(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177020
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、硬化物、コーティング組成物、コーティング膜、および、レゾール型フェノール樹脂
(51)【国際特許分類】
C08G 8/20 20060101AFI20241212BHJP
C08H 7/00 20110101ALI20241212BHJP
C08G 81/00 20060101ALI20241212BHJP
C09D 197/00 20060101ALI20241212BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20241212BHJP
【FI】
C08G8/20 A
C08H7/00
C08G81/00
C09D197/00
C09D7/63
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023179122
(22)【出願日】2023-10-17
(31)【優先権主張番号】P 2023093648
(32)【優先日】2023-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】501186173
【氏名又は名称】国立研究開発法人森林研究・整備機構
(71)【出願人】
【識別番号】517132810
【氏名又は名称】地方独立行政法人大阪産業技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】597022540
【氏名又は名称】株式会社環境経営総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110003812
【氏名又は名称】弁理士法人いくみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大橋 康典
(72)【発明者】
【氏名】山田 竜彦
(72)【発明者】
【氏名】木村 肇
(72)【発明者】
【氏名】米川 盛生
(72)【発明者】
【氏名】下川路 朋紘
(72)【発明者】
【氏名】山野 宏司
(72)【発明者】
【氏名】松下 敬通
【テーマコード(参考)】
4J031
4J033
4J038
【Fターム(参考)】
4J031AA08
4J031AA53
4J031AB06
4J031AC04
4J031AD01
4J031AF12
4J033CA02
4J033CA03
4J033CA11
4J033CA16
4J033CA33
4J033CA45
4J033CC03
4J033CC07
4J033HA12
4J033HA13
4J033HA22
4J033HB08
4J038BA251
4J038JB31
4J038JC34
4J038KA03
4J038KA04
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA10
4J038NA12
(57)【要約】
【課題】優れた耐熱性を有する硬化物を得ることができる硬化性樹脂組成物およびコーティング組成物と、優れた耐熱性を有する硬化物およびコーティング膜とを提供し、優れた密着性を有する硬化物を得ることができるレゾール型フェノール樹脂を提供すること。
【解決手段】硬化性樹脂組成物は、水酸基を有するリグニン系樹脂と、水酸基と反応可能な反応性官能基を有する反応性シランカップリング剤とを含有する。リグニン系樹脂が、ポリエチレングリコールにより変性されたリグニンと、ポリエチレングリコールにより変性されたリグニンのノボラック化物と、ポリエチレングリコールにより変性されたリグニンのレゾール化物とからなる群から選択される少なくとも1種を含有する。レゾール型フェノール樹脂は、ポリエチレングリコールにより変性されたリグニンと、フェノール類と、アルデヒド類とを、アルカリ触媒下で反応させた反応生成物を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基を有するリグニン系樹脂と、
前記水酸基と反応可能な反応性官能基を有する反応性シランカップリング剤と
を含有し、
前記リグニン系樹脂が、
ポリエチレングリコールにより変性されたリグニンと、
ポリエチレングリコールにより変性されたリグニンのノボラック化物と、
ポリエチレングリコールにより変性されたリグニンのレゾール化物と
からなる群から選択される少なくとも1種を含有する、硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記ノボラック化物または前記レゾール化物が、
ポリエチレングリコールにより変性されたリグニンと、
フェノール類と、
アルデヒド類と
の反応生成物を含有する、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリエチレングリコールの数平均分子量が、400以上である、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記反応性官能基が、エポキシ基を含有する、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
さらに、前記水酸基と前記反応性官能基との反応における反応触媒を含有する、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記反応触媒が、イミダゾール型触媒を含有する、請求項5に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の硬化性樹脂組成物の硬化物。
【請求項8】
前記リグニン系樹脂の前記水酸基と、前記反応性シランカップリング剤の前記反応性官能基とが反応してなる反応生成物を含有し、
前記反応生成物が、前記反応性シランカップリング剤のアルコキシシリル基が縮合してなるポリシロキサン構造を含有する、請求項7に記載の硬化物。
【請求項9】
請求項1に記載の硬化性樹脂組成物を含有する、コーティング組成物。
【請求項10】
請求項7に記載の硬化物を含む、コーティング膜。
【請求項11】
ポリエチレングリコールにより変性されたリグニンと、
フェノール類と、
アルデヒド類と
を、アルカリ触媒下で反応させた反応生成物を含む、レゾール型フェノール樹脂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物、硬化物、コーティング組成物およびコーティング膜に関する。
【背景技術】
【0002】
硬化性樹脂組成物は、例えば、熱硬化性樹脂を含有する組成物である。硬化性樹脂組成物は、加熱により硬化し、硬化物を形成する。硬化性樹脂組成物は、各種産業分野において、広範に使用されている。硬化性樹脂組成物の用途として、例えば、成形材料、接着材およびコーティング材が挙げられる。
【0003】
硬化性樹脂組成物として、環境性の観点から、リグニン由来のフェノール樹脂が、提案されている。より具体的には、硬化性樹脂組成物としては、例えば、リグノフェノール誘導体と、シランカップリング剤とを含む成形材料が、提案されている。また、硬化物として、例えば、リグノフェノール誘導体とシランカップリング剤とを反応させて得られる透明耐熱性材料が、提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、硬化性樹脂組成物として、レゾール型フェノール樹脂が知られている。レゾール型フェノール樹脂は、例えば、フェノールと、アルデヒドとを、アルカリ触媒の存在下で反応させることによって、製造される。より具体的には、フェノールと、ホルマリンとを、水酸化ナトリウムの存在下で反応させて得られるレゾール型フェノール樹脂が、知られている(例えば、特許文献2(製造例4)参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-342270号公報
【特許文献2】特開2015-48395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、硬化性樹脂組成物およびその硬化物には、より優れた耐熱性が、要求される。
【0007】
本発明は、優れた耐熱性を有する硬化物を得ることができる硬化性樹脂組成物およびコーティング組成物と、優れた耐熱性を有する硬化物およびコーティング膜とを含む。
【0008】
また、レゾール型フェノール樹脂およびその硬化物には、より優れた密着性が要求される。
【0009】
本発明は、優れた密着性を有する硬化物を得ることができるレゾール型フェノール樹脂を含む。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明[1]は、水酸基を有するリグニン系樹脂と、前記水酸基と反応可能な反応性官能基を有する反応性シランカップリング剤とを含有し、前記リグニン系樹脂が、ポリエチレングリコールにより変性されたリグニンと、ポリエチレングリコールにより変性されたリグニンのノボラック化物と、ポリエチレングリコールにより変性されたリグニンのレゾール化物とからなる群から選択される少なくとも1種を含有する、硬化性樹脂組成物を、含んでいる。
【0011】
本発明[2]は、前記ノボラック化物または前記レゾール化物が、ポリエチレングリコールにより変性されたリグニンと、フェノール類と、アルデヒド類との反応生成物を含有する、上記[1]に記載の硬化性樹脂組成物を、含んでいる。
【0012】
本発明[3]は、前記ポリエチレングリコールの数平均分子量が、400以上である、上記[1]または[2]に記載の硬化性樹脂組成物を、含んでいる。
【0013】
本発明[4]は、前記反応性官能基が、エポキシ基を含有する、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を、含んでいる。
【0014】
本発明[5]は、さらに、前記水酸基と前記反応性官能基との反応における反応触媒を含有する、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を、含んでいる。
【0015】
本発明[6]は、前記反応触媒が、イミダゾール型触媒を含有する、上記[5]に記載の硬化性樹脂組成物を、含んでいる。
【0016】
本発明[7]は、上記[1]~[6]のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物の硬化物を、含んでいる。
【0017】
本発明[8]は、前記リグニン系樹脂の前記水酸基と、前記反応性シランカップリング剤の前記反応性官能基とが反応してなる反応生成物を含有し、前記反応生成物が、前記反応性シランカップリング剤のアルコキシシリル基が縮合してなるポリシロキサン構造を含有する、上記[7]に記載の硬化物を、含んでいる。
【0018】
本発明[9]は、上記[1]~[6]のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を含有する、コーティング組成物を、含んでいる。
【0019】
本発明[10]は、上記[7]または[8]に記載の硬化物を含む、コーティング膜を、含んでいる。
【0020】
本発明[11]は、ポリエチレングリコールにより変性されたリグニンと、フェノール類と、アルデヒド類とを、アルカリ触媒下で反応させた反応生成物を含む、レゾール型フェノール樹脂を、含んでいる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の硬化性樹脂組成物および本発明のコーティング組成物において、リグニン系樹脂が、ポリエチレングリコールにより変性されたリグニンと、ポリエチレングリコールにより変性されたリグニンのノボラック化物と、ポリエチレングリコールにより変性されたリグニンのレゾール化物とからなる群から選択される少なくとも1種を含有する。そのため、上記の硬化性樹脂組成物は、優れた耐熱性を有する硬化物を製造できる。
【0022】
また、本発明の硬化物および本発明のコーティング膜は、上記の硬化性樹脂組成物を硬化させて得られるため、優れた耐熱性を有する。
【0023】
また、本発明のレゾール型フェノール樹脂は、反応原料として、ポリエチレングリコールにより変性されたリグニンを含んでいる。そのため、上記のレゾール型フェノール樹脂によれば、優れた密着性を有する硬化物を、製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
1.硬化性樹脂組成物
硬化性樹脂組成物は、後述する硬化物(樹脂硬化物)を形成するための未硬化の樹脂である。硬化性樹脂組成物は、必須成分として、水酸基を有するリグニン系樹脂と、水酸基と反応可能な反応性官能基を有する反応性シランカップリング剤とを含有する。
【0025】
(1)リグニン系樹脂
リグニン系樹脂は、ポリエチレングリコールにより変性されたリグニン(以下、PEG変性リグニンと称する場合がある。)と、ポリエチレングリコールにより変性されたリグニンのノボラック化物(以下、PEG変性リグニン-ノボラック樹脂と称する場合がある。)と、ポリエチレングリコールにより変性されたリグニンのレゾール化物(以下、PEG変性リグニン-レゾール樹脂と称する場合がある。)とからなる群から選択される少なくとも1種を含有する。好ましくは、リグニン系樹脂は、PEG変性リグニン、PEG変性リグニン-ノボラック樹脂、および、PEG変性リグニン-レゾール樹脂からなる群から選択される少なくとも1種からなる。
【0026】
[PEG変性リグニン]
PEG変性リグニンにおいて、ポリエチレングリコール(PEG)は、リグニンを変性し、硬化物(後述)の耐熱性を向上させる。
【0027】
ポリエチレングリコールの数平均分子量は、例えば、100以上、好ましくは、200以上、より好ましくは、300以上、さらに好ましくは、400以上である。また、ポリエチレングリコールの数平均分子量は、例えば、1000以下、好ましくは、900以下、より好ましくは、800以下、さらに好ましくは、600以下である。数平均分子量が上記範囲であれば、優れた耐熱性を有する硬化物(後述)が得られる。なお、数平均分子量は、公知のゲルパーミエーションクロマトグラム法により、ポリエチレングリコール換算分子量として求めることができる。
【0028】
PEG変性リグニンにおいて、リグニンは、天然物であり、高分子フェノール性化合物である。リグニンは、例えば、基本骨格として、グアイアシルリグニン(G型)、シリンギルリグニン(S型)、および/または、p-ヒドロキシフェニルリグニン(H型)を含む。リグニンは、例えば、天然リグニンとして、植物全般に含まれている。
【0029】
PEG変性リグニンは、例えば、特開2017-197517号公報に記載される方法に準拠して、製造される。この方法では、例えば、リグニンの原料となる植物材料(リグノセルロース)を、ポリエチレングリコールを用いて蒸解する。
【0030】
蒸解方法としては、特に制限されないが、例えば、リグニンの原料となる植物材料と、ポリエチレングリコールと、酸触媒としての無機酸(例えば、塩酸、硫酸など)とを混合し、反応させる。
【0031】
ポリエチレングリコールの配合割合は、リグニンの原料となる植物材料100質量部に対して、例えば、200質量部以上、好ましくは、300質量部以上である。また、ポリエチレングリコールの配合割合は、リグニンの原料となる植物材料100質量部に対して、例えば、1000質量部以下、好ましくは、600質量部以下である。
【0032】
また、無機酸(100%換算)の配合割合は、ポリエチレングリコール100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.2質量部以上である。また、無機酸(100%換算)の配合割合は、ポリエチレングリコール100質量部に対して、例えば、2質量部以下、好ましくは、1質量部以下である。
【0033】
また、反応条件としては、常圧下が挙げられる。また、反応温度が、例えば、120℃以上、好ましくは、130℃以上である。また、反応温度が、例えば、180℃以下、好ましくは、150℃以下である。また、反応時間が、例えば、60分以上である。また、反応時間が、例えば、240分以下、好ましくは、120分以下である。
【0034】
また、反応終了後、反応液にアルカリを適宜の割合で添加し、pHを調整する。アルカリとしては、例えば、アンモニアおよび水酸化ナトリウムが挙げられる。これにより、PEG変性リグニンを、溶液に抽出する。調整後のpHは、例えば、8以上、好ましくは、10以上、より好ましくは、10.5以上であり、例えば、14以下である。
【0035】
上記の方法によって、固形成分としてパルプが得られるとともに、溶液成分としてPEG変性リグニンが得られる。
【0036】
次いで、この方法では、濾過、プレス、遠心分離などの公知の分離方法によって、反応生成物から固形成分(パルプ)を分離し、溶液成分を回収する。また、この方法では、必要に応じて、固形成分(パルプ)を洗浄し、固形成分に含浸される溶液(PEG変性リグニン)を、回収することもできる。その後、この方法では、無機酸(例えば、塩酸、硫酸など)などを添加し、pHを、調整して、PEG変性リグニンを析出および沈殿させる。調整後のpHは、例えば、1.5以上であり、例えば、5以下、好ましくは、3以下、より好ましくは、2以下である。
【0037】
これにより、PEG変性リグニンを沈殿させることができる。また、得られた沈殿を、例えば、濾過、プレス、遠心分離などの公知の方法で回収することにより、固形分として、PEG変性リグニンを得ることができる。
【0038】
[PEG変性リグニン-ノボラック樹脂]
PEG変性リグニン-ノボラック樹脂(PEG変性リグニンのノボラック化物)は、PEG変性リグニンにより変性されたノボラック型フェノール樹脂である。より具体的には、PEG変性リグニン-ノボラック樹脂(PEG変性リグニンのノボラック化物)は、上記PEG変性リグニンと、フェノール類と、アルデヒド類との反応生成物を、含有する。好ましくは、PEG変性リグニン-ノボラック樹脂(PEG変性リグニンのノボラック化物)は、上記PEG変性リグニンと、フェノール類と、アルデヒド類との反応生成物からなる。
【0039】
フェノール類は、フェノールおよびフェノール誘導体(フェノール変性体)である。フェノール類としては、例えば、フェノール、2官能性フェノール誘導体、3官能性フェノール誘導体および4官能性フェノール誘導体が挙げられる。2官能性フェノール誘導体としては、例えば、o-クレゾール、p-クレゾール、p-ter-ブチルフェノール、p-フェニルフェノール、p-クミルフェノールおよびp-ノニルフェノールが挙げられる。3官能性フェノール誘導体としては、例えば、m-クレゾール、レゾルシノール、および、3,5-キシレノールが挙げられる。4官能性フェノール誘導体としては、例えば、ビスフェノールAおよびジヒドロキシジフェニルメタンが挙げられる。また、フェノール誘導体としては、ハロゲン化フェノール類も挙げられる。ハロゲン化フェノール類は、フェノールまたはフェノール誘導体のハロゲン化物である。ハロゲンとしては、例えば、塩素および臭素が挙げられる。これらフェノール類は、単独使用または2種類以上併用することができる。なお、フェノールの誘導体において、フェノールが誘導体化(変性)されるタイミングは特に制限されない。例えば、フェノールの誘導体化は、フェノール類とアルデヒド類との反応前であってもよく、反応後であってもよく、反応と同時であってもよい。フェノール類として、好ましくは、フェノールが挙げられる。
【0040】
アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、フルフラール、グリオキサール、ベンズアルデヒド、トリオキサン、および、テトラオキサンが挙げられる。また、アルデヒドの一部が、フルフリルアルコールなどに置換されていてもよい。これらアルデヒド類は、単独使用または2種類以上併用することができる。アルデヒド類として、好ましくは、ホルムアルデヒドおよびパラホルムアルデヒドが挙げられる。
【0041】
また、アルデヒド類は、例えば、水溶液として用いることができる。そのような場合において、アルデヒド類の濃度は、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上であり、例えば、99質量%以下、好ましくは、95質量%以下である。
【0042】
また、アルデヒド類とともに、ケトン類を使用することもできる。ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノン、および、ジフェニルケトンが挙げられる。これらケトン類は、単独使用または2種類以上併用することができる。ケトン類が使用される場合、ケトン類の量は、固形分基準で、アルデヒド類100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、1質量部以上である。また、ケトン類の量は、固形分基準で、アルデヒド類100質量部に対して、例えば、200質量部以下、好ましくは、100質量部以下である。
【0043】
PEG変性リグニンとフェノール類とアルデヒド類(および必要により配合されるケトン類(以下同様))とを反応させるには、上記の各成分(PEG変性リグニン、フェノール類およびアルデヒド類)を配合し、酸触媒(後述)の存在下で、加熱する。
【0044】
この反応において、フェノール類の配合割合は、PEG変性リグニン100質量部に対して、例えば、30質量部以上、好ましくは、50質量部以上、より好ましくは、100質量部以上である。また、フェノール類の配合割合は、PEG変性リグニン100質量部に対して、例えば、1000質量部以下、好ましくは、500質量部以下、より好ましくは、350質量部以下、さらに好ましくは、200質量部以下である。
【0045】
換言すると、PEG変性リグニンの配合割合は、フェノール類100質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、20質量部以上、より好ましくは、30質量部以上、さらに好ましくは、50質量部以上、とりわけ好ましくは、70質量部以上である。また、PEG変性リグニンの配合割合は、フェノール類100質量部に対して、例えば、300質量部以下、好ましくは、200質量部以下、より好ましくは、100質量部以下である。
【0046】
また、アルデヒド類の配合割合が、フェノール類100質量部に対して、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上である。また、アルデヒド類の配合割合が、フェノール類100質量部に対して、例えば、35質量部以下、好ましくは、30質量部以下である。
【0047】
また、アルデヒド類の配合割合は、PEG変性リグニン100質量部に対して、例えば、1.5質量部以上、好ましくは、3質量部以上である。また、アルデヒド類の配合割合は、PEG変性リグニン100質量部に対して、例えば、350質量部以下、好ましくは、300質量部以下である。
【0048】
また、この反応では、酸触媒が添加される。すなわち、上記の各成分は、酸触媒下において反応する。
【0049】
酸触媒としては、例えば、ルイス酸が挙げられる。ルイス酸としては、例えば、有機酸、無機酸および金属塩が挙げられる。有機酸としては、例えば、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物およびリン酸化合物が挙げられる。カルボン酸化合物としては、例えば、ギ酸、酢酸およびシュウ酸が挙げられる。スルホン酸化合物としては、例えば、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、キュメンスルホン酸、ジノニルナフタレンモノスルホン酸、および、ジノニルナフタレンジスルホン酸が挙げられる。リン酸化合物としては、例えば、リン酸エステル類が挙げられる。リン酸エステル類として、より具体的には、例えば、炭素数1~18のアルキル基を有するリン酸エステル類が挙げられる。リン酸化合物としては、例えば、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸モノブチル、リン酸ジブチル、リン酸トリブチル、および、リン酸トリオクチルが挙げられる。無機酸としては、例えば、リン酸、塩酸、硫酸および硝酸が挙げられる。金属塩としては、例えば、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸カルシウム、酢酸鉛、ホウ酸亜鉛、ホウ酸マンガン、ホウ酸ニッケル、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸亜鉛、安息香酸亜鉛、酸化亜鉛、および、酸化鉛が挙げられる。酸触媒(ルイス酸)として金属塩が使用される場合、フェノールノボラック構造として、ハイオルソノボラック構造が形成されるため、硬化速度が向上する。これら酸触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。酸触媒として、好ましくは、有機酸、より好ましくは、カルボン酸化合物、さらに好ましくは、シュウ酸が挙げられる。
【0050】
酸触媒の配合割合は、フェノール類100質量部に対して、酸触媒が、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.3質量部以上であり、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下である。
【0051】
なお、酸触媒の添加のタイミングは、特に制限されない。例えば、酸触媒は、PEG変性リグニン、フェノール類およびアルデヒド類の少なくともいずれかに予め添加されていてもよい。また、酸触媒は、PEG変性リグニン、フェノール類およびアルデヒド類の配合時に同時に添加されてもよい。さらに、酸触媒は、PEG変性リグニン、フェノール類およびアルデヒド類の配合後に添加されてもよい。
【0052】
反応条件としては、大気圧下が挙げられる。また、反応温度が、例えば、50℃以上、好ましくは、80℃以上である。また、反応温度が、例えば、200℃以下、好ましくは、180℃以下である。また、反応時間が、例えば、1時間以上、好ましくは、2時間以上である。また、反応時間が、例えば、20時間以下、好ましくは、15時間以下である。
【0053】
これにより、酸触媒下で、PEG変性リグニンと、フェノール類と、アルデヒド類とが反応する。その結果、反応生成物として、PEG変性リグニンのノボラック化物(PEG変性リグニン-ノボラック樹脂)が得られる。
【0054】
PEG変性リグニンと、フェノール類と、アルデヒド類との反応では、上記のように、上記各成分を一括配合し、一括反応させることもできるが、上記各成分を順次配合し、順次反応させることもできる。
【0055】
より具体的には、順次反応では、まず、PEG変性リグニンとフェノール類とを反応させる。これにより、PEG変性リグニンおよびフェノール類の反応生成物として、PEG変性リグニン-フェノール組成物を調製する。
【0056】
PEG変性リグニンとフェノール類との反応では、PEG変性リグニンに対してフェノール類は過剰当量配合される。具体的には、フェノール類の配合割合は、PEG変性リグニン100質量部に対して、例えば、30質量部以上、好ましくは、50質量部以上、より好ましくは、100質量部以上である。また、フェノール類の配合割合は、PEG変性リグニン100質量部に対して、例えば、1000質量部以下、好ましくは、500質量部以下、より好ましくは、350質量部以下である。換言すると、PEG変性リグニンの配合割合は、フェノール類100質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、20質量部以上、より好ましくは、30質量部以上である。また、PEG変性リグニンの配合割合は、フェノール類100質量部に対して、例えば、300質量部以下、好ましくは、200質量部以下、より好ましくは、100質量部以下である。
【0057】
また、この反応では、上記の酸触媒が添加される。酸触媒の配合割合は、フェノール類100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.3質量部以上である。また、酸触媒の配合割合は、フェノール類100質量部に対して、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下である。
【0058】
なお、酸触媒の添加のタイミングは、特に制限されない。例えば、酸触媒は、PEG変性リグニンおよびフェノール類の少なくともいずれかに予め添加されていてもよい。また、酸触媒は、PEG変性リグニンおよびフェノール類の配合時に同時に添加されてもよい。また、酸触媒は、PEG変性リグニンおよびフェノール類の配合後に添加されてもよい。
【0059】
反応条件としては、大気圧下が挙げられる。また、反応温度が、例えば、60℃以上、好ましくは、80℃以上である。また、反応温度が、例えば、250℃以下、好ましくは、200℃以下である。また、反応時間が、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1時間以上である。また、反応時間が、例えば、10時間以下、好ましくは、5時間以下である。
【0060】
この反応により、PEG変性リグニンがフェノール類により変性される。具体的には、PEG変性リグニンの分子中の脂肪族水酸基が、フェノール類に置換される。
【0061】
なお、上記の反応では、過剰のフェノール類が、未反応成分として残存する。そのため、上記の反応で得られるPEG変性リグニン-フェノール組成物には、PEG変性リグニンおよびフェノール類の反応生成物(フェノール類により変性されたPEG変性リグニン)と、遊離のフェノール類とが含有される。
【0062】
次いで、この方法では、上記により得られるPEG変性リグニン-フェノール組成物(すなわち、フェノール類により変性されたPEG変性リグニン、および、遊離のフェノール類を含む。)と、アルデヒド類とを反応させる。
【0063】
この反応において、アルデヒド類の配合割合は、フェノール類(上記反応において原料として用いられたフェノール類)100質量部に対して、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上であり、例えば、35質量部以下、好ましくは、30質量部以下である。
【0064】
また、この反応では、必要に応じて、上記の酸触媒を適宜の割合で添加することもできる。
【0065】
反応条件としては、大気圧下が挙げられる。また、反応温度が、例えば、50℃以上、好ましくは、80℃以上である。また、反応温度が、例えば、200℃以下、好ましくは、180℃以下である。また、反応時間が、例えば、1時間以上、好ましくは、2時間以上である。また、反応時間が、例えば、20時間以下、好ましくは、15時間以下である。
【0066】
これにより、上記のPEG変性リグニン-フェノール組成物と、アルデヒド類とが反応する。その結果、反応生成物として、PEG変性リグニンのノボラック化物(PEG変性リグニン-ノボラック樹脂)が得られる。
【0067】
[PEG変性リグニン-レゾール樹脂]
PEG変性リグニン-レゾール樹脂(PEG変性リグニンのレゾール化物)は、PEG変性リグニンにより変性されたレゾール型フェノール樹脂である。より具体的には、PEG変性リグニン-レゾール樹脂(PEG変性リグニンのレゾール化物)は、上記PEG変性リグニンと、上記フェノール類と、上記アルデヒド類(および上記ケトン類)との反応生成物を、含有する。好ましくは、PEG変性リグニン-レゾール樹脂(PEG変性リグニンのレゾール化物)は、上記PEG変性リグニンと、上記フェノール類と、上記アルデヒド類(および上記ケトン類)との反応生成物からなる。
【0068】
PEG変性リグニンとフェノール類とアルデヒド類(および必要により配合されるケトン類(以下同様))とを反応させるには、上記の各成分(PEG変性リグニン、フェノール類およびアルデヒド類)を配合し、アルカリ触媒(後述)の存在下で、加熱する。
【0069】
この反応において、フェノール類の配合割合は、PEG変性リグニン100質量部に対して、例えば、30質量部以上、好ましくは、50質量部以上、より好ましくは、100質量部以上である。また、フェノール類の配合割合は、PEG変性リグニン100質量部に対して、例えば、1000質量部以下、好ましくは、500質量部以下、より好ましくは、350質量部以下、さらに好ましくは、200質量部以下である。
【0070】
換言すると、PEG変性リグニンの配合割合は、フェノール類100質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、20質量部以上、より好ましくは、30質量部以上、さらに好ましくは、50質量部以上である。また、PEG変性リグニンの配合割合は、フェノール類100質量部に対して、例えば、300質量部以下、好ましくは、200質量部以下、より好ましくは、100質量部以下、さらに好ましくは、70質量部未満、とりわけ好ましくは、60質量部以下である。
【0071】
また、アルデヒド類の配合割合が、フェノール類100質量部に対して、例えば、35質量部以上、好ましくは、40質量部以上である。また、アルデヒド類の配合割合が、フェノール類100質量部に対して、例えば、90質量部以下、好ましくは、60質量部以下である。
【0072】
また、アルデヒド類の配合割合は、PEG変性リグニン100質量部に対して、例えば、1.5質量部以上、好ましくは、3質量部以上である。また、アルデヒド類の配合割合は、PEG変性リグニン100質量部に対して、例えば、350質量部以下、好ましくは、300質量部以下である。
【0073】
また、この反応では、アルカリ触媒が添加される。すなわち、上記の各成分は、アルカリ触媒下において反応する。
【0074】
アルカリ触媒としては、例えば、金属水酸化物およびアミン類が挙げられる。金属水酸化物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、および、水酸化マグネシウムが挙げられる。アミン類としては、例えば、ジメチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ジエチレントリアミン、ジシアンジアミド、N,N-ジメチルベンジルアミン、アニリン、1,5-ナフタレンジアミンおよびアンモニアが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0075】
アルカリ触媒の配合割合は、フェノール類100質量部に対して、アルカリ触媒が、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.3質量部以上であり、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下である。
【0076】
なお、アルカリ触媒の添加のタイミングは、特に制限されない。例えば、アルカリ触媒は、PEG変性リグニン、フェノール類およびアルデヒド類の少なくともいずれかに予め添加されていてもよい。また、アルカリ触媒は、PEG変性リグニン、フェノール類およびアルデヒド類の配合時に同時に添加されてもよい。さらに、アルカリ触媒は、PEG変性リグニン、フェノール類およびアルデヒド類の配合後に添加されてもよい。
【0077】
反応条件としては、大気圧下が挙げられる。また、反応温度が、例えば、50℃以上、好ましくは、80℃以上である。また、反応温度が、例えば、200℃以下、好ましくは、180℃以下である。また、反応時間が、例えば、1時間以上、好ましくは、2時間以上である。また、反応時間が、例えば、20時間以下、好ましくは、15時間以下である。
【0078】
これにより、アルカリ触媒下で、PEG変性リグニンと、フェノール類と、アルデヒド類とが反応する。その結果、反応生成物として、PEG変性リグニンのレゾール化物(PEG変性リグニン-レゾール樹脂)が得られる。
【0079】
PEG変性リグニンと、フェノール類と、アルデヒド類との反応では、上記のように、上記各成分を一括配合し、一括反応させることもできるが、上記各成分を順次配合し、順次反応させることもできる。好ましくは、上記各成分を一括配合し、一括反応させる。
【0080】
[リグニン系樹脂の含有割合]
リグニン系樹脂は、単独使用または2種類以上併用できる。
【0081】
耐熱性の観点から、好ましくは、PEG変性リグニンが単独使用される。
【0082】
また、耐熱性の観点から、好ましくは、PEG変性リグニンのノボラック化物(PEG変性リグニン-ノボラック樹脂)が単独使用される。
【0083】
また、耐熱性の観点から、好ましくは、PEG変性リグニンのレゾール化物(PEG変性リグニン-レゾール樹脂)が単独使用される。
【0084】
さらに、密着性の観点から、好ましくは、PEG変性リグニンのレゾール化物(PEG変性リグニン-レゾール樹脂)が挙げられ、より好ましくは、PEG変性リグニンのレゾール化物(PEG変性リグニン-レゾール樹脂)の単独使用が挙げられる。
【0085】
リグニン系樹脂の含有割合は、硬化性樹脂組成物の固形分総量に対して、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上、より好ましくは、10質量%以上、さらに好ましくは、15質量%以上である。また、リグニン系樹脂の含有割合は、硬化性樹脂組成物の固形分総量に対して、例えば、95質量%以下、好ましくは、90質量%以下、より好ましくは、80質量%以下、さらに好ましくは、70質量%以下である。
【0086】
なお、硬化性樹脂組成物の固形分総量は、溶剤(後述)を除く成分の総量である。硬化性樹脂組成物の固形分総量は、好ましくは、リグニン系樹脂の質量と、反応性シランカップリング剤の質量と、後述する触媒の質量との合計を示す(以下同様)。
【0087】
(2)反応性シランカップリング剤
反応性シランカップリング剤は、少なくとも1つの反応性官能基と、少なくとも1つのアルコキシシリル基とを併有する化合物である。反応性官能基は、リグニン系樹脂の水酸基と反応可能な官能基である。反応性官能基としては、例えば、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、メルカプト基、ビニル基、スチリル基、メタクリル基、アクリル基、イソシアヌレート基、ウレイド基および酸無水物基が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用される。反応性官能基として、好ましくは、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基およびメルカプト基が挙げられ、より好ましくは、エポキシ基が挙げられる。
【0088】
すなわち、反応性官能基は、好ましくは、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基およびメルカプト基からなる群から選択される少なくとも1種を含有し、より好ましくは、エポキシ基を含有し、さらに好ましくは、エポキシ基からなる。
【0089】
反応性官能基がエポキシ基を含有する場合、反応性シランカップリング剤としては、例えば、エポキシ基含有シランカップリング剤が挙げられる。エポキシ基含有シランカップリング剤としては、例えば、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、および、3-グリシドキシプロピルエチルジエトキシシランが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。エポキシ基含有シランカップリング剤として、好ましくは、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0090】
反応性官能基がアミノ基を含有する場合、反応性シランカップリング剤としては、例えば、アミノ基含有シランカップリング剤が挙げられる。アミノ基含有シランカップリング剤としては、例えば、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、および、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシランが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0091】
反応性官能基がイソシアネート基を含有する場合、反応性シランカップリング剤としては、例えば、イソシアネート基含有シランカップリング剤が挙げられる。イソシアネート基含有シランカップリング剤としては、例えば、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0092】
反応性官能基がメルカプト基を含有する場合、反応性シランカップリング剤としては、例えば、メルカプト基含有シランカップリング剤が挙げられる。メルカプト基含有シランカップリング剤としては、例えば、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、および、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0093】
反応性シランカップリング剤は、単独使用または2種類以上併用できる。反応性シランカップリング剤として、好ましくは、エポキシ基含有シランカップリング剤が挙げられ、より好ましくは、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0094】
反応性シランカップリング剤の含有割合は、硬化性樹脂組成物の固形分総量に対して、例えば、10質量%以上、好ましくは、30質量%以上、より好ましくは、50質量%以上、さらに好ましくは、70質量%以上である。また、反応性シランカップリング剤の含有割合は、硬化性樹脂組成物の固形分総量に対して、例えば、95質量%以下、好ましくは、90質量%以下、より好ましくは、85質量%以下、さらに好ましくは、80質量%以下である。
【0095】
反応性シランカップリング剤の含有割合は、リグニン系樹脂100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、5質量部以上、より好ましくは、10質量部以上、さらに好ましくは、20質量部以上である。また、反応性シランカップリング剤の含有割合は、リグニン系樹脂100質量部に対して、例えば、100質量部以下、好ましくは、80質量部以下、より好ましくは、50質量部以下、さらに好ましくは、30質量部以下である。
【0096】
また、リグニン系樹脂中の水酸基に対する反応性シランカップリング剤中の反応性官能基の当量比(反応性官能基/水酸基)は、例えば、0.8以上、好ましくは、1.0以上である。また、リグニン系樹脂中の水酸基に対する反応性シランカップリング剤中の反応性官能基の当量比(反応性官能基/水酸基)は、例えば、100以下、好ましくは、80以下、より好ましくは、50以下である。
【0097】
とりわけ、リグニン系樹脂が、PEG変性リグニン(非ノボラック化物および非レゾール化物)である場合、リグニン系樹脂中の水酸基に対する反応性シランカップリング剤中の反応性官能基の当量比(反応性官能基/水酸基)は、さらに好ましくは、10以上、とりわけ好ましくは、30以上である。
【0098】
また、リグニン系樹脂が、PEG変性リグニンのノボラック化物(PEG変性リグニン-ノボラック樹脂)である場合、リグニン系樹脂中の水酸基に対する反応性シランカップリング剤中の反応性官能基の当量比(反応性官能基/水酸基)は、より好ましくは、1.5以上である。また、リグニン系樹脂中の水酸基に対する反応性シランカップリング剤中の反応性官能基の当量比(反応性官能基/水酸基)は、さらに好ましくは、10以下、とりわけ好ましくは、5以下である。
【0099】
また、リグニン系樹脂が、PEG変性リグニンのレゾール化物(PEG変性リグニン-レゾール樹脂)である場合、リグニン系樹脂中の水酸基に対する反応性シランカップリング剤中の反応性官能基の当量比(反応性官能基/水酸基)は、より好ましくは、1.2以上である。また、リグニン系樹脂中の水酸基に対する反応性シランカップリング剤中の反応性官能基の当量比(反応性官能基/水酸基)は、さらに好ましくは、5.0以下、とりわけ好ましくは、2.0未満、とりわけ好ましくは、1.6以下である。
【0100】
(3)触媒
硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、任意成分として、触媒を含有できる。好ましくは、硬化性樹脂組成物は、触媒を含有する。触媒としては、例えば、リグニン系樹脂の水酸基と反応性シランカップリング剤の反応性官能基との反応における反応触媒が挙げられる。
【0101】
反応触媒は、例えば、反応性官能基の種類に応じて、選択される。より具体的には、反応性官能基が、エポキシ基を含有する場合、反応触媒としては、例えば、アミン型触媒、アミド型触媒、イミダゾール型触媒、および、酸無水物型触媒が挙げられ、好ましくは、イミダゾール型触媒が挙げられる。換言すると、反応性官能基が、エポキシ基を含有する場合、硬化性樹脂組成物は、好ましくは、イミダゾール型触媒を含有する。イミダゾール型触媒としては、例えば、1-イミダゾール、1-ビニルイミダゾール、1-エチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、および、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾールが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。イミダゾール型触媒として、好ましくは、2-エチル-4-メチルイミダゾールが挙げられる。
【0102】
触媒の含有割合は、硬化性樹脂組成物の固形分総量に対して、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、0.3質量%以上、より好ましくは、0.5質量%以上である。また、触媒の含有割合は、硬化性樹脂組成物の固形分総量に対して、例えば、5質量%以下、好ましくは、2質量%以下、より好ましくは、1質量%以下である。
【0103】
触媒の含有割合は、リグニン系樹脂100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.5質量部以上、より好ましくは、1質量部以上、さらに好ましくは、2質量部以上である。また、触媒の含有割合は、リグニン系樹脂100質量部に対して、例えば、50質量部以下、好ましくは、40質量部以下、より好ましくは、30質量部以下、さらに好ましくは、20質量部以下である。
【0104】
(4)溶剤
硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、任意成分として、溶剤を含有できる。好ましくは、硬化性樹脂組成物は、溶剤を含有する。溶剤としては、特に制限されず、公知の有機溶剤が挙げられる。
【0105】
溶剤として、より具体的には、例えば、石油系炭化水素、芳香族炭化水素、エーテル、ケトン、エステル、および、非プロトン性極性溶剤が挙げられる。石油系炭化水素としては、例えば、ヘキサンおよびミネラルスピリットが挙げられる。芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエンおよびキシレンが挙げられる。エーテルとしては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランおよび2-メチルテトラヒドロフランが挙げられる。ケトンとしては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンおよびシクロヘキサノンが挙げられる。エステルとしては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、γ-ブチロラクトンおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが挙げられる。非プロトン性極性溶剤としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドンおよびピリジンが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。溶剤は、リグニン系樹脂の種類、および、反応性シランカップリング剤の種類に応じて、適宜選択される。溶剤として、好ましくは、非プロトン性極性溶剤およびエーテルが挙げられる。非プロトン性極性溶剤として、好ましくは、N,N-ジメチルアセトアミドが挙げられる。エーテルとして、好ましくは、テトラヒドロフランが挙げられる。
【0106】
溶剤の含有割合は、特に制限されないが、硬化性樹脂組成物の総量(固形分および溶剤の総量)に対して、例えば、10質量%以上、好ましくは、30質量%以上、より好ましくは、50質量%以上である。また、溶剤の含有割合は、硬化性樹脂組成物の総量(溶剤を含む。)に対して、例えば、95質量%以下、好ましくは、90質量%以下、より好ましくは、80質量%以下である。
【0107】
換言すると、硬化性樹脂組成物が溶剤を含有する場合、硬化性樹脂組成物の固形分濃度は、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上、より好ましくは、20質量%以上である。また、硬化性樹脂組成物が溶剤を含有する場合、硬化性樹脂組成物の固形分濃度は、例えば、90質量%以下、好ましくは、70質量%以下、より好ましくは、50質量%以下である。
【0108】
また、溶剤の含有割合は、リグニン系樹脂100質量部に対して、例えば、100質量部以上、好ましくは、200質量部以上、より好ましくは、300質量部以上、さらに好ましくは、500質量部以上である。また、溶剤の含有割合は、リグニン系樹脂100質量部に対して、例えば、5000質量部以下、好ましくは、3000質量部以下、より好ましくは、2000質量部以下、さらに好ましくは、1000質量部以下である。
【0109】
(5)その他の成分
硬化性樹脂組成物は、さらに、その他の樹脂を含有できる。その他の樹脂は、上記のリグニン系樹脂を除く樹脂である。その他の樹脂としては、例えば、公知の熱硬化性樹脂が挙げられ、より具体的には、例えば、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ユリア樹脂、および、不飽和ポリエステル樹脂が挙げられる。これらは単独使用または2種類以上併用することができる。その他の樹脂の含有割合は、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0110】
また、硬化性樹脂組成物は、さらに、添加剤を含有できる。添加剤としては、例えば、硬化剤、充填材、潤滑材、着色剤、可塑剤、安定剤、離型剤が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。なお、添加剤の添加のタイミングは、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。添加剤の含有割合は、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0111】
(6)硬化性樹脂組成物の製造方法
硬化性樹脂組成物の製造方法は、特に制限されない。例えば、リグニン系樹脂と、反応性シランカップリング剤とを、公知の方法で混合する。また、必要に応じて、例えば、触媒、溶剤および/または添加剤を、適宜のタイミングで配合する。これにより、硬化性樹脂組成物が製造される。
【0112】
なお、各成分の配合順序は、特に制限されない。例えば、まず、リグニン系樹脂と溶剤とを混合し、樹脂溶液を調製する。次いで、樹脂溶液に、反応性シランカップリング剤および触媒を添加し、混合する。これにより、リグニン系樹脂と、反応性シランカップリング剤と、触媒と、溶剤とを含有する硬化性樹脂組成物が得られる。
【0113】
2.硬化物
上記の硬化性樹脂組成物の硬化物は、詳しくは後述するが、有機構造(後述)および無機構造(後述)を併有する有機無機ハイブリッド材料である。硬化物は、上記の硬化性樹脂組成物を硬化させることによって、製造される。
【0114】
硬化性樹脂組成物を硬化させる方法は、特に制限されない。例えば、硬化性樹脂組成物を乾燥させ、その後、硬化性樹脂組成物の乾燥物を加熱(熱処理)する。
【0115】
乾燥条件は、特に制限されず、適宜設定される。乾燥温度は、例えば、10℃以上、好ましくは、20℃以上、より好ましくは、30℃以上である。また、乾燥温度は、例えば、50℃未満、好ましくは、45℃以下、より好ましくは、40℃以下である。また、乾燥時間は、例えば、10分以上、好ましくは、30分以上、より好ましくは、1時間以上である。また、乾燥時間は、例えば、7日間以下、好ましくは、3日間以下、より好ましくは、1日間以下である。
【0116】
加熱(熱処理)条件は、特に制限されず、適宜設定される。加熱温度は、例えば、50℃以上、好ましくは、80℃以上、より好ましくは、110℃以上である。また、加熱温度は、例えば、300℃以下、好ましくは、250℃以下、より好ましくは、200℃以下である。また、加熱時間は、例えば、10分以上、好ましくは、1時間以上、より好ましくは、2時間以上である。また、加熱時間は、例えば、24時間以下、好ましくは、12時間以下、より好ましくは、6時間以下である。
【0117】
上記の乾燥および加熱(熱処理)により、硬化性樹脂組成物の硬化物が得られる。
【0118】
より具体的には、上記の乾燥により、リグニン系樹脂の水酸基と、反応性シランカップリング剤の反応性官能基とが反応し、リグニン系樹脂に対して反応性シランカップリング剤が付加する。その結果、リグニン系樹脂と反応性シランカップリング剤とが反応してなる反応生成物が、上記の乾燥物に含有される。また、上記の乾燥により、上記の反応性シランカップリング剤に由来するアルコキシシリル基の一部が縮合し、ポリシロキサン構造(-Si-O-Si-)を形成する。
【0119】
さらに、上記の加熱(熱処理)により、リグニン系樹脂と反応性シランカップリング剤との反応が進行する。その結果、リグニン系樹脂に対する反応性シランカップリング剤の付加が、完結する。また、上記の加熱(熱処理)により、アルコキシシリル基の縮合が進行する。その結果、ポリシロキサン構造(-Si-O-Si-)の形成が完結する。つまり、硬化性樹脂組成物の乾燥および加熱(熱処理)により、硬化性樹脂組成物が架橋し、硬化物が得られる。
【0120】
つまり、上記の硬化物は、リグニン系樹脂の水酸基と、反応性シランカップリング剤の反応性官能基とが反応してなる反応生成物(有機構造)を含有する。また、上記の反応生成物が、反応性シランカップリング剤のアルコキシシリル基が縮合してなるポリシロキサン構造(無機構造)を含有する。すなわち、硬化性樹脂組成物の硬化物は、有機無機ハイブリッド材料(有機構造および無機構造を併有する材料)である。
【0121】
硬化物は、必要に応じて、公知の方法で処理されていてもよい。処理としては、例えば、エージング処理および表面コーティング処理が挙げられる。
【0122】
3.コーティング組成物およびコーティング膜
上記の硬化性樹脂組成物および上記の硬化物は、各種コーティング分野において、好適に使用される。
【0123】
より具体的には、上記の硬化性樹脂組成物は、コーティング組成物として、好適に使用される。すなわち、コーティング組成物は、上記の硬化性樹脂組成物を含有し、好ましくは、上記の硬化性樹脂組成物からなる。
【0124】
コーティング組成物(硬化性樹脂組成物)は、任意の被コート物に対して任意の方法で塗布される。塗布方法および塗布量は、目的および用途に応じて、適宜設定される。また、コーティング組成物(硬化性樹脂組成物)は、被コート物の表面において、上記の方法で乾燥および加熱(熱処理)される。これにより、コーティング組成物が硬化する。
【0125】
その結果、被コート物の表面において、上記コーティング組成物(硬化性樹脂組成物)の硬化物として、コーティング膜が形成される。すなわち、コーティング膜は、上記の硬化物を含有し、好ましくは、上記の硬化物からなる。
【0126】
4.作用効果
上記の硬化性樹脂組成物および上記のコーティング組成物において、リグニン系樹脂が、ポリエチレングリコールにより変性されたリグニンと、ポリエチレングリコールにより変性されたリグニンのノボラック化物と、ポリエチレングリコールにより変性されたリグニンのレゾール化物とからなる群から選択される少なくとも1種を含有する。そのため、上記の硬化性樹脂組成物は、優れた耐熱性を有する硬化物を製造できる。また、上記の硬化物は、優れた耐熱性を有する。
【0127】
また、上記の硬化物および上記のコーティング膜は、上記の硬化性樹脂組成物を硬化させて得られるため、優れた耐熱性を有する。
【0128】
そのため、上記の硬化性樹脂組成物およびコーティング組成物は、例えば、ガラス、金属、セラミックスおよびプラスチックの表面をコートするコーティング組成物として、好適に使用される。また、上記の硬化物およびコーティング膜は、ガラス、金属、セラミックスおよびプラスチックの表面をコートするコーティングフィルムとして、好適に使用される。とりわけ、上記の硬化性樹脂組成物、コーティング組成物、硬化物およびコーティング膜は、電気・電子材料用途、塗料用途、自動車用途および樹脂改質用途において、好適に使用される。
【0129】
5.レゾール型フェノール樹脂および硬化性樹脂組成物
上記のPEG変性リグニン-レゾール樹脂は、単独で、硬化性樹脂組成物として使用可能である。以下、PEG変性リグニン-レゾール樹脂を、単に、レゾール型フェノール樹脂と称する場合がある。
【0130】
レゾール型フェノール樹脂は、上記PEG変性リグニンと、上記フェノール類と、上記アルデヒド類とを、上記アルカリ触媒下で反応させた反応生成物を含む。好ましくは、レゾール型フェノール樹脂は、上記PEG変性リグニンと、上記フェノール類と、上記アルデヒド類とを、上記アルカリ触媒下で反応させた反応生成物からなる。レゾール型フェノール樹脂は、例えば、上記したPEG変性リグニン-レゾール樹脂の製造方法によって、得られる。
【0131】
上記のレゾール型フェノール樹脂は、反応原料として、ポリエチレングリコールにより変性されたリグニンを含んでいる。そのため、上記のレゾール型フェノール樹脂によれば、優れた密着性を有する硬化物を、製造できる。
【0132】
また、硬化性樹脂組成物は、上記のレゾール型フェノール樹脂(PEG変性リグニン-レゾール樹脂)を必須成分として含んでいればよい。例えば、硬化性樹脂組成物は、任意成分として、上記の溶剤および/または上記の添加剤を含有できる。なお、配合割合および配合タイミングは、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0133】
また、硬化性樹脂組成物は、さらに、その他の樹脂を含有できる。その他の樹脂は、上記のレゾール型フェノール樹脂を除く樹脂である。その他の樹脂としては、例えば、公知の熱硬化性樹脂が挙げられ、より具体的には、例えば、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ユリア樹脂、および、不飽和ポリエステル樹脂が挙げられる。これらは単独使用または2種類以上併用することができる。その他の樹脂の含有割合は、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0134】
上記の硬化性樹脂組成物は、各種産業分野において、広範に使用される。例えば、上記の硬化性樹脂組成物は、コーティング剤として使用可能である。
【0135】
硬化性樹脂組成物が、コーティング剤として使用される場合、硬化性樹脂組成物は、例えば、上記のレゾール型フェノール樹脂(PEG変性リグニン-レゾール樹脂)(および必要によりその他の樹脂(以下同様))と、溶剤とを含有する。
【0136】
溶剤としては、例えば、上記石油系炭化水素、上記芳香族炭化水素、上記エーテル、上記ケトン、上記エステル、および、上記非プロトン性極性溶剤が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。溶剤として、好ましくは、エーテルが挙げられ、より好ましくは、テトラヒドロフランが挙げられる。
【0137】
そして、硬化性樹脂組成物が、コーティング剤として使用される場合、上記のレゾール型フェノール樹脂(PEG変性リグニン-レゾール樹脂)が、公知の方法で、上記溶剤に溶解および/または分散する。その結果、レゾール型フェノール樹脂の溶液および/または分散液が得られる。レゾール型フェノール樹脂の溶液および/または分散液は、コーティング剤として使用される。
【0138】
レゾール型フェノール樹脂の溶液および/または分散液において、レゾール型フェノール樹脂の固形分濃度は、例えば、1~50質量%、好ましくは、10~30質量%である。
【0139】
コーティング剤の使用方法は、特に制限されない。例えば、コーティング剤を、任意の被塗物に塗布および乾燥させ、乾燥塗膜を得る。その後、乾燥塗膜を加熱硬化させ、硬化膜(コーティング膜)を得る。硬化条件は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。例えば、硬化温度(加熱温度)が、例えば、80~300℃、好ましくは、100~250℃、より好ましくは、150~200℃である。硬化時間(加熱時間)が、例えば、0.1~48時間、好ましくは、1~24時間、より好ましくは、2~12時間である。
【0140】
このようにして得られる硬化膜は、上記の硬化性樹脂組成物の硬化物である。そのため、硬化膜は、優れた密着性を有する。
【0141】
また、上記の硬化性樹脂組成物は、成形材料として使用可能である。成形材料としては、例えば、モールド成形材料が挙げられる。
【0142】
硬化性樹脂組成物が、成形材料として使用される場合、硬化性樹脂組成物は、例えば、上記のレゾール型フェノール樹脂(PEG変性リグニン-レゾール樹脂)と、上記の添加剤とを含有する。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0143】
より具体的には、硬化性樹脂組成物が、成形材料として使用される場合、例えば、レゾール型フェノール樹脂と添加剤とが、公知の方法で混合(混練)される。混練方法としては、特に制限されず、公知の混練機が使用される。混練機としては、例えば、単軸押出機、多軸押出機、ロール混練機、ニーダー、ヘンシエルミキサー、および、バンバリーミキサーが挙げられる。なお、混練条件は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0144】
そして、硬化性樹脂組成物(成形材料)は、成形品の製造に好適に用いられる。より具体的には、硬化性樹脂組成物(成形材料)は、公知の成形方法により成形される。成形条件は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。例えば、成形温度(加熱温度)が、例えば、80~300℃、好ましくは、100~250℃、より好ましくは、150~200℃である。成形時間(加熱時間)が、例えば、0.1~48時間、好ましくは、1~24時間、より好ましくは、2~12時間である。
【0145】
このようにして得られる成形物は、上記の硬化性樹脂組成物の硬化物である。そのため、成形物は、優れた密着性を有する。
【0146】
また、硬化性樹脂組成物は、含浸板における樹脂として使用可能である。硬化性樹脂組成物が、含浸板における樹脂として使用される場合、硬化性樹脂組成物は、例えば、公知の基材(例えば、紙および布)に含浸され、硬化する。硬化条件は、例えば、上記の成形条件と同じである。これにより、含浸板(基材含浸フェノール樹脂硬化物)が得られる。
【0147】
このようにして得られる含浸板は、上記の硬化性樹脂組成物の硬化物を含有する。そのため、含浸板は、優れた密着性を有する。
【実施例0148】
次に、本発明を、実施例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0149】
[A 有機無機ハイブリッド材料]
1.PEG変性リグニン
製造例1(PEG200変性リグニン)
以下の方法で、数平均分子量200のポリエチレングリコールにより変性されたリグニン(以下、PEG200変性リグニン)を製造した。
【0150】
すなわち、市販の数平均分子量200のポリエチレングリコール(以下、PEG200)230質量部と、酸触媒としての硫酸0.69質量部(100質量部のPEG200に対して、0.3質量部)を、反応容器に入れて撹拌した。次いで、絶乾スギ木粉46質量部を、反応容器に投入し、常圧下140℃に昇温して、撹拌しながら90分反応させた。次いで、反応容器を冷却し、温度が40℃以下になったことを確認した後、水酸化ナトリウム(0.2mol/L)を280質量部投入して、30分間撹拌した。次いで、得られた固形成分(パルプ)を、フィルタープレスにより除去し、溶液成分を回収した。次いで、得られた溶液成分に、硫酸を添加し、pHを2.0に調整した。これにより、PEG200変性リグニンの懸濁液を得た。その後、PEG200変性リグニンを、遠心分離により回収した。
【0151】
PEG200変性リグニンの水酸基当量を、文献「ACS Sustainable Chem. Eng. 2016, 4,2861-2868」のTable1に基づいて、算出した。その結果、PEG200変性リグニンの水酸基当量は、0.000625(mol/g)であった。
【0152】
製造例2(PEG400変性リグニン)
数平均分子量200のポリエチレングリコールに代えて、数平均分子量400のポリエチレングリコール(以下、PEG400)を用いた以外は、製造例1と同じ方法で、数平均分子量400のポリエチレングリコールにより変性されたリグニン(以下、PEG400変性リグニン)を得た。
【0153】
PEG400変性リグニンの水酸基当量を、文献「ACS Sustainable Chem. Eng. 2016, 4,2861-2868」のTable1に基づいて、算出した。その結果、PEG400変性リグニンの水酸基当量は、0.000417(mol/g)であった。
【0154】
製造例3(PEG600変性リグニン)
数平均分子量200のポリエチレングリコールに代えて、数平均分子量600のポリエチレングリコール(以下、PEG600)を用いた以外は、製造例1と同じ方法で、数平均分子量600のポリエチレングリコールにより変性されたリグニン(以下、PEG600変性リグニン)を得た。
【0155】
PEG600変性リグニンの水酸基当量を、文献「ACS Sustainable Chem. Eng. 2016, 4,2861-2868」のTable1に基づいて、算出した。その結果、PEG600変性リグニンの水酸基当量は、0.000313(mol/g)であった。
【0156】
2.PEG変性リグニン-ノボラック樹脂
製造例4(PEG200変性リグニン-ノボラック樹脂)
フェノール493.5質量部をフラスコに入れ、50℃程度まで加熱してフェノールを液化させ、その後、製造例1のPEG200変性リグニン150質量部を添加した。
【0157】
次いで、フラスコに、シュウ酸(酸触媒)7.62質量部と、パラホルムアルデヒド117.3質量部とを添加し、フラスコの内容物を95℃で2.5時間反応させた。次いで、フラスコの内容物を、0.5℃/minで110℃まで昇温し、110℃で1.5時間反応させた。次いで、フラスコの内容物を、0.5℃/minで120℃まで昇温し、120℃で2時間反応させた。
【0158】
反応後、フラスコに、2300質量部の水を添加し、フラスコの内容物を強く撹拌した。次いで、フラスコの内容物を静置し、デカンテーションによって水、シュウ酸およびフェノールを除去した。さらに、フラスコ内に水を加えながら、120℃および0.08MPaの条件で減圧蒸留し、残留フェノールを除去した。なお、減圧蒸留はフェノール残存率が1%以下になるまで繰り返した。これにより、PEG200変性リグニンのノボラック化物(PEG200リグニン-ノボラック樹脂)を得た。
【0159】
PEG200リグニン-ノボラック樹脂の水酸基当量を、文献「ACS Sustainable Chem. Eng. 2016, 4,2861-2868」のTable1に基づいて、算出した。その結果、PEG200リグニン-ノボラック樹脂の水酸基当量は、0.007254(mol/g)であった。
【0160】
製造例5~12
表1に示す配合処方に変更した以外は、製造例4と同じ方法で、PEG変性リグニン-ノボラック樹脂を得た。また、製造例4と同じ方法で、各PEG変性リグニン-ノボラック樹脂の水酸基当量を算出した。その結果を、表1に示す。
【0161】
なお、表1に示す通り、製造例4~12のPEG変性リグニン-ノボラック樹脂を、それぞれ、PEGの分子量と、配合処方とに基づいて、P200LN-1~3、P400LN-1~3、および、P600LN-1~3と称した。
【0162】
3.硬化性樹脂組成物および硬化物(1)
実施例1~12
表2に記載の処方に従って、硬化性樹脂組成物およびその硬化物を製造した。
【0163】
すなわち、1.125質量部のPEG変性リグニン(製造例1~3)、または、PEG変性リグニン-ノボラック樹脂(製造例4~12)を、22.5質量部のテトラヒドロフラン(THF、ナカライテスク製)に溶解させた。これにより、樹脂溶液を得た。
【0164】
次いで、樹脂溶液に、5.31質量部の3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(エポキシ基含有シランカップリング剤、KBM-403、信越化学工業)を添加し、さらに、0.13質量部の2-エチル-4-メチルイミダゾール(触媒、2Et4Mz、四国化成工業製)を添加し、さらに混合した。これにより、硬化性樹脂組成物を得た。
【0165】
次いで、硬化性樹脂組成物を、テフロン(登録商標)製のシャーレに入れて、40℃で24時間乾燥させた。その後、硬化性樹脂組成物の乾燥物を、150℃で2時間加熱し、硬化させた。その結果、硬化性樹脂組成物の硬化物を得た。
【0166】
実施例13~24
表3に示す配合処方に変更した以外は、実施例1と同じ方法で、硬化性樹脂組成物およびその硬化物を得た。
【0167】
4.PEG変性リグニン-レゾール樹脂
製造例13(PEG600変性リグニン-レゾール樹脂)
還流冷却器、温度計、攪拌機および滴下漏斗を備えた三つ口1Lセパラブルフラスコに141質量部(1.5モル部)のフェノールを、40℃において、仕込んだ。
【0168】
次いで、上記セパラブルフラスコに、42.3質量部のPEG600変性リグニン(製造例3)を、40℃において投入し、フラスコの内容物を攪拌した。なお、PEG600変性リグニン(製造例3)の量は、フェノール100質量部に対して30質量部であった。
【0169】
次いで、上記セパラブルフラスコに、186質量部の37%ホルマリン(ホルムアルデヒド水溶液、68.8質量部(2.3モル部)のホルムアルデヒド)を加えた。ホルムアルデヒドの配合割合は、フェノール100質量部に対して、48.8質量部であった。
【0170】
さらに、上記セパラブルフラスコに、アルカリ触媒としてのトリエチルアミンを加えて撹拌し、上記セパラブルフラスコの内容物を均一化した。なお、アルカリ触媒の添加量は、フェノール100質量部に対して、2質量部であった。
【0171】
次いで、上記セパラブルフラスコの内容物の温度を徐々に(約1時間かけて)80℃まで上げた。また、上記セパラブルフラスコの内容物を、80℃で3時間反応させた。その後、上記セパラブルフラスコ内の水をエバポレーターで除去し、上記セパラブルフラスコの内容物を、減圧乾燥させた。これにより、反応生成物として、PEG600変性リグニン-レゾール樹脂を得た。
【0172】
PEG600リグニン-レゾール樹脂の水酸基当量を、文献「ACS Sustainable Chem. Eng. 2016, 4,2861-2868」のTable1に基づいて、算出した。その結果、PEG600リグニン-レゾール系樹脂の水酸基当量は、0.007792(mol/g)であった。
【0173】
製造例14~18
表4に示す配合処方に変更した以外は、製造例13と同じ方法で、PEG変性リグニン-レゾール樹脂を得た。また、製造例13と同じ方法で、各PEG変性リグニン-レゾール樹脂の水酸基当量を算出した。その結果を、表4に示す。
【0174】
なお、表4に示す通り、製造例13~17のPEG変性リグニン-レゾール樹脂を、それぞれ、PEGの分子量と、配合処方とに基づいて、PEG600LR-1~3、P400LR-1、および、P200LR-1と称した。
【0175】
また、製造例18では、PEG変性リグニンを配合せず、フェノールとホルムアルデヒドとを反応させて、レゾール樹脂を得た。製造例18のレゾール樹脂を、PR(Pure Resol)と称した。
【0176】
5.硬化性樹脂組成物および硬化物(2)
実施例25~29
表5に示す配合処方に変更した以外は、実施例1と同じ方法で、硬化性樹脂組成物を得た。
【0177】
次いで、硬化性樹脂組成物を、テフロン(登録商標)製のシャーレに入れて、40℃で24時間乾燥させた。その後、硬化性樹脂組成物の乾燥物を、160℃で1時間加熱し、次いで、180℃で1時間加熱し、さらに、200℃で2時間加熱して、硬化させた。その結果、硬化性樹脂組成物の硬化物を得た。
【0178】
6.反応の確認
(1)IR測定
実施例1、実施例4および実施例25における各成分の反応を、以下の方法で確認した。すなわち、硬化性樹脂組成物(20℃)、硬化性樹脂組成物の乾燥物(40℃)、および、硬化性樹脂組成物の硬化物(150℃)のそれぞれのIRスペクトルを、フーリエ変換赤外分光光度計により測定した。
【0179】
[硬化性樹脂組成物(20℃)]
硬化性樹脂組成物(20℃)のIRスペクトル中に、リグニン系樹脂の水酸基に由来する吸収ピーク(3350~3400cm-1)が、観察された。
【0180】
また、硬化性樹脂組成物(20℃)のIRスペクトル中に、エポキシ基含有シランカップリング剤のエポキシ基に由来する吸収ピーク(907cm-1)が観察された。
【0181】
また、硬化性樹脂組成物(20℃)のIRスペクトル中に、エポキシ基含有シランカップリング剤のアルコキシシリル基(Si-O-CH3基)に由来する吸収ピーク(2840cm-1)が観察された。
【0182】
なお、硬化性樹脂組成物(20℃)のIRスペクトル中に、ポリシロキサン構造(-Si-O-Si-)に由来する吸収ピーク(1020cm-1および1095cm-1)は、確認されなかった。
【0183】
[硬化性樹脂組成物の乾燥物(40℃)]
硬化性樹脂組成物の乾燥物(40℃)のIRスペクトル中に、リグニン系樹脂の水酸基に由来する吸収ピーク(3350~3400cm-1)が、観察された。なお、ピーク強度は、硬化性樹脂組成物(20℃)のピーク強度よりも、低下していた。
【0184】
また、硬化性樹脂組成物の乾燥物(40℃)のIRスペクトル中に、エポキシ基含有シランカップリング剤のエポキシ基に由来する吸収ピーク(907cm-1)が観察された。なお、ピーク強度は、硬化性樹脂組成物(20℃)のピーク強度よりも、低下していた。
【0185】
また、硬化性樹脂組成物の乾燥物(40℃)のIRスペクトル中に、エポキシ基含有シランカップリング剤のアルコキシシリル基(Si-O-CH3基)に由来する吸収ピーク(2840cm-1)が観察された。なお、ピーク強度は、硬化性樹脂組成物(20℃)のピーク強度よりも、低下していた。
【0186】
さらに、硬化性樹脂組成物の乾燥物(40℃)のIRスペクトル中に、ポリシロキサン構造(-Si-O-Si-)に由来する吸収ピーク(1020cm-1および1095cm-1)が確認された。
【0187】
[硬化性樹脂組成物の硬化物(150℃)]
硬化性樹脂組成物の硬化物(150℃)のIRスペクトル中に、リグニン系樹脂の水酸基に由来する吸収ピーク(3350~3400cm-1)が、観察された。なお、ピーク強度は、硬化性樹脂組成物(20℃)のピーク強度よりも、低下していた。
【0188】
また、硬化性樹脂組成物の硬化物(150℃)のIRスペクトル中に、エポキシ基含有シランカップリング剤のエポキシ基に由来する吸収ピーク(907cm-1)が観察されなかった。つまり、エポキシ基の消失が確認された。
【0189】
また、硬化性樹脂組成物の硬化物(150℃)のIRスペクトル中に、エポキシ基含有シランカップリング剤のアルコキシシリル基(Si-O-CH3基)に由来する吸収ピーク(2840cm-1)が観察されなかった。つまり、アルコキシシリル基の消失が確認された。
【0190】
さらに、硬化性樹脂組成物の硬化物(150℃)のIRスペクトル中に、ポリシロキサン構造(-Si-O-Si-)に由来する吸収ピーク(1020cm-1および1095cm-1)が確認された。なお、ピーク強度は、硬化性樹脂組成物の乾燥物(40℃)のピーク強度よりも、増加していた。
【0191】
以上により、硬化性樹脂組成物の乾燥(40℃)および硬化(150℃)において、エポキシ基および水酸基が反応したことが確認された。また、硬化性樹脂組成物の乾燥(40℃)および硬化(150℃)において、アルコキシシリル基(Si-O-CH3基)が縮合し、ポリシロキサン構造(-Si-O-Si-)を形成したことが確認された。
【0192】
(2)電子顕微鏡撮影(SEM)および元素マッピング
実施例1、実施例4および実施例25における硬化性樹脂組成物の硬化物を、電子顕微鏡(SEM)により撮影し、元素マッピングした。撮像を観察することにより、硬化物が、相分離構造を有しておらず、均一な構造を有していることを、確認した。
【0193】
7.評価
(1)高温における貯蔵弾性率E’の維持率
各実施例において得られた硬化性樹脂組成物の硬化物の耐熱性を、以下の方法で評価した。
【0194】
すなわち、Rheogel-E4000(ユ-ビーエム社製)を使用して、硬化物の固体動的粘弾性を測定した。測定条件を、以下に示す。
【0195】
引張モード、周波数1Hz、温度範囲25℃~250℃、昇温速度2℃/分
そして、100℃における貯蔵弾性率E’100に対する、250℃における貯蔵弾性率E’の維持率(100×(E’250/E’100))を算出した。貯蔵弾性率E’の維持率が100%に近いほど、硬化物が優れた耐熱性を有すると判断した。
【0196】
また、比較例1として、特開2006-342270号公報の
図3に基づいて、従来の材料の貯蔵弾性率E’の維持率を、算出した。
【0197】
より具体的には、特開2006-342270号公報の
図3に基づいて、特開2006-342270号公報の実施例(比較例1)の材料の100℃における貯蔵弾性率E’、250℃における貯蔵弾性率E’、および、その維持率を、算出した。
【0198】
その結果、従来の材料の100℃における貯蔵弾性率E’100は、約20(Pa×108)であった。また、従来の材料の250℃における貯蔵弾性率E’250は、約2(Pa×108)であった。そして、従来の材料の貯蔵弾性率E’の維持率(100×(E’250/E’100))は、約10%であった。
【0199】
(2)密着性
実施例25~29の硬化性樹脂組成物(PEG変性リグニン-レゾール樹脂を使用、樹脂溶液)を、ガラス基材に#20のバーコーターにて塗装し、塗膜を得た。塗膜を、40℃のオーブンで24時間乾燥させ、乾燥塗膜を得た。その後、乾燥塗膜を、160℃で1時間加熱し、次いで、180℃で1時間加熱し、その後、200℃で2時間加熱した。これにより、乾燥塗膜を熱硬化させて、硬化膜を得た。
【0200】
各硬化膜の密着性を、碁盤目試験(JISK5600(1999))によって、以下の基準で評価した。結果を表5に示す。
【0201】
分類0;すべての碁盤目において、硬化膜が剥離しなかった。
分類1;カットの交差点において硬化膜の剥離が確認された。剥離した硬化膜(碁盤目)の割合は、全硬化膜(碁盤目)に対して5%未満であった。
分類2;カット線に沿って、硬化膜の剥離が確認された。剥離した硬化膜(碁盤目)の割合は、全硬化膜(碁盤目)に対して5%以上15%未満であった。
分類3;カット線に沿って、硬化膜の剥離が確認された。剥離した硬化膜(碁盤目)の割合は、全硬化膜(碁盤目)に対して15%以上35%未満であった。
分類4;カット線に沿って、硬化膜の剥離が確認された。剥離した硬化膜(碁盤目)の割合は、全硬化膜(碁盤目)に対して35%以上65%未満であった。
分類5;カット線に沿って、硬化膜の剥離が確認された。剥離した硬化膜(碁盤目)の割合は、全硬化膜(碁盤目)に対して65%以上であった。
【0202】
【0203】
【0204】
【0205】
【0206】
【0207】
[B レゾール型フェノール樹脂]
1.硬化膜
実施例30~34
表5に記載される製造例13~17のPEG変性リグニン-レゾール樹脂4.0gを、テトラヒドロフラン15mlに溶解させて、コーティング剤(PEG変性リグニン-レゾール樹脂の溶液)を得た。
【0208】
比較例2
PEG変性リグニン-レゾール樹脂に代えて、製造例18のレゾール樹脂(PR、Pure Resol)を使用した。これ以外は、実施例30と同じ方法で、コーティング剤(レゾール樹脂の溶液)を得た。
【0209】
2.評価
(1)密着性
実施例30~34および比較例2のコーティング剤を、ガラス基材に#20のバーコーターにて塗装し、塗膜を得た。塗膜を、40℃のオーブンで24時間乾燥させ、乾燥塗膜を得た。その後、乾燥塗膜を、160℃で1時間加熱し、次いで、180℃で1時間加熱し、その後、200℃で2時間加熱した。これにより、乾燥塗膜を熱硬化させて、硬化膜を得た。
【0210】
各硬化膜の密着性を、碁盤目試験(JISK5600(1999))によって、以下の基準で評価した。結果を表6に示す。
【0211】
分類0;すべての碁盤目において、硬化膜が剥離しなかった。
分類1;カットの交差点において硬化膜の剥離が確認された。剥離した硬化膜(碁盤目)の割合は、全硬化膜(碁盤目)に対して5%未満であった。
分類2;カット線に沿って、硬化膜の剥離が確認された。剥離した硬化膜(碁盤目)の割合は、全硬化膜(碁盤目)に対して5%以上15%未満であった。
分類3;カット線に沿って、硬化膜の剥離が確認された。剥離した硬化膜(碁盤目)の割合は、全硬化膜(碁盤目)に対して15%以上35%未満であった。
分類4;カット線に沿って、硬化膜の剥離が確認された。剥離した硬化膜(碁盤目)の割合は、全硬化膜(碁盤目)に対して35%以上65%未満であった。
分類5;カット線に沿って、硬化膜の剥離が確認された。剥離した硬化膜(碁盤目)の割合は、全硬化膜(碁盤目)に対して65%以上であった。
【0212】