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特開2024-177006シカ抽出物が含浸されたマイクロニードルを有効成分として含む化粧料組成物及びその製造方法
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  • 特開-シカ抽出物が含浸されたマイクロニードルを有効成分として含む化粧料組成物及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177006
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】シカ抽出物が含浸されたマイクロニードルを有効成分として含む化粧料組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20241212BHJP
   A61K 8/98 20060101ALI20241212BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61K8/98
A61Q19/00
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023138854
(22)【出願日】2023-08-29
(31)【優先権主張番号】10-2023-0073980
(32)【優先日】2023-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】520075007
【氏名又は名称】ブイティ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】VT Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,チョル
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA071
4C083AA072
4C083AA111
4C083AA112
4C083BB51
4C083CC03
4C083DD23
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE12
4C083FF01
4C083FF04
(57)【要約】
【課題】本発明は、シカ抽出物が含浸されたマイクロニードルを有効成分として含む化粧料組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、シカ抽出物が含浸されたマイクロニードルを有効成分として含む化粧料組成物及びその製造方法に関し、前記組成物は、肌に弾力と再生力を付与し、肌のターンオーバー、皮膚吸収量、吸収深さ、吸収速度の改善及び肌のキメ、即ち皮膚の粗さを改善する優れた効果を確認することによって、化粧料組成物として有用に用いられる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シカ抽出物が含浸されたマイクロニードルを有効成分として含む化粧料組成物。
【請求項2】
前記シカ抽出物とマイクロニードルの含量比は、0.5~2:98~99.5重量部であることを特徴とする請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項3】
前記マイクロニードルは、長さ200~300μmであり、直径10~20μmであることを特徴とする請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項4】
前記マイクロニードルのpHは、7~8であることを特徴とする請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項5】
前記マイクロニードルは、海綿に由来することを特徴とする請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項6】
前記海綿は、ヌマカイメン(Spongilla lacustris)、ヨワカイメン(Spongilla fragilis Leidy)又はカワカイメン(Ephydatia fluviatilis)であることを特徴とする請求項5に記載の化粧料組成物。
【請求項7】
前記化粧料組成物は、肌のターンオーバーを改善させる効果を有することを特徴とする請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項8】
前記化粧料組成物は、肌自生力の改善を促進させる効果を有することを特徴とする請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項9】
前記化粧料組成物は、皮膚の粗さの改善を促進させる効果を有することを特徴とする請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項10】
i)海綿の採取後に加水分解させる段階と、
ii)前記加水分解した海綿をふるい分けしてマイクロニードルを分離する段階と、
iii)マイクロニードルを乾燥させる段階と、
iv)前記乾燥したマイクロニードル及びシカ抽出物を減圧攪拌してシカ抽出物をマイクロニードルの内部管に含浸させる段階と
を含む、化粧料組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シカ抽出物が含浸されたマイクロニードルを有効成分として含む化粧料組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、外部の刺激から体の多様な器官を保護している最も大きな器官であって、多様な生理的役割を果たしている。しかし、年を取るにつれて様々な内的、外的要因により皮膚の生理的機能及びバリアとしての機能が低下し、外部の弱い刺激によっても皮膚損傷が発生しやすくなる。従って、外部の刺激による皮膚損傷を軽減させるための化粧品の開発が必要であるのが現状である。
【0003】
技術の発達に伴い、人間の平均寿命が延び、肌及び外見への関心が高まるにつれ、機能性化粧品に対する市場規模が拡大し続けている。皮膚は、各種の有害物質に対する人間の1次的な防御器官であり、重要な免疫器官である。皮膚に対する危害要因がますます増加しており、食生活の変化により角質層の生成、脱落の速度が遅くなり、角質形成細胞の機能低下により角質層の保湿因子と脂質含有量が減少し、正常な皮膚機能を発揮できない肌を持つ人が増えて問題となっている。
【0004】
このような皮膚のバリア機能の低下は、肌の黒化、乾癬、過度な角質剥離など美容的な問題だけでなく、乾皮症、アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患的な問題を誘発する。しかし、このような問題は、肌の水分量を保ち続けて角質層に堅固性と柔軟性を付与し、周辺の筋肉組織の収縮程度を調節する場合、大半が予防又は緩和される可能性がある。
【0005】
健やかな肌であるとしても、厳しい外部環境、風、寒い天気、日差し、洗顔、髭剃りなどによる影響及び各種のストレスと年齢の増加に伴う自然な皮膚老化などの様々な原因により肌が乾燥してかさかさになり、パサつくなどの現象が発生するため、肌の角質細胞層の水分含有量と筋肉細胞の収縮性、タンパク質の活性を適切に調節することが非常に重要である。
【0006】
近年、多様な種類と形態の化粧品が用いられている。化粧品は、肌の清潔、保湿、紫外線の遮断、シワの改善、美白、鎮静など肌によい機能を有するが、接触皮膚炎の主な原因になり得る。接触皮膚炎(contact dermatitis)は、外部物質と接触して発生する皮膚炎であり、刺激性物質による刺激性接触皮膚炎と特定の抗原に感作された人に発生するアレルギー性接触皮膚炎とに分類される。従って、化粧品の安全性検査は、このような副作用を軽減するための目的として重要な意義がある。
【0007】
化粧品による皮膚炎は、使用者の2%未満で現れており、このうちアレルギー性接触皮膚炎は、化粧品による副作用の5~10%を占め、皮膚科を訪れる患者の0.3~3%程度である。化粧品は、多様な成分が混合されて製造され、人体に直接接触するだけでなく長期間使用するため、原料の安全性はもちろん、化粧品自体の安全性も必ず確保されるべきである。
【0008】
通常の化粧品には、グリセリン、ソルビトールなどが含まれるが、これはべたつき感があり、使用時に不快感を感じさせるという問題がある。また、天然由来添加物質として知られているピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸ナトリウムなどは電解性が強いことから、剤形中の安定性を維持するのに困難がある。従来の天然由来原料は、その効果が乏しいか、剤形中の安定性、皮膚刺激による副作用など多くの問題が発生しているため、人体に有害ではなく、効果に優れた化粧料組成物の開発が必要であるのが現状である。
【0009】
こうした背景の下で、本発明者らは、本発明の製造方法によって製造されたシカ抽出物が含浸されたマイクロニードルを有効成分として含む化粧料組成物が肌に弾力と再生力を付与し、肌のターンオーバー、皮膚吸収量、吸収深さ、吸収速度の改善及び肌のキメ、即ち皮膚の粗さを改善させる優れた効果を確認することによって、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、シカ抽出物が含浸されたマイクロニードルを有効成分として含む化粧料組成物を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、i)海綿の採取後に加水分解させる段階と、ii)前記加水分解した海綿をふるい分けしてマイクロニードルを分離する段階と、iii)マイクロニードルを乾燥させる段階と、iv)前記乾燥したマイクロニードル及びシカ抽出物を減圧攪拌してシカ抽出物をマイクロニードルの内部管に含浸させる段階とを含む化粧料組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、シカ抽出物が含浸されたマイクロニードルを有効成分として含む化粧料組成物を提供する。
【0013】
本発明のシカ抽出物は、ツボクサ抽出物とも呼ばれ、多年草でセリ科に属する植物である。茎は地面を這って広がり、2つの退化した鱗片状葉があり、葉は2~5cmの直径を有している。紅紫色の花を咲かせ、平らな円形の実が育つ。傷の治癒、抗酸化、血行の促進、血管健康の改善などの効果があると知られている。
【0014】
本発明のマイクロニードルは、スピキュールであり、前記スピキュールは、淡水に生息する海綿動物の骨格をなす微細な構造物であって、海藻類又は珊瑚類から採取した微細な針状を帯びたカルシウムとシリケートからなる天然複合物質である。
【0015】
本発明のマイクロニードルは、長さが200~300μmであり、直径が10~20μmであり、具体的には長さが230~280μmであり、直径が12~18μmであり、より具体的には長さが250μmであり、直径が15μmであり得る。マイクロニードルのサイズが前記範囲未満の場合、皮膚内に多量浸透して炎症が発生する恐れがあり、前記範囲を超える場合、皮膚再生、自生力の改善効果が乏しい。
【0016】
本発明のマイクロニードルのpHは7~8であり、具体的には7~7.5であり、より具体的には7であり得るが、これに限定されない。
【0017】
本発明のマイクロニードルは、海綿に由来するものであり、前記海綿は、ヌマカイメン(Spongilla lacustris)、ヨワカイメン(Spongilla fragilis Leidy)又はカワカイメン(Ephydatia fluviatilis)であり得る。
【0018】
本発明のシカ抽出物とマイクロニードルの含量比は、0.5~2:98~99.5重量部であり、具体的には0.5~1.5:98.5~99.5重量部であり、より具体的には1:99であり得る。シカ抽出物とマイクロニードルの含有量の範囲が前記範囲外の場合、マイクロニードル内のシカ抽出物が十分に含有されない恐れがある。
【0019】
本発明の化粧料組成物は、肌のターンオーバーを改善する効果を有することができる。本発明の具体的な一実施例において、一般的な肌のターンオーバー周期は4週間以上であるが、本発明の化粧料組成物の使用時に2週間に短縮されて肌のターンオーバーが促進されることを確認した。
【0020】
本発明の化粧料組成物は、肌の自生力を改善する効果を有することができる。本発明の具体的な一実施例において、本発明の化粧料組成物の使用後に肌自生力の改善を測定した結果、前記化粧料組成物の使用部位の皮膚紅斑量の測定値が未使用部位に比べて紫外線照射24時間後に統計的に有意な差を示して減少することを確認した。
【0021】
本発明の化粧料組成物は、皮膚吸収量、吸収深さ及び吸収速度を増加させる効果を有することができる。本発明の具体的な一実施例において、本発明の化粧料組成物の使用後に皮膚吸収を測定した結果、皮膚吸収量、吸収深さ及び吸収速度の測定値が使用前に比べて前記化粧料組成物の使用後に統計的に有意に増加することを確認した。
【0022】
本発明の化粧料組成物は、皮膚の粗さの改善を促進する効果を有することができる。本発明の具体的な一実施例において、本発明の化粧料組成物の使用後の皮膚の粗さ、即ち肌のキメを測定した結果、皮膚粗さ分析値が前記化粧料組成物の使用前に比べて使用直後に統計的に有意に減少することによって肌のキメが改善されることを確認した。
【0023】
本発明の化粧料組成物は、溶液、外用軟膏、クリーム、フォーム、栄養化粧水、柔軟化粧水、香水、パック、柔軟水、乳液、メイクアップベース、エッセンス、石鹸、液体洗浄料、入浴剤、サンスクリーンクリーム、サンオイル、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、ローション、パウダー、界面活性剤-含有クレンジング、オイル、粉末ファンデーション、乳濁液ファンデーション、ワックスファンデーション、パッチ及びスプレーからなる群より選択される剤形に製造できるが、これに限定されない。
【0024】
前記化粧料組成物は、一般の皮膚化粧料に配合される化粧品学的に許容可能な担体を1種以上追加で含むことができ、通常の成分として、例えば油分、水、界面活性剤、保湿剤、低級アルコール、増粘剤、キレート剤、色素、防腐剤、香料などを適切に配合できるが、これに限定されない。
【0025】
本発明の化粧料組成物に含まれる化粧品学的に許容可能な担体は、前記化粧料組成物の剤形によって多様である。
【0026】
本発明の剤形が軟膏、ペースト、クリーム又はゲルの場合には、担体成分として動物性油、植物性油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイト、シリカ、タルク、酸化亜鉛などが用いられるが、これに限定されない。これらは単独で用いられるか、2種以上混合されて用いられる。
【0027】
本発明の剤形がパウダー又はスプレーの場合には、担体成分としてラクトス、タルク、シリカ、アルミニウムヒドロキシド、カルシウムシリケート、ポリアミドパウダーなどが用いられ、特にスプレーの場合には、追加的にハイドロクロロフルオロカーボン、プロパン/ブタン又はジメチルエーテルのような推進剤を含むことができるが、これに限定されない。これらは単独で用いられるか、2種以上混合されて用いられる。
【0028】
本発明の剤形が溶液又は乳濁液の場合には、担体成分として溶媒、溶解化剤又は乳濁化剤などが用いられ。例えば、水、グリセリン、エタノール、イソプロパノール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエイト、プロピレングリコール、1,3-ブチルグリコールオイルなどが用いられ、特に綿実油、ピーナッツ油及びコーン油、オリーブ油、ひまし油及びゴマ油、グリセロール脂肪族エステル、ポリエチレングリコール又はソルビタンの脂肪酸エステルが用いられるが、これに限定されない。これらは単独で用いられるか、2種以上混合されて用いられる。
【0029】
本発明の剤形が懸濁液の場合には、担体成分として水、グリセリン、エタノール又はプロピレングリコールのような液状希釈剤、エトキシル化イソステアリールアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールエステル及びポリオキシエチレンソルビタンエステルのような懸濁剤、微結晶セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、アガ又はトラカントなどが用いられるが、これに限定されない。これらは単独で用いられるか、2種以上混合されて用いられる。
【0030】
本発明の剤形が石鹸の場合には、担体成分として脂肪酸のアルカリ金属塩、脂肪酸ヘミエステル塩、脂肪酸タンパク質ヒドロライセート、イセチオネート、ラノリン誘導体、脂肪族アルコール、植物性油、グリセロール、糖などが用いられるが、これに限定されない。これらは単独で用いられるか、2種以上混合されて用いられる。
【0031】
また、本発明は、i)海綿の採取後に加水分解させる段階と、ii)前記加水分解した海綿をふるい分けしてマイクロニードルを分離する段階と、iii)マイクロニードルを乾燥させる段階と、iv)前記乾燥したマイクロニードル及びシカ抽出物を減圧攪拌してシカ抽出物をマイクロニードルの内部管に含浸させる段階とを含む化粧料組成物の製造方法を提供する。
【0032】
前記i)段階で前記加水分解は、30~50時間行われるが、これに限定されない。
【0033】
前記ii)段階で前記ふるい分けは、50~200メッシュで行われ、具体的に50~150メッシュで行われ、より具体的には100メッシュで行われることができるが、これに限定されない。
【0034】
前記iii)段階で前記乾燥は、70~100℃で20~30時間行われ、より具体的には70~90℃で24時間行われることができる。
【0035】
前記iv)段階で前記減圧攪拌は、-0.1~0.1MPaで2~5時間行われ、具体的には-0.07~-0.05MPaで2~4時間行われ、より具体的には-0.06MPaで3時間行われることができる。前記減圧攪拌の圧力、時間範囲内でシカ抽出物がマイクロニードルの内部管に十分に含浸できる。
【発明の効果】
【0036】
本発明は、シカ抽出物が含浸されたマイクロニードルを有効成分として含む化粧料組成物及びその製造方法を提供し、前記組成物は、肌に弾力と再生力を付与し、肌のターンオーバー、皮膚吸収量、吸収深さ、吸収速度の改善及び肌のキメ、即ち皮膚の粗さを改善する優れた効果を確認することによって、化粧料組成物として有用に用いられることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の化粧料組成物の使用後に肌のターンオーバー促進効果を測定した結果、肌色の変化を示す図である。
図2】本発明の化粧料組成物の使用後に肌のターンオーバー促進効果を測定した結果、皮膚角質の剥離率を示す図である。
図3】本発明の化粧料組成物の使用後に肌の自生力改善効果を測定した結果、皮膚紅斑量の測定値を示す図である。
図4】本発明の化粧料組成物の使用後に皮膚吸収量を測定した結果を示す図である。
図5】本発明の化粧料組成物の使用後に皮膚の粗さ、即ち肌のキメを測定した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の利点及び特徴、そしてそれらを達成する方法は、添付の図面と共に詳細に後述されている実施例を参照すれば明確になる。しかし、本発明は、以下で開示される実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態に具現することができる。但し、本実施例は、本発明の開示を完全なものにし、本発明の属する技術分野における通常の技術者に本発明の範疇を完全に理解させるために提供されるものであり、本発明は請求項の範疇により定義されるに過ぎない。
【0039】
本明細書で用いられた用語は、実施例を説明するためのものであり、本発明を制限しようとするものではない。本明細書において、単数型は特に言及しない限り複数型も含む。明細書で用いられる「含む(comprises)」及び/又は「含んでいる(comprising)」は、言及された構成要素以外に1つ以上の他の構成要素の存在又は追加を排除しない。明細書全体に亘って同一の図面符号は同一の構成要素を示し、「及び/又は」は言及された構成要素のそれぞれ及び1つ以上の全ての組み合わせを含む。たとえ、「第1」、「第2」などが多様な構成要素を叙述するために用いられていても、これらの構成要素は、これらの用語により限定されないのはもちろんである。これらの用語は、単に1つの構成要素を他の構成要素と区別するために用いる。従って、以下で言及される第1構成要素は、本発明の技術的思想内で第2構成要素でもあり得るのは言うまでもない。
【0040】
他の定義がなければ、本明細書で用いられる全ての用語(技術及び科学的用語を含む)は、本発明の属する技術分野における通常の技術者が共通して理解できる意味として用いられる。また、一般に用いられる辞典に定義されている用語は、明白に特に定義されていない限り、理想的に又は過度に解釈されない。
【0041】
以下、本発明の内容を下記の実施例及び実験例を通じて更に詳細に説明する。但し、本発明の権利範囲が下記の実施例及び実験例にのみ限定されるものではなく、これと等価の技術的思想の変形まで含む。
【0042】
実施例1.化粧料組成物の製造
1-1.原物の採取
新鮮な淡水に生息するウクライナ産淡水海綿(Freshwater Sponge)を原物として用いた。前記原物を直接輸入して精製に用いた。
【0043】
前記淡水海綿は、ハイドライズド海綿又はスピキュールとも呼ばれ、前記スピキュールは、淡水海綿から抽出した針状の非常に小さな針で肌に深く浸透して真皮を刺激し、皮膚の微細循環を活性化して皮膚毛穴の引き締めに役立つ。
【0044】
1-2.原物の加水分解
原物を30分間撹拌した。温度が次第に上昇して30~40℃まで上がると、48時間撹拌しながら加水分解させる。
【0045】
1-3.1次ふるい分け及び洗浄
前記1-2段階で加水分解した原物を100メッシュ(mesh)でふるい分けしてスピキュールを分離して5回洗浄した。
【0046】
1-4.乾燥及び2次ふるい分け
70~90℃で24時間乾燥させた。その後、200メッシュ(mesh)でふるい分けして異物を除去した。
【0047】
1-5.ツボクサ抽出物のコーティング
減圧攪拌器に乾燥したスピキュールとツボクサ抽出物を1:1の割合で投入した。減圧攪拌器の温度を80℃に設定し、真空ポンプを起動してタンクの内部を-0.06MPaまで減圧しながら加熱し、3時間撹拌して乾燥と同時にツボクサ抽出物がスピキュールの内部管に染み込むように含浸させる。本発明の化粧料組成物は、ツボクサ抽出物とスピキュールを含量比1:99重量部で含む。
【0048】
1-6.パッキング及び滅菌処理
ジップロック(登録商標)で1次パッキングした後、アルミニウムパックで2次パッキングを行った。ガンマ処理によって滅菌した後、最終的に化粧料組成物を製造した。
【0049】
実験例1.肌のターンオーバーの改善
1-1.試験対象者の情報
試験に参加した試験対象者の情報は、下記表1の通りである。
【0050】
【表1】
【0051】
1-2.試験方法
計22人の試験対象者を対象に定められた試験部位に前記製造された化粧料組成物の使用部位と未使用部位とを区画(2×2cm)した。その後、染色前に皮膚の測定及び写真撮影を行い、それぞれの部位に8%のDHA(Dihydroxyacetone)エマルジョンを2.0mg/cm塗布して皮膚の角質を染色した。本発明の化粧料組成物の使用部位にのみ2週間、前記組成物を用いるようにし、染色前と染色後、製品使用1日後、7日後、14日後に皮膚の測定及び写真撮影を行った。
【0052】
1-3.評価方法
肌のターンオーバー改善の測定は、肌色の測定及び皮膚のUV写真撮影を通じて評価した。肌色の測定のために、Chromameter CR 400を用いて染色前と染色後、製品使用1日後、7日後、14日後に各部位の肌色(L value)の程度を測定した。肌色の測定は、各部位当たり3回ずつ測定し、その平均値を下式に代入して角質の剥離率(%)を計算した。
【0053】
【0054】
製品の使用後に染色された皮膚の角質剥離率値が高いほど、肌のターンオーバー促進効果があることを意味する。
【0055】
また、皮膚のUV写真撮影は、Janus 1 Mark IIを用いた。
【0056】
1-4.試験の結果
本試験は、満19~60歳の成人男女22人を対象に行い、中途で脱落した2人を除く計20人の試験対象者が試験製品である本発明の化粧料組成物を前腕部位に2週間用いた。
【0057】
試験製品の使用後の肌のターンオーバー促進効果を測定した結果、試験製品使用部位の角質剥離率の測定値が試験製品の未使用部位に比べて製品使用14日後に統計的に有意な差を示して改善されることを確認した(p<0.05)。肌色及び皮膚角質剥離率は、図1及び図2に示した通りである。
【0058】
製品の使用後に染色された皮膚の角質剥離率値が増加することを確認した(表2)。
【0059】
【表2】
【0060】
これにより、本発明の化粧料組成物は、2週間の使用だけでも肌のターンオーバー改善に役立つことを示す。一般的な肌のターンオーバー周期は、4週間以上であるが、本発明の化粧料組成物の使用時に2週間に短縮されて肌のターンオーバーが促進されることを示唆する。
【0061】
実験例2.肌自生力の改善
2-1.試験対象者の情報
試験に参加した試験対象者の情報は、上記表1の通りである。
【0062】
2-2.試験方法
計22人の試験対象者を対象に定められた試験部位に前記製造された化粧料組成物の使用部位と未使用部位とを区画(2×2cm)した。自生力の試験部位に前記化粧料組成物を2週間用いた後、紫外線を照射し、紫外線の照射前と紫外線照射24時間後に皮膚の測定及び写真撮影を行った。
【0063】
2-3.評価方法
肌自生力の改善測定は、290~320nmの波長、44.22mJ/cmの光量を有する紫外線をMultiportを用いて照射し、皮膚バリアを一時的に損傷させた。その後、Antera 3Dを用いて皮膚の一般写真撮影を行い、Mexameter MX18を用いて皮膚紅斑量を測定した。皮膚紅斑は、紫外線の照射前、紫外線照射24時間後に照射部位の紅斑指数(E.I:Erythema Index)を測定して評価した。3回ずつ測定した平均値を皮膚紅斑の評価資料として用い、測定された紅斑指数の単位は、A.U(Arbitrary Unit)である。測定値と紅斑指数は比例するので、測定値が低くなるほど紅斑の発生が抑制されたことを意味する。
【0064】
2-4.試験の結果
本試験は、満19~60歳の成人男女22人を対象に行い、中途で脱落した2人を除く計20人の試験対象者が試験製品である本発明の化粧料組成物を前腕部位に2週間用いた。
【0065】
試験製品の使用後に肌自生力の改善を測定した結果、試験製品の使用部位の皮膚紅斑量の測定値が試験製品の未使用部位に比べて紫外線照射24時間後に統計的に有意な差を示して減少することを確認した(p<0.05)(図3)。
【0066】
皮膚紅斑量の変化を測定して本発明の化粧料組成物の肌自生力の改善効果を測定した結果は、下記表3に示す通りである。
【0067】
【表3】
【0068】
これにより、本発明の化粧料組成物は、2週間の使用により肌自生力の改善に著しい効果があることを示唆する。
【0069】
実験例3.皮膚の吸収の改善
3-1.試験対象者の情報
試験に参加した試験対象者の情報は、下記表4の通りである。
【0070】
【表4】
【0071】
3-2.皮膚吸収量の測定
3-2-1.測定方法
皮膚吸収量の測定は、試験対象者の前腕部位に試験製品の未使用、エッセンス使用部位、試験製品の使用部位を区画した後、gen2-SCA Performanceを用いて試験製品の使用前、製品使用20分後に各部位の皮膚吸収量を測定した。
【0072】
測定されたデータは、Skin Tools 3.0を用いて分析し、1回測定した値を皮膚吸収量の評価資料として用いた。測定した皮膚吸収量の単位は、μg/cmで示し、測定値と皮膚吸収量の程度は比例するので、皮膚吸収量の測定値が高いほど肌に多く吸収されたことを意味する。
【0073】
3-2-2.測定結果
試験製品及びエッセンス使用後の皮膚吸収量を測定した結果、皮膚吸収量の測定値が製品の使用前に比べて製品の使用後に統計的に有意に増加することを確認した(p<0.05)(図4)。また、試験製品及びエッセンス使用部位の皮膚の総吸収量測定値の変化量は、エッセンス使用部位と比較して製品の使用後に統計的に有意な差を示した(p<0.05)。
【0074】
3-3.皮膚吸収深さの測定
3-3-1.測定方法
皮膚吸収深さの測定は、試験対象者の前腕部位に試験製品の未使用、エッセンス使用部位、試験製品の使用部位を区画した後、gen2-SCA Performanceを用いて試験製品の使用前、製品使用20分後に各部位の皮膚吸収量を測定した。皮膚吸収量が製品の使用前に比べて製品の使用後に統計的に有意に増加した深さを皮膚吸収深さの評価資料として用いた。測定値の単位はμmで示し、測定値が高いほど肌に深く吸収されたことを意味する。
【0075】
3-3-2.測定結果
試験製品及びエッセンス使用後の皮膚吸収深さを測定した結果、皮膚吸収深さは、製品使用20分後、深さ25~30μmまで統計的に有意に増加することを確認した(p<0.05)。
【0076】
3-4.皮膚吸収速度の測定
3-4-1.測定方法
皮膚吸収速度は、各部位別に皮膚吸収深さを吸収させた時間で割って確認し、計算した値と皮膚吸収速度の改善程度は比例するので、計算した値が高いほど速く吸収されたことを意味する。
【0077】
3-4-2.測定結果
試験製品及びエッセンス使用後の皮膚吸収速度を計算した結果、皮膚吸収深さが25~30μmまで統計的に有意に増加し、皮膚吸収速度は1.25~1.5μm/minで示された。
【0078】
本発明の化粧料組成物の皮膚吸収改善の結果を総合すると、下記表5に示す通りである。
【0079】
【表5】
【0080】
実験例4.皮膚の粗さの改善
4-1.試験対象者の情報
試験に参加した試験対象者の情報は、上記表4の通りである。
【0081】
4-2.測定方法
皮膚の粗さ、即ち肌のキメの測定は、Antera 3Dを用いて試験製品の使用前、製品の使用直後に顔頬部位を撮影した。撮影された写真の特定領域を指定して粗さの程度を分析して評価資料として用い、分析された皮膚の粗さの単位はRaである。分析値と皮膚の粗さ(肌のキメ)の改善程度は反比例するので、分析値が低いほど皮膚の粗さ(肌のキメ)が改善されることを意味する。
【0082】
4-3.測定結果
試験製品の使用後の皮膚の粗さ、即ち肌のキメを測定した結果、皮膚粗さの分析値が製品の使用前に比べて製品の使用直後に統計的に有意に減少することを確認した(p<0.05)(図5)。
【0083】
皮膚粗さの測定結果は、下記表6に示す通りである。
【0084】
【表6】
【0085】
皮膚粗さの分析値が低いほど肌のキメが改善される効果があることを意味するので、負の数で表記された変化率は、肌のキメ(粗さ)の改善程度であることを示す。これにより、本発明の化粧料組成物は、皮膚の粗さを改善するのに優れた効果があることを示唆する。
【0086】
実験例5.順応性の評価
試験対象者は、使い方及び使用回数によって試験製品を使用するとき、製品の使用可否を試験製品と共に配布された順応日誌を作成するよう案内された。試験製品を総使用すべき100%の順応性のうち80%未満で用いた試験対象者は、測定データ分析値から除外するようにした。
【0087】
製品使用の順応性は、下記表7に示す通りである。
【0088】
【表7】
【0089】
実験例6.異常反応の評価
試験対象者の安全のために、毎回訪問時に異常反応に対する発生有無及び症状の程度を確認した。
【0090】
試験対象者に毎回訪問時、製品の使用部位に対する異常反応を確認した結果、本試験製品の使用期間中に製品の使用部位に対する特別な皮膚異常反応は報告されなかった(表8)。
【0091】
【表8】
【0092】
実験例7.試験対象者のアンケート評価
試験対象者は、試験製品使用後の製品の皮膚改善の有効性について5点尺度(5:非常に満足、4:満足、3:普通、2:不満足、1:非常に不満足)及び嗜好度について5点尺度(5:非常にそうだ、4:そうだ、3:普通、2:そうではない、1:全くそうではない)で直接アンケート評価を作成し、3点以上と答えた試験対象者の数を百分率(肯定回答率)で示した。
【0093】
その結果、肌のターンオーバーの促進及び肌の自生力改善の程度は、4点以上で有効性が高く、皮膚吸収量、吸収深さ及び吸収速度が改善され、皮膚の粗さも改善されることを確認し、使用感、香り、購買意思などの嗜好度においても肯定の回答率が100%であることを確認した(表9及び表10)。
【0094】
【表9】
【0095】
【表10】
【0096】
実験例8.安全性評価
試験製品を24時間肌に貼付し、貼付除去後30分、24時間、48時間経過後の試験部位で現れた皮膚反応及び平均皮膚反応度(Mean score)を評価した。
【0097】
試験対象者を対象に皮膚貼付試験を行った結果は、下記表11の通りである。
【0098】
【表11】
【0099】
その結果、試験製品は貼付除去後30分、24時間、48時間経過後に刺激が観察されなかった。平均皮膚反応度は、0.00で判定基準に従って無刺激と判定された。
【0100】
実験例9.統計的結果の分析
試験製品の使用部位と未使用部位間の皮膚測定の変化値の有意性の有無を判断するために、統計分析プログラムであるSPSS23.0を用いて検証した。試験進行中の脱落者のデータは除外した後、統計分析を行い、有意の確率は95%信頼区間でp<0.05の際に統計的な有意性を確認した。
【0101】
試験製品の使用部位と試験製品の未使用部位との比較のために、正規性検定満足は、Independent T-test(母数的方法)であり、正規性検定不満足は、Mann-Whitney U test(非母数的方法)で分析した。
【0102】
試験製品の使用前後の比較のために、正規性検定満足はPaird samples T-test(母数的方法)で、正規性検定不満足はWilcoxon signed ranks test(非母数的方法)で分析した。
【0103】
これにより、本発明の製造方法によって製造されたシカ抽出物が含浸されたマイクロニードルを有効成分として含む化粧料組成物が肌に弾力と再生力を付与し、肌のターンオーバー、皮膚吸収量、吸収深さ、吸収速度の改善及び肌のキメ、即ち皮膚の粗さを改善し、順応性及び安全性に優れた効果を有することを示唆する。
【0104】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態に製造でき、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須な特徴を変更することなく、他の具体的な形態に実施できるということが理解できるだろう。従って、以上で述べた実施例は、あらゆる面で例示的なものであり、限定的でないものとして理解すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5