、第2長辺シール部81が形成される領域の一例を示している。
【0082】
ステップS16の第6工程は、第5工程よりも後に実施される。
図12に示されるように、第6工程では、製造装置は、第1LR方向シール部72を形成する。第6工程においては、辺43を含む部分おいて、第1FB方向シール部71と一部重畳するように第1LR方向シール部72が形成される。なお、
図12における斜線部分は、第1LR方向シール部72が形成される領域の一例を示している。第6工程が完了することによって、完成品の蓄電デバイス10が備える第1封止部70よりも平面視における面積が大きいガスポケット300が完成する。
【0083】
ステップS17の第7工程は、第6工程よりも後に実施される。第7工程では、製造装置は、変形抑制部材90の側面93と外装フィルム50とをヒートシールする。第7工程では、後述する第8工程において電解液を注入するため、第7工程では、第1側面93Aの一部と外装フィルム50とは、ヒートシールされない。なお、変形抑制部材90が第2面42Bの膨張を抑制するように配置される場合、第7工程において、第2面42Bの膨張を抑制するように配置される変形抑制部材90の側面93の全体は、外装フィルム50の内面とヒートシールされてもよい。
【0084】
ステップS18の第8工程は、第7工程よりも後に実施される。第8工程では、製造装置は、ガスポケット300の開口を介して電解液を注入する。
図13に示されるように、電解液が注入された後、ガスポケット300は、開口を含む縁が接合されることによって、ポケット封止部310が形成される。第8工程の後にエージング工程が実施される。エージング工程によって発生したガスは、ガスポケット300に溜められる。ガスポケット300に溜められたガスは、ガスポケット300の一部が切断されることによって形成された開口を介して排出される。ガスポケット300は、例えば、
図13に示される一点鎖線XAに沿って切断されることによって、ガスを排出する開口が形成される。
【0085】
ステップS19の第9工程は、第8工程よりも後、かつ、エージング工程が完了した後に実施される。第9工程では、製造装置は、第1側面93Aの未シール部と外装フィルム50とをヒートシールし、さらに、第1封止部70を形成する。第9工程においては、第1FB方向シール部71は、再度シールされてもよく、再度シールされなくてもよい。
【0086】
<1-3.蓄電デバイスの作用および効果>
蓄電デバイス10によれば、変形抑制部材90を備えるため、蓄電デバイス10の内圧が変化した場合であっても、外装体40が変形することを抑制できる。
【0087】
[2.変形例]
上記実施形態は本発明に関する蓄電デバイス、変形抑制部材、および、蓋ユニットが取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に関する蓄電デバイス、変形抑制部材、および、蓋ユニットは、実施形態に例示された形態とは異なる形態を取り得る。その一例は、実施形態の構成の一部を置換、変更、もしくは、省略した形態、または、実施形態に新たな構成を付加した形態である。以下に実施形態の変形例の幾つかの例を示す。なお、以下の変形例は、技術的に矛盾しない限り互いに組み合わせることができる。
【0088】
<2-1.第1変形例>
上記蓄電デバイス10は、変形抑制部材90の側面93と、蓋体60および外装フィルム50とがシールされたが、側面93に代えて、または、加えて、第2面92と外装フィルム50の内面とを接合してもよい。
図14および
図15は、変形抑制部材90の第2面92のうちの外装フィルム50の内面と接合される領域の一例を示す図である。
図14および
図15のドットは、第2面92のうちの外装フィルム50の内面と接合される領域を示す。
【0089】
図14に示される例では、第2面92のうちの概ね全体と外装フィルム50の内面とが接合される。
図14に示される例では、第2面92と外装フィルム50の内面との間に隙間が実質的に形成されない。このため、蓄電デバイス10の内部でガスが発生した場合であっても、ガスは、第2面92と外装フィルム50の内面との間に侵入しない。このため、外装体40の第2面42Aが膨張することが好適に抑制される。
【0090】
図15に示される例では、第2面92のうちの縁を含む部分と外装フィルム50の内面とが接合される。
図15に示される例では、変形抑制部材90の第2面92と外装フィルム50の内面と間の僅かな隙間は密閉される。このため、蓄電デバイス10の内部でガスが発生した場合であっても、ガスは、変形抑制部材90の第2面92と外装フィルム50の内面と間の僅かな隙間に侵入しない。このため、外装体40の第2面42Aが膨張することが抑制される。
【0091】
<2-2.第2変形例>
上記蓄電デバイス10において、変形抑制部材90の構成は、外装フィルム50の膨張を抑制できる範囲において任意に変更可能である。
図16は、第2変形例の蓄電デバイス10が備える変形抑制部材90の斜視図である。変形抑制部材90は、第8工程において電解液が通過する通過部90Xを有していてもよい。
図16に示される例では、通過部90Xは、変形抑制部材90の第1面91および第2面92を貫通する貫通孔である。変形抑制部材90に形成される通過部90Xの形状、および、数は、任意に選択可能である。
図16に示される例では、第8工程においてガスポケット300の開口を介して注入された電解液の一部は、第2面92と外装フィルム50の内面との僅かな隙間に侵入し、通過部90Xを通過する。このため、第8工程を効率的に実施できる。第2変形例では、第7工程において、変形抑制部材90の第2面92の少なくとも一部と外装フィルム50の内面とが接合される。第2面92のうちの外装フィルム50の内面とシールされる領域は、第1変形例を適用することができる。第2変形例において、第7工程よりも後に第8工程が実施される場合、第7工程では、第2面92のうちの電解液が注入される箇所に対応する部分はシールされずに、第8工程よりも後にシールされることが好ましい。第2変形例では、第8工程よりも後に第7工程を実施してもよい。
【0092】
図17は、第2変形例の別の変形例の変形抑制部材90の斜視図である。
図17に示される例では、変形抑制部材90は、通過部90Yを有する。通過部90Yは、第1側面93Aから第4側面93Dに向けて凹む凹部である。変形抑制部材90に形成される通過部90Yの深さおよび数は、任意に選択可能である。第8工程において、電解液を好適に注入する観点から、通過部90Yは、LR方向において、未シール部71Zと対応する位置に形成されることが好ましい。
図17に示される例では、通過部90Yは、LR方向において、概ね中央に形成される。
【0093】
図18は、第2変形例のさらに別の変形例の変形抑制部材90の斜視図である。
図18に示される例では、変形抑制部材90は、通過部90Zを有する。
図18に示される例では、通過部90Zは、
図17に示される通過部90Yに取り付けられるメッシュ部材である。通過部90Zは、パンチング孔が形成された部材であってもよい。
図18に示される例では、第8工程よりも後に通過部90Zと外装フィルム50の内面とを接合することが好ましい。このため、外装体40の第2面42Aのうちの通過部90Zと接触する部分が膨張することを抑制できる。
【0094】
<2-3.第3変形例>
上記実施形態では、変形抑制部材90は、外装体40の内部に配置されたが、変形抑制部材90は、外装体40の外部に配置されてもよい。
図19は、第3変形例の蓄電デバイス10の正面図である。
図19に示される例では、変形抑制部材90は外装体40の外部において、外装体40の第2面42A、42Bの膨張を抑制するように配置される。変形抑制部材90は、外装体40の第2面42Aおよび第2面42Bのいずれか一方の膨張を抑制するように配置されてもよい。変形抑制部材90が外装体40の外部に配置される場合、変形抑制部材90は、蓋体60と接続されることが好ましい。
図19に示される例では、変形抑制部材90は、接続部材100によって蓋体60と接続されることが好ましい。接続部材100と、変形抑制部材90および蓋体60とは、例えば、凹凸の嵌合によって接続される。例えば、接続部材100に凹部および凸部の一方が形成される場合、変形抑制部材90および蓋体60には、凹部および凸部の他方が形成される。変形抑制部材90、蓋体60、および、接続部材100は、それぞれ別体であってもよく、少なくとも2つが一体的に構成されてもよい。
【0095】
<2-4.第4変形例>
上記実施形態において、外装フィルム50は、変形抑制構造50Xを有してもよい。
図20は、変形抑制構造50Xを有する外装フィルム50を広げた状態の図である。
図20では、外装フィルム50のうちの外装体40の第1面41A、41B、および、第2面42A、42Bに対応する領域の把握を容易にするため、これらの領域の境界に二点鎖線が付されている。
【0096】
図20に示される例では、変形抑制構造50Xは、外装フィルム50のうちの外装体40の第2面42A、42Bを構成する部分に形成される。変形抑制構造50Xは、例えば、外装フィルム50のうちのバリア層52が部分的に厚くなった部分である。別の例では、変形抑制構造50Xは、変形抑制構造50Xを有さない部分よりもバリア層52を構成する金属材料として剛性が高い金属が用いられた箇所である。第4変形例では、変形抑制部材90を省略することもできる。
【0097】
<2-5.第5変形例>
上記実施形態において、第1工程において、電極体20に対して電極端子30および蓋体60を配置し、第2工程において、変形抑制部材90が接合された状態の外装フィルム50によって、電極体20および蓋体60を包んでもよい。
【0098】
<2-6.第6変形例>
上記実施形態において、変形抑制部材90の第2面92の大きさは、外装体40の第2面42Aのうちの蓋体60と接合されない部分と同じ大きさであったが、
図21に示されるように、第2面92の大きさは、第2面42Aのうちの蓋体60と接合されない部分よりも小さくてもよい。第6変形例では、第2面92の少なくとも一部と外装フィルム50の内面とが接合されることが好ましい。
【0099】
<2-7.第7変形例>
上記実施形態において、蓄電デバイス10の外装フィルム50は、FB方向において、2つの蓋体60の少なくとも一方よりも外側に張り出していてもよい。外装フィルム50のうちの蓋体60よりも外側に張り出した部分が閉じられることによって、電極体20は封止される。外装フィルム50のうちの蓋体60よりも張り出した部分は、ゲーベルトップ型容器のように、外装フィルム50の外面同士が接触するように内側に折り畳まれてもよく、ブリック型容器のように、外装体40の任意の面に向けて折り畳まれてもよい。
【0100】
<2-8.第8変形例>
上記実施形態において、外装体40は、2つの蓋体60のうちの一方を有していなくてもよい。この変形例では、FB方向において、外装体40のうちの蓋体60が省略された部分では、外装フィルム50のうちの電極体20よりも外側に張り出した部分が閉じられることによって、電極体20は封止される。外装フィルム50のうちの電極体20よりも外側に張り出した部分は、第7変形例と同様に、ゲーベルトップ型容器、または、ブリック型容器のように折り畳まれてもよい。
【0101】
<2-9.第9変形例>
上記実施形態において、外装体40の外郭形状は、任意に変更可能である。外装体40の外郭形状は、円柱、角柱、または、立方体であってもよい。
【0102】
<2-10.第10変形例>
上記実施形態において、電極体20は、1枚の外装フィルム50によって包まれたが、2枚以上の外装フィルム50によって包まれてもよい。
【符号の説明】
【0103】
10 :蓄電デバイス
20 :電極体
40 :外装体
50 :外装フィルム
50X:変形抑制構造
60 :蓋体
60Z:蓋ユニット
70 :第1封止部
90 :変形抑制部材
90X、90Y、90Z :通過部
91 :第1面
92 :第2面
93 :側面