(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177007
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】pH測定セル、pH測定装置、pH測定方法、及び、pH測定セルの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/80 20060101AFI20241212BHJP
G01N 31/22 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
G01N21/80
G01N31/22 121D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023138932
(22)【出願日】2023-08-29
(31)【優先権主張番号】P 2023093647
(32)【優先日】2023-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】592187534
【氏名又は名称】株式会社 堀場アドバンスドテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100227673
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 光起
(74)【代理人】
【識別番号】100231038
【弁理士】
【氏名又は名称】正村 智彦
(72)【発明者】
【氏名】芝田 学
(72)【発明者】
【氏名】三木 亮志
(72)【発明者】
【氏名】斧田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】室賀 樹興
【テーマコード(参考)】
2G042
【Fターム(参考)】
2G042AA03
2G042BB03
2G042CA02
2G042DA08
(57)【要約】
【課題】耐久性及び使い勝手に優れたpH測定セルを提供する。
【解決手段】サンプル液を収容して当該サンプル液のpHを測定するためのpH測定セル2であって、pHに応じて変色するpH応答用共重合体を含む樹脂からなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル液を収容して当該サンプル液のpHを測定するためのpH測定セルであって、
pHに応じて変色するpH応答用共重合体を含んだ樹脂からなる、pH測定セル。
【請求項2】
前記pH応答用共重合体は、pH応答部位及び重合反応部位を有する単量体成分であるpH応答性モノマーを含んで共重合されたものであり、
前記サンプル液を収容した状態で前記pH応答用共重合体の変色が視認又は検出可能である、請求項1に記載のpH測定セル。
【請求項3】
前記pH応答用共重合体は、pH応答性モノマーと、前記電気的中性部位、またはイオン感応性部位及び重合反応部位を含む単量体成分である非イオン性モノマーとを含んで共重合されたものであり、
前記非イオン性モノマーは、透光性を有するものである、請求項2に記載のpH測定セル。
【請求項4】
前記サンプル液が流れるサンプル液配管に設けられたインライン型のものである、請求項1乃至3の何れか一項に記載のpH測定セル。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載のpH測定セルと、
前記pH応答用共重合体の色を検出する色検出機構とを備える、pH測定装置。
【請求項6】
前記色検出機構は、
前記pH測定セルに光を照射する光照射部と、
前記pH測定セルからの反射光を検出する光検出部とを備える、請求項5に記載のpH測定装置。
【請求項7】
前記色検出機構により得られた検出信号から前記サンプル液のpHを演算するpH演算部をさらに備える、請求項5又は6に記載のpH測定装置。
【請求項8】
前記サンプル液のpHを連続測定するものである、請求項5乃至7の何れか一項に記載のpH測定装置。
【請求項9】
pH応答用共重合体を含む樹脂からなるpH測定セルにサンプル液を収容し、前記pH応答用共重合体の色から前記サンプル液のpHを測定する、pH測定方法。
【請求項10】
サンプル液を収容して当該サンプル液のpHを測定するためのpH測定セルの製造方法であって、
pHに応じて変色するpH応答用共重合体を含む樹脂を用いてpH測定セルを成形する、pH測定セルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、pH測定セル、pH測定装置、pH測定方法、及び、pH測定セルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に示すように、イオン感応性部位及び重合反応部位を含む単量体成分と、pH応答部位及び重合反応部位を含む単量体成分(pH応答性モノマー)とを含んで共重合してなるpH応答用共重合体が考えられている。
【0003】
そして、このpH応答用共重合体の適用事例としては、特許文献2に示すように、pH応答用共重合体を膜状に成形してフィルムとしたものをホルダに取り付けた構成が考えられている。そして、このフィルムの片面に測定対象を接触させるとともに、フィルムの反対面側にセンサを設けてフィルムの発色を測定する構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-163484号公報
【特許文献2】特開2015-81806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、pH応答用共重合体を膜状に成形したフィルムでは、その耐久性に問題があり、長期間の使用において破損する恐れがある。また、フィルムを用いた構成では、ホルダに取り付ける必要があり、使い勝手も悪くなってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、上記の問題点を解決すべくなされたものであり、耐久性及び使い勝手に優れたpH測定セルを提供することを主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係るpH測定セルは、サンプル液を収容して当該サンプル液のpHを測定するためのpH測定セルであって、pHに応じて変色するpH応答用共重合体を含む樹脂からなることを特徴とする。
【0008】
このように構成されたpH測定セルによれば、pH応答用共重合体を含む樹脂から形成されているので、耐久性及び使い勝手に優れたpH測定セルを提供することができる。
【0009】
非イオン性モノマー(セル形成用樹脂)が透光性を有さない場合には、セル内側の接液部にあるpH応答性モノマーの変色を視認又は検出することができない場合がある。このため、前記pH応答用共重合体は、pH応答部位及び重合反応部位を有する単量体成分であるpH応答性モノマーを含んで共重合されたものであり、前記サンプル液を収容した状態で前記pH応答用共重合体の変色が視認又は検出可能であることが望ましい。
【0010】
具体的な実施の態様としては、前記pH応答用共重合体は、pH応答性モノマーと、前記電気的中性部位、またはイオン感応性部位及び重合反応部位を含む単量体成分である非イオン性モノマーとを含んで共重合されたものであり、前記非イオン性モノマーは、透光性を有するものであることが考えられる。
【0011】
pH測定セルの具体的な実施の態様としては、前記サンプル液が流れるサンプル液配管に設けられたインライン型のものであることが望ましい。
【0012】
また、本発明に係るpH測定装置は、上述したpH測定セルと、前記pH応答用共重合体の色を検出する色検出機構とを備えることを特徴とする。
【0013】
前記色検出機構は、前記pH測定セルに光を照射する光照射部と、前記pH測定セルからの反射光を検出する光検出部とを備えることが望ましい。
【0014】
光検出部により検出されたpH応答用共重合体の色を用いてユーザがpHを判断することができる。ここで、pHを客観的に判断するためには、前記色検出機構により得られた検出信号から前記サンプル液のpHを演算するpH演算部をさらに備えることが望ましい。
【0015】
本発明のpH測定装置の具体的な実施の態様としては、前記サンプル液のpHを連続測定するものであることが望ましい。この構成において、pH測定装置に用いられるpH測定セルはインライン型のものであることが考えられる。
【0016】
さらに、本発明に係るpH測定方法は、pH応答用共重合体を含む樹脂からなるpH測定セルにサンプル液を収容し、前記pH応答用共重合体の色から前記サンプル液のpHを測定することを特徴とする。
【0017】
その上、本発明に係るpH測定セルの製造方法は、サンプル液を収容して当該サンプル液のpHを測定するためのpH測定セルの製造方法であって、pHに応じて変色するpH応答用共重合体を含む樹脂を用いてpH測定セルを成形することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、耐久性及び使い勝手に優れたpH測定セルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係るインライン型のpH測定装置の構成を示す概略図である。
【
図2】変形実施形態に係るバッチ型のpH測定装置の構成を示す概略図である。
【
図3】測定セル及び色検出機構の変形例を示す模式図である。
【
図4】半導体製造装置への適用例を示す模式図である。
【
図5】薬液供給装置への適用例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明に係るpH測定セルを用いたpH測定装置の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に示すいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し又は誇張して模式的に描かれている。同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0021】
<装置構成>
本実施形態に係るpH測定装置100は、サンプル液が流れるサンプル液配管Dに設けられたインライン型であって、サンプル液のpHを連続測定するものである。
【0022】
ここで、サンプル液としては、例えば、半導体製造装置等の半導体製造分野で用いられる液体、食品加工装置等の食品分野に用いられる液体、水道水、飲料水、河川や沼湖の水、工業排水、工業廃液、実験試薬、し尿、上下水、医療用試薬、空調用冷却水、浸出水処理設備で処理される浸出水等を挙げることができる。
【0023】
具体的にpH測定装置100は、いわゆる比色式pH計と呼ばれるものであり、
図1に示すように、pHに応じて変色するpH測定セル2と、pH測定セル2の色を検出する色検出機構3と、色検出機構により得られた検出信号からpHを演算するpH演算部4と、pH演算部4が用いる関係データを格納している関係データ格納部5と、演算されたpHを表示する表示部6とを備えている。
【0024】
pH測定セル2は、サンプル液を収容して当該サンプル液のpHを測定するためのものである。このpH測定セル2は、フロータイプのものであり、内部にサンプル液を収容する収容空間2Sを有している。また、pH測定セル2は、サンプル液が導入される導入ポートP1と、サンプル液が導出される導出ポートP2を有しており、それぞれのポートP1、P2には、サンプル液配管Dが接続されている。
【0025】
そして、pH測定セル2は、pHに応じて変色するpH応答用共重合体を含む樹脂から形成されている。具体的には、pH測定セル2の少なくとも収容空間2Sを形成する囲繞壁の材質は、pH応答用共重合体を含む樹脂である。本実施形態では、pH測定セル2全体の材質がpH応答用共重合体である。
【0026】
ここで、pH応答用共重合体は、上記の特許文献1、2に記載されたものであり、pH応答部位及び重合反応部位を含む単量体成分であるpH応答性モノマーと、電気的中性部位及び重合反応部位を含む単量体成分である非イオン性モノマーとを含んで共重合してなるものである。
【0027】
pH応答性モノマーとしては、例えば、ジメチルアミノアゾベンゼン(メタ)アクリレート、スピロピラン(メタ)アクリレート、5-[(P-ニトロ-m-ビニル-フェニル)アゾ]サリチル酸ナトリウム等が挙げられる。
【0028】
また、pH応答性モノマーのpH応答部位としては、以下を挙げることができる。
アゾ系由来のpH応答部位としては、例えば、N,N-ジメチル-4-(フェニルアゾ)-ベンゼン、4’-ジメチルアミノアゾベンゼン-4-スルホン酸ナトリウム、2-(N,N-ジメチル-4-アミノフェニル)アゾベンゼンカルボン酸、N-(4-(ビス(4-(ジメチルアミノ)フェニル)メチレン)シクロヘキサ-2,5-ジエン-1-イリデン)メタナミニウムクロリド)、5-(4-ニトロフェニルアゾ)サリチル酸、3,3’-(1E,1’E)-ビフェニル-4,4’-ジイルビス(ジアゼン-2,1-ジイル)ビス(4-アミノナフタレン-1-スルホン酸)ナトリウム、等を挙げることができる。
【0029】
トリフェニルメタン系由来、またはラクトン基を有するpH応答部位としては、例えば、3-(3’-メチル-4’-ヒドロキシフェニル)-フタリジル-4-ヒドロキシフェニル、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1・3-ジヒドロイソベンゾフラン-1-オン、2-〔ビス(4-ヒドロキシフェニル)メチルイウミル〕ベンゼンスルホナート、3,3-ビス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-イソプロピルフェニル)イソベンゾフラン-1(3H)-オン、3,3’,5,5’-テトラブロモフェノールスルホンフタレイン、2,6-ジブロモ-4-[3-(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)-1,1-ジオキソ-3-ベンゾ[c]オキサチオリル]フェノール、4,4’-(1,1-ジオキシド-3H-2,1-ベンゾオキサチオール-3,3-ジイル)ビス(2-ブロモ-6-イソプロピル-3-メチルフェノール)、[4-{ビス(4-ジメチルアミノフェニル)メチレン}-2,5-シクロヘキサジエン-1-イリデン]ジメチルアンモニウムクロリド、3,3-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-3H-2,1-ベンゾオキサチオール1,1-ジオキシド、4-[9-(4-ヒドロキシ-2-メチル-5-プロパン-2-イル-フェニル)-7,7-ジオキソ-8-オキサ-7λ6-チアビシクロ[4.3.0]ノナ-1,3,5-トリエン-9-イル]-5-メチル-2-プロパン-2-イル-フェノール、4,4’-(1,1-ジオキシド-3H-2,1-ベンゾオキサチオール-3,3-ジイル)ビス(2-ブロモ-6-イソプロピル-3-メチルフェノール)、4-[(4-ジメチルアミノフェニル)-フェニル-メチル]-N,N-ジメチル-アニリン、等を挙げることができる。
【0030】
その他自然由来の物質であるpH応答部位としては、例えば、アントシアニン、リトマス等を挙げることができる。また、キサンテン系、アントラキノン系、アリザリン系、チアジン系、クマリン系、ポルフィリン系などの色素をpH応答部位として用いることもできる。
【0031】
非イオン性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、ビニルアルコールのエーテル、アクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸のエステル等が挙げられる。また、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等は共重合体を水に不溶または難溶にできる。また、非イオン性モノマーとしては、セル形成後(共重合した後)において透光性を有するものが好ましい。このように非イオン性モノマーがセル形成後(共重合した後)において透光性を有することから、サンプル液を収容した状態でpH応答用共重合体の変色が視認又は検出可能となる。なお、非イオン性モノマーは、セル形成後(共重合した後)において透明となるものが望ましい。
【0032】
また、pH応答性モノマー及び非イオン性モノマーの重合反応部位としては、例えば、クロロエテン、またはクロロエチレンからなるポリマー(重合すると塩化ビニル樹脂(PVC))、酢酸ビニルモノマーからなるポリマー(重合すると酢酸ビニル樹脂(PVAC))、ビニルアルコールからなるポリマー(重合するとポリビニルアルコール(PVAL))、アルデヒドと反応させるとポリビニルブチラール(PVB))、ビスフェノールAとホスゲンからなるポリマー(重合するとポリカーボネート(PC))、ポリメタクリル酸メチルからなるポリマー(重合するとメタクリル樹脂(PMMA))、ポリフェニレンオキシドからなるポリマー(重合するとノリル樹脂(PPO))、エチレンからなるポリマー(重合するとポリエチレン(PE))、ポリプロピレンからなるポリマー(重合するとポリプロピレン(PP))、アミド結合からなるポリマー(重合するとポリアミド(ナイロン)(PA))、ホルムアルデヒドや1,3,5-トリオキサンからなるポリマー(重合するとポリアセタール(ポリオキシメチレン)(POM))、ベンゼン環と硫黄原子からなるポリマー(重合するとポリフェニレンサルファイド(PPS))、塩化ビニル(PVC)とアクリロニトリルからなるポリマー(重合すると塩化ビニリデン樹脂(PVDC))、エチレングリコールとテレフタル酸、またはエチレングリコールとテレフタル酸ジメチルからなるポリマー(重合するとポリエチレンテレフタレート(PETP))、テトラフルオロエチレンからなるポリマー(重合するとポリテトラフルオロエチレン(四フッ素化樹脂(PTFE))、クロロトリフルオロエチレンからなるポリマー(重合するとポリクロロトリフルオロエチレン(三フッ素化樹脂(PCTFE、CTFE))、フッ化ビニリデンからなるモノマー(重合するとポリフッ化ビニリデン(PVDF))、フッ化ビニルからなるポリマー(重合するとポリフッ化ビニル(PVF))、テトラフルオロエチレンとペルフルオロエーテルからなるポリマー(重合するとペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、ヘキサフルオロプロピレンとテトラフルオロエチレンからなるポリマー(重合すると四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP))、エチレンとテトラフルオロエチレンからなるポリマー(重合するとエチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE))、エチレンとクロロトリフルオロエチレンからなるポリマー(重合するとエチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE))、等を挙げることができる。
【0033】
また、重合反応部位としては、主鎖、または側鎖に共役構造を有するポリマーであって、共役構造はナフタレン、ベンゼン環、ビフェニル、その他の多環構造であっても良い。
【0034】
その他、pH応答用共重合体は、上記の特許文献1、2に記載されているように、pH応答性モノマー及び非イオン性モノマーとともにイオン感応性部位及び重合反応部位を含む単量体成分であるイオン性モノマーを含んで共重合させても良い。ここで、イオン感応性部位としては、例えば、スルフォニウム基、リン酸基、カルボキシ基、ニトロ基、アミド結合、エステル結合、カルボニル基、チオケトン基、チオエステル、チアール(チオカルボニル)、チオイミド、チオアミド等を挙げることができる。
【0035】
また、pH測定セル2は、所定量のpH応答性モノマー及び所定量の非イオン性モノマーを混合・溶融させてそれらを共重合させるとともに、成形型を用いてセル形状に成形する。これにより、pH測定セル2が製造される。なお、成形方法としては、射出成形、ブロー成形、押出し成形、真空成形又は圧空成形等を適宜採用することができる。
【0036】
色検出機構3は、光反射型のものであり、pH測定セル2に光を照射する光照射部31と、pH測定セル2からの反射光を検出する光検出部32とを備えている。なお、光照射部31及び光検出部32は、pH測定セル2に対して同一側(
図1では下側)に設けられている。
【0037】
光照射部31は、例えば白色光を出射するLEDを用いて構成することができる。なお、光照射部31が照射する光の波長は、pH測定セル2に用いられるpH応答用共重合体の色調に応じて適宜選択することができる。その他、光照射部31は、光を集光するレンズなどを有していても良い。
【0038】
光検出部32は、例えば、光電子増倍管、フォトダイオード、イメージセンサなどを用いて構成することができる。なお、光検出部32が検出する光の波長は、pH測定セル2に用いられるpH応答用共重合体の色調に応じて適宜選択することができる。その他、光検出部32は、光を集光するレンズなどを有していても良い。
【0039】
pH演算部4は、光検出部32により得られた検出信号からサンプル液のpHを演算するものである。具体的にpH演算部4は、検出信号とpHとの関係を示す関係データを用いて、光検出部32により得られた検出信号からサンプル液のpHを演算する。なお、pH演算部4により得られたpHは、表示部6に表示することができる。
【0040】
ここで、関係データは、予め実験等により求められたものである。具体的には、pHが既知である参照液をpH測定セル2に導入し、その際に光検出部32により得られた検出信号と参照液のpHとを対応付けることにより、関係データを作成する。この関係データは、関係データ格納部5に格納される。
【0041】
<本実施形態の効果>
このように構成したpH測定装置100によれば、pH測定セル2がpH応答用共重合体を含有するセル形成用樹脂組成物から形成されているので、pH測定セル2を耐久性及び使い勝手に優れたものにできる。
【0042】
また、セル形成用樹脂組成物が透光性を有するものであり、サンプル液を収容した状態でpH応答用共重合体の変色を精度良く検出することができ、その結果、pHの測定精度を向上することができる。
【0043】
<その他の実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0044】
例えば、pH測定装置100は、バッチ型のものであっても良い。具体的には、
図2に示すように、pH測定セル2を装置本体10に装着する構成としても良い。この装置本体10には、pH測定セル2を装着するセル装着部11が設けられるとともに、色検出機構3、pH演算部4、関係データ格納部5及び表示部6が設けられている。このpH測定装置100は、手に持って操作することができるハンディタイプのものとすることができる。なお、
図2の色検出機構3は光反射型のものであるが、光照射部31及び光検出部32がpH測定セル2を挟んで両側に設けられた光透過型のものとしても良い。
【0045】
pH測定セル2の形状は導入ポート及び導出ポートを有する形状のほか、上端部に開口を有する有底筒形状をなすものであっても良いし、その他、サンプル液を収容して貯留できる形状であれば良い。
【0046】
前記実施形態の色検出機構3は、光照射部31を有する構成であったが、光照射部31を有さない構成であっても良い。
【0047】
また、色検出機構3は、
図3(a)に示すように、フロータイプのpH測定セル2に対して光透過型の構成であっても良い。色検出機構3は、
図3(b)に示すように、貯留タイプのpH測定セル2に対して光反射型の構成であっても良い。色検出機構3は、
図3(c)に示すように、貯留タイプのpH測定セル2に対して光透過型の構成であっても良い。なお、貯留タイプのpH測定セル2とは、pH測定セル2の上部に導入ポート及び導出ポート(これらは共通であっても良い。)が形成され、それらの下側に貯留空間が形成されたものである。
【0048】
さらに、pHに応じて変色するpH応答用共重合体は、
図4に示すように、半導体製造装置に適用することができる。
図4の半導体製造装置は、ウエハを洗浄する洗浄装置である。そして、処理チャンバ200内の回転するステージ201上にpH応答用共重合体からなるフィルムFを配置し、洗浄液を供給することで、回転するステージ201上での洗浄液の挙動(洗浄具合等)を検査することができる。具体的には、洗浄液が供給されたフィルムFの変色を、処理チャンバ200に形成された光学窓W1を介して、色検出機構3(光照射部31、光検出部32)で検出することになる。なお、光学窓W1は、光照射部31及び光検出部32で共通としても良いし、光照射部31及び光検出部32それぞれに対して別に設けても良い。
【0049】
その上、pHに応じて変色するpH応答用共重合体は、
図5に示すように、薬液供給装置等において薬液(例えば洗浄液)のリーク検知技術に適用することができる。例えば、
図5(a)に示すように、薬液が流れる配管H(例えばフッ素系樹脂製の配管)の外側周面にpH応答用共重合体7を設けておくことが考えられる。このとき、配管Hの外側周面にシート状のpH応答用共重合体7を設けることが考えられる。これにより、配管から薬液が漏れた場合には、pH応答用共重合体の変色によって、リークを検知することができる。また、
図5(b)に示すように、薬液供給装置300の配管系の下側にシート状のpH応答用共重合体7を敷いておくことも考えられる。この構成であれば、リークセンサの代替とすることができ、工場の作業安全性の確認が容易となる。なお、
図5(b)では、前記実施形態のpH測定装置100が配管Hに設けられている。
【0050】
また他の実施形態の測定対象物質は、前述したpHに限らず、例えば、他のイオン(ナトリウム、カリウム、硝酸、亜硝酸やフッ化物等)又は残留塩素等であってもよい。また他の実施形態のpH測定装置100は、食品分野、水道水、飲料水、河川や沼湖の水、工業廃水、産業廃液、実験試薬、し尿、上下水、医療用試薬、空調用冷却水や浸出水処理等の様々なサンプル液に対して使用されてよい。
【0051】
前記実施形態では、サンプル液を収容してpHに応じて変色するpH測定セルについて説明したが、必ずしもサンプル液を収容するものに限られない。例えば、サンプル液に接触して当該サンプル液のpHを測定するためのpH測定器であって、pHに応じて変色するpH応答用共重合体を含んだ樹脂からなる、pH測定器であっても良い。
【0052】
このpH測定器は、唾液のpHを測定することにより、虫歯、歯石又は歯周病の有無などを検査するためのものである。具体的にpH測定器は、被験者の口腔内に入れられて、口腔内の唾液に接触させることにより、唾液のpHを測定するものである。pH測定器の形態としては、耳下腺、顎下腺或いは舌下腺等の唾液腺又はその近傍の口腔内に接触させることができるものである。pH測定器は、例えば、チップ形状(例えば1mm角)であっても良いし、棒形状(スティック形状)であっても良いし、種々の形状とすることができる。
【0053】
このpH測定器は、pHに応じて変色するpH応答用共重合体を含む樹脂から形成されている。pH応答用共重合体は、pH応答部位及び重合反応部位を含む単量体成分であるpH応答性モノマーと、電気的中性部位及び重合反応部位を含む単量体成分である非イオン性モノマーとを含んで共重合してなるものである。なお、pH応答性モノマーは、前記実施形態に挙げたものを用いることができる。また、非イオン性モノマーも、前記実施形態に挙げたものをもちいることができるが、口内に入れることから生体適合性を有するものを用いることが望ましい。ここで、生体適合性を有する非イオン性モノマーとしては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテル、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、ポリビニルアルコール、キチン、シリコーン、ポリメタクリル酸メチン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、キチン、コラーゲン等を挙げることができる。
【0054】
このように口腔内で唾液に接触して変色したpH測定器は、目視によってpHを測定することもできるし、吸光光度計等の分析装置を用いてpH測定器の変色を測定してpHを算出することもできる。なお、pH測定器は、唾液のpH測定の他に、尿のpH測定に用いることもできる。
【0055】
このようなpH測定器であれば、少量の唾液であっても、当該唾液のpHを測定することができ、唾液を採取して採取した唾液のpHを測定する構成に比べて、pH測定が容易となり、また、被験者の負担を軽減することができる。
【0056】
なお、唾液のpH測定に関して言えば、例えばISFETを用いた作用電極及び比較電極を有する測定装置を用いることができる。この場合、作用電極及び比較電極を有するセンサ本体を生体適合性の樹脂を用いて構成する。また、比較電極に内部液には、塩化ナトリウム(NaCl)溶液を用いることが考えられる。このNaCl溶液の濃度は、生理食塩水程度の濃度(例えば、0.7~1%)とすることが考えられる。
【0057】
上記のpH測定器は、唾液のpH測定にのみ利用されるものではなく、例えば、膣内分泌物、精液、胃液、唾液、汗等人体、又は、他の動物から分泌される液を測定対象にすることができる。
【0058】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0059】
100・・・pH測定装置
2 ・・・pH測定セル
3 ・・・色検出機構
31 ・・・光照射部
32 ・・・光検出部
4 ・・・pH演算部
5 ・・・関係データ格納部
6 ・・・表示部