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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177027
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】拡大表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/14 20060101AFI20241212BHJP
   G02B 17/02 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
G02C7/14
G02B17/02
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023190875
(22)【出願日】2023-11-08
(31)【優先権主張番号】112121515
(32)【優先日】2023-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】593061064
【氏名又は名称】怡利電子工業股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】陳錫勳
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087KA11
2H087TA04
2H087TA06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】近くの物体の像をズームアウトすることができ、近距離の物体に長時間にわたって焦点を合わせるために眼を使用する頻度を減らすことができる拡大表示装置を提供する。
【解決手段】拡大表示装置は、ロードフレームブラケット2に構成される拡大反射鏡モジュール1を含む。拡大反射鏡モジュールは、投影像を受け取って反射する反射シート11、および反射シートからの反射像を受け取って拡大する拡大シート12を備えている。垂直方向の焦点ぼけをもたらして、反射像を水平虚像距離よりも遠い垂直虚像距離に表示するために、反射シートが二重曲面の凸面鏡であるか、または拡大シートが二重曲面の凹面鏡であり、その結果、反射像は、眼球に投影され、垂直方向の視線像領域に焦点ぼけした像を形成し、水平方向の視線像領域に焦点の合った像を形成する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡大表示装置であって、
反射シートおよび拡大シートを備えている拡大反射鏡モジュールであって、
前記反射シートは、投影像を受け取り、その後、前記投影像を反射するように構成され、
前記拡大シートは、前記反射シートからの反射像を受け取り、その後、拡大するように構成される、
拡大反射鏡モジュールと、
ロードフレームブラケットであって、前記拡大反射鏡モジュールは、前記ロードフレームブラケットと
を備える拡大表示装置において、
垂直方向の焦点ぼけをもたらすために、前記反射シートが二重曲面の凸面鏡であるか、または前記拡大シートが二重曲面の凹面鏡であることと、
垂直虚像距離に表示された前記反射像は、水平虚像距離よりも遠いことと、
前記反射像は、眼球に投影され、垂直方向の視線像領域に焦点ぼけした像を形成し、水平方向の視線像領域に焦点の合った像を形成することと
を特徴とする、拡大表示装置。
【請求項2】
前記反射シートおよび前記拡大シートが前記投影像を続けて反射する前記水平虚像距離は、VIDhと定義されることと、前記反射シートおよび前記拡大シートが前記投影像を続けて反射する前記垂直虚像距離は、VIDvと定義されることと、垂直方向と水平方向との間での前記投影像の乱視の度合いは、αと定義されることとを特徴とする、請求項1に記載の拡大表示装置。
【請求項3】
前記反射シートおよび前記拡大シートは、両者の間にニップ角を有し、前記ニップ角は、24°~32°の範囲内であることを特徴とする、請求項1に記載の拡大表示装置。
【請求項4】
前記拡大シートと前記反射シートとの高さの比率は、1:1.2~1:1.5の範囲内であることを特徴とする、請求項1に記載の拡大表示装置。
【請求項5】
前記拡大シートは、二重曲面の凹面鏡であることと、前記拡大シートは、垂直曲率および水平曲率を有することと、前記垂直曲率は、前記水平曲率よりも大きいことと、前記反射シートは、平面鏡または凸面鏡であることとを特徴とする、請求項1に記載の拡大表示装置。
【請求項6】
前記反射シートは、二重曲面の凸面鏡であることと、前記反射シートは、垂直曲率および水平曲率を有することと、前記垂直曲率は、前記水平曲率よりも小さいことと、前記拡大シートは、凹面鏡であることとを特徴とする、請求項1に記載の拡大表示装置。
【請求項7】
前記拡大反射鏡モジュールは、2つの端部を有する反転フレームをさらに含むことと、前記反射シートは上縁を有し、前記拡大シートは下縁を有することと、前記反転フレームの一方の端部は、前記反射シートの前記上縁に接続され、前記反転フレームのもう一方の端部は、前記拡大シートの前記下縁に接続されていることとを特徴とする、請求項1に記載の拡大表示装置。
【請求項8】
前記ロードフレームブラケットは、アームセットおよび固定基台を含むことと、前記アームセットは2つの端部を有することと、前記アームセットの一方の端部は、前記拡大反射鏡モジュールに接続され、前記アームセットのもう一方の端部は、前記固定基台に接続されていることとを特徴とする、請求項1に記載の拡大表示装置。
【請求項9】
前記アームセットは、第1のアーム、第2のアーム、第1のシャフトおよび第2のシャフトをさらに含むことと、前記第1のアームは2つの端部を有し、前記第2のアームは2つの端部を有することと、前記第1のアームの一方の端部は、前記固定基台に接続され、前記第1のアームのもう一方の端部は、前記第1のシャフトに接続されていることと、前記第2のアームの一方の端部は、前記第2のシャフトに接続され、前記第2のアームのもう一方の端部は、前記第1のシャフトに接続されていることとを特徴とする、請求項8に記載の拡大表示装置。
【請求項10】
前記アームセットおよび前記固定基台は、両者の間に第3のシャフトを備えていることを特徴とする、請求項9に記載の拡大表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は拡大表示装置に関し、特に近視の進行を矯正したり制御したり遅らせたりすることが可能な拡大表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンおよびタブレットなどの電子製品の普及により、小児の近視有病率の増加は各国が直面する問題となっている。
遺伝に加えて、近距離の物体に長時間にわたって焦点を合わせるために眼を使用することも近視の主な原因の1つである。
【0003】
図1を参照して説明する。近視を制御する方法は多数あるが、一般に有効であると考えられている方法の1つは、周辺ぼけの矯正眼鏡を装用することである。
眼鏡のレンズ91(近視の周辺ぼけレンズ)の中心曲率は装用者の視力に応じて誂えられるため、中間位置の視線は網膜(すなわち焦点領域921)で焦点が合い、装用者ははっきりと見えるようになる。
レンズの周辺領域の微細構造は、曲率を小さく形成するため、焦点距離が長くなり、その結果、視線は網膜の前方(すなわち周辺の焦点ぼけした領域922)で焦点が合うため、視線の像93は、早くに焦点が合う。
焦点ぼけした像がレンズの周辺領域の辺りにある場合、レンズの中心にある像のみが鮮明になり、装用者の視界はさらに集中し、周辺の焦点ぼけした像は装用者の生活に影響を及ぼさない。
【0004】
近視の予防および制御に関する近視の周辺ぼけの効果は、動物(類人猿)の実験から導かれ、良好な結果を得ている。
医学研究によれば、網膜には焦点を合わせる現象がある。視線の焦点が網膜の前方で合うと、網膜は前方に動く傾向があり、それによって眼軸の成長が妨げられるが、眼軸の成長は、恒久的な近視となる主な生理学的変化である。
【0005】
もう一つの方法は、角膜矯正レンズを装用することである。
角膜矯正レンズは、同様の原理を利用して近視の進行を抑制することができる。
ハードコンタクトレンズを夜間就寝時に装用し、レンズの形状を利用して角膜中心部を圧迫し、角膜中心部に一時的な物理的変形を生じさせる。
装用者が日中にハードコンタクトレンズを外した後、鮮明な視界が1~2日間持続する。
短期間の鮮明な視界を得られるだけでなく、近視の進行を遅らせることができる理由は、整形レンズが角膜の中心部分のみを整形し、周辺の角膜部は引き続き元の近視状態を維持しているからであり、その結果、周辺の視線は網膜の前方で焦点が合う。
【0006】
角膜矯正レンズには近視の進行を遅らせる効果があり、このことは、近視の周辺ぼけに近視の進行を遅らせる効果があることを間接的に証明することでもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、近くの物体の像をズームアウトすることができ、近距離の物体に長時間にわたって焦点を合わせるために眼を使用する頻度を減らすことができる拡大表示装置を提供する。また、本拡大装置の使用時は、垂直方向の焦点ぼけの効果が発揮されて、眼軸の成長を遅らせ、近視の予防および制御を達成する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の拡大表示装置は、眼球に近い表示装置ではない。代わりに、垂直方向の焦点ぼけを利用し、それによって視線の半分は網膜で焦点が合い、残りの半分は網膜の前方で焦点が合うようにして、垂直方向の焦点ぼけの効果を部分的に達成し、拡大表示装置の垂直虚像距離を拡大表示装置の水平虚像距離よりも大幅に長くすることができる。
眼球が水平虚像に焦点を合わせると、視線像は網膜で焦点が合い、眼球が垂直虚像に焦点を合わせると、垂直視線像は網膜の前方で焦点が合う。
【0009】
本発明は、ロードフレームブラケットに構成された拡大反射鏡モジュールを含む拡大表示装置を対象とする。
拡大反射鏡モジュールは、反射シートおよび拡大シートを含む。
反射シートは、投影された像を受け取り、その後、投影された像を反射するように構成される。
拡大シートは、反射シートから反射像を受け取り、その後、拡大するように構成される。
垂直方向の焦点ぼけをもたらして、反射像を水平虚像距離よりも遠い垂直虚像距離に表示できるように、反射シートが二重曲面の凸面鏡であるか、または拡大シートが二重曲面の凹面鏡である。
反射像は、眼球に投影され、垂直方向の視線像領域に焦点ぼけした像を形成し、水平方向の視線像領域に焦点の合った像を形成する。
【0010】
何らかの実施形態では、反射シートおよび拡大シートが投影像を続けて反射する水平虚像距離をVIDhと定義する。
反射シートおよび拡大シートが投影像を続けて反射する垂直虚像距離をVIDvと定義する。
垂直方向と水平方向との間での投影像の乱視の度合いをαと定義する。
【0011】
何らかの実施形態では、反射シートと拡大シートとの間のニップ角は、24°~32°の範囲内である。
【0012】
何らかの実施形態では、拡大シートと反射シートとの高さの比率は、1:1.2~1:1.5の範囲内である。
【0013】
何らかの実施形態では、拡大シートは、二重曲面の凹面鏡である。拡大シートは、垂直曲率が水平曲率よりも大きく設けられている。ここでの反射シートは、平面鏡または凸面鏡である。
【0014】
何らかの実施形態では、反射シートは、二重曲面の凸面鏡である。反射シートは、垂直曲率が水平曲率よりも小さく設けられている。ここでの拡大シートは、凹面鏡である。
【0015】
何らかの実施形態では、拡大反射鏡モジュールは、反転フレームをさらに含む。
反転フレームの一方の端部は、反射シートの上縁に接続され、反転フレームのもう一方の端部は、拡大シートの下縁に接続されている。
【0016】
何らかの実施形態では、ロードフレームブラケットは、アームセットおよび固定基台を含む。
アームセットの一方の端部は、拡大反射鏡モジュールに接続され、アームセットのもう一方の端部は、固定基台に接続されている。
【0017】
何らかの実施形態では、アームセットは、第1のアーム、第2のアーム、第1のシャフトおよび第2のシャフトをさらに含む。
第1のアームの一方の端部は、固定基台に接続され、第1のアームのもう一方の端部は、第1のシャフトに接続されている。
第2のアームの一方の端部は、第2のシャフトに接続され、第2のアームのもう一方の端部は、第1のシャフトに接続されている。
【0018】
何らかの実施形態では、アームセットおよび固定基台は、両者の間に第3のシャフトを備えている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】周辺ぼけ制御レンズの概略図である。
図2】本発明の何らかの実施形態による拡大表示装置の構造の概略図である。
図3a】使用中の拡大表示装置の概略図である。
図3b】使用中の拡大表示装置の概略図である。
図4】拡大表示装置の光路の概略図である。
図5】拡大シートと反射シートの角度配置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態、構造および効果をより明確に説明するために、実施形態には以下の図面を添えている。
【0021】
図2図5を参照して説明する。本発明は、ロードフレームブラケット2に構成された拡大反射鏡モジュール1を含む拡大表示装置の一実施形態を提供する。
【0022】
ロードフレームブラケット2は、アームセット21および固定基台22を含む。
アームセット21と固定基台22は、第3のシャフト215で接続されている。
アームセット21の一方の端部は、拡大反射鏡モジュール1に接続され、アームセット21のもう一方の端部は、固定基台22に接続されている。
アームセット21は、第1のアーム211、第2のアーム212、第1のシャフト213、および第2のシャフト214を含む。
第1のアーム211の一方の端部は、固定基台22に接続され、第1のアーム211のもう一方の端部は、第1のシャフト213に接続されている。
第2のアーム212の一方の端部は、第2のシャフト214に接続され、第2のアーム212のもう一方の端部は、第1のシャフト213に接続され、第2のシャフト214を拡大反射鏡モジュール1に接続できる。
【0023】
拡大反射鏡モジュール1は、反射シート11、拡大シート12および反転フレーム13を含む。
反転フレーム13の一方の端部は、反射シート11の上縁に接続され、反転フレーム13のもう一方の端部は、拡大シート12の下縁に接続されている。
何らかの実施形態では、反射シート11は、投影像を受け取り、その後、投影像を反射する役割を果たす。
何らかの実施形態では、拡大シート12は、反射シート11から反射像を受け取って表示し、その後、反射像を拡大する役割を果たす。
【0024】
何らかの実施形態では、反射シート11は、二重曲面の凸面鏡であり、反射シート11の垂直曲率は、反射シート11の水平曲率より小さく、ここでの拡大シート12は凹面鏡である。
何らかの実施形態では、拡大シート12は、二重曲面の凹面鏡であり、拡大シート12の垂直曲率は、拡大シート12の水平曲率より大きく、ここでの反射シート11は、平面鏡または凹面鏡であり、反射像を眼球に投影して垂直方向の視線像領域に焦点ぼけした像を形成でき、反射像を眼球に投影して水平方向の視線像領域に焦点の合った像を形成できる。
本発明の説明では、図3aおよび図3bに示したように、拡大シート12、二重曲面の凹面鏡を一例として挙げている。
【0025】
前述した二重曲率とは、垂直軸15に沿った曲率および6に沿った曲率が使用者に対して個別に規定されることを意味し、水平軸と同一線上にある(または水平軸に近い)反射像は、網膜32上で焦点が合う。
したがって、反射像の半分は、硝子体34の視線像33を形成し、網膜32上で焦点が合い、残りの半分は、網膜32の前で焦点が合う。換言すると、拡大シート12の一部は、垂直方向に焦点ぼけする効果を達成する。
【0026】
前述した垂直方向の焦点ぼけとは、垂直軸15上の反射像の虚像距離が、水平軸16上の反射像の虚像距離よりも著しく遠いことを意味する。
眼球の焦点が水平軸16上の虚像距離にあるとき、視線像331は、(図3aに示したように)網膜32上で焦点を合わせて焦点の合った像を形成し、硝子体34の結像位置(垂直方向の視線像領域31)にある垂直軸15の視線像311は、(図3bに示したように)網膜32の前方で焦点が合って焦点ぼけした像を形成する。
【0027】
人間の眼が物体像の結像を調整する方式は、輻輳反射と結晶調整に分けることができる。
両眼の輻輳効果により、人間の眼は、視覚的な印象に関して単一の像を生成する。両眼が合うとき、両眼の視線はニップ角を形成する。
遠くの物体を観察するとき、両眼間の輻輳のニップ角は小さくなる。
近くの物体を観察するとき、両眼間の輻輳のニップ角は大きくなる。結晶調整とは、両眼の結晶を個別に焦点調整することである。
遠くの物体を観察するとき、結晶は薄くなり、近くの物体を観察するとき、結晶は厚くなり、異なる距離の視線を網膜32上で焦点を合わせることができる。
輻輳反射と結晶調整は同時に行われる。通常、結晶は、輻輳のニップ角に応じて結像の焦点距離を調整する。
両眼は、水平方向の異なる位置にあるため、輻輳反射は、水平方向の視覚距離のみに関係し、よって水平方向の視線像網膜32上で焦点が合う。
【0028】
図4を参照されたい。拡大シート12が凹面鏡で、反射シート12が凸面鏡である場合、結像ズームアウトの計算式は以下の通りである。
【0029】
拡大シート12の虚像結像の式は、以下の凹面鏡結像原理に従う。
【0030】
式中、f1は焦点距離、q1は像距離、p1は物体距離である。
【0031】
反射シート11の結像の式は、以下の凸面鏡結像原理に従う。
【0032】
式中、f2は焦点距離、q2は物体距離、p1は像距離である。
式中、p1=y+q2およびp2=xである。
【0033】
反射シート12が平面鏡である場合、f2は∞であり、虚像距離の式は以下の通りである。
【0034】
像距離q1は、反射シート11の焦点距離f2と拡大シート12の焦点距離f1との水平曲率を用いて計算され、水平虚像距離VIDhと等しい。像距離q1は、反射シート11の焦点距離f2と拡大シート12の焦点距離f1との垂直曲率を用いて計算され、垂直虚像距離VIDv、すなわち垂直方向の視線像領域31と網膜32との間の距離と等しい。
【0035】
拡大表示装置の垂直方向の視線像領域31は、網膜32上ではなく網膜32の前方で焦点が合う。垂直方向の視線像領域31が網膜32から遠すぎる場合、眼に入る像は、垂直方向でぼやけ、水平線は(乱視のように)ぼやけるため、視覚的な品質を維持するには水平焦点距離からは限られた距離しか離れていないが、垂直方向の焦点ぼけ効果を発揮するには距離が十分に大きい必要がある。
【0036】
垂直軸と水平軸との焦点距離の差によって生じる乱視の度合いを測定するには、一般に以下の値αを用いて測定する。
【0037】
式中、VIDhは水平虚像距離(メートル)、VIDvは垂直虚像距離(メートル)であり、VIDhおよびVIDvは、ズームアウトの計算式を用いて計算できる。
【0038】
光学系では、α≦0.13であれば基本的に乱視は観察されないが、垂直方向の焦点ぼけ距離は比較的短く(垂直視線と網膜32との距離)、網膜32の前方約0.07mmで焦点が合う。αは以下の式を満たすとしてよい。
0.07≦α≦0.13
【0039】
本発明は、VIDvの値がVIDhよりも大きく、それによって垂直倍率が水平倍率よりも大きい実施形態を提供する。
この時点で、ミラーの中の物体の像が引き上げられ、アスペクト比の歪みが生じる。
アスペクト比の歪みの問題を回避するには、拡大シート12と反射シート11との間のニップ角を調整する必要がある。
何らかの実施形態では、拡大シート12と反射シート11との間のニップ角が大きいほど、ミラーの中の像のアスペクト比は小さくなり、その逆も同様である。
一般に、反射シート11と拡大シート12との間のニップ角は、24°~32°の範囲内である(図5を参照)。
【0040】
ミラーの中のアスペクト比の歪みは、拡大シート12と反射シート11との間のニップ角aが大きくなるように調整することで補償されるが、拡大シート12と反射シート11との間のニップ角が大きくなると、拡大シート12で観察される反射シート11の高さは低くなり、垂直方向の視野を無駄にすることになるため、反射シート11の高さと拡大シート12の高さの比率を大きくする必要があり、この比率は一般に1:1.2~1:1.5の範囲内である。
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5