(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177014
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】仮想編成列車のための階層協調制御システム及び方法
(51)【国際特許分類】
B61L 27/60 20220101AFI20241212BHJP
B61L 27/20 20220101ALI20241212BHJP
B60L 15/40 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B61L27/60
B61L27/20
B60L15/40 B
B60L15/40 F
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023148128
(22)【出願日】2023-09-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-12-11
(31)【優先権主張番号】2023106152971
(32)【優先日】2023-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】521091158
【氏名又は名称】北京交通大学
(74)【代理人】
【識別番号】100194478
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 文彦
(74)【代理人】
【識別番号】100198719
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 良裕
(72)【発明者】
【氏名】劉 宏傑
(72)【発明者】
【氏名】羅 嘯林
(72)【発明者】
【氏名】唐 濤
(72)【発明者】
【氏名】郎 穎輝
(72)【発明者】
【氏名】張 艶兵
(72)【発明者】
【氏名】韓 笑
(72)【発明者】
【氏名】肖 驍
(72)【発明者】
【氏名】楊 旭文
(72)【発明者】
【氏名】柴 銘
(72)【発明者】
【氏名】宿 帥
(72)【発明者】
【氏名】呂 継東
【テーマコード(参考)】
5H125
5H161
【Fターム(参考)】
5H125AA05
5H125CA05
5H125CA18
5H125CB09
5H125EE52
5H125EE53
5H125EE55
5H161AA01
5H161JJ01
5H161JJ22
5H161JJ23
5H161JJ24
5H161JJ27
5H161JJ30
5H161JJ36
(57)【要約】 (修正有)
【課題】仮想編成列車全体の同期運行の目標を考慮し、全ての列車ユニットの制御挙動が統一的に計画及び管理され、仮想編成列車の追跡効率が大幅に向上する階層協調制御システム及び方法を提供する。
【解決手段】階層協調制御システムの電子地図処理モジュールは、列車運行計画情報に基づいて列車運行全行程の鉄道路線情報を照会し、仮想編成列車の鉄道路線運行データを形成する。推奨運転曲線計画モジュールは、仮想編成列車の鉄道路線運行データに基づいて、仮想編成列車を全体と見なし、仮想編成列車における全ての列車ユニットの推奨運転曲線を協調的に計画する。リアルタイム追跡制御モジュールは、仮想編成列車の鉄道路線運行データに基づいて、列車ユニットがそれぞれの推奨運転曲線に従って運行するように制御し、仮想編成列車の同期運行の目標を達成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮想編成列車のための階層協調制御システムであって、情報インタラクションモジュール、電子地図処理モジュール、推奨運転曲線計画モジュール及び複数のリアルタイム追跡制御モジュールを含み、
1つの仮想編成列車ユニットは1つのリアルタイム追跡制御モジュールに対応し、
情報インタラクションモジュールは電子地図処理モジュールに接続され、前記情報インタラクションモジュールは、自動列車監視システムから列車運行計画情報を取得し、かつ列車運行計画情報を電子地図処理モジュールに出力するために用いられ、
電子地図処理モジュールは、それぞれ推奨運転曲線計画モジュール及び複数のリアルタイム追跡制御モジュールに接続され、前記電子地図処理モジュールは、鉄道路線情報を記憶し、かつ列車運行計画情報に基づいて列車運行全行程の鉄道路線情報を照会し、仮想編成列車の鉄道路線運行データを形成し、同時に推奨運転曲線計画モジュール及び複数のリアルタイム追跡制御モジュールに出力するために用いられ、
推奨運転曲線計画モジュールは複数のリアルタイム追跡制御モジュールに接続され、前記推奨運転曲線計画モジュールは、仮想編成列車の鉄道路線運行データに基づいて、仮想編成列車を全体と見なし、仮想編成列車における全ての列車ユニットの推奨運転曲線を協調的に計画し、かつ推奨運転曲線を各列車ユニットのリアルタイム追跡制御モジュールに送信するために用いられ、
前記リアルタイム追跡制御モジュールは、仮想編成列車の鉄道路線運行データに基づいて、列車ユニットがそれぞれの推奨運転曲線に従って運行するように制御し、仮想編成列車の同期運転という所望の目標を達成するために用いられることを特徴とする仮想編成列車のための階層協調制御システム。
【請求項2】
前記列車運行計画情報は、列車運行目的地、所望の運行時間及び区間臨時制限速度を含み、
前記鉄道路線情報は、鉄道路線論理区間番号、停車点、分岐器、トランスポンダ、勾配及び鉄道静的制限速度を含むことを特徴とする請求項1に記載の仮想編成列車のための階層協調制御システム。
【請求項3】
仮想編成列車のための階層協調制御方法であって、
仮想編成列車の駅間の協調運行最適化数学モデルを確立することと、
列車駅間運行計画情報に基づいて、仮想編成列車の駅間の鉄道路線運行データを決定することと、
仮想編成列車の駅間の鉄道路線運行データに基づいて、前記仮想編成列車の駅間の協調運行最適化数学モデルを解き、仮想編成列車における各列車ユニットの駅間の推奨運転曲線を取得することと、
各列車ユニットのリアルタイム状態及び各列車ユニットの前後の列車ユニットのリアルタイム状態に応じて、仮想編成列車の駅間の鉄道路線運行データに基づいて、それぞれの列車ユニットの駅間の推奨運転曲線をリアルタイムで追跡し、最終的に仮想編成列車の同期運行という所望の目標を達成することと、を含むことを特徴とする仮想編成列車のための階層協調制御方法。
【請求項4】
前記仮想編成列車の駅間の協調運行最適化数学モデルは、
【数1】
であり、
ここで、Q
1、Q
2、Q
3、Q
4は、それぞれ定時停車、定時運行、同期発車及び同期停車指標の最適化重み係数であり、s
e
l及びs
e
fは、先行列車及び後続列車の計画模擬停車スポットであり、s
g
l及びs
g
fは、先行列車及び後続列車の実際の目標停車スポットであり、t
e
l及びt
e
fは、先行列車及び後続列車の計画模擬停車時刻であり、t
0
l及びt
0
fは、先行列車及び後続列車の初期発車時刻であり、T
gは、駅間の規定された運行時間であり、t
e
f - t
0
lは、計画模擬の区間運行時間を示し、i = 1, 2は、それぞれ先行列車及び後続列車であり、nは、仮想編成列車の駅間の総運行時刻を表し、u
i(k)、u
i(k+1)は、列車ユニットが時刻k、時刻k+1で加速度を制御することを示し、U
iは、列車ユニットが駅間を運行する時の各時刻の制御加速度集合を示し、s
1(k)及びs
2(k)は、それぞれ時刻kにおける先行列車及び後続列車の先頭位置を示し、v
i(k)は、時刻kにおける列車ユニットの速度を示し、u
min及びu
maxは、列車ユニットの制御加速度の限界値を示し、j
min及びj
maxは、列車ユニットの衝撃率の限界値を示し、d(k)は、列車の最小追跡間隔を示し、Lは、列車ユニットの長さであり、Vは、鉄道路線制限速度を示し、v
EBI (s
i(k))は、時刻kにおける非常ブレーキ介入速度であることを特徴とする請求項3に記載の仮想編成列車のための階層協調制御方法。
【請求項5】
列車駅間運行計画情報に基づいて、仮想編成列車の駅間の鉄道路線運行データを決定することは、具体的には、
鉄道路線の電子地図情報を取得することと、
仮想編成列の駅間の鉄道路線運行データとして、前記電気地図情報から運行計画駅間に含まれる全ての論理区間、及び各論理区間の鉄道路線データを照会することと、を含み、
前記電子地図情報は、鉄道路線を分割して得られた複数の論理区間、及び各論理区間の鉄道路線データを含み、前記鉄道路線データは、制限速度起点、制限速度終点、勾配起点、勾配終点、曲線半径起点及び曲線半径終点を含むことを特徴とする請求項3に記載の仮想編成列車のための階層協調制御方法。
【請求項6】
仮想編成列車の駅間の鉄道路線運行データに基づいて、前記仮想編成列車の駅間の協調運行最適化数学モデルを解き、仮想編成列車における各列車ユニットの駅間の推奨運転曲線を取得することは、具体的には、
仮想編成列車の駅間の鉄道路線運行データに基づいて、逐次二次計画法、アクティブセット法、ヒューリスティックアルゴリズム又は強化学習アルゴリズムを用いて、前記仮想編成列車の駅間の協調運行最適化数学モデルを解き、仮想編成列車の運行計画駅間の全行程の制御加速シーケンスを取得することと、
前記制御加速度シーケンスに基づいて、列車動力学方程式を利用して列車ユニット運行計画の駅間の全行程の位置、速度及び加速度を取得することにより、仮想編成列車における各列車ユニットの駅間の推奨運転曲線を決定することと、を含み、前記列車動力学方程式は、
【数2】
であり、
ここで、a
i(k)、a
i(k+1)は、それぞれ時刻k、時刻k+1における合成加速度を示し、v
i(k)、v
i(k+1)は、それぞれ時刻k、時刻k+1における速度を示し、s
i(k)、s
i(k+1)は、それぞれ時刻k、時刻k+1における位置を示し、τは、時間計算ステップを示し、g
i(s
i(k),v
i(k))は、運行抵抗と列車ユニットの現在位置及び速度の相関関数を示すことを特徴とする請求項4に記載の仮想編成列車のための階層協調制御方法。
【請求項7】
各列車ユニットのリアルタイム状態及び各列車ユニットの前後の列車ユニットのリアルタイム状態に応じて、仮想編成列車の駅間の鉄道路線運行データに基づいて、それぞれの列車ユニットの駅間の推奨運転曲線をリアルタイムで追跡することは、具体的には、
仮想編成列車の駅間の鉄道路線運行データに基づいて、全時空の安全保護方法を用いて列車ユニットのいずれかの時刻の非常ブレーキ介入速度を決定することと、
各列車ユニットのリアルタイム状態及び各列車ユニットの前後の列車ユニットのリアルタイム状態に応じて、フィードフォワードPID制御アルゴリズムを利用して、それぞれの列車ユニットの駅間の推奨運転曲線をリアルタイムで追跡し、かつ列車ユニットがリアルタイムで追跡する速度を非常ブレーキ介入速度以下に制御することと、を含むことを特徴とする請求項6に記載の仮想編成列車のための階層協調制御方法。
【請求項8】
前記フィードフォワードPID制御アルゴリズムの計算式は、
【数3】
であり、
式中、
は、実際の運行の時刻k
nにおける制御加速度指令であり、K
P、K
I、K
Dは、それぞれ比例、積分、微分リンクパラメータであり、e(k
n)は、実際の列車速度v(k
n)と推奨運転曲線速度v
r(k
n)の差、e(k
n)=v(k
n)- v
r(k
n)であり、∫e(k
n) は、実際の列車の位置s(k
n)と推奨運転曲線位置s
r(k
n)の差、∫e(k
n)=s(k
n)- s
r(k
n)であり、
は、実際の列車の加速度a(k
n)と推奨運転曲線加速度a
r(k
n)の差、
であり、u
adjは、間隔調整部分の制御指令調整値であることを特徴とする請求項7に記載の仮想編成列車のための階層協調制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道交通信号制御の技術分野に関し、特に仮想編成列車のための階層協調制御システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
経済発展及び都市化の建設が加速し続けるにつれて、都市交通渋滞の問題はますます深刻になっている。同時に、都市面積の拡大により、中心都市領域と郊外領域の交通接続の問題はますます深刻になっている。交通圧力を緩和し、都市住民の移動ニーズを満たす重要な手段として、都市鉄道交通(以下「都市鉄道」と略称する)の建設は、近年目覚ましい成果をあげている。都市鉄道交通のネットワーク化規模の急速な発展、時間と空間における乗客の流れの不均衡な分布、不規則な動的変化の特徴がますます顕著になっており、車両及び路線のリソースの更なる最適化利用及び運輸力と運輸量とのマッチング程度に対してより高い要件が求められている。
【0003】
以上のニーズに対して、列車仮想編成(Virtual Coupling、VC)技術は、広く認められた解決手段である。仮想編成技術は、物理的に接続されていない列車ユニットの運行間隔を大幅に短縮でき、物理的に接続された列車のように運輸作業サービスを提供することを可能にする。仮想編成技術は、車両配置及び編成モードをオンラインで動的かつ柔軟に調整できることにより、車両及び路線のリソースの有効利用率を向上させることができ、乗客流動のピーク時の大きな運輸能力のニーズを満たすことができるだけでなく、平坦なピーク時や低ピーク時に車両の空車率を低下させることもできる。したがって、仮想編成技術を開発することにより、列車ユニットが計画に従ってオンライン動的編成を実行し、かつ仮想編成のモードで小さな間隔の安定運行及び同期操作を維持するように安全かつ効率的に制御し、サービス品質を低下させることなく、列車運行のエネルギー消費量を低減させ、運輸コストを節約することができ、都市鉄道交通のグリーンで持続可能な発展に対して重要な意義を有する。
【0004】
現在、仮想編成列車の運行制御システム及び方法に対して仮想編成列車の運行の整合性及び同期性を確実に考慮しておらず、より小さな安全保護間隔で複数の車両の追跡運行の考え方に従っているだけであり、先行列車は自体の計画に従って独立して運行し、後続列車はより小さな安全保護間隔に基づいて先行列車を追跡して運行する。そして、この運行制御システムアーキテクチャは仮想編成列車の同期運行を重点的に考慮しておらず、列車ユニットは依然として、単一の列車が単独で計画及び制御するという既存のシステムアーキテクチャを用いているため、システムレベルから仮想編成列車が同期運行しないことは避けられない。要するに、従来の運行制御システム及び方法は、「仮想編成列車が全体であり、運行目標を達成するには全ての列車ユニットが協調して運行する必要がある」という思想を体現しておらず、このような運行制御システム及び方法には以下の問題がある。
【0005】
1.後続列車が先行列車を純粋に追跡することで、自体の運行効率が低下し、運行指標の達成が困難となる。従来の後続列車の多くは、簡素化された追跡間隔(例えば固定間隔、固定時間間隔等)の方式を用いて先行列車を追跡するため、安全が許容される条件下で最小間隔で追跡できず、仮想編成列車の追跡効率の低下につながる。
【0006】
2.後続列車は先行列車のリアルタイム状態に応じて追跡し、両列車間の通信伝送に対する要求が非常に高い。同時に、仮想編成列車がより微細化されて複雑化された安全間隔計算方法を用いるため、列車ユニットのリアルタイム計算に対する性能要件も高く、様々なランダムな環境干渉により追跡運行に偏差、ひいては危険が発生しやすい。
【0007】
3.仮想編成列車ユニット間のホーム停車時間の差が大きい。先行列車は、仮想編成列車の運行の整合性及び同期性を考慮せず、完全に自体の計画に従って独立して運行する(例えば、鉄道路線制限速度が低速から高速に変化した時、先行列車が低制限速度区間を全部出た後に直接加速し、後続列車がまだ低速区間にあるため、両列車の間隔が大きくなり、両列車の運行方式が協調しないため、ホームに停車する際の時間差も大きくなる)。
【0008】
仮想編成技術は、単に列車間の絶対的なブレーキ距離を突破して列車をより近く追跡できるようにするものではなく、より近い追跡距離に基づいて複数の列車ユニットを統一された仮想列車全体に形成するものである。このような新型の仮想編成列車は、運行時に、本質的に車両と見なされ、仮想編成列車ユニット間の関係は、後続列車が先行車両を追いかけるという簡単な関係ではなく、互いに協力する関係である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、仮想編成列車全体の同期運行の目標を考慮し、全ての列車ユニットの制御挙動を統一的に計画及び管理し、仮想編成列車の追跡効率を大幅に向上させる、仮想編成列車のための階層協調制御システム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は以下の解決手段を提供する。
【0011】
仮想編成列車のための階層協調制御システムであって、情報インタラクションモジュール、電子地図処理モジュール、推奨運転曲線計画モジュール及び複数のリアルタイム追跡制御モジュールを含み、
1つの仮想編成列車ユニットは1つのリアルタイム追跡制御モジュールに対応し、
情報インタラクションモジュールは電子地図処理モジュールに接続され、前記情報インタラクションモジュールは、自動列車監視システムから列車運行計画情報を取得し、かつ列車運行計画情報を電子地図処理モジュールに出力するために用いられ、
電子地図処理モジュールは、それぞれ推奨運転曲線計画モジュール及び複数のリアルタイム追跡制御モジュールに接続され、前記電子地図処理モジュールは、鉄道路線情報を記憶し、かつ列車運行計画情報に基づいて列車運行全行程の鉄道路線情報を照会し、仮想編成列車の鉄道路線運行データを形成し、同時に推奨運転曲線計画モジュール及び複数のリアルタイム追跡制御モジュールに出力するために用いられ、
推奨運転曲線計画モジュールは複数のリアルタイム追跡制御モジュールに接続され、前記推奨運転曲線計画モジュールは、仮想編成列車の鉄道路線運行データに基づいて、仮想編成列車を全体と見なし、仮想編成列車における全ての列車ユニットの推奨運転曲線を協調的に計画し、かつ推奨運転曲線を各列車ユニットのリアルタイム追跡制御モジュールに送信するために用いられ、
前記リアルタイム追跡制御モジュールは、仮想編成列車の鉄道路線運行データに基づいて、列車ユニットがそれぞれの推奨運転曲線に従って運行するように制御し、仮想編成列車の同期運行という所望の目標を達成するために用いられる。
【0012】
任意選択的に、前記列車運行計画情報は、列車運行目的地、所望の運行時間及び区間臨時制限速度を含み、
前記鉄道路線情報は、鉄道路線論理区間番号、停車点、分岐器、トランスポンダ、勾配及び鉄道静的制限速度を含む。
【0013】
仮想編成列車のための階層協調制御方法であって、
仮想編成列車の駅間の協調運行最適化数学モデルを確立することと、
列車駅間運行計画情報に基づいて、仮想編成列車の駅間の鉄道路線運行データを決定することと、
仮想編成列車の駅間の鉄道路線運行データに基づいて、前記仮想編成列車の駅間の協調運行最適化数学モデルを解き、仮想編成列車における各列車ユニットの駅間の推奨運転曲線を取得することと、
各列車ユニットのリアルタイム状態及び各列車ユニットの前後の列車ユニットのリアルタイム状態に応じて、仮想編成列車の駅間の鉄道路線運行データに基づいて、それぞれの列車ユニットの駅間の推奨運転曲線をリアルタイムで追跡し、最終的に仮想編成列車の同期運行という所望の目標を達成することと、を含む。
【0014】
任意選択的に、前記仮想編成列車の駅間の協調運行最適化数学モデルは、
【数1】
であり、
ここで、Q
1、Q
2、Q
3、Q
4は、それぞれ定時停車、定時運行、同期発車及び同期停車指標の最適化重み係数であり、s
e
l及びs
e
fは、先行列車及び後続列車の計画模擬停車スポットであり、s
g
l及びs
g
fは、先行列車及び後続列車の実際の目標停車スポットであり、t
e
l及びt
e
fは、先行列車及び後続列車の計画模擬停車時刻であり、t
0
l及びt
0
fは、先行列車及び後続列車の初期発車時刻であり、T
gは、駅間の規定された運行時間であり、t
e
f - t
0
lは、計画模擬の区間運行時間を示し、i = 1, 2は、それぞれ先行列車及び後続列車であり、nは、仮想編成列車の駅間の総運行時刻を表し、u
i(k)、u
i(k+1)は、列車ユニットが時刻k、時刻k+1で加速度を制御することを示し、U
iは、列車ユニットが駅間を運行する時の各時刻の制御加速度集合を示し、s
1(k)及びs
2(k)は、それぞれ時刻kにおける先行列車及び後続列車の先頭位置を示し、v
i(k)は、時刻kにおける列車ユニットの速度を示し、u
min及びu
maxは、列車ユニットの制御加速度の限界値を示し、j
min及びj
maxは、列車ユニットの衝撃率の限界値を示し、d(k)は、列車の最小追跡間隔を示し、Lは、列車ユニットの長さであり、Vは、鉄道路線制限速度を示し、v
EBI (s
i(k))は、時刻kにおける非常ブレーキ介入速度である。
【0015】
任意選択的に、列車駅間運行計画情報に基づいて、仮想編成列車の駅間の鉄道路線運行データを決定することは、具体的には、
鉄道路線の電子地図情報を取得することと、
仮想編成列車の駅間の鉄道路線運行データとして、前記電気地図情報から運行計画駅間に含まれる全ての論理区間、及び各論理区間の鉄道路線データを照会することと、を含み、
前記電子地図情報は、鉄道路線を分割して得られた複数の論理区間、及び各論理区間の鉄道路線データを含み、前記鉄道路線データは、制限速度起点、制限速度終点、勾配起点、勾配終点、曲線半径起点及び曲線半径終点を含む。
【0016】
任意選択的に、仮想編成列車の駅間の鉄道路線運行データに基づいて、前記仮想編成列車の駅間の協調運行最適化数学モデルを解き、仮想編成列車における各列車ユニットの駅間の推奨運転曲線を取得することは、具体的には、
仮想編成列車の駅間の鉄道路線運行データに基づいて、逐次二次計画法、アクティブセット法、ヒューリスティックアルゴリズム又は強化学習アルゴリズムを用いて、前記仮想編成列車の駅間の協調運行最適化数学モデルを解き、仮想編成列車の運行計画駅間の全行程の制御加速シーケンスを取得することと、
前記制御加速度シーケンスに基づいて、列車動力学方程式を利用して列車ユニット運行計画駅間の全行程の位置、速度及び加速度を取得することにより、仮想編成列車における各列車ユニットの駅間の推奨運転曲線を決定することと、を含み、前記列車動力学方程式は、
【数2】
であり、
ここで、a
i(k)、a
i(k+1)は、それぞれ時刻k、時刻k+1における合成加速度を示し、v
i(k)、v
i(k+1)は、それぞれ時刻k、時刻k+1における速度を示し、s
i(k)、s
i(k+1)は、それぞれ時刻k、時刻k+1における位置を示し、τは、時間計算ステップを示し、g
i(s
i(k),v
i(k))は、運行抵抗と列車ユニットの現在位置及び速度の相関関数を示す。
【0017】
任意選択的に、各列車ユニットのリアルタイム状態及び各列車ユニットの前後の列車ユニットのリアルタイム状態に応じて、仮想編成列車の駅間の鉄道路線運行データに基づいて、それぞれの列車ユニットの駅間の推奨運転曲線をリアルタイムで追跡することは、具体的には、
仮想編成列車の駅間の鉄道路線運行データに基づいて、全時空の安全保護方法を用いて列車ユニットのいずれかの時刻の非常ブレーキ介入速度を決定することと、
各列車ユニットのリアルタイム状態及び各列車ユニットの前後の列車ユニットのリアルタイム状態に応じて、フィードフォワードPID制御アルゴリズムを利用して、それぞれの列車ユニットの駅間の推奨運転曲線をリアルタイムで追跡し、かつ列車ユニットがリアルタイムで追跡する速度を非常ブレーキ介入速度以下に制御することと、を含む。
【0018】
任意選択的に、前記フィードフォワードPID制御アルゴリズムの計算式は、
【数3】
であり、
式中、
は、実際の運行の時刻k
nにおける制御加速度指令であり、K
P、K
I、K
Dは、それぞれ比例、積分、微分リンクパラメータであり、e(k
n)は、実際の列車速度v(k
n)と推奨運転曲線速度v
r(k
n)の差、e(k
n)=v(k
n)- v
r(k
n)であり、∫e(k
n) は、実際の列車の位置s(k
n)と推奨運転曲線位置s
r(k
n)の差、∫e(k
n)=s(k
n)- s
r(k
n)であり、
は、実際の列車の加速度a(k
n)と推奨運転曲線加速度a
r(k
n)の差、
であり、u
adjは、間隔調整部分の制御指令調整値である。
【発明の効果】
【0019】
本発明が提供する具体的な実施例によれば、本発明は以下の技術的効果を開示する。
本発明は、仮想編成列車のための階層協調制御システム及び方法を開示し、電子地図処理モジュールは、列車運行計画情報に基づいて列車運行全行程の鉄道路線情報を照会し、仮想編成列車の鉄道路線運行データを形成し、推奨運転曲線計画モジュールは仮想編成列車の鉄道路線運行データに基づいて、仮想編成列車を全体と見なし、仮想編成列車における全ての列車ユニットの推奨運転曲線を協調的に計画し、リアルタイム追跡制御モジュールは仮想編成列車の鉄道路線運行データに基づいて、列車ユニットがそれぞれの推奨運転曲線に従って運行するように制御し、仮想編成列車の同期運行という所望の目標を達成する。本発明は、仮想編成列車全体の同期運行の目標を考慮し、全ての列車ユニットの制御挙動を統一的に計画及び管理し、仮想編成列車の追跡効率を大幅に向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明の実施例又は従来技術における技術的解決手段をより明確に説明するために、以下、実施例で使用する必要のある図面を簡単に説明し、明らかに、以下の説明における図面は本発明の一部の実施例に過ぎず、当業者にとって、創造的な労働を要することなく、これらの図面に基づいて他の図面を取得することができる。
【0021】
【
図1】本発明の実施例が提供する仮想編成列車のための階層協調制御システムの構造概略図である。
【
図2】本発明の実施例が提供する仮想編成列車のための階層協調制御方法の原理図である。
【
図3】本発明の実施例が提供する仮想編成列車のための階層協調制御方法のフローチャートである。
【
図4】本発明の実施例が提供するフィードフォワードPIDコントローラの構造ブロック図である。
【
図5】本発明の実施例が提供する速度-時間曲線の概略図である。
【
図6】本発明の実施例が提供する速度-位置曲線の概略図である。
【
図7】本発明の実施例が提供する間隔-時間曲線の概略図である。
【
図8】本発明の実施例が提供する加速度-時間曲線の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施例における図面を参照して、本発明の実施例における技術的解決手段を明確かつ完全に説明し、明らかに、説明した実施例は本発明の一部の実施例に過ぎず、全ての実施例ではない。本発明の実施例に基づいて、当業者が創造的な労働を要さずに取得した全ての他の実施例は、本発明の技術的範囲に属する。
【0023】
本発明の上記目的、特徴及び利点をより明らかで分かりやすくするために、以下、図面及び具体的な実施形態を参照して、本発明をさらに詳しく説明する。
【0024】
実施例1
本発明の革新的な点は、計画層及び制御層を含む、仮想編成列車の同期運行に対する階層制御システムアーキテクチャを提供することであり、このような階層制御システムは、アーキテクチャ設計レベルから仮想編成列車全体の同期運行の目標を考慮し、全ての列車ユニットの制御挙動を統一的に計画及び管理し、システムレベルから仮想編成列車の非同期運行の難題を解決する。
【0025】
図1に示すように、本発明の実施例が提供する仮想編成列車のための階層協調制御システムは、情報インタラクションモジュール、電子地図処理モジュール、推奨運転曲線計画モジュール及び複数のリアルタイム追跡制御モジュールを含む。1つの仮想編成列車ユニットは1つのリアルタイム追跡制御モジュールに対応する。
【0026】
情報インタラクションモジュールは電子地図処理モジュールに接続され、前記情報インタラクションモジュールは、自動列車監視システムから列車運行計画情報を取得し、かつ列車運行計画情報を電子地図処理モジュールに出力するために用いられる。
【0027】
電子地図処理モジュールは、それぞれ推奨運転曲線計画モジュール及び複数のリアルタイム追跡制御モジュールに接続され、前記電子地図処理モジュールは、鉄道路線情報を記憶し、かつ列車運行計画情報に基づいて列車運行全行程の鉄道路線情報を照会し、仮想編成列車の鉄道路線運行データを形成し、同時に推奨運転曲線計画モジュール及び複数のリアルタイム追跡制御モジュールに出力するために用いられる。
【0028】
推奨運転曲線計画モジュールは複数のリアルタイム追跡制御モジュールに接続され、前記推奨運転曲線計画モジュールは、仮想編成列車の鉄道路線運行データに基づいて、仮想編成列車を全体と見なし、仮想編成列車における全ての列車ユニットの推奨運転曲線を協調的に計画し、かつ推奨運転曲線を各列車ユニットのリアルタイム追跡制御モジュールに送信するために用いられる。
【0029】
前記リアルタイム追跡制御モジュールは、仮想編成列車の鉄道路線運行データに基づいて、列車ユニットがそれぞれの推奨運転曲線に従って運行するように制御し、仮想編成列車の同期運転という所望の目標を達成するために用いられる。
【0030】
ここで、推奨運転曲線計画モジュールを計画層とし、リアルタイム追跡制御モジュールを制御層とする。
【0031】
具体的には、該システムは以下のモジュールで構成される。
【0032】
1)情報インタラクション処理モジュール:自動列車監視システム(Automatic Train Supervision、ATS)又は鉄道側リソース制御システムとの情報インタラクションの処理を担当し、例えば、列車運行目的地、所望の運行時間、区間臨時制限速度等の情報を受信し、かつ対応する情報を電子地図記憶及び処理モジュール、推奨運転曲線計画モジュール及びリアルタイム追跡制御モジュールに出力する。
【0033】
2)電子地図記憶及び処理モジュール:鉄道路線論理区間番号(Link)、停車点、分岐器、トランスポンダ、勾配、鉄道静的制限速度等の路線情報を記憶するために用いられる。情報インタラクション処理モジュールから受信した列車運行計画情報に基づいて、これらの情報を他のモジュールが使用できる数学的変数に変換し、かつ推奨運転曲線計画モジュール及びリアルタイム追跡制御モジュールに出力する。
【0034】
3)推奨運転曲線計画モジュール:仮想編成列車における全ての列車ユニットの推奨運転曲線を計画するために用いられる。該モジュールは、列車運行目的地、所望の運行時間及び受信した他の運行条件に基づいて、関連する電子地図情報を考慮し、仮想編成列車を全体と見なして協調計画を行い、全ての列車ユニットが同じ運輸目標(例えば、仮想編成が最短時間内に目的地に到着する)を達成するために協力することを要求する。該モジュールは、得られた推奨運転曲線を各列車ユニットのリアルタイム追跡制御モジュールに送信する。
【0035】
4)リアルタイム追跡制御モジュール:仮想編成列車ユニットが所望の方式に従って運行するように制御するために用いられる。その具体的な制御論理は、以下の制御方法の部分で説明される。
【0036】
該システムは、全ての仮想編成列車ユニットの運行制御を統一的に計画及び管理し、運行計画及び路線条件に基づいて、計画層で全ての列車ユニットが連携する協調運行推奨運転曲線を生成し、もはや前後の列車が追いかけて運行するものではない。制御層で推奨運転曲線を追跡して実際の列車制御を行い、後続列車のリアルタイム追跡計算のストレスを転送する。階層協調制御により、仮想編成列車が区間同期運行目標を満たすことを協調的に保証する。
【0037】
実施例2
本発明の実施例は、実施例1の仮想編成列車のための階層協調制御システムに適用可能な、仮想編成列車のための階層協調制御方法を提供する。
図2及び
図3を参照して、該階層協調制御方法は、ステップ1~ステップ4を含む。
【0038】
ステップ1:仮想編成列車の駅間の協調運行最適化数学モデルを確立する。
【0039】
計画層は、変換された電子地図情報を受信する。最適制御問題を確立し、駅間最適化問題は以下のように構築される。
(1)最適化目標は、定時停車、定時運行、同期発車及び同期停車を含む。
(2)制約条件は、快適性の制約、車両牽引/ブレーキ特性の制約、安全追跡間隔の制約、鉄道路線制限速度の制約を含む。
(3)決定変数は、各列車ユニットが加速度を制御するように設定される。
【0040】
仮想編成列車の駅間の協調運行の最適化問題は以下の数学的形式で書くことができ、
【数4】
ここで、Q
1、Q
2、Q
3、Q
4は、それぞれ定時停車、定時運行、同期発車及び同期停車指標の最適化重み係数であり、s
e
l及びs
e
fは、先行列車及び後続列車の計画模擬停車スポットであり、s
g
l及びs
g
fは、先行列車及び後続列車の実際の目標停車スポットであり、t
e
l及びt
e
fは、先行列車及び後続列車の計画模擬停車時刻であり、t
0
l及びt
0
fは、先行列車及び後続列車の初期発車時刻であり、T
gは、駅間の規定された運行時間であり、t
e
f - t
0
lは、計画模擬の区間運行時間を示し、i = 1, 2は、それぞれ先行列車及び後続列車であり、nは、仮想編成列車の駅間の総運行時刻を表し、u
i(k)、u
i(k+1)は、列車ユニットが時刻k、時刻k+1で加速度を制御することを示し、U
iは、列車ユニットが駅間を運行する時の各時刻の制御加速度集合を示し、s
1(k)及びs
2(k)は、それぞれ時刻kにおける先行列車及び後続列車の先頭位置を示し、v
i(k)は、時刻kにおける列車ユニットの速度を示し、u
min及びu
maxは、列車ユニットの制御加速度の限界値を示し、j
min及びj
maxは、列車ユニットの衝撃率の限界値を示し、d(k)は、列車の最小追跡間隔を示し、Lは、列車ユニットの長さであり、Vは、鉄道路線制限速度を示し、v
EBI (s
i(k))は、時刻kにおける非常ブレーキ介入速度である。
【0041】
ステップ2:列車駅間運行計画情報に基づいて、仮想編成列車の駅間の鉄道路線運行データを決定する。
【0042】
情報インタラクション処理モジュールは、自動列車監視システムから仮想編成列車の区間運行計画及び指標要件を取得し、かつ情報を電子地図記憶及び処理モジュールに伝送して、該モジュールが仮想編成列車の計画運行の鉄道路線データに対して抽出処理を行い、処理過程は以下のとおりである。
鉄道路線は複数の論理区間(Link)に分けられ、電子地図記憶及び処理モジュールは各論理区間の初期位置及び区間長を含み、鉄道制限速度、勾配、曲線半径、トランスポンダ配置位置情報は論理区間番号とオフセット量の形式で与えられ、対応する論理区間番号の初期位置を照会し、対応する位置オフセット量を加えることにより、対応する鉄道路線の情報を決定できる。列車運行計画に基づいて運行全行程の鉄道路線データを照会し、推奨運転曲線計画モジュール及びリアルタイム追跡制御モジュールに用いられる。
【0043】
ステップ3:仮想編成列車の駅間の鉄道路線運行データに基づいて、前記仮想編成列車の駅間の協調運行最適化数学モデルを解き、仮想編成列車における各列車ユニットの駅間の推奨運転曲線を取得する。
【0044】
ステップ1の最適化問題に対して、逐次二次計画法、アクティブセット法、ヒューリスティックアルゴリズム又は強化学習アルゴリズム等の汎用解法アルゴリズムを用いて、解いて仮想編成列車の駅間の運行全行程の制御加速シーケンスを取得し、さらに制御加速シーケンスを列車動力学方程式に適用することにより、列車ユニットの運行全行程の位置、速度、加速度データ、即ち仮想編成列車の推奨運転曲線を取得することができる。列車動力学方程式は、
【数5】
であり、
ここで、a
i(k)、a
i(k+1)は、それぞれ時刻k、時刻k+1における合成加速度を示し、v
i(k)、v
i(k+1)は、それぞれ時刻k、時刻k+1における速度を示し、s
i(k)、s
i(k+1)は、それぞれ時刻k、時刻k+1における位置を示し、τは、時間計算ステップを示し、g
i(s
i(k),v
i(k))は、運行抵抗と列車ユニットの現在位置及び速度の相関関数を示す。
【0045】
ここまで、仮想編成列車の駅間運行戦略が既に取得されたため、次のステップでは、列車ユニットが推奨運転曲線に従って運行できることを保証するだけで駅間運行指標要件を達成できる。
【0046】
ステップ4:各列車ユニットのリアルタイム状態及び各列車ユニットの前後の列車ユニットのリアルタイム状態に応じて、仮想編成列車の駅間の鉄道路線運行データに基づいて、それぞれの列車ユニットの駅間の推奨運転曲線をリアルタイムで追跡し、最終的に仮想編成列車の同期運行という所望の目標を達成する。
【0047】
詳細な過程は以下のとおりである。仮想編成列車の駅間の鉄道路線運行データに基づいて、全時空の安全保護方法を用いて列車ユニットのいずれかの時刻の非常ブレーキ介入速度を決定し、各列車ユニットのリアルタイム状態及び各列車ユニットの前後の列車ユニットのリアルタイム状態に応じて、フィードフォワードPID制御アルゴリズムを利用して、それぞれの列車ユニットの駅間の推奨運転曲線をリアルタイムで追跡し、かつ列車ユニットがリアルタイムで追跡する速度を非常ブレーキ介入速度以下に制御する。
【0048】
制御層は、具体的な制御目標に基づいて、対応する制御論理に従って本列車ユニットの制御動作を計算し、列車に作用する。仮想編成列車のための階層協調制御システムでは、各列車ユニットの制御目標は、推奨運転曲線を追跡することである。計画層は、仮想編成列車内の各列車ユニットの制御層に利用可能な推奨運転曲線を送信し、各列車ユニットの制御層はそれぞれの推奨運転曲線に基づいて、本列車のリアルタイム状態を組み合わせて制御動作を計算する。同時に、各列車ユニットはさらに前後の列車のリアルタイム状態情報を受信し、相対的な運行関係に基づいて調整する(例えば、両列車の実際の距離が計画距離より近い場合、それぞれの制御を調整することにより両者の距離を増加させる)。PID制御、モデル予測制御等の汎用制御アルゴリズムは、いずれも推奨運転曲線をアルタイムで追跡でき、ここで、本発明者らは、フィードフォワードPID制御アルゴリズムを設計して曲線追跡に用い、コントローラ構造のブロック図を
図4に示す。
【0049】
コントローラが出力する制御加速度は3つの部分で構成され、それぞれ推奨運転曲線に基づいて加速度を制御するフィードフォワード部分、通常のPIDコントローラ部分及び両列車ユニットの間隔に基づく調整部分である。フィードフォワード部分は、現在の時刻から10個の推奨運転曲線を照会して加速度の平均値を制御し、PIDコントローラ部分は、実際の列車状態と推奨運転曲線との誤差に基づいて比例、積分、微分リンクパラメータK
P、K
I、K
Dを調整することにより制御指令を出力し、間隔調整部分は、両列車の間隔が大きすぎる又は小さすぎることが検出された時に制御指令を適切に調整し、通常の状況で出力はゼロである。したがって、実際の運行の時刻k
nにおける制御加速度指令
は、以下の式に従って計算でき、
【数6】
であり、
式中、
は、実際の運行の時刻k
nにおける制御加速度指令であり、K
P、K
I、K
Dは、それぞれ比例、積分、微分リンクパラメータであり、e(k
n)は、実際の列車速度v(k
n)と推奨運転曲線速度v
r(k
n)の差、e(k
n)=v(k
n)- v
r(k
n)であり、∫e(k
n) は、実際の列車の位置s(k
n)と推奨運転曲線位置s
r(k
n)の差、∫e(k
n)=s(k
n)- s
r(k
n)であり、
は、実際の列車の加速度a(k
n)と推奨運転曲線加速度a
r(k
n)の差、
であり、u
adjは、間隔調整部分の制御指令調整値である。
【0050】
ここまで、仮想編成列車ユニットの制御層は、計画層が生成した推奨運転曲線を追跡することによって運行し、もはやリアルタイム追跡運行に依存しない。計画層は仮想編成列車の運行の同期性及び全体的な目標を考慮するため、先行列車の運行戦略も後続列車の追跡を考慮し、全ての列車ユニットが相互に協力して、協調的かつ効率的に運行できることを達成する。
【0051】
仮想編成列車の階層制御方法は、仮想編成列車の運行戦略を実行可能かつ効率的に計画及び制御し、同期運行という所期の目標を達成できる。本発明は、仮想編成列車の追跡効率を大幅に向上させることができ、仮想編成列車の制御問題の複雑さを簡素化し、リアルタイム計算リソースを節約し、列車ユニットの運行の同期性を向上させ、列車ユニット間のホーム停車時間差(停車時間差と略称する)を減少させ、実際の運行指標の要件を満たすことができる。
【0052】
以下、仮想編成列車の具体的な駅間運行シーンを組み合わせて本発明をさらに説明する。
【0053】
2つの列車ユニットを含む仮想編成列車を例とし、他の複数列車の階層協調制御システム及び方法は類推して得ることができる。具体的な駅間運行シーンは、ある実際の路線のデータを選択し、発明の概要における仮想編成列車のための階層協調制御方法の実現ステップに従って具体的に実施する。
【0054】
(1)目的地等の運行計画に基づいて電子地図情報を処理する。
自動列車監視システムから受信した仮想編成列車の運行計画に基づいて運行駅間を決定し、路線駅間情報を表1に示し、ここで、実際の路線のホーム2からホーム1までを計画運行区間とし、まず、電子地図情報に基づいて駅間に含まれる全ての論理区間(Link)の初期位置を照会する。これに基づいて、鉄道路線制限速度、勾配、曲線半径の論理区間(Link)番号及びオフセット量という情報に基づいて、論理区間の初期位置にオフセット量を加えることにより、駅間の各位置の鉄道路線パラメータを決定し、一部のデータの処理結果を表2に示す。
【表1】
【表2】
【0055】
処理された鉄道路線パラメータは、推奨運転曲線生成モジュール及びリアルタイム制御モジュールに伝送される。区間制限速度情報は推奨運転曲線の運行戦略を決定し、路線勾配及び曲線半径は非常ブレーキ介入速度を計算して列車運行の安全を保証するために用いられる。仮想編成列車の運行路線の関連情報を整理して取得すると、仮想編成列車の推奨運転曲線を生成することができる。
【0056】
(2)計画層で仮想編成列車の推奨運転曲線を計算する。
計画層は仮想編成列車の駅間運行指標に基づいて最適化問題を構築し、問題を解くことにより要件を満たす各列車ユニットの推奨運転曲線を取得する必要がある。駅間運転指標要件を表3に示す。
【表3】
【0057】
指標要件及び路線データに基づいて仮想編成列車の最適化問題を以下のように構築でき、
【数7】
ここで、後続列車の非常ブレーキ介入速度v
EBI (s
i(k))は全時空の安全保護方法を用い、本発明は様々な安全保護計算方法に適用できるが、ここでは、例として先進的な方法を1つだけ選択し、具体的な計算パラメータを表4に示す。安全追跡間隔d
i(k)は、コントローラの実際の制御誤差に応じて決定する必要があり、一般的には最小安全間隔との差を一定に保持する形式が用いられる。ヒューリスティックアルゴリズム、強化学習アルゴリズム、逐次二次計画法、アクティブセット法等の通常の数学的最適化解法アルゴリズムを用いて、該最適化問題を解くと、仮想編成列車の推奨運転曲線を取得できる。
【表4】
【0058】
(3)制御層で仮想編成列車の制御動作を計算する。
制御層は、計画層が生成した仮想編成列車の推奨運転曲線に基づいて、列車ユニットの実際の速度が推奨運転曲線と基本的に同じになるように実際の列車制御を行い、制御誤差をできるだけ小さく保証する。制御方法は、鉄道業界で主流のPID制御方法又はモデル予測制御方法を用いることができる。先行列車及び後続列車がそれぞれの推奨運転曲線を追跡すると同時に、コントローラは2つの列車の運行状態をリアルタイムで監視して、必要に応じて制御動作で補助して調整し、2つの列車ユニットがそれぞれの制御誤差の影響で危険な状況が発生しないように保証する。
【0059】
本発明の方法に従って基準曲線を計画し、テストライン上でのデュアル実車の運行制御を行い、実験結果を
図5~
図8に示す。
図5及び
図6において、先行列車の実際の速度は先行列車の推奨運転速度とほぼ一致し、後続列車の実際の速度は後続列車の推奨運転速度とほぼ一致している。
【0060】
生成された推奨運転曲線の性能パラメータ及び現場のデュアル実車の追跡曲線指標データを表5に示す。試験データから、本発明である仮想編成列車のための階層協調制御システム及び方法の工事の実際の利用可能性、及び現在の仮想編成列車の同期運行問題に対する有効性を説明する。
【表5】
【0061】
本発明は、現在の仮想編成列車の運行制御システム及び方法が全ての列車ユニットの運行の整合性を考慮しておらず、システム構造の設計が仮想編成列車の運行ニーズと一致していないため、運行が同期せず、リアルタイム制御計算の圧力が大きく、運行効率が低くなるという問題に対して、仮想編成列車のための階層協調制御システム及び方法を設計し、計画層は列車ユニットの同期運行目標を考慮して仮想編成列車の推奨運転曲線を生成し、制御層は推奨運転曲線を追跡することにより仮想編成列車の同期高効率運行を達成する。協調全体計画と曲線追跡制御を組み合わせた2層のシステム構造により、仮想編成列車ユニットの同期的かつ一致した運行が保証され、リアルタイム計算圧力が計画層に転送される。仮想編成列車のための階層協調制御システムは、他のモジュールインタフェースを変更することなく、仮想編成列車に対する完全な運行制御方法を達成する。本発明の主な革新点及び有益な効果を以下にまとめる。
【0062】
1.仮想編成列車の追跡効率を向上させる:本発明は、採用する安全保護距離の特性に基づいて、仮想編成列車の運転曲線を最適化し、制御誤差マージンに応じて列車ユニット間の追跡間隔を最大限に減少させることにより、仮想編成列車の追跡効率を向上させる。
【0063】
2.仮想編成列車の制御問題の複雑さを簡素化し、リアルタイム計算リソースを節約する:本発明は、仮想編成列車ユニットのリアルタイム制御目標を推奨運転曲線を追跡するように設計し、それにより、前方列車の実際の状態に関する非線形間隔追跡制御問題を曲線追跡問題に簡素化し、非線形関数のオンライン計算を回避し、リアルタイム制御計算の複雑さを大幅に低下させ、計算リソースを節約するという目的を達成する。
【0064】
3.列車ユニットの運行の同期性を向上させ、実際の運行指標の要件を満たす:本発明は、鉄道交通の組織化された特性を十分に利用し、既知の運行計画に従って仮想編成列車の運転戦略を調整し、仮想編成列車の運行状態の同期性を十分に保証し、列車がホームに停車する時間差を効果的に減少させることができることにより、実際の運行指標の要件を満たす。
【0065】
本明細書の各実施例は漸進的に説明され、各実施例は他の実施例との相違点を重点的に説明し、各実施例の間の同じ又は類似する部分は互いに参照すればよい。
【0066】
本明細書では、具体的な例を用いて本発明の原理及び実施形態を説明したが、以上の実施例の説明は本発明の方法及びその核心思想を理解するのを助けるためのものに過ぎない。また、当業者であれば、本発明の趣旨に基づいて、具体的な実施形態及び応用範囲のいずれも変化できる。要約すると、本明細書の内容は本発明を限定するものとして理解されるべきではない。
【手続補正書】
【提出日】2024-10-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮想編成列車のための階層協調制御方法であって、
仮想編成列車の駅間の協調運行最適化数学モデルを確立することと、
列車駅間運行計画情報に基づいて、仮想編成列車の駅間の鉄道路線運行データを決定することと、
仮想編成列車の駅間の鉄道路線運行データに基づいて、前記仮想編成列車の駅間の協調運行最適化数学モデルを解き、仮想編成列車における各列車ユニットの駅間の推奨運転曲線を取得することと、
各列車ユニットのリアルタイム状態及び各列車ユニットの前後の列車ユニットのリアルタイム状態に応じて、仮想編成列車の駅間の鉄道路線運行データに基づいて、それぞれの列車ユニットの駅間の推奨運転曲線をリアルタイムで追跡し、最終的に仮想編成列車の同期運行という所望の目標を達成することと、を含
み、
前記仮想編成列車の駅間の協調運行最適化数学モデルは、
【数1】
であり、
ここで、Q
1
、Q
2
、Q
3
、Q
4
は、それぞれ定時停車、定時運行、同期発車及び同期停車指標の最適化重み係数であり、s
e
l
及びs
e
f
は、先行列車及び後続列車の計画模擬停車スポットであり、s
g
l
及びs
g
f
は、先行列車及び後続列車の実際の目標停車スポットであり、t
e
l
及びt
e
f
は、先行列車及び後続列車の計画模擬停車時刻であり、t
0
l
及びt
0
f
は、先行列車及び後続列車の初期発車時刻であり、T
g
は、駅間の規定された運行時間であり、t
e
f
- t
0
l
は、計画模擬の区間運行時間を示し、i = 1, 2は、それぞれ先行列車及び後続列車であり、nは、仮想編成列車の駅間の総運行時刻を表し、u
i
(k)、u
i
(k+1)は、列車ユニットが時刻k、時刻k+1で加速度を制御することを示し、U
i
は、列車ユニットが駅間を運行する時の各時刻の制御加速度集合を示し、s
1
(k)及びs
2
(k)は、それぞれ時刻kにおける先行列車及び後続列車の先頭位置を示し、v
i
(k)は、時刻kにおける列車ユニットの速度を示し、u
min
及びu
max
は、列車ユニットの制御加速度の限界値を示し、j
min
及びj
max
は、列車ユニットの衝撃率の限界値を示し、d(k)は、列車の最小追跡間隔を示し、Lは、列車ユニットの長さであり、Vは、鉄道路線制限速度を示し、v
EBI
(s
i
(k))は、時刻kにおける非常ブレーキ介入速度であり、
仮想編成列車の駅間の鉄道路線運行データに基づいて、前記仮想編成列車の駅間の協調運行最適化数学モデルを解き、仮想編成列車における各列車ユニットの駅間の推奨運転曲線を取得することは、具体的には、
仮想編成列車の駅間の鉄道路線運行データに基づいて、逐次二次計画法、アクティブセット法、ヒューリスティックアルゴリズム又は強化学習アルゴリズムを用いて、前記仮想編成列車の駅間の協調運行最適化数学モデルを解き、仮想編成列車の運行計画駅間の全行程の制御加速シーケンスを取得することと、
前記制御加速シーケンスに基づいて、列車動力学方程式を利用して列車ユニット運行計画の駅間の全行程の位置、速度及び加速度を取得することにより、仮想編成列車における各列車ユニットの駅間の推奨運転曲線を決定することと、を含み、前記列車動力学方程式は、
【数2】
であり、
ここで、a
i
(k)、a
i
(k+1)は、それぞれ時刻k、時刻k+1における合成加速度を示し、v
i
(k)、v
i
(k+1)は、それぞれ時刻k、時刻k+1における速度を示し、s
i
(k)、s
i
(k+1)は、それぞれ時刻k、時刻k+1における位置を示し、τは、時間計算ステップを示し、g
i
(s
i
(k),v
i
(k))は、運行抵抗と列車ユニットの現在位置及び速度の相関関数を示すことを特徴とする仮想編成列車のための階層協調制御方法。
【請求項2】
列車駅間運行計画情報に基づいて、仮想編成列車の駅間の鉄道路線運行データを決定することは、具体的には、
鉄道路線の電子地図情報を取得することと、
仮想編成列の駅間の鉄道路線運行データとして、前記電子地図情報から運行計画駅間に含まれる全ての論理区間、及び各論理区間の鉄道路線データを照会することと、を含み、
前記電子地図情報は、鉄道路線を分割して得られた複数の論理区間、及び各論理区間の鉄道路線データを含み、前記鉄道路線データは、制限速度起点、制限速度終点、勾配起点、勾配終点、曲線半径起点及び曲線半径終点を含むことを特徴とする請求項1に記載の仮想編成列車のための階層協調制御方法。
【請求項3】
各列車ユニットのリアルタイム状態及び各列車ユニットの前後の列車ユニットのリアルタイム状態に応じて、仮想編成列車の駅間の鉄道路線運行データに基づいて、それぞれの列車ユニットの駅間の推奨運転曲線をリアルタイムで追跡することは、具体的には、
仮想編成列車の駅間の鉄道路線運行データに基づいて、全時空の安全保護方法を用いて列車ユニットのいずれかの時刻の非常ブレーキ介入速度を決定することと、
各列車ユニットのリアルタイム状態及び各列車ユニットの前後の列車ユニットのリアルタイム状態に応じて、フィードフォワードPID制御アルゴリズムを利用して、それぞれの列車ユニットの駅間の推奨運転曲線をリアルタイムで追跡し、かつ列車ユニットがリアルタイムで追跡する速度を非常ブレーキ介入速度以下に制御することと、を含むことを特徴とする請求項1に記載の仮想編成列車のための階層協調制御方法。
【請求項4】
前記フィードフォワードPID制御アルゴリズムの計算式は、
【数3】
であり、
式中、
は、実際の運行の時刻k
nにおける制御加速度指令であり、K
P、K
I、K
Dは、それぞれ比例、積分、微分リンクパラメータであり、e(k
n)は、実際の列車速度v(k
n)と推奨運転曲線速度v
r(k
n)の差、e(k
n)=v(k
n)- v
r(k
n)であり、∫e(k
n) は、実際の列車の位置s(k
n)と推奨運転曲線位置s
r(k
n)の差、∫e(k
n)=s(k
n)- s
r(k
n)であり、
は、実際の列車の加速度a(k
n)と推奨運転曲線加速度a
r(k
n)の差、
であり、u
adjは、間隔調整部分の制御指令調整値であることを特徴とする
請求項3に記載の仮想編成列車のための階層協調制御方法。