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特開2024-176983接着フィルムの製造方法及び接着フィルム、並びに、構造体の製造方法及び構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176983
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】接着フィルムの製造方法及び接着フィルム、並びに、構造体の製造方法及び構造体
(51)【国際特許分類】
   C09J 11/06 20060101AFI20241212BHJP
   C09J 7/35 20180101ALI20241212BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
C09J11/06
C09J7/35
C09J201/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095916
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113424
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 信博
(74)【代理人】
【識別番号】100185845
【弁理士】
【氏名又は名称】穂谷野 聡
(72)【発明者】
【氏名】松原 真
(72)【発明者】
【氏名】神谷 和伸
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 恭志
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA13
4J004AB05
4J004AC01
4J004CA01
4J004CB03
4J004CC02
4J004CE01
4J004FA05
4J040EC001
4J040GA05
4J040GA11
4J040HA306
4J040HD43
4J040JB02
4J040KA12
4J040KA14
4J040KA16
4J040KA32
4J040KA42
4J040LA05
4J040MA10
4J040MB03
4J040NA19
4J040PA25
4J040PA30
(57)【要約】
【課題】優れた保存安定性を有する接着フィルムの製造方法及び接着フィルム、並びに、構造体の製造方法及び構造体を提供する。
【解決手段】硬化剤を含まない硬化剤非含有接着剤組成物のフィルム層を成形する成形工程と、潜在性硬化剤が配置された転写基板から前記フィルム層に潜在性硬化剤を転写し、前記潜在性硬化剤を、前記フィルム層の少なくとも一方の面から露出させるか、又は前記フィルム層の少なくとも一方の面に近接させて配置する配置工程とを有する。フィルム層の成形後に潜在性硬化剤を配置することにより、硬化反応の進行を抑制し、優れた保存安定性を得ることができる。また、潜在性硬化剤がフォルム層の表面に配置されることにより、硬化剤による反応が開始され、優れた接着強度を得ることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化剤を含まない硬化剤非含有接着剤組成物のフィルム層を成形する成形工程と、
潜在性硬化剤が配置された転写基板から前記フィルム層に潜在性硬化剤を転写し、前記潜在性硬化剤を、前記フィルム層の少なくとも一方の面から露出させるか、又は前記フィルム層の少なくとも一方の面に近接させて配置する配置工程と
を有する接着フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記潜在性硬化剤が、前記フィルム層に塊状で配置される請求項1記載の接着フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記潜在性硬化剤が、マイクロカプセル型である請求項1又は2記載の接着フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記硬化剤非含有接着剤組成物が、膜形成樹脂と、カチオン重合性化合物と、シラン系化合物とを含み、
前記潜在性硬化剤が、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤である請求項1又は2記載の接着フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記フィルム層に導電粒子を配置する導電粒子配置工程をさらに有する請求項1又は2記載の接着フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記成形工程では、前記硬化剤非含有接着剤組成物に導電粒子を配合し、導電粒子を含有するフィルム層を成形する請求項1又は2記載の接着フィルムの製造方法。
【請求項7】
潜在性硬化剤が、少なくとも一方の面から露出するか、又は少なくとも一方の面に近接して配置されてなる接着剤組成物のフィルム層を有し、
前記潜在性硬化剤の平均粒径が、2μm以上50μm以下であり、
前記フィルム層の厚みが、3μm以上40μm以下である接着フィルム。
【請求項8】
潜在性硬化剤が、少なくとも一方の面から露出するか、又は少なくとも一方の面に近接して配置され、導電粒子を含有するフィルム層を有し、
前記潜在性硬化剤の平均粒径が、2μm以上50μm以下であり、
前記フィルム層の厚みが、3μm以上40μm以下である導電フィルム。
【請求項9】
潜在性硬化剤が、少なくとも一方の面から露出するか、又は少なくとも一方の面に近接して配置され、導電粒子を含有するフィルム層を有し、
前記潜在性硬化剤の平均粒径が、2μm以上50μm以下であり、
前記フィルム層の厚みが、3μm以上40μm以下である異方性導電フィルム。
【請求項10】
前記請求項7記載の接着フィルムを介して、第1の部品と第2の部品とを接着する構造体の製造方法。
【請求項11】
前記請求項7記載の接着フィルム、前記請求項8記載の導電フィルム、又は前記請求項9記載の異方性導電フィルムを介して、第1の部品の端子と第2の部品の端子とを接続する接続構造体の製造方法。
【請求項12】
前記請求項7記載の接着フィルムを介して、第1の部品と第2の部品とが接着された構造体。
【請求項13】
前記請求項7記載の接着フィルム、前記請求項8記載の導電フィルム、又は前記請求項9記載の異方性導電フィルムを介して、第1の電子部品の端子と第2の電子部品の端子とが接続された接続構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、硬化剤を含有する接着フィルムの製造方法及び接着フィルム、並びに、構造体の製造方法及び構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電子部品の実装において、対向する電子部品間に接着フィルムを挟持し、ツールで加熱押圧することで硬化させるものがある。このような実装方法は、部品が小型化したり薄くなったりすることで、熱によるダメージがより忌避されるため、実装温度の低温化が強く望まれている。
【0003】
また、接着フィルムに用いられる硬化剤として、例えば熱や光などの外部刺激によって初めて反応活性となる潜在性硬化剤が利用されている。例えば、特許文献1には、低温反応に使える硬化剤をカプセル化するなどして潜在化することで、2液混合して使用する接着剤を1液型に使用可能にする技術が記載されている。
【0004】
しかしながら、潜在性硬化剤を使用する場合、フィルム製造時の溶剤の量や種類に制約があり、配合物にも制約がある。また、低温反応性を求めると、フィルム成膜時の乾燥の熱により硬化反応が進行してしまい、保存安定性が低下してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-056274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本技術は、前述した課題を解決するものであり、優れた保存安定性を有する接着フィルムの製造方法及び接着フィルム、並びに、構造体の製造方法及び構造体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題につき鋭意検討した結果、下記技術によって上記課題を解決できることを見出し、本技術を完成するに至った。
[1]
硬化剤を含まない硬化剤非含有接着剤組成物のフィルム層を成形する成形工程と、
潜在性硬化剤が配置された転写基板から前記フィルム層に潜在性硬化剤を転写し、前記潜在性硬化剤を、前記フィルム層の少なくとも一方の面から露出させるか、又は前記フィルム層の少なくとも一方の面に近接させて配置する配置工程と
を有する接着フィルムの製造方法。
[2]
前記潜在性硬化剤が、前記フィルム層に塊状で配置される請求項[1]記載の接着フィルムの製造方法。
[3]
前記潜在性硬化剤が、マイクロカプセル型である[1]又は[2]記載の接着フィルムの製造方法。
[4]
前記硬化剤非含有接着剤組成物が、膜形成樹脂と、カチオン重合性化合物と、シラン系化合物とを含み、
前記潜在性硬化剤が、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤である[1]又は[2]記載の接着フィルムの製造方法。
[5]
前記フィルム層に導電粒子を配置する導電粒子配置工程をさらに有する[1]又は[2]記載の接着フィルムの製造方法。
[6]
前記成形工程では、前記硬化剤非含有接着剤組成物に導電粒子を配合し、導電粒子を含有するフィルム層を成形する[1]又は[2]記載の接着フィルムの製造方法。
[7]
潜在性硬化剤が、少なくとも一方の面から露出するか、又は少なくとも一方の面に近接して配置されてなる接着剤組成物のフィルム層を有し、
前記潜在性硬化剤の平均粒径が、2μm以上50μm以下であり、
前記フィルム層の厚みが、3μm以上40μm以下である接着フィルム。
[8]
潜在性硬化剤が、少なくとも一方の面から露出するか、又は少なくとも一方の面に近接して配置され、導電粒子を含有するフィルム層を有し、
前記潜在性硬化剤の平均粒径が、2μm以上50μm以下であり、
前記フィルム層の厚みが、3μm以上40μm以下である導電フィルム。
[9]
潜在性硬化剤が、少なくとも一方の面から露出するか、又は少なくとも一方の面に近接して配置され、導電粒子を含有するフィルム層を有し、
前記潜在性硬化剤の平均粒径が、2μm以上50μm以下であり、
前記フィルム層の厚みが、3μm以上40μm以下である異方性導電フィルム。
[10]
前記[7]記載の接着フィルムを介して、第1の部品と第2の部品とを接着する構造体の製造方法。
[11]
前記[7]記載の接着フィルム、前記[8]記載の導電フィルム、又は前記[9]記載の異方性導電フィルムを介して、第1の部品の端子と第2の部品の端子とを接続する接続構造体の製造方法。
[12]
前記[7]記載の接着フィルムを介して、第1の部品と第2の部品とが接着された構造体。
[13]
前記[7]記載の接着フィルム、前記[8]記載の導電フィルム、又は前記[9]記載の異方性導電フィルムを介して、第1の電子部品の端子と第2の電子部品の端子とが接続された接続構造体。
【発明の効果】
【0008】
本技術によれば、フィルム成形後に潜在性硬化剤を配置することにより、潜在性硬化剤の溶剤による硬化反応の進行を抑制し、優れた保存安定性を得ることができる。また、潜在性硬化剤がフィルム層の表面に配置されることにより、硬化剤による反応が開始され、優れた接着強度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施の形態に係る接着フィルムの製造から使用までを示すフローチャートである
図2図2は、潜在性硬化剤が充填された転写基板とフィルム層とを対向させた状態を模式的に示す断面図である。
図3図3は、フィルム層の表面に潜在性硬化剤を付着させた状態を模式的に示す断面図である。
図4図4は、フィルム層に潜在性硬化剤を押し込んだ状態を模式的に示す断面図である。
図5図5は、第1の形態の接着フィルムを模式的に示す断面図である。
図6図6は、第1の形態の接着フィルムの変形例を模式的に示す断面図である。
図7図7は、第2の形態の接着フィルムを模式的に示す断面図である。
図8図8は、第3の形態の接着フィルムを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本技術の実施の形態について、図面を参照しながら下記順序にて詳細に説明する。
1.接着フィルムの製造方法
2.接着フィルム
3.構造体の製造方法及び構造体
4.実施例
【0011】
<1.接着フィルムの製造方法>
本実施の形態に係る接着フィルムの製造方法は、硬化剤を含まない硬化剤非含有接着剤組成物のフィルム層を成形する成形工程と、潜在性硬化剤が配置された転写基板から前記フィルム層に潜在性硬化剤を転写し、前記潜在性硬化剤を、前記フィルム層の少なくとも一方の面から露出させるか、又は前記フィルム層の少なくとも一方の面に近接させて配置する配置工程とを有するものである。これにより、潜在性硬化剤の溶剤による硬化反応の進行を抑制し、優れた保存安定性を得ることができる。
【0012】
ここで、硬化剤非含有接着剤組成物とは、硬化剤を含んでおらず、例えば熱や光などの外部刺激によって接着剤として機能しないものをいう。また、潜在性硬化剤とは、例えば熱や光などの外部刺激によって初めて反応活性となり、粉末固体の粒子であるものをいう。潜在性硬化剤としては、例えば、硬化剤成分を芯物質(コア)として、有機ポリマー、無機化合物などの被覆剤(シェル)で被覆したマイクロカプセル型、多孔質粒子に硬化剤成分を内包した含浸型などが挙げられる。
【0013】
図1は、本実施の形態に係る接着フィルムの製造から使用までを示すフローチャートである。接着フィルムの製造から使用までは、図1に示すように、硬化剤非含有接着剤組成物を配合する配合工程S1と、硬化剤非含有接着剤組成物を塗布・乾燥させ、フィルムを得る塗布・乾燥工程S2と、フィルムの表面に硬化剤を押し込む硬化剤押し込み工程S3と、所定幅のフィルムを得るスリット工程S4と、所定幅のフィルムを巻き回すリール工程S5と、リールからフィルムを引き出し、フィルムを介して第1の電子部品と2の電子部品とを圧着させる圧着工程S6と、第1の電子部品と2の電子部品とを備える構造体を得る構造体工程S7とを有する。なお、接着フィルムの一例として、導電粒子を配置する異方性導電フィルムを製造する場合、導電粒子の配置工程は、硬化剤押込み工程S3の前後に設けることが好ましい。また、配合工程S1において、予め導電粒子を混合してもよく、この場合、導電粒子は、接着フィルム中に立体的にランダムに分散される。
【0014】
従来法は、硬化剤を投入する配合時から圧着工程までを硬化剤の反応を見越して逆算して、接着フィルムの製造が開始されるため、リールにフィルムを巻き回した巻装体にする出荷終了まで製造ラインを連続して運転しなければならず、製造管理に制約がある。また、巻装体は、出荷後も接着フィルムの使用完了(接続工程完了)まで構造体の製造管理の制約の元、保管管理されることになる。
【0015】
一方、本実施の形態では、配合工程S1において、硬化剤を投入しないため、溶剤の量や種類の制約を少なくすることができる。また、塗布・乾燥工程S2において、フィルム成膜時の乾燥の熱により硬化反応が進行してしまうのを防ぐことができる。また、硬化剤押し込み工程S3が硬化剤の反応開始になり、硬化剤押し込み工程S3前に製造工程(量産ライン)を一旦休止できるため、圧着工程S6から逆算したとき、製品としてのライフを簡単にコントロールすることができる。また、製造スケジュールや時間管理の融通が利くようになるため、従来と比較して製造管理の制約が大幅に減少する、といった産業上の利点が生じる。また、本実施の形態は、接着フィルムがリールに巻かれた巻装体であってもよく、接着フィルムの長さは、例えば5m以上であることが装置を用いた接続ができるため好ましく、5000m以下であることが装置に取り付ける上では好ましい。また、接着フィルムの幅は、例えば0.5mm以上60cm以下であることが好ましい。また、接着フィルムは、枚葉物であってもよく、その大きさに特に制限はないが、例えば1辺が5cm以上であることが好ましく、20cm以上であることが使用の上ではより好ましい。枚葉物である場合の1辺の最大は、例えば200cm以下であることが取り扱い上好ましい。
【0016】
以下、図2図4を参照して、フィルム層を成形する成形工程(A)、及び潜在性硬化剤を配置する配置工程(B)について説明する。図2は、潜在性硬化剤が充填された転写基板とフィルム層とを対向させた状態を模式的に示す断面図であり、図3は、フィルム層の表面に潜在性硬化剤を付着させた状態を模式的に示す断面図であり、図4は、フィルム層に潜在性硬化剤を押し込んだ状態を模式的に示す断面図である。
【0017】
[成形工程(A)]
成形工程(A)では、先ず、硬化剤を含まない硬化剤非含有接着剤組成物を調整する。接着剤組成物は、公知の絶縁性バインダーを用いることができる。硬化型としては、熱硬化型、光硬化型、光熱併用硬化型などが挙げられ、例えば、エポキシ化合物と熱カチオン重合開始剤とを含む熱カチオン重合型樹脂組成物、エポキシ化合物と熱アニオン重合開始剤とを含む熱アニオン重合型樹脂組成物、(メタ)アクリレート化合物と光ラジカル重合開始剤とを含む光ラジカル重合型樹脂組成物、(メタ)アクリレート化合物と熱ラジカル重合開始剤とを含む熱ラジカル重合型樹脂組成物などが挙げられる。すなわち、硬化剤非含有接着剤組成物は、例えば熱カチオン重合型樹脂組成物の場合、熱カチオン重合開始剤を含まずに、エポキシ化合物などのカチオン重合性化合物を含むものである。
【0018】
また、硬化剤非含有接着剤組成物の調整には、溶剤を用いることができる。溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)、メチルエチルケトン(MEK)などが挙げられる。
【0019】
次に、硬化剤非含有接着剤組成物を基材フィルム11上に塗布し、乾燥させて溶剤を蒸発させ、基材フィルム上に所定厚みの硬化剤非含有接着剤組成物のフィルム層12を形成する。フィルム層12の溶剤の残存量は、好ましくは1%未満、より好ましくは0.5%未満、さらに好ましくは0.1%未満である。これにより、潜在性硬化剤の溶剤による硬化反応の進行を抑制し、優れた保存安定性を得ることができる。基材フィルム11は、例えばシリコーン樹脂により剥離処理されたPETフィルムを好適に用いることができる。
【0020】
[配置工程(B)]
配置工程(B)では、先ず、フィルム層12の第1面12Aに潜在性硬化剤13を保持させる。潜在性硬化剤13を保持させる方法としては、転写基板20を用いてフィルム層12に潜在性硬化剤13を転写する転写方法、フィルム層12に潜在性硬化剤13を散布する散布方法などが挙げられる。これらの中でも転写方法は、潜在性硬化剤を平面視で均一に配置することができ、また転写後に平板等で押込めば厚み方向の位置も均一に配置することができるため、優れた接着強度(ダイシェア強度、ピール強度)を得ることができる。
【0021】
図2に示すように、転写方法では、潜在性硬化剤13が充填された転写基板20とフィルム層12とを対向させ、転写基板20にフィルム層12を押し当て、フィルム層12の第1面12Aに潜在性硬化剤13を保持させる。
【0022】
転写基板20は、所定の個数密度の凹部が所定配列で形成されている。このような転写基板20は、例えば、所定の個数密度の凸部を有する所定配列の金型を作製し、金型に樹脂ペレットを溶融させた状態で流し込み、冷やして固めることにより作製することができる。また、転写基板20としては、例えば、シリコン、セラミックス、ガラス、ステンレススチールなどの金属等の無機材料や、各種樹脂等の有機材料などに対し、フォトリソグラフ法等の公知の開口形成方法によって開口を形成したものであってもよい。また、転写基板20は、板状であっても、ロール状であってもよい。
【0023】
次に、図3及び図4に示すように、フィルム層12の第1面12Aに付着した潜在性硬化剤13をフィルム層12に押し込む。これにより、潜在性硬化剤13を、フィルム層12の第1面12Aから露出させるか、又はフィルム層12の第1面12Aに近接させ、平面視で分散させて配置することができる。また、潜在性硬化剤13のフィルム層12への埋込量は、潜在性硬化剤13の押し込み時の押圧力、温度等により調整することができる。
【0024】
また、転写基板20の一つの凹部に複数の潜在性硬化剤13が充填され、潜在性硬化剤13が塊状となって、フィルム層12に配置されていてもよい。これにより、潜在性硬化剤13の粒径のバラツキが大きい場合でも、潜在性硬化剤13をフィルム層12に配列させることができる。
【0025】
また、フィルム層12に配列された潜在性硬化剤13の個数密度は、転写基板20の凹部の個数密度と同等であることが好ましく、潜在性硬化剤13の転写率が低い場合転写基板20の凹部の個数密度以下であっても構わない。潜在性硬化剤13が塊状となって、フィルム層12に配列されている場合、潜在性硬化剤13の個数密度は、塊を一つとしてカウントすればよい。すなわち、潜在性硬化剤13の塊の個数密度としてもよい。なお、潜在性硬化剤13の個数密度は、顕微鏡観察で計測して求めることができる。また、潜在性硬化剤13の個数密度は、潜在性硬化剤13を含有させた接着剤組成物における潜在性硬化剤13の含有量、フィルム層12の面積、潜在性硬化剤13の転写率などに基づいて求めることができる。
【0026】
また、フィルム層12の第2面に潜在性硬化剤13を配置する場合も、前述と同様に、フィルム層12の第2面に潜在性硬化剤13を保持させ、潜在性硬化剤13をフィルム層12に押し込む。これにより、フィルム層12の両面に潜在性硬化剤13を配置することができる。
【0027】
また、接着フィルムの製造方法は、フィルム層12に導電粒子を配置する導電粒子配置工程をさらに有してもよい。導電粒子配置工程では、潜在性硬化剤13を配置する配置工程(B)と同様、転写基板を用いてフィルム層12に導電粒子を転写する転写方法、フィルム層12に導電粒子を散布する散布方法などで導電粒子を保持させ、導電粒子をフィルム層12に押し込むことにより、フィルム層12に導電粒子を配置することができる。また、成形工程(A)において、導電粒子を硬化剤非含有接着剤組成物に配合し、フィルム層12に導電粒子を分散させてもよい。これにより、導電粒子を含有する導電フィルム、異方性導電フィルムを作製することができる。
【0028】
フィルム層への潜在性硬化剤や導電粒子の配置及び埋め込みの状態や樹脂の形状は、特許第6187665号に準じたものであってもよい。
【0029】
また、潜在性硬化剤13を配置した接着フィルム、導電フィルム、又は異方性導電フィルムは、フィルム層12を積層したものであってもよい。これにより、例えば、接着強度(ダイシェア強度、ピール強度)を向上させたり、導電粒子の粒子捕捉性を向上させたりすることができる。
【0030】
このような接着フィルムの製造方法によれば、塗布されたフィルムに潜在性硬化剤を配置することにより、フィルムの成膜時にかかる温度や耐溶剤性の観点から使用が困難であった硬化剤を使用可能とすることができる。また、例えば、潜在性硬化剤がアルミニウムキレート系潜在性硬化剤であり、導電粒子を配置した場合、硬化剤の潜在性を損なうことなく、潜在性を維持しつつ低温で硬化し良好な接着が可能な異方性導電フィルムを製造することができる。また、この潜在性硬化剤及び導電粒子が配置された異方性導電フィルムを電子部品同士の異方性導電接続に使用すると、低温で硬化し良好な接着をするとともに、安定的な粒子配列を有した接続をすることができる。
【0031】
また、本製法は、潜在性硬化剤を液状の接着剤組成物中に配合するのではなく、接着剤組成物をフィルム形成した後、フィルム層の表面近傍に潜在性硬化剤を配置、存在させるものである。本製法による接着フィルムと、潜在性硬化剤を配合した樹脂組成物(液状、ペースト状、スラリー状など)を塗布形成した接着フィルムとの違いは、潜在硬化剤が配置されているか否かで区分することができる。潜在性硬化剤を所定位置に設けることができることは、接着フィルムとして利便性が高まり、また性能をより精緻に制御できることになり、接着剤組成物の配合上の制約を受けないことになる。利便性についての一例は、先に挙げた接着フィルムの製造スケジュールに都合をつけることであり、性能をより精緻に制御できる一例は、潜在性硬化剤を接着フィルムの平面状の所定の位置のみに設けることが可能になり、潜在性硬化剤に平面的な疎密を持たせることで接着フィルム平面内において硬化反応を変化させる(硬化が早く進行する場所とそうではない場所を作れる、など)ことができる、といったことが挙げられる。
【0032】
<2.接着フィルム>
本実施の形態に係る接着フィルムは、潜在性硬化剤が、少なくとも一方の面から露出するか、又は少なくとも一方の面に近接して配置されてなる接着剤組成物のフィルム層を有するものである。潜在性硬化剤がフォルム層の表面に配置されることにより、硬化反応が開始され、優れた接着強度(ダイシェア強度、ピール強度)を得ることができる。
【0033】
前述と同様、接着剤組成物は、公知の絶縁性バインダーを用いることができる。硬化型としては、熱硬化型、光硬化型、光熱併用硬化型などが挙げられ、例えば、エポキシ化合物と熱カチオン重合開始剤とを含む熱カチオン重合型樹脂組成物、エポキシ化合物と熱アニオン重合開始剤とを含む熱アニオン重合型樹脂組成物、(メタ)アクリレート化合物と光ラジカル重合開始剤とを含む光ラジカル重合型樹脂組成物、(メタ)アクリレート化合物と熱ラジカル重合開始剤とを含む熱ラジカル重合型樹脂組成物などが挙げられる。
【0034】
潜在性硬化剤としては、例えば、アルミニウムキレート系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、ヒドラジド系硬化剤、三フッ化ホウ素-アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ポリアミンの塩、ジシアンジアミドなどが挙げられる。これらの潜在性硬化剤は、1種を単独で、又は2種以上を混合して使用することができ、分解促進剤、抑制剤等を混合して用いてもよい。これらの中でも、前述の接着フィルムの製造方法を用いることにより、耐溶剤性の点で使用が困難であったアルミニウムキレート系潜在性硬化剤を用いることができる。アルミニウムキレート系潜在性硬化剤は、カチオン重合性化合物、及びシラン系化合物に添加することにより、低温速硬化性の熱カチオン重合型樹脂組成物を提供することができる。
【0035】
以下では、フィルム層を形成する接着剤組成物の一例として、膜形成樹脂と、カチオン重合性化合物と、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤と、シラン系化合物とを含む熱カチオン重合型樹脂組成物について説明する。
【0036】
(膜形成樹脂)
膜形成樹脂は、例えば平均分子量が10000以上の高分子量樹脂に相当し、フィルム形成性の観点から、10000~80000程度の平均分子量であることが好ましい。膜形成樹脂としては、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ブチラール樹脂等の種々の樹脂が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、膜形成状態、接続信頼性等の観点からフェノキシ樹脂を好適に用いることが好ましい。膜形成樹脂の含有量は、好ましくは20~80wt%、より好ましくは30~60wt%である。
【0037】
(カチオン重合性化合物)
カチオン重合性化合物としては、エポキシ化合物、オキセタン化合物から選択される少なくとも1種を用いることができる。
【0038】
エポキシ化合物としては、5官能以下のものを用いることが好ましい。5官能以下のエポキシ化合物としては、例えば、グリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、脂環型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、ノボラックフェノール型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物などが挙られ、これらの中から1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。市場で入手可能な脂環式エポキシ樹脂の具体例としては、(株)ダイセルの商品名「セロキサイド8000」などを挙げることができる。
【0039】
オキセタン化合物としては、例えば、ビフェニル型オキセタン化合物、キシリレン型オキセタン化合物、シルセスキオキサン型オキセタン化合物、エーテル型オキセタン化合物、フェノールノボラック型オキセタン化合物、シリケート型オキセタン化合物などが挙げられ、これらの中から1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。市場で入手可能なビフェニル型のオキセタン化合物の具体例としては、UBE(株)の商品名「OXBP」などを挙げることができる。
【0040】
カチオン重合性化合物の含有量は、好ましくは10~70wt%、より好ましくは20~50wt%である。カチオン重合性化合物の含有量が多すぎると硬化収縮が大きくなる傾向にある。
【0041】
(アルミニウムキレート系潜在性硬化剤)
アルミニウムキレート系潜在性硬化剤としては、例えば、アルミニウムキレート系硬化剤が、多官能イソシアネート化合物を界面重合させると同時に、ラジカル重合開始剤の存在下でラジカル重合性化合物をラジカル重合させて得た多孔性樹脂に保持されているものなどが挙げられる。
【0042】
アルミニウムキレート系硬化剤の具体例としては、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビスオレイルアセトアセテート、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレートなどが挙げられる。
【0043】
アルミニウムキレート系潜在性硬化剤は、主として界面重合法を利用して製造されるため、多孔性樹脂の形状は球状であり、孔の大きさは、硬化性及び潜在性の点から、好ましくは5~150nmである。また、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤の平均粒径は、硬化性及び分散性の点から、好ましくは0.5~100μmである。
【0044】
また、特許第6489494号のように、多孔性樹脂マトリックス中に存在する微細な多数の孔にアルミニウムキレート系硬化剤が保持され、その表面が、アルコキシシランカップリング剤により不活性化処理されていることが好ましい。
【0045】
表面不活性化処理に使用するアルコキシシランカップリング剤は、以下に説明するように二つのタイプに分類される。
【0046】
第一のタイプは、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤の表面の活性なアルミニウムキレート系硬化剤と反応してアルミニウムキレート-シラノール反応物を生成し、それによりアルミニウム原子に隣接する酸素の電子密度を小さくすること(言い換えれば、酸素に結合している水素の酸性度を低下させること、更に言い換えれば、酸素と水素との間の分極率を低下させること)で活性を低下させるタイプのシランカップリング剤である。このタイプのシランカップリング剤としては、電子供与性基がケイ素原子に結合したアルコキシシランカップリング剤、好ましくはアルキル基を有するアルキルアルコキシシランカップリング剤が挙げられる。具体的には、メチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0047】
第二のタイプは、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤の表面の活性なアルミニウムキレート系硬化剤に、分子内のエポキシ基を反応させて生成したエポキシ重合鎖で表面を被覆して活性を低下させるタイプのシランカップリング剤である。このタイプのシランカッ
プリング剤としては、エポキシシランカップリング剤が挙げられる。具体的には、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(KBM-303、信越化学工業(株))、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-403、信越化学工業(株))等が挙げられる。
【0048】
アルミニウムキレート系潜在性硬化剤のアルコキシシランカップリング剤による表面不活性化処理の方法は、有機溶媒、好ましくは非極性溶媒、特にシクロヘキサンにアルコキシシランカップリング剤を好ましくは5~80%(質量)で溶解させた溶液に、25~80℃で1~20時間浸漬する方法が挙げられる。また、浸漬の際に撹拌してもよい。
【0049】
アルミニウムキレート系潜在性硬化剤の含有量は、好ましくは1~50wt%、より好ましくは3~20wt%である。アルミニウムキレート系潜在性硬化剤の含有量は、少なすぎると十分に硬化せず、多すぎるとその組成物の硬化物の樹脂特性(例えば、可撓性)が低下する傾向にある。
【0050】
(シラン系化合物)
シラン系化合物は、アルミニウムキレート系硬化剤と共働してカチオン重合を開始させ、硬化を促進させることができる。シラン系化合物としては、高立体障害性のシラノール化合物、分子中に1~3の低級アルコキシ基を有するシランカップリング剤などを挙げることができる。
【0051】
シラノール化合物の具体例としては、トリス(tert-ペントキシ)シラノール、トリス(tert-ブトキシ)シラノール、ビス(tert-ブトキシ)(イソプロポキシ)シラノールなどが挙げられる。また、シランカップリング剤の具体例としては、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-スチリルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0052】
シラノール化合物の含有量は、好ましくは1~50wt%、より好ましくは3~20wt%である。シラノール化合物の含有量は、少なすぎると硬化不足となり、多すぎると硬化後の樹脂特性が低下する傾向にある。
【0053】
(他の添加物)
また、熱カチオン重合型樹脂組成物は、無機フィラーを含有することが好ましい。無機フィラーとしては、シリカ、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム等を用いることができる。無機フィラーは、単独でも2種類以上を併用してもよい。無機フィラーの含有量は、好ましくは1~50wt%、より好ましくは3~20wt%である。また、熱カチオン重合型樹脂組成物は、必要に応じて、顔料、帯電防止剤などを含有させることができる。
【0054】
このような熱カチオン重合型樹脂組成物によれば、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤を用いているため、一剤型であるにも関わらず、優れた保存安定性を得ることができる。また、高立体障害性のシラノール化合物を含有することにより、低温速硬化でカチオン重合させることができる。
【0055】
また、接着フィルムは、導電粒子を用いて導電フィルム又は異方性導電フィルムとしてもよい。この場合、導電粒子は、樹脂組成物に混合し、立体的に分散させても、フィルム形成後に配置してもよい。導電粒子をフィルム形成後に配置させる場合、潜在性硬化剤と同様に、フィルム表面に面一で二次元的に配置され、規則性を持っていてもよい。導電粒子としては、導電性フィルムにおいて使用されている公知の導電粒子を用いることができる。例えば、ニッケル、鉄、銅、アルミニウム、錫、鉛、クロム、コバルト、銀、金等の各種金属や金属合金の粒子、金属酸化物、カーボン、グラファイト、ガラス、セラミック、プラスチック等の粒子の表面に金属をコートしたもの、これらの粒子の表面に更に絶縁薄膜をコートさせる、絶縁性微粒子を付着させる、といった絶縁処理をしたもの等が挙げられる。これらの中から2種以上を混在させてもよい。樹脂粒子の表面に金属をコートしたものである場合、樹脂粒子としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリル・スチレン(AS)樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ジビニルベンゼン系樹脂、スチレン系樹脂等の粒子を用いることができる。
【0056】
導電粒子の平均粒径は、特に制限されないが、平均粒径の下限は、1μm以上であることが好ましく、平均粒径の上限は、例えば、接続構造体における導電粒子の捕捉効率の観点から、例えば50μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがさらに好ましい。なお、平均粒径は、画像型粒度分布計(一例として、FPIA-3000:マルバーン社製)により測定した積算値50%での粒径とすることができる。
【0057】
[第1の形態]
図5は、第1の形態の接着フィルムを模式的に示す断面図である。図5に示すように、第1の形態の接着フィルムは、潜在性硬化剤33が、第1面32Aから露出するか、又は少なくとも第1面32Aに近接して配置されてなる接着剤組成物のフィルム層32を有する。
【0058】
フィルム層32の厚みTの下限は、例えば潜在性硬化剤33の平均粒径と同じであってもよく、好ましくは平均粒径の1.3倍以上もしくは3μm以上とすることができる。また、フィルム層32の厚みTの上限は、例えば40μm以下もしくは平均粒径の12倍以下とすることができる。フィルム厚みは、公知のマイクロメータやデジタルシックネスゲージを用いて測定することができる。フィルム厚みは、例えば10箇所以上を測定し、平均値として求めることができる。
【0059】
潜在性硬化剤33の平均粒径の下限は、2μm以上であることが好ましく、粒子径の上限は、例えば50μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがさらに好ましい。なお、平均粒径は、画像型粒度分布計(一例として、FPIA-3000:マルバーン社製)により測定した積算値50%での粒径とすることができる。
【0060】
図6は、第1の形態の接着フィルムの変形例を模式的に示す断面図である。図6に示すように、接着フィルムは、潜在性硬化剤34が塊状でフィルム層32に配置されていてもよい。塊状である場合、塊の大きさは、前述した上限及び下限を満たすことが好ましい。塊状の潜在性硬化剤33の平均粒径は、SEMなどの電子顕微鏡観察から求めることができる。この場合、粒子径を測定するサンプル数を200以上とすることが望ましい。
【0061】
フィルム層32における潜在性硬化剤33の埋め込み深さTの下限は、好ましくは潜在性硬化剤33の平均粒径の0.8倍以上、より好ましくは1.0倍以上であり、埋め込み深さTの上限は、好ましくは潜在性硬化剤33の平均粒径の1.5倍以下、より好ましくは1.2倍以下である。すなわち、潜在性硬化剤33は、フィルム層32の表面に露出していてもよく、完全に埋まっていてもよい。フィルム層における潜在性硬化剤の埋め込み深さは、SEMなどの電子顕微鏡観察から求めることができる。
【0062】
潜在性硬化剤33は、第1面32Aの平面視において、ランダムに配置されていてもよく、規則性を有して配置さていてもよい。これらの中でも、潜在性硬化剤33の配置は、格子状、千鳥状等の規則的な配列とすることが好ましい。格子状としては、斜方格子、六方格子、正方格子、矩形格子、平行体格子などが挙げられる。これにより、表面に配置された潜在性硬化剤33の粒子面密度が均一となり、接着強度(ダイシェア強度、ピール強度)をさらに向上させることができる。潜在性硬化剤は、単独で配置されていてもよく、集合し塊状になって配置されていてもよい。集合している場合も、集合した塊が上記のように規則性をもって配置されていることが好ましい。
【0063】
[第2の形態]
図7は、第2の形態の接着フィルムを模式的に示す断面図である。図7に示すように、第2の形態の接着フィルムは、潜在性硬化剤43Aが、第1面42Aから露出するか、又は第1面42Aに近接して配置されてなり、潜在性硬化剤43Bが、第2面42Bから露出するか、又は第2面42Bに近接して配置されてなる接着剤組成物のフィルム層42を有する。
【0064】
フィルム層42の厚みの下限は、例えば潜在性硬化剤43A、43Bの平均粒径と同じであってもよく、好ましくは平均粒径の1.3倍以上もしくは3μm以上とすることができる。フィルム層42の厚みが、潜在性硬化剤43Aの平均粒径と潜在性硬化剤43Bの平均粒径の合計の2倍未満の場合、平面視において第1面42Aの潜在性硬化剤43Aと第2面42Bの潜在性硬化剤43Bとが重ならないように配置することが望ましい。また、フィルム層42の厚みは、例えば潜在性硬化剤43Aの平均粒径と潜在性硬化剤43Bの平均粒径の合計と同じであってもよく、好ましくは平均粒径の合計の1.3倍以上とすることができる。また、フィルム層42の厚みの上限は、例えば40μm以下もしくは例えば潜在性硬化剤43Aの平均粒径と潜在性硬化剤43Bの平均粒径の合計の12倍以下とすることができる。フィルム層42における潜在性硬化剤43Aの埋め込み深さT及び潜在性硬化剤43Aの埋め込み深さTは、第1の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0065】
また、潜在性硬化剤43A、43Bをフィルム層42の両面に配置した場合、フィルム層42を積層した場合、又は潜在性硬化剤33を片面に配置したフィルム層32を積層した場合、隣接する潜在性硬化剤のフィルム厚み方向の距離Dは、好ましくは潜在性硬化剤の平均粒径の5倍以下、より好ましくは3倍以下、さらに好ましくは2倍以下である。これにより、潜在性硬化剤のフィルム厚み方向の偏りが小さくなるため、優れた接着性を得ることができる。フィルム層における隣接する潜在性硬化剤のフィルム厚み方向の距離は、SEMなどの電子顕微鏡観察によって一方に配置された潜在性硬化剤の中心の平均位置と、他方に配置された潜在性硬化剤の中心の平均位置との間の距離として求めることができる。
【0066】
潜在性硬化剤43A、43Bは、第1の形態と同様、第1面42A又は第2面42Bの平面視において、ランダムに配置されていてもよく、規則性を有して配置さていてもよい。これらの中でも、潜在性硬化剤43A、43Bの配置は、格子状、千鳥状等の規則的な配列とすることが好ましい。これにより、両面に配置された潜在性硬化剤43A、43Bの粒子面密度が均一となり、接着強度(ダイシェア強度、ピール強度)をさらに向上させることができる。
【0067】
[第3の形態]
図8は、第3の形態の接着フィルムを模式的に示す断面図である。図8に示すように、第3の形態の接着フィルムは、潜在性硬化剤53Aが、第1面52Aから露出するか、又は第1面52Aに近接して配置されてなり、導電粒子54が、第2面52Bから露出するか、又は第2面52Bに近接して配置されてなる接着剤組成物のフィルム層52を有する。また、第3の形態の接着フィルムは、潜在性硬化剤43Aが、第1面42Aから露出するか、又は第1面42Aに近接して配置されてなり、潜在性硬化剤43Bが、第2面42Bから露出するか、又は第2面42Bに近接して配置されてなる接着剤組成物のフィルム層42を有する。すなわち、第3の形態の接着フィルムは、フィルム層52の第1面52Aにフィルム層42を積層したものである。なお、フィルム層42は、第2の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0068】
フィルム層52の厚みの下限は、例えば潜在性硬化剤53及び導電粒子54の平均粒径と同じであってもよく、好ましくは平均粒径の1.3倍以上もしくは3μm以上とすることができる。フィルム層52の厚みが、潜在性硬化剤53の平均粒径と導電粒子54の平均粒径の合計の2倍未満の場合、平面視において第1面52Aの潜在性硬化剤53と第2面52Bの導電粒子54とが重ならないように配置することが望ましい。
【0069】
第1面52Aに配置された潜在性硬化剤53は、第1の形態と同様、規則性を持っていることが好ましく、格子状、千鳥状等の規則的な配列とすることが好ましい。これにより、表面に配置された潜在性硬化剤53の粒子面密度が均一となり、接着強度(ダイシェア強度、ピール強度)をさらに向上させることができる。
【0070】
導電粒子53は、フィルム層52に分散されていればよく、さらに規則性を持っていることが好ましく、平面視で格子状、千鳥状等の規則的な配列とすることが好ましい。格子状としては、斜方格子、六方格子、正方格子、矩形格子、平行体格子などが挙げられる。これにより、表面に配置された導電粒子53の粒子面密度が均一となり、接続信頼性を向上させることができる。
【0071】
<3.構造体の製造方法及び構造体>
本実施の形態に係る接続体の製造方法は、前述した接着フィルムを介して、第1の部品と第2の部品とを接着するものであり、本実施の形態に係る接続体は、前述した接着フィルムを介して、第1の部品と第2の部品とが接着されてなるものである。また、接着フィルムは、導電フィルム又は異方性導電フィルムであってもよく、導電フィルム又は異方性導電フィルムを介して、第1の電子部品の端子と第2の電子部品の端子とを接続する接続構造体の製造方法であっても、導電フィルム又は異方性導電フィルムを介して、第1の電子部品の端子と第2の電子部品の端子とが接続された接続構造体であってもよい。
【0072】
第1の電子部品及び第2の電子部品は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。第1の電子部品としては、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)パネル用途、有機ELディスプレイ(OLED)パネル用途などのプラスチック基板、ガラス基板、プリント配線板(PWB)などが挙げられる。また、第2の電子部品としては、例えば、IC(Integrated Circuit)、COF(Chip On Film)などのフレキシブル基板(FPC:Flexible Printed Circuits)、テープキャリアパッケージ(TCP)基板などを挙げることができる。
【0073】
接続時には、第2の電子部品上から、所定温度に加温された圧着ツールによって、所定の圧力及び所定の時間、熱加圧され、第1の電子部品の端子と第2の電子部品の端子とが接続される。また、接着フィルムが導電フィルム又は異方性導電フィルムである場合、導電粒子が第1の電子部品の端子と第2の電子部品の端子との間に挟持されて押し潰され、この状態でバインダーが硬化する。
【0074】
熱加圧時の所定の圧力は、電子部品の配線クラックを防止する観点から、1MPa以上150MPa以下であることが好ましい。また、所定温度は、80℃以上230℃以下であることが好ましい。また、光反応開始剤を配合している場合などにはUVなどの光照射を併用してもよい。
【0075】
また、圧着ツールと第2の電子部品との間に緩衝材を介装して熱圧着してもよい。緩衝材を介装することにより、押圧ばらつきを低減できると共に、圧着ツールが汚れるのを防止することができる。緩衝材は、シート状の弾性材又は塑性体からなり、例えばポリテトラフルオロエチレン(テフロン(商標))、シリコンラバーなどが用いられる。
【0076】
このような構造体の製造方法によれば、潜在性硬化剤がフォルム層の表面に配置された接着フィルムを用いているため、硬化剤反応が同時に開始され、優れた接着強度(ダイシェア強度、ピール強度)を得ることができる。
【0077】
また、本技術は、前述した実施の形態に限られるものではなく、フィルムの製造の過程において、塗布乾燥を行うために材料と溶剤を使用し、混合や溶解、分散を行う方法において、溶剤を用いる性質上、その存在下において、好ましくない化学的変化や物理的変化が起こる材料にも適用することができる。例えば、溶解性や凝集性を有する材料をフィルム表面に配置することもできる。
【0078】
また、他にも溶剤の使用に限らず、フィルム化の前において、混合や撹拌に対して変化が生じる材料にも適用可能となる。そして、同一フィルムにおいて両面に反応性の異なる材料を転写し、その特性を制御することや、互いに反応する材料を転写することも可能となる。
【実施例0079】
<4.実施例>
本実施例では、接着フィルムの一形態として導電粒子を含有する異方性導電フィルムを作製した。そして、異方性導電フィルムを用いて接続構造体を作製し、導通抵抗、接着強度、及び保存安定性について評価した。
【0080】
[異方性導電フィルムの作製]
下記材料を用いて異方性導電フィルムを作製した。フィルムのサイズは、20cm×30cmの大きさとした。
フェノキシ樹脂:YP50、日鉄ケミカル&マテリアル(株)
エポキシ樹脂:YD-019、日鉄ケミカル&マテリアル(株)
シリカフィラー:アエロジル805、日本アエロジル(株)
脂環式エポキシ樹脂:セロキサイド8000、(株)ダイセル
オキセタン化合物:OXBP、UBE(株)
シランカップリング剤:KBM-403、信越化学工業(株)
熱カチオン硬化剤:SI-60L、三新化学工業(株)
シラノール化合物:トリス(tert-ペントキシ)シラノール(TPS)
導電粒子(樹脂コア金属被覆導電粒子):AUL704、積水化学工業(株)、4μmφ
【0081】
(アルミニウムキレート系潜在性硬化剤の作製)
蒸留水800質量部と、界面活性剤(ニューレックスR-T、日油(株))0.05質量部と、分散剤としてポリビニルアルコール(PVA-205、(株)クラレ)4質量部とを、温度計を備えた3リットルの界面重合容器に入れ、均一に混合し水相を調製した。
【0082】
この水相に、更に、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)の24%イソプロパノール溶液(アルミキレートD、川研ファインケミカル(株))350質量部と、多官能イソシアネート化合物としてメチレンジフェニル-4,4´-ジイソシアネート(3モル)のトリメチロールプロパン(1モル)付加物(D-109、三井化学(株))49質量部と、ラジカル重合性化合物としてジビニルベンゼン(メルク(株))21質量部と、ラジカル重合開始剤(パーロイルL、日油(株))0.21質量部(ラジカル重合性化合物の1質量%相当量)とを、酢酸エチル70質量部に溶解した油相を投入し、ホモジナイザー(10000rpm/5分:T-50、IKAジャパン(株))で乳化混合後、80℃で6時間、界面重合とラジカル重合を行った。反応終了後、重合反応液を室温まで放冷し、重合粒子を濾過により濾別し、自然乾燥することにより表面不活性化処理が施されていない球粒子状のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤を得た。
【0083】
このアルミニウムキレート系潜在性硬化剤を、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)の24%イソプロパノール溶液(アルミキレートD、川研ファインケミカル(株))40質量部と、エタノール60質量部とからなる含浸液に投入し、30℃で6時間撹拌した後、粒子状の硬化剤を濾別し、自然乾燥させることにより、高濃度タイプの、表面不活性化処理が施されていない球状のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤を得た。
【0084】
そして、n-プロピルトリメトキシシラン(KBM-303、信越化学工業(株))3質量部をシクロヘキサン27質量部に溶解して表面不活性化処理液を調製し、この処理液30質量部に表面不活性化処理が施されていないアルミニウムキレート系潜在性硬化剤3質量部を投入し、その混合物を30℃で20時間、200rpmで撹拌しながら、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤の表面不活性化処理を行った。処理反応終了後、処理液から重合粒子を濾過により濾別し、自然乾燥することにより、高濃度タイプの、表面不活性化処理が施された球状のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤を得た。
【0085】
また、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤の平均粒径について、自動フロー式粒子画像イメージング分析装置(FPIA-3000(マルバーン社))を用いて測定した結果、3μmであった。
【0086】
(転写基板の作製)
所定の個数密度(12000個/mm、24000個/mm、36000個/mm)の凸部を有する正方格子配列の金型を作製した。金型に透明性樹脂のペレットを溶融させた状態で流し込み、冷やして固めることにより、所定の個数密度12000個/mm、24000個/mm、36000個/mm)の凹部を有する正方格子配列の転写基板を作製した。
【0087】
[接続構造体の作製]
下記に示す評価用ICと、ガラス基板を準備した。
(導通特性の評価用IC)
外形 1.8×20.0mm
厚み 0.5mm
バンプ仕様 サイズ30×85μm、バンプ間距離50μm、バンプ高さ9μm
(ガラス基板)
ガラス材質 コーニング社製1737F
外形 30×50mm
厚み 0.5mm
電極 ITO配線
【0088】
各実施例及び比較例の異方性導電フィルムを、接続に十分な面積で裁断し、導通特性の評価用ICとガラス基板との間に挟み、温度130℃-圧力70MPa-時間5secの圧着条件又は温度160℃-圧力70MPa-時間5secの圧着条件で押圧し、接続構造体を作製した。
【0089】
[導通抵抗の評価]
温度130℃又は温度160℃の圧着条件で作製した接続構造体について、デジタルマルチメータ(34401A、アジレント・テクノロジー株式会社製)を用いて4端子法にて電流1mAを流したときの抵抗値(Ω)を測定した。導通抵抗の評価は、実施例又は比較例の接続構造体(N=10)を次の基準で行い、最も低い評価を実施例又は比較例の評価とした。
A:抵抗値の最大値が2Ω未満
B:抵抗値の最大値が2Ω以上4Ω以下
C:抵抗値の最大値が4Ω超
【0090】
[ダイシェア強度の評価]
温度130℃又は温度160℃の圧着条件で作製した接続構造体について、ダイシェアテスタ(4000series、ノードソン・アドバンスト・テクノロジー(株))を用いて、ツールスピード0.2mm/秒の条件で、評価用ICのダイシェア強度を測定した。ダイシェア強度の評価は、実施例又は比較例の接続構造体(N=10)を次の基準で行い、最も低い評価を実施例又は比較例の評価とした。
AA:ダイシェア強度が900N超
A:ダイシェア強度が600N以上900N以下
B:ダイシェア強度が300N以上600N以下
C:ダイシェア強度が300N未満
【0091】
[保存安定性の評価]
温度40℃-時間8hの環境条件で異方性導電フィルムをエージング処理した。エージング処理した異方性導電フィルムを用いて、前述した接続構造体の作製方法と同様に、温度130℃-圧力70MPa-時間5secの圧着条件で接続構造体を作製した。そして、エージング処理した異方性導電フィルムを用いて接続した接続構造体について、前述したダイシェア強度の評価と同様に、ダイシェア強度を測定した。保存安定性の評価は、エージング処理していない異方性導電フィルムを用いて接続した接続構造体のダイシェア強度に対し、実施例又は比較例の接続構造体(N=10)を次の基準で行い、最も低い評価を実施例又は比較例の評価とした。
AA:ダイシェア強度の低下が10%未満
A:ダイシェア強度の低下が10%以上30%以下
B:ダイシェア強度の低下が30%以上50%以下
C:ダイシェア強度の低下が50%超
【0092】
<実施例1>
実施例1では、硬化剤を含まない硬化剤非含有接着剤組成物のフィルム層を成形し、潜在性硬化剤が配置された転写基板を用いて、フィルム層に潜在性硬化剤を転写し、導電粒子含有層A1を作製した。同様に、硬化剤を含まない硬化剤非含有接着剤組成物のフィルム層を成形し、潜在性硬化剤が配置された転写基板を用いて、フィルム層に潜在性硬化剤を転写し、導電粒子非含有層N1を作製した。そして、導電粒子含有層A1のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤の転写面に導電粒子非含有層N1を積層させ、2層型の異方性導電フィルムを作製した。
【0093】
(導電粒子含有層A1)
表1に示す材料をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)の溶剤存在下で混合し、バインダー組成物を得た。このバインダー組成物をPETフィルム上にバーコーターで塗布し、温度80℃のオーブンにて5分間乾燥させ、PETフィルム上に厚み4μmのバインダー層を形成した。
【0094】
個数密度24000個/mmの転写基板の凹部に導電粒子を充填し、その上にバインダー層の一方の面を被せ、加圧(条件:温度40~50℃、圧力0.5MPa)することにより、バインダー層の表面に導電粒子を貼着させた。そして、転写基板からバインダー層を剥離し、バインダー層上の導電粒子を加圧(条件:温度40~50℃℃、圧力0.5MPa)し、バインダー層に押し込むことにより、バインダー層の一方の面に導電粒子を配置した。
【0095】
所定の個数密度で凹部が形成された転写基板を用い、フィルム層中のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤の配合量が4wt%となるように、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤を凹部に充填し、スキージで凹部以外のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤を除去した。凹部にアルミニウムキレート系潜在性硬化剤が充填された転写基板の上にバインダー層の一方の面を被せ、加圧(条件:温度40~50℃、圧力0.5MPa)することにより、バインダー層の表面にアルミニウムキレート系潜在性硬化剤を貼着させた。そして、転写基板からバインダー層を剥離し、バインダー層上のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤を加圧(条件:温度40~50℃、圧力0.5MPa)し、バインダー層に押し込むことにより、バインダー層の他方の面にアルミニウムキレート系潜在性硬化剤を配置し、導電粒子含有層A1を作製した。
【0096】
(導電粒子非含有層N1)
表1に示す材料をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)の溶剤存在下で混合し、バインダー組成物を得た。このバインダー組成物をPETフィルム上にバーコーターで塗布し、温度80℃のオーブンにて5分間乾燥させ、PETフィルム上に厚み8μmのバインダー層を形成した。
【0097】
所定の個数密度で凹部が形成された転写基板を用い、フィルム層中のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤の配合量が4wt%となるように、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤を凹部に充填し、スキージで凹部以外のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤を除去した。凹部にアルミニウムキレート系潜在性硬化剤が充填された転写基板の上にバインダー層の一方の面を被せ、加圧(条件:温度40~50℃、圧力0.5MPa)することにより、バインダー層の表面にアルミニウムキレート系潜在性硬化剤を貼着させた。そして、転写基板からバインダー層を剥離し、バインダー層上のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤を加圧(条件:温度40~50℃、圧力0.5MPa)し、バインダー層に押し込むことにより、バインダー層の一方の面にアルミニウムキレート系潜在性硬化剤を配置した。また、同様に、バインダー層の他方の面にアルミニウムキレート系潜在性硬化剤を配置し、導電粒子非含有層N1を作製した。
【0098】
表1に、実施例1の導通抵抗、ダイシェア強度、及び保存安定性の評価結果を示す。実施例1では、フィルム形成後にアルミニウムキレート系潜在性硬化剤を配置するため、溶剤の影響を抑制し、優れた導通抵抗、ダイシェア強度、及び保存安定性を得ることができた。また、実施例1で作製した2層型の異方性導電フィルムの断面を電子顕微鏡で観察したところ、隣接する潜在性硬化剤のフィルム厚み方向の距離は、最大で導電粒子非含有層N1において約5μmであった。
【0099】
<比較例1>
比較例1では、硬化剤を含まない硬化剤非含有接着剤組成物のフィルム層を成形し、潜在性硬化剤をフィルム層の表面に振掛け、導電粒子含有層A2を作製した。同様に、硬化剤を含まない硬化剤非含有接着剤組成物のフィルム層を成形し、潜在性硬化剤をフィルム層の表面に振掛け、導電粒子非含有層N2を作製した。そして、導電粒子含有層A2のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤を振掛けた面に導電粒子非含有層N2を積層させ、2層型の異方性導電フィルムを作製した。
【0100】
(導電粒子含有層A2)
表1に示す材料をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)の溶剤存在下で混合し、バインダー組成物を得た。このバインダー組成物をPETフィルム上にバーコーターで塗布し、温度80℃のオーブンにて5分間乾燥させ、PETフィルム上に厚み4μmのバインダー層を形成した。
【0101】
個数密度24000個/mmの転写基板の凹部に導電粒子を充填し、その上にバインダー層の一方の面を被せ、加圧(条件:温度40~50℃、圧力0.5MPa)することにより、バインダー層の表面に導電粒子を貼着させた。そして、転写基板からバインダー層を剥離し、バインダー層上の導電粒子を加圧(条件:温度40~50℃℃、圧力0.5MPa)し、バインダー層に押し込むことにより、バインダー層の一方の面に導電粒子を配置した。
【0102】
アルミニウムキレート系潜在性硬化剤の配合量が4wt%となるように、バインダー層の他方の面にアルミニウムキレート系潜在性硬化剤を振掛け、バインダー層の表面にアルミニウムキレート系潜在性硬化剤を貼着させた。そして、バインダー層上のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤を加圧(条件:温度40~50℃、圧力0.5MPa)し、バインダー層に押し込むことにより、バインダー層の他方の面にアルミニウムキレート系潜在性硬化剤を配置し、導電粒子含有層A2を作製した。
【0103】
(導電粒子非含有層N2)
表1に示す材料をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)の溶剤存在下で混合し、バインダー組成物を得た。このバインダー組成物をPETフィルム上にバーコーターで塗布し、温度80℃のオーブンにて5分間乾燥させ、PETフィルム上に厚み8μmのバインダー層を形成した。
【0104】
フィルム層中のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤の配合量が4wt%となるように、バインダー層の一方の面にアルミニウムキレート系潜在性硬化剤を振掛け、バインダー層の表面にアルミニウムキレート系潜在性硬化剤を貼着させた。そして、バインダー層上のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤を加圧(条件:温度40~50℃、圧力0.5MPa)し、バインダー層に押し込むことにより、バインダー層の一方の面にアルミニウムキレート系潜在性硬化剤を配置した。また、同様に、バインダー層の他方の面にアルミニウムキレート系潜在性硬化剤を振掛け、バインダー層の他方の面にアルミニウムキレート系潜在性硬化剤を配置し、導電粒子非含有層N2を作製した。
【0105】
表1に、比較例1の導通抵抗、ダイシェア強度、及び保存安定性の評価結果を示す。比較例1では、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤を振掛けて配置するため、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤が部分的に集結され、硬化が不十分な箇所があり、優れた導通抵抗、ダイシェア強度、及び保存安定性を得ることができなかった。なお、比較例1においては、十分な性能が得られた接続構造体もあり、導通抵抗は、低温及び高温のどちらの温度においても最良でA評価、ダイシェア強度は、低温及び高温のどちらの温度においても最良でAA評価、保存安定性においても最良でAA評価が見受けられた。これは、潜在性硬化剤を手で振掛けたため、場所によっては接着フィルムの性能が低下してしまい、接着フィルムの性能が安定しなかったためと推察される。
【0106】
<比較例2>
比較例2では、表1に示すように、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤とシラノール化合物とを混合した接着剤組成物を作製し、導電粒子含有層A3の作製及び導電粒子非含有層N3の作製を試みた。しかしながら、比較例2では、導電粒子含有層A3の作製及び導電粒子非含有層N3の作製において、混合時にアルミニウムキレート系潜在性硬化剤が溶剤と反応し、発熱、硬化してしまうため、フィルム状に形成することができなかった。
【0107】
【表1】
【0108】
<実施例2>
実施例2では、フィルム層中のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤の配合量が8wt%となるように、所定の個数密度で凹部が形成された転写基板を用いた以外は、導電粒子含有層A1と同様に、導電粒子含有層A4を作製した。また、フィルム層中のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤の配合量が8wt%となるように、所定の個数密度で凹部が形成された転写基板を用いた以外は、導電粒子非含有層N1と同様に、導電粒子非含有層N4を作製した。そして、導電粒子含有層A4のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤の転写面に導電粒子非含有層N4を積層させ、2層型の異方性導電フィルムを作製した。
【0109】
表2に、実施例2の導通抵抗、ダイシェア強度、及び保存安定性の評価結果を示す。実施例2では、フィルム形成後にアルミニウムキレート系潜在性硬化剤を配置するため、溶剤の影響を抑制し、優れた導通抵抗、ダイシェア強度、及び保存安定性を得ることができた。また、実施例1に比べて高温でのダイシェア強度が優れていた。
【0110】
<実施例3>
実施例3では、フィルム層中のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤の配合量が12wt%となるように、所定の個数密度で凹部が形成された転写基板を用いた以外は、導電粒子含有層A1と同様に、導電粒子含有層A5を作製した。また、フィルム層中のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤の配合量が12wt%となるように、所定の個数密度で凹部が形成された転写基板を用いた以外は、導電粒子非含有層N1と同様に、導電粒子非含有層N5を作製した。そして、導電粒子含有層A5のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤の転写面に導電粒子非含有層N5を積層させ、2層型の異方性導電フィルムを作製した。
【0111】
表2に、実施例3の導通抵抗、ダイシェア強度、及び保存安定性の評価結果を示す。実施例3では、フィルム形成後にアルミニウムキレート系潜在性硬化剤を配置するため、溶剤の影響を抑制し、優れた導通抵抗、ダイシェア強度、及び保存安定性を得ることができた。また、実施例1に比べて高温及び低温でのダイシェア強度が優れていた。
【0112】
<実施例4>
実施例4では、表2に示す材料をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)の溶剤存在下で混合し、さらに個数密度が24000個/mmとなるように所定量の導電粒子を混合し、バインダー組成物を得た。このバインダー組成物をPETフィルム上にバーコーターで塗布し、温度80℃のオーブンにて5分間乾燥させ、PETフィルム上に厚み4μmのバインダー層を形成した。そして、フィルム層中のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤の配合量が8wt%となるように、所定の個数密度で凹部が形成された転写基板を用いた以外は、導電粒子含有層A1と同様に、導電粒子含有層A6を作製した。
【0113】
また、フィルム層中のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤の配合量が8wt%となるように、所定の個数密度で凹部が形成された転写基板を用いた以外は、導電粒子非含有層N1と同様に、導電粒子非含有層N6を作製した。そして、導電粒子含有層A6のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤の転写面に導電粒子非含有層N6を積層させ、2層型の異方性導電フィルムを作製した。
【0114】
表2に、実施例4の導通抵抗、ダイシェア強度、及び保存安定性の評価結果を示す。実施例4では、フィルム形成後にアルミニウムキレート系潜在性硬化剤を配置するため、溶剤の影響を抑制し、優れた導通抵抗、ダイシェア強度、及び保存安定性を得ることができた。また、実施例1に比べて高温でのダイシェア強度が優れていた。
【0115】
<比較例3>
比較例3では、シラノール化合物及びアルミニウムキレート系潜在性硬化剤の代わりに、熱カチオン重合開始剤を用いて導電粒子含有層A7及び導電粒子非含有層N7を作製した。表2に示す材料をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)の溶剤存在下で混合し、バインダー組成物を得た。このバインダー組成物をPETフィルム上にバーコーターで塗布し、温度80℃のオーブンにて5分間乾燥させ、PETフィルム上に厚み4μmのバインダー層を形成した。
【0116】
個数密度24000個/mmの転写基板の凹部に導電粒子を充填し、その上にバインダー層の一方の面を被せ、加圧(条件:温度40~50℃、圧力0.5MPa)することにより、バインダー層の表面に導電粒子を貼着させた。そして、転写基板からバインダー層を剥離し、バインダー層上の導電粒子を加圧(条件:温度40~50℃、圧力0.5MPa)し、バインダー層に押し込むことにより、バインダー層の一方の面に導電粒子を配置し、導電粒子含有層A7を作製した。
【0117】
また、表1に示す材料をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)の溶剤存在下で混合し、バインダー組成物を得た。このバインダー組成物をPETフィルム上にバーコーターで塗布し、温度80℃のオーブンにて5分間乾燥させ、PETフィルム上に厚み8μmのバインダー層を形成し、導電粒子非含有層N7を作製した。そして、導電粒子含有層A7と導電粒子非含有層N7とを積層させ、2層型の異方性導電フィルムを作製した。
【0118】
表2に、比較例3の導通抵抗、ダイシェア強度、及び保存安定性の評価結果を示す。比較例3では、耐溶剤性が高い熱カチオン硬化剤を用いているため、異方性導電フィルムを作製することができたものの、低温圧着でのダイシェア強度が小さく、保存安定性も低かった。これは、フィルム形成時の硬化剤への溶剤の影響であると考えられる
【0119】
【表2】
【符号の説明】
【0120】
11 基材フィルム、12 フィルム層、12A 第1面、13 潜在性硬化剤、20 転写基板、32 フィルム層、32A 第1面、32B 第2面、33 潜在性硬化剤、34 潜在性硬化剤、42 フィルム層、42A 第1面、42B 第2面、43A 潜在性硬化剤、43B 潜在性硬化剤、52 フィルム層、52A 第1面、52B 第2面、53 潜在性硬化剤、53 導電粒子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8