(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017701
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】水素製造設備及び水素製造設備の運転方法
(51)【国際特許分類】
E04H 5/02 20060101AFI20240201BHJP
G21F 9/04 20060101ALN20240201BHJP
【FI】
E04H5/02 Z
G21F9/04 F
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120519
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】井手 光成
(72)【発明者】
【氏名】國藤 哲斗
(72)【発明者】
【氏名】吉本 俊純
(57)【要約】
【課題】設備コストを削減可能であり、かつ、環境汚染リスクを低減可能な水素製造設備及び水素製造設備の運転方法を提供する。
【解決手段】水素製造設備は、水素製造装置を構成する機器と、壁部及び屋根部を含み、前記機器を収容する建屋と、を備え、前記壁部は、前記建屋内の床面に接続される腰壁部を含み、前記腰壁部の側面及び前記床面によって少なくとも部分的に形成される凹部に、前記機器から漏洩した液体を貯留可能に構成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素製造装置を構成する機器と、
壁部及び屋根部を含み、前記機器を収容する建屋と、を備え、
前記壁部は、前記建屋内の床面に接続される腰壁部を含み、
前記腰壁部の側面及び前記床面によって少なくとも部分的に形成される凹部に、前記機器から漏洩した液体を貯留可能に構成された
水素製造設備。
【請求項2】
前記機器は、前記腰壁部よりも上方に設置されている
請求項1に記載の水素製造設備。
【請求項3】
前記床面上に設けられ、前記機器が前記腰壁部よりも上方に位置するように前記機器を支持するように構成された支持部を備える
請求項1又は2に記載の水素製造設備。
【請求項4】
前記腰壁部よりも上方の位置において前記壁部に設けられた開口部を備える
請求項1又は2に記載の水素製造設備。
【請求項5】
前記開口部は、前記機器が通過可能なサイズを有する
請求項4に記載の水素製造設備。
【請求項6】
前記壁部は、前記腰壁部よりも上方に位置し、前記屋根部に接続される上壁部を含み、
前記腰壁部の厚さは前記上壁部の厚さよりも大きい
請求項1又は2に記載の水素製造設備。
【請求項7】
前記壁部は、前記腰壁部よりも上方に位置し、前記屋根部に接続される上壁部を含み、
前記腰壁部の強度は前記上壁部の強度よりも大きい
請求項1又は2に記載の水素製造設備。
【請求項8】
前記機器は、電解質溶液が貯留される電解槽、又は、前記電解槽で生成された気体が導かれる気液分離器を含む
請求項1又は2に記載の水素製造設備。
【請求項9】
前記床面から凹むように設けられる集水部を備える
請求項1又は2に記載の水素製造設備。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の水素製造設備の運転方法であって、
前記建屋の屋外に、液体が貯留された仮設タンクを設置するステップと、
前記仮設タンクと前記機器とを供給管を介して接続するステップと、
前記仮設タンクに貯留された前記液体を、前記供給管を介して前記機器に供給するステップと、
前記機器を用いて、前記液体から水素を製造するステップと、
を備える水素製造設備の運転方法。
【請求項11】
前記供給するステップの後、前記供給管を介した前記仮設タンクと前記機器との接続を解除するステップを備え、
前記製造するステップでは、少なくとも前記解除するステップの後、前記機器を用いて前記液体から水素を製造する
請求項10に記載の水素設備の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水素製造設備及び水素製造設備の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水電解装置を含む水素製造設備では、アルカリ水溶液等の液体が用いられることがある。このような液体は、外部に流出すると環境に悪影響を及ぼす場合があるため、仮に液体が機器から漏洩したとしても、水素製造設備の外部に流出しないようにすることが求められる。
【0003】
従来、水素製造設備の建屋の内部に設置された機器から液体が漏洩した場合、建屋内の床面に設けられたトレンチや埋設管を使用して漏洩した液体を収集し、収集した液体を屋外に設けられた防液堤やピットに導いて貯留することがある。
【0004】
なお、特許文献1は水素製造設備に直接関わるものではないが、特許文献1には、建屋内の床面よりも下方に埋設されたファンネル、及び、該ファンネルに接続される排水配管を備えた設備が開示されている。この設備では、建屋内で発生した漏出液体を、ファンネルに収集し、ファンネルに接続される配管を介して外部に排出することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、屋外に防液堤やピット等の付帯設備を設ける場合、機器内で用いられる液体の全量を貯留可能なものは大容量となるため、これら付帯設備の設置面積が大きくなってしまい、また、付帯設備を設置するための費用も大きくなってしまう。また、屋外に設けられた防液堤やピットに液体を貯留する場合、降雨時に浸水及び増水して、貯留されていた液体が施設の外部に流出し、環境汚染を引き起こす可能性がある。
【0007】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、設備コストを削減可能であり、かつ、環境汚染リスクを低減可能な水素製造設備及び水素製造設備の運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の少なくとも一実施形態に係る水素製造設備は、
水素製造装置を構成する機器と、
壁部及び屋根部を含み、前記機器を収容する建屋と、を備え、
前記壁部は、前記建屋内の床面に接続される腰壁部を含み、
前記腰壁部の側面及び前記床面によって少なくとも部分的に形成される凹部に、前記機器から漏洩した液体を貯留可能に構成される。
【0009】
また、本発明の少なくとも一実施形態に係る水素製造設備の運転方法は、
上述の水素製造設備の運転方法であって、
前記建屋の屋外に、液体が貯留された仮設タンクを設置するステップと、
前記仮設タンクと前記機器とを供給管を介して接続するステップと、
前記仮設タンクに貯留された前記液体を、前記供給管を介して前記機器に供給するステップと、
前記機器を用いて、前記液体から水素を製造するステップと、
を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、設備コストを削減可能であり、かつ、環境汚染リスクを低減可能な水素製造設備及び水素製造設備の運転方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係る水素製造設備の概略構成図である。
【
図2】一実施形態に係る水素製造設備の概略構成図である。
【
図3】一実施形態に係る水素製造設備の運転方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0013】
(水素製造設備の構成)
図1及び
図2は、一実施形態に係る水素製造設備の概略構成図である。
図1は水素製造設備を上方から視た部分的な断面図であり、
図2は水素製造設備を側方から視た部分的な断面図である。
図1及び
図2に示すように、幾つかの実施形態に係る水素製造設備100は、水素製造装置を構成する機器2と、該機器2を収容する建屋10と、を備えている。
【0014】
水素製造装置は、液体を用いて水素を製造するように構成される。幾つかの実施形態では、水素製造装置は、水を電気分解して水素を生成するように構成された水電解装置であってもよい。水電解装置は、例えば、アルカリ型水電解装置、固体高分子膜(Polymer Electrolyte Membrane:PEM)型水電解装置、アニオン交換膜(Anion Exchange Membrane:AEM)型水電解装置、又は、固体酸化物形電解セル(Solid Oxide Electrolysis Cell: SOEC)水電解装置であってもよい。
【0015】
図1及び
図2に示す水素製造設備100は、水電解装置(水素製造装置)を構成する機器2としての電解槽4及び気液分離器6,8を含む。電解槽4は、水を電気分解するように構成される。電解槽4には、水を含む液体が供給されるようになっており、電解槽4に設けられた一対の電極間に電圧をかけて電流を流すことで、電解槽4内の水が電気分解され、陰極側で水素が発生し、陽極側で酸素が発生するようになっている。電解槽4には、電解質が溶解した水(電解質溶液)を含む液体が供給されるようになっていてもよい。該液体は、水酸化カリウム(KOH)等のアルカリ性物質が溶解したアルカリ性水溶液であってもよい。
【0016】
電解槽4で生成された水素ガス及び酸素ガスは、水分(液体)を伴って電解槽4から排出され、配管7a,7bを介して気液分離器6,8にそれぞれ導かれる。気液分離器6,8では、液体を含むガス(水素又は酸素)がガスと液体とに分離される。気液分離器6,8で液体が除去された水素ガス及び酸素ガスは図示しない配管を介して、気液分離器6,8から排出される。この水素ガス及び酸素ガスは、建屋10の外部の施設に送給されるようになっていてもよい。一方、気液分離器6,8でガスから分離された液体は、配管9a,9bを介して電解槽4に戻される。
【0017】
建屋10は、土台部12の上方において上下方向に沿って延び、機器2が配置される空間を取り囲むように設けられる壁部14と、壁部14を上方から覆う屋根部16と、を含む。壁部14は、建屋10内の床面13に接続される腰壁部14Bを含む。腰壁部14Bの側面15と、床面13とによって、機器2から漏洩した液体を貯留可能な凹部20が形成される。すなわち、建屋10の内部領域のうち、腰壁部14B(壁部14)によって囲まれる領域を凹部20として使用可能である。
【0018】
壁部14は、腰壁部14Bよりも上方に位置する上壁部14Aを含んでもよい。上壁部14Aは、屋根部16に接続されるように設けられていてもよい。上壁部14Aの下端部は、腰壁部14Bの上端部に接続されていてもよい。
【0019】
腰壁部14Bの厚さは、上壁部14Aよりも厚くてもよい。腰壁部14Bの厚さは、例えば、上壁部14Aの厚さの5倍以上であってもよい。腰壁部14Bの強度は、上壁部14Aの強度より大きくてもよい。腰壁部14Bは、上壁部14Aとは異なる材料から形成されていてもよい。例えば、腰壁部14Bを形成する材料はコンクリートを含み、上壁部14Aを形成する材料は鋼を含んでいてもよい。
【0020】
水電解装置を含む水素製造設備で用いられる液体(例えばアルカリ水溶液)が外部に流出すると環境に悪影響を及ぼす場合があるため、仮に液体が機器から漏洩したとしても、水素製造設備の外部に流出しないようにすることが求められる。
【0021】
この点、上述の実施形態によれば、建屋10を構成する腰壁部14Bの側面15及び床面13によって液体を貯留可能な凹部20が形成されるので、腰壁部14Bを利用して、建屋10内において機器2(電解槽4又は気液分離器6又は8等)から漏洩した液体を建屋10の内部に貯留することができる。よって、漏洩液体を貯留するための設備を屋外に設置する必要がなく、設備の設置面積や工費及び工期を削減することができる。また、建屋10の内部に漏洩液体が貯留されるので、降雨時であっても水位が増さない。このため、増水による設備外部への液体の流出及びこれによる環境汚染のリスクを低減することができる。よって、上述の実施形態によれば、設備コストを削減し、かつ、環境汚染リスクを低減することができる。
【0022】
上述の凹部20は、建屋10内に設置された機器2で用いられる液体の全量を貯留可能な容量を有していてもよい。
【0023】
なお、建屋10内の凹部20に貯留された液体は、ポンプ等を用いて搬送車両に搭載されたタンク等に移送することで、外部の設備等に搬送することができる。
【0024】
幾つかの実施形態では、
図2に示すように、機器2は、腰壁部14Bよりも上方に設置されている。即ち、機器2は、上下方向において、腰壁部14Bの上端よりも高い位置に位置する。
図1及び
図2に示すように、機器2は、該機器2が腰壁部14Bよりも上方に位置するように支持するための支持部22に支持されていてもよい。支持部22は、機器2を載置することが可能な支持台24と、支持台24を床面13上に支持するための脚部26と、を含んでもよい。あるいは、特に図示しないが、支持部22は、コンクリート基礎を含んでもよい。
【0025】
上述の実施形態によれば、水素製造装置を構成する機器2が、凹部20を形成する腰壁部14Bよりも上方に設置されるので、機器2から漏洩した液体を、該機器2よりも下方に位置する凹部20に貯留することができる。よって、凹部20に貯留された液体による機器2の腐食を抑制しながら、あるいは、凹部20に溜まった液体に混入した異物等の機器2への侵入を抑制しながら、機器2からの漏出液体を凹部20に貯留することができる。
【0026】
幾つかの実施形態では、壁部14のうち、腰壁部14Bよりも上方の部位に開口部17が設けられる。
図2に示すように、開口部17は、上壁部14Aに設けられてもよい。開口部17は、開閉可能な開閉部(扉、窓、又は蓋等)によって開閉可能になっていてもよい。
【0027】
上述の実施形態によれば、腰壁部14Bよりも上方に位置する開口部17を壁部14に設けたので、腰壁部14Bの側面15及び床面13により形成される凹部20に液体を貯留可能としながら、開口部17を介して作業員や物(機器2等)が建屋10に出入りすることが可能である。
【0028】
開口部17は、機器2が通過可能なサイズを有していてもよい。これにより、腰壁部14Bの側面及び床面13により形成される凹部20に液体を貯留可能としながら、開口部17を介して機器2を搬入及び搬出することができる。
【0029】
幾つかの実施形態では、建屋10内部の床面13に、該床面13から凹むように設けられる集水部18が設けられていてもよい。
【0030】
このように、床面13から凹む集水部18を設けることにより、凹部20で受けた機器2からの漏洩液体を、集水部18に集めることができる。よって、集水部18に集められた液体をポンプ等を介して建屋10の外に排出することで、漏洩液体を建屋10の外に排出しやすくなる。
【0031】
(水素製造設備の運転方法)
次に、幾つかの実施形態に係る水素製造設備の運転方法について説明する。
図3は、幾つかの実施形態に係る水素製造設備の運転方法を説明するための図である。なお、
図3に示される水素製造設備100は、
図1及び
図2に示す水素製造設備100と同じ構成を有している。
【0032】
幾つかの実施形態では、水素製造設備の運転開始にあたり、先ず、建屋10の屋外に、機器2に供給される液体が貯留された仮設タンク30を設置する。仮設タンク30は、建屋10の近くに常設されるものではなく、容易に移設可能なものであり、一時的に建屋10の近くに設置される。
図3に示すように仮設タンク30は、搬送車両32に搭載されたタンクであってもよい。
【0033】
次に、屋外に設置された仮設タンク30と、建屋10内に設置された機器2とを、供給管36を介して接続する。供給管36は、壁部14に設けられた開口部17を通過するように設置されてもよい。供給管36はホースを含んでもよい。なお、水素製造装置が水電解装置である場合、供給管36は、電解槽4、気液分離器6又は気液分離器8の何れかに接続されてもよい。
【0034】
次に、仮設タンク30内に貯留された液体を、供給管36を介して機器2に供給する。このとき、供給管36に設けられるポンプ34を用いて、仮設タンク30からの液体を機器2に向けて送給してもよい。
【0035】
そして、機器2に十分な量の液体が供給されたら、機器2を用いて水素の製造を開始する。
【0036】
上述の実施形態に係る方法によれば、建屋10の屋外に設置される仮設タンク30から、供給管36を介して液体が機器2に供給される。したがって、建屋10の内部もしくは外部に常設の液体タンクを設置しなくても機器2に液体を供給することができ、このように供給された液体を用いて水素を製造することができる。よって、機器設置面積を削減して設備コストをより効果的に削減しながら、水素製造設備100を運転することができる。
【0037】
幾つかの実施形態では、仮設タンク30から機器2への液体の供給が完了した後、供給管36を介した仮設タンク30と機器2との接続を解除してもよい。また、供給管36を機器2から取り外してもよい。供給管36を介した仮設タンク30と機器2との接続が解除された後、機器2を用いた水素の製造を行ってもよい。なお、仮設タンク30から機器2に液体を供給しながら、又は、供給管36を介して仮設タンク30と機器2が接続された状態で、あるいは、供給管36を介した仮設タンク30と機器2との接続が解除された後に、機器2を用いた水素の製造を開始してもよい。
【0038】
上述の実施形態に係る方法によれば、仮設タンク30からの液体を機器2に供給した後、供給管36を介した仮設タンク30と機器2との接続を解除し、機器2を用いて水素を製造する。よって、水素製造時には仮設タンク30は不要であり、例えば搬送車両32で移送することにより、仮設タンク30を除去することが可能である。よって、機器設置面積を削減して設備コストをより効果的に削減しながら、水素製造設備100を運転することができる。
【0039】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0040】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る水素製造設備は、
水素製造装置を構成する機器と、
壁部及び屋根部を含み、前記機器を収容する建屋と、を備え、
前記壁部は、前記建屋内の床面に接続される腰壁部を含み、
前記腰壁部の側面及び前記床面によって少なくとも部分的に形成される凹部に、前記機器から漏洩した液体を貯留可能に構成される。
【0041】
上記(1)の構成によれば、建屋を構成する腰壁部の側面及び床面によって液体を貯留可能な凹部が形成されるので、建屋内において機器から漏洩した液体を建屋の内部に貯留することができる。よって、漏洩液体を貯留するための設備を屋外に設置する必要がなく、設備の設置面積や工費及び工期を削減することができる。また、建屋の内部に漏洩液体が貯留されるので、降雨時であっても水位が増さない。このため、増水による設備外部への液体の流出及びこれによる環境汚染のリスクを低減することができる。よって、上記(1)の構成によれば、設備コストを削減し、かつ、環境汚染リスクを低減することができる。
【0042】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記機器は、前記腰壁部よりも上方に設置されている。
【0043】
上記(2)の構成によれば、水素製造装置を構成する機器が、凹部を形成する腰壁部よりも上方に設置されるので、機器から漏洩した液体を、該機器よりも下方に位置する凹部に貯留することができる。よって、凹部に貯留された液体による機器の腐食を抑制しながら、あるいは、凹部に溜まった液体に混入した異物等の機器への侵入を抑制しながら、機器からの漏出液体を凹部に貯留することができる。
【0044】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、
前記水素製造設備は、
前記床面上に設けられ、前記機器が前記腰壁部よりも上方に位置するように前記機器を支持するように構成された支持部を備える。
【0045】
上記(3)の構成によれば、建屋内の床面上に設けた支持部により、機器を腰壁部よりも上方の位置に適切に支持することができる。
【0046】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかの構成において、
前記水素製造設備は、
前記腰壁部よりも上方の位置において前記壁部に設けられた開口部を備える。
【0047】
上記(4)の構成によれば、腰壁部よりも上方に位置する開口部を壁部に設けたので、腰壁部及び床面により形成される凹部に液体を貯留可能としながら、開口部を介して人や物(機器等)が建屋に出入りすることが可能である。
【0048】
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)の構成において、
前記開口部は、前記機器が通過可能なサイズを有する。
【0049】
上記(5)の構成によれば、腰壁部よりも上方に位置する開口部は機器が通過可能なサイズを有するので、腰壁部及び床面により形成される凹部に液体を貯留可能としながら、開口部を介して機器を搬入及び搬出することができる。
【0050】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)のいずれかの構成において、
前記壁部は、前記腰壁部よりも上方に位置し、前記屋根部に接続される上壁部を含み、
前記腰壁部の厚さは前記上壁部の厚さよりも大きい。
【0051】
上記(6)の構成によれば、凹部を形成する腰壁部の厚さが比較的厚いので、該凹部に機器から漏洩した液体をより確実に貯留することができる。
【0052】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(6)の何れかの構成において、
前記壁部は、前記腰壁部よりも上方に位置し、前記屋根部に接続される上壁部を含み、
前記腰壁部の強度は前記上壁部の強度よりも大きい。
【0053】
(7’)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(6)の何れかの構成において、
前記腰壁部の強度は前記上壁部の強度と同等もしくは大きくてもよい。
【0054】
上記(7)又は(7’)の構成によれば、凹部を形成する腰壁部の強度が比較的大きいので、該凹部に機器から漏洩した液体をより確実に貯留することができる。
【0055】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(7)の何れかの構成において、
前記機器は、電解質溶液が貯留される電解槽、又は、前記電解槽で生成された気体が導かれる気液分離器を含む。
【0056】
上記(8)の構成によれば、電解槽又は気液分離器から漏洩した電解質溶液(液体)を、建屋内の凹部に貯留することができる。よって、水素製造設備に係る設備コストを削減し、かつ、電解質溶液の流出による環境汚染リスクを低減することができる。
【0057】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(8)の何れかの構成において、
前記水素製造設備は、
前記床面から凹むように設けられる集水部を備える。
【0058】
上記(9)の構成によれば、床面から凹む集水部を設けたので、凹部で受けた機器からの漏洩液体を、集水部に集めることができる。よって、集水部に集められた液体をポンプ等を介して建屋の外に排出することで、漏洩液体を建屋の外に排出しやすくなる。
【0059】
(10)本発明の少なくとも一実施形態に係る水素製造設備の運転方法は、
上記(1)乃至(9)の何れか一項に記載の水素製造設備の運転方法であって、
前記建屋の屋外に、液体が貯留された仮設タンクを設置するステップと、
前記仮設タンクと前記機器とを供給管を介して接続するステップと、
前記仮設タンクに貯留された前記液体を、前記供給管を介して前記機器に供給するステップと、
前記機器を用いて、前記液体から水素を製造するステップと、
を備える。
【0060】
上記(10)の方法によれば、建屋の屋外に設置される仮設タンクから、供給管を介して液体が機器に供給される。したがって、建屋の内部もしくは外部に常設の液体タンクを設置しなくても機器に液体を供給することができ、このように供給された液体を用いて水素を製造することができる。よって、機器設置面積を削減して設備コストをより効果的に削減しながら、水素製造設備を運転することができる。
【0061】
(11)幾つかの実施形態では、上記(10)の方法において、
前記供給するステップの後、前記供給管を介した前記仮設タンクと前記機器との接続を解除するステップを備え、
前記製造するステップでは、少なくとも前記解除するステップの後、前記機器を用いて前記液体から水素を製造する。
【0062】
上記(11)の方法によれば、仮設タンクからの液体を機器に供給した後、供給管を介した仮設タンクと機器との接続を解除し、機器を用いて水素を製造する。よって、水素製造時には仮設タンクは不要であり、仮設タンクを除去することが可能である。よって、上記(10)で述べたように、機器設置面積を削減して設備コストをより効果的に削減しながら、水素製造設備を運転することができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0064】
本明細書において、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
また、本明細書において、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【符号の説明】
【0065】
2 :機器
4 :電解槽
6 :気液分離器
7a :配管
7b :配管
8 :気液分離器
9a :配管
9b :配管
10 :建屋
12 :土台部
13 :床面
14 :壁部
14A :上壁部
14B :腰壁部
15 :側面
16 :屋根部
17 :開口部
18 :集水部
20 :凹部
22 :支持部
24 :支持台
26 :脚部
30 :仮設タンク
32 :搬送車両
34 :ポンプ
36 :供給管
100 :水素製造設備