(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017704
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】水耕栽培用パネル及び水耕栽培設備
(51)【国際特許分類】
A01G 31/00 20180101AFI20240201BHJP
A01G 9/02 20180101ALI20240201BHJP
【FI】
A01G31/00 611Z
A01G9/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120525
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】596026578
【氏名又は名称】サイデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】高橋 将平
(72)【発明者】
【氏名】柴田 秀樹
【テーマコード(参考)】
2B314
2B327
【Fターム(参考)】
2B314NA08
2B314NA23
2B314NA29
2B314NA33
2B314NA40
2B314ND06
2B314ND13
2B314ND15
2B314ND16
2B314ND32
2B314PB02
2B327NC02
2B327NC24
2B327ND01
2B327NE09
2B327QA05
2B327QB03
2B327QD02
2B327RA11
2B327SA22
2B327UA13
2B327UA15
2B327UA21
2B327UA23
(57)【要約】
【課題】耐久性に優れ、製造コストが低く、複数連ねた状態での移動が容易な水耕栽培用パネルを提供する。
【解決手段】水耕栽培設備10は、複数の水耕栽培用パネル1と、培養液をためた容器4と、を備えている。各水耕栽培用パネル1は、同一形状、同一サイズの2枚のパネル2,3が上側パネル2及び下側パネル3として上下に重ねられて用いられている。上側パネル2は白色系の合成樹脂で構成され、下側パネル3は黒色系の合成樹脂で構成されている。2枚のパネル2,3は、水平方向に反転した状態で連結部23,33を除く部分が上下に重ねられている。一の水耕栽培用パネル1の上側パネル2の連結部23と、一の水耕栽培用パネル1に隣接する他の水耕栽培用パネル1の下側パネル3の連結部33と、が上下に重ねられることで、一の水耕栽培用パネル1と他の水耕栽培用パネル1とが連結される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一形状、同一サイズの2枚のパネルが上側パネル及び下側パネルとして上下に重ねられて用いられる水耕栽培用パネルであって、
前記各パネルは、平坦な板部と、前記板部から下側に突出した植物保持部と、当該パネルの一端側のみに設けられかつ前記板部から下側に突出した連結部と、を有し、
前記2枚のパネルは、水平方向に反転した状態で前記連結部を除く部分が上下に重ねられ、
一の水耕栽培用パネルの前記上側パネルの前記連結部と、前記一の水耕栽培用パネルに隣接する他の水耕栽培用パネルの前記下側パネルの前記連結部と、が上下に重ねられることで、一の水耕栽培用パネルと他の水耕栽培用パネルとが連結される
ことを特徴とする水耕栽培用パネル。
【請求項2】
前記上側パネルは白色系の合成樹脂で構成され、前記下側パネルは黒色系の合成樹脂で構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の水耕栽培用パネル。
【請求項3】
前記連結部が先細りテーパ形状である
ことを特徴とする請求項1に記載の水耕栽培用パネル。
【請求項4】
前記各パネルは、上から見て矩形状に形成され、一の辺近傍に前記連結部が設けられ、前記一の辺と交差した一対の辺近傍それぞれに、上側に突出したリブが設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の水耕栽培用パネル。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載された水耕栽培用パネルと、前記水耕栽培用パネルがセットされて培養液が供給される容器と、を備えた水耕栽培設備であって、
前記容器の互いに対向する一対の側壁それぞれに、水平方向に延びた水平壁が設けられており、
前記水耕栽培用パネルの前記各パネルは、上から見て矩形状に形成され、一の辺近傍に前記連結部が設けられており、
前記水耕栽培用パネルは、前記一の辺と交差した一対の辺近傍が前記一対の水平壁の上に載せられることで前記容器にセットされる
ことを特徴とする水耕栽培設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水耕栽培用パネル及び水耕栽培設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
培養液をためた水槽(栽培ベッドとも呼ばれる)にパネルを浮かべて、該パネルに保持された植物を育てる水耕栽培が知られている。この水耕栽培用パネルは、主に発泡スチロールが用いられているが、発泡スチロールは、高圧洗浄時に割れ・欠け等の破損が発生し易く、耐久性に問題があった。
【0003】
上記問題を解消するものとして、プラスチックシートの成形品である上側シートと下側シートを貼り合わせた中空構造の水耕栽培用パネルが提案されている(例えば特許文献1を参照)。しかしながら、この水耕栽培用パネルは、上側シートと下側シートをそれぞれの専用金型で製造する工程、上側シートと下側シートを接着する工程等を経て製造されることから、製造コストが高くなってしまうという問題があった。また、上側シートと下側シートの接着箇所が剥離することがあり、依然として耐久性に問題があった。
【0004】
また、上記発泡スチロール板の水耕栽培用パネルや、上記上側シートと下側シートを貼り合わせた中空構造の水耕栽培用パネルは、パネル自体に厚みがあるため、保管の際に嵩張り収納効率が悪く、栽培設備の規模が大きくなってしまうという問題があった。
【0005】
その他、上述した水耕栽培用パネルを用いた水耕栽培設備においては、複数の水耕栽培用パネルが非連結状態で水槽に並べられているだけなので、これらパネルを移動・回収する際は、パネル毎に移動させる必要があり作業性が悪いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記問題を鑑みて、本発明は、耐久性に優れ、製造コストが低く、複数連ねた状態での移動が容易な水耕栽培用パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、同一形状、同一サイズの2枚のパネルが上側パネル及び下側パネルとして上下に重ねられて用いられる水耕栽培用パネルであって、前記各パネルは、平坦な板部と、前記板部から下側に突出した植物保持部と、当該パネルの一端側のみに設けられかつ前記板部から下側に突出した連結部と、を有し、前記2枚のパネルは、水平方向に反転した状態で前記連結部を除く部分が上下に重ねられ、一の水耕栽培用パネルの前記上側パネルの前記連結部と、前記一の水耕栽培用パネルに隣接する他の水耕栽培用パネルの前記下側パネルの前記連結部と、が上下に重ねられることで、一の水耕栽培用パネルと他の水耕栽培用パネルとが連結されることを特徴とする水耕栽培用パネルである。
【0009】
本発明は、上記水耕栽培用パネルと、前記水耕栽培用パネルがセットされて培養液が供給される容器と、を備えた水耕栽培設備であって、前記容器の互いに対向する一対の側壁それぞれに、水平方向に延びた水平壁が設けられており、前記水耕栽培用パネルの前記各パネルは、上から見て矩形状に形成され、一の辺近傍に前記連結部が設けられており、前記水耕栽培用パネルは、前記一の辺と交差した一対の辺近傍が前記一対の水平壁の上に載せられることで前記容器にセットされることを特徴とする水耕栽培設備である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐久性に優れ、製造コストが低く、複数連ねた状態での移動が容易な水耕栽培用パネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる水耕栽培用パネルを備えた水耕栽培設備の斜視図である。
【
図4】
図1の一の水耕栽培用パネルと他の水耕栽培用パネルとの連結構造の説明図である。
【
図5】
図1の水耕栽培用パネルの植物保持部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態にかかる「水耕栽培用パネル」及び「水耕栽培設備」について、
図1~5を参照して説明する。
【0013】
図1に示す水耕栽培設備10は、複数の水耕栽培用パネル1と、培養液をためた容器4と、を備えている。
図1においては、容器4が途中で途切れているが、実際の容器4は、水耕栽培用パネル1の並び方向にさらに延びている。また、水耕栽培用パネル1は2つのみ図示されているが、実際には2つ以上が連結されて容器4にセットされている。
【0014】
各水耕栽培用パネル1は、
図2,3に示すように、同一形状、同一サイズの2枚のパネル2,3が上側パネル2及び下側パネル3として上下に重ねられて用いられている。上側パネル2は白色系の合成樹脂で構成され、下側パネル3は黒色系の合成樹脂で構成されており、材料は異なっているが、これらは1種類の金型で製造可能である。
【0015】
各パネル2,3は、平坦な板部21,31と、板部21,31から下側に突出した複数の植物保持部22,32と、当該パネル2,3の一端側のみに設けられかつ板部21,31から下側に突出した連結部23,33と、板部21,31から上側に突出したリブ24,34と、各植物保持部22,32を囲むように設けられた溝25,35と、を有している。
【0016】
板部21,31、即ち各パネル2,3は、上から見て矩形状に形成されている。本例では、短辺と長辺とを有する矩形状に形成されている。
【0017】
連結部23,33は、各パネル2,3の一の短辺近傍に設けられており、当該短辺方向に延びている。連結部23,33は、
図4に示すように、中空の先細りテーパ形状であり、各パネル2,3の短辺と平行な断面が矩形状、各パネル2,3の長辺と平行な断面が二等辺三角形状である。即ち、連結部23,33は、板部21,31から下方に凹に窪んでおり、下方に向かうにしたがって細くなっている。
【0018】
リブ24,34は、各パネル2,3の一対の長辺近傍それぞれに設けられており、当該長辺方向に延びている。リブ24,34は、板部21,31から上方に凹に窪んだ中空形状である。
【0019】
植物保持部22,32は、
図5に示すように、上端及び下端が開口した円筒形状である。植物保持部22,32に保持された植物は、根が下方に向かって伸びていき、茎が上方に向かって伸びていく。植物保持部22,32は、本例では、下方に向かうにしたがって徐々に径が小さくなるように形成されている。本例以外に、下端に底壁が設けられ、底壁に植物の根を通すための貫通孔が形成された構成であってもよい。
【0020】
溝25,35は、板部21,31から下方に凹に窪んでいる。この溝25,35と上記リブ24,34は、本発明の必須の構成ではないが、各パネル2,3の剛性を向上させるのに有効である。
【0021】
このような上側パネル2及び下側パネル3は、水平方向に反転した状態で連結部23,33を除く部分が上下に重ねられて水耕栽培用パネル1を構成する。即ち、板部21,31同士が上下に重ねられ、植物保持部22,32同士が上下(ほぼ内外)に重ねられ、リブ24,34同士が上下に重ねられ、溝25,35同士が上下に重ねられる。そして、上側パネル2の連結部23が水耕栽培用パネル1の一端側に位置し、下側パネル3の連結部33が水耕栽培用パネル1の他端側に位置する。
【0022】
また、複数の水耕栽培用パネル1は、連結部23と連結部33とが上下に重ねられることで連結される。即ち、
図4に示すように、一の水耕栽培用パネル1の上側パネル2の連結部23と、一の水耕栽培用パネル1に隣接する他の水耕栽培用パネル1の下側パネル3の連結部33と、が上下に重ねられることで、一の水耕栽培用パネル1と他の水耕栽培用パネル1とが連結される。この際、連結部23を上、連結部33を下にすることが好ましい。
【0023】
容器4は、
図1に示すように、対向する一対の側壁41それぞれに、水平方向に延びた水平壁42が設けられている。一対の側壁41同士の間隔は、水耕栽培用パネル1の短辺の長さとほぼ等しい。水平壁42は、容器4の全域にわたって延びている。このような容器4において、培養液は、液面が水平壁42よりも低い位置となるように注がれる。
【0024】
複数の水耕栽培用パネル1は、上述したように連結された状態で容器4にセットされる。また、各水耕栽培用パネル1は、一対の長辺近傍(リブ24,34の裏側近傍)が一対の水平壁42の上に載せられることで容器4にセットされる。これら複数の水耕栽培用パネル1を移動・回収する際は、先頭に位置する水耕栽培用パネル1を引っ張ってもよいし、最後尾に位置する水耕栽培用パネル1を押し出してもよいし、中間に位置する水耕栽培用パネル1を引っ張る又は押し出してもよい。
【0025】
本発明の水耕栽培用パネル1は、高圧洗浄に十分に耐え得る耐久性を有している。また、各パネル2,3は重ねられているだけで接着はされていないので、容易に組み立て・分解ができる。これら2種類のパネル2,3は材料の変更だけで1種類の金型で製造可能なため低コスト化が図れる。また、上側パネル2の色は光を反射し易い白色系であるため光合成・発育を促すことができ、下側パネル3の色は光を透過し難い黒色系であるため容器4内での藻の発生を抑制することができる。
【0026】
また、各パネル2,3に設けた連結部23,33で複数の水耕栽培用パネル1を連結することで複数の水耕栽培用パネル1の移動・回収を容易に行うことができ、作業を効率化できる。また、水耕栽培用パネル1の連結部分を上下に重ねる構造として隙間を無くすことで、水耕栽培用パネル1の下に光が差し込まないようにできる(
図4参照。
図4の複数の矢印は光を表している。)。
【0027】
また、本発明の水耕栽培設備10は、水耕栽培用パネル1を培養液に浮かばせるのではなく、水耕栽培用パネル1の縁を容器4の水平壁42に載せる構成としているので、水耕栽培用パネル1に浮力を持たせる必要がない。よって、各パネル2,3に薄い材料を使うことができ、パネル2,3自体の重量、重ねた際の総高さを抑え、保管スペースや設備全体のダウンサイジングが可能となる。
【0028】
また、上述した実施形態では、容器4に培養液をためる構成であったが、本発明においては、これ以外に、容器4にセットされた水耕栽培用パネル1の下面側に培養液が霧状に噴霧される構成であってもよい。
【0029】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0030】
1 水耕栽培用パネル
2 上側パネル
3 下側パネル
4 容器
21,31 板部
22,32 植物保持部
23,33 連結部
24,34 リブ
41 側壁
42 水平壁