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特開2024-177051電動液圧アクチュエーター、及びブレーキ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177051
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】電動液圧アクチュエーター、及びブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/18 20060101AFI20241212BHJP
   F15B 11/028 20060101ALI20241212BHJP
   F15B 11/042 20060101ALI20241212BHJP
   F15B 11/08 20060101ALI20241212BHJP
   B60T 13/138 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
F15B15/18
F15B11/028 A
F15B11/042
F15B11/08 A
B60T13/138 A
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024016498
(22)【出願日】2024-02-06
(31)【優先権主張番号】P 2023095586
(32)【優先日】2023-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000227755
【氏名又は名称】日本アイキャン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】春日 紀重
(72)【発明者】
【氏名】梅澤 政男
(72)【発明者】
【氏名】安永 隆弘
【テーマコード(参考)】
3D048
3H081
3H089
【Fターム(参考)】
3D048AA10
3D048HH15
3D048HH18
3D048HH34
3D048HH37
3D048HH39
3D048HH58
3H081AA01
3H081BB02
3H081BB14
3H081CC18
3H089CC06
3H089DA02
3H089DA14
3H089DB03
3H089DB07
3H089GG02
(57)【要約】
【課題】電磁弁を用いずに液圧アクチュエーター内の作動流体を確実に排出することができる電動液圧アクチュエーターを提供する。
【解決手段】モーター3を動力とするポンプ7、第1状態となるように付勢されつつ第1状態と第2状態とを往復運動する液圧アクチュエーター5、リザーバー4、液圧アクチュエーターを液圧で制御する流体回路を備え、流体回路は、流体をポンプから液圧アクチュエーターに供給する加圧用流路201、流体を液圧アクチュエーターからアンロードバルブ61を介してリザーバーへ排出させる排出用流路300、加圧用流路の途上で分岐してアンロードバルブにパイロット圧に加圧された流体を供給するパイロット流路301、ポンプの動作中にパイロット圧を発生させる機構27、流体をポンプから液圧シリンダーへの方向にのみ通過させる逆止弁26を備え、ポンプが動作すると第2状態に移行し、ポンプが停止すると第1状態に復帰する。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転動力を出力するモーターと、
前記モーターの回転動力によって動作するポンプと、
前記ポンプにより加圧された作動流体によって動作する液圧アクチュエーターと、
前記作動流体を蓄積するリザーバーと、
前記液圧アクチュエーターの動作を液圧により制御するための流体回路と、
を備え、
前記液圧アクチュエーターは、供給される前記作動流体の液圧に応じて第1動作状態と第2動作状態との間で往復運動するとともに、常時第1動作状態に復帰する方向に付勢されており、
前記流体回路は、
前記ポンプにより加圧された前記作動流体を液圧アクチュエーターに供給するための加圧用流路と、
前記液圧アクチュエーターと前記リザーバーとをアンロードバルブを介して開閉自在に連絡させる減圧用流路と、
前記減圧用流路を閉止させるために、前記アンロードバルブにパイロット圧に加圧された作動油を供給するパイロット流路と、
前記パイロット圧を発生させるパイロット圧発生機構と、
前記加圧用流路の途上に介在して前記ポンプから前記液圧アクチュエーターに向かう順方向にのみ前記作動流体を通過させるための逆止弁と、
を含み、
前記パイロット圧発生機構は、前記ポンプの動作中に前記パイロット圧を発生し、
前記パイロット流路は、前記加圧用流路における前記ポンプから前記逆止弁に至る途上で分岐して前記アンロードバルブに至り、
前記ポンプの動作中に前記パイロット圧が発生して前記第2動作状態に移行し、前記ポンプが停止すると前記パイロット圧が消失して前記減圧用流路が開通し、前記第1動作状態に復帰する、
電動液圧アクチュエーター。
【請求項2】
請求項1に記載の電動液圧アクチュエーターであって、
前記ポンプから前記液圧アクチュエーターに至る前記加圧用流路の途上に前記パイロット圧発生機構を構成する絞り機構と、前記逆止弁とがこの順に配置されてなる、
電動液圧アクチュエーター。
【請求項3】
請求項2に記載の電動液圧アクチュエーターであって、前記絞り機構はオリフィスである、電動液圧アクチュエーター。
【請求項4】
請求項1に記載の電動液圧アクチュエーターであって、
前記逆止弁が前記パイロット圧発生機構を兼ね、
前記逆止弁は、前記ポンプから供給される作動流体が所定のパイロット圧以上であるときに当該作動流体を前記液圧アクチュエーターの方向に送出する、
電動液圧アクチュエーター。
【請求項5】
請求項1に記載の電動液圧アクチュエーターであって、
前記パイロット圧発生機構は、親弁と子弁とからなるアンロードリリーフバルブと、絞り機構とで構成され、
前記親弁は、絞り弁を内蔵し、前記パイロット流路に接続される親弁一次ポートと、前記リザーバーに連絡する流路に接続される親弁二次ポートと、前記絞り弁を介して前記親弁一次ポートに連絡する親弁パイロットポートとを有するとともに、所定の方向を上下方向として、前記親弁一次ポートにおける液圧によって上方に付勢される親弁スプールと、当該親弁スプールを下方に付勢する親弁スプリングとを有し、
前記子弁は、前記親弁パイロットポートに接続される子弁一次ポートと、前記絞り機構を介して前記リザーバーに連絡する流路に接続される子弁二次ポートと、前記逆止弁から前記液圧アクチュエーターに至る流路に接続される子弁パイロットポートとを有するとともに、所定の方向を上下方向として、前記子弁一次ポートにおける液圧により上方に付勢される弁体と、前記子弁パイロットポートにおける液圧により上方に付勢される子弁スプールと、前記弁体を下方に付勢する子弁スプリングとを有し、
前記子弁は、P2>P3として、前記子弁一次ポートにおける液圧P1を、前記弁体を上方に押圧する液圧P2と、前記子弁スプールを下方に押圧する液圧P3とに分散させるとともに、前記液圧P1が所定のカットアウト圧力になると、前記弁体が一方向に押圧されて前記子弁一次ポートと前記子弁二次ポートとが開通してアンロード状態となり、
前記親弁は、前記子弁のアンロード状態に伴って減圧した前記親弁パイロットポート側の前記液圧P1と、前記親弁一次ポート側の液圧P5との差圧により、前記親弁スプールが上方に押圧されて親弁一次ポートと親弁二次ポート間が開通してアンロード状態となり、
前記子弁がアンロード状態になると、前記子弁パイロットポートにおける液圧P4により、当該アンロード状態が維持され、
前記親弁と前記子弁とがともにアンロード状態になると、前記絞り機構の通過抵抗によって発生する前記液圧P1と前記親弁スプリングが前記親弁スプールを下方に付勢することで発生する液圧とによって前記液圧P5が前記パイロット圧に維持されるとともに、前記液圧P4により前記液圧アクチュエーターが前記第2動作状態に維持される、
電動液圧アクチュエーター。
【請求項6】
請求項5に記載の電動液圧アクチュエーターであって、
前記アンロードリリーフバルブは、作動流体の流路が形成されてなる金属ブロックに、前記親弁と前記子弁とが取り付けられてなる一体的なユニットであり、
前記親弁と前記子弁は、前記金属ブロックに対して着脱可能に構成されたカートリッジである、
電動液圧アクチュエーター。
【請求項7】
請求項6に記載の電動液圧アクチュエーターであって、前記金属ブロック内に形成された流路の途上に前記絞り機構が介在して、前記ユニットが前記パイロット圧発生機構を構成している、電動液圧アクチュエーター。
【請求項8】
請求項1に記載の電動液圧アクチュエーターであって、
前記流体回路は、前記パイロット流路から分岐しつつ絞り機構を経て前記リザーバーに至る流路を備え、
前記絞り機構は、前記ポンプの動作時において、前記パイロット圧発生機構による流路抵抗よりも高い流路抵抗を有するとともに、前記ポンプの停止時において、前記加圧用流路における前記ポンプから前記パイロット圧発生機構に至る流路と、前記パイロット流路とに残留する作動流体による残圧を解消する、
電動液圧アクチュエーター。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の電動液圧アクチュエーターであって、
前記液圧アクチュエーターは直動式の液圧アクチュエーターであり、
直動式の前記液圧アクチュエーターのピストンが下死点にあるときに前記第1動作状態となり、
前記ピストンが上死点にあるときに前記第2動作状態となり、
前記ピストンは、ピストンロッドの先端に接続された外部機構により下死点となる方向に付勢されている、
電動液圧アクチュエーター。
【請求項10】
請求項1~8のいずれかに記載の電動液圧アクチュエーターであって、
前記液圧アクチュエーターは直動式の液圧アクチュエーターであり、
直動式の前記液圧アクチュエーターのピストンが下死点にあるときに前記第1動作状態となり、
前記ピストンが上死点にあるときに前記第2動作状態となり、
前記ピストンを常時下死点方向に付勢するスプリング機構を備える、
電動液圧アクチュエーター。
【請求項11】
請求項9に記載の電動液圧アクチュエーターを備えたブレーキ装置であって、
円板状のブレーキディスクの両面に対してブレーキライニングを押圧又は離隔させる制動機構を備え、
前記制動機構は、制動状態となる方向に常時付勢されており、
前記電動液圧アクチュエーターが、前記第2動作状態にあるときに前記ブレーキディスクに対する制動状態が解除され、前記第1動作状態にあるときに前記ブレーキディスクが制動状態になる、
ブレーキ装置。
【請求項12】
請求項10に記載の電動液圧アクチュエーターを備えたブレーキ装置であって、
円板状のブレーキディスクの両面に対してブレーキライニングを押圧又は離隔させる制動機構を備え、
前記制動機構は、前記第2動作状態にあるときに前記ブレーキディスクに対する制動状態が解除され、前記第1動作状態にあるときに前記ブレーキディスクが制動状態になる、
ブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動液圧アクチュエーター、及びブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動液圧アクチュエーターは、モーターによって動作するポンプ(インペラポンプ、ギヤポンプ等)と、ポンプによって加圧された作動流体(作動油等)によって動作する液圧アクチュエーターと、流体回路とを備える。流体回路は、ポンプ、リザーバー、及び液圧油圧アクチュエーターのそれぞれを相互に接続する作動流体の流路と、流路の途上に介在してリザーバーに蓄積された作動流体を液圧アクチュエーターに供給して液圧アクチュエーターを作動させたり、作動状態にある液圧アクチュエーターから作動流体をリザーバーへ向けて排出させたりするための弁機構とを備える。
【0003】
なお、電動液圧アクチュエーターとしては、液圧アクチュエーターに油圧シリンダーを用いた電動油圧シリンダーがよく知られている。電動油圧シリンダーが備える流体回路(油圧回路)は、モーターの動力により動作するポンプと、油圧回路の適所に設置された弁機構とを制御し、例えば、リザーバー、ポンプ、油圧シリンダーの順に作動流体である作動油の流路を形成し、油圧シリンダーのシリンダーチューブ内に作動油を充填し、ピストンを押し上げる。なお、ピストンロッドの先端には、動作対象となる何らかの他の機構が連結されて、他の機構の動作が電動油圧シリンダーの動作に連動する。また、ピストンは、他の機構による復元力や、電動油圧シリンダーが備えるスプリング等の機構(以下、「付勢機構」と言うことがある。)によって、押し下げられる方向に常時付勢されており、油圧回路によりシリンダーチューブ内への作動油の供給が停止されるとともに、シリンダーチューブ内とリザーバーとを連絡する流路が形成されると、付勢機構によりピストンが押し下げられる。
【0004】
電動油圧シリンダーは、例えば、電動押上機ブレーキに用いられる。電動油圧シリンダーは、電動押上機ブレーキにおいて、電動油圧シリンダーを通電状態にしてピストンロッドが押し上げられると、ドラムブレーキやディスクブレーキ等の制動機構が、ブレーキパッドを開放するように動作する。制動機構は、スプリング等によって制動状態に復帰する方向に常時付勢されており、電動油圧シリンダーの電源を切ると油圧シリンダー内の作動油が排出されるとともに、制動機構の付勢力によりブレーキパッドがブレーキドラムやブレーキディスクに押し当てられる。それにより、ブレーキ装置が制動状態となる。そして、電動押上機ブレーキに用いられる電動油圧シリンダーの油圧回路は、電磁弁とその制御回路とを備え、流路の適所に配置された電磁弁を開閉制御することで、油圧シリンダーに作動油を充填したり、充填された作動油をリザーバーに戻したりするための流路を形成する。
【0005】
なお、電動油圧押上機ブレーキに用いられる電動油圧シリンダーについては、例えば、以下の特許文献1や特許文献2に「電気液圧式ブレーキ解除装置」として開示されている。また、以下の特許文献3には「電動液圧アクチュエーター」、及びその電気液圧アクチュエーターを備えた「ディスクブレーキ装置」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6322699号公報
【特許文献2】特許第6353036号公報
【特許文献3】特許7262870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的に、電動液圧アクチュエーターが備える流体回路では、作動流体の流路の適所に電磁弁が配置されている。流体回路は、適宜な電磁弁が開閉制御されることで、ポンプによって加圧された作動流体を液圧アクチュエーターに導くための流路と、液圧アクチュエーターから作動流体を強制的に排出させてリザーバーに戻すための流路とを素早く切り替えることができる。このように、電磁弁は、流体回路を高速かつ高精度に動作させることができる。
【0008】
しかしながら、電磁弁は電気を必要とするため、電気の供給が停止した場合には油圧回路が正常に動作できない。また電磁弁は、周囲の電気的ノイズによって誤動作する可能性もある。そのため、電動液圧アクチュエーターを電動押上機ブレーキに用いる場合には、停電時や電磁弁が誤動作したときであっても、アクチュエーター内の作動流体を確実に排出するように動作するような何らかの安全機構を備えた流体回路が必要となる。非常時に安全機構が確実を動作するように日常的な保守点検も必要となる。したがって、電動液圧アクチュエーターは、電磁弁を備えた流体回路により、設置コストや保守に掛かるコストが増大し易い。
【0009】
さらに、電磁弁に対して長時間にわたって通電し続けたり、高頻度で動作を繰り返させたりする場合には、消費電力が大きくなる。消費電力が大きくなれば、ランニングコストが増加する。また、電動液圧アクチュエーターにおいて、電磁弁は、モーターとは異なり、作動流体に直接接触することから、消費電力の増大による発熱により作動流体の粘度を低下させ、液圧アクチュエーターの動作に必要な液圧が得られなくなる可能性がある。発熱対策として冷却機構等を電動液圧アクチュエーターに設ければ、電動液圧アクチュエーターの小型化が難しくなるとともに、電動液圧アクチュエーターをより安価に提供することが難しくなる。
【0010】
そこで、本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、電磁弁を用いずにアクチュエーター内の作動流体を確実に排出することができる流体回路を備えた電動液圧アクチュエーター、及び当該電動液圧アクチュエーターを備えたブレーキ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明は、
回転動力を出力するモーターと、
前記モーターの回転動力によって動作するポンプと、
前記ポンプにより加圧された作動流体によって動作する液圧アクチュエーターと、
前記作動流体を蓄積するリザーバーと、
前記液圧アクチュエーターの動作を液圧により制御するための流体回路と、
を備え、
前記液圧アクチュエーターは、供給される前記作動流体の液圧に応じて第1動作状態と第2動作状態との間で往復運動するとともに、常時第1動作状態に復帰する方向に付勢されており、
前記流体回路は、
前記ポンプにより加圧された前記作動流体を液圧アクチュエーターに供給するための加圧用流路と、
前記液圧アクチュエーターと前記リザーバーとをアンロードバルブを介して開閉自在に連絡させる減圧用流路と、
前記減圧用流路を閉止させるために、前記アンロードバルブにパイロット圧に加圧された作動油を供給するパイロット流路と、
前記パイロット圧を発生させるパイロット圧発生機構と、
前記加圧用流路の途上に介在して前記ポンプから前記液圧アクチュエーターに向かう順方向にのみ前記作動流体を通過させるための逆止弁と、
を含み、
前記パイロット圧発生機構は、前記ポンプの動作中に前記パイロット圧を発生し、
前記パイロット流路は、前記加圧用流路における前記ポンプから前記逆止弁に至る途上で分岐して前記アンロードバルブに至り、
前記ポンプの動作中に前記パイロット圧が発生して前記第2動作状態に移行し、前記ポンプが停止すると前記パイロット圧が消失して前記減圧用流路が開通し、前記第1動作状態に復帰する、
電動液圧アクチュエーターである。
【0012】
前記ポンプから前記液圧アクチュエーターに至る前記加圧用流路の途上に前記パイロット圧発生機構を構成する絞り機構と、前記逆止弁とがこの順に配置されてなる、電動液圧アクチュエーターとすることもできる。前記絞り機構をオリフィスとしてもよい。
【0013】
前記逆止弁が前記パイロット圧発生機構を兼ね、
前記逆止弁は、前記ポンプから供給される作動流体が所定のパイロット圧以上であるときに当該作動流体を前記液圧アクチュエーターの方向に送出する、
電動液圧アクチュエーターとすることもできる。
【0014】
前記パイロット圧発生機構は、親弁と子弁とからなるアンロードリリーフバルブと、絞り機構とで構成され、
前記親弁は、絞り弁を内蔵し、前記パイロット流路に接続される親弁一次ポートと、前記リザーバーに連絡する流路に接続される親弁二次ポートと、前記絞り弁を介して前記親弁一次ポートに連絡する親弁パイロットポートとを有するとともに、所定の方向を上下方向として、前記親弁一次ポートにおける液圧によって上方に付勢される親弁スプールと、当該親弁スプールを下方に付勢する親弁スプリングとを有し、
前記子弁は、前記親弁パイロットポートに接続される子弁一次ポートと、前記絞り機構を介して前記リザーバーに連絡する流路に接続される子弁二次ポートと、前記逆止弁から前記液圧アクチュエーターに至る流路に接続される子弁パイロットポートとを有するとともに、所定の方向を上下方向として、前記子弁一次ポートにおける液圧により上方に付勢される弁体と、前記子弁パイロットポートにおける液圧により上方に付勢される子弁スプールと、前記弁体を下方に付勢する子弁スプリングとを有し、
前記子弁は、P2>P3として、前記子弁一次ポートにおける液圧P1を、前記弁体を上方に押圧する液圧P2と、前記子弁スプールを下方に押圧する液圧P3とに分散させるとともに、前記液圧P1が所定のカットアウト圧力になると、前記弁体が一方向に押圧されて前記子弁一次ポートと前記子弁二次ポートとが開通してアンロード状態となり、
前記親弁は、前記子弁のアンロード状態に伴って減圧した前記親弁パイロットポート側の前記液圧P1と、前記親弁一次ポート側の液圧P5との差圧により、前記親弁スプールが上方に押圧されて親弁一次ポートと親弁二次ポート間が開通してアンロード状態となり、
前記子弁がアンロード状態になると、前記子弁パイロットポートにおける液圧P4により、当該アンロード状態が維持され、
前記親弁と前記子弁とがともにアンロード状態になると、前記絞り機構の通過抵抗によって発生する前記液圧P1と前記親弁スプリングが前記親弁スプールを下方に付勢することで発生する液圧とによって前記液圧P5が前記パイロット圧に維持されるとともに、前記液圧P4により前記液圧アクチュエーターが前記第2動作状態に維持される、
電動液圧アクチュエーターとすることもできる。
【0015】
前記アンロードリリーフバルブは、作動流体の流路が形成されてなる金属ブロックに、前記親弁と前記子弁とが取り付けられてなる一体的なユニットであり、前記親弁と前記子弁は、前記金属ブロックに対して着脱可能に構成されたカートリッジである、電動液圧アクチュエーターとすることもできる。前記金属ブロック内に形成された流路の途上に前記絞り機構が介在して、前記ユニットが前記パイロット圧発生機構を構成していてもよい。
【0016】
前記流体回路は、前記パイロット流路から分岐しつつ絞り機構を経て前記リザーバーに至る流路を備え、
前記絞り機構は、前記ポンプの動作時において、前記パイロット圧発生機構による流路抵抗よりも高い流路抵抗を有するとともに、前記ポンプの停止時において、前記加圧用流路における前記ポンプから前記パイロット圧発生機構に至る流路と、前記パイロット流路とに残留する作動流体による残圧を解消する、
電動液圧アクチュエーターとすることもできる。
【0017】
上記いずれかに記載の電動液圧アクチュエーターであって、前記液圧アクチュエーターは直動式の液圧アクチュエーターであってもよい。そして、直動式の前記液圧アクチュエーターのピストンが下死点にあるときに前記第1動作状態となり、前記ピストンが上死点にあるときに前記第2動作状態となり、前記ピストンは、ピストンロッドの先端に接続された外部機構により下死点となる方向に付勢されている、電動液圧アクチュエーターとしてもよい。直動式の前記液圧アクチュエーターのピストンが下死点にあるときに前記第1動作状態となり、前記ピストンが上死点にあるときに前記第2動作状態となり、前記ピストンを常時下死点方向に付勢するスプリング機構を備える、電動液圧アクチュエーターとすることもできる。
【0018】
本発明の範囲には、液圧アクチュエーターを直動式の液圧アクチュエーターとした電動液圧アクチュエーターを備えたブレーキ装置も含まれており、当該ブレーキ装置は、円板状のブレーキディスクの両面に対してブレーキライニングを押圧又は離隔させる制動機構を備え、前記制動機構は、制動状態となる方向に常時付勢されており、前記電動液圧アクチュエーターが、前記第2動作状態にあるときに前記ブレーキディスクに対する制動状態が解除され、前記第1動作状態にあるときに前記ブレーキディスクが制動状態になる、ブレーキ装置である。
【0019】
液圧アクチュエーターを直動式の液圧アクチュエーターとした電動液圧アクチュエーターを備えたブレーキ装置は、円板状のブレーキディスクの両面に対してブレーキライニングを押圧又は離隔させる制動機構を備え、前記制動機構は、前記第2動作状態にあるときに前記ブレーキディスクに対する制動状態が解除され、前記第1動作状態にあるときに前記ブレーキディスクが制動状態になる、ブレーキ装置とすることもできる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、電磁弁を用いずにアクチュエーター内の作動流体を確実に排出することができる流体回路を備えた電動液圧アクチュエーター、及び当該電動液圧アクチュエーターを備えたブレーキ装置が提供される。その他の効果については、以下の記載で明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A】実施例に係る電動液圧アクチュエーターの外観を示す図である。
図1B】実施例に係る電動液圧アクチュエーターの筐体内の構成を示す図である。
図2図1Aにおけるa-a矢視断面図であり、実施例に係る電動液圧アクチュエーターの内部構造を示す図である。
図3A】実施例に係る電動液圧アクチュエーターを構成するポンプの外観を示す図である。
図3B】実施例に係る電動液圧アクチュエーターを構成するポンプの内部構造を示す図である。
図4】実施例に係る電動液圧アクチュエーターの油圧回路を示す図である。
図5A】上記油圧回路を構成するアンロードバルブの概略構造を示す図であり、アンロードバルブの内部流路が開通している状態を示している。
図5B】上記油圧回路を構成するアンロードバルブの概略構造を示す図であり、アンロードバルブの内部流路が閉止されている状態を示している。
図6】実施例に係る電動液圧アクチュエーターの油圧回路の第1の変形例を示す図である。
図7】実施例に係る電動液圧アクチュエーターの油圧回路の第2の変形例を示す図である。
図8】第2の変形例における油圧回路を構成するアンロードリリーフバルブの親弁の動作を説明するための図である。
図9】第2の変形例における油圧回路を構成するアンロードリリーフバルブの子弁の動作を説明するための図である。
図10】第2の変形例における油圧回路の動作を説明するためのタイミングチャートである。
図11】第2の変形例において、カートリッジで構成された上記親弁と上記子弁が金属ブロックに取り付けられてなる上記アンロードリリーフバルブのユニットを示す図である。
図12】上記アンロードリリーフバルブのその他の例を示す図である。
図13】実施例に係る電動液圧アクチュエーターに用いることが可能なスプリングを内蔵した油圧シリンダーの概略構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施例について、以下に添付図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明に用いた図面において、同一、又は類似の部分に同一の符号を付して重複する説明を省略することがある。図面によっては説明に際して不要な符号を省略することもある。
【0023】
===実施例===
<電動液圧アクチュエーター>
本発明の一実施形態として、液圧アクチュエーターに直動式の液圧アクチュエーターである油圧シリンダーを用いた電動油圧シリンダーを挙げる。図1Aは、第1の実施例に係る電動液圧アクチュエーター(以下、「スラスター1」と言うことがある。)の外観を示す図であり、図1Bは、スラスター1の筐体内の構成を示す図である。図1Aに示したように、スラスター1は、角筒状の外観形状を有し、一方の端面に自身を他の機器等に固定するためのクレビス11が取り付けられている。他端側には、内蔵する油圧シリンダーのピストンロッド52の先端側が軸方向に往復運動可能に突出している。ピストンロッド52の先端には、当該スラスター1の動作に連動させる機構(以下、「外部機構」と言うことがある。)に接続されるヘッド12が取り付けられている。また、ヘッド12には外部機構を取り付けるための孔19が形成されている。
【0024】
ピストンロッド52の往復運動方向を上下方向とし、当該ピストンロッド52がスラスター1の上方に突出していることとしてスラスター1における上下の各方向を規定すると、スラスター1は、上下方向を厚さ方向とした扁平角筒状の金属ブロック2を介して上方の構造体と下方の構造体とが接続された全体構造を有する。スラスター1の上方の構造体は、その金属ブロック(以下、「接続ブロック2」と言うことがある。)と、中空角筒状のカバー(以下、「上カバー13」と言うことがある。)と、ピストンロッド52の挿通孔14を備えた金属プレート(以下、「上蓋プレート15」と言うことがある。)とによって構成される筐体(以下、「上側筐体」と言うことがある)内にスラスター1を構成する部材や機構が収納されてなる。下方の構造体は、接続ブロック2と、中空角筒状のカバー(以下、「下カバー16」と言うことがある。)と、クレビス11が取り付けられた金属プレート(以下、「ベースプレート17」と言うことがある。)とからなる筐体(以下、「下側筐体」と言うことがある。)を備え、この下側筐体内にもスラスター1を構成する部材や機構が収納されてなる。
【0025】
図1Bに示したように、スラスター1の下側筐体内には、モーター3が設置されている。接続ブロック2とベースプレート17とは、取付ボルト18を介して接続されており、取付ボルト18が締結されることで、接続ブロック2とベースプレート17との間に下側カバーが狭持されて下側筐体が形成される。上側筐体は、接続ブロック2と上蓋プレート15とを接続する取付ボルト18が締結されて、接続ブロック2とベースプレート17との間に上側カバーが狭持されることで形成される。
【0026】
上側筐体内の空間は、概ね、作動油が充填されるリザーバー4で占有される。リザーバー4は、接続ブロック2の上面と、中空角筒状の上カバー13と同軸に内接する中空円筒状のリザーバーケース41と、上蓋プレート15の下面とによって形成された閉鎖空間によって形成される。実施例に係るスラスター1では、リザーバー4内に、作動油の流路が形成された円柱状の金属ブロック(以下、「マニフォールドブロック6」と言うことがある。)、油圧シリンダー5、油圧回路の適所に配置される各種バルブ(61,62)等が収納されている。また、油圧シリンダー5のハウジングとなるシリンダーチューブ51の下端側や各種バルブ(61,62)がマニフォールドブロック6の上面に取り付けられている。さらに、マニフォールドブロック6の内部に形成された空間にはポンプが設置されている。
【0027】
図2に、スラスター1の内部構造を示した。図2は、図1Aにおけるa-a矢視断面図である。なお、図2では、スラスター1の内部構造が理解し易いように、スラスター1の一部をハッチングによって示した。以下、図2に基づいて、スラスター1の構成や構造について説明する。
【0028】
下側筐体内には、モーター3が中空円筒状のモーターケース32に覆われた状態で配置されている。モーターシャフト31は上下方向に回転軸を有してモーターケース32から上方に突出している。モーターシャフト31の下端は、ベースプレート17に設けられたボールベアリングを用いた軸受け33によって軸支されている。
【0029】
接続ブロック2には、上面と下面とを連絡する孔(以下、「連絡孔21」と言うことがある。)が形成され、この連絡孔21内にモーターシャフト31の上端側が挿通されている。接続ブロック2の内部には、ボールベアリングを用いたモーターシャフト31の軸受け22が組み込まれているとともに、油圧回路に含まれる流路の一部が形成されている。
【0030】
本実施例において、ポンプ7は外接ギヤポンプであり、モーターシャフト31の先端は、接続ブロック2内において、ポンプの駆動軸71の先端と連結部材23を介して接続されている。このように、当該接続ブロック2は、自身に対して上方と下方のそれぞれの構造体を相互に接続する機能を担っている。なお、接続ブロック2やマニフォールドブロック6内の流路は、図2において点線楕円の領域100内に例示したように、無垢の金属ブロックに外方から孔(以下、「加工孔」と言うことがある。)を形成し、加工孔の開口をプラグで封止することで形成される。
【0031】
上側筐体内に収納されている中空円筒状のリザーバーケース41の上端と下端は、接続ブロック2の上面及び上蓋プレート15の下面に当接しつつOリング等によってシールされている。それによって、密閉空間からなるリザーバー4が形成される。
【0032】
リザーバー4内に配置される円柱状のマニフォールドブロック6は、接続ブロック2に取り付けられ、内部に作動油の流路やポンプ7の収納空間66が形成されている。マニフォールドブロック6の上面には、単胴式の油圧シリンダー5の下端側が挿入される円形の凹部63が形成され、この凹部63の底部に内部の流路に連絡する開口(以下、「凹部開口64」と言うことがある。)が形成され、油圧シリンダー5のシリンダーチューブ51の下端にはこの凹部開口64を介して作動油を流入出させるポート54が設けられている。また、マニフォールドブロック6の上面には内部の流路と連絡しているとともに、バルブ(61,62)が取り付けられる開口65が形成されている。また、マニフォールドブロック6の適宜な面に、流路内の作動油をリザーバー4内に戻すための開口(以下、「排出口」と言うことがある。)が形成されている。第1の実施例に係るスラスター1ではマニフォールドブロック6の側面に各バルブ(61,62)のそれぞれに対応する排出口(図1B、符号68a,68b)が形成されている。そして、バルブ(61,62)がマニフォールドブロック6に取り付けられると、バルブ(61,62)の弁機構が、マニフォールドブロック6内の所定の流路に介在するように設置される。
【0033】
マニフォールドブロック6の下面側には、円筒状にくり抜かれてなるポンプ7の収納空間66が形成されている。ポンプ7は接続ブロック2に取り付けられつつ、当該収納空間66内に配置される。ポンプ7は、上下方向と直交する側方に作動油の吸入口72が開口し、この開口に継ぎ手パイプ73を介してベルマウス74が取り付けられている。なお、ベルマウス74の開口端には、作動油中の異物等をろ過するサクションフィルタ75が取り付けられている。そして、円柱状のマニフォールドブロック6の側面には矩形状に切りかかれてなる開口部67が形成されている。この開口部67は、ポンプ7の収納空間66に連絡し、ポンプ7のベルマウス74を、リザーバー4内にて当該マニフォールドブロック6の外方に露出させる。
【0034】
図3A図3Bにポンプ7の構造を示した。図3Aは、ポンプ7の外観を示す図であり、図3Bはポンプ7の内部構造を示す図である。図3Aに示したように、ポンプ7の駆動軸71は、筐体(以下、「ポンプケース171」と言うことがある。)の下面に形成された軸孔174を介して下方に突出している。また、ポンプケース171の下面には、作動油の吐出口172が開口している。さらに、ポンプケース171には、上下方向に貫通して、自身を接続ブロック2に取り付けるためのボルトの挿通孔173も形成されている。
【0035】
図3Bに示したように、ポンプケース171は、ギヤ(175a,175b)の収納空間が形成されたケース本体171aと、当該ケース本体171aの下面側を覆うカバー部171bとで構成され、ケース本体171aとカバー部171bとはボルト等によって一体的に組み付けられている。
【0036】
ケース本体171a内には、駆動軸71を軸支するギヤ(以下、駆動ギヤ175a)と、駆動ギヤ175aに噛合するギヤ(以下、従動ギヤ175b)とが内蔵されている。駆動ギヤ175aと従動ギヤ175bとが噛合する領域には、吸入口72に連絡する圧力室(以下、「吸入側圧力室176a」と言うことがある。)と、吐出口172に連絡する圧力室(以下、「吐出側圧力室176b」と言うことがある。)とが形成されている。そして、ポンプ7は、駆動ギヤ175aが下方から見て反時計回りに回転すると、吸入口72から吸入側圧力室176aに送り込まれた作動油が、吐出側圧力室176b側に送り出されるとともに、この吐出側圧力室176bを経て吐出口172から吐出される。
【0037】
図2に戻り、スラスター1において、ポンプ7は、接続ブロック2の上面にボルト(図示せず)によって固定されている。接続ブロック2の上面において、ポンプ7の吐出口172に対応する位置には、自身の内部に形成された流路の一端となる作動油の流入口24が開口している。流路の他端は、接続ブロック2の上面において作動油の流出口25として開口している。マニフォールドブロック6が接続ブロック2に取り付けられると、接続ブロック2における上記流出口25の位置にマニフォールドブロック6における作動油の流入口が対応し、接続ブロック2における流路とマニフォールドブロック6における流路とが接続される。なお、接続ブロック2における作動油の流出口25には逆止弁(以下、「チェックバルブ26」と言うことがある。)が取り付けられて、ポンプ7から吐出された作動油がマニフォールドブロック6側の流路から接続ブロック2側の流路へ逆流しないようになっている。なお、以上のスラスター1における基本的な構成は、ほぼ、上記特許文献3に記載された電動液圧アクチュエーターと同様であるが、実施例に係るスラスター1の油圧回路では、電磁弁がなく、油圧によって動作する弁機構を用いて油圧シリンダーの動作を制御している。そして、スラスター1が備える電動部品はモーター3のみとなっている。以下に、実施例に係るスラスター1が備える油圧回路の構成と、その油圧回路によるスラスターの動作とを説明する。
【0038】
<油圧回路の構成>
図4に実施例に係るスラスター1の油圧回路図を示した。図4に示したように、油圧回路は、ピストン53を押し上げるために、ポンプ7によって加圧された作動油をシリンダーチューブ51のポート54に案内する流路(以下、「加圧用流路201」と言うことがある)と、ピストン53を上死点で維持しつつ、シリンダーチューブ51内を所定の油圧(例えば、50bar)となるように調整するための流路(以下、「圧力調整用流路202」と言うことがある。)と、ポンプ7によって加圧されたシリンダーチューブ51内の作動油を強制的にリザーバー4に向けて排出させるための流路(以下、「減圧用流路203」と言うことがある。)とを有する。なお、実施例に係るスラスター1では、ピストン53が、ピストンロッド52先端のヘッド12に接続された外部機構、あるいはスラスター1に付帯するスプリング等の付勢機構50により常時下方に付勢されていることとする。
【0039】
本実施例において、圧力調整用流路202は、シリンダーチューブ51のポート54から加圧用流路201の一部を兼用しつつリリーフバルブ62への分岐点60までの流路202aと、当該分岐点60からリリーフバルブ62に至る流路202bと、当該リリーフバルブ62からリザーバー4に至る流路203cとにより構成されている。図1B図2に示したように、リリーフバルブ62の本体は、マニフォールドブロック6に取り付けられている。リリーフバルブ62は、作動油が入力される一次ポート621と入力した作動油が排出される二次ポート622とを備え、一次ポート621がシリンダーチューブ51のポート54側に接続され、二次ポート622がリザーバー4に接続されている。
【0040】
減圧用流路203は、シリンダーチューブ51内の作動油を、アンロードバルブ61を介してリザーバー4に戻すための流路である。なお、実施例に係るスラスター1の油圧回路に用いられるアンロードバルブ61は、パイロットポート613に流入する作動油が所定の油圧(例えば、5bar)以上になると、シリンダーチューブ51のポート54から作動油が流入される一次ポート611と、一次ポート611に流入した作動油の流出口となる二次ポート612との間の流路を閉止するように動作する。そして、アンロードバルブ61は、パイロットポート613に流入する作動油の油圧に応じて一次ポート611と二次ポート612との間の流路を開閉する。
【0041】
図5A図5Bにアンロードバルブの概略構造を示した。なお、図5A図5Bは、マニフォールドブロック6に設置されている状態のアンロードバルブ61を示しており、図5Aは、一次ポート611と二次ポート612との間の流路(以下、「内部流路」と言うことがある。)が開通しているアンロード状態を示しており、図5Bは、内部流路が閉止されているロード状態を示している。
【0042】
図5A図5Bに示したように、アンロードバルブ61は、中空円筒状の筐体610内に液密状態で筒軸617方向に摺動可能な円筒状の弁体614が収納されてなる。そして、筐体610の側面に開口する一次ポート611と二次ポート612とが中空の筐体610の内部に連絡している。また、中空筒状の筐体610の一方の端面には、パイロットポート613が開口している。他方の端面側の内方には雌ねじが形成されている。パイロットポート613には、内部流路の開閉を制御するための油圧(図中、白抜き矢印)が印加され、雌ねじには、内部流路を閉止させるのに必要な油圧(以下、「パイロット圧」と言うことがある。)を調整するための調圧ネジ615が螺着されている。より具体的には、筒軸617方向を上下方向とし、パイロットポート613が筐体610の下端に設けられていることとしてアンロードバルブ61における上下の各方向を規定すると、調圧ネジ615の下端と円筒状の弁体614の上端との間にスプリング616が配置されており、調圧ネジ615のねじ込み量を調整することでパイロット圧を調整することができるようになっている。もちろん、パイロット圧が可変設定不能に固定されているアンロードバルブを用いてもよい。
【0043】
円筒状の弁体614の側面には、筒軸617周りに周回しつつ、筒軸617方向に幅広の溝618が形成されておいる。それにより、溝618の形成領域では弁体614の側面と筐体610の内面とが離隔し、溝618の形成領域外では弁体614の側面と筐体610の内面とが密着する。そして、パイロットポート613における油圧がパイロット圧よりも低いときには、図5Aに示したように、調圧ネジ615と弁体614との間に介在するスプリング616の付勢力により弁体614が下方に移動し、幅広の溝618が一次ポート611と二次ポート612との間に跨がる位置となり、一次ポート611と二次ポート612との間の内部流路が開通する。それにより、図5Aにおいて黒塗りの矢印で示したように、シリンダーチューブ51内の作動油がアンロードバルブ61を経てリザーバー4に向けて排出される。
【0044】
一方、パイロットポート613における油圧がパイロット圧以上であるときは、図5Bに示したように、スプリング616の付勢力に抗して弁体614が上方に移動し、溝618の形成領域外にある弁体614の側面が、二次ポート612の開口領域を包含する領域にて筐体610の内面と密着し、内部流路が閉止される。
【0045】
そして、本実施例では、アンロードバルブ61の本体がマニフォールドブロック6に取り付けられており、当該マニフォールドブロック6内には、減圧用流路203の一部となる、油圧シリンダー5からアンロードバルブ61の一次ポート611に至る流路(203a~203c)と、二次ポート612からリザーバー4に連絡する流路203dとが形成されている。また、減圧用流路203の一部として、接続ブロック2内に形成された流路203eに接続されつつパイロットポート613に連続する流路203fが形成されている。なお、以下では、減圧用流路203において、油圧シリンダー5のポート54からアンロードバルブ61の内部流路を経てリザーバー4に至る流路(203a~203d)を排出用流路300と称し、ポンプ7からアンロードバルブ61のパイロットポート613に至る流路(203e,203f)をパイロット流路301と称することとする。
【0046】
加圧用流路201は、接続ブロック2における流入口24からチェックバルブ26を経て流出口25に至る流路201aと、マニフォールドブロック6において、当該流出口25に接続されて油圧シリンダー5のポート54に至る流路201bとで構成されている。接続ブロック2内の流路201aの途上には、ポンプ7からポート54に向かう順方向に向かって、作動油の流量を調整するための絞り機構27と、油圧シリンダー5からの作動油の逆流を防止し、順方向にのみ作動油を通過させるためのチェックバルブ26とがこの順に配置されている。本実施例では、絞り機構27は、固定絞りであるオリフィスであり、この絞り機構27は、パイロット圧を発生させるための機構(以下、パイロット圧発生機構20と言うことがある。)として機能している。
【0047】
そして、接続ブロック2内の加圧用流路201aにおいて、ポンプ7から絞り機構27に至る流路は、分岐点121にて分岐し、その分岐した接続ブロック2内の流路203eと、当該流路203eに接続されてマニフォールドブロック6内にてアンロードバルブ61のパイロットポート613に至る流路203fが上述のパイロット流路301となる。
【0048】
<スラスターの動作>
次に、実施例に係るスラスター1の動作について説明する。ここでは、スラスター1において、油圧シリンダー5のピストン53が下死点にある状態を第1動作状態と称し、ピストン53が上死点にある状態を第2動作状態と称することとして、以下に、第1動作状態にあるスラスター1に対して電源を投入して第2動作状態に移行させた後に電源を切って第1動作状態に復帰させるまでのスラスター1の動作を、図2図4を参照しつつ説明する。
【0049】
実施例に係るスラスター1は、電源が投入されると、モーター3が駆動してポンプ7が作動する。ポンプ7は電源が供給されている間、動作を続ける。ポンプ7が動作中にあるときは、リザーバー4の作動油が加圧用流路201に向けて吐出され続ける。また、ポンプ7から吐出された作動油は、パイロット流路301を介してアンロードバルブ61のパイロットポート613に案内されるとともに、絞り機構27によりパイロット流路301内に満たされた作動油をパイロット圧にまで加圧する。それによって、アンロードバルブ61の内部流路が閉止される。また、図2において黒塗りの矢印で示したように、パイロット圧にまで加圧された作動油は、加圧用流路201の絞り機構27とチェックバルブ26とを経て油圧シリンダー5のポート54へと向かい、シリンダーチューブ51内に供給される。
【0050】
チェックバルブ26を経てポート54に向かう作動油は、ポンプ7側に逆流することがないので、ポンプ7が動作し続けると、シリンダーチューブ51内に充填されつつ、シリンダーチューブ51内の油圧を上昇させていく。それによって、下死点にあるピストン53が外部機構等による付勢機構50に抗して押し上げられる。すなわち、第1動作状態にあったスラスター1が第2操作状態に向けて動作する。なお、ポンプ7は、電源が供給されている限り、ピストン53が上死点に至った後も作動し続けることから、スラスター1が第2動作状態に移行した後もシリンダーチューブ51内は加圧され続ける。そして、シリンダーチューブ51内の油圧がリリーフバルブ62に設定された油圧より大きくなるとリリーフバルブ62の一次ポート621と二次ポート622との間に流路(以下、「内部流路」と言うことがある。)が形成され、ポンプ7からポート54に向かう作動油がリリーフバルブ62を経由して排出口68bよりリザーバー4に戻される。それによって、シリンダーチューブ51内の圧力がリリーフバルブ62に設定された圧力に調整され、スラスター1は第2動作状態を維持する。
【0051】
ここで電源を切ると、モーター3が停止し、ポンプ7による作動油の加圧動作も停止する。パイロット流路301内の油圧はポンプ7が停止した時点で消失し、それとほぼ同時にアンロードバルブ61の内部流路が開通してポート54からリザーバー4に至る排出用流路300が形成される。それにより、シリンダーチューブ51内の油圧が急速に減圧する。また、ピストン53が外部機構による付勢力により下方に押し下げられ、シリンダーチューブ51内の作動油が排出用流路300を経て排出口68aよりリザーバータンクへと速やかに戻される。このようにしてスラスター1が第1動作状態に復帰する。
【0052】
このように実施例に係るスラスター1では、油圧によって動作する弁機構のみを用いつつ確実にシリンダーチューブ51内の作動油をリザーバー4に向けて排出し、第1動作状態へ復帰させることができる。また、弁機構に電力が不要であることから、省電力である。また、電源が不要な弁機構は、連続的に動作させたり、高頻度で動作させたりしても発熱し難く、作動油の粘度が低下することがない。さらに、実施例に係るスラスター1を備えて第1動作状態において制動状態となるブレーキ装置であれば、停電時にはスラスター1が第1動作状態に復帰するのに伴ってブレーキ装置が速やかに制動状態となる。それにより、クレーン等のブレーキ装置の制動対象となる何らかの可動装置の動作中に停電が発生しても、その可動装置が慣性で動作し続けることがなく速やかに停止する。すなわち、実施例に係るスラスター1を備えたブレーキ装置は、高い安全性を有する。もちろん、外部の電磁ノイズによるスラスター1の誤動作も発生しない。
【0053】
===油圧回路の変形例===
実施例に係るスラスター1の油圧回路は図4に示したものに限らない。スラスター1の仕様や使用方法、スラスター1に求められる性能等に応じて適宜に変形することができる。以下では、実施例に係るスラスター1の油圧回路の変形例として、以下の第1と第2の二つの変形例に係る油圧回路を挙げる。
【0054】
<第1の変形例>
実施例に係るスラスター1の油圧回路では、ポンプ7を停止することでパイロット圧がゼロとなり、アンロードバルブ61を介した排出用流路300が開通する。なお、上記油圧回路において、ポンプ7の種類や機構によっては、ポンプ7を停止したときにポンプ7からチェックバルブ26に至る流路に残留する作動油による残圧により、ポンプ7の停止タイミングに対して排出用流路300の開通タイミングが僅かに遅れる可能性もある。
【0055】
例えば、ポンプ7が回転翼を用いたインペラポンプであれば、残圧があっても加圧時とは逆の方向に動作し易いため、ポンプ7の停止に伴ってパイロット圧がより速やかにゼロになる。一方、ポンプ7が、内接ギヤポンプや実施例のような外接ギヤポンプ等である場合には、残圧の解消が若干遅れる可能性がある。
【0056】
そこで、図6に例示した油圧回路のように、パイロット流路301の途上から分岐しつつ、オリフィス等の絞り機構205を介してリザーバー4に至る流路204を設けるとともに、当該流路204に介在する絞り機構205の流路抵抗を加圧用流路201の途上にある絞り機構27の流路抵抗よりも非常に高くする。例えば、ポンプ7の動作時における油圧シリンダー5の負荷圧が20Barでパイロット圧を5Barとした場合、追加した絞り機構205の差圧は、加圧用流路201の作動圧力である20Barになる。そして、追加した絞り機構205の流路抵抗を非常に高くしているため、動作中にあるポンプ7から吐出された作動油のうち、追加した絞り機構205からリザーバー4へ漏れ出す流量は少なく、作動油のほとんどがパイロット圧発生機構20によりパイロット圧を発生させつつ油圧シリンダー5のポート54に向かう。それにより、ポンプ7の動作中は、パイロット流路301におけるパイロット圧により、アンロードバルブ61の閉止状態が維持される。
【0057】
一方、ポンプ7が停止したときの残圧、すなわち加圧用流路201におけるポンプ7からチェックバルブ26に至る流路、及びパイロット流路301に残留する作動油による油圧は極めて低いので、絞り機構205による流路抵抗はほとんど発生しない。すなわち、残圧の起源となる作動油が容易にこの絞り機構205を通過し、残圧がより速やかにゼロになる。したがって、図6に示した油圧回路では、ポンプ7の種類や機構によらず、ポンプ7の停止に伴ってアンロードバルブ61の内部流路がより速やかに開通し、スラスター1がより高速に第1動作状態に復帰する。
【0058】
なお、図6に示した油圧回路では、圧力調整用流路202におけるリリーフバルブ62からリザーバー4に至る流路202cと、減圧用流路203におけるアンロードバルブ61からリザーバー4に至る流路203dとがマニフォールドブロック6内で合流しているが、図4に示した油圧回路と同様に、これらの流路(202c,203d)が個別に形成されていてもよい。
【0059】
<第2の変形例>
実施例に係るスラスター1は、ポンプ7を作動し続けることで第2動作状態を維持するように構成されている。すなわち、ポンプ7は、第2動作状態に移行した後も、油圧シリンダー5を、第1動作状態に復帰させるためのスプリング50の付勢力に抗してピストン53を上昇させるのに必要な油圧で作動油を吐出し続ける。そのため、スプリング50の付勢力がより大きなスラスター1では、ポンプ7を駆動するモーター3が高負荷で運転され続けるため、高温になり易い。それによって、作動油が劣化する可能性がある。もちろん、モーター3の消費電力も増大する。そこで、以下に、実施例に係るスラスター1における油圧回路の第2の変形例として、より高い油圧を要する油圧シリンダー5を用いてもモーター3に高い負荷を掛けず、モーター3の消費電力を低減させることが可能な油圧回路を挙げる。
【0060】
図7に、スラスター1における油圧回路の第2の変形例を示した。なお、図7に示した油圧回路は、構成や動作を説明するためのものであり、機械的な構造に関わる接続ブロック2やマニフォールドブロック6を省略している。図4図6に示したスラスター1の油圧回路では、加圧用流路201の途上に直列接続された絞り機構27とチェックバルブ26とによってパイロット圧発生機構20が構成されていたが、図7に示した油圧回路では、パイロット圧発生機構180が加圧用流路201に対して並列に接続されている。そして当該パイロット圧発生機構180は、親弁81と子弁82とからなるアンロードリリーフバルブ80と、オリフィス等からなる絞り機構83とによって構成されている。なお、図7では、スラスター1の動作や油圧回路における各所の油圧が理解し易いように、便宜的に、油圧回路にポンプ7の吐出圧力Paを測定する油圧計181と、加圧用流路201において、チェックバルブ26から油圧シリンダー5に至る流路内の油圧Pbを測定する油圧計182とを含めた。なお、油圧計182が測定する油圧Pbは、実質的に油圧シリンダー5内の油圧であることから、以下では、油圧Pbを「シリンダー圧Pb」と言うことがある。
【0061】
図8に親弁81の内部構造を示し、図9に子弁82の内部構造を示した。図8、及び図9は、親弁81と子弁82の動作を説明するための図であり、図8、及び図9における紙面左側に、親弁81、及び子弁82における一次ポート(811,821)と二次ポート(812,822)間の内部流路が閉止されてロード状態にあるときの状態を示し、紙面右側に、内部流路が開通してアンロード状態にあるときの親弁81、及び子弁82を示した。
【0062】
図8に示したように、親弁81は、内部流路によって開閉自在に互いに連絡する一次ポート811と二次ポート812、及び一次ポート811に流入した作動油を内蔵する絞り弁814を介して排出するパイロットポート(以下、「親弁パイロットポート813」と言うことがある。)とを有する。また、図9に示したように、子弁82は、内部流路によって開閉自在に互いに連絡する一次ポート821と二次ポート822、及び内部流路の開閉を制御するための油圧が印加されるパイロットポート(以下、「子弁パイロットポート823」と言うことがある。)を備える。なお、図8図9では、図5Aと同様に、作動油の流出入方向が黒塗りの矢印で示されており、図5Bと同様に、弁を開閉させるための油圧の印加方向が白抜きの矢印で示されている。なお、親弁81と子弁82は、図5A図5Bに示したアンロードバルブ61と同様に、ポート(811~813,821~823)には、複数の開口を有するポート(812,813,821,822)もあるが、図8,9では、作動油の流出入経路が理解し易いように、複数の開口を有するポートについては、一箇所の開口に対してのみ作動油の流出入方向が示されている。
【0063】
まず、親弁81の構造について具体的に説明する。図8に示したように、親弁81は、中空筒状の筐体815の一方の端面側に吐出圧力Paが印加される一次ポート811が設けられ、側面に中空の筒内に連絡する二次ポート812と上記の親弁パイロットポート813とが開口している。また、筐体815の他方の端面側にはプラグ816が嵌着されている。ここで、親弁81における筒状の筐体815の筒軸110方向を上下方向とし、一次ポート811が下端側に設けられていることとして上下の各方向を規定すると、筐体815内には、上下方向に摺動する円柱状のスプール817と、スプール817を比較的弱い圧力(例えば、5Bar相当)で下方に付勢するスプリング818とが内蔵されている。
【0064】
スプール817の上端にはフランジ状の頭部817aが形成されており、筐体815内には、この頭部817aの下面817bを支持する座815aが形成されて、スプール817の下方への移動を規制している。また、スプール817の下端側は、筐体815の内面に密接する外径を有する円柱状で、その下端から上方に至る途上で縮径し、その縮径した外形を維持して頭部817aに至る。したがって、スプール817において頭部817aの直下の円柱部分の側面と筐体815の内面とは間隙を有している。スプール817の下方には、下端が開口する凹部(以下、「下方凹部817c」と言うことがある。)が形成されており、下方凹部817cの開口が一次ポート811となる。なお、下方凹部817cの内面は、円柱の上方に円錐が接続する形状に形成されている。一方、スプール817の上方には上端が開口する円柱状内面を有する凹部(以下、「上方凹部817d」という言うことがある。)が形成されている。なお、プラグ816の下端側には下方に開放して上方に天面を有する凹部816aが形成されており、スプリング818は、スプール817の上方凹部817dの底面とプラグ816の凹部816aの天面との間に介在している。
【0065】
下方凹部817cにおける円錐の頂部と上方凹部817dの下面とは、細管状の流路(オリフィス)からなる絞り弁814を介して連絡している。さらに、スプール817の頭部817aの直下の縮径した円柱状の領域には、上方凹部817dの内方に連絡する流路(以下、「上方流路817e)と言うことがある。)が形成されている。また、スプール817の側面において、筐体815内面に密着する下端側の領域には、下方凹部817cの内方に連絡する流路(以下、「下方流路817f」と言うことがある。)が形成されている。そして、スプリング818は、プラグ816の下面と、スプール817の上方凹部817dの下面との間に介在している。
【0066】
次に子弁82の構造ついて説明する。図9に示したように、子弁82は、中空筒状の筐体824の一端側に、中空筒状のスリーブ830が挿入され、そのスリーブ830内に、筒軸111方向に摺動する円柱状のスプール825が挿入されている。そして、筐体824内には、スプール825の摺動に伴って開閉するボール弁826と、ボール弁826を保持しつつスプリング827によってボール弁826を閉状態に戻そうとする方向へ付勢するボールホルダー828とが収納されている。なお、スプール825の側面はスリーブ830の内面に対して密着しており、スリーブ830の外側面は筐体824の内面に密着している。一方、ボールホルダー828の側面と筐体824の内面とは間隙を有している。
【0067】
ここで、子弁82における中空筒状の筐体824の筒軸111方向を上下方向とし、スリーブ830が筐体824の下端側に挿入されていることとして子弁82における上下の各方向を規定すると、スリーブ830の上下両端は開口し、上端側の開口が下端側の開口に対して縮径している。そして、この縮径したスリーブの開口の縁がボール弁826の座であるシート部826aとなる。また、子弁82の一次ポート821は、筐体824から、スリーブ830内において、ボール弁826のシート部826aの下方に形成された空間829に連続している。スプール825は、下端側に対して上端側が縮径する二段円柱状であり、縮径された上方の円柱部分がその空間829内にて突出しつつボール弁826に当接している。それにより、上記の空間829において、スプール825における上方の円柱部分の周囲に作動油の充填空間が形成される。すなわち、スリーブ830内の当該空間829の上方には、シート部826aの開口が形成され、下方にはスプール825が挿通される中空部の開口が形成されている。
【0068】
また、子弁82は、図9に点線の楕円枠で示したように、上記の空間829では、ボール弁826に接しているシート部826aの開口面積S2が、この空間829においてスプール825に対して油圧が作用する面積S1、すなわち、スリーブ830における下端側の開口面積よりも狭小である(例えば、S2/S1=0.7)。そのため、一次ポート821に流入した作動油の油圧によってボール弁826が押し上げられる力と、スプール825が下方に押圧される力とが均等にならず、ボール弁826を押上げる方向が優勢となる。そして、変形例に係る油圧回路では、上述した構造の親弁81と子弁82と、これらの弁(81,82)に接続される流路とによってアンロードリリーフバルブ80が構成されている。さらに、このアンロードリリーフバルブ80と、子弁82の二次ポート822からリザーバー4に至る流路の途上に介在する絞り機構83により、パイロット圧調整機構70が構成される。
【0069】
次に、第2の変形例における油圧回路の動作について説明する。図10にスラスター1の動作に伴う吐出圧力Paとシリンダー圧Pbの変化を示すタイミングチャートを示した。図10のチャートにおける横軸は、スラスター1が所定の動作状態となるときのタイミング(T0~T3)であり、縦軸は、所定のタイミングにおける吐出圧力Paやシリンダー圧Pbの油圧である。そして、図10に示したチャートでは、T0にモーター3に電源を投入してポンプ7を作動させ、T3にてモーター3の電源を遮断してポンプ7を停止させることとしている。以下、図8図10を参照しつつ、図7に示した油圧回路の動作について説明する。
【0070】
図7の油圧回路に示したように、加圧用流路201において、ポンプ7からチェックバルブ26に至る流路、すなわち、パイロット流路301に親弁81の一次ポート811が接続されている。また、親弁パイロットポート813と子弁一次ポート821とが接続されている。したがって、親弁81の一次ポート811に流入する作動油の油圧は、ポンプ7の吐出圧力Paとなる。また、子弁82の子弁パイロットポート823にはシリンダー圧Pbが印加される。なお、子弁82の一次ポート821に印加される油圧を、便宜的に子弁制御圧力Pcと称することとする。
【0071】
まず、ポンプ7が停止している状態では、親弁81は、一次ポート811に吐出圧力Paが印加されていないため、スプール817はスプリング818の付勢力によって押し下げられて、頭部817aの下面817bが、筐体815の内方に形成された座815aの上面に当接した状態となる。この状態では、上方流路827eと親弁パイロットポート813、及び下方流路817fと二次ポート812とが、ともに閉止状態となっている。一方、子弁82は、子弁パイロットポート823にシリンダー圧Pbが印加されていないので、スプリング827の付勢力によりボール弁826がシート部826aに接した状態に維持され、一次ポート821と二次ポート822とが閉止状態となっている。
【0072】
ポンプ7が作動すると、図10において実線で示したように、ポンプ7の吐出圧力Paが立ち上がる。一方、シリンダー圧Pbは、図10において破線で示したように、ポンプ7が作動油の吐出を開始した時点T0から、加圧用流路201のチェックバルブ26を通過するのに要する油圧(例えば、5bar)まで加圧されるまでの時間差により、吐出圧力Paに若干遅れて立ち上がる。なお、ポンプ7が作動すると、なお、アンロードバルブ61において、ロード状態を維持する油圧は、チェックバルブ26の通過に要する油圧よりも小さい。すなわち、アンロードバルブ61は、パイロット流路301を介してパイロットポート613に印加される油圧によりロード状態を維持する。それによって、シリンダー圧Pbは、吐出圧力Paとともに上昇していく。
【0073】
より具体的には、ポンプ7が作動すると、親弁81では、図8において点線矢印で示したように、作動油が絞り弁814を介して上方凹部817dに流入するとともに、上方凹部817dの上端側の開口を経て親弁パイロットポート813から吐出される。そして、その親弁パイロットポート813から吐出された作動油が子弁82の一次ポートに流入する。なお、親弁81に内蔵されている絞り弁814は、吐出圧力Paをシリンダー圧Pbと同程度にまで減圧する。すなわち、シリンダー圧Pb≒子弁制御圧力Pcとなる。
【0074】
一方、子弁82では、スプリング827によってボール弁826を下方に付勢する力が一次ポート821に流入する作動油の油圧に対して優勢であるため、ボール弁826は閉じたままである。そのため、吐出圧力Paは上昇を続ける。また、吐出圧力Paとシリンダー圧Pbは、その上昇の過程で、ピストン53が上昇し始める時点(T1)になると、スプリング50の抵抗により、上昇傾向が一端緩やかになる。その後、シリンダー圧Pbがスプリング50の付勢力に打ち勝つと、下死点にあったピストン53が上死点へ向けて移動し始め、吐出圧力Paとシリンダー圧Pbは、さらに上昇を続ける。
【0075】
吐出圧力Paとシリンダー圧Pbは、ピストン53が上死点に到達した(例えば、Pa=87Bar,Pb=82Bar)後も上昇し、ある時点(T2)において、最大値(例えば、Pa=90Bar,Pb=85bar)となる。その後は、吐出圧力Paが急激に減少し始め、シリンダー圧Pbは、ほぼ、その最大値を維持するように推移する。そして、吐出圧力Paとシリンダー圧Pbが最大となる時点(T2)では、子弁制御圧力Pc≒85Barが、スプリング818の付勢力に抗してボール弁826を上方に押し上げ、図9に点線の矢印で示したように、一次ポート821と二次ポート822間の内部流路が、上述したボールホルダー828と筐体824の内面との間隙を経由した経路で開通した状態、すなわち、アンロード状態となる。子弁82がアンロード状態になると、子弁制御圧力Pcが減少する。
【0076】
ここで、子弁パイロットポート823にシリンダー圧Pbが印加されていなかったと仮定すると、子弁制御圧力Pcの増減傾向と吐出圧力Paの増減傾向とには、親弁81の絞り弁814により時間差があることから、子弁82がアンロード状態となって子弁制御圧力Pcが減少した瞬間では、高圧の吐出圧力Paと子弁制御圧力Pcとの間には大きな差圧が発生する。子弁制御圧力Pcは、親弁81においてスプール817を押し下げようとする力でもあるので、子弁82がアンロード状態になると、上記の差圧により、親弁81のスプール817が押し上げられ、親弁81の一次ポート811と二次ポート812が開通し、親弁81もアンロード状態となる。しかし、次の瞬間、子弁82では、減圧した子弁制御圧力Pcに対してスプリング827によってボール弁826を押し下げる力が優勢となり、ボール弁826は速やかに閉じ、子弁82は、再び、ロード状態となる。それによって、子弁制御圧力Pcが増圧し、親弁81のスプール817が押し下げられて、親弁81もロード状態に復帰する。すなわち、アンロードリリーフバルブ80は、子弁パイロットポート823にシリンダー圧Pbが印加されていない場合には、親弁81と子弁82とからなるリリーフバルブとして機能することになる。
【0077】
しかし、子弁パイロットポート823には、シリンダー圧Pbが印加され、このシリンダー圧Pbは、加圧流路201に介在するチェックバルブ26と、ロード状態にあるアンロードバルブ61とにより維持される。そのため、子弁82内の上記空間829における油圧でもある子弁制御圧力Pcが減少に転じた瞬間では、最大のシリンダー圧Pbが子弁パイロットポート823に印加されている。そして、子弁82のスリーブ830内において、作動油がボール弁826とスプール825とに接する上記の空間829では、上述したように、スプール825の面積S1とシート部826aの開口面積S2との大小関係(S1>S2)により、子弁制御圧力Pcは、ボール弁826を押し上げる力が優勢となるように作用する。したがって、子弁82がアンロード状態になって、子弁制御圧力Pcがシリンダー圧Pbより低くなった瞬間に、子弁パイロットポート823に印加されている高圧のシリンダー圧Pbと、減圧した子弁制御圧力Pcとの差圧によってスプール825が上方に付勢されて摺動し、スプール825の先端がボール弁826に当接する。そして、スプール817の上方への摺動に伴う力が、ボール弁826を上方にさらに付勢する力として加勢する。それによって、子弁82のアンロード状態が維持される。子弁82がアンロード状態になれば、上述したように、親弁81もアンロード状態となる。なお、当然のことながら、子弁82がアンロード状態に維持されているときのシリンダー圧Pbは、ピストン53が上死点に到達してスラスター1が第2動作状態となるときのシリンダー圧Pb(例えば、Pb=82Bar)より大きく設定されている。そして、子弁82がアンロード状態に移行したときの子弁制御圧力Pcをアンロードリリーフバルブ80のカットアウト圧力Pco(≒Pbの最大値)とすると、アンロード状態を維持できなくなるシリンダー圧Pbがカットイン圧力Pciとなる。
【0078】
上述したように、第2の変形例に係る油圧回路では、子弁制御圧力Pcによって子弁82がアンロード状態なると、シリンダー圧Pbが上記のカットイン圧力Pciよりも大きければ、親弁81と子弁82の双方がアンロード状態を維持する。さらに、第2の変形例に係る油圧回路では、親弁81と子弁82がともにアンロード状態なったときに、アンロード状態にある親弁81の一次ポート811側には、スプリング818によってスプール817を押し下げようとする力に相当する油圧(例えば、5Bar)が印加される。また、子弁82の二次ポート822からリザーバー4に至る流路には、絞り機構83が介在していることから、この絞り機構83の通過抵抗による油圧(例えば、5Bar)が発生し、この油圧が子弁制御圧力Pcとして、親弁81のスプール817を下方に押し下げる力として作用する。そのため、第2の変形例に係る油圧回路では、親弁81と子弁82がともにアンロード状態を継続しても、親弁81の一次ポート811側の作動油は、図10に示したように、親弁81における一次ポート811と二次ポート812との間の通過抵抗に相当する油圧に、子弁82の二次ポート822側に接続された絞り機構83の通過抵抗に相当する油圧を加えた油圧(例えば、10Bar)に維持される。そして、子弁82の二次ポート822から絞り機構83を経た作動油、及び親弁の二次ポート812から排出された作動油は、リザーバー4に向かい、再びポンプ7から吐出される。すなわち、アンロードリリーフバルブ80がアンロード状態であれば、ポンプ7の吐出圧力Paは、パイロット圧を維持するためだけのものでよく、ポンプ7は、低負荷で駆動される。一方、油圧シリンダー5内の作動油は、アンロードバルブ61を経由してリザーバー4に至る排出用流路300が閉止状態にあり、ポンプ7から油圧シリンダー5に至る加圧用流路201内の作動油は、チェックバルブ26によってポンプ7側への逆流が禁止されている。そのため、シリンダー圧Pbは、第2動作状態を継続させるのに必要な油圧を維持する。
【0079】
次に、モーター3の電源を切ってポンプ7を停止させると(T3)、ポンプ7の吐出圧力Paが消失し、パイロット圧も消失する。それによって、アンロードバルブ61の内部流路が開通し、油圧シリンダー5内の作動油が排出用流路300を経由してリザーバー4に戻され、圧力Pbが急激に減少する。そして、子弁82は、シリンダー圧Pbの減少に伴い、子弁パイロットポート823に印加されていた油圧も減少し、スプリング827の下方への付勢力に抗してスプール825を押し上げようとする力が弱まる。そして、圧力Pbがカットイン圧力(例えば、56Bar)にまで減少すると(T4)、スプリング827によってボールホルダー828とボール弁826とを介してスプール825が下方に押し下げられる。ボール弁826がシート部826aに当接して、一次ポート821と二次ポート822間の内部流路が閉止状態となる。
【0080】
また、子弁82の一次ポート821から親弁パイロットポート813と親弁81の一次ポート811を経てポンプ7に至る流路やパイロット流路301内の作動油は、図6に示した第1の変形例に係る油圧回路と同様に、ポンプ7と排出量流路とを連絡する流路204の途上に配置された絞り機構205を介してリザーバー4に戻される。それにより、吐出圧力Paがより速やかに消失する。以上が第2の変形例における油圧回路の動作である。
【0081】
なお、現実の油圧回路では、作動油の漏れを完全に防止することができないことから、シリンダー圧Pbは、時間とともに徐々に低下していく。しかしながら、一般的なスラスター1の使用形態において第2動作状態を継続させる時間は、スラスター1が第2動作状態に到達してから、シリンダー圧Pbの経時的な低下によって、その第2動作状態を維持できなくなるまでの時間よりも短い。したがって、シリンダー圧Pbが時間とともに低下して、第2動作状態が維持できなくなるという問題は、実質的には発生しない。もちろん、油圧回路の各所のシール強度を高めたり、シール箇所を増やしたりすることで、第2動作状態の継続時間を伸長させることもできることから、想定されるスラスター1の使用方法において必要とされる第2動作状態の継続時間に応じ、各所のシール強度やシール箇所の数等を油圧回路の設計段階で適宜に決定しておけばよい。子弁82の製造精度をより高めることで、子弁82のカットイン圧力Pciを、油圧シリンダー5のピストン53が上死点に達するときの圧力(例えば、82bar)以上、カットアウト圧力Pco(例えば、85bar)未満に設定することも可能である。それによって、作動油の漏れの有無にかかわらず、第2動作状態を維持することができる。
【0082】
このように、図7に示した油圧回路では、親弁81と子弁82とで構成されるアンロードリリーフバルブ80と、絞り機構83とを含んで構成されるパイロット圧発生機構180を備えていることで、スラスター1が第2動作状態に移行すると、ポンプ7の吐出圧力Paがアンロードバルブ61のパイロット圧を維持する程度の低い油圧に自動的に調整される。それにより、スプリング50の付勢力が強大で、第2動作状態におけるシリンダー圧Pbを高くする必要がある場合でも、ポンプ7を駆動するモーター3の負荷が低減され、モーター3の発熱による作動油の劣化を抑止することができる。また、モーター3を高負荷で運転する時間を短くすることができ、モーター3の消費電力を低減させることもできる。さらに、電磁バルブを用いた従来のスラスターでは、電磁バルブのオンオフに伴って電力の消費があることから、図7に示した油圧回路を有するスラスター1は、従来のスラスターと比較すると、モーター3の電源の投入と切断を間欠的、かつ頻繁に行なう場合では、消費電力の低減効果がより高いものとなる。
【0083】
<親弁と子弁のカートリッジ化>
上記第2の変形例における油圧回路では、親弁81と子弁82の二つの個別の弁機構が流路によって接続されてなるアンロードリリーフバルブ80を備えている。親弁81と子弁82とを接続する流路は、配管を用いて構成してもよいが、図8、及び図9に示したように、親弁81、及び子弁82は、それぞれが中空円筒状の筐体(815,824)を備えたプラグ型であり、図5A図5Bに示したアンロードバルブ61と同様にマニフォールドブロック6や接続ブロック2等と同様に、内部に流路が形成された金属ブロックに対して交換可能に挿抜されるようにカートリッジ化されている。したがって、アンロードリリーフバルブ80は、親弁81と子弁82とをカートリッジとし、その親弁81と子弁82を内部に流路が形成されている金属ブロックに組み込んだユニットとして構成されていてもよい。
【0084】
図11に親弁81と子弁82をカートリッジとしたアンロードリリーフバルブ80のユニット90を示した。なお、図11に示したユニット90には、親弁81と子弁82とに加え、挿抜可能なアンロードバルブ61と、パイロット機構180を構成する図示しない絞り機構83も組み込まれている。なお絞り機構83は、図2に示したスラスター1の接続ブロック2に組み込まれたチェックバルブ26と同様に、金属ブロック91内の流路に嵌め込まれている。
【0085】
図11に示したように、各バルブ(61,81,82)は、夫々が備えるポート(611~613,811~813,821~823)が金属ブロック91内に配置されるように、下端側が金属ブロック91に埋設されている。なお、図11では、各バルブ(61,81,82)の埋設状態が理解し易いように、各バルブ(61,81,82)を断面で示しているが、紙面前後方向における各バルブ(61,81,82)の実際の埋設位置は紙面前後方向で互いに異なっている場合もある。そして、金属ブロック91内には、パイロット流路301等、親弁81、子弁82、及びアンロードバルブ61における所定のポート同士を接続させる流路が形成されている。なお、絞り機構83は、子弁82の二次ポート822に接続される流路の途上に挿入されている。もちろん、ユニット90を構成する金属ブロック91が、マニフォールドブロック6や接続ブロック2であってもよい。
【0086】
第2の変形例に係る油圧回路では、アンロードリリーフバルブ80という一つの機能を実現するために親弁81と子弁82という互いに連動する二つのバルブを用いている。そして、親弁81と子弁82のいずれか一方に対してメンテナンス(点検、交換、修理、調整等)を行う場合には、カートリッジ化されているこれらの弁(81,82)を、金属ブロック91に対して個別に、かつ容易に着脱することができる。一方、アンロードリリーフバルブ80としての総合的な機能についてのメンテナンスを行う場合には、スラスター1からユニット90を取り外すことができる。したがって、親弁81と子弁82をカートリッジとし、アンロードリリーフバルブ80を、カートリッジ化された親弁81と子弁82を金属ブロックに挿抜可能に取り付けたユニット90としてとして構成することで、どのようなメンテナンスに対しても柔軟に対応することができ、メンテナンスに掛かるコストを低減させることができる。
【0087】
===その他の実施例===
以上、実施例として電動油圧シリンダー(スラスター1)を挙げて本発明に係る電動液圧アクチュエーターについて説明したが、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。そして、上記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、上記実施形態の構成の一部について、他の構成の追加や削除、置換をすることが可能である。
【0088】
例えば、図4に示した油圧回路では、アンロードバルブ61とリリーフバルブ62のそれぞれに対応する排出口(68a,68b)が設けられていたが、アンロードバルブ61とリリーフバルブ62のそれぞれを経た流路(203d,202c)がマニフォールドブロック6内で合流して一つの排出口からリザーバー4に排出されるようになっていてもよい。
【0089】
第2の変形例に係る油圧回路におけるパイロット圧発生機構180では、アンロードリリーフバルブ80が個別の親弁81と子弁82とで構成されていたが、アンロードリリーフバルブ80を構成する親弁81と子弁82とが一体的に構成されていてもよい。図12に、親弁81、子弁82、及び絞り機構83が一体的に構成されたパイロット圧発生機構180を示した。図12では、図7図9に示した各部位や各部材に対応する構成に同じ符号を付している。また、図12では、親弁81と子弁82の夫々に対応する部位を異なるハッチングで示した。なお、図12に示した子弁82では弁体826が球体ではなく円錐状となっている。いずれにしても、アンロードリリーフバルブ80は機能や動作が同じであれば、その形態は限定されない。
【0090】
油圧回路を構成する流路の一部、あるいは全部を、接続ブロック2やマニフォールドブロック6内等の金属ブロック内に形成せず、配管を用いて形成してもよい。また、アンロードバルブ61とリリーフバルブ62は、マニフォールドブロック6に取り付けられていなくてもよく、例えば、接続ブロック2に取り付けられていたり、配管の途上に挿入されたりしていてもよい。いずれにしても、図4に示した油圧回路に対応する流路が(201~203)形成されていればよい。また、ポンプ7は、外接ギヤポンプに限らず、内接ギヤポンプやインペラポンプ等であってもよい。
【0091】
上記実施例において、絞り機構(27,83,205)は固定絞りである上記のオリフィスに限らず、可変絞りであるスロットルバルブであってもよい。スロットルバルブは、弁体の開度を微調整して流速を可変調整することができる。例えば、図4図6に示した油圧回路では、スラスター1の用途や仕様によってアンロードバルブ61に設定されるパイロット圧が一定でない場合等に、所望のパイロット圧に可変設定することができる。その反面、スロットルバルブは、開度の調整量と実際の弁体の開度との関係に個体差がある。
【0092】
一方、固定絞りであるオリフィスは、個体差が少なく、同じ機種のスラスター1であれば、絞りの開度を規定さえすれば、規定の開度のものを複数製造しておくことで、複数の同じ機種のスラスター1に対して個別に開度を調整する必要がない。このように、絞り機構としてオリフィスを用いたスラスター1は、絞りの開度を調整するためのコストを削減することができる。また、オリフィスは、可動部がなく、高い信頼性を有するとともに、スロットルバルブよりも安価でもあることから、スラスター1における部品コストを低減させることもできる。いずれにしても、スラスター1の仕様やスラスター1に求められる性能に応じて適宜な絞り機構(27,83,205)を採用すればよい。
【0093】
上記実施例に係るスラスター1では、油圧シリンダー5のピストンロッド52先端のヘッド12に接続された外部機構等の付勢機構50によりピストン53が常時下方に付勢されていたが、シリンダーチューブ51内にピストン53を常時下方に付勢するスプリングが組み込まれていてもよい。図12にシリンダーチューブ51内にスプリング150が組み込まれた油圧シリンダー105の例を示した。ここで、ピストンロッド52の軸方向を上下方向とし、ポンプ7が作動するとピストン53が上方に押し上げられることとして、上下の各方向を規定すると、図12に示した油圧シリンダー105は、ピストン53が円柱状ではなく、周囲に上方に立設する縁151がある円板状で、ピストンロッド52の軸方向に螺旋軸を有するスプリング150が、シリンダーチューブ51の上端内面152とピストンの上面153との間に配置されている。
【0094】
上記実施例に係るスラスター1における油圧シリンダー5は、ピストン53が上下方向に往復運動するように配置されていたが、モーターシャフト31と交差する方向(例えば、直交方向)に往復運動するように油圧シリンダー5を配置することもできる。
【0095】
図4図6に示した油圧回路では、パイロット圧発生機構20が、絞り機構27とチェックバルブ26とで構成されていたが、パイロット圧発生機構20をチェックバルブ26単体で構成することもできる。具体的には、チェックバルブ26は、ポンプ7からシリンダーチューブ51に向かう順方向については小さな油圧で通過させるように構成されている一方、シリンダーチューブ51からポンプ7方向への逆方向の作動油については、チェックバルブ26の機能により逆流することはない。そこで、順方向にパイロット圧以上の油圧が加わったときに順方向に作動油を通過させるチェックバルブ26を用いる。それにより、チェックバルブ26のみでパイロット圧発生機構20を構成することができる。
【0096】
なお、チェックバルブ26のみでパイロット圧発生機構20を構成した場合には、スラスター1の部品点数が少なくなり、スラスター1をより安価に提供できることが期待できる。その反面、アンロードバルブ61を動作させるためのパイロット圧は比較的大きな油圧であるため、この油圧未満では順方向に作動油を通過させないようにするチェックバルブ26は自ずと大型のものとなる。そのため、スラスター1の小型化が難しくなる。いずれにしても、パイロット圧発生機構20の構成については、スラスター1に求められる製造コストや仕様に応じて適宜に決定すればよい。
【0097】
実施例として示した上記スラスター1は、液圧アクチュエーターとして油圧シリンダー5を備えていたが、液圧アクチュエーターは油圧シリンダー5のようにピストン53等の可動部が直線方向に往復運動する直動式の液圧アクチュエーターでなくてもよい。例えば、密閉されたステーター内に可動部として油圧によって所定角度で回転するローターを備えた液圧アクチュエーター等、液圧アクチュエーターは回転する可動部を備えたものであってもよい。そして、このような可動部が回転する液圧アクチュエーターを備えた電動液圧アクチュエーターは、ステーター内が作動油によって加圧されてないときのローターの回転角度位置に対応する第1動作状態と、ステーター内に十分に加圧された作動油が充填されてローターが第1動作状態から所定角度だけ回転したときの回転角度位置に対応する第2動作状態との間で往復運動するように構成されていればよい。なお、液圧により回転する可動部を有する電動液圧アクチュエーターにおける付勢機構としては、例えば、第1動作状態となる回転位置にローターを常時付勢する蔓巻バネ等が考えられる。
【0098】
当然のことながら、電動液圧アクチュエーターにおける作動流体は、作動油に限らず、水、空気、蒸気等、液圧アクチュエーターを動作させるための液圧を発生できるものであればよい。
【符号の説明】
【0099】
1 スラスター(電動液圧アクチュエーター,電動油圧シリンダー)、
2 接続ブロック、3 モーター、4 リザーバー、5,105 油圧シリンダー、
6 マニフォールドブロック、7 ポンプ、11 クレビス、12 ヘッド、
20,180 パイロット圧発生機構、21 連絡孔、23 連結部材、24 流入口、
25 流出口、26 チェックバルブ、27,73,205 絞り機構、
31 モーターシャフト、50 付勢機構、51 シリンダーチューブ、
52 ピストンロッド、53 ピストン、54 (油圧シリンダー5)のポート、
61 アンロードバルブ、62 リリーフバルブ、68a,68b 排出口、
80 アンロードリリーフバルブ、81 アンロードリリーフバルブの親弁、
82 アンロードリリーフバルブの子弁、150 スプリング(付勢機構)、
90 アンロードリリーフバルブを含むユニット、91 金属ブロック、
201 加圧用流路、201a,201b 加圧用流路を構成する流路、
202 圧力調整用流路、202a~202c 圧力調整用流路を構成する流路、
203 減圧用流路、
203a~203f,301 減圧用流路を構成するパイロット流路、
300 減圧用流路を構成する排出用流路、811 親弁の一次ポート、
812 親弁の二次ポート、813 親弁のパイロットポート、814 絞り弁、
815 親弁の筐体、817 親弁のスプール、818 親弁のスプリング、
823 子弁のパイロットポート、821 子弁の一次ポート、
822 子弁の二次ポート、824 子弁の筐体、825 子弁のスプール、
826 ボール弁、827 子弁のスプリング
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
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