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特開2024-17699複合バイオマス燃料の製造方法、複合バイオマス燃料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017699
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】複合バイオマス燃料の製造方法、複合バイオマス燃料
(51)【国際特許分類】
   C10L 5/44 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
C10L5/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120516
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】591027237
【氏名又は名称】コスモエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高岡 尚生
(72)【発明者】
【氏名】高橋 裕子
【テーマコード(参考)】
4H015
【Fターム(参考)】
4H015AA12
4H015AA19
4H015AB01
4H015BA01
4H015BA04
4H015BA08
4H015BA09
4H015BB03
4H015CA08
4H015CB01
(57)【要約】
【解決課題】簡単な工程で培養液から藻類を分離でき、且つ、バイオマス発電時に十分な燃焼温度を得るとともに、カーボンニュートラルを実現できる複合バイオマス燃料の製造方法および複合バイオマス燃料を提供する。
【解決手段】複合バイオマス燃料の製造方法は、基本工程を備える複合バイオマス燃料の製造方法であって、前記基本工程は、バイオマス由来の燃料原料に藻類を含む培養液を付着させる付着工程と、前記培養液が付着された前記燃料原料を乾燥させる乾燥工程と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本工程を備える複合バイオマス燃料の製造方法であって、
前記基本工程は、
バイオマス由来の燃料原料に藻類を含む培養液を付着させる付着工程と、
前記培養液が付着された前記燃料原料を乾燥させる乾燥工程と、
を有する複合バイオマス燃料の製造方法。
【請求項2】
基本工程を備える複合バイオマス燃料の製造方法であって、
前記基本工程は、
藻類を含む培養液にバイオマス由来の燃料原料を浸漬する浸漬工程と、
前記培養液から前記燃料原料を回収する回収工程と、
回収された前記燃料原料を乾燥させる乾燥工程と、
を有する複合バイオマス燃料の製造方法。
【請求項3】
前記乾燥工程は、所定の熱源由来の熱を利用する請求項1又は請求項2に記載の複合バイオマス燃料の製造方法。
【請求項4】
前記基本工程は、前記乾燥工程の前に前記燃料原料を混合する混合工程を有する請求項1又は請求項2に記載の複合バイオマス燃料の製造方法。
【請求項5】
前記基本工程を複数回行う請求項1又は請求項2に記載の複合バイオマス燃料の製造方法。
【請求項6】
前記培養液は、糖源を含む請求項1又は請求項2に記載の複合バイオマス燃料の製造方法。
【請求項7】
前記糖源は、廃糖蜜を含む請求項6に記載の複合バイオマス燃料の製造方法。
【請求項8】
前記藻類は、従属栄養で培養される請求項1又は請求項2に記載の複合バイオマス燃料の製造方法。
【請求項9】
前記燃料原料は、表面に凹凸を有するか又は多孔質である請求項1又は請求項2に記載の複合バイオマス燃料の製造方法。
【請求項10】
前記燃料原料は、ヤシ種殻、木質チップ、木質ペレット、稲わら、麦わら、もみ殻、バガス、ソルガム、竹、廃棄紙、および汚泥、からなる群から選択される1種以上である請求項1又は請求項2に記載の複合バイオマス燃料の製造方法。
【請求項11】
バイオマス由来の燃料原料と、
前記燃料原料の表面に付着又は前記燃料原料の内部に貯留された藻類と、
を含む複合バイオマス燃料。
【請求項12】
前記燃料原料は、表面に凹凸を有するか又は多孔質である請求項11に記載の複合バイオマス燃料。
【請求項13】
前記燃料原料は、ヤシ種殻、木質チップ、木質ペレット、稲わら、麦わら、もみ殻、バガス、ソルガム、竹、廃棄紙、および汚泥からなる群から選択される1種以上である請求項11に記載の複合バイオマス燃料。
【請求項14】
乾燥処理された請求項11に記載の複合バイオマス燃料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス発電に用いられる複合バイオマス燃料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭材料に固体再生可能燃料材料を混合した複合燃料が開示されている。この複合燃料では、石炭材料と固体再生可能燃料材料とを混ぜ合わせた後に、バインダー材料を添加して、複合固形燃料を作成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2014-0075833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、化石燃料である石炭材料を使用しているため、近年のカーボンニュートラルの考え方に合致せず、地球温暖化問題に対する完全な解決策とはならない問題がある。
【0005】
藻類からジェット燃料等の燃料油を抽出する場合には、その抽出に多大な労力を要する問題がある。一方、藻類をバイオマス発電バイオマス燃料として利用したい場合に、培養液中の藻類を濃縮して固形のペレットにするために、培養液から藻類のみを分離する目的で遠心分離や天日干し等が必要になる。しかしながら、藻類の質量と培養液の質量との間でほとんど差がないために、遠心分離器を用いて遠心分離をする場合に、膨大なエネルギー(電力、遠心分離を繰り返す人的労力)が必要になる問題がある。天日干しについても、時間がかかるだけでなく、作業を繰り返すために膨大な人的労力がかかる問題がある。したがって、これらの点でコスト増となり、事業化への阻害要因となる問題がある。
【0006】
さらに、木質チップや木質ペレット等の植物由来のバイオマス燃料は、単位体積当たりの単位体積当たりのカロリーが低く、これを燃料とする火力発電時に十分な燃焼温度を得ることができず、発電効率が悪い問題がある。また、植物由来のバイオマス燃料は、輸送中の自然発火を防止するために、予め燃料に水を付加して湿らせる作業を行う場合もある。
【0007】
従って、本発明の目的は、簡単な工程で培養液から藻類を分離でき、且つバイオマス発電時に十分な燃焼温度を得るとともに、カーボンニュートラルを実現できる複合バイオマス燃料の製造方法および複合バイオマス燃料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、以下の本発明により解決される。
すなわち、本発明(1)の複合バイオマス燃料の製造方法は、基本工程を備える複合バイオマス燃料の製造方法であって、
前記基本工程は、
バイオマス由来の燃料原料に藻類を含む培養液を付着させる付着工程と、
前記培養液が付着された前記燃料原料を乾燥させる乾燥工程と、
を有する。
【0009】
また、本発明(2)の複合バイオマス燃料の製造方法は、基本工程を備える複合バイオマス燃料の製造方法であって、
前記基本工程は、
藻類を含む培養液にバイオマス由来の燃料原料を浸漬する浸漬工程と、
前記培養液から前記燃料原料を回収する回収工程と、
回収された前記燃料原料を乾燥させる乾燥工程と、
を有する。
【0010】
また、本発明(3)の複合バイオマス燃料の製造方法は、(1)又は(2)記載の複合バイオマス燃料の製造方法であって、
前記乾燥工程は、所定の熱源由来の熱を利用する。
【0011】
また、本発明(4)の複合バイオマス燃料の製造方法は、(1)又は(2)記載の複合バイオマス燃料の製造方法であって、
前記基本工程は、前記乾燥工程の前に前記燃料原料を混合する混合工程を有する。
【0012】
また、本発明(5)の複合バイオマス燃料の製造方法は、(1)又は(2)記載の複合バイオマス燃料の製造方法であって、
前記基本工程を複数回行う。
【0013】
本発明(6)の複合バイオマス燃料の製造方法は、(1)又は(2)記載の複合バイオマス燃料の製造方法であって、
前記培養液は、糖源を含む。
【0014】
本発明(7)の複合バイオマス燃料の製造方法は、(6)記載の複合バイオマス燃料の製造方法であって、
前記糖源は、廃糖蜜を含む。
【0015】
また、本発明(8)の複合バイオマス燃料の製造方法は、(1)又は(2)記載の複合バイオマス燃料の製造方法であって、
前記藻類は、従属栄養で培養される。
【0016】
また、本発明(9)の複合バイオマス燃料の製造方法は、(1)又は(2)記載の複合バイオマス燃料の製造方法であって、
前記燃料原料は、表面に凹凸を有するか又は多孔質である。
【0017】
また、本発明(10)の複合バイオマス燃料の製造方法は、(1)又は(2)記載の複合バイオマス燃料の製造方法であって、
前記燃料原料は、ヤシ種殻、木質チップ、木質ペレット、稲わら、麦わら、もみ殻、バガス、ソルガム、竹、廃棄紙、および汚泥、からなる群から選択される1種以上である。
【0018】
本発明(11)の複合バイオマス燃料は、
バイオマス由来の燃料原料と、
前記燃料原料の表面に付着又は前記燃料原料の内部に貯留された藻類と、
を含む。
【0019】
本発明(12)の複合バイオマス燃料は、(11)記載の複合バイオマス燃料であって、
前記燃料原料は、表面に凹凸を有するか又は多孔質である。
【0020】
本発明(13)の複合バイオマス燃料は、(11)記載の複合バイオマス燃料であって、
前記燃料原料は、ヤシ種殻、木質チップ、木質ペレット、稲わら、麦わら、もみ殻、バガス、ソルガム、竹、廃棄紙、および汚泥、からなる群から選択される1種以上である。
【0021】
本発明(14)の複合バイオマス燃料は、(11)記載の複合バイオマス燃料であって、
乾燥処理された。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、簡単な工程で培養液から藻類を分離でき、且つ、バイオマス発電時に十分な燃焼温度を得るとともに、カーボンニュートラルを実現できる複合バイオマス燃料の製造方法および複合バイオマス燃料を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1の複合バイオマス燃料の製造システムを示す模式図である。
図2】第2の複合バイオマス燃料の製造システムを示す模式図である。
図3】第3の複合バイオマス燃料の製造システムを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の第1の複合バイオマス燃料の製造方法は、基本工程を備える複合バイオマス燃料の製造方法であって、前記基本工程は、バイオマス由来の燃料原料に藻類を含む培養液を付着させる付着工程と、前記培養液が付着された前記燃料原料を乾燥させる乾燥工程と、を有する。本発明にいう「複合バイオマス燃料」とは、木質チップ等からなるバイオマス由来の燃料原料と、オイルを含む藻類と、を組み合わせて構成した複合的で高カロリーなバイオマス燃料の意味である。
【0025】
バイオマス由来の燃料原料は、ヤシ種殻(PKS)、木質チップ、木質ペレット、稲わら、麦わら、もみ殻、バガス、ソルガム(サトウモロコシ)、竹、廃棄紙、および汚泥、からなる群から選択される1種以上である。当該バイオマス由来の燃料原料は、上記群から選択される2種以上を混合したものであってもよい。燃料原料は、例えば粒状であると、ハンドリング性が良好であるが、粒状のものに限定されるものではなく、各種の形態をとりうる。当該バイオマス由来の燃料原料は、表面に凹凸を有し表面がザラザラして藻類が付着しやすい材料であるか、或いは多孔質で藻類が浸透しやすい材料であることが好ましい。当該バイオマス由来の燃料原料は、ヤシ種殻であると、表面がザラザラしており、多孔質でもあり好ましい。
【0026】
木質チップおよび木質ペレットは、木材(除伐・間伐材等の林地残材、樹皮・おが粉・かんな屑・端材などの工場残材)を細かく裁断することで形成される。
バガスは、サトウキビを搾汁した後に残る残渣である。本発明にいうヤシ種殻(PKS)、稲わら、麦わら、およびバガスは、細かく裁断されて粒状に加工されたものである。竹は、竹の原木を細かく裁断して粒状に加工されたものである。本発明にいう廃棄紙は、廃棄された紙を細かく裁断して、粒状に加工されたものである。汚泥は、いわゆる乾燥済み汚泥(乾燥済み汚泥粒)である。乾燥済み汚泥は、下水などから発生する汚泥を直径数ミリの球状に造粒し、乾燥させることで形成されたものである。
【0027】
付着工程は、バイオマス由来の燃料原料に対して、藻類を含む培養液を例えば上方から噴霧又は滴下して、バイオマス由来の燃料原料に当該培養液を付着させることで行われる。当該燃料原料に対する藻類を含む培養液の付着は、例えば、当該燃料原料の質量を基礎として、1~30質量%、好ましくは10~30質量%、より好ましくは20~30質量%の藻類(乾燥重量)をバイオマス由来の燃料原料に付着させるように行うことができる。
【0028】
付着工程又は浸漬工程に用いられる培養液中の藻類の最終濃度は、従属栄養で培養を行う場合に、例えば0.1~30質量%であり、好ましくは、0.5~25質量%であり、より好ましくは1~20質量%である。最終濃度が30質量%を超えると、従属栄養で培養を行う場合に、藻類の増殖速度が著しく悪くなって非効率であり、最終濃度が0.1質量%未満になると、バイオマス由来の燃料原料に対する単位体積当たりのカロリー増加の効果が見込めなくなる。
【0029】
付着工程又は浸漬工程に用いられる培養液中の藻類の最終濃度は、独立栄養で培養を行う場合に、例えば0.1~5質量%であり、好ましくは、0.5~4質量%であり、より好ましくは1~3質量%である。最終濃度が5質量%を超えると、独立栄養で培養を行う場合に、藻類の増殖速度が著しく悪くなって非効率であり、最終濃度が0.1質量%未満になると、バイオマス由来の燃料原料に対する単位体積当たりのカロリー増加の効果が見込めなくなる。
【0030】
乾燥工程は、所定の熱源由来の熱を利用することができる。所定の熱源としては、例えば、燃焼や発熱を伴う装置又は設備が挙げられる。所定の熱源としては、バイオマス発電所のボイラー、火力発電所のボイラー、ガスタービン発電所のボイラー、原子力発電所のボイラー、地熱発電所のボイラー、銭湯などで用いられる小型のボイラー、その他の施設の一般的なボイラー、溶鉱炉、各種化学プラント、製油所の石油精製工程おける各発熱装置(蒸留装置等)、ごみ焼却施設の焼却炉、大型船舶の内燃機関、等がある。
【0031】
バイオマス発電所由来の熱としては、ボイラーの排熱を利用して沸かした温水(又は水蒸気)を配管を介してバイオマス由来の燃料原料を運ぶベルトコンベヤー付近に通すことで、温水(又は水蒸気)から発する熱をバイオマス由来の燃料原料に伝えることができる。当該熱によって、バイオマス由来の燃料原料を乾燥させることができる。
基本工程は、前記乾燥工程の前に前記燃料原料を混合する混合工程を含んでいることが好ましい。混合工程は、公知のスクリューやパドルを介して行うことができる。
【0032】
基本工程は、複数回行われることが好ましい。すなわち、基本工程は、例えば2~3回繰り返して行われることが望ましい。これによって、バイオマス由来の燃料原料の内部への藻類を含む培養液の浸透を確実にできるとともに、バイオマス由来の燃料原料の表面に乾燥した藻類が堆積してできた層(藻類によるコーティング層)を2~3層形成することができる。
【0033】
藻類を含む培養液は、栄養素として糖源を含んでいることが好ましい。糖源は、廃糖蜜を含んでいることが好ましい。これによって、廃糖蜜に粘性があるために、培養液中に残留している廃糖蜜由来の糖成分によって、燃料原料に対する藻類の付着性を向上することができる。また、燃料原料の単位体積当たりのカロリーを増加することができる。
【0034】
本発明の第2の複合バイオマス燃料の製造方法は、基本工程を備える複合バイオマス燃料の製造方法であって、前記基本工程は、藻類を含む培養液にバイオマス由来の燃料原料を浸漬する浸漬工程と、前記培養液から前記燃料原料を回収する回収工程と、回収された前記燃料原料を乾燥させる乾燥工程と、を有する。
【0035】
浸漬工程に先立ち、浸漬用の水槽に藻類を含む培養液を供給する。浸漬工程では、藻類を含む培養液が張られた水槽に対して、バイオマス由来の燃料原料を投入する。浸漬時間は、任意であり、1~30分であり、1~15分であることが好ましく、1~5分であることがさらに好ましい。
【0036】
回収工程は、例えば、公知の重機等によって水槽の底部に堆積したバイオマス由来の燃料原料を回収することで行われる。
乾燥工程は、第1の複合バイオマス燃料の製造方法で説明したものと同様である。
基本工程は、前記乾燥工程の前に前記燃料原料を混合する混合工程を含んでいることが好ましい。混合工程は、公知のスクリューやパドルを介して行うことができる。
【0037】
基本工程は、複数回行われることが好ましい。すなわち、基本工程は、2~3回繰り返して行われることが望ましい。これによって、バイオマス由来の燃料原料の内部への、藻類を含む培養液の浸透を確実にできるとともに、バイオマス由来の燃料原料の表面に、乾燥した藻類が堆積してできた層(コーティング層)を2~3層形成することができる。
[第1実施形態]
【0038】
図1を参照して、上記した本発明の第1の複合バイオマス燃料の製造方法を実現するための第1の複合バイオマス燃料の製造システム11について説明する。製造システム11は、上記した所定の熱源の近くに設置されることが望ましい。
【0039】
製造システム11は、供給源からバイオマス由来の燃料原料12を取り込んで下流側に供給する供給部13と、供給部13から供給されるバイオマス由来の燃料原料12を搬送する搬送部14と、培養液15中で藻類を培養する培養槽16と、搬送部14の上側に配置されて藻類を含む培養液15が通される第1配管21と、第1配管21の途中に設けられた複数のスプレ-ノズル部22と、培養槽16から藻類を含む培養液15を第1配管21内に送るポンプ23と、搬送部14上に設けられ搬送部14上を送られるバイオマス由来の燃料原料12を混合する混合部24と、複合バイオマス燃料を燃焼させて蒸気タービン(火力発電)によって発電を行うバイオマス発電所25と、バイオマス発電所25で余った熱を利用して得た湯または水蒸気が通される第2配管26と、バイオマス発電所25からの湯または水蒸気を第2配管26内に送るポンプ又はファン(ブロワ)27と、を有する。燃料原料12は、粒状であるとハンドリングが良好で好ましいがそれ以外の形態でもよい。なお、本実施形態では、乾燥工程を行うための所定の熱源としてバイオマス発電所25を用いた例を説明しているが、所定の熱源は上記したそれ以外の熱源であってもよい。
【0040】
供給部13は、一般的なホッパー等で構成される。搬送部14は、一般的なベルトコンベヤー等で構成される。混合部24は、バイオマス由来の燃料原料12を撹拌できる一般的なスクリューやパドル等で構成されている。スプレ-ノズル部22は、公知のスプレーノズルを用いることができる。スプレ-ノズル部22は、第1配管21内に通される藻類を含む培養液15をバイオマス由来の燃料原料12に向けて噴霧又は滴下することができる。
【0041】
培養槽16は、例えば、従属栄養で藻類を培養するための大気開放された培養槽(タンク)である。培養槽16は、内部の培養液15を撹拌するためにモータで回転駆動される撹拌翼28を有する。培養槽16内は、内部に従属栄養で培養するのに適した培養液15が貯留されている。藻類の培養は、例えば好気条件化で行われる。この培養槽16内の培養液15には、例えば除菌フィルタを介してコンプレッサによって適宜に空気が送られている。培養槽16は、独立栄養(光合成)で藻類を培養するのに適した公知の培養槽16を用いることもできる。
【0042】
培養液15は、糖源を利用して作成される。具体的には、培養液15は、廃糖蜜を一部に利用して作成される。一般的な廃糖蜜の成分は、公知であり、排出される製糖工場によって多少成分が異なるものの、概ね、以下である。すなわち、水分が19~23.4重量%、固体法で測定された全有機炭素が40.3重量%、全窒素が1.4重量%である。陽イオン、陰イオンについては、カリウムイオンが6.0重量%、カルシウムイオンが0.8重量%、硫酸イオンが3.1重量%、塩化物イオンが3.1重量%である。灰分は14.8重量%である。糖(ショ糖、ブドウ糖、果糖)の含有量は44.1重量%である。
【0043】
廃糖蜜を利用した培養液15の組成は、一例として、35kg/mの糖(ショ糖、ブドウ糖、果糖)、0.75kg/mのKHPO、0.75kg/mのMgSO・7HO、0.05kg/mのFe溶液、2.0ml/lのA5溶液、3.0kg/mの尿素、水である。糖は、すべて廃糖蜜由来のものが使用される。培養液15には、上記以外にも、廃糖蜜中に含まれる糖以外の成分も含まれる。35kg/mの上記糖の代わりに、35kg/mの上記糖以外で藻類の栄養源となる各種の有機物(炭水化物、多糖類、単糖、その他)を用いてもよい。培養液の組成については一例であり、培養する藻類の種類に応じて適宜に公知の培養液組成を採用しうる。
【0044】
培養槽16で培養される藻類(微細藻類)は、例えば、種類に特に制限はなく、当業者に公知の任意の微細藻類の培養に使用することが出来る。このような微細藻類の代表的な例として、淡水域か汽水域、海、塩湖ないしは土壌に生育する緑藻植物、紅色植物、クリプト植物、不等毛植物、ハプト植物、渦鞭毛植物、灰色植物、ユーグレナ植物、ラン藻(別称:シアノバクテリア)のいずれに属するものでも使用することができる。
【0045】
これらの微細藻類を、分類上の網や属にて例示すれば、緑藻としてはAnkistrodesmus属、Botryococcus属、Chlamydomonas属、Chlorella属、Chlorococcum属、Dunaliella属、Eudorina属、Haematococus属、Monoraphidium属、Scenedesmus属、Trentepohlia属などが、紅色植物としてはCyanidium属、Galdieria属、Hildenbrandia属、Porphyridium属が、クリプト植物としてはChroomonas属、Cryptomonas属、Rhodomonas属が、不等毛植物としては珪藻網、黄金色藻網、ラフィド藻網、黄緑藻網、真正眼点藻網、ピングイオ藻綱が挙げられ、それら以外にもラビリンチュラ綱が挙げられ、特に珪藻網の中ではChaetoceros属、Cyclotella属、Cylindrotheca属、Phaeodactylum属、Skeletonema属、Tetraselmis属、Thalassiosira属、真正眼点藻網の中ではNannochloropsis属が例として挙げられる。また、ハプト植物としてはCryptomonas属、Dicrateria属、Isochrysis属、Pavlova属が、渦鞭毛植物としてはCeratium属、Peridinium属が、灰色植物としてはCyanophora属、Glaucocystis属が、ユーグレナ植物としてはEuglena属が、ラン藻としてはAnabaena属、Arthrospira属、Microcoleus属、Nostoc属、Oscillatoria属、Planktothrix属、Schizothrix属、Scytonema属、Synochococcus属、Synechocystis属、Tolypothrix属に含まれるもの等を挙げることが出来る。より具体的には、Chlorella属、Botryococcus属、Dunaliella属、Porphyridium属、Nostoc属又はTolypothrix属に属する微細藻を挙げることができる。更に、本発明の対象として、特定の一種類の微細藻類の培養に限定せずに、多種類の微細藻からなる集団である植物プランクトンを挙げることも出来る。
【0046】
培養槽16で培養される藻類は、好ましくは、従属栄養増殖能の高い淡水性緑藻クロレラ(Chlerella sp.)である。
【0047】
従属栄養又は独立栄養で藻類を培養する培養工程は、公知の手法を用いることができる。培養液15中の藻類の最終濃度は、従属栄養で培養を行う場合に、例えば、1~20質量%を目標とすることが好ましい。培養液15中の藻類の最終濃度は、独立栄養で培養を行う場合に、例えば、1~3質量%を目標とすることが好ましい。
【0048】
続いて、上記製造システム11を用いた第1の複合バイオマス燃料の製造方法について説明する。複合バイオマス燃料の製造に先立ち、予め、上記した培養工程を行って、培養液15中の藻類の最終濃度を、従属栄養で培養を行う場合には例えば1~20質量%の濃度、独立栄養で培養を行う場合には例えば1~3質量%の濃度、まで増殖させる。
【0049】
一方、作業者は、バイオマス由来の燃料原料12を商業的に入手して、供給部13(ホッパ-)に投入する。供給部13は、バイオマス由来の燃料原料12を搬送部14(ベルトコンベヤー)に単位時間当たり所定量ずつ放出する。搬送部14上に供給されたバイオマス由来の燃料原料12は、混合部24によって混合されながら下流に送られる。
【0050】
このとき、搬送部14の上部に位置する複数のスプレ-ノズル部22から、藻類を含む培養液15が噴霧又は滴下される(付着工程)。このとき、培養液15は、ポンプ23の作用で第1配管21内を通るように送られている。噴霧された培養液15は、バイオマス由来の燃料原料の集合物の上側表面に付着する。バイオマス由来の燃料原料12の集合物は、混合部24によって常に撹拌・混合されているため、バイオマス由来の燃料原料12の集合物の上側表面の培養液15は、当該集合物の内部に向けて混合される(混合工程)。これによって、バイオマス由来の燃料原料12に対して藻類を含む培養液15が均一に供給される。第1配管21を通る藻類を含む培養液15の残りは、第1配管21を介して培養槽16に対して戻される。個々のバイオマス由来の燃料原料12に付着した藻類を含む培養液15は、多孔質であるバイオマス由来の燃料原料12の表面をコートするとともに、当該燃料原料12の内部に浸透する。
【0051】
また、搬送部14上のバイオマス由来の燃料原料12の集合体は、搬送部14の近傍を通る第2配管26内を通る湯又は蒸気からの輻射熱によって加熱・乾燥される(乾燥工程)。第2配管26内には、バイオマス発電所25由来の熱を利用して沸かされた湯または蒸気が通されている。バイオマス由来の燃料原料12の表面に付着した藻類は、このように加熱・乾燥を受けることで、バイオマス由来の燃料原料12の表面に層(藻類によるコーティング層)を形成する。これによって、複合バイオマス燃料31が完成する。
【0052】
上記した付着工程、混合工程、および乾燥工程は、本発明にいう基本工程に含まれる。本実施形態において、上記した付着工程、混合工程、および乾燥工程は、同時に行われているが、(1)付着工程、(2)混合工程、および(3)乾燥工程の順に、順番に行うようにしても当然によい。
【0053】
上記した基本工程は、複数回行われても当然よい。本実施形態のように、付着工程、混合工程、および乾燥工程を同時に行うようにすると、実質的に基本工程を複数回行うこととなる。したがって、個々のバイオマス由来の燃料原料12の内部への藻類を含む培養液15の浸透が確実になされるとともに、バイオマス由来の燃料原料12の表面に複数の藻類の層(コーティング層)が形成される。バイオマス由来の燃料原料12の質量を基礎として、1~30質量%の藻類(乾燥重量)が当該燃料原料12に対して付加される。
【0054】
本実施形態では、培養液15に廃糖蜜由来の糖が含まれているために、培養液15の粘度が増加してバイオマス由来の燃料原料12の対する藻類の付着が効率よくなされる。また、培養液15に廃糖蜜由来の糖が含まれているために、燃料原料12の単位体積当たりのカロリーが増大する。
【0055】
本実施形態によれば、以下のことがいえる。複合バイオマス燃料の製造方法は、基本工程を備える複合バイオマス燃料の製造方法であって、前記基本工程は、バイオマス由来の燃料原料12に藻類を含む培養液15を付着させる付着工程と、培養液15が噴霧された燃料原料12を乾燥させる乾燥工程と、を有する。
【0056】
一般に、バイオマス由来の燃料原料12は、輸送中の自然発火を防止するために、バイオマス由来の燃料原料12に対して水を付加する場合がある。それによって燃料原料12中の水分量を比較的高めの10重量%程度にすることが多い。そして、バイオマス発電に使用する際には、予めバイオマス由来の燃料原料12を乾燥工程で乾燥させて、水分量をできるだけ少なくした上で、バイオマス発電に利用しているという実態がある。さらにバイオマス由来の燃料原料12を燃料とする場合には、単位体積当たりのカロリーが低いために、好ましい燃焼温度を得ることができず、20~30%の発電効率しか得られない問題があった(化石燃料を用いた場合には40~50%の発電効率、化石燃料を用い且つ排熱を利用した場合に50~60%の発電効率を得ることができる。)。さらに、藻類を利用したバイオマス発電の場合、培養液15の中の藻類の濃度がせいぜい1~30%であるため、藻類を濃縮・乾燥するために多大な人的労力と膨大なエネルギー(遠心分離等に必要な電力)が必要となる問題があった。
【0057】
上記の構成によれば、付着固定と乾燥工程という簡単な工程によって、バイオマス由来の燃料原料12の単位体積当たりのカロリーを増大させた複合バイオマス燃料を得ることができる。また、木質バイオマス等のバイオマス由来の燃料原料をバイオマス発電に使用する場合には、当該燃料原料を乾燥させる乾燥工程を予め行うことが必要であるところ、本発明によれば当該乾燥工程を利用して藻類の濃縮および培養液15の蒸発を行うことができる。以上より、噴霧工程と乾燥工程という簡単な工程によって、バイオマス由来の燃料原料12の単位体積当たりのカロリーを増大させて発電効率を向上できる効果と、藻類の濃縮および培養液15の蒸発とバイオマス由来の燃料原料12の乾燥とを一括して乾燥工程で行える効果と、の一挙両得の効果を得ることができる。さらに、付着工程と乾燥工程の間に当該燃料の輸送を行うようにすれば、自然発火を防止するために輸送前に予め燃料を湿らせる作業を省略できる効果もある。
【0058】
この場合、前記乾燥工程は、所定の熱源由来の熱を利用する。例えば、一般的なバイオマス発電の場合、単位体積当たりのカロリーが低いために、好ましい燃焼温度を得ることができず、20~30%の発電効率しか得られない。そのため、バイオマス発電の場合には、外部に排熱として放出される熱が大量に余っている問題があった。バイオマス発電以外の発熱を伴うボイラー等でも同様である。上記の構成によれば、所定の熱源、例えばバイオマス発電等で発生した余剰の熱を用いて乾燥工程を行なうことで、排熱を有効活用して発電コストを低減できるとともに、結果的にトータルの発電効率を向上した複合バイオマス燃料31を提供できる。
【0059】
この場合、前記基本工程は、前記乾燥工程の前に前記燃料原料を混合する混合工程を有する。この構成によれば、バイオマス由来の燃料原料12に対して、藻類を含む培養液15を均一に混ぜることができる。これによって、バイオマス由来の燃料原料12の内部に対して藻類を含む培養液15を確実に浸透させることができるとともに、当該燃料原料12の表面に藻類による層(コーティング層)を形成することができる。これによって、バイオマス由来の燃料原料12の単位体積当たりのカロリーを増大させて発電効率を向上できる複合バイオマス燃料31を提供できる。
【0060】
この場合、前記基本工程を複数回行う。この構成によれば、バイオマス由来の燃料原料12の内部に対して藻類を含む培養液15を確実に浸透させることができるとともに、当該燃料原料12の表面に藻類による層(コーティング層)を複数形成することができる。これによって、バイオマス由来の燃料原料12の単位体積当たりのカロリーを増大させて発電効率を向上可能な複合バイオマス燃料31を提供できる。
【0061】
この場合、培養液15は、糖源を含む。そして、この糖源は、廃糖蜜を含む。これらの構成によれば、糖源や廃糖蜜に粘性があるために、培養液15中に残留する糖源や廃糖蜜によって、燃料原料に対する藻類の付着性を向上することができる。また、上記の構成によれば、従来から産業廃棄物として廃棄処分されてきた廃糖蜜を利用して、藻類を培養して、その藻類を用いてバイオマス由来の燃料原料の単位体積当たりのカロリーを向上した複合バイオマス燃料31を提供できる。
【0062】
この場合、前記藻類は、従属栄養で培養される。一般に、太陽光を用いる独立栄養でも太陽光を用いない従属栄養でも増殖可能な藻類は、従属栄養の方が増殖スピードが速いということが知られている。上記の構成によれば、従属栄養で藻類を培養することで、増殖スピードを増大させて藻類の増殖効率を向上できる。
【0063】
この場合、燃料原料12は、表面に凹凸を有するか又は多孔質である。この構成によれば、バイオマス由来の燃料原料12の内部に藻類を含む培養液を浸透させやすくできるとともに、当該燃料原料12の表面にも藻類を付着させやすくすることができる。
【0064】
この場合、燃料原料12は、ヤシ種殻、木質チップ、木質ペレット、稲わら、麦わら、もみ殻、バガス、ソルガム、竹、廃棄紙、および汚泥、からなる群から選択される1種以上である。この構成によれば、本来的に廃棄される材料の単位体積当たりのカロリーを増大させて発電効率を向上した複合バイオマス燃料を実現できる。
【0065】
複合バイオマス燃料31は、バイオマス由来の燃料原料12と、燃料原料12の表面に付着又は前記燃料原料の内部に貯留された藻類と、を含む。この構成によれば、藻類によって単位体積当たりのカロリーが増大した複合バイオマス燃料を得ることができる。これによって、化石燃料を使うことなく、カーボンニュートラルを実現できるとともに発電効率を向上することができる。
【0066】
この場合、複合バイオマス燃料31は、乾燥処理されている。この構成によれば、藻類由来の水分を蒸発させて、燃焼温度を上昇させて発電効率を向上することができる。
以下の実施形態では、主として第1実施形態と異なる部分について説明し、第1実施形態と共通する部分については、図示又は説明を省略する。
[第2実施形態]
【0067】
図2を参照して、上記した本発明の第2の複合バイオマス燃料の製造方法を実現するための第2の複合バイオマス燃料の製造システムについて説明する。
【0068】
製造システム11は、供給源からバイオマス由来の燃料原料12を取り込んで下流側に供給する供給部13と、供給部13からバイオマス由来の燃料原料12の投入を受ける水槽部32と、水槽部32からバイオマス由来の燃料原料12を回収する図示しない重機等と、水槽部32から回収されたバイオマス由来の燃料原料12を搬送する搬送部14と、培養液15中で藻類を培養する培養槽16と、複合バイオマス燃料31を燃焼させて蒸気タービン(火力発電)によって発電を行うバイオマス発電所25と、バイオマス発電所25で余った熱を利用して得た湯または蒸気が通される第2配管26と、バイオマス発電所25からの湯または蒸気を第2配管26内に送るポンプ又はファン(ブロワ)27と、を有する。燃料原料12は、粒状であるとハンドリングが良好で好ましいがそれ以外の形態でもよい。なお、本実施形態では、乾燥工程を行うための所定の熱源としてバイオマス発電所25を用いた例を説明しているが、所定の熱源は上記したそれ以外の熱源であってもよい。
【0069】
供給部13は、図示しないが第1実施形態と同様のホッパー等で構成され、これに投入されたバイオマス由来の燃料原料12を水槽部32内に供給することができる。水槽部32は、例えば上方を開放した方形の水槽状に構成されている。水槽部32の内部には、培養槽16から配管およびポンプ等を介して供給された藻類を含む培養液15が貯留されている。
【0070】
培養槽16は、例えば、従属栄養で藻類を培養するための大気開放された培養槽(タンク)を用いることができる。培養槽16の構成は、第1実施形態と同様である。培養槽16は、独立栄養(光合成)で藻類を培養するのに適した公知の培養槽を用いることもできる。
【0071】
水槽部32は、内部を混合するための混合部24を有する。混合部24は、パドル又はスクリューで構成されている。搬送部14の構成は、第1実施形態と同様である。バイオマス発電所25、第2配管26、およびポンプ又はファン(ブロワ)27の構成は、第1実施形態と同様である。
培養液15の組成は、第1実施形態と同様であり、糖源、例えば廃糖蜜を一部に利用して作成している。
【0072】
培養槽16で培養される藻類(微細藻類)は、例えば、種類に特に制限はないことは第1実施形態と同様である。培養槽16で培養される藻類は、好ましくは、従属栄養増殖能の高い淡水性緑藻クロレラ(Chlerella sp.)である。
【0073】
従属栄養又は独立栄養で藻類を培養する培養工程は、第1実施形態と同様に、公知の手法を用いることができる。培養工程において、培養液15中の藻類の最終濃度は、従属栄養で培養を行う場合に、例えば、1~20質量%を目標とすることが好ましい。培養液15中の藻類の最終濃度は、独立栄養で培養を行う場合に、例えば、1~3質量%を目標とすることが好ましい。
【0074】
続いて、上記製造システム11を用いた第2の複合バイオマス燃料の製造方法について説明する。
予め、上記のように培養工程において、培養液15中の藻類の最終濃度を、従属栄養で培養する場合には例えば1~20質量%(独立栄養で培養する場合には例えば1~3質量%)の濃度まで増殖させる。
【0075】
藻類の増殖の完了後、供給部13は、図示しない第1配管およびポンプによって、水槽部32内に藻類を含む培養液を供給する。これによって水槽部32内に一定量の藻類を含む培養液15を貯留するようにする。
【0076】
一方、作業者は、商業的に入手したバイオマス由来の燃料原料12を、供給部13(ホッパ-)に投入する。供給部13は、バイオマス由来の燃料原料12を水槽部32内に供給する(浸漬工程)。供給部13は、一定量のバイオマス由来の燃料原料12を水槽部32内に供給した後に、バイオマス由来の燃料原料12の供給を停止する。この状態で、作業者は、混合部24を作動させて水槽部32内で藻類を含む培養液15に対してバイオマス由来の燃料原料12が均一に混ざるように培養液15を撹拌・混合する(混合工程)。これによって、多孔質であるバイオマス由来の燃料原料12の内部に対して藻類を含む培養液15が十分に浸透する。
【0077】
浸漬工程および混合工程は、1~30分であり、好ましくは1~15分であり、さらに好ましくは1~5分である。混合部24によって混合された後に、水槽部32の底部に堆積したバイオマス由来の燃料原料12を重機等で回収して、搬送部14上に供給する(回収工程)。搬送部14上に供給されたバイオマス由来の燃料原料12は、下流に向けて送られる。
【0078】
また、搬送部14上のバイオマス由来の燃料原料12の集合体は、搬送部14の近傍を通る第2配管26内を通る湯又は蒸気からの輻射熱によって加熱・乾燥される(乾燥工程)。第2配管26内には、バイオマス発電所25由来の熱を利用して沸かされた湯または蒸気が通されている。バイオマス由来の燃料原料12の表面に付着した藻類は、このように加熱・乾燥を受けることで、バイオマス由来の燃料原料12の表面に層(藻類によるコーティング層)を形成する。これによって、複合バイオマス燃料31が完成する。
【0079】
上記した浸漬工程、混合工程、回収工程、および乾燥工程は、本発明にいう基本工程に含まれる。
【0080】
上記した基本工程は、複数回行われても当然よい。基本工程を複数回行うようにすると、個々のバイオマス由来の燃料原料12の内部への藻類を含む培養液15の浸透が確実になされるとともに、バイオマス由来の燃料原料12の表面に複数の藻類の層(コーティング層)が形成される。バイオマス由来の燃料原料12の質量を基礎として、1~30質量%の藻類(乾燥重量)が当該燃料原料12に対して付加される。
【0081】
本実施形態では、培養液15に廃糖蜜由来の糖が含まれているために、培養液15の粘度が増加してバイオマス由来の燃料原料12の対する藻類の付着が効率よくなされる。また、培養液15に廃糖蜜由来の糖が含まれているために、燃料原料12の単位体積当たりのカロリーが増大する。
【0082】
本実施形態によれば以下のことがいえる。複合バイオマス燃料の製造方法は、基本工程を備える複合バイオマス燃料の製造方法であって、前記基本工程は、藻類を含む培養液にバイオマス由来の燃料原料12を浸漬する浸漬工程と、培養液15から燃料原料12を回収する回収工程と、回収された燃料原料12を乾燥させる乾燥工程と、を有する。
【0083】
この構成によれば、簡単な工程によって、バイオマス由来の燃料原料12の単位体積当たりのカロリーを増大させた複合バイオマス燃料を得ることができる。また、第1実施形態に比して、バイオマス由来の燃料原料12に対する藻類を含む培養液15の浸透をより確実にすることができる。これによって、単位重量当たりのバイオマス由来の燃料原料12に対する藻類の付着量を増大させて、単位体積当たりのカロリーが増大した複合バイオマス燃料31を実現できる。
【0084】
さらに、木質バイオマス等のバイオマス由来の燃料原料12をバイオマス発電に使用する場合には、当該燃料原料12を乾燥させる乾燥工程を予め行うことが必要であるところ、本実施形態によれば当該乾燥工程を利用して藻類の濃縮および培養液15の蒸発を行うことができる。以上より、浸漬固定、回収工程、および乾燥工程という簡単な工程によって、バイオマス由来の燃料原料12の単位体積当たりのカロリーを増大させて発電効率を向上できる効果と、藻類の濃縮および培養液15の蒸発とバイオマス由来の燃料原料12の乾燥とを一括して乾燥工程で行える効果と、の一挙両得の効果を得ることができる。
[第3実施形態]
【0085】
図3を参照して、上記した本発明の第1の複合バイオマス燃料の製造方法を実現するための第3の複合バイオマス燃料の製造システムについて説明する。
【0086】
製造システム11は、供給源からバイオマス由来の燃料原料12を取り込んで下流側に供給する供給部13と、培養液15中で藻類を培養する培養槽16と、供給部13内に培養液15を供給するための第1配管21と、培養槽16から藻類を含む培養液15を第1配管21内に送るポンプ23と、第1配管21と供給部13との間の接続部に設けられたノズル21Aと、燃料原料を乾燥させる乾燥装置と、複合バイオマス燃料31を燃焼させて蒸気タービン(火力発電)によって発電を行うバイオマス発電所25と、バイオマス発電所25で余った熱を利用して得た湯または蒸気が通される第2配管26と、バイオマス発電所25からの湯または蒸気を第2配管26内に送るポンプ又はファン(ブロワ)27と、を有する。燃料原料12は、粒状であるとハンドリングが良好で好ましいがそれ以外の形態でもよい。なお、本実施形態では、乾燥工程を行うための所定の熱源としてバイオマス発電所25を用いた例を説明しているが、所定の熱源は上記したそれ以外の熱源であってもよい。
【0087】
供給部13は、いわゆるエアレーション式又は機械力によって内部を撹拌する形式のホッパー等で構成され、ホッパー内で燃料原料12の粒が撹拌されるようになっている。培養槽16の構成は、第1実施形態と同様である。
【0088】
乾燥装置33は、回転式の乾燥機であり、図示しないモータの駆動によってシリンダ部分34が回転可能に構成されるとともに、シリンダ部分34の中心を通る中心軸35についてもそれとは逆方向に回転可能に構成されている。中心軸35には、例えば、半径方向外側に向けて突出する複数の撹拌用のロッドが設けられている。乾燥装置33の熱源は、バイオマス発電所25から第2配管26を介して供給される湯又は水蒸気の輻射熱である。
【0089】
従属栄養又は独立栄養で藻類を培養する培養工程は、公知の手法を用いることができる。培養液15中の藻類の最終濃度は、従属栄養で培養を行う場合に、例えば、1~20質量%を目標とすることが好ましい。培養液15中の藻類の最終濃度は、独立栄養で培養を行う場合に、例えば、1~3質量%を目標とすることが好ましい。
【0090】
続いて、上記第3の製造システム11を用いた第1の複合バイオマス燃料の製造方法について説明する。複合バイオマス燃料の製造に先立ち、予め、上記した培養工程を行って、培養液15中の藻類の最終濃度を、従属栄養で培養を行う場合には例えば1~20質量%の濃度、独立栄養で培養を行う場合には例えば1~3質量%の濃度、まで増殖させる。
【0091】
一方、作業者は、バイオマス由来の燃料原料12を商業的に入手して、供給部13(ホッパ-)に投入する。供給部13内では、燃料原料12が例えば流動層を形成するように常に撹拌されており、この燃料原料12に対して第1配管21およびノズル21Aを介して、藻類を含む培養液が注入される。これによって、供給部13内において、燃料原料12に対して藻類を含む培養液が均一に付着される(付着工程、混合工程)。個々のバイオマス由来の燃料原料12に付着した藻類を含む培養液15は、多孔質であるバイオマス由来の燃料原料12の表面をコートするとともに、当該燃料原料12の内部に浸透する。
【0092】
供給部13は、バイオマス由来の燃料原料12を乾燥装置33に放出する。乾燥装置は、シリンダ部分を回転させることで、第2配管26を通る湯又は水蒸気からの輻射熱によって、内部の燃料原料12を乾燥させる(乾燥工程)。個々のバイオマス由来の燃料原料12に付着した藻類を含む培養液15は、多孔質であるバイオマス由来の燃料原料12の表面をコートするとともに、当該燃料原料12の内部に浸透する。
【0093】
バイオマス由来の燃料原料12の表面に付着した藻類は、このように加熱・乾燥を受けることで、バイオマス由来の燃料原料12の表面に層(藻類によるコーティング層)を形成する。これによって、複合バイオマス燃料31が完成する。
【0094】
上記した付着工程、混合工程、および乾燥工程は、本発明にいう基本工程に含まれる。本実施形態において、上記した付着工程、および混合工程は、同時に行われているが、(1)付着工程、(2)混合工程、および(3)乾燥工程の順に、順番に行うようにしても当然によい。
【0095】
上記した基本工程は、複数回行われても当然よい。乾燥装置33から排出される燃料原料12を再び供給部13に戻すことで、基本工程を複数回行うことができる。バイオマス由来の燃料原料12の質量を基礎として、1~30質量%の藻類(乾燥重量)が当該燃料原料12に対して付加される。
【0096】
本実施形態では、培養液15に廃糖蜜由来の糖が含まれているために、培養液15の粘度が増加してバイオマス由来の燃料原料12の対する藻類の付着が効率よくなされる。また、培養液15に廃糖蜜由来の糖が含まれているために、燃料原料12の単位体積当たりのカロリーが増大する。
【0097】
上記した実施形態は、種々の置き換えや変形を加えて実施できる。上記実施形態では、乾燥工程で蒸発される水分を大気中に放出するようにしているが、当該水分(水蒸気)を冷却して回収して、藻類を培養する培養液として再利用してもよい。第1実施形態から第3実施形態のいずれかを適宜に組み合わせて発明を構成することもできる。
【符号の説明】
【0098】
11 製造システム
12 燃料原料
15 培養液
31 複合バイオマス燃料
図1
図2
図3