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特開2024-177017二酸化炭素吸着機構を有するバクテリアを含むコンクリート組成物、コンクリートコーティング材およびこれを用いたショットクリート施工方法
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  • 特開-二酸化炭素吸着機構を有するバクテリアを含むコンクリート組成物、コンクリートコーティング材およびこれを用いたショットクリート施工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177017
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】二酸化炭素吸着機構を有するバクテリアを含むコンクリート組成物、コンクリートコーティング材およびこれを用いたショットクリート施工方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/04 20060101AFI20241212BHJP
   C04B 24/00 20060101ALI20241212BHJP
   C04B 18/14 20060101ALI20241212BHJP
   C04B 18/08 20060101ALI20241212BHJP
   C04B 14/20 20060101ALI20241212BHJP
   C04B 14/18 20060101ALI20241212BHJP
   C04B 14/08 20060101ALI20241212BHJP
   C04B 16/06 20060101ALI20241212BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20241212BHJP
   B28B 1/32 20060101ALI20241212BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
C04B28/04
C04B24/00
C04B18/14 A
C04B18/08
C04B14/20 Z
C04B14/18
C04B14/08
C04B16/06 A
C04B24/26 C
B28B1/32 Z
C12N1/20 Z
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023163054
(22)【出願日】2023-09-26
(31)【優先権主張番号】10-2023-0074275
(32)【優先日】2023-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0074276
(32)【優先日】2023-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】515261066
【氏名又は名称】キョンギ、ユニバーシティー、インダストリー、アンド、アカデミア、コーオペレイション、ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】KYONGGI UNIVERSITY INDUSTRY & ACADEMIA COOPERATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グン ヒョク、ヤン
【テーマコード(参考)】
4B065
4G112
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065BD05
4B065BD50
4B065CA60
4G112PA05
4G112PA08
4G112PA21
4G112PA24
4G112PA27
4G112PA29
4G112PA31
4G112PB14
4G112PB30
(57)【要約】      (修正有)
【課題】コンクリート構造物の耐久性を向上させ、明暗条件と関係なく、大気中の二酸化炭素を吸着できるコンクリート組成物およびコンクリートコーティング材を提供する。
【解決手段】組成物は、1種の普通ポルトランドセメント、高炉スラグ、およびフライアッシュのうち少なくとも1つを含むセメント系無機結合材と;一般骨材と、二酸化炭素吸着機構を有し、グリコカリックスを形成する好アルカリ性バクテリアが含浸された多孔性材料とを含む骨材混合物と;を含む。コーティング材は、1種の普通ポルトランドセメント、フライアッシュ、高炉スラグ、およびポリマー粉末を含むセメント系無機結合材と;細骨材と、二酸化炭素吸着機構を有し、グリコカリックスを形成する好アルカリ性バクテリアが含浸された多孔性材料とを含む骨材混合物と;ポリエチレンおよびナイロンのうち少なくとも1つを含む繊維素材と;を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種の普通ポルトランドセメント、高炉スラグ、およびフライアッシュのうち少なくとも1つを含むセメント系無機結合材と;
一般骨材と、二酸化炭素吸着機構を有し、グリコカリックスを形成する好アルカリ性バクテリアが含浸された多孔性材料と、を含む骨材混合物と;
を含むコンクリート組成物。
【請求項2】
前記セメント系無機結合材20~25wt%と前記骨材混合物75~80wt%を含むことを特徴とする請求項1に記載のコンクリート組成物。
【請求項3】
前記骨材混合物は、前記一般骨材70~95vol%と前記多孔性材料5~30vol%を含むことを特徴とする請求項2に記載のコンクリート組成物。
【請求項4】
前記バクテリアは、ロドバクター・カプスラタス(Rhodobacter capsulatus)、ロドプシュードモナス・パルストリス(Rhodopseudomonas palustris)、ロドバクター・ブラスティクス(Rhodobacter blasticus)、およびロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroids)から成る群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート組成物。
【請求項5】
前記バクテリアは、サーモプロテウス(Thermoproteus)、スルフォロブス(Sulfolobus)、プランクトミセス(Planctomyces)、およびアナモックス(Anammox)から成る群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート組成物。
【請求項6】
前記多孔性材料は、膨張バーミキュライト、パーライト、硅藻土、および高吸収性樹脂のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載のコンクリート組成物。
【請求項7】
前記多孔性材料は、陰圧条件で前記バクテリアが含浸されることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート組成物。
【請求項8】
1種の普通ポルトランドセメント、フライアッシュ、高炉スラグ、およびポリマー粉末を含むセメント系無機結合材と;
細骨材と、二酸化炭素吸着機構を有し、グリコカリックスを形成する好アルカリ性バクテリアが含浸された多孔性材料と、を含む骨材混合物と;
ポリエチレンおよびナイロンのうち少なくとも1つを含む繊維素材と;
を含むコンクリートコーティング材。
【請求項9】
前記セメント系無機結合材20~50wt%と骨材混合物50~80wt%を含み、
前記セメント系無機結合材と骨材混合物の100体積部に対して前記繊維素材0.1~1体積部を含むことを特徴とする請求項8に記載のコンクリートコーティング材。
【請求項10】
前記セメント系無機結合材は、前記1種の普通ポルトランドセメント30~40wt%、前記フライアッシュ15~25wt%、前記高炉スラグ40~50wt%、および前記ポリマー粉末1~10wt%を含むことを特徴とする請求項9に記載のコンクリートコーティング材。
【請求項11】
前記ポリマー粉末は、エチレン酢酸ビニル系(EVA)樹脂であることを特徴とする請求項8に記載のコンクリートコーティング材。
【請求項12】
前記骨材混合物は、前記細骨材30~80vol%と前記多孔性材料20~70vol%を含むことを特徴とする請求項9に記載のコンクリートコーティング材。
【請求項13】
前記繊維素材は、直径が100~140μmであることを特徴とする請求項8に記載のコンクリートコーティング材。
【請求項14】
請求項8から13のいずれか一項に記載のコンクリートコーティング材を用いるショットクリート施工方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素を吸着するコンクリート組成物、コンクリートコーティング材およびこれを用いたショットクリート施工方法に関し、より詳細には、二酸化炭素吸着機構を有し、グリコカリックスを形成するバクテリアを含んで大気中の二酸化炭素を吸着するコンクリート組成物、コンクリートコーティング材およびこれを用いたショットクリート施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、気候変化による被害が増加するにつれて、気候変化の原因となる二酸化炭素の削減への関心が増加している。そのため、様々な産業全般にわたって二酸化炭素の削減のための様々な努力を行っている。特に、建設産業でコンクリートを製造するために必要なセメントは、1トンを生産するたびに0.8トン以上の二酸化炭素を排出することが知られている。したがって、建設産業は、二酸化炭素を排出しただけに二酸化炭素を二酸化炭素の純排出量をゼロにする炭素中立を実現するための努力を傾けている。
【0003】
一般的なセメントは、水和生成物である水酸化カルシウム(Ca(OH))と二酸化炭素(CO)が反応して炭酸カルシウム(CaCO)を生成する炭酸化反応が起こり、これにより、大気中の二酸化炭素を吸着するコンクリートを製造することができる。しかしながら、このような炭酸化反応は、セメントのpHを中性に変化させてコンクリート構造物の強度を低下させ、鉄筋腐食の主な原因となり、コンクリート構造物の耐久性を顕著に低下させるという問題が存在する。
【0004】
また、ステンレスの製造時に発生する産業部産物であるスラグに含まれたγ-CSを活用して大気中の二酸化炭素を吸着するコンクリートを製造することができる。しかしながら、これも、セメントの炭酸化を誘導し、コンクリート構造物の耐久性を低下させることができる。また、ステンレスの製造時に発生するγ-CSの量が顕著に少ないので、この技術を産業現場に適用することが多少難しいという問題が存在する。
【0005】
これにより、コンクリート構造物の耐久性を維持し、大気中の二酸化炭素を吸着する技術の開発に対する関心が高まっている。例えば、コンクリート構造物の表面に光触媒をコーティングする場合、コンクリート構造物の耐久性を維持し、大気中の二酸化炭素を吸着することができる。しかしながら、光触媒がコーティングされたコンクリート構造物は、強い紫外線環境で二酸化炭素を吸着することができ、光触媒がコーティングされた表面が外部に露出すると、コーティング面が脱落したり、容易に損傷することがあり、耐用年数が短いという問題が存在する。
【0006】
したがって、コンクリート構造物の耐久性を維持し、強い紫外線がない環境でも大気中の二酸化炭素を吸着できる技術の開発が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国登録特許第10-1877317号公報(2018.07.05.)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、コンクリート構造物の耐久性を向上させ、明暗条件と関係なく、大気中の二酸化炭素を吸着できるコンクリート組成物およびコンクリートコーティング材を提供するためである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明によるコンクリート組成物は、1種の普通ポルトランドセメント、高炉スラグ、およびフライアッシュのうち少なくとも1つを含むセメント系無機結合材と;一般骨材と、二酸化炭素吸着機構を有し、グリコカリックスを形成する好アルカリ性バクテリアが含浸された多孔性材料とを含む骨材混合物と;を含む。
【0010】
前記セメント系無機結合材20~25wt%と、前記骨材混合物75~80wt%を含んでもよい。
【0011】
前記骨材混合物は、前記一般骨材70~95vol%と、前記多孔性材料5~30vol%を含んでもよい。
【0012】
前記バクテリアは、ロドバクター・カプスラタス(Rhodobacter capsulatus)、ロドプシュードモナス・パルストリス(Rhodopseudomonas palustris)、ロドバクター・ブラスティクス(Rhodobacter blasticus)、およびロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroids)から成る群から選ばれる1種以上であってもよい。
【0013】
前記バクテリアは、サーモプロテウス(Thermoproteus)、スルフォロブス(Sulfolobus)、プランクトミセス(Planctomyces)、およびアナモックス(Anammox)から成る群から選ばれる1種以上であってもよい。
【0014】
前記多孔性材料は、膨張バーミキュライト、パーライト、硅藻土、および高吸収性樹脂のうち少なくとも1つを含んでもよい。
【0015】
前記多孔性材料は、陰圧条件で前記バクテリアが含浸されてもよい。
【0016】
本発明によるコンクリートコーティング材は、1種の普通ポルトランドセメント、フライアッシュ、高炉スラグ、およびポリマー粉末を含むセメント系無機結合材と;細骨材と、二酸化炭素吸着機構を有し、グリコカリックスを形成する好アルカリ性バクテリアが含浸された多孔性材料とを含む骨材混合物と;ポリエチレンおよびナイロンのうち少なくとも1つを含む繊維素材と;を含む。
【0017】
前記セメント系無機結合材20~50wt%と骨材混合物50~80wt%を含み、前記セメント系無機結合材と骨材混合物の100体積部に対して前記繊維素材0.1~1体積部を含んでもよい。
【0018】
前記セメント系無機結合材は、前記1種の普通ポルトランドセメント30~40wt%、前記フライアッシュ15~25wt%、前記高炉スラグ40~50wt%、および前記ポリマー粉末1~10wt%を含んでもよい。
【0019】
前記ポリマー粉末は、エチレン酢酸ビニル系(EVA)樹脂であってもよい。
【0020】
前記骨材混合物は、前記細骨材30~80vol%と前記多孔性材料20~70vol%を含んでもよい。
【0021】
前記繊維素材は、直径が100~140μmであってもよい。
【0022】
本発明によるショットクリート施工方法は、前記コンクリートコーティング材のうちいずれか1つを用いる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によるコンクリート組成物およびコンクリートコーティング材は、二酸化炭素吸着機構を有し、グリコカリックスを形成するバクテリアを含んでいて、コンクリート構造物の耐久性を向上させ、明暗条件と関係なく、大気中の二酸化炭素を吸着することができる。
【0024】
また、本発明によるコンクリート組成物およびコンクリートコーティング材は、二酸化炭素吸着機構を有し、グリコカリックスを形成する好アルカリ性バクテリアを含んでいて、コンクリート構造物の表面が損傷しても、内部に存在するバクテリアにより二酸化炭素吸着能力を持続することができる。
【0025】
本発明によるコンクリート組成物およびコンクリートコーティング材は、バクテリアが含浸された多孔性材料を含み、硬化したコンクリートの内部でもバクテリアが生長しうる環境を作ることができる。
【0026】
本発明によるコンクリートコーティング材は、新築されるコンクリート構造物だけでなく、既存に竣工されたコンクリート構造物に適用が容易であり、大気と接するコンクリート構造物の表面に打設され、二酸化炭素吸着の効率性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本発明によるバクテリアがカルビン回路を介して二酸化炭素を吸着する機構を示す図である。
図2図2は、本発明によるバクテリアが逆TCA回路を介して二酸化炭素を吸着する機構を示す図である。
図3図3は、本発明によるバクテリアがヒドロキシプロピオネート回路を介して二酸化炭素を吸着する機構を示す図である。
図4図4は、比較例および実験例によるコンクリートブロックの材齢14日に二酸化炭素の吸着性能を示すグラフである。
図5図5は、比較例および実験例によるコンクリートブロックの材齢14日にバクテリアの生存数を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
下記の説明では、本発明の実施形態を理解するのに必要な部分のみが説明され、その他の部分の説明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で省略されることに留意されたい。
【0029】
以下で説明される本明細書および請求範囲に使用される用語や単語は、通常的または辞書的意味に限定して解釈されるべきものではなく、発明者は、自分の発明を最も最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に則して本発明の技術的思想に符合する意味と概念に沿って解釈されるべきものである。したがって、本明細書に記載された実施形態と図面に示された構成は、本発明の最も好ましい一実施形態に過ぎず、本発明の技術的思想をすべて代弁するものではないので、本出願時点においてこれらを代替できる多様な均等物と変形例がありえることを理解すべきである。
【0030】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態をより詳細に説明する。
本発明によるコンクリート組成物は、セメント系無機結合材と、骨材混合物を含む。
【0031】
セメント系無機結合材は、1種の普通ポルトランドセメント、高炉スラグ、およびフライアッシュのうち少なくとも1つを含んでもよいし、骨材混合物は、一般骨材と、二酸化炭素吸着機構を有し、グリコカリックスを形成する好アルカリ性バクテリアが含浸された多孔性材料と、を含んでもよい。
【0032】
以下、本発明によるコンクリート組成物の構成をより詳細に説明する。
セメント系無機結合材は、1種の普通ポルトランドセメントだけで構成されてもよいが、1種の普通ポルトランドセメントの一部を高炉スラグおよびフライアッシュに置き換えることによって、1種の普通ポルトランドセメントの生産過程で排出される二酸化炭素を低減することができる。
【0033】
高炉スラグは、製鉄所の高炉で銑鉄を製造する際に発生する産業部産物であり、水和熱を低減させる効果を有し、コンクリート構造物の長期強度を優秀にする潜在水硬性も持っている。高炉スラグ自体は、硬化する性質が弱いが、セメント水和生成物である水酸化カルシウムと硫酸塩の作用により硬化が促進される性質を有している。
【0034】
フライアッシュは、火力発電所で石炭を燃料とする微粉炭を高温で焼却させたとき、高温の燃焼ガスと共に溶解し、煙突に至る途中で急激な冷却で表面張力により球形粒子状に電気式または機械式集電装置に収集される微粉末形態に該当する。コンクリート組成物にフライアッシュを添加すると、養生時間は多少長くなるが、コンクリート構造物の長期強度の増進、水和熱の減少、アルカリ骨材反応の抑制、硫酸塩に対する抵抗性、水密性の向上などの長所がある。
【0035】
骨材混合物は、一般骨材70~95vol%と多孔性材料5~30vol%を含んでもよい。
【0036】
一般骨材は、粗骨材と細骨材を含んでもよい。ここで、粗骨材は、5mm篩に90%重量比以上で残っている骨材であり、好ましくは、砂利を使用することができ、細骨材は、10mm篩を全部通過し、5mm篩を90%重量比以上で通過する骨材であり、好ましくは、砂を使用することができる。
【0037】
多孔性材料は、陽イオン交換能に優れた膨張バーミキュライト、パーライト、硅藻土、および高吸収性樹脂のうち少なくとも1つを含んでもよい。この際、多孔性材料は、二酸化炭素吸着機構を有し、グリコカリックスを形成する好アルカリ性バクテリアが含浸されたものであってもよい。
【0038】
コンクリート組成物の製造時にバクテリアを単純に投入する場合、コンクリート組成物の配合過程で摩擦や衝撃に起因してバクテリアが死滅しやすい。また、コンクリート組成物の配合後に硬化過程で水和反応による水分の減少で乾燥環境となり、体積膨張の影響でバクテリアの栄養分および生息地が減少する。さらに、硬化したコンクリート組成物の内部空隙のサイズは、一般的なバクテリアのサイズより小さい1μmであり、コンクリート空隙内でバクテリアが生存し難い。このような影響で硬化したコンクリート組成物の内部でバクテリアの生長活動が阻害され、約30日後には、バクテリアのほとんどが死滅する。
【0039】
したがって、本発明によるコンクリート組成物は、バクテリアを含浸させた多孔性材料を含み、硬化したコンクリート組成物の内部でもバクテリアが生長できる環境を作ることができる。
【0040】
多孔性材料は、好ましくは、有効水分率40vol%以上と空隙率50vol%以上を有していてもよく、これによって、バクテリアが生長できる環境を作ることができる。特に、多孔性材料は、表面に存在する交換性カチオン(Mg2+、Ca2+)によって有機物を吸着する性質があり、バクテリアおよびバクテリアの生長に必要な培養液を吸収することができる。
【0041】
一般的に、コンクリート組成物は、水和過程で強アルカリ性の水酸化カルシウム(Ca(OH))が生成され、pH11~12の強アルカリ性環境が造成され、硬化したコンクリート組成物の内部に十分な光と空気が到達し難い。したがって、本発明では、嫌気、好気、および明暗条件に敏感でなく、二酸化炭素吸着機構を有する好アルカリ性バクテリアを選別することが重要である。
【0042】
また、本発明によるバクテリアは、二酸化炭素吸着機構を有するだけでなく、グリコカリックス(Glycocalyx)を形成する好アルカリ性バクテリアであってもよい。グリコカリックスは、バクテリアの新陳代謝活動によりバクテリアの周辺に形成される膜であり、コンクリート構造物の内部組織を緻密にし、コンクリート構造物の透水性を低下させる。したがって、グリコカリックスは、コンクリート構造物の炭酸化および凍結融解を防止することができ、硫酸塩のような有害物質の侵入を抑制し、コンクリート構造物の劣化を防止し、塩害抵抗性を向上させることができる。
【0043】
本発明によるバクテリアは、二酸化炭素吸着機構によってカルビン回路(Calvin Cycle)、逆TCA回路(Reverse Tricarboxylic Acid Cycle)、およびヒドロキシプロピオネート回路(Hydroxypropionate Cycle)を二酸化炭素吸着機構として有するバクテリアに分類することができる。
【0044】
第一に、カルビン回路を二酸化炭素吸着機構として有するバクテリアは、紅色非硫黄光合成細菌で発見されるロドバクター・カプスラタス(Rhodobacter capsulatus)、ロドプシュードモナス・パルストリス(Rhodopseudomonas palustris)、ロドバクター・ブラスティクス(Rhodobacter blasticus)、およびロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroids)から成る群から選ばれる1種以上を含んでもよい。
【0045】
第二に、逆TCA回路を二酸化炭素吸着機構として有するバクテリアは、サーモプロテウス(Thermoproteus)、およびスルフォロブス(Sulfolobus)から成る群から選ばれる1種以上を含んでもよい。
【0046】
第三に、ヒドロキシプロピオネート回路を二酸化炭素吸着機構として有するバクテリアは、緑色非硫黄細菌であってもよく、好ましくは、プランクトミセス(Planctomyces)、およびアナモックス(Anammox)から成る群から選ばれる1種以上を含んでもよい。
【0047】
以下、本発明によるバクテリアの二酸化炭素吸着機構をより詳細に説明する。
図1は、本発明によるバクテリアがカルビン回路を介して二酸化炭素を吸着する機構を示す図である。
図1を参照すると、カルビン回路は、ATPとNADPHからブドウ糖を合成する過程で二酸化炭素6分子を吸着する。カルビン回路は、大きく、3段階に分けることができる。第一の段階は、二酸化炭素固定段階であり、ルビスコ(rubisco)という酵素により触媒される。ルビスコ(rubisco)は、5個の炭素からなるリブロース-1,5-ビスリン酸(RuBP)と二酸化炭素を結合させて、2分子の3-ホスホグリセリン酸(3PG)を生成する。第二の段階は、3-ホスホグリセリン酸(3PG)が還元過程を経てグリセルアルデヒド-3-リン酸(G3P)に転換される過程である。このように生成されたグリセルアルデヒド-3-リン酸(G3P)は、ブドウ糖を合成するのに使用される。第三の段階は、リブロース-1,5-ビスリン酸(RuBP)の再生が起こる反応である。第二の段階で生成されたグリセルアルデヒド-3-リン酸(G3P)は、リブロース一リン酸(RuMP)を経てリブロース-1,5-ビスリン酸(RuBP)に転換される。このように再生したリブロース-1,5-ビスリン酸(RuBP)は、さらに、二酸化炭素と結合する過程を繰り返して二酸化炭素を吸着することができる。
【0048】
図2は、本発明によるバクテリアが逆TCA回路を介して二酸化炭素を吸着する機構を示す図である。
図2を参照すると、逆TCA回路は、TCA回路を逆方向に回すものであり、二酸化炭素をアセチルCoAに転換させる過程で二酸化炭素3分子を吸着する。逆TCA回路では、フマル酸(fumarate)をスクシン酸(succinate)に還元させるフマル酸還元酵素(fumarate reductase)、フェレドキシン(ferredoxin)として受けた電子を二酸化炭素とスクシニルCoAに伝達し、α-ケトグルタル酸に還元させるα-ケトグルタル酸:フェレドキシン酸化還元酵素(α-ketoglutarate:ferredoxin oxidoreductase)、およびクエン酸(citrate)を分解し、オキザロアセテート(oxaloacetate)とアセチルCoAを作るATPクエン酸分解酵素(ATP citrate lyase)のような酵素が使用される。
【0049】
図3は、本発明によるバクテリアがヒドロキシプロピオネート回路を介して二酸化炭素を吸着する機構を示す図である。
図3を参照すると、ヒドロキシプロピオネート回路は、アセチルCoAがマリルCoAに転換される過程で二酸化炭素2分子を吸着する。ヒドロキシプロピオネート回路が二酸化炭素を吸着する段階を具体的に説明すると、まず、アセチルCoAが二酸化炭素を吸着してマロニルCoAを形成し、マロニルCoAは、中間体であるヒドロキシプロピオネートを経てプロピオニルCoAに転換される。次に、プロピオニルCoAがメチルマロニルCoAにカルボキシル化される過程で二酸化炭素を吸着し、メチルマロニルCoAは、スクシニルCoAに異性化される。その後、スクシニルCoAは、マリルCoAを形成し、マリルCoAは、アセチルCoAとグリオキシレートに分解される。
【0050】
ヒドロキシプロピオネート回路が変形された二酸化炭素吸着機構として3-ヒドロキシプロピオネート/4ヒドロキシブチレートサイクル(3-hydroxypropionate/4-hydroxybutyrate cycle)およびジカルボキシレート/4-ヒドロキシブチレートサイクル(dicarboxylate/4-hydroxybutyrate cycle)が知られている。
【0051】
本発明によるコンクリート組成物は、二酸化炭素吸着機構を有し、グリコカリックスを形成する好アルカリ性バクテリアを含み、コンクリート構造物の耐久性を向上させ、明暗条件と関係なく、大気中の二酸化炭素を吸着することができる。
【0052】
また、本発明によるコンクリート組成物は、二酸化炭素吸着機構を有し、グリコカリックスを形成する好アルカリ性バクテリアを含み、コンクリート構造物の表面が損傷しても、内部に存在するバクテリアにより二酸化炭素吸着能力を持続することができ、一般的なコンクリートの炭酸化による二酸化炭素吸着率に比べて3~4倍高い二酸化炭素吸着率を示すことができる。
【0053】
多孔性材料は、ナノバブル水を用いて滅菌処理した後、バクテリアを培養した培養液に1:3~4の重量比で完全に浸漬させ、陰圧を加えて、バクテリアを含浸させることができる。ここで陰圧を加える工程は、陰圧コンテナ内で15~25℃、1~30torrで20~80分間行われ得、これに限定されるものではない。
【0054】
多孔性材料を滅菌処理するナノバブル水は、酸素を含む超微細水滴気泡であり、気泡内に酸素を多量含んでいる。そのため、ナノバブル水で多孔性材料を洗浄する場合、多孔性材料の内部に溶存酸素量を増加させて、光合成バクテリアの活性度を高めることができる。また、ナノバブル水は、多孔性材料の表面に付着した異物を除去することができ、水中で生成された水酸化ラジカルは、(-)性質を有しているので、汚染物質である(+)イオンに吸着し、汚染物質を除去することができる。ナノバブル水は、ナノバブルが生成される間に、空気中で酸素が活性化し、オゾン(O)、ヒドロキシ基(-OH)のような分子を形成し、これらは、有機体および揮発性有機化合物を破壊する殺菌剤として作用することができる。この際、多孔性材料は、ナノバブル水で洗浄した後、100℃で6~10時間乾燥させることができ、これに限定されるものではない。
【0055】
本発明によるコンクリート組成物が好ましい二酸化炭素吸着率を有するようにするために、バクテリアは、5~50℃のインキュベーターで1×10cell/mL以上の濃度で培養液に培養されることができる。ここで、培養液は、酵母抽出物(yeast extract)、コハク酸二ナトリウム(disodium succinate hexahydrate)、およびリン酸二水素カリウム(KHPO)を含んでもよいし、これに限定されるものではない。例えば、培養液は、1Lの精製水に対して酵母抽出物(yeast extract)1.0g/L、コハク酸二ナトリウム(disodium succinate hexahydrate)1.0g/L、エタノール0.5mL/L、Ferric citrate solution(0.5%)1mL/L、リン酸二水素カリウム(KHPO)0.5g/L、硫酸マグネシウム(MgSO・7HO)0.4g/L、塩化ナトリウム(NaCl)0.4g/L、塩化アンモニウム(NHCl)0.4g/L、塩化カルシウム(CaCl・2HO)0.05g/L、および微量元素溶液(Trace element solution SL-6)1mL/Lを含んでもよい。
【0056】
本発明によるコンクリート組成物は、セメント系無機結合材20~25wt%と、骨材混合物75~80wt%を含んでもよいし、好ましくは、セメント系無機結合材23wt%と、骨材混合物77wt%を含んでもよい。この際、水-結合材の割合は、30~50%であってもよい。コンクリート組成物の製造方法は、一般的に知られている製造方法に従うので、これに関する説明を省略する。
【0057】
本発明によるコンクリートコーティング材は、セメント系無機結合材、骨材混合物、および繊維素材を含む。
【0058】
セメント系無機結合材は、1種の普通ポルトランドセメント、フライアッシュ、高炉スラグ、およびポリマー粉末を含んでもよいし、骨材混合物は、細骨材と、二酸化炭素吸着機構を有し、グリコカリックスを形成する好アルカリ性バクテリアが含浸された多孔性材料と、を含んでもよいし、繊維素材は、ポリエチレンおよびナイロンのうち少なくとも1つを含んでもよい。
【0059】
以下、本発明によるコンクリートコーティング材の構成をより詳細に説明する。
セメント系無機結合材は、1種の普通ポルトランドセメントだけで構成されてもよいが、1種の普通ポルトランドセメントの一部を高炉スラグおよびフライアッシュに置き換えることによって、1種の普通ポルトランドセメントの生産過程で排出される二酸化炭素を低減することができる。例えば、セメント系無機結合材は、1種の普通ポルトランドセメント30~40wt%、フライアッシュ15~25wt%、高炉スラグ40~50wt%、およびポリマー粉末1~10wt%を含んでもよい。
【0060】
ここで、ポリマー粉末は、コンクリート構造物との接着性を向上させることができ、エチレン酢酸ビニル系(EVA)樹脂を使用することができる。
【0061】
骨材混合物は、細骨材30~80vol%と、多孔性材料20~70vol%を含んでもよい。ここで、細骨材は、直径が5mm以下の骨材であり、砂、ボトムアッシュ、および砕石を含んでもよい。
【0062】
本発明によるコンクリートコーティング材に含まれる多孔性材料は、本発明によるコンクリート組成物に含まれる二酸化炭素吸着機構を有し、グリコカリックスを形成する好アルカリ性バクテリアが含浸された多孔性材料と同一なので、これに関する説明を省略する。
【0063】
繊維素材は、コンクリートコーティング材の膨張および収縮などの変形を防止し、ポリエチレンおよびナイロン繊維のうち少なくとも1つを含んでもよい。この際、繊維素材は、直径が100~140μmであってもよく、好ましくは、120μmであってもよい。
【0064】
本発明によるコンクリートコーティング材は、セメント系無機結合材20~50wt%と、骨材混合物50~80wt%を含んでもよいし、セメント系無機結合材と骨材混合物の100体積部に対して繊維素材0.1~1体積部を含んでもよい。この際、水-結合材の割合は、20~50%であってもよい。
【0065】
本発明によるコンクリートコーティング材は、圧縮空気を用いてホースを介して噴射させて、コンクリート構造物の表面に打設するショットクリート(shotcrete)施工方法によって施工することができる。ショットクリート施工は、コンクリート構造物の表面の非常に小さい隙間にも入り、確かに密着し、コンクリート構造物の密度および強度を高めることができる。例えば、本発明によるコンクリートコーティング材は、10~60L容量の移動式ミキサー、300~1000rpm、40~100barの圧送力を有するモノポンプ、および100~1000kPaの空気圧縮機で圧縮噴射して、1~2回打設することができる。
【0066】
本発明によるコンクリートコーティング材は、新築されるコンクリート構造物だけでなく、既存に竣工されたコンクリート構造物に適用が容易であり、大気と接するコンクリート構造物の表面に打設されて、二酸化炭素吸着の効率性を高めることができる。
【0067】
[比較例および実験例]
以下、本発明によるコンクリート組成物の二酸化炭素吸着性能を確認するために、比較例および実験例によるコンクリートブロックを製造した。
【0068】
比較例1は、水-セメントの割合40%、セメント23wt%、および細骨材77wt%、単位セメント量450kg/mのコンクリートブロックである。ここで、骨材は、破砕細骨材を使用した。
【0069】
実験例1は、水-セメントの割合40%、セメント23wt%、および骨材混合物77wt%、単位セメント量450kg/mであり、かつ骨材混合物は、細骨材90vol%と多孔性材料10vol%を含むコンクリートブロックである。この際、多孔性材料は、陰圧コンテナ内で膨張バーミキュライトをロドバクター・カプスラタス(Rhodobacter capsulatus)が培養された培養液に浸漬させた後、30分間10~30torrの圧力を加えて、バクテリアを含浸させたものを使用した。
【0070】
実験例2は、骨材混合物は、細骨材80vol%と多孔性材料20vol%を含むコンクリートブロックであることを除いて、実験例1と同一である。
【0071】
実験例3は、骨材混合物は、細骨材70vol%と多孔性材料30vol%を含むコンクリートブロックであることを除いて、実験例1と同一である。
【0072】
実験例4は、骨材混合物は、細骨材60vol%と多孔性材料40vol%を含むコンクリートブロックであることを除いて、実験例1と同一である。
【0073】
実験例5は、骨材混合物は、細骨材50vol%と多孔性材料50vol%を含むコンクリートブロックであることを除いて、実験例1と同一である。
【0074】
比較例1および実験例1~5の骨材混合物中バクテリアが含浸された多孔性材料の混入率を下記の表1に示した。
【0075】
【表1】
【0076】
比較例1および実験例1~5を3000ppmの二酸化炭素が飽和された密閉容器に入れ、材齢14日に密閉容器内部の二酸化炭素の濃度を確認した。
【0077】
図4は、比較例および実験例によるコンクリートブロックの材齢14日に二酸化炭素の吸着性能を示すグラフである。
図4を参照すると、材齢14日にバクテリアが含浸された多孔性材料の混入率が20vol%以上の実験例2~5のコンクリートブロックが挿入された密閉容器で100ppm以下の二酸化炭素が検出された。すなわち、バクテリアが含浸された多孔性材料の混入率が20vol%以上の実験例2~5のコンクリートブロックが、約96.7%以上の二酸化炭素吸着率を示すことを確認した。
【0078】
図5は、比較例および実験例によるコンクリートブロックの材齢14日にバクテリアの生存数を示すグラフである。
図5を参照すると、材齢14日にバクテリアが含浸された多孔性材料の混入率が20vol%以上の実験例2~ 5のコンクリートブロックで1.0×10cell/mL以上のバクテリアが生存したことを確認した。
【0079】
また、本発明によるコンクリート組成物のバクテリアが含浸された多孔性材料の混入率による耐久性を確認するために、比較例1、および実験例1~5の材齢28日の圧縮強度および曲げ強度を測定し、下記の表2に示した。
【0080】
【表2】
【0081】
表2を参照すると、バクテリアが含浸された多孔性材料の混入率が50vol%以下の比較例1、および第1~実験例5のコンクリートブロックが、材齢28日の圧縮強度が20MPa以上であり、バクテリアが含浸された多孔性材料の混入率が40vol%以下の比較例1、および第1~実験例5のコンクリートブロックが、材齢28日の曲げ強度が5MPa以上であることを確認した。
【0082】
なお、本明細書と図面に開示された実施形態は、理解を助けるために特定例を提示したものに過ぎず、本発明の範囲を限定しようとするものではない。ここに開示された実施形態以外にも、本発明の技術的思想に基づく他の変形例が実施可能であるということは、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者にとって自明なものである。

図1
図2
図3
図4
図5
【外国語明細書】