(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177010
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】延伸基材、バリア性基材、積層体および包装容器
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20241212BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20241212BHJP
B65D 35/10 20060101ALI20241212BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B65D65/40 D
B65D35/10 A
C08J5/18 CES
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023141803
(22)【出願日】2023-08-31
(31)【優先権主張番号】P 2023094321
(32)【優先日】2023-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(72)【発明者】
【氏名】植木 貴之
【テーマコード(参考)】
3E065
3E086
4F071
4F100
【Fターム(参考)】
3E065AA02
3E065BA12
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4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】ガスバリア性に優れるバリア性基材を作製するために好適に用いることのできるポリオレフィン系延伸基材を提供する。
【解決手段】ポリオレフィンと接着性樹脂とを含有する第1の表面樹脂層と、ポリオレフィンを主成分として含有するポリオレフィン層と、ポリオレフィンと接着性樹脂とを含有する第2の表面樹脂層と、をこの順に少なくとも備える、延伸基材。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィンと接着性樹脂とを含有する第1の表面樹脂層と、
ポリオレフィンを主成分として含有するポリオレフィン層と、
ポリオレフィンと接着性樹脂とを含有する第2の表面樹脂層と、
をこの順に少なくとも備える、延伸基材。
【請求項2】
前記第1の表面樹脂層および前記第2の表面樹脂層において、それぞれ独立して、前記ポリオレフィンの含有割合が60質量%以上95質量%以下であり、前記接着性樹脂の含有割合が5質量%以上40質量%以下である、請求項1に記載の延伸基材。
【請求項3】
前記第1の表面樹脂層における前記ポリオレフィンがポリプロピレンを含み、前記第1の表面樹脂層における前記接着性樹脂が酸変性ポリプロピレンを含み、前記ポリオレフィン層がポリプロピレンを主成分として含み、前記第2の表面樹脂層における前記ポリオレフィンがポリプロピレンを含み、前記第2の表面樹脂層における前記接着性樹脂が酸変性ポリプロピレンを含むか、または、
前記第1の表面樹脂層における前記ポリオレフィンがポリエチレンを含み、前記第1の表面樹脂層における前記接着性樹脂が酸変性ポリエチレンを含み、前記ポリオレフィン層がポリエチレンを主成分として含み、前記第2の表面樹脂層における前記ポリオレフィンがポリエチレンを含み、前記第2の表面樹脂層における前記接着性樹脂が酸変性ポリエチレンを含む、
請求項1に記載の延伸基材。
【請求項4】
前記第1の表面樹脂層および前記第2の表面樹脂層における前記ポリプロピレンが、それぞれ独立して、ランダムポリプロピレンを含み、前記第1の表面樹脂層および前記第2の表面樹脂層における前記接着性樹脂が、それぞれ独立して、酸変性ランダムポリプロピレンを含み、前記ポリオレフィン層における前記ポリプロピレンが、ホモポリプロピレンを含む、請求項3に記載の延伸基材。
【請求項5】
前記延伸基材が前記ポリオレフィン層を2層以上備える、請求項1に記載の延伸基材。
【請求項6】
前記第1の表面樹脂層の厚さが、0.3μm以上15μm以下であり、
前記ポリオレフィン層の厚さが、6μm以上100μm以下であり、
前記第2の表面樹脂層の厚さが、0.3μm以上15μm以下である、
請求項1に記載の延伸基材。
【請求項7】
前記延伸基材におけるポリオレフィンの含有割合が、80質量%以上である、請求項1に記載の延伸基材。
【請求項8】
前記延伸基材が、共押出樹脂フィルムの延伸フィルムである、請求項1に記載の延伸基材。
【請求項9】
前記延伸基材が、2軸延伸基材である、請求項1に記載の延伸基材。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の延伸基材と、
前記延伸基材における前記第1の表面樹脂層および前記第2の表面樹脂層から選択される少なくとも1層の表面に設けられている蒸着膜と、
を備える、バリア性基材。
【請求項11】
第1の蒸着膜と、
請求項1~9のいずれか一項に記載の延伸基材と、
第2の蒸着膜と、
をこの順に少なくとも備えるバリア性基材であって、
前記第1の蒸着膜は、前記第1の表面樹脂層の表面に設けられており、
前記第2の蒸着膜は、前記第2の表面樹脂層の表面に設けられている、
バリア性基材。
【請求項12】
前記第1の蒸着膜および前記第2の蒸着膜が、それぞれ独立して、金属蒸着膜であるか、前記第1の蒸着膜が無機酸化物蒸着膜であり、前記第2の蒸着膜が金属蒸着膜であるか、前記第1の蒸着膜が金属蒸着膜であり、前記第2の蒸着膜が無機酸化物蒸着膜であるか、または、前記第1の蒸着膜および前記第2の蒸着膜が、それぞれ独立して、無機酸化物蒸着膜である、請求項11に記載のバリア性基材。
【請求項13】
前記無機酸化物蒸着膜がアルミナ蒸着膜、シリカ蒸着膜または酸化炭化珪素蒸着膜であり、前記金属蒸着膜がアルミニウム蒸着膜である、請求項12に記載のバリア性基材。
【請求項14】
請求項10に記載のバリア性基材と、
ヒートシール層と、
を少なくとも備える、積層体。
【請求項15】
前記ヒートシール層が、ポリオレフィンを主成分として含有し、前記積層体全体におけるポリオレフィンの含有割合が、80質量%以上である、請求項14に記載の積層体。
【請求項16】
第1のヒートシール層と、
前記バリア性基材と、
第2のヒートシール層と、
をこの順に少なくとも備える、
請求項14に記載の積層体。
【請求項17】
チューブ容器本体の胴部を形成するための積層体であって、前記第2のヒートシール層が前記胴部の外面側のシーラント層であり、前記第1のヒートシール層が前記胴部の内面側のシーラント層である、請求項16に記載の積層体。
【請求項18】
請求項14に記載の積層体を備える包装容器。
【請求項19】
包装袋である、請求項18に記載の包装容器。
【請求項20】
頭部と胴部とを備えるチューブ容器本体であって、
前記頭部は、前記胴部の一端に連接している肩部と、前記肩部に連接している抽出口部とを備え、前記胴部は、請求項17に記載の積層体により構成されている、
チューブ容器本体。
【請求項21】
請求項20に記載のチューブ容器本体と、
キャップと、
を備えるチューブ容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、延伸基材、バリア性基材、積層体および包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
液体および粉体などの内容物を収容するため、包装容器が用いられている。包装容器は、基材およびヒートシール層を備える積層体を用いて作製されている(例えば特許文献1参照)。例えば、延伸ポリプロピレンフィルムは、強度および耐熱性に優れることから、基材として使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内容物の種類によっては、包装容器にはガスバリア性が要求される場合がある。延伸ポリプロピレンフィルムはガスバリア性が通常は高くない。このため、延伸ポリプロピレンフィルム上に蒸着膜を設けることが検討されている。本開示は、ガスバリア性に優れるバリア性基材、および該バリア性基材を作製するために好適に用いることのできるポリオレフィン系延伸基材を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の延伸基材は、ポリオレフィンと接着性樹脂とを含有する第1の表面樹脂層と、ポリオレフィンを主成分として含有するポリオレフィン層と、ポリオレフィンと接着性樹脂とを含有する第2の表面樹脂層と、をこの順に少なくとも備える。
本開示のバリア性基材は、上記延伸基材と、上記延伸基材における第1の表面樹脂層および第2の表面樹脂層から選択される少なくとも1層の表面に設けられている蒸着膜と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、ガスバリア性に優れるバリア性基材を作製するために好適に用いることのできるポリオレフィン系延伸基材を提供できる。例えば、該ポリオレフィン系延伸基材上に蒸着膜を備えるバリア性基材は、ガスバリア性に優れる。該延伸基材および該バリア性基材は、例えば、ガスバリア性に優れる包装容器を作製するための包装材料における基材として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、バリア性基材の一実施形態を示す模式断面図である。
【
図2】
図2は、バリア性基材の一実施形態を示す模式断面図である。
【
図3】
図3は、バリア性基材の一実施形態を示す模式断面図である。
【
図4】
図4は、積層体の一実施形態を示す模式断面図である。
【
図5】
図5は、積層体の一実施形態を示す模式断面図である。
【
図6】
図6は、積層体の一実施形態を示す模式断面図である。
【
図7】
図7は、積層体を含むチューブ容器本体と、キャップと、を備えるチューブ容器の一実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態について、詳細に説明する。本開示は多くの異なる形態で実施でき、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されない。図面は、説明をより明確にするため、実施形態に比べ、各層の幅、厚さおよび形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定しない。本明細書と各図において、既出の図に関してすでに説明したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
本明細書において、あるパラメータに関して複数の上限値の候補および複数の下限値の候補が挙げられている場合、そのパラメータの数値範囲は、任意の1つの上限値の候補と任意の1つの下限値の候補とを組み合わせることによって構成されてもよい。上記パラメータとしては、例えば、物性値、成分の含有割合および層の厚さが挙げられる。一例として、「パラメータBは、好ましくはA1以上、より好ましくはA2以上、さらに好ましくはA3以上である。パラメータBは、好ましくはA4以下、より好ましくはA5以下、さらに好ましくはA6以下である。」との記載について説明する。この例において、パラメータBの数値範囲は、A1以上A4以下でもよく、A1以上A5以下でもよく、A1以上A6以下でもよく、A2以上A4以下でもよく、A2以上A5以下でもよく、A2以上A6以下でもよく、A3以上A4以下でもよく、A3以上A5以下でもよく、A3以上A6以下でもよい。
【0010】
本明細書において、ポリプロピレンとは、プロピレンホモポリマー、または、全繰返し構成単位中、プロピレン由来の構成単位の含有割合が任意のコモノマー由来の構成単位の含有割合よりも大きい重合体をいう。この重合体において、プロピレン由来の構成単位の含有割合は、全繰返し構成単位中、例えば50モル%以上でもよく、60モル%以上でもよく、70モル%以上でもよく、80モル%以上でもよく、90モル%以上でもよい。上記含有割合は、NMR法により測定される。
【0011】
ポリプロピレンは、プロピレンホモポリマー(ホモポリプロピレン)、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体等のプロピレンランダムコポリマー(ランダムポリプロピレン)およびプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体等のプロピレンブロックコポリマー(ブロックポリプロピレン)のいずれでもよく、これらから選択される2種以上の混合物でもよい。ポリプロピレンとしては、環境負荷低減という観点から、バイオマス由来のポリプロピレンや、メカニカルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリプロピレンを用いてもよい。α-オレフィンとしては、例えば、プロピレン以外の炭素数2以上20以下のα-オレフィンが挙げられ、具体的には、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンおよび6-メチル-1-ヘプテンが挙げられ、エチレン、1-ブテン、1-ペンテンおよび1-ヘキセンが好ましい。
【0012】
本明細書において、ポリプロピレンの密度は、例えば0.88g/cm3以上0.92g/cm3以下である。本明細書において、ポリプロピレンの密度は、JIS K7112:1999のD法(密度勾配管法、23℃)に準拠して測定される。
【0013】
本明細書において、ポリエチレンとは、全繰返し構成単位中、エチレン由来の構成単位の含有割合が50モル%超の重合体をいう。この重合体において、エチレン由来の構成単位の含有割合は、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上である。上記含有割合は、NMR法により測定される。
【0014】
本明細書において、ポリエチレンは、エチレンの単独重合体でもよく、エチレンと、エチレン以外のエチレン性不飽和モノマーとの共重合体でもよい。エチレン以外のエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンおよび6-メチル-1-ヘプテン等の炭素数3以上20以下のα-オレフィン、酢酸ビニルおよびプロピオン酸ビニル等のビニルモノマー、ならびに(メタ)アクリル酸メチルおよび(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0015】
本明細書において、ポリエチレンとしては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンおよび直鎖状低密度ポリエチレン、ならびにエチレン-酢酸ビニル共重合体およびエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体が挙げられる。ポリエチレンとしては、環境負荷低減という観点から、バイオマス由来のポリエチレンや、メカニカルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエチレンを用いてもよい。
【0016】
本明細書において、ポリエチレンの密度は、以下のとおりである。
高密度ポリエチレンの密度は、好ましくは0.945g/cm3を超える。高密度ポリエチレンの密度の上限は、例えば0.965g/cm3である。中密度ポリエチレンの密度は、好ましくは0.930g/cm3を超えて0.945g/cm3以下である。低密度ポリエチレンの密度は、好ましくは0.860g/cm3以上0.930g/cm3以下、より好ましくは0.900g/cm3以上0.930g/cm3以下である。直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、好ましくは0.860g/cm3以上0.930g/cm3以下、より好ましくは0.900g/cm3以上0.930g/cm3以下である。本明細書において、ポリエチレンの密度は、JIS K7112:1999のD法(密度勾配管法、23℃)に準拠して測定される。
【0017】
低密度ポリエチレンは、例えば、高圧重合法によりエチレンを重合して得られるポリエチレン(高圧法低密度ポリエチレン)である。直鎖状低密度ポリエチレンは、例えば、チーグラー・ナッタ触媒などのマルチサイト触媒またはメタロセン触媒などのシングルサイト触媒を用いた重合法によりエチレンおよび少量のα-オレフィンを重合して得られるポリエチレンである。
【0018】
密度または分岐が異なるポリエチレンは、重合方法を適宜選択することによって得られる。例えば、重合触媒として、チーグラー・ナッタ触媒などのマルチサイト触媒、またはメタロセン触媒などのシングルサイト触媒を用いて、気相重合、スラリー重合、溶液重合および高圧イオン重合のいずれかの方法により、1段または2段以上の多段で重合を行うことが好ましい。
【0019】
本明細書において、ポリプロピレンおよびポリエチレン等のポリオレフィンのメルトフローレート(MFR)は、製膜性および加工性という観点から、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは1g/10分以上、さらに好ましくは1.5g/10分以上であり、好ましくは50g/10分以下、より好ましくは30g/10分以下、さらに好ましくは10g/10分以下であり、例えば0.1g/10分以上50g/10分以下である。本明細書において、ポリオレフィンのMFRは、JIS K7210-1:2014に準拠して、荷重2.16kgの条件で、A法により測定される。MFRの測定温度は、ポリオレフィンの融点等に応じて設定され、ポリプロピレンの場合は230℃であり、ポリエチレンの場合は190℃である。
【0020】
本明細書において、以下の説明で登場する各成分(例えば、ポリプロピレンおよびポリエチレンなどのポリオレフィン、α-オレフィン、ガスバリア性樹脂などの樹脂材料、接着性樹脂、ならびに添加剤)は、それぞれ1種用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0021】
本明細書において、「フィルム」および「シート」について言及する場合があるが、「フィルム」および「シート」は、呼称の違いのみに基づいて互いから区別されない。
【0022】
本明細書において、ある層における「主成分」とは、当該層中の含有割合が50質量%超、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である成分をいう。
【0023】
[延伸基材]
本開示の延伸基材は、
ポリオレフィンと接着性樹脂とを含有する第1の表面樹脂層と、
ポリオレフィンを主成分として含有するポリオレフィン層と、
ポリオレフィンと接着性樹脂とを含有する第2の表面樹脂層と、
を厚さ方向にこの順に少なくとも備える。
以下、「厚さ方向にこの順に備える」を単に「この順に備える」と記載する。
本開示の延伸基材は、一実施形態において、ポリプロピレン系延伸基材であり、
ポリプロピレンと接着性樹脂とを含有する第1の表面樹脂層と、
ポリプロピレンを主成分として含有するポリプロピレン層と、
ポリプロピレンと接着性樹脂とを含有する第2の表面樹脂層と、
をこの順に少なくとも備える。
本開示の延伸基材は、一実施形態において、ポリエチレン系延伸基材であり、
ポリエチレンと接着性樹脂とを含有する第1の表面樹脂層と、
ポリエチレンを主成分として含有するポリエチレン層と、
ポリエチレンと接着性樹脂とを含有する第2の表面樹脂層と、
をこの順に少なくとも備える。
【0024】
延伸基材は、3層以上の多層構造を有する。延伸基材の層数は、3層以上であり、好ましくは9層以下であり、より好ましくは7層以下であり、例えば3層以上9層以下である。延伸基材の層数は、具体的には、3層、5層、7層または9層である。多層構造を有する延伸基材は、例えば、ガスバリア性、強度、剛性、耐熱性、透明性および印刷適性のバランスに優れる。
【0025】
延伸基材は、ポリオレフィン層を2層以上備えてもよい。
【0026】
延伸基材は、第1の表面樹脂層と、第1のポリオレフィン層と、第2のポリオレフィン層と、第3のポリオレフィン層と、第2の表面樹脂層と、をこの順に備えてもよい。ポリプロピレン系延伸基材は、第1の表面樹脂層と、第1のポリプロピレン層と、第2のポリプロピレン層と、第3のポリプロピレン層と、第2の表面樹脂層と、をこの順に備えてもよい。ポリエチレン系延伸基材は、第1の表面樹脂層と、第1のポリエチレン層と、第2のポリエチレン層と、第3のポリエチレン層と、第2の表面樹脂層と、をこの順に備えてもよい。
【0027】
第1および第2の表面樹脂層の組成は、互いに同一でもよく、異なってもよい。第1および第2の表面樹脂層の厚さは、互いに同一でもよく、異なってもよい。第1~第3のポリオレフィン層の組成は、それぞれ、互いに同一でもよく、異なってもよい。第1~第3のポリオレフィン層の厚さは、それぞれ互いに同一でもよく、異なってもよい。
【0028】
延伸基材におけるポリオレフィン(例えばポリプロピレンまたはポリエチレン)の含有割合は、好ましくは50質量%超、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、よりさらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは85質量%以上または90質量%以上である。このような延伸基材を備える積層体(または包装容器)は、例えば、リサイクル性に優れる。
【0029】
延伸基材は、延伸処理が施された基材である。これにより、例えば、基材の強度、剛性、耐熱性、透明性および印刷適性を向上できる。延伸処理は、1軸延伸処理でもよく、2軸延伸処理でもよい。2軸延伸処理は、逐次2軸延伸処理でもよく、同時2軸延伸処理でもよい。機械方向(基材の流れ方向、MD方向)へ延伸を行う場合の延伸倍率は、好ましくは2倍以上、より好ましくは3倍以上であり、好ましくは15倍以下、より好ましくは10倍以下であり、例えば2倍以上15倍以下である。幅方向(MD方向に対して垂直な方向、TD方向)へ延伸を行う場合の延伸倍率は、好ましくは2倍以上、より好ましくは3倍以上であり、好ましくは15倍以下、より好ましくは10倍以下であり、例えば2倍以上15倍以下である。
【0030】
延伸基材は、例えば、2軸延伸された基材であり、具体的には、MD方向およびTD方向へ2軸延伸された基材である。延伸基材は、例えば、1軸延伸された基材であり、具体的には、MD方向へ1軸延伸された基材である。
【0031】
延伸基材の厚さは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは15μm以上であり、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下、特に好ましくは30μm以下であり、例えば5μm以上200μm以下である。厚さが下限値以上の延伸基材は、例えば、強度、剛性および耐熱性に優れる。厚さが上限値以下の延伸基材は、例えば、加工性に優れる。本明細書において、基材および各層の厚さは、基材表面に対する垂直断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察により得られるSEM画像に基づき測定される10箇所の厚さの平均値である。
【0032】
延伸基材は、例えば、各層を構成する材料を製膜して積層フィルムを作製した後、該積層フィルムを延伸することにより作製できる。製膜の方法としては、例えば、Tダイキャスト法およびインフレーション法が挙げられ、Tダイキャスト法が好ましい。
【0033】
延伸基材は、一実施形態において、共押出樹脂フィルムの延伸フィルムである。
延伸基材は、一実施形態において、第1の表面樹脂層を構成する材料と、ポリオレフィン層を構成する材料と、第2の表面樹脂層を構成する材料とを、共押出製膜して積層フィルムを作製した後、該積層フィルムを延伸処理して得られた樹脂フィルムである。
【0034】
共押出Tダイキャスト法の一実施形態について、以下に説明する。各層を形成するための材料を各押出機に供給し、共押出Tダイキャスト成形することにより、積層フィルムが得られる。
【0035】
例えば各押出機において、表面樹脂層用の押出温度を240℃以上260℃以下、ポリプロピレン層用の押出温度を260℃以上280℃以下に設定する。例えば各押出機において、表面樹脂層用の押出温度、およびポリエチレン層用の押出温度を、それぞれ220℃以上240℃以下に設定する。なお、押出機におけるこれらの押出温度は一例に過ぎず、適宜変更できる。
【0036】
延伸基材および後述するバリア性基材には、表面処理が施されていてもよい。このような延伸基材およびバリア性基材は、例えば、他の層との密着性に優れる。表面処理の方法としては、例えば、物理的処理および化学的処理が挙げられる。物理的処理としては、例えば、コロナ処理、オゾン処理、酸素ガスおよび/または窒素ガスなどを用いた低温プラズマ処理、ならびにグロー放電処理が挙げられる。化学的処理としては、例えば、化学薬品を用いた酸化処理が挙げられる。
【0037】
延伸基材は、後述する印刷層をさらに備えてもよい。
【0038】
<ポリオレフィン層>
ポリオレフィン層は、ポリオレフィンを主成分として含有する。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテンおよびポリメチルペンテンが挙げられる。これらの中でも、ポリプロピレンおよびポリエチレンが好ましい。ポリオレフィン層としては、例えば、ポリプロピレンを主成分として含有するポリプロピレン層、およびポリエチレンを主成分として含有するポリエチレン層が好ましい。
【0039】
ポリオレフィン層におけるポリオレフィン(例えばポリプロピレンまたはポリエチレン)の含有割合は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。
【0040】
ポリオレフィン層は、ポリオレフィン以外の樹脂材料を含有してもよい。このような樹脂材料としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、(メタ)アクリル樹脂、ビニル樹脂、セルロース樹脂およびアイオノマー樹脂が挙げられる。
【0041】
ポリオレフィン層は、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、相溶化剤、顔料および改質用樹脂が挙げられる。
【0042】
ポリオレフィン層の厚さは、好ましくは6μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは14μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは60μm以下、よりさらに好ましくは40μm以下、特に好ましくは30μm以下であり、例えば6μm以上100μm以下である。厚さが下限値以上のポリオレフィン層を備える延伸基材は、例えば、強度、剛性、耐熱性およびリサイクル性に優れる。厚さが上限値以下のポリオレフィン層を備える延伸基材は、例えば、加工性に優れる。延伸基材がポリオレフィン層を2層以上備える場合は、上記「厚さ」は、各ポリオレフィン層の厚さの合計を意味する。
【0043】
ポリオレフィン層の厚さは、延伸基材の厚さに対して、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上であり、好ましくは98%以下、より好ましくは96%以下、さらに好ましくは92%以下であり、例えば60%以上98%以下である。延伸基材がポリオレフィン層を2層以上備える場合は、上記「厚さ」は、各ポリオレフィン層の厚さの合計を意味する。
【0044】
延伸基材は、ポリオレフィン層を1層備えてもよく、2層以上備えてもよい。
延伸基材は、第1の表面樹脂層と、第1のポリオレフィン層と、第2のポリオレフィン層と、第3のポリオレフィン層と、第2の表面樹脂層と、をこの順に備えてもよい。
【0045】
第2のポリオレフィン層の厚さは、上述した効果がより発揮されるという観点から、好ましくは4μm以上、より好ましくは6μm以上、さらに好ましくは8μm以上であり、好ましくは60μm以下、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは20μm以下であり、例えば4μm以上60μm以下である。
【0046】
第2のポリオレフィン層の厚さは、延伸基材の厚さに対して、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上であり、好ましくは90%以下、より好ましくは85%以下、さらに好ましくは80%以下であり、例えば40%以上90%以下である。
【0047】
第1および第3のポリオレフィン層の厚さは、それぞれ独立して、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは0.8μm以上、さらに好ましくは1μm以上であり、好ましくは18μm以下、より好ましくは13μm以下、さらに好ましくは8μm以下、特に好ましくは5μm以下であり、例えば0.5μm以上18μm以下である。
【0048】
第1および第3のポリオレフィン層の厚さは、延伸基材の厚さに対して、それぞれ独立して、好ましくは2%以上、より好ましくは4%以上、さらに好ましくは6%以上であり、好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは15%以下、特に好ましくは10%以下であり、例えば2%以上25%以下である。
【0049】
第1の表面樹脂層と、第1のポリオレフィン層と、第2のポリオレフィン層と、第3のポリオレフィン層と、第2の表面樹脂層と、をこの順に備える延伸基材において、第1のポリオレフィン層の厚さの、第3のポリオレフィン層の厚さに対する比は、延伸基材の対称性およびカールの発生抑制という観点から、好ましくは0.6以上1.4以下、より好ましくは0.7以上1.3以下、さらに好ましくは0.8以上1.2以下、特に好ましくは0.9以上1.1以下である。
【0050】
(ポリプロピレン層)
ポリプロピレン層は、ポリプロピレンを主成分として含有する。
ポリプロピレンとしては、例えば、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレンおよびブロックポリプロピレンが挙げられる。これらの中でも、延伸基材の耐熱性という観点から、ホモポリプロピレンが好ましい。
【0051】
ポリプロピレンは、アイソタクチックポリプロピレンでもよく、シンジオタクチックポリプロピレンでもよく、アタクチックポリプロピレンでもよい。延伸基材の耐熱性という観点から、ポリプロピレンとしては、アイソタクチックポリプロピレンおよびシンジオタクチックポリプロピレンが好ましく、アイソタクチックポリプロピレンがより好ましい。
【0052】
ポリプロピレン層におけるポリプロピレンの融点(Tm)は、延伸基材の強度および耐熱性などの観点から、好ましくは130℃以上、より好ましくは140℃以上、さらに好ましくは150℃以上、よりさらに好ましくは160℃以上、特に好ましくは165℃以上であり、好ましくは175℃以下であり、例えば130℃以上175℃以下である。本明細書において、各種材料のTmは、JIS K7121:2012(3.(2)(ただし、冷却速度10℃/分)による状態調節後の試験片を用いる)に準拠して、示差走査熱量測定(DSC)により得られる融解ピーク温度である。
【0053】
(ポリエチレン層)
ポリエチレン層は、ポリエチレンを主成分として含有する。
ポリエチレンとしては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンおよび直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。延伸基材の強度および耐熱性という観点からは、高密度ポリエチレンおよび中密度ポリエチレンが好ましい。延伸基材の製膜性および加工性という観点からは、直鎖状低密度ポリエチレンおよび中密度ポリエチレンが好ましい。
【0054】
直鎖状低密度ポリエチレンとしては、例えば、コモノマーが少なくとも1-ブテンであるエチレン-1-ブテン共重合体(C4-LLDPE)、コモノマーが少なくとも1-ヘキセンであるエチレン-1-ヘキセン共重合体(C6-LLDPE)、およびコモノマーが少なくとも1-オクテンであるエチレン-1-オクテン共重合体(C8-LLDPE)が挙げられる。これらの共重合体において、上記コモノマーのみに限定されず、さらなるコモノマーが用いられていてもよい。例えば、メタロセン触媒を用いて製造された直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。
【0055】
ポリエチレン層におけるポリエチレンの融点(Tm)は、延伸基材の強度および耐熱性などの観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは105℃以上、さらに好ましくは110℃以上、特に好ましくは115℃以上であり、好ましくは140℃以下であり、例えば100℃以上140℃以下である。
【0056】
<第1および第2の表面樹脂層>
第1および第2の表面樹脂層は、それぞれ独立して、ポリオレフィンと接着性樹脂とを含有する。このような表面樹脂層の表面に設けられた蒸着膜は、表面樹脂層との密着性に優れ、ガスバリア性を良好に発揮できる傾向にある。
【0057】
ポリオレフィンとしては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテンおよびポリメチルペンテンが挙げられる。これらの中でも、ポリプロピレンおよびポリエチレンが好ましい。
【0058】
ポリプロピレンとしては、例えば、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレンおよびブロックポリプロピレンが挙げられる。これらの中でも、延伸基材の表面平滑性、また表面樹脂層と蒸着膜との密着性や、延伸基材の耐熱性という観点から、ランダムポリプロピレンおよびホモポリプロピレンが好ましく、ランダムポリプロピレンがより好ましい。延伸基材においてランダムポリプロピレンの含有割合が高いと耐熱性が充分ではない場合があるが、そのような場合には、上述したポリプロピレン層の主成分をホモポリプロピレンとすればよい。
【0059】
第1および第2の表面樹脂層におけるポリプロピレンの融点(Tm)は、延伸基材の強度および耐熱性や、表面樹脂層と蒸着膜との密着性などの観点から、それぞれ独立して、好ましくは120℃以上、より好ましくは125℃以上、さらに好ましくは130℃以上であり、好ましくは175℃以下、より好ましくは170℃以下、さらに好ましくは165℃以下、よりさらに好ましくは160℃以下、特に好ましくは155℃以下または150℃以下であり、例えば120℃以上175℃以下である。
【0060】
ポリエチレンとしては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンおよび直鎖状低密度ポリエチレンが好ましく、延伸基材の表面平滑性、また表面樹脂層と蒸着膜との密着性という観点から、直鎖状低密度ポリエチレンがより好ましい。直鎖状低密度ポリエチレンとしては、例えば、C4-LLDPE、C6-LLDPE、およびC8-LLDPEが挙げられる。
【0061】
第1および第2の表面樹脂層におけるポリエチレンの融点(Tm)は、延伸基材の強度および耐熱性や、表面樹脂層と蒸着膜との密着性などの観点から、それぞれ独立して、好ましくは100℃以上、より好ましくは105℃以上、さらに好ましくは110℃以上、特に好ましくは115℃以上であり、好ましくは140℃以下であり、例えば100℃以上140℃以下である。
【0062】
接着性樹脂としては、例えば、酸変性樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂およびフェノール樹脂が挙げられ、酸変性樹脂が好ましい。酸変性樹脂としては、例えば、酸変性ポリオレフィンおよび酸変性ビニル樹脂が挙げられる。これらの中でも、リサイクル性および密着性という観点から、酸変性ポリオレフィンが好ましく、酸変性ポリプロピレンおよび酸変性ポリエチレンがより好ましい。ポリプロピレン系延伸基材の場合は、酸変性ポリプロピレンがさらに好ましく、耐熱性および接着性という観点から、酸変性ランダムポリプロピレンおよび酸変性ホモポリプロピレンがよりさらに好ましく、酸変性ランダムポリプロピレンが特に好ましい。酸変性ランダムポリプロピレンを含有する表面樹脂層は、蒸着膜との密着性により優れる傾向にある。ポリエチレン系延伸基材の場合は、酸変性ポリエチレンがさらに好ましく、酸変性直鎖状低密度ポリエチレンがよりさらに好ましい。酸変性直鎖状低密度ポリエチレンを含有する表面樹脂層は、蒸着膜との密着性により優れる傾向にある。
【0063】
酸変性ポリオレフィンとしては、例えば、酸変性成分によるポリオレフィン(例えばポリプロピレンおよびポリエチレン)の変性物が挙げられ、特に酸変性成分によるポリオレフィンのグラフト変性物が挙げられる。酸変性成分としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸およびメチルテトラヒドロフタル酸等の不飽和カルボン酸、またはその酸無水物、エステルもしくは金属塩が挙げられる。酸変性ポリオレフィンとしては、マレイン酸変性ポリオレフィンおよび無水マレイン酸変性ポリオレフィンが好ましく、マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、マレイン酸変性ポリエチレンおよび無水マレイン酸変性ポリエチレンがより好ましい。
【0064】
酸変性ポリオレフィンにおける酸変性成分由来の構成単位の含有割合は、表面樹脂層と蒸着膜との密着性という観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上である。酸変性ポリオレフィンにおける酸変性成分由来の構成単位の含有割合は、表面樹脂層とポリオレフィン層との接着性という観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。上記含有割合は、例えば0.01質量%以上10質量%以下である。酸変性成分由来の構成単位の含有割合は、赤外分光分析法により測定される。
【0065】
酸変性ポリオレフィンのMFRは、製膜性および加工性という観点から、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは1g/10分以上、さらに好ましくは1.5g/10分以上であり、好ましくは50g/10分以下、より好ましくは30g/10分以下、さらに好ましくは10g/10分以下であり、例えば0.1g/10分以上50g/10分以下である。酸変性ポリオレフィンのMFRは、JIS K7210-1:2014に準拠して、荷重2.16kgの条件で、A法により測定される。MFRの測定温度は、酸変性ポリオレフィンの融点等に応じて設定され、酸変性ポリプロピレンの場合は230℃であり、酸変性ポリエチレンの場合は190℃である。
【0066】
酸変性ポリプロピレンの密度は、例えば0.88g/cm3以上0.92g/cm3以下である。本明細書において、酸変性ポリプロピレンの密度は、JIS K7112:1999のD法(密度勾配管法、23℃)に準拠して測定される。酸変性ポリエチレンの密度は、上述したポリエチレンと同様の範囲が挙げられる。
【0067】
酸変性ポリプロピレンの融点(Tm)は、延伸基材の強度および耐熱性や、表面樹脂層と蒸着膜との密着性などの観点から、好ましくは120℃以上、より好ましくは125℃以上、さらに好ましくは130℃以上であり、好ましくは175℃以下、より好ましくは170℃以下、さらに好ましくは165℃以下、よりさらに好ましくは160℃以下、特に好ましくは155℃以下または150℃以下であり、例えば120℃以上175℃以下である。
【0068】
酸変性ポリエチレンの融点(Tm)は、延伸基材の強度および耐熱性や、表面樹脂層と蒸着膜との密着性などの観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは105℃以上、さらに好ましくは110℃以上、特に好ましくは115℃以上であり、好ましくは140℃以下であり、例えば100℃以上140℃以下である。
【0069】
第1および第2の表面樹脂層において、それぞれ独立して、ポリオレフィンの含有割合が60質量%以上95質量%以下であり、接着性樹脂の含有割合が5質量%以上40質量%以下であることが好ましく、ポリオレフィンの含有割合が70質量%以上95質量%以下であり、接着性樹脂の含有割合が5質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、ポリオレフィンの含有割合が80質量%以上95質量%以下であり、接着性樹脂の含有割合が5質量%以上20質量%以下であることがさらに好ましく、ポリオレフィンの含有割合が85質量%以上95質量%以下であり、接着性樹脂の含有割合が5質量%以上15質量%以下であることが特に好ましい。このような態様の表面樹脂層は、表面平滑性や、蒸着膜との密着性、ポリオレフィン層との接着性により優れる傾向にある。接着性樹脂の含有割合が上限値以下であると、例えば、延伸基材の作製時においてフィルムがロール等に必要以上に付着することを抑制できる。
【0070】
第1および第2の表面樹脂層は、上記成分以外の上記樹脂材料を含有してもよい。
第1および第2の表面樹脂層は、上記添加剤を含有してもよい。
【0071】
第1および第2の表面樹脂層の厚さは、上述した効果がより発揮されるという観点から、それぞれ独立して、好ましくは0.3μm以上、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは0.8μm以上であり、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下、特に好ましくは3μm以下であり、例えば0.3μm以上15μm以下である。
【0072】
第1および第2の表面樹脂層の厚さは、延伸基材の厚さに対して、それぞれ独立して、好ましくは1%以上、より好ましくは2%以上、さらに好ましくは4%以上であり、好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下、特に好ましくは8%以下であり、例えば1%以上20%以下である。
【0073】
第2の表面樹脂層の厚さの、第1の表面樹脂層の厚さに対する比は、延伸基材の対称性およびカールの発生抑制という観点から、好ましくは0.6以上1.4以下、より好ましくは0.7以上1.3以下、さらに好ましくは0.8以上1.2以下、特に好ましくは0.9以上1.1以下である。
【0074】
<延伸基材のガスバリア性>
本開示の延伸基材の水蒸気透過度(単位:g/(m2・day))は、好ましくは20未満、より好ましくは15未満、さらに好ましくは10未満、特に好ましくは5.0未満である。水蒸気透過度は、JIS K7129-2:2019に準拠して、温度40℃、湿度90%RH環境下にて測定される。
【0075】
[バリア性基材]
本開示のバリア性基材は、
上述した延伸基材と、
延伸基材における第1の表面樹脂層および第2の表面樹脂層から選択される少なくとも1層の表面に設けられている蒸着膜と、
を備える。
【0076】
蒸着膜は、延伸基材における第1の表面樹脂層の表面にのみ設けられていてもよく、第2の表面樹脂層の表面にのみ設けられていてもよく、第1の表面樹脂層の表面および第2の表面樹脂層の表面に設けられていてもよい。
【0077】
本開示のバリア性基材は、一実施形態において、
第1の蒸着膜と、
上述した延伸基材と、
第2の蒸着膜と、
を厚さ方向にこの順に少なくとも備える。
【0078】
延伸基材は、第1の面と、第1の面に対向する第2の面と、を有する。第1の蒸着膜は、延伸基材の第1の面上に設けられている。第1の蒸着膜は、延伸基材の第1の表面樹脂層の表面に設けられている。第2の蒸着膜は、延伸基材の第2の面上に設けられている。第2の蒸着膜は、延伸基材の第2の表面樹脂層の表面に設けられている。
【0079】
バリア性基材は、後述する印刷層をさらに備えてもよい。
【0080】
<蒸着膜>
本開示のバリア性基材は、蒸着膜を備え、ガスバリア性に優れる。したがって、このようなバリア性基材を用いて作製した包装容器は、ガスバリア性に優れる。本開示のバリア性基材は、一実施形態において、第1の蒸着膜と第2の蒸着膜とを備え、ガスバリア性により優れる。このようなバリア性基材は、延伸基材の両面上に蒸着膜を備えることから、ピンホールによるガスバリア性の低下を抑制できる。
【0081】
蒸着膜は、例えば、金属および/または無機酸化物から構成される。蒸着膜は、1種または2種以上の金属から構成される金属蒸着膜でもよく、1種または2種以上の無機酸化物から構成される無機酸化物蒸着膜でもよい。無機酸化物蒸着膜は、透明蒸着膜でもよい。金属としては、例えば、アルミニウム、クロム、スズ、ニッケル、銅、銀、金およびプラチナが挙げられる。無機酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグシウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ホウ素、酸化ハフニウム、酸化バリウムおよび酸化炭化珪素(炭素含有酸化珪素)が挙げられる。蒸着膜の中でも、アルミニウム蒸着膜、酸化アルミニウム(アルミナ)蒸着膜、酸化ケイ素(シリカ)蒸着膜および酸化炭化珪素蒸着膜が好ましく、第1の蒸着膜および第2の蒸着膜は、それぞれ独立して、アルミニウム蒸着膜、酸化アルミニウム(アルミナ)蒸着膜、酸化ケイ素(シリカ)蒸着膜または酸化炭化珪素蒸着膜であることが好ましい。
【0082】
第1の蒸着膜および第2の蒸着膜の組合せは、特に限定されない。
第1の蒸着膜が金属蒸着膜であり、第2の蒸着膜が金属蒸着膜でもよく、ここで両者は同一でもよく異なってもよい。第1の蒸着膜および第2の蒸着膜の一方が金属蒸着膜であり、他方が無機酸化物蒸着膜または透明蒸着膜でもよい。第1の蒸着膜が無機酸化物蒸着膜または透明蒸着膜でもよく、第2の蒸着膜が無機酸化物蒸着膜または透明蒸着膜でもよく、ここで両者は同一でもよく異なってもよい。
【0083】
一実施形態において、第1の蒸着膜は金属蒸着膜であり、第2の蒸着膜は金属蒸着膜である。ここで両者は同一でもよく異なってもよい。このようなバリア性基材は、ガスバリア性に特に優れる。
【0084】
例えば、延伸基材の両面上にアルミニウム蒸着膜などの金属蒸着膜を備えるバリア性基材を備える積層体を用いて包装容器を作製した場合、包装容器内に充填される内容物の種類によっては金属蒸着膜が酸化されて金属酸化物となり、変色する、腐食する、あるいは体積膨張してラミネート強度が低下し、層の浮き・剥がれが発生するなどの問題が起こることがある。
【0085】
一実施形態において、第1の蒸着膜および第2の蒸着膜の少なくともいずれか一方は、無機酸化物蒸着膜である。このようなバリア性基材を備える積層体を用いることにより、耐内容物性に優れる包装容器を作製できる。例えば、バリア性基材とヒートシール層とを備える積層体を準備する。積層体は、無機酸化物蒸着膜がヒートシール層側(包装容器の内側)を向き、もう一方の蒸着膜が外側(包装容器の外側)を向くように配置されているバリア性基材を備える。第1の蒸着膜および第2の蒸着膜のいずれも無機酸化物蒸着膜である場合は、バリア性基材の向きは特に限定されない。上記積層体を用いて包装容器を作製することにより、包装容器内に腐食性のある内容物を充填した場合にも、蒸着膜の変色、腐食または劣化や、層の浮き・剥がれを抑制できる。これは、無機酸化物蒸着膜はもともと酸化されていることから、金属蒸着膜のように酸化されて体積膨張が発生することを抑制できるからである。
【0086】
一実施形態において、第1の蒸着膜は無機酸化物蒸着膜であり、第2の蒸着膜は金属蒸着膜である。一実施形態において、第1の蒸着膜は金属蒸着膜であり、第2の蒸着膜は無機酸化物蒸着膜である。無機酸化物蒸着膜は、透明蒸着膜でもよい。
【0087】
一実施形態において、第1の蒸着膜は無機酸化物蒸着膜であり、第2の蒸着膜は無機酸化物蒸着膜である。ここで両者は同一でもよく異なってもよい。無機酸化物蒸着膜は、透明蒸着膜でもよい。このようなバリア性基材は、例えば、蒸着膜が金属蒸着膜である場合の酸化劣化の問題を回避でき、バリア性基材の端面からの蒸着膜の腐食も抑制できる。また、このようなバリア性基材は、透明性に優れることから、内容物の視認性に優れる包装容器を作製でき、例えば、電子レンジで使用可能な包装容器を作製できるとともに、金属探知機を通過可能な包装容器を作製できる。また、このようなバリア性基材を備える包装容器は、アルミニウム蒸着膜が含まれないことを例えば消費者が明確に理解でき、分別しやすく、さらに、リサイクル処理する際にアルミニウム蒸着膜に起因として発生しえる黒点(金属色)の異物の混入を抑制できる。
【0088】
第1の蒸着膜および第2の蒸着膜がいずれもアルミニウム蒸着膜でもよく、ここで両者は同一でもよく異なってもよい。第1の蒸着膜および第2の蒸着膜のいずれか一方がアルミナ蒸着膜、シリカ蒸着膜または酸化炭化珪素蒸着膜であり、他方がアルミニウム蒸着膜でもよい。第1の蒸着膜がアルミナ蒸着膜、シリカ蒸着膜または酸化炭化珪素蒸着膜であり、第2の蒸着膜がアルミナ蒸着膜、シリカ蒸着膜または酸化炭化珪素蒸着膜でもよく、ここで両者は同一でもよく異なってもよい。
【0089】
一実施形態において、本開示のバリア性基材は、延伸基材の一方の面上にのみ、蒸着膜を備える。このようなバリア性基材を備える積層体を用いることにより、耐内容物性に優れる包装容器を作製できる。例えば、バリア性基材とヒートシール層とを備える積層体を準備する。積層体は、延伸基材がヒートシール層側(包装容器の内側)を向き、蒸着膜が外側(包装容器の外側)を向くように配置されているバリア性基材を備える。上記積層体を用いて包装容器を作製することにより、蒸着膜を外側に配置できるので、包装容器内に腐食性のある内容物を充填した場合にも、蒸着膜の変色、腐食または劣化や、層の浮き・剥がれを抑制できる。
【0090】
蒸着膜の厚さは、ガスバリア性という観点から、好ましくは1nm以上、より好ましくは5nm以上、さらに好ましくは10nm以上である。蒸着膜の厚さは、蒸着膜におけるクラックの発生の抑制および包装容器のリサイクル性という観点から、好ましくは150nm以下、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは80nm以下である。蒸着膜の厚さは、例えば、1nm以上150nm以下である。第1の蒸着膜および第2の蒸着膜の厚さも、同様である。
【0091】
蒸着膜がアルミニウム蒸着膜である場合は、アルミニウム蒸着膜の光学濃度(OD値)は、好ましくは2.0以上3.5以下、より好ましくは2.2以上3.5以下、さらに好ましくは2.7以上3.5以下、特に好ましくは3.0以上3.5以下である。これにより、例えば、バリア性基材の生産性を維持しつつ、酸素バリア性および水蒸気バリア性を向上できる。本開示のバリア性基材において一方の蒸着膜が透明蒸着膜である場合は、他方の蒸着膜として、安定したOD値を有し、厚さの均一性に優れるアルミニウム蒸着膜を形成できる傾向にある。OD値は、JIS K7361-1:1997に準拠して測定できる。
【0092】
蒸着膜の表面には、上記表面処理が施されていることが好ましい。このような蒸着膜は、例えば、隣接する層との密着性に優れる。
【0093】
蒸着膜の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法およびイオンプレーティング法などの物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)、ならびにプラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法および光化学気相成長法などの化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)が挙げられる。蒸着膜は、物理気相成長法および化学気相成長法の両者を併用して形成される、異種の蒸着膜を2層以上含む複合膜でもよい。
【0094】
蒸着チャンバーの真空度としては、酸素導入前においては、10-2~10-8mbar程度が好ましく、酸素導入後においては、10-1~10-6mbar程度が好ましい。酸素導入量などは、蒸着機の大きさなどによって異なる。導入される酸素には、キャリヤーガスとしてアルゴンガス、ヘリウムガスおよび窒素ガスなどの不活性ガスを支障のない範囲で使用してもよい。蒸着膜が形成される対象フィルムの搬送速度は、例えば、10m/min以上800m/min以下である。
【0095】
蒸着膜は、1回の蒸着工程により形成される単層でもよく、複数回の蒸着工程により形成される多層でもよい。蒸着膜が多層である場合、各層は同一の成分から構成されてもよく、異なる成分から構成されてもよい。各層は、同一の方法により形成してもよく、異なる方法により形成してもよい。
【0096】
一実施形態において、延伸基材が、第1の面を構成する第1の表面樹脂層と、第2の面を構成する第2の表面樹脂層と、を備え、第1の蒸着膜が、第1の表面樹脂層の表面に設けられており、第2の蒸着膜が、第2の表面樹脂層の表面に設けられている。このような延伸基材は、例えば蒸着膜の形成性、平滑性および密着性に優れ、得られるバリア性基材は、例えば、ガスバリア性、具体的には、酸素バリア性および水蒸気バリア性に優れ、また、蒸着膜が金属蒸着膜である場合は、輝度に優れる。
【0097】
<バリアコート層>
本開示のバリア性基材は、蒸着膜上に、バリアコート層をさらに備えてもよい。すなわち、バリア性基材は、蒸着膜における延伸基材側の面とは反対側の面上に、バリアコート層をさらに備えてもよい。このようなバリア性基材は、例えば、酸素バリア性および水蒸気バリア性に優れるとともに、蒸着膜が酸化アルミニウムおよび酸化ケイ素などの無機酸化物から構成される場合は、蒸着膜におけるクラックの発生を効果的に抑制できる。
【0098】
バリア性基材は、一実施形態において、第1の蒸着膜としての金属蒸着膜と、第1の表面樹脂層と、ポリオレフィン層と、第2の表面樹脂層と、第2の蒸着膜としての無機酸化物蒸着膜と、バリアコート層と、をこの順に備える。
バリア性基材は、一実施形態において、バリアコート層と、第1の蒸着膜としての無機酸化物蒸着膜と、第1の表面樹脂層と、ポリオレフィン層と、第2の表面樹脂層と、第2の蒸着膜としての金属蒸着膜と、をこの順に備える。
バリア性基材は、一実施形態において、第1のバリアコート層と、第1の蒸着膜としての無機酸化物蒸着膜と、第1の表面樹脂層と、ポリオレフィン層と、第2の表面樹脂層と、第2の蒸着膜としての無機酸化物蒸着膜と、第2のバリアコート層と、をこの順に備える。
【0099】
一実施形態において、バリアコート層は、ガスバリア性樹脂を含有する。ガスバリア性樹脂としては、例えば、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリウレタン、ポリアクリロニトリルおよび(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。
【0100】
バリアコート層におけるガスバリア性樹脂の含有割合は、好ましくは50質量%超、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。このようなバリアコート層は、例えば、ガスバリア性に優れる。
【0101】
バリアコート層は、上記添加剤を含有してもよい。
【0102】
ガスバリア性樹脂を含有するバリアコート層の厚さは、ガスバリア性という観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.1μm以上である。ガスバリア性樹脂を含有するバリアコート層の厚さは、バリア性基材の加工性および包装容器のリサイクル性という観点から、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。上記厚さは、例えば、0.01μm以上10μm以下である。
【0103】
バリアコート層は、例えば、ガスバリア性樹脂などの材料を水または適当な有機溶剤に溶解または分散させて得られた塗布液を、蒸着膜に塗布し、乾燥することにより形成できる。
【0104】
他の実施形態において、バリアコート層は、金属アルコキシドと、水溶性高分子と、必要に応じてシランカップリング剤とを混合し、必要に応じて水、有機溶剤およびゾルゲル法触媒を添加して得られたガスバリア性組成物を、蒸着膜に塗布し、乾燥することにより形成されるガスバリア性塗布膜である。ガスバリア性塗布膜は、上記金属アルコキシド等がゾルゲル法によって加水分解および重縮合された加水分解重縮合物を含む。このようなバリアコート層を蒸着膜上に設けることにより、蒸着膜が無機酸化物から構成される場合、ガスバリア性を向上できるとともに、蒸着膜におけるクラックの発生を効果的に抑制できる。
【0105】
金属アルコキシドとしては、例えば、アルコキシシランが挙げられ、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシランおよびテトラブトキシシランが挙げられる。
【0106】
水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコールおよびエチレン-ビニルアルコール共重合体等の水酸基含有高分子が挙げられる。酸素バリア性、水蒸気バリア性、耐水性および耐候性などの所望の物性に応じて、ポリビニルアルコールおよびエチレン-ビニルアルコール共重合体のいずれか一方を用いてもよく、両者を併用してもよく、また、ポリビニルアルコールを用いて得られるガスバリア性塗布膜およびエチレン-ビニルアルコール共重合体を用いて得られるガスバリア性塗布膜を積層してもよい。水溶性高分子の使用量は、金属アルコキシド100質量部に対して、好ましくは5質量部以上500質量部以下である。
【0107】
シランカップリング剤としては、既知の有機反応性基含有オルガノアルコキシシランを用いることができ、エポキシ基を有するオルガノアルコキシシランが好ましく、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランおよびβ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランが挙げられる。シランカップリング剤の使用量は、金属アルコキシド100質量部に対して、好ましくは1質量部以上20質量部以下である。
【0108】
ガスバリア性組成物は、金属アルコキシド1モルに対して、好ましくは0.1モル以上、より好ましくは0.5モル以上の、好ましくは100モル以下、より好ましくは60モル以下の割合の水を含んでもよい。水の含有量を下限値以上とすることにより、例えば、バリア性基材の酸素バリア性および水蒸気バリア性を向上できる。水の含有量を上限値以下とすることにより、例えば、加水分解反応を速やかに行うことができる。
【0109】
ガスバリア性組成物は、有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコールおよびn-ブチルアルコールが挙げられる。
【0110】
ゾルゲル法触媒としては、酸またはアミン系化合物が好ましい。
【0111】
ガスバリア性組成物を塗布する方法としては、例えば、グラビアロールコーター等のロールコート、スプレーコート、スピンコート、ディッピング、刷毛、バーコートおよびアプリケータ等の塗布手段が挙げられる。
【0112】
以下、ガスバリア性塗布膜の形成方法の一実施形態について説明する。
金属アルコキシド、水溶性高分子、ゾルゲル法触媒、水、有機溶剤、および必要に応じてシランカップリング剤等を混合して、ガスバリア性組成物を調製する。組成物中では、次第に重縮合反応が進行する。蒸着膜に、常法により、上記組成物を塗布し乾燥する。この乾燥により、金属アルコキシドおよび水溶性高分子(組成物がシランカップリング剤を含む場合は、シランカップリング剤も)の重縮合がさらに進行し、複合ポリマーの層が形成される。上記操作を繰り返して、複数の複合ポリマー層を積層してもよい。例えば、塗布された上記組成物を、好ましくは20℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは70℃以上の温度で、好ましくは150℃以下、より好ましくは120℃以下、さらに好ましくは100℃以下の温度で、1秒以上10分以下加熱する。これにより、ガスバリア性塗布膜を形成できる。
【0113】
ガスバリア性塗布膜の厚さは、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.1μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは5μm以下、よりさらに好ましくは2μm以下、特に好ましくは1μm以下であり、例えば0.01μm以上100μm以下である。このようなガスバリア性塗布膜を備えるバリア性基材は、例えば、ガスバリア性に優れ、無機酸化物から構成される蒸着膜におけるクラックの発生を抑制でき、また、包装容器のリサイクル性および加工性に優れる。
【0114】
<バリア性基材の層構成>
以下、本開示のバリア性基材の層構成について、図面を参照しながら数例を挙げる。この図面において、本開示の延伸基材の層構成についても説明する。
図1に示すバリア性基材1は、第1の蒸着膜40と、第1の表面樹脂層20と、ポリオレフィン層10と、第2の表面樹脂層22と、第2の蒸着膜42と、をこの順に備える。延伸基材は、第1の表面樹脂層20と、ポリオレフィン層10と、第2の表面樹脂層22と、をこの順に備える。
図2に示すバリア性基材1は、第1の蒸着膜40と、第1の表面樹脂層20と、第1のポリオレフィン層11と、第2のポリオレフィン層12と、第2の表面樹脂層22と、第2の蒸着膜42と、をこの順に備える。延伸基材は、第1の表面樹脂層20と、第1のポリオレフィン層11と、第2のポリオレフィン層12と、第2の表面樹脂層22と、をこの順に備える。
図3に示すバリア性基材1は、第1の蒸着膜40と、第1の表面樹脂層20と、第1のポリオレフィン層11と、第2のポリオレフィン層12と、第3のポリオレフィン層13と、第2の表面樹脂層22と、第2の蒸着膜42と、をこの順に備える。延伸基材は、第1の表面樹脂層20と、第1のポリオレフィン層11と、第2のポリオレフィン層12と、第3のポリオレフィン層13と、第2の表面樹脂層22と、をこの順に備える。
【0115】
図1~
図3において、バリア性基材1は、第1の蒸着膜40上に図示せぬバリアコート層をさらに備えてもよい。
図1~
図3において、バリア性基材1は、第2の蒸着膜42上に図示せぬバリアコート層をさらに備えてもよい。
図1~
図3において、延伸基材の一方の表面にのみ、蒸着膜を設けてもよい。
【0116】
<バリア性基材のガスバリア性>
本開示のバリア性基材の酸素透過度(単位:cc/(m2・day・atm))は、好ましくは10未満、より好ましくは5.0未満、さらに好ましくは3.0未満、特に好ましくは1.0未満である。酸素透過度の下限値は、例えば0.01でもよい。酸素透過度は、JIS K7126-2:2006に準拠して、温度23℃、湿度90%RH環境下にて測定される。
【0117】
本開示のバリア性基材の水蒸気透過度(単位:g/(m2・day))は、好ましくは10未満、より好ましくは5.0未満、さらに好ましくは3.0未満、特に好ましくは1.0未満である。水蒸気透過度の下限値は、例えば0.01でもよい。水蒸気透過度は、JIS K7129-2:2019に準拠して、温度40℃、湿度90%RH環境下にて測定される。
【0118】
[積層体]
本開示の積層体は、本開示の延伸基材またはバリア性基材とヒートシール層とを少なくとも備える。本開示の積層体は、包装材料として好適に用いることができる。
【0119】
<基材>
本開示の積層体は、本開示の延伸基材またはバリア性基材を備える。本開示の積層体は、延伸基材を2つ以上備えてもよい。本開示の積層体は、バリア性基材を2つ以上備えてもよい。延伸基材およびバリア性基材の詳細については上述したとおりであり、本欄での詳細な説明は省略する。
【0120】
バリア性基材とヒートシール層とを備える積層体において、バリア性基材の向きは特に限定されない。延伸基材とヒートシール層とを備える積層体において、延伸基材の向きは特に限定されない。
【0121】
本開示の積層体は、一実施形態において、アルミニウム箔を備えない。このような本開示の積層体および該積層体を備える包装容器は、リサイクル性に優れる。
【0122】
本開示の積層体は、ポリオレフィンを主成分として含有するポリオレフィン延伸基材をさらに備えてもよい。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテンおよびポリメチルペンテンが挙げられる。これらの中でも、ポリプロピレンおよびポリエチレンが好ましい。ポリオレフィン延伸基材としては、例えば、ポリプロピレンを主成分として含有するポリプロピレン延伸基材、およびポリエチレンを主成分として含有するポリエチレン延伸基材が好ましい。ポリオレフィン延伸基材は、延伸処理が施されたポリオレフィン基材である。延伸処理の詳細については上述したとおりであり、本欄での説明は省略する。ポリオレフィン延伸基材は、例えば、1軸延伸基材または2軸延伸基材である。
【0123】
ポリオレフィン延伸基材の厚さは、積層体の強度および耐熱性という観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは8μm以上、さらに好ましくは10μm以上であり、積層体の加工性という観点から、好ましくは300μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下であり、例えば5μm以上300μm以下である。
【0124】
ポリオレフィン延伸基材には、上記表面処理が施されていてもよい。このようなポリオレフィン延伸基材は、例えば、該基材に隣接する層との密着性に優れる。また、ポリオレフィン延伸基材の表面に、従来公知のアンカーコート剤を用いて、アンカーコート層を形成してもよい。
【0125】
ポリオレフィン延伸基材をさらに備える積層体は、例えば、ポリオレフィン延伸基材と、本開示の延伸基材またはバリア性基材と、ヒートシール層とをこの順に備えてもよく、本開示の延伸基材またはバリア性基材と、ポリオレフィン延伸基材と、ヒートシール層とをこの順に備えてもよい。
【0126】
<印刷層>
本開示の積層体は、上述した延伸基材、バリア性基材およびポリオレフィン延伸基材等の基材の一方の面または両方の面上に、印刷層を備えてもよい。本開示の積層体は、後述する第2のヒートシール層上に、印刷層を備えてもよい。
【0127】
印刷層は、画像を含む。画像としては、例えば、文字、図形、模様、記号およびこれらの組合せが挙げられる。画像は、商品名、包装容器中の物品の名称、製造者および原材料名等の文字情報を含んでもよい。画像は、単色無地(いわゆるベタ画像)でもよい。
【0128】
印刷層は、例えば、インキ組成物を用いて形成できる。印刷層の形成方法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、活版印刷法および転写印刷法が挙げられる。印刷層は、環境負荷低減という観点から、フレキソ印刷法により形成してもよい。印刷層は、環境負荷低減という観点から、バイオマス由来のインキを用いて形成してもよい。
【0129】
印刷層の厚さは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、さらに好ましくは0.3μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下であり、例えば0.1μm以上10μm以下である。
【0130】
<表面保護層>
本開示の積層体は、後述する第2のヒートシール層上に設けられた印刷層上に、印刷層の耐擦傷性および耐候性を良好にするために、表面保護層を備えてもよい。本開示の積層体は、印刷層の全領域を覆う表面保護層を備えることが好ましい。印刷層の視認性という観点から、表面保護層は、可視光領域において透明性を有することが好ましく、無色透明であることがより好ましい。
【0131】
表面保護層は、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の硬化物またはエネルギー線硬化性化合物の硬化物を含有する。これらの中でも、耐擦傷性および耐候性を向上できるという観点から、表面保護層は、熱硬化性樹脂の硬化物またはエネルギー線硬化性化合物の硬化物を含有することが好ましく、エネルギー線硬化性化合物の硬化物を含有することがより好ましい。表面保護層の全樹脂成分における上記硬化物の割合は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。表面保護層の印刷方法としては、例えば、活版印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷および熱転写印刷が挙げられる。
【0132】
表面保護層の厚さは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上であり、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下であり、例えば0.5μm以上15μm以下である。このような表面保護層を備える積層体は、耐擦傷性および耐候性に優れる。
【0133】
<ヒートシール層>
本開示の積層体は、ヒートシール層を備える。
ヒートシール層は、熱によって溶融し相互に融着し得る熱融着性樹脂を主成分として含有する。熱融着性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリメチルペンテンなどのポリオレフィン、環状ポリオレフィン、環状オレフィンコポリマー、アイオノマー樹脂、酸変性ポリオレフィンおよびエチレン-(メタ)アクリル酸エステル-不飽和カルボン酸の三元共重合体が挙げられる。ポリエチレンとしては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体およびエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体が挙げられる。酸変性ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレン等のポリオレフィンを(メタ)アクリル酸および無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸系化合物で変性した樹脂が挙げられる。
【0134】
近年、環境負荷低減という観点から、包装容器をリサイクルすることが求められている。リサイクル性という観点からは、基材とヒートシール層とがそれぞれ同種の樹脂材料から構成されること(モノマテリアル化)が好ましい。ヒートシール層は、一実施形態において、ポリオレフィンを主成分として含有する。これにより、包装容器のモノマテリアル化を図ることができる。このような包装容器は、リサイクル性に優れ、例えば使用済みの包装容器を回収した後、バリア性基材とヒートシール層とを分離する必要がない。
【0135】
例えば上記延伸基材がポリプロピレン系延伸基材である場合は、ヒートシール層はポリプロピレンを主成分として含有することが好ましい。例えば上記延伸基材がポリエチレン系延伸基材である場合は、ヒートシール層はポリエチレンを主成分として含有することが好ましい。
【0136】
本開示の積層体全体におけるポリオレフィン(例えばポリプロピレンまたはポリエチレン)の含有割合は、一実施形態において、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。これにより、例えば、上記積層体を用いてモノマテリアル化した包装容器を作製でき、包装容器のリサイクル性を向上できる。ポリオレフィンの含有割合の上限は特に限定されないが、99質量%でもよい。
【0137】
ヒートシール層は、上記添加剤を含有してもよい。
【0138】
本開示の積層体は、上記ヒートシール層としての第1のヒートシール層と、本開示の延伸基材またはバリア性基材と、上記ヒートシール層としての第2のヒートシール層と、をこの順に少なくとも備えてもよい。第1のヒートシール層および第2のヒートシール層は、それぞれ加熱によって溶融し、相互に融着し得る。このような積層体は、例えば、チューブ容器本体の胴部を形成するための包装材料として好適に用いることができる。この場合、第2のヒートシール層は胴部の外面側のシーラント層であり、第1のヒートシール層は胴部の内面側のシーラント層である。すなわち、上記胴部は、胴部の外側から内側に向かって、第2のヒートシール層と、延伸基材またはバリア性基材と、第1のヒートシール層と、をこの順に備える。第1のヒートシール層および第2のヒートシール層は、一実施形態において、ポリプロピレンおよびポリエチレンなどのポリオレフィンを主成分として含有する。
【0139】
上記積層体において、バリア性基材の向きは特に限定されない。
上記積層体において、延伸基材の向きは特に限定されない。
【0140】
ヒートシール層は、単層構造を有してもよく、多層構造を有してもよい。
ヒートシール層の厚さは、ヒートシール性および包装容器のリサイクル性という観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは30μm以上、さらに好ましくは50μm以上、特に好ましくは80μm以上である。ヒートシール層の厚さは、積層体の加工性という観点から、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは150μm以下である。ヒートシール層の厚さは、例えば10μm以上300μm以下である。
【0141】
ヒートシール層は、ヒートシール性という観点から、好ましくは未延伸の樹脂フィルムであり、より好ましくは未延伸の共押出樹脂フィルムであり、ヒートシール層を構成する各層は、共押出樹脂層である。上記樹脂フィルムは、例えば、Tダイキャスト法またはインフレーション法等を利用することにより作製できる。「未延伸」とは、全く延伸されていないフィルムだけでなく、製膜の際に加えられる張力に起因してわずかに延伸されているフィルムも含む概念である。
【0142】
例えば、ヒートシール層に対応する未延伸の樹脂フィルムを必要に応じて接着層を介して延伸基材またはバリア性基材上に積層してもよく、熱融着性樹脂またはその樹脂組成物を延伸基材またはバリア性基材上に溶融押出しすることによりヒートシール層を形成してもよい。後者の場合、接着層が設けられていなくてもよい。接着層としては、例えば、後述する接着層が挙げられる。
【0143】
<接着層>
本開示の積層体は、延伸基材またはバリア性基材と、ヒートシール層との間などの任意の層間に、接着層を備えてもよい。このような積層体は、例えば、延伸基材またはバリア性基材と、ヒートシール層との密着性に優れる。
【0144】
本開示の積層体は、例えば、本開示の延伸基材またはバリア性基材と、接着層と、ヒートシール層とをこの順に備えてもよく、ポリオレフィン延伸基材と、第2の接着層と、本開示の延伸基材またはバリア性基材と、第1の接着層と、ヒートシール層とをこの順に備えてもよく、本開示の延伸基材またはバリア性基材と、第2の接着層と、ポリオレフィン延伸基材と、第1の接着層と、ヒートシール層とをこの順に備えてもよい。本開示の積層体は、例えば、第2のヒートシール層と、第2の接着層と、本開示の延伸基材またはバリア性基材と、第1の接着層と、第1のヒートシール層とをこの順に備えてもよい。
【0145】
接着層は、一実施形態において、接着剤により構成される接着剤層でもよい。接着剤は、1液硬化型の接着剤、2液硬化型の接着剤、および非硬化型の接着剤のいずれでもよい。接着剤は、無溶剤型の接着剤でもよく、溶剤型の接着剤でもよい。
【0146】
無溶剤型の接着剤、すなわちノンソルベントラミネート接着剤としては、例えば、ポリエーテル系接着剤、ポリエステル系接着剤、シリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤およびウレタン系接着剤が挙げられる。これらの中でも、ウレタン系接着剤が好ましく、2液硬化型のウレタン系接着剤がより好ましい。
【0147】
溶剤型の接着剤としては、例えば、ゴム系接着剤、ビニル系接着剤、オレフィン系接着剤、シリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤、フェノール系接着剤およびウレタン系接着剤が挙げられる。これらの中でも、ウレタン系接着剤が好ましく、2液硬化型のウレタン系接着剤がより好ましい。
【0148】
本開示の積層体は、一実施形態において、本開示の延伸基材またはバリア性基材と、任意にポリオレフィン延伸基材と、ヒートシール層に対応する樹脂フィルムとを、無溶剤型の接着剤を用いたノンソルベントラミネート法により貼り合わせて製造してもよく、溶剤型の接着剤を用いたドライラミネート法により貼り合わせて製造してもよい。
【0149】
接着剤層は、例えば、ダイレクトグラビアロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、リバースロールコート法、フォンテン法およびトランスファーロールコート法などの方法により、延伸基材またはバリア性基材等に接着剤を塗布および乾燥することにより形成できる。
【0150】
接着剤層の厚さは、0.1μm以上でもよく、0.2μm以上でもよく、0.5μm以上でもよく、10μm以下でもよく、8μm以下でもよく、6μm以下でもよく、例えば0.1μm以上10μm以下である。接着剤層の厚さは、2μm以下でもよい。
【0151】
接着層は、一実施形態において、熱可塑性樹脂を含有する接着性樹脂層でもよく、熱可塑性樹脂を含有する押出樹脂層でもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、上述した熱融着性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂は、化石燃料由来の材料でもよく、バイオマス由来の材料でもよく、これらの両方を用いてもよい。
【0152】
押出樹脂層の厚さは、層間密着性という観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、積層体の生産コストの低減およびその生産性の向上という観点から、好ましくは30μm以下、より好ましくは25μm以下であり、例えば5μm以上30μm以下である。
【0153】
<積層体の層構成>
以下、本開示の積層体の層構成について、数例を挙げる。
図4に示す積層体2は、バリア性基材1と、接着層60と、ヒートシール層80とをこの順に備え、具体的には、第2の蒸着膜42と、第2の表面樹脂層22と、ポリオレフィン層10と、第1の表面樹脂層20と、第1の蒸着膜40と、接着層60と、ヒートシール層80とをこの順に備える。積層体2は、図示せぬ印刷層をさらに備えてもよく、例えば、バリア性基材1における第1の蒸着膜40上または第2の蒸着膜42上に、図示せぬ印刷層をさらに備えてもよい。
図5に示す積層体2は、ポリオレフィン延伸基材70と、第2の接着層62と、バリア性基材1と、第1の接着層60と、ヒートシール層80とをこの順に備え、具体的には、ポリオレフィン延伸基材70と、第2の接着層62と、第2の蒸着膜42と、第2の表面樹脂層22と、ポリオレフィン層10と、第1の表面樹脂層20と、第1の蒸着膜40と、第1の接着層60と、ヒートシール層80とをこの順に備える。積層体2は、図示せぬ印刷層をさらに備えてもよく、例えば、ポリオレフィン延伸基材70におけるバリア性基材1側の面上に、図示せぬ印刷層をさらに備えてもよい。このような構成を有する積層体は、例えば、スタンディングパウチを形成するための包装材料として好適である。
図6に示す積層体2は、第2のヒートシール層82と、第2の接着層62と、バリア性基材1と、第1の接着層60と、第1のヒートシール層80とをこの順に備え、具体的には、第2のヒートシール層82と、第2の接着層62と、第2の蒸着膜42と、第2の表面樹脂層22と、ポリオレフィン層10と、第1の表面樹脂層20と、第1の蒸着膜40と、第1の接着層60と、第1のヒートシール層80とをこの順に備える。積層体2は、図示せぬ印刷層をさらに備えてもよく、例えば、第2のヒートシール層80の面上に、図示せぬ印刷層をさらに備えてもよい。このような構成を有する積層体は、例えば、チューブ容器本体の胴部を形成するための包装材料として好適である。
図4~
図6において、バリア性基材1は、第1の蒸着膜40上に図示せぬバリアコート層をさらに備えてもよい。
図4~
図6において、バリア性基材1は、第2の蒸着膜42上に図示せぬバリアコート層をさらに備えてもよい。
図4~
図6において、バリア性基材1の向きは反対でもよい。
図4~
図6において、積層体2は、バリア性基材1にかえて、延伸基材を備えてもよく、延伸基材の一方の表面にのみ蒸着膜を備えるバリア性基材を備えてもよい。
【0154】
[包装容器]
本開示の積層体は、包装材料用途に好適に使用できる。包装材料は、包装容器を作製するために使用される。本開示の積層体を少なくとも用いることにより、ガスバリア性に優れる包装容器を製造できる。
【0155】
包装容器としては、例えば、包装袋、チューブ容器および蓋付き容器が挙げられる。
【0156】
包装袋としては、例えば、スタンディングパウチ型、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型およびガゼット型などの種々の形態の包装袋が挙げられる。包装袋は、例えば、小袋でもよく、チャック袋でもよい。包装袋は、ボトルなどの容器へ詰め替えられる、液体および粉体などの内容物を収容する詰替えパウチ、特にスタンディングパウチでもよい。包装袋は、例えば、軟包装袋でもよい。
【0157】
本開示の包装袋は、本開示の積層体を備える。
本開示の包装袋は、例えば、
1つ以上の本開示の積層体と、
上記積層体のヒートシール層同士が接合されているシール部と、
内容物を収容する収容部と、
を有する。
シール部は、収容部を画成する内縁を含む。
【0158】
シール部の形成方法としては、例えば、加熱などによって積層体のヒートシール層を溶融させ、ヒートシール層同士を融着させるヒートシールが挙げられ、具体的には、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シールおよび超音波シールが挙げられる。例えば、包装袋中に内容物を収容した後、包装袋の開口部をヒートシールすることにより、包装袋を密封できる。
【0159】
包装袋は、易開封部を備えてもよい。易開封部としては、例えば、包装袋の引き裂きの起点となるノッチ部や、包装袋を引き裂く際の経路として、レーザー加工やカッターなどにより形成されたハーフカット線が挙げられる。
【0160】
一実施形態において、蓋付き容器における蓋材として、本開示の積層体が用いられる。蓋付き容器は、収容部を有する容器本体と、収容部を封止するように容器本体に接合(ヒートシール)された蓋材とを備える。ここで、蓋材、すなわち上記積層体のヒートシール層と、容器本体とが、ヒートシールされている。容器本体の形状としては、例えば、カップ型および有底円筒形状が挙げられる。容器本体は、例えば、ポリスチレン製、ポリプロピレン製、ポリエチレン製または紙製である。
【0161】
包装容器中に収容される内容物としては、例えば、液体、固体、粉体およびゲル体が挙げられる。内容物は、飲食品でもよく、化学品、化粧品、医薬品、金属部品および電子部品等の非飲食品でもよい。内容物としては、例えば、シャンプー、リンス、コンディショナー、ハンドソープ、ボディソープ、芳香剤、消臭剤、脱臭剤、防虫剤、柔軟剤、洗剤;ソース、醤油、ドレッシング、食用油、マヨネーズ、ケチャップ、シロップ、料理用酒類、他の液体または粘稠体の調味料;果汁類;香辛料;液体飲料、ゼリー状飲料、液体スープ、粉末スープ、インスタント食品、他の飲食品;クリーム;歯磨き粉;金属部品および電子部品が挙げられる。例えばチューブ容器の内容物としては、歯磨き粉が好ましい。
【0162】
一実施形態において、本開示の積層体を、延伸基材またはバリア性基材が外側、ヒートシール層が内側に位置するように二つ折にして重ね合わせて、その端部等をヒートシールすることにより、包装袋を作製できる。他の実施形態において、複数の本開示の積層体をヒートシール層同士が対向するように重ね合わせて、その端部等をヒートシールすることにより、包装袋を作製できる。包装袋の全部が上記積層体で構成されてもよく、包装袋の一部が上記積層体で構成されてもよい。
【0163】
スタンディングパウチは、一実施形態において、側面シートから構成される胴部と、底面シートから構成される底部とを備える。底面シートが側面シートの形状を保持することにより、パウチに自立性が付与され、スタンディング形式のパウチとすることができる。側面シートと底面シートとによって囲まれる領域内に、内容物を収容するための収容部が形成される。スタンディングパウチにおいて、側面シートのみが本開示の積層体でもよく、底面シートのみが本開示の積層体でもよく、側面シートおよび底面シートの両方が本開示の積層体でもよい。
【0164】
一実施形態において、側面シートは、本開示の積層体が備えるヒートシール層が最内層となるように製袋することにより形成できる。一実施形態において、側面シートは、本開示の積層体を2枚準備し、これらをヒートシール層同士が向かい合うようにして重ね合わせ、両側の側縁部をヒートシールして製袋することにより形成できる。
【0165】
他の実施形態において、側面シートは、本開示の積層体を2枚準備し、これらをヒートシール層同士が向かい合うようにして重ね合わせ、重ね合わせた積層体の両側の側縁部における積層体間に、ヒートシール層が外側となるようにV字状に折った積層体2枚をそれぞれ挿入し、ヒートシールすることにより形成できる。このような作製方法によれば、側部ガセット付きの胴部を有するスタンディングパウチが得られる。
【0166】
一実施形態において、底面シートは、製袋された側面シート下部の間に本開示の積層体を挿入し、ヒートシールすることにより形成できる。より具体的には、底面シートは、製袋された側面シート下部の間に、ヒートシール層が外側となるようにV字状に折った積層体を挿入し、ヒートシールすることにより形成できる。
【0167】
一実施形態において、本開示の積層体を2枚準備し、これらをヒートシール層同士が向かい合うようにして重ね合わせ、次いで、もう1枚の本開示の積層体をヒートシール層が外側となるようにV字状に折り、これを向かい合わせとなった積層体の下部に挟み込み、ヒートシールすることにより底部を形成する。次いで、底部に隣接する2辺をヒートシールすることにより、胴部を形成する。このようにして、一実施形態のスタンディングパウチを形成できる。
【0168】
[チューブ容器本体]
本開示のチューブ容器本体は、本開示の積層体を備える。
以下、本開示のチューブ容器本体について図面を参照しながら説明する。
図7は、チューブ容器120の構成を簡略的に示す図であり、
図8は、
図7のA-A断面図である。
図7に示すように、チューブ容器本体121は、頭部122と胴部123とを備え、該胴部123が本開示の積層体により構成されている。
【0169】
<頭部>
頭部122は、胴部123の一端に連接している肩部124と、肩部124に連接している抽出口部125とを備える。一実施形態において、注出口部125は、キャップ126を螺合するための螺条127を備える。
【0170】
一実施形態において、頭部は、熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物により形成されている。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエステル、セルロース樹脂ならびにビニル樹脂が挙げられる。上記樹脂組成物は、上記添加剤を含有してもよい。
【0171】
頭部は、従来公知の方法により製造できる。例えば、圧縮成形法(コンプレッション成形法)や射出成形法(インジェクション成形法)により頭部を製造すると共に、胴部と接合させることができる。
【0172】
<胴部>
本開示のチューブ容器本体121において、胴部123は、頭部122の肩部124に連接されている。胴部123は、例えば、本開示の積層体の一方の端部の第1のヒートシール層側表面と、他方の端部の第2のヒートシール層側表面とが接するように重ね合わせて筒状に丸め、重ね合わされた部分をヒートシールすることにより形成された融着部128を備える。胴部123は、例えば、筒状に丸めた積層体の開口部をヒートシールすることにより形成された底シール部129を備える。
【0173】
ヒートシールの方法としては、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シールおよび火炎シールなどの従来公知の方法が挙げられる。
【0174】
例えば、本開示の積層体の一方の端部の第1のヒートシール層側表面と、他方の端部の第2のヒートシール層側表面とが接するように重ね合わせて筒状に丸め、重ね合わされた部分をヒートシールすることにより、筒状の胴部を製造してもよい。ヒートシール性という観点から、重ね合わせた一方の端部が第1のヒートシール層であり、他方の端部が第2のヒートシール層であることが好ましい。この場合、第1のヒートシール層と第2のヒートシール層とが溶融して接合され、融着部が形成される。
【0175】
したがって、第2のヒートシール層において、チューブ容器本体の胴部を形成する際にヒートシールが予定される領域には、印刷層および表面保護層が形成されていないことが好ましい。これにより、本開示の積層体を用いて筒状の胴部を形成する際に、上記領域において良好にヒートシールできる。
【0176】
上記実施形態では、融着部は重ね合わせにより形成されるが、積層体の両端部の同一表面を突き合わせて、第1のヒートシール層同士をヒートシールして接合してもよい。この場合は、積層体の両端部において、第2のヒートシール層上に、印刷層および表面保護層が形成されていてもよい。またこの場合は、胴部の外面側に、当該接合部を覆うようにして接合用テープが貼付されていてもよい。積層体において接合用テープを貼り合わせる箇所には、印刷層および表面保護層を設けないことが好ましい。接合用テープは、上記胴部の内面および外面の両方に設けられていてもよい。
【0177】
[チューブ容器]
以下、本開示のチューブ容器について図面を参照しながら説明する。
図7に示すように、本開示のチューブ容器120は、チューブ容器本体121と、頭部122に装着されるキャップ26とを備える。
【0178】
<チューブ容器本体>
チューブ容器本体については上述したため、ここでは記載を省略する。
【0179】
<キャップ>
キャップは、頭部の抽出口部に着脱可能に装着されており、抽出口部を閉鎖する役割を担う。一実施形態において、キャップは、熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物により形成されている。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエステル、セルロース樹脂ならびにビニル樹脂が挙げられる。上記樹脂組成物は、上記添加剤を含有してもよい。
【0180】
キャップは、
図7に示すように、抽出口部125が有する螺条127に螺合するように、キャップ内面に凹溝を有するスクリュータイプでもよく、また、抽出口部125に打栓することにより嵌合される打栓タイプでもよい。
【0181】
[本開示の態様]
本開示は、例えば以下の[1]~[21]に関する。
[1]ポリオレフィンと接着性樹脂とを含有する第1の表面樹脂層と、ポリオレフィンを主成分として含有するポリオレフィン層と、ポリオレフィンと接着性樹脂とを含有する第2の表面樹脂層と、をこの順に少なくとも備える、延伸基材。
[2]前記第1の表面樹脂層および前記第2の表面樹脂層において、それぞれ独立して、前記ポリオレフィンの含有割合が60質量%以上95質量%以下であり、前記接着性樹脂の含有割合が5質量%以上40質量%以下である、前記[1]に記載の延伸基材。
[3]前記第1の表面樹脂層における前記ポリオレフィンがポリプロピレンを含み、前記第1の表面樹脂層における前記接着性樹脂が酸変性ポリプロピレンを含み、前記ポリオレフィン層がポリプロピレンを主成分として含み、前記第2の表面樹脂層における前記ポリオレフィンがポリプロピレンを含み、前記第2の表面樹脂層における前記接着性樹脂が酸変性ポリプロピレンを含むか、または、前記第1の表面樹脂層における前記ポリオレフィンがポリエチレンを含み、前記第1の表面樹脂層における前記接着性樹脂が酸変性ポリエチレンを含み、前記ポリオレフィン層がポリエチレンを主成分として含み、前記第2の表面樹脂層における前記ポリオレフィンがポリエチレンを含み、前記第2の表面樹脂層における前記接着性樹脂が酸変性ポリエチレンを含む、前記[1]または[2]に記載の延伸基材。
[4]前記第1の表面樹脂層および前記第2の表面樹脂層における前記ポリプロピレンが、それぞれ独立して、ランダムポリプロピレンを含み、前記第1の表面樹脂層および前記第2の表面樹脂層における前記接着性樹脂が、それぞれ独立して、酸変性ランダムポリプロピレンを含み、前記ポリオレフィン層における前記ポリプロピレンが、ホモポリプロピレンを含む、前記[3]に記載の延伸基材。
[5]前記延伸基材が前記ポリオレフィン層を2層以上備える、前記[1]~[4]のいずれか一項に記載の延伸基材。
[6]前記第1の表面樹脂層の厚さが、0.3μm以上15μm以下であり、前記ポリオレフィン層の厚さが、6μm以上100μm以下であり、前記第2の表面樹脂層の厚さが、0.3μm以上15μm以下である、前記[1]~[5]のいずれか一項に記載の延伸基材。
[7]前記延伸基材におけるポリオレフィンの含有割合が、80質量%以上である、前記[1]~[6]のいずれか一項に記載の延伸基材。
[8]前記延伸基材が、共押出樹脂フィルムの延伸フィルムである、前記[1]~[7]のいずれか一項に記載の延伸基材。
[9]前記延伸基材が、2軸延伸基材である、前記[1]~[8]のいずれか一項に記載の延伸基材。
[10]前記[1]~[9]のいずれか一項に記載の延伸基材と、前記延伸基材における前記第1の表面樹脂層および前記第2の表面樹脂層から選択される少なくとも1層の表面に設けられている蒸着膜と、を備える、バリア性基材。
[11]第1の蒸着膜と、前記[1]~[9]のいずれか一項に記載の延伸基材と、第2の蒸着膜と、をこの順に少なくとも備えるバリア性基材であって、前記第1の蒸着膜は、前記第1の表面樹脂層の表面に設けられており、前記第2の蒸着膜は、前記第2の表面樹脂層の表面に設けられている、バリア性基材。
[12]前記第1の蒸着膜および前記第2の蒸着膜が、それぞれ独立して、金属蒸着膜であるか、前記第1の蒸着膜が無機酸化物蒸着膜であり、前記第2の蒸着膜が金属蒸着膜であるか、前記第1の蒸着膜が金属蒸着膜であり、前記第2の蒸着膜が無機酸化物蒸着膜であるか、または、前記第1の蒸着膜および前記第2の蒸着膜が、それぞれ独立して、無機酸化物蒸着膜である、前記[11]に記載のバリア性基材。
[13]前記無機酸化物蒸着膜がアルミナ蒸着膜、シリカ蒸着膜または酸化炭化珪素蒸着膜であり、前記金属蒸着膜がアルミニウム蒸着膜である、前記[12]に記載のバリア性基材。
[14]前記[10]~[13]のいずれか一項に記載のバリア性基材と、ヒートシール層と、を少なくとも備える、積層体。
[15]前記ヒートシール層が、ポリオレフィンを主成分として含有し、前記積層体全体におけるポリオレフィンの含有割合が、80質量%以上である、前記[14]に記載の積層体。
[16]第1のヒートシール層と、前記バリア性基材と、第2のヒートシール層と、をこの順に少なくとも備える、前記[14]または[15]に記載の積層体。
[17]チューブ容器本体の胴部を形成するための積層体であって、前記第2のヒートシール層が前記胴部の外面側のシーラント層であり、前記第1のヒートシール層が前記胴部の内面側のシーラント層である、前記[16]に記載の積層体。
[18]前記[14]~[17]のいずれか一項に記載の積層体を備える包装容器。
[19]包装袋である、前記[18]に記載の包装容器。
[20]頭部と胴部とを備えるチューブ容器本体であって、前記頭部は、前記胴部の一端に連接している肩部と、前記肩部に連接している抽出口部とを備え、前記胴部は、前記[17]に記載の積層体により構成されている、チューブ容器本体。
[21]前記[20]に記載のチューブ容器本体と、キャップと、を備えるチューブ容器。
【実施例0182】
以下、実施例により本開示の延伸基材およびバリア性基材をより具体的に説明するが、本開示の延伸基材およびバリア性基材は以下の実施例に限定されない。以下の記載において「質量部」は単に「部」と記載する。
【0183】
[延伸基材の材料]
延伸基材の作製において、以下の材料を用いた。
・ホモポリプロピレン(h-PP)
The Polyolefin Company(Singapore)製、COSMOPLENE FS3031、
密度:0.900g/cm3、融点:168℃、MFR:3.4g/10分
アイソタクチックインデックス:98%
・ランダムポリプロピレン(r-PP)
The Polyolefin Company(Singapore)製、COSMOPLENE FS5612、
密度:0.900g/cm3、融点:134℃、MFR:5.5g/10分
・直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)
ダウケミカル製、INNATE TF80、メタロセンLLDPE、
密度:0.926g/cm3、MFR:1.7g/10分
・酸変性ランダムポリプロピレン(MAH-r-PP)
アルケマ社製、OREVAC 18722、
無水マレイン酸グラフト変性ランダムポリプロピレン、
密度:0.900g/cm3、融点:143℃、MFR:7.0g/10分
・酸変性直鎖状低密度ポリエチレン(MAH-LLDPE)
アルケマ社製、OREVAC 18302N、
無水マレイン酸グラフト変性直鎖状低密度ポリエチレン、
密度:0.912g/cm3、融点:123℃、MFR:1.5g/10分
【0184】
[実施例1]
90部のランダムポリプロピレン(FS5612)と10部の酸変性ランダムポリプロピレン(OREVAC 18722)とを混合して、ブレンドポリプロピレン(A)を調製した。
【0185】
ブレンドポリプロピレン(A)と、
ホモポリプロピレン(FS3031)と、
ホモポリプロピレン(FS3031)と、
ホモポリプロピレン(FS3031)と、
ブレンドポリプロピレン(A)と、
をTダイキャスト法により5層共押出製膜して、5層フィルムを得た。該フィルムに対して、機械方向(MD方向)に5倍延伸、続いて幅方向(TD方向)に8.5倍延伸の逐次2軸延伸処理を行い、厚さ18μmの延伸基材(2軸延伸フィルム)を作製した。
【0186】
このようにして得られた延伸基材は、
厚さ1μmの第2の表面樹脂層(ブレンドポリプロピレン(A)層)と、
厚さ1.5μmの第3のポリプロピレン層と、
厚さ13μmの第2のポリプロピレン層と、
厚さ1.5μmの第1のポリプロピレン層と、
厚さ1μmの第1の表面樹脂層(ブレンドポリプロピレン(A)層)と、
をこの順に備える。
【0187】
以下のようにして、3種のバリア性基材を作製した。
延伸基材の第1の表面樹脂層および第2の表面樹脂層のそれぞれの面上に、PVD法により、厚さ30nmのアルミニウム(AL)蒸着膜を形成した。このようにして、バリア性基材を得た。
延伸基材の第1の表面樹脂層および第2の表面樹脂層のそれぞれの面上に、PVD法により、厚さ30nmのアルミナ蒸着膜を形成した。水47.69gと、イソプロピルアルコール22.8gと、0.5N塩酸1.13gとを混合して、溶液を得た。この溶液に、金属アルコキシドとしてテトラエトキシシラン27.04gと、シランカップリング剤として3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン1.35gとを、10℃となるように冷却しながら混合して、溶液Aを得た。水溶性高分子としてケン化度99%以上、重合度2,400のポリビニルアルコール4.14gと、水91.07gと、イソプロピルアルコール4.79gとを混合して、溶液Bを得た。溶液Aと溶液Bとを、質量基準で溶液A/溶液Bが65.5/34.5となるように混合して、バリアコート剤を得た。アルミナ蒸着膜の表面に、上記バリアコート剤をスピンコート法によりコーティングし、オーブンにて100℃で8秒間の加熱処理を施して、厚さ0.3μmのバリアコート層を形成した。このようにして、バリア性基材を得た。
延伸基材の第1の表面樹脂層および第2の表面樹脂層のそれぞれの面上に、アルミナ蒸着膜にかえて、厚さ30nmのシリカ蒸着膜を形成し、さらに該シリカ蒸着膜上に上記バリアコート層を形成した。このようにして、バリア性基材を得た。
【0188】
[実施例2]
90部のLLDPE(INNATE TF80)と10部の酸変性LLDPE(OREVAC 18302N)とを混合して、ブレンドポリエチレン(A)を調製した。
【0189】
ブレンドポリエチレン(A)と、
LLDPE(INNATE TF80)と、
LLDPE(INNATE TF80)と、
LLDPE(INNATE TF80)と、
ブレンドポリエチレン(A)と、
をTダイキャスト法により5層共押出製膜して、5層フィルムを得た。該フィルムに対して、機械方向(MD方向)に5倍延伸、続いて幅方向(TD方向)に8.5倍延伸の逐次2軸延伸処理を行い、厚さ18μmの延伸基材(2軸延伸フィルム)を作製した。
【0190】
このようにして得られた延伸基材は、
厚さ1μmの第2の表面樹脂層(ブレンドポリエチレン(A)層)と、
厚さ1.5μmの第3のポリエチレン層と、
厚さ13μmの第2のポリエチレン層と、
厚さ1.5μmの第1のポリエチレン層と、
厚さ1μmの第1の表面樹脂層(ブレンドポリエチレン(A)層)と、
をこの順に備える。
上記延伸基材を用いて、実施例1と同様にして、3種のバリア性基材を作製した。
【0191】
[比較例1]
ホモポリプロピレン(FS3031)をTダイキャスト法により単層押出製膜して、単層フィルムを得た。該フィルムに対して、機械方向(MD方向)に5倍延伸、続いて幅方向(TD方向)に8.5倍延伸の逐次2軸延伸処理を行い、厚さ18μmの延伸基材(2軸延伸フィルム)を作製した。上記延伸基材を用いて、実施例1と同様にして、3種のバリア性基材を作製した。
【0192】
[比較例2]
LLDPE(INNATE TF80)をTダイキャスト法により単層押出製膜して、単層フィルムを得た。該フィルムに対して、機械方向(MD方向)に5倍延伸、続いて幅方向(TD方向)に8.5倍延伸の逐次2軸延伸処理を行い、厚さ18μmの延伸基材(2軸延伸フィルム)を作製した。上記延伸基材を用いて、実施例1と同様にして、3種のバリア性基材を作製した。
【0193】
[ガスバリア性評価]
実施例および比較例で得られた各延伸基材および各バリア性基材(以下「試験片」ともいう)について、酸素透過度(cc/(m2・day・atm))および水蒸気透過度(g/(m2・day))を以下の方法により測定した。評価結果を表1に記載する。
【0194】
<酸素透過度>
酸素透過度測定装置(MOCON社製、OX-TRAN2/20)を用いて、JIS K7126-2:2006に準拠して、温度23℃、湿度90%RH環境下における試験片の酸素透過度を測定した。
A:酸素透過度が1.0未満である。
B:酸素透過度が1.0以上5.0未満である。
C:酸素透過度が5.0以上10未満である。
D:酸素透過度が10以上100未満である。
E:酸素透過度が100以上である。
【0195】
<水蒸気透過度>
水蒸気透過度測定装置(MOCON社製、PERMATRAN-w 3/33)を用いて、JIS K7129-2:2019に準拠して、温度40℃、湿度90%RH環境下における試験片の水蒸気透過度を測定した。
A:水蒸気透過度が1.0未満である。
B:水蒸気透過度が1.0以上5.0未満である。
C:水蒸気透過度が5.0以上10未満である。
D:水蒸気透過度が10以上100未満である。
E:水蒸気透過度が100以上である。
【0196】
[T形剥離試験]
実施例および比較例で得られた各バリア性基材の蒸着膜面またはバリアコート層面に対して、片面がコロナ処理された厚さ20μmの一般OPPフィルムを、塗布量3g/m2のウレタン系接着剤(ロックペイント社製、RU77T/H7)により貼り合わせ、幅15mmの試験片を作製した。JIS K6854-3:1999(接着剤-はく離接着強さ試験方法-第3部:T形はく離)に準拠して、引張試験機((株)オリエンテック製、テンシロン万能材料試験機)を用いて、試験速度:50mm/min、温度:23℃の条件でT形剥離試験を行い、各層に対する蒸着膜の剥離強度(N/15mm)を測定した。結果を表1に記載する。
【0197】
【0198】
[実施例1A~2A]
第1のポリオレフィン層の厚さを2μmに、第2のポリオレフィン層の厚さを19μmに、第3のポリオレフィン層の厚さを2μmにそれぞれ変更し、延伸基材の厚さを25μmに変更したこと以外は実施例1~2と同様にして、実施例1A~2Aの延伸基材およびバリア性基材を作製した。実施例1A~2Aにおける各評価の結果は、対応する実施例番号の実施例(実施例1~2)の結果と同程度であった。
【0199】
[比較例1A~2A]
延伸基材の厚さを25μmに変更したこと以外は比較例1~2と同様にして、比較例1A~2Aの延伸基材およびバリア性基材を作製した。比較例1A~2Aにおける各評価の結果は、対応する比較例番号の比較例(比較例1~2)の結果と同程度であった。